JP3546729B2 - 電子銃、電子銃の製造方法、陰極線管装置 - Google Patents
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- H01J2229/48—Electron guns
- H01J2229/4803—Electrodes
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は陰極線管の電子銃に関し、特に電子銃の高周波磁界透過特性を向上させるための技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図5は、投写型のモノクローム陰極線管の電子銃部分の構造例を示す。図5に示すように、ネック管14内に配置された電子銃にネック管14の外部から速度変調コイル18によって磁界変調をかけ、電子ビームのいわゆる速度変調を行って、フォーカス性能の向上を図っているのが現在の進んだディスプレイ技術である(特開平10−74465号公報)。すなわち、カソード6から出射した電子ビームが蛍光体スクリーン面に到達するまでに、偏向ヨーク16、コンバージェンスヨーク15、速度変調コイル18等により発生する交流磁界により、電子ビーム軌道が変調される。このうち偏向ヨーク16は、陰極線管のファンネルコーン部に装着され、交流磁界を発生して電子ビーム軌道を偏向することにより、陰極線管蛍光体スクリーン面を電子ビームで走査する。コンバージェンスヨーク15は、陰極線管のネック管14の外側に装着され、交流磁界を発生して電子ビーム軌道を変調することにより、ラスター歪みと色ズレを補正する。速度変調コイル18は、陰極線管のネック管14の外側に装着され、交流磁界を発生して電子ビームの走査速度を変調することにより、蛍光体スクリーン面上での高輝度部の低輝度部へのはみ出しを防ぎ、画像をシャープにする。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
電子ビームを変調するための交流磁界の周波数は映像周波数と同等のメガヘルツオーダに及ぶため、ステンレスなどの金属材料を深絞り加工等することにより形成された電子銃の金属部品によってこの交流磁界が減衰を受け、所望の電子ビーム変調を得られないという問題があった。
【0004】
図5に示すように、コンバージェンスヨーク15によって生成された交流磁界20のほとんどは、陽極電極10(G5電極)を通過する。偏向ヨーク16はファンネルコーン部に装着されており、偏向ヨーク16によって生成された交流磁界17の一部は陽極電極10を通過する。速度変調コイル18は前段陽極電極8(G3電極)と集束電極9(G4電極)の中間に配置されており、速度変調コイル18によって生成された交流磁界19のほとんどは前段陽極電極8と集束電極9を通過する。
【0005】
これらの金属電極を通して交流磁界をかけた際、金属電極部に渦電流が発生する。また、交流磁界の周波数が高くなればなるほど、この渦電流損は大きくなるため、高周波変調域において磁界による電子ビーム軌道の変調効果が減少する。例えばコンバージェンスヨーク15によって生成された交流磁界20により、陽極電極10に渦電流が発生し、コンバージェンスヨーク15による電子ビーム軌道変調効果が減少する。
【0006】
また、この渦電流損により、電極が発熱し、ネック管を破壊する場合もある。これらの交流磁界のロスや電極の発熱を防止するため、交流磁界の発生源と電子銃の金属電極との距離を大きくした設計とすれば、必然的に電子ビーム集束レンズと蛍光体スクリーン面との距離が大きくなり、電子レンズ倍率が大きくなるため、解像度が低下するという問題がある。とくに、高品位テレビジョン等の高偏向周波数、広信号帯域の画像表示装置では、これらの交流磁界のロスが大きくなるため、実使用上支障が生じるという問題がある。
【0007】
従来、深絞り状の金属部品をいくつかの部分に分割し、各々の部品の間に隙間を設け磁界の透過特性を改善しているものが提案されている(特開平8−115684号公報)が、組み立て精度の問題やコストが割高になるなどの問題があった。また、分割した各部品の機械的強度を保つために各部品をあまり小さくできないので、磁界透過特性が大幅に改善できないという問題があった。
【0008】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、真空外部からの変調磁界に対してこの磁界の透過を妨げることなく、所望の電子ビーム変調効果が得られる電子銃を備えた陰極線管を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の電子銃は、内部を電子ビームが通過する筒状の電極を備える電子銃であって、前記電極の筒状部の少なくとも一部が、線材をコイル状に巻いて形成したコイル状部を有し、前記コイル状部は隣り合う前記線材の間にすき間を有することを特徴とする(請求項1)。この構成によれば、コイル状部を構成する線材の間隙を変調磁界が通り抜けるので、渦電流損を低減することができる。
【0010】
また、カソード、G1電極、G2電極、G3電極、G4電極、G5電極が順次配列された電子銃であって、前記G3電極および前記G4電極のいずれかに前記コイル状部を有することが好ましい(請求項2)。この構成によれば、コイル状部の線材によって、G3電極およびG4電極のいずれかの内部に等電位空間を形成することができる。
【0011】
また、請求項1に記載の電子銃において、前記コイル状部が非金属材料からなることが好ましい(請求項3)。この構成によれば、変調磁界の透過効果をさらに向上させることができる。
【0012】
また、請求項1に記載の電子銃において、前記コイル状部は、隣り合う線材の間隔が2.5〔mm〕以下であることが好ましい(請求項4)。この構成によれば、外部電界の影響を低減できる。
【0014】
また、本発明の電子銃の製造方法は、請求項1に記載の電子銃の製造方法であって、前記線材を巻いてコイル状部を成形した後、前記コイル状部の端部を隣接する電極部品に溶接することを特徴とする(請求項5)。この方法によれば、コイル状部を容易に製作できる。
【0015】
また、本発明の陰極線管装置は、電子銃をネック部の内部に備える陰極線管と、速度変調コイルとを備えた陰極線管装置であって、前記電子銃は、カソード、G1電極、G2電極、G3電極、G4電極、G5電極が順次配列され、前記G3電極および前記G4電極のいずれかが線材をコイル状に巻いて形成したコイル状部を有し、前記コイル状部は隣り合う前記線材の間にすき間を有し、前記速度変調コイルは、前記陰極線管の外部でかつ前記コイル状部の周囲に設けられていることを特徴とする(請求項6)。この構成によれば、速度変調効果を高めた陰極線管装置を得ることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をモノクローム陰極線管に適用した場合の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0017】
図1は、本発明の電子銃の側面図を示す。電子銃4は、カソード6を収容したカップ状のG1電極(制御電極)5、G1電極5と底部同士を向き合わせたカップ状のG2電極(加速電極)7、G2電極7の開口部と所定間隔をあけて配置された筒状のG3電極(前段陽極電極)8、G3電極8との間に主レンズを形成するG4電極(集束電極)9、G4電極9の先端部を包囲し、G4電極9との間でかつG5電極10の内部に電子レンズ21を形成するG5電極(陽極電極)10が順番に配列されたものである。
【0018】
G3電極8は、その内部に等電位空間を形成しており、その一部にコイル状部11が設けられる。コイル状部11は、G4電極9側の端部に電子レンズを形成するためのプレート状電極13が設けられ、他の端部はG2電極側端部12と接続される。コイル状部11を設ける位置は、速度変調磁界の浸透の点から速度変調コイルが装着される箇所が好ましい。したがって、G4電極9の一部をコイル状部としてもよい。しかし、G3電極8の方が電子ビームの速度が遅い分だけ速度変調の効果が高いので、G4電極9よりもG3電極8にコイル状部11を設けるのがより好ましい。
【0019】
コイル状部11は、線材を巻いてコイル状に成形した後、G2電極側端部12およびプレート状電極13と溶接される。また、G3電極全体を深絞りにより一体成形した後、その一部にらせん状に切り込みを入れ、G3電極をその長さ方向(管軸方向)に引っ張って伸ばすことにより、G2電極側端部12、コイル状部11、プレート状電極13を一体として形成してもよい。このようにすればコイル状部11を容易に形成することができる。
【0020】
図2に示すように、上記電子銃4がフェイスプレート2とファンネル3とからなる外囲器のネック部内に組み込まれ、陰極線管1を構成する。
【0021】
本発明を16〔cm〕(7インチ)、ネック管径φ29.1〔mm〕の投射管用モノクローム陰極線管に適用する場合の、コイル状部の好ましい一実施例を示す。コイル状部は、直径0.8〔mm〕のステンレス線からなり、長さが8.6〔mm〕、内径が10.4〔mm〕、ピッチが1.6〔mm〕である。
【0022】
コイル状部の隣り合う線材の間隔は、0〜2.5〔mm〕の範囲が好ましい。間隔が0〔mm〕のときには隣り合う線材が接触することになるが、このような場合においても、まったく継ぎ目のない場合、たとえば一枚の板材を深絞り加工したような場合と比べて、十分大きな変調磁界の透過効果が得られる。しかし、より大きな変調効果を得るためには、隣り合う線材の間にわずかでもすき間を設けることが好ましい。一方、隣り合う線材の間隔が2.5〔mm〕より大きいと外部電界の影響を受けやすくなる。
【0023】
図3は本発明の効果を示すものであり、変調磁界の周波数と磁界変調との関係を示す。ここに縦軸の「磁界変調」とは、蛍光体スクリーン面上に縦縞を映出させる画像信号である矩形信号を受像管に入力した場合において、速度変調をかけた時とかけない時とで、蛍光体スクリーン面上の縦線の幅がどれだけ変化したかを示すものであり(単位は〔mm〕)、この値が大きいほど磁界変調の効果が大きいことを示す。図3において、曲線aはコイル状部を設けない従来の電子銃の場合、曲線bはコイル状部を金属で形成した本発明に係る電子銃の場合、曲線cはコイル状部を導電性セラミックで形成した本発明に係る電子銃の場合をそれぞれ示す。図3に示すように、本発明は広い周波数帯域にわたって、従来例よりも大きな磁界変調効果が得られる。また、コイル状部を導電性セラミックで形成すると、金属で形成した場合より大きな磁界変調効果が得られることがわかる。
【0024】
図4は、図2と同様、本発明をモノクローム陰極線管用電子銃のG3電極8に適用した例を示す。この例では、コイル状部11のG4電極9側の端部にプレート状電極が設けられておらず、コイル状部11の端面自体が電極を形成し、G4電極9との間に電子レンズ21を形成している。
【0025】
以上、本発明をモノクローム陰極線管に適用した場合について説明したが、カラー陰極線管に適用してもよい。カラー陰極線管に適用する場合には、たとえば3本の電子ビームを包囲するG3電極にコイル状部を設ける。
【0026】
【発明の効果】
本発明によれば、陰極線管の外部からの変調磁界に対してこの磁界の透過を妨げることなく、所望の電子ビーム変調効果が得られる電子銃を備えた陰極線管を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電子銃の側面図
【図2】本発明に係る陰極線管の斜視図
【図3】本発明の磁界変調効果を示す図
【図4】本発明に係る電子銃の他の例を示す図
【図5】従来の陰極線管の電子銃付近の拡大断面図
【符号の説明】
1 陰極線管
8 G3電極
11 コイル状部
18 速度変調コイル
【発明の属する技術分野】
本発明は陰極線管の電子銃に関し、特に電子銃の高周波磁界透過特性を向上させるための技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図5は、投写型のモノクローム陰極線管の電子銃部分の構造例を示す。図5に示すように、ネック管14内に配置された電子銃にネック管14の外部から速度変調コイル18によって磁界変調をかけ、電子ビームのいわゆる速度変調を行って、フォーカス性能の向上を図っているのが現在の進んだディスプレイ技術である(特開平10−74465号公報)。すなわち、カソード6から出射した電子ビームが蛍光体スクリーン面に到達するまでに、偏向ヨーク16、コンバージェンスヨーク15、速度変調コイル18等により発生する交流磁界により、電子ビーム軌道が変調される。このうち偏向ヨーク16は、陰極線管のファンネルコーン部に装着され、交流磁界を発生して電子ビーム軌道を偏向することにより、陰極線管蛍光体スクリーン面を電子ビームで走査する。コンバージェンスヨーク15は、陰極線管のネック管14の外側に装着され、交流磁界を発生して電子ビーム軌道を変調することにより、ラスター歪みと色ズレを補正する。速度変調コイル18は、陰極線管のネック管14の外側に装着され、交流磁界を発生して電子ビームの走査速度を変調することにより、蛍光体スクリーン面上での高輝度部の低輝度部へのはみ出しを防ぎ、画像をシャープにする。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
電子ビームを変調するための交流磁界の周波数は映像周波数と同等のメガヘルツオーダに及ぶため、ステンレスなどの金属材料を深絞り加工等することにより形成された電子銃の金属部品によってこの交流磁界が減衰を受け、所望の電子ビーム変調を得られないという問題があった。
【0004】
図5に示すように、コンバージェンスヨーク15によって生成された交流磁界20のほとんどは、陽極電極10(G5電極)を通過する。偏向ヨーク16はファンネルコーン部に装着されており、偏向ヨーク16によって生成された交流磁界17の一部は陽極電極10を通過する。速度変調コイル18は前段陽極電極8(G3電極)と集束電極9(G4電極)の中間に配置されており、速度変調コイル18によって生成された交流磁界19のほとんどは前段陽極電極8と集束電極9を通過する。
【0005】
これらの金属電極を通して交流磁界をかけた際、金属電極部に渦電流が発生する。また、交流磁界の周波数が高くなればなるほど、この渦電流損は大きくなるため、高周波変調域において磁界による電子ビーム軌道の変調効果が減少する。例えばコンバージェンスヨーク15によって生成された交流磁界20により、陽極電極10に渦電流が発生し、コンバージェンスヨーク15による電子ビーム軌道変調効果が減少する。
【0006】
また、この渦電流損により、電極が発熱し、ネック管を破壊する場合もある。これらの交流磁界のロスや電極の発熱を防止するため、交流磁界の発生源と電子銃の金属電極との距離を大きくした設計とすれば、必然的に電子ビーム集束レンズと蛍光体スクリーン面との距離が大きくなり、電子レンズ倍率が大きくなるため、解像度が低下するという問題がある。とくに、高品位テレビジョン等の高偏向周波数、広信号帯域の画像表示装置では、これらの交流磁界のロスが大きくなるため、実使用上支障が生じるという問題がある。
【0007】
従来、深絞り状の金属部品をいくつかの部分に分割し、各々の部品の間に隙間を設け磁界の透過特性を改善しているものが提案されている(特開平8−115684号公報)が、組み立て精度の問題やコストが割高になるなどの問題があった。また、分割した各部品の機械的強度を保つために各部品をあまり小さくできないので、磁界透過特性が大幅に改善できないという問題があった。
【0008】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、真空外部からの変調磁界に対してこの磁界の透過を妨げることなく、所望の電子ビーム変調効果が得られる電子銃を備えた陰極線管を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の電子銃は、内部を電子ビームが通過する筒状の電極を備える電子銃であって、前記電極の筒状部の少なくとも一部が、線材をコイル状に巻いて形成したコイル状部を有し、前記コイル状部は隣り合う前記線材の間にすき間を有することを特徴とする(請求項1)。この構成によれば、コイル状部を構成する線材の間隙を変調磁界が通り抜けるので、渦電流損を低減することができる。
【0010】
また、カソード、G1電極、G2電極、G3電極、G4電極、G5電極が順次配列された電子銃であって、前記G3電極および前記G4電極のいずれかに前記コイル状部を有することが好ましい(請求項2)。この構成によれば、コイル状部の線材によって、G3電極およびG4電極のいずれかの内部に等電位空間を形成することができる。
【0011】
また、請求項1に記載の電子銃において、前記コイル状部が非金属材料からなることが好ましい(請求項3)。この構成によれば、変調磁界の透過効果をさらに向上させることができる。
【0012】
また、請求項1に記載の電子銃において、前記コイル状部は、隣り合う線材の間隔が2.5〔mm〕以下であることが好ましい(請求項4)。この構成によれば、外部電界の影響を低減できる。
【0014】
また、本発明の電子銃の製造方法は、請求項1に記載の電子銃の製造方法であって、前記線材を巻いてコイル状部を成形した後、前記コイル状部の端部を隣接する電極部品に溶接することを特徴とする(請求項5)。この方法によれば、コイル状部を容易に製作できる。
【0015】
また、本発明の陰極線管装置は、電子銃をネック部の内部に備える陰極線管と、速度変調コイルとを備えた陰極線管装置であって、前記電子銃は、カソード、G1電極、G2電極、G3電極、G4電極、G5電極が順次配列され、前記G3電極および前記G4電極のいずれかが線材をコイル状に巻いて形成したコイル状部を有し、前記コイル状部は隣り合う前記線材の間にすき間を有し、前記速度変調コイルは、前記陰極線管の外部でかつ前記コイル状部の周囲に設けられていることを特徴とする(請求項6)。この構成によれば、速度変調効果を高めた陰極線管装置を得ることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をモノクローム陰極線管に適用した場合の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0017】
図1は、本発明の電子銃の側面図を示す。電子銃4は、カソード6を収容したカップ状のG1電極(制御電極)5、G1電極5と底部同士を向き合わせたカップ状のG2電極(加速電極)7、G2電極7の開口部と所定間隔をあけて配置された筒状のG3電極(前段陽極電極)8、G3電極8との間に主レンズを形成するG4電極(集束電極)9、G4電極9の先端部を包囲し、G4電極9との間でかつG5電極10の内部に電子レンズ21を形成するG5電極(陽極電極)10が順番に配列されたものである。
【0018】
G3電極8は、その内部に等電位空間を形成しており、その一部にコイル状部11が設けられる。コイル状部11は、G4電極9側の端部に電子レンズを形成するためのプレート状電極13が設けられ、他の端部はG2電極側端部12と接続される。コイル状部11を設ける位置は、速度変調磁界の浸透の点から速度変調コイルが装着される箇所が好ましい。したがって、G4電極9の一部をコイル状部としてもよい。しかし、G3電極8の方が電子ビームの速度が遅い分だけ速度変調の効果が高いので、G4電極9よりもG3電極8にコイル状部11を設けるのがより好ましい。
【0019】
コイル状部11は、線材を巻いてコイル状に成形した後、G2電極側端部12およびプレート状電極13と溶接される。また、G3電極全体を深絞りにより一体成形した後、その一部にらせん状に切り込みを入れ、G3電極をその長さ方向(管軸方向)に引っ張って伸ばすことにより、G2電極側端部12、コイル状部11、プレート状電極13を一体として形成してもよい。このようにすればコイル状部11を容易に形成することができる。
【0020】
図2に示すように、上記電子銃4がフェイスプレート2とファンネル3とからなる外囲器のネック部内に組み込まれ、陰極線管1を構成する。
【0021】
本発明を16〔cm〕(7インチ)、ネック管径φ29.1〔mm〕の投射管用モノクローム陰極線管に適用する場合の、コイル状部の好ましい一実施例を示す。コイル状部は、直径0.8〔mm〕のステンレス線からなり、長さが8.6〔mm〕、内径が10.4〔mm〕、ピッチが1.6〔mm〕である。
【0022】
コイル状部の隣り合う線材の間隔は、0〜2.5〔mm〕の範囲が好ましい。間隔が0〔mm〕のときには隣り合う線材が接触することになるが、このような場合においても、まったく継ぎ目のない場合、たとえば一枚の板材を深絞り加工したような場合と比べて、十分大きな変調磁界の透過効果が得られる。しかし、より大きな変調効果を得るためには、隣り合う線材の間にわずかでもすき間を設けることが好ましい。一方、隣り合う線材の間隔が2.5〔mm〕より大きいと外部電界の影響を受けやすくなる。
【0023】
図3は本発明の効果を示すものであり、変調磁界の周波数と磁界変調との関係を示す。ここに縦軸の「磁界変調」とは、蛍光体スクリーン面上に縦縞を映出させる画像信号である矩形信号を受像管に入力した場合において、速度変調をかけた時とかけない時とで、蛍光体スクリーン面上の縦線の幅がどれだけ変化したかを示すものであり(単位は〔mm〕)、この値が大きいほど磁界変調の効果が大きいことを示す。図3において、曲線aはコイル状部を設けない従来の電子銃の場合、曲線bはコイル状部を金属で形成した本発明に係る電子銃の場合、曲線cはコイル状部を導電性セラミックで形成した本発明に係る電子銃の場合をそれぞれ示す。図3に示すように、本発明は広い周波数帯域にわたって、従来例よりも大きな磁界変調効果が得られる。また、コイル状部を導電性セラミックで形成すると、金属で形成した場合より大きな磁界変調効果が得られることがわかる。
【0024】
図4は、図2と同様、本発明をモノクローム陰極線管用電子銃のG3電極8に適用した例を示す。この例では、コイル状部11のG4電極9側の端部にプレート状電極が設けられておらず、コイル状部11の端面自体が電極を形成し、G4電極9との間に電子レンズ21を形成している。
【0025】
以上、本発明をモノクローム陰極線管に適用した場合について説明したが、カラー陰極線管に適用してもよい。カラー陰極線管に適用する場合には、たとえば3本の電子ビームを包囲するG3電極にコイル状部を設ける。
【0026】
【発明の効果】
本発明によれば、陰極線管の外部からの変調磁界に対してこの磁界の透過を妨げることなく、所望の電子ビーム変調効果が得られる電子銃を備えた陰極線管を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電子銃の側面図
【図2】本発明に係る陰極線管の斜視図
【図3】本発明の磁界変調効果を示す図
【図4】本発明に係る電子銃の他の例を示す図
【図5】従来の陰極線管の電子銃付近の拡大断面図
【符号の説明】
1 陰極線管
8 G3電極
11 コイル状部
18 速度変調コイル
Claims (6)
- 内部を電子ビームが通過する筒状の電極を備える電子銃であって、前記電極の筒状部の少なくとも一部が、線材をコイル状に巻いて形成したコイル状部を有し、前記コイル状部は隣り合う前記線材の間にすき間を有することを特徴とする電子銃。
- カソード、G1電極、G2電極、G3電極、G4電極、G5電極が順次配列された電子銃であって、前記G3電極および前記G4電極のいずれかに前記コイル状部を有する請求項1に記載の電子銃。
- 前記コイル状部が非金属材料からなる請求項1に記載の電子銃。
- 前記コイル状部は、隣り合う線材の間隔が2.5〔mm〕以下である請求項1に記載の電子銃。
- 請求項1に記載の電子銃の製造方法であって、前記線材を巻いてコイル状部を成形した後、前記コイル状部の端部を隣接する電極部品に溶接することを特徴とする電子銃の製造方法。
- 電子銃をネック部の内部に備える陰極線管と、速度変調コイルとを備えた陰極線管装置であって、
前記電子銃は、カソード、G1電極、G2電極、G3電極、G4電極、G5電極が順次配列され、前記G3電極および前記G4電極のいずれかが線材をコイル状に巻いて形成したコイル状部を有し、前記コイル状部は隣り合う前記線材の間にすき間を有し、
前記速度変調コイルは、前記陰極線管の外部でかつ前記コイル状部の周囲に設けられていることを特徴とする陰極線管装置。
Priority Applications (4)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
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