JP3545887B2 - ガンダイオード及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はガンダイオードに関し、特に車載用ミリ波レーダーの発振器等に用いられる、20GHz以上の高周波帯で発振するガリウム砒素から成るガンダイオードに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のガンダイオードを図2に示す。図2中、11はn型の導電性を示すガリウム砒素基板、12は第一のn+ 型ガリウム砒素層、13は活性層として機能するn型ガリウム砒素層、14は第二のn+ 型ガリウム砒素層、15はカソード電極、16はアノード電極である。
【0003】
このようなガンダイオードでは、活性層13を1.5μm前後の膜厚に設定すると共に、キャリア密度を1×1016atm・cm−3前後に設定する。さらに第一のn+ 型ガリウム砒素層12と第二のn+ 型ガリウム砒素層14のキャリア密度をオーミック抵抗とミリ波抵抗を低減させるために、1×1017〜1×1019atm・cm−3に設定する。カソード電極15とアノード電極16との間にしきい値(3.2kV/cm)以上の電界を印加し、伝導帯の谷間の電子遷移により負性抵抗特性(ガン効果)を発現させ、その不安定性を利用して、発振特性を持たせるものである。上記活性層13のキャリア密度と膜厚が発振周波数と発振効率を決定するパラメータとなる。
【0004】
このようなガンダイオードは図3に示すような工程で製造される。
まず、図3(a)に示すように、ガリウム砒素基板11上に、分子線気相成長法(MBE:Molecular Beam Epitaxy) や有機金属気相成長法(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition) 等で、第一のn+ 型ガリウム砒素層12を膜厚0.2μm〜1μm程度に、n型ガリウム砒素活性層13を膜厚1.5μm前後に、さらに第二のn+ 型ガリウム砒素層14を膜厚0.2μm〜1μm程度に順次積層して形成する。
【0005】
次に、図3(b)に示すように、第二のn+ 型ガリウム砒素層14上に、オーミック接触用の金ゲルマニウム層15aと金電極15bを真空蒸着等で1000〜5000Å形成し、さらに図3(c)に示すように、電解メッキで金15cを10μm前後付けてカソード電極15を形成する。
【0006】
次に、図3(d)に示すように、ガリウム砒素基板11を化学機械研磨等で10μm前後まで研磨する。
【0007】
次に、図3(e)に示すように、研磨後のガリウム砒素基板11側にアノード電極16として約φ50μmの金電極16を形成する。この際、まず、オーミック接触用金ゲルマニウム16aと金16bを真空蒸着等で1000〜5000Å形成する。エッチングまたはリフトオフにより、約φ50μmの電極16a、16bを形成し、膜厚約5μmのアノード金電極16cを電解メッキにて形成する。なお、オーミック性確保のためのアニールは金蒸着後または金メッキ後のいずれかに不活性ガス雰囲気下250℃前後で行う。
【0008】
次に、図3(f)に示すように、アノード金電極16cをマスクとしてガリウム砒素基板11と第一のn+ 型ガリウム砒素層12、活性層13、第二のn+ 型ガリウム砒素層14をエッチングし、各々のガンダイオードに分離する。
【0009】
最後に、カソード金電極15を切断することで図2の素子を得る。
【0010】
このようなガンダイオードチップは、銅・コバール合金とセラミックなどから成る容器(不図示)に窒素などの不活性な気体と共に封入し、1極を容器の中にマウントし、他極を金線または金リボンでキャップ側につないで使用する。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、この従来のガンダイオードでは、活性層13を形成するための基板11としてガリウム砒素を用いていることから、カソード電極15とアノード電極16の間のミリ波抵抗を低減し、かつ、素子の放熱性を確保するために、図3(d)に示すように、ガリウム砒素基板11の厚みを10μm前後に薄く研磨する必要があった。この研磨工程は、通常数cm角に基板11を切断して行われるもので、生産性が極めて低いという問題があった。すなわち、ガリウム砒素基板11は脆く、かつ、10μm前後の厚みのために、割れやすく歩留まりを大きく低下させていた。また、後工程でのハンドリングが困難で、容器等への実装時の生産性も大変低かった。さらに、ガリウム砒素基板11を10μmと薄く研磨しても、容器への実装時には、放熱対策としてダイアモンドのヒートシンクを用いる必要があり、素子の低コスト化が困難であった。
【0012】
また、ガリウム砒素基板11の両側にカソード電極15とアノード電極16が位置することから、電極15、16の形成工程が2回になり、製造工程が煩雑になるという問題があった。
【0013】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、活性層を形成するための基板として、ガリウム砒素基板を用いたときに発生する種々の問題を解消したガンダイオードおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に係るガンダイオードによれば、シリコン基板上に、第一のn+ 型ガリウム砒素層、n型ガリウム砒素層、第二のn+ 型ガリウム砒素層を順次積層して設け、この第一のn+ 型ガリウム砒素層にアノード電極を接続して設けると共に、第二のn+ 型ガリウム砒素層にカソード電極を接続して設けた。
【0015】
また、請求項4に係るガンダイオードの製造方法によれば、シリコン基板上に、ガリウム砒素層から成るバッファ層、第一のn+ 型ガリウム砒素層、n型ガリウム砒素層、第二のn+ 型ガリウム砒素層を順次形成し、前記n型ガリウム砒素層と第二のn+ 型ガリウム砒素層を柱状もしくは錐状にメサエッチングし、前記第一のn+ 型ガリウム砒素層と第二のn+ 型ガリウム砒素層にアノード電極とカソード電極を形成し、前記シリコン基板を前記柱状もしくは錐状部ごとに分離する。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づき詳細に説明する。
図1は、請求項1に係るガンダイオードの一実施形態を示す図であり、1はシリコン基板、2はガリウム砒素バッファ層、3は第一のn+ 型ガリウム砒素層、4はn型ガリウム砒素層から成る活性層、5は第二のn+ 型ガリウム砒素層、6はカソード電極、7はアノード電極である。
【0017】
前記シリコン基板1は、FZ法やCZ法などによって形成した単結晶シリコンを所定方位に沿って300μm程度の厚みに切り出したシリコン基板などから成る。このシリコンは、熱伝導率が1.5Wcm−1℃−1で、臨界剪断応力が1.850×102 N/cm2 であり、ガリウム砒素の熱伝導率が0.46Wcm−1℃−1で、臨界剪断応力が0.583×102 N/cm2 であるのと比較して、熱伝導率や臨界剪断応力などの特性面で極めて優れた特性を有する。シリコン基板1の導電型や電気伝導率には特に限定はない。
【0018】
このシリコン基板1上に、ガリウム砒素バッファ層2を形成する。このバッファ層2は、シリコン結晶とガリウム砒素結晶の格子定数の相異に基づく、ミスフィット転位を不連続にするために設ける。すなわち、シリコン結晶の格子定数が0.543nmであるのに対し、ガリウム砒素結晶の格子定数は0.565nmであり、格子定数が4%相違する。そこでこのバッファ層2を形成してシリコン基板とバッファ層の界面部分から発生するミスフィット転位をバッファ層2の側方に逃がすことによって、ミスフィット転位がバッファ層2の上層部に連続しないようにするために設ける。このバッファ層2は、0.2〜2μm程度の厚みに形成する。
【0019】
このバッファ層2上に、第一のn+ 型ガリウム砒素層3、n型ガリウム砒素活性層4、及び第二のn+ 型ガリウム砒素層5を形成する。第一のn+ 型ガリウム砒素層3と第二のn+ 型ガリウム砒素層5は、0. 2〜2μm程度の厚みに形成され、金ゲルマニウムなどから成る電極6、7とのオーミック接触を得やすくするために、1×1017〜1×1019atm・cm−3程度の電子密度にする。電子密度を制御するn型不純物には、錫(Sn)、硫黄(S)、セレン(Se)、テルル(Te)、シリコン(Si)などがある。n型ガリウム砒素活性層4は1.5μm前後の厚みに形成され、1×1016atm・cm−3前後の電子密度に設定される。この活性層4の膜厚Lと電子密度Nによって発振周波数と発振効率が決定し、これらを所望の値にするために最適化される。
【0020】
n型ガリウム砒素活性層4は、第一のn+ 型ガリウム砒素層3の周縁部が環状に露出するように形成され、この第一のn+ 型ガリウム砒素層3の環状の露出部にはアノード電極7が環状に形成されると共に、第二のn+ 型ガリウム砒素層5上には、カソード電極6が円状に形成される。このカソード電極6及びアノード電極7は、金ゲルマニウム6a、7a/金6b、7b上に金6c、7cを形成した構造を有する。
【0021】
次に、図1に基づいて、請求項4に係るガンダイオードの製造方法の一実施形態を説明する。まず、シリコン基板1上にMBE法やMOCVD法でガリウム砒素バッファ層2を0.2〜2μm成長する。この際、周知の2段階成長法により成長する。つまリ、850〜1000℃でシリコン基板1表面の自然酸化膜を除去し、400℃前後に冷却した後に非晶質ガリウム砒素層を100〜1000℃成膜する。その後500〜700℃に昇温しガリウム砒素層を成長する。
【0022】
このガリウム砒素バッファ層2を成長する時に、その転位密度を低減するために、850℃前後から400℃前後への温度サイクルアニールを数回導入してもよい。また、インジウムガリウム砒素(InGaAs)やアルミニウムガリウム砒素(AlGaAs)などの転位低減層を適宜導入してもよい。
【0023】
次に、アノード電極7を設けるための第一のn+ 型ガリウム砒素層3を0. 2〜2μm成長する。電子密度は金ゲルマニウム等とオーミック接触を得やすくするために1×1017〜1×1019atm・cm−3が望ましい。
【0024】
次に、n型ガリウム砒素活性層4を1.5μm前後成長する。この活性層4の電子密度は1×1016atm・cm−3前後で、膜厚と共に発振周波数と発振効率を所望の値にするために最適化される。
【0025】
次に、カソード電極6を設けるための、第二のn+ 型ガリウム砒素層5を0.2〜2μm成長する。電子密度は金ゲルマニウム等とオーミック接触を得やすくするために1×1017〜1×1019atm・cm−3が望ましい。
【0026】
次に、ガリウム砒素層エビタキシャル層3、4、5を、直径約50μmのメサ状にRIE(Reactive Ion Etching)等によりエッチングする。この際、アノード電極7を形成するための第一のn+ 型ガリウム砒素層3を残すため、予めエッチングレートを測定し、時間制御でエッチングを終了する。
【0027】
次に、カソード電極6とアノード電極7として金ゲルマニウムと金を真空蒸着等で1000〜5000Å形成する。周知のフォトリソグラフィーとエッチングやリフトオフ法により、所望の電極パターンを形成する。このように、基板1の同じ側にカソード電極6とアノード電極7を設けると、二つの電極を一回の工程で形成でき、製造工程を簡略化できるという利点があるが、n型のシリコン基板1を用いアノード電極7を基板1の裏面から取り出しても良い。なお、この場合は、ガリウム砒素バッファ層2は、n型にドーピングする必要がある。
【0028】
次に、カソード電極6とアノード電極7の表面部分に金6c、7cを電解メッキにより3〜10μm形成する。
【0029】
最後に、各ダイオード素子をシリコン基板1をダイシングすることで分離する。
【0030】
【発明の効果】
以上のように、請求項1に係るガンダイオードによれば、ガンダイオードを形成するための基板として、ガリウム砒素基板に比較して3倍程度の熱伝導率を有するシリコン基板を用いることから、従来のガンダイオードのようにガリウム砒素基板を研磨する必要がなく、プロセス途中で基板を数cm角に切断する必要がないため、シリコンの大口径基板のままで全プロセスを進めることができ、生産性と歩留まりが大幅に向上する。また、ガンダイオードを形成するシリコン基板をそのまま放熱板として用いることが可能で、高価なダイアモンドヒートシンクを用いる必要がない。
【0031】
また、請求項4に係るガンダイオードの製造方法によれば、シリコン基板上に、ガリウム砒素層から成るバッファ層、第一のn+ 型ガリウム砒素層、n型ガリウム砒素層、第二のn+ 型ガリウム砒素層を順次形成し、前記n型ガリウム砒素層と第二のn+ 型ガリウム砒素層を柱状もしくは錐状にエッチングし、前記第一のn+ 型ガリウム砒素層と第二のn+ 型ガリウム砒素層にカソード電極とアノード電極を形成し、前記シリコン基板を前記柱状もしくは錐状部ごとに分離することから、カソード電極とアノード電極を同−面側に同時に形成でき、製造プロセスを大幅に簡略化できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】請求項1に係るガンダイオードの一実施形態を示す図である。
【図2】従来のガンダイオードを示す断面図である。
【図3】従来のガンダイオードの製造工程を示す図である。
【符号の説明】
1:シリコン基板、2:バッファ層、3:第一のn+ 型ガリウム砒素層、4:活性層、5:第二のn+ 型ガリウム砒素層、6:カソード電極、7:アノード電極
Claims (4)
- シリコン基板上に、第一のn+ 型ガリウム砒素層、n型ガリウム砒素層、第二のn+ 型ガリウム砒素層を順次積層して設け、この第一のn+ 型ガリウム砒素層にアノード電極を接続して設けると共に、第二のn+ 型ガリウム砒素層にカソード電極を接続して設けたガンダイオード。
- シリコン基板上に、第一のn+ 型ガリウム砒素層を設け、この第一のn+ 型ガリウム砒素層上に、この第一のn+ 型ガリウム砒素層が露出するようにn型ガリウム砒素層、第二のn+ 型ガリウム砒素層を積層して設け、前記第一のn+ 型ガリウム砒素層の露出部分にアノード電極を接続して設けると共に、第二のn+ 型ガリウム砒素層上にカソード電極を接続して設けた請求項1に記載のガンダイオード。
- 前記シリコン基板と第一のn+ 型ガリウム砒素層との間に、ガリウム砒素から成るバッファ層を設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のガンダイオード。
- シリコン基板上に、ガリウム砒素層から成るバッファ層、第一のn+ 型ガリウム砒素層、n型ガリウム砒素層、第二のn+ 型ガリウム砒素層を順次形成し、前記n型ガリウム砒素層と第二のn+ 型ガリウム砒素層を柱状もしくは錐状にエッチングし、前記第一のn+ 型ガリウム砒素層と第二のn+ 型ガリウム砒素層にアノード電極とカソード電極を形成し、前記シリコン基板を前記柱状もしくは錐状部ごとに分離するガンダイオードの製造方法。
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