JP3544389B2 - 安定なポジ型ホトレジスト組成物 - Google Patents
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【産業上の利用分野】
本発明は新規なポジ型ホトレジスト組成物、さらに詳しくは、半導体デバイス、TFT(薄膜トランジスタ)、液晶表示素子などの製造に有用な、シリコン酸化膜やシリコン窒化膜などを有する基板との密着性に優れたレジストパターンを形成しうるとともに、昇華物によるエッチング不良がなく、感度の経時変化及び残膜率の経時変化の少ないポジ型ホトレジスト組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ICやLSIなどの半導体デバイスやTFT、あるいは液晶表示素子などの製造プロセスにおいては、ホトエッチング法による微細加工として、シリコン酸化膜やシリコン窒化膜を有する基板やAl、Ta、Mo、Crなどの金属基板上にホトレジスト組成物の薄膜を形成し、その上にマスクパターンを介し、紫外線などの活性光線を照射後、現像して得られたレジストパターンを保護膜として該基板をエッチングするという方法がとられている。そして、この方法において用いられるホトレジスト組成物としては、被膜形成用のアルカリ可溶性樹脂に、キノンジアジド基含有化合物、特に、キノンジアジド基含有ベンゾフェノン系化合物から成る感光成分を組み合わせたポジ型ホトレジスト組成物が好適であることが知られている(例えば、米国特許第4377631号明細書、特開昭62−35349号公報、特開平1−142548号公報、特開平1−179147号公報)。
【0003】
ところで、半導体デバイスやTFTなどの製造におけるホトエッチング法では、シリコン酸化膜やシリコン窒化膜を有する基板やタンタルなどの金属基板を精度よくエッチングするためにレジストパターンと該基板との密着性が重要であり、光重合タイプのネガ型感光性樹脂組成物については、ベンゾイミダゾールを配合することで金属基板に対して密着性を向上させうることが知られている(米国特許第3622334号明細書)。
【0004】
他方、ポリベンゾオキサゾールの前駆体に、ポリベンゾイミダゾールから成る有機溶媒可溶ポリマーと、感光性ジアゾキノン化合物とを配合して、シリコン基板への密着性を向上させたポジ型感光性樹脂組成物も知られている(特開平4−46345号公報)。しかしながら、バインダーとしてアルカリ可溶性ノボラック型樹脂を用いたポジ型ホトレジストについて、密着性向上の作用を有する化合物は、まだ知られていない。
【0005】
そこで、出願人は、先に密着性向上を目的とし、アルカリ可溶性ノボラック型樹脂とキノンジアジド基含有化合物からなる基本組成に(ポリ)ベンゾイミダゾール類を含有させたポジ型ホトレジスト組成物を提案した(特開平6−27657号公報)。
しかしながら、この組成物は、密着性は良好なものの、(ポリ)ベンゾイミダゾール類が現像後のポストベーク時に昇華し、処理室内壁に結晶状態で付着し、この付着物が被処理基板上に落下するために、エッチング時にエッチング不良を起こすという新たな問題を生じる。
【0006】
また、近年、製造コストの問題から、現像液の交換を控える循環現像処理が行われているが、このような循環現像処理においては、感度がレジスト調製時の感度から処理時間の長さとともに変化し、形成されるレジストパターンにも狂いが生じ、所望のパターンが得られなくなる。このような経時的な問題は感度だけではなく、残膜率についても同様である。従って、レジスト調製時の感度が保管などの時間的経過によって変化しにくい、すなわち感度の経時変化の少ない、また残膜率の経時変化の少ないレジスト組成物が強く要望されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような事情の下、半導体デバイスや液晶デバイスなどの製造に有効な、シリコン酸化膜やシリコン窒化膜を有する基板との密着性が優れたレジストパターンを形成しうるとともに、昇華物によるエッチング不良がなく、感度及び残膜率の経時変化の少ないポジ型ホトレジスト組成物を提供することを目的としてなされたものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、バインダーとしてアルカリ可溶性樹脂を用いたポジ型ホトレジスト組成物について鋭意研究を重ねた結果、アルカリ可溶性樹脂とキノンジアジド基含有化合物に特定の含窒素複素環化合物を配合することにより、その目的を達成しうることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、(A)アルカリ可溶性樹脂、(B)キノンジアジド基含有化合物及び(C)N‐(2‐ヒドロキシエチル)ピペリジンを含有することを特徴とする安定なポジ型ホトレジスト組成物を提供するものである。
【0010】
本発明組成物において(A)成分として用いられるアルカリ可溶性樹脂については、バインダーすなわち被膜形成用物質として作用するものであれば特に制限はなく、従来ポジ型ホトレジスト組成物において、被膜形成用物質として慣用されているアルカリ可溶性樹脂、例えばフェノール、クレゾールやキシレノールなどの芳香族ヒドロキシ化合物とホルムアルデヒドのようなアルデヒド類とを酸性触媒の存在下に縮合させたものや、ポリヒドロキシスチレン及びその誘導体を挙げることができる。
【0011】
本発明組成物において(B)成分として用いられるキノンジアジド基含有化合物については、感光性成分であれば特に制限はなく、例えば2,3,4‐トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4′‐テトラヒドロキシベンゾフェノンなどのポリヒドロキシベンゾフェノンとナフトキノン‐1,2‐ジアジド‐5‐スルホン酸又はナフトキノン‐1,2‐ジアジド‐4‐スルホン酸との完全エステル化物や部分エステル化物を始め、オルトベンゾキノンジアジド、オルトナフトキノンジアジド、オルトアントラキノンジアジド又はオルトナフトキノンジアジドスルホン酸エステル類のようなこれらの核置換誘導体、さらにはオルトキノンジアジドスルホニルクロリドと水酸基又はアミノ基をもつ化合物、例えばフェノール、p‐メトキシフェノール、ジメチルフェノール、ヒドロキノン、ビスフェノールA、ナフトール、ピロカテコール、ピロガロール、ピロガロールモノメチルエーテル、ピロガロール‐1,3‐ジメチルエーテル、没食子酸、水酸基を一部残してエステル化又はエーテル化された没食子酸、アニリン、p‐アミノジフェニルアミンなどとの反応生成物などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0012】
キノンジアジド基含有化合物のうち、前記完全エステル化物や部分エステル化物は、例えば前記ポリヒドロキシベンゾフェノンと、ナフトキノン‐1,2‐ジアジド‐5‐スルホニルクロリド又はナフトキノン‐1,2‐ジアジド‐4‐スルホニルクロリドとをジオキサンなどの適当な溶媒中において、トリエタノールアミン、炭酸アルカリ、炭酸水素アルカリなどのアルカリの存在下に縮合させることにより製造することができる。
【0013】
本発明組成物においては、(C)成分として、N‐(2‐ヒドロキシエチル)ピペリジンを用いることが必要である。
【0014】
本発明組成物における(A)成分のアルカリ可溶性樹脂と(B)成分のキノンジアジド基含有化合物との割合は、従来ポジ型ホトレジスト組成物において慣用されている範囲内であればよく、前者100重量部に対し、後者5〜200重量 部、好ましくは20〜100重量部の範囲内である。
【0015】
このアルカリ可溶性樹脂が多すぎると画像の忠実性に劣り、転写性が低下するし、少なすぎるとレジスト膜の均質性が悪くなり、解像力も低下する傾向がみられる。
【0016】
また、(C)成分の含有割合は、本発明組成物の全固形分に基づき、0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜3重量%の範囲で選ばれる。この量が0.1重量%未満では密着性増強効果が十分に発揮されないし、10重量%を超えると感度の経時変化や密着性の経時変化が大きくなるため好ましくない。
【0017】
本発明組成物には、さらに必要に応じて相容性のある添加物、例えばレジスト膜の性能などを改良するための樹脂、可塑剤、安定剤あるいは現像した像をより一層見やすくするための着色料、またより増感効果を向上させるための増感剤などの慣用されている成分を添加含有させることができる。
【0018】
本発明組成物は、上記(A)成分と(B)成分と(C)成分と所望に応じて用いられる各種添加成分とを、適当な溶剤に溶解した溶液の形で用いるのが好ましい。
【0019】
このような溶剤の例としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソアミルケトン、1,1,1‐トリメチルアセトンなどのケトン類や、エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノアセテート、あるいはこれらのモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル又はモノフェニルエーテルなどの多価アルコール類及びその誘導体や、ジオキサンのような環式エーテル類や、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、3‐メトキシプロピオン酸メチル、3‐エトキシプロピオン酸エチルなどのエステル類を挙げることができる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0020】
本発明組成物の好適な使用方法の1例を示すと、前記各成分を適当な溶剤に溶解した溶液を塗布液として用い、該塗布液をシリコン酸化膜やシリコン窒化膜などを有する基板上にスピンナーなどで塗布し、乾燥してホトレジスト層を設け、これを紫外線を発光する光源、例えば低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、アーク灯、キセノンランプなどを用い所要のマスクパターンを介して露光するか、あるいは電子線を走査しながら照射する。
【0021】
次に、これを現像液、例えば1〜10重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液のような弱アルカリ性水溶液に浸せきすると、露光によって可溶化した部分が選択的に溶解除去されて、マスクパターンに忠実な画像を得ることができる。次いで得られたレジストパターンをマスクとして露出した基板を公知のウエットエッチングやドライエッチングによりエッチングしたのち、レジストパターンを剥離することにより、回路パターンが形成される。
【0022】
【発明の効果】
本発明のポジ型ホトレジスト組成物は、シリコン酸化膜やシリコン窒化膜などを有する基板との密着性に優れたレジストパターンを形成しうるとともに、昇華物によるエッチング不良がなく、感度の経時変化及び残膜率の経時変化が少ないという顕著な効果を奏する。
従って、本発明のポジ型ホトレジスト組成物は、半導体デバイス、TFT、液晶表示素子などの製造に有用である。
【0023】
【実施例】
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、ポジ型ホトレジスト組成物の諸物性は次のとおり評価した。
【0024】
(1)密着性:
ポジ型ホトレジスト組成物をシリコン酸化膜が形成されたガラス基板上に膜厚1.6μmとなるようにスピンナーで塗布したのち、ホットプレート上で110℃で90秒間プリベークし、次いでテストマスクパターンを介してコンタクト露光装置PLA−500F(キヤノン社製)を用いて露光を行った。
次いで、2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液中に65秒間浸せきすることにより、露光部分を除去し、シリコン酸化膜上にライン幅が10μmのレジストパターンを形成したのち、ホットプレート上で120℃で5分間ポストベークした。次いで、露出したシリコン酸化膜を上記レジストパターンをマスクとしてエッチング液〔橋本化成社製、高純度バッファードフッ酸(フッ酸とフッ化アンモニウムの容量比1:6の混合物の7%水溶液)〕中に10分間浸せきすることによりシリコン酸化物層をエッチングした。この試料について、電子顕微鏡で観察し、レジストパターンとシリコン酸化物層との密着性を以下の基準で評価した。
○:0≦x≦5
なお、x(μm)=A−B
A:エッチングマスクとしたレジストパターンのライン幅(10μm)
B:エッチング処理後に残存するレジストパターン下のシリコン酸化膜幅
xが小さいほどレジストパターンとシリコン酸化膜の密着性が良好であることを意味する。
【0025】
(2)耐昇華性:
上記(1)のポストベークまでの操作を複数回繰り返し、処理室内壁に昇華物が付着していないものを○、昇華物が付着しているものを×として評価した。
【0026】
(3)感度の経時変化:
ポジ型ホトレジスト組成物の調製時の感度をAとし、このホトレジスト組成物を密閉した褐色瓶中で40℃で2週間保管したあとの感度をBとして、感度変化率を[|B−A|/A]×100で表わした。
なお、感度は、上記(1)において、コンタクト露光装置PLA−500F(キヤノン社製)を0.1秒から0.01秒間隔で露光したのち、2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で65秒間現像したとき、10μmのマスクパターンのパターニングのために要する最小露光時間をミリ秒(ms)単位で測定して求めた。
【0027】
(4)残膜率の経時変化:
ポジ型ホトレジスト組成物の調製時の残膜率をCとし、このホトレジスト組成物を密閉した褐色瓶中で40℃で2週間保管したあとの残膜率をDとして、感度変化率を[|D−C|/C]×100で表わした。
なお、残膜率とは、ポジ型ホトレジスト層の未露光部の現像前の膜厚に対する現像後の膜厚の割合である。
【0028】
実施例
m‐クレゾールとp‐クレゾールとを重量比60:40で混合し、これにホルマリンを加え、シュウ酸触媒を用いて常法により製造したクレゾールノボラック樹脂(重量平均分子量5000)100重量部、2,3,4,4′‐テトラヒドロキシベンゾフェノン1モルとナフトキノン‐1,2‐ジアジド‐5‐スルホニルクロリド2.5モルとのエステル化反応生成物25重量部及びN‐(2‐ヒドロキシエチル)ピペリジン1.25重量部を乳酸エチル360重量部と酢酸ブチル40重量部の混合溶剤に溶解したのち、このものを孔径0.2μmのメンブランフィルターを用いてろ過し、ポジ型ホトレジスト組成物を調製した。
このものについての密着性、耐昇華性、感度の経時変化、残膜率の経時変化の物性を表1に示す。
【0029】
比較例1
N‐(2‐ヒドロキシエチル)ピペリジンをN‐メチルピペリジンに代えた以外は実施例と同様にしてポジ型ホトレジスト組成物を調製した。
このものについての密着性、耐昇華性、感度の経時変化、残膜率の経時変化の物性を表1に示す。
【0030】
比較例2〜4
N‐(2‐ヒドロキシエチル)ピペリジンとその量を、ベンゾイミダゾール1.0重量部、ジエチルアニリン1.25重量部及びトリエチルアミン1.25重量部にそれぞれ代えた以外は実施例と同様にしてポジ型ホトレジスト組成物を調製した。
このものについての密着性、耐昇華性、感度の経時変化、残膜率の経時変化の物性を表1に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
これより、比較例のものはいずれも感度及び残膜率の各経時変化が大きく、中には耐昇華性が不良のもの(比較例2)もあるのに対し、本発明の実施例のものは密着性をあまりそこなうことなく、耐昇華性が良好で、感度及び残膜率の各経時変化も小さいことが分る。
Claims (2)
- (A)アルカリ可溶性樹脂、(B)キノンジアジド基含有化合物及び(C)N‐(2‐ヒドロキシエチル)ピペリジンを含有することを特徴とする安定なポジ型ホトレジスト組成物。
- (C)成分の含有量が組成物の全固形分に基づき、0.1〜10重量%である請求項1記載のポジ型ホトレジスト組成物。
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JP12637394A JP3544389B2 (ja) | 1994-06-08 | 1994-06-08 | 安定なポジ型ホトレジスト組成物 |
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JPH07333841A JPH07333841A (ja) | 1995-12-22 |
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