JP3543972B2 - ポリエステルフィルム - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は熱可塑性ポリエステルフィルムに関するものであり、さらに詳しくは、特定の結晶構造を有する酸化ジルコニウム粒子を熱可塑性ポリエステルに配合した耐摩耗性に優れたポリエステルフィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に熱可塑性ポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレートは優れた力学特性、化学特性を有しており、フィルム、繊維などの成形品として広く用いられている。
【0003】
しかしながら、ポリエステルは成形品に加工する際に、滑り性不足のため生産性が低下するという問題があった。このような問題を改善する方法として、従来よりポリエステル中に不活性粒子を分散せしめ、成形品の表面に凹凸を付与する方法が行われている。
【0004】
例えば、特開昭52−86471号公報では比表面積の規定された無機粒子、特開昭59−171623号公報では0.1〜1μmの球形のコロイダルシリカを用いる方法が提案されている。しかし、一般に不活性粒子は該ポリエステルとの親和性に欠けるために、これらの方法は滑り性の問題解決には効果があるが、成形品とした場合には耐摩耗性、耐スクラッチ性を満足すべきレベルとすることができない。
【0005】
成形品、例えば磁気テープ用フィルムの耐摩耗性が低い場合、磁気テープの製造工程中にフィルムの摩耗粉が発生しやすくなり、磁性層を塗布する工程で塗布抜けが生じ、その結果、磁気記録の抜け(ドロップ・アウト)などを引き起こす。また、磁気テープを使用する際は多くの場合、記録、再生機器などと接触しながら走行させるため、接触時に生じる摩耗粉が磁性体上に付着し、記録、再生時に磁気記録の抜け(ドロップ・アウト)を生じる。さらに、磁性層を塗布する工程でのカレンダー処理における削れ物の発生は、磁気記録フィルムを製造するうえで作業性を著しく悪化させる。
【0006】
そして成形品、例えば磁気テープ用フィルムの耐スクラッチ性が低い場合、磁気テープの製造工程中で異物が発生したときに、容易にフィルム表面上に傷を作り、その結果、磁気記録の抜け(ドロップ・アウト)などを引き起こしたり、磁気テープ高速走行使用時にフィルム表面に容易に傷を作る。
【0007】
すなわち磁気テープ用フィルムは、磁気テープ製造工程中においても、また磁気テープとして使用する場合においても、耐摩耗性および耐スクラッチ性を有することが必要である。
【0008】
従来からこの問題を解決すべく、不活性粒子の表面処理の検討がなされており、例えば、特開昭63−221158号公報や特開昭63−280763号公報(コロイダルシリカ粒子表面をグリコール基で改質する)、特開昭63−312345号公報(コロイダルシリカ粒子表面をカップリング剤で改質する)、特開昭62−235353号公報(炭酸カルシウム粒子をリン化合物で表面処理する)ことなどが提案されている。また、特殊な粒子を使用する方法として、例えば、特開昭62−172031号公報(シリコン粒子)、特開平2−129230号公報(デルタ型酸化アルミニウム粒子)などが提案されている。
【0009】
しかしながら、その一方で、磁気テープ製品の高性能化や製造工程の生産性向上のために磁気テープ用フィルムの使用される条件は、よりいっそう苛酷なものとなってきている。このため、上述の種々の方法によって得られるフィルムの耐摩耗性と耐スクラッチ性も十分とはいえなくなってきた。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は前記した従来技術の問題点を解決し、耐摩耗性に優れた熱可塑性ポリエステルフィルムを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前記した本発明の目的は、熱可塑性ポリエステルと単斜晶が50wt%以上である酸化ジルコニウム粒子とからなる熱可塑性ポリエステルフィルムによって達成できる。
【0012】
本発明における熱可塑性ポリエステルとしては、フィルムを成形しうるものならどの様なものでもよく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート、ポリエチレン−1,2−ビス(2−クロロフェノキシ)エタン−4,4′−ジカルボキシレートなどが好ましく挙げられるが、ポリエチレンテレフタレートあるいはポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートが特に好ましい。
【0013】
これらのポリエステルには、共重合成分として、アジピン酸、イソフタル酸、セバシン酸、フタル酸、4,4′−ジフェニルジカルボン酸などのジカルボン酸およびそのエステル形成性誘導体、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリプロピレングリコールなどのジオキシ化合物、p−(β−オキシエトキシ)安息香酸などのオキシカルボン酸およびそのエステル形成性誘導体などを共重合してもかまわない。
【0014】
本発明における酸化ジルコニウム粒子は、通常、天然に産するジルコニウム鉱石、すなわちジルコン砂やバッデリ石などから得ることができる。その製法は、例えば上述のジルコン砂を溶融し、オキシ塩化ジルコニウムを経て、水酸化ジルコニウムの焼成により得る方法などが挙げられる。
【0015】
このようにして得られる酸化ジルコニウム粒子は、製造条件により種々の形態をとり、単斜晶、正方晶、立方晶、菱面体結晶、斜方晶およびこれらの結晶相が混在するものなどが知られている。また一般には、安定化剤として、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化イットリウムなどを含む、酸化ジルコニウム粒子も使用されている。
【0016】
本発明における酸化ジルコニウム粒子は、その結晶構造が単斜晶のものである。単斜晶と正方晶は混在してもよい。
【0017】
このような酸化ジルコニウム粒子の結晶構造は、X線回折法において、回折X線の現われる回折角2θの値から同定できる。各結晶構造に対して、標準となる2θ値の組は複数知られているが、例えば単斜晶の場合の主な2θ値は24.0、24.4、28.2、31.5、34.2、34.4、35.3、40.7、49.3、50.1、50.6、54.1、55.4であり、正方晶では29.8、34.0、34.8、49.5、50.1、59.4(度)などである。
【0018】
このような酸化ジルコニウム粒子は、例えば上述の製造方法のうちの湿式法において、焼成温度を約500℃から2000℃とすることにより得られる。
【0019】
フィルムにした場合に耐スクラッチ性が良好であるためには、単斜晶以外の結晶構造の混在量が50wt%未満であり、好ましくは30wt%未満である。
【0020】
本発明で使用する酸化ジルコニウム粒子の添加量としては、熱可塑性ポリエステル100重量部に対して、0.01〜30重量部が好ましく、0.05〜10重量部が特に好ましい。
【0021】
本発明で使用する酸化ジルコニウム粒子の平均径は、成型時、例えばフィルム製造時にフィルム破れが少なく、またフィルム表面粗さが小さく、電気特性が良好な0.005〜3μm、特に0.005〜0.3μmが好ましい。
【0022】
本発明の熱可塑性ポリエステルフィルムは、例えば酸化ジルコニウム粒子を目的とするポリエステルの出発原料であるグリコール溶媒で混合撹拌して分散スラリーとし、熱可塑性ポリエステルの反応系に添加する製造方法などで得ることができる。なお、この際の処理方法は撹拌によらずとも、例えば超音波などによっても構わなく、またサンドグラインダなどの媒体型ミルを用いても構わない。
【0023】
ポリエステルへの配合にあたっては、上記した重合反応系に直接添加する方法以外にも、例えば酸化ジルコニウム粒子を溶融状態のポリエステルへ練り込む方法などでも可能である。前者の重合反応系に添加する際の添加時期は任意であるが、エステル交換反応前から重縮合反応の減圧開始前までの間が好ましい。後者の練り込みの場合は、粒子を乾燥してポリエステルに練り込む方法でも、スラリー状態で減圧しながら直接練り込む方法でも構わない。なお、分散性を考えると高剪断力の練り込み機にスラリー状態で減圧しながら直接練り込む方が好ましい。
【0024】
また、フイルムの走行性を得るために、本発明の酸化ジルコニウム粒子以外の粒子を併用してもよい。
【0025】
このような粒子としては、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化ケイ素、リン酸カルシウムなどの無機粒子、シリコーン、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、エチルビニルベンゼン−ジビニルベンゼン共重合体などの架橋高分子粒子、あるいはアルカリ金属およびアルカリ土類金属の少なくとも一種とリンを構成成分の一部とするポリエステル重合反応系で析出させた、いわゆる内部粒子などの不活性粒子が挙げられる。
【0026】
これらの粒子の粒子径は本発明の酸化ジルコニウム粒子よりも大きいことが好ましく、0.1〜2μmが好ましい。また、添加量は熱可塑性ポリエステル100重量部に対して0.005〜10重量部が好ましい。
【0027】
【実施例】
以下、本発明を実施例により、さらに詳細に説明する。なお、実施例中の物性は次のように測定した。
【0028】
(1) 粒子の平均粒子径の評価
粒子をポリエステルに配合せしめ、0.2μm厚みの超薄切片にカッティング後、透過型電子顕微鏡で観察し、粒子1000個の面積平均径(μm)で評価した。
【0029】
(2) 酸化ジルコニウム粒子の結晶構造の分析
X線回折測定(広角X線回折法)により分析した。X線発生装置は理学電機社製RU−200Bを使用し、X線源はCuKα線とした。ゴニオメーターは理学電機社製2155D型、計数記録装置は理学電機社製RAD−B型を使用した。得られた回折パターンを、JCPDS標準データを基準として解析し、結晶構造を決定した。
【0030】
(3) 耐摩耗性の評価
(a) ガイドロール汚れ
得られたポリエステル組成物を実施例に示す方法で二軸延伸フィルムとし、テープ走行性試験機TBT−300型((株)横浜システム研究所製)を使用し、25℃、50%RH雰囲気で1000回繰り返し走行させた後、ガイドロール表面に発生する白粉量を目視にて判定する。ここで、ガイド径は6mmφであり、ガイド材質はSUS27(表面粗度0.2S)、巻き付け角は180°、走行速度は6.0cm/秒である。次のようにランク付けした。
1級:白粉の発生が非常に少なく、目的を達成する。
2級:白粉の発生が少なく、目的を達成する。
3級:白粉の発生がやや多く、目的を達成しない。
4級:白粉の発生が非常に多く、目的を達成しない。
【0031】
(b) カレンダー汚れ
磁性層を塗布したテープを小型テストカレンダー装置(スチールロール、ナイロンロール、5段式、ナイロンロールがベースフィルム面に接する)で、温度:70℃、線圧:200kg/cmでカレンダー処理する。上記処理を延べ15000mにわたって続けた後、この処理によって発生したナイロンロールに付着した白粉を観察し、次のランクづけを行なう。
1級:白粉がほとんど付着していない。
2級:わずかに白粉が付着するが、加工工程上、製品性能上のトラブルに至らない。
3級:白粉の付着が多く、加工工程上、製品性能上のトラブルになり使用不可となった。
【0032】
(C) 耐スクラッチ性
フイルムを幅1/2インチのテープ状にスリットしたものをテープ走行性試験機を使用して、ガイドピン(表面粗さ:Raで0.1μm)上を走行させる。(走行速度1000m/分、走行回数15パス、巻き付け角60度、走行張力65g)。
この時、フイルムに入った傷を顕微鏡で観察し、幅2.5μm以上の傷がテープ幅あたり2本未満はA級、2本以上3本未満はB級、3本以上10本未満はC級、10本以上はD級とした。B級以上を合格とした。
【0033】
(4) 表面凹凸の評価
得られたポリエステル組成物を通常の方法で二軸延伸フィルムとし、JISB−0601に準じ、サーフコム表面粗さ計を用い、針径2μm、荷重70mg、測定基準長0.25mm、カットオフ0.08mmの条件下で中心線平均粗さ(Ra)を測定した。
【0034】
(5) ポリマーの固有粘度
O−クロロフェノールを溶媒として25℃で測定した。
【0035】
実施例1
X線回折パターンが図1に示すとおりであり、結晶構造が単斜晶である酸化ジルコニウム粒子を10重量部、エチレングリコール90重量部を混合して、常温下1時間ディゾルバーで撹拌処理し、酸化ジルコニウム/エチレングリコールスラリー(A)を得た。
【0036】
他方、ジメチルテレフタレート100重量部、エチレングリコール64重量部に触媒として酢酸マグネシウム0.06重量部を加えてエステル交換反応を行なった後、反応生成物に先に調製したスラリー(A)2重量部と触媒の酸化アンチモン0.03重量部、および耐熱安定剤としてトリメチルホスフェート0.03重量部を加え、重縮合反応を行ない、固有粘度0.615のポリエチレンテレフタレート組成物を得た。透過電子顕微鏡による平均粒子径は0.15μmであった。
【0037】
比較例1〜4
酸化ジルコニウム粒子以外の粒子を用いる以外は、実施例1と同様にしてポリエチレンテレフタレートを重合し、さらにフィルムの表面粗さ、耐摩耗性評価結果を表3、4に示した。この表からわかるように耐摩耗性を満足するものは得られなかった。
【0038】
実施例2〜6
酸化ジルコニウム粒子の結晶構造、粒子径、添加量あるいは併用粒子を変える以外は、実施例1と同様にしてポリエチレンテレフタレートを重合し、さらにその二軸延伸フィルムを得た。
【0039】
【発明の効果】
本発明の熱可塑性ポリエステルフィルムは、耐摩耗性に有効に効果を発揮するが、特に繰り返し摩擦使用される磁気テープに好適である。
【0040】
図2に、実施例2で使用した酸化ジルコニウム粒子のX線回折パターンを示した。
【0041】
比較例1〜4
酸化ジルコニウム粒子以外の粒子を用いる以外は、実施例1と同様にしてポリエチレンテレフタレートを重合し、さらにフィルムの表面粗さ、耐摩耗性評価結果を表4、5に示した。この表からわかるように耐摩耗性を満足するものは得られなかった。
【0042】
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【0043】
【発明の効果】
本発明のポリエステル組成物は、繊維、フィルムあるいはその他の成形品にした場合、耐摩耗性に有効に効果を発揮するが、特に繰り返し摩擦使用される磁気テープに好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で使用した酸化ジルコニウム粒子のX線回折パターンを示す。
【図2】実施例2で使用した酸化ジルコニウム粒子のX線回折パターンを示す。
【産業上の利用分野】
本発明は熱可塑性ポリエステルフィルムに関するものであり、さらに詳しくは、特定の結晶構造を有する酸化ジルコニウム粒子を熱可塑性ポリエステルに配合した耐摩耗性に優れたポリエステルフィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に熱可塑性ポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレートは優れた力学特性、化学特性を有しており、フィルム、繊維などの成形品として広く用いられている。
【0003】
しかしながら、ポリエステルは成形品に加工する際に、滑り性不足のため生産性が低下するという問題があった。このような問題を改善する方法として、従来よりポリエステル中に不活性粒子を分散せしめ、成形品の表面に凹凸を付与する方法が行われている。
【0004】
例えば、特開昭52−86471号公報では比表面積の規定された無機粒子、特開昭59−171623号公報では0.1〜1μmの球形のコロイダルシリカを用いる方法が提案されている。しかし、一般に不活性粒子は該ポリエステルとの親和性に欠けるために、これらの方法は滑り性の問題解決には効果があるが、成形品とした場合には耐摩耗性、耐スクラッチ性を満足すべきレベルとすることができない。
【0005】
成形品、例えば磁気テープ用フィルムの耐摩耗性が低い場合、磁気テープの製造工程中にフィルムの摩耗粉が発生しやすくなり、磁性層を塗布する工程で塗布抜けが生じ、その結果、磁気記録の抜け(ドロップ・アウト)などを引き起こす。また、磁気テープを使用する際は多くの場合、記録、再生機器などと接触しながら走行させるため、接触時に生じる摩耗粉が磁性体上に付着し、記録、再生時に磁気記録の抜け(ドロップ・アウト)を生じる。さらに、磁性層を塗布する工程でのカレンダー処理における削れ物の発生は、磁気記録フィルムを製造するうえで作業性を著しく悪化させる。
【0006】
そして成形品、例えば磁気テープ用フィルムの耐スクラッチ性が低い場合、磁気テープの製造工程中で異物が発生したときに、容易にフィルム表面上に傷を作り、その結果、磁気記録の抜け(ドロップ・アウト)などを引き起こしたり、磁気テープ高速走行使用時にフィルム表面に容易に傷を作る。
【0007】
すなわち磁気テープ用フィルムは、磁気テープ製造工程中においても、また磁気テープとして使用する場合においても、耐摩耗性および耐スクラッチ性を有することが必要である。
【0008】
従来からこの問題を解決すべく、不活性粒子の表面処理の検討がなされており、例えば、特開昭63−221158号公報や特開昭63−280763号公報(コロイダルシリカ粒子表面をグリコール基で改質する)、特開昭63−312345号公報(コロイダルシリカ粒子表面をカップリング剤で改質する)、特開昭62−235353号公報(炭酸カルシウム粒子をリン化合物で表面処理する)ことなどが提案されている。また、特殊な粒子を使用する方法として、例えば、特開昭62−172031号公報(シリコン粒子)、特開平2−129230号公報(デルタ型酸化アルミニウム粒子)などが提案されている。
【0009】
しかしながら、その一方で、磁気テープ製品の高性能化や製造工程の生産性向上のために磁気テープ用フィルムの使用される条件は、よりいっそう苛酷なものとなってきている。このため、上述の種々の方法によって得られるフィルムの耐摩耗性と耐スクラッチ性も十分とはいえなくなってきた。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は前記した従来技術の問題点を解決し、耐摩耗性に優れた熱可塑性ポリエステルフィルムを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前記した本発明の目的は、熱可塑性ポリエステルと単斜晶が50wt%以上である酸化ジルコニウム粒子とからなる熱可塑性ポリエステルフィルムによって達成できる。
【0012】
本発明における熱可塑性ポリエステルとしては、フィルムを成形しうるものならどの様なものでもよく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート、ポリエチレン−1,2−ビス(2−クロロフェノキシ)エタン−4,4′−ジカルボキシレートなどが好ましく挙げられるが、ポリエチレンテレフタレートあるいはポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートが特に好ましい。
【0013】
これらのポリエステルには、共重合成分として、アジピン酸、イソフタル酸、セバシン酸、フタル酸、4,4′−ジフェニルジカルボン酸などのジカルボン酸およびそのエステル形成性誘導体、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリプロピレングリコールなどのジオキシ化合物、p−(β−オキシエトキシ)安息香酸などのオキシカルボン酸およびそのエステル形成性誘導体などを共重合してもかまわない。
【0014】
本発明における酸化ジルコニウム粒子は、通常、天然に産するジルコニウム鉱石、すなわちジルコン砂やバッデリ石などから得ることができる。その製法は、例えば上述のジルコン砂を溶融し、オキシ塩化ジルコニウムを経て、水酸化ジルコニウムの焼成により得る方法などが挙げられる。
【0015】
このようにして得られる酸化ジルコニウム粒子は、製造条件により種々の形態をとり、単斜晶、正方晶、立方晶、菱面体結晶、斜方晶およびこれらの結晶相が混在するものなどが知られている。また一般には、安定化剤として、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化イットリウムなどを含む、酸化ジルコニウム粒子も使用されている。
【0016】
本発明における酸化ジルコニウム粒子は、その結晶構造が単斜晶のものである。単斜晶と正方晶は混在してもよい。
【0017】
このような酸化ジルコニウム粒子の結晶構造は、X線回折法において、回折X線の現われる回折角2θの値から同定できる。各結晶構造に対して、標準となる2θ値の組は複数知られているが、例えば単斜晶の場合の主な2θ値は24.0、24.4、28.2、31.5、34.2、34.4、35.3、40.7、49.3、50.1、50.6、54.1、55.4であり、正方晶では29.8、34.0、34.8、49.5、50.1、59.4(度)などである。
【0018】
このような酸化ジルコニウム粒子は、例えば上述の製造方法のうちの湿式法において、焼成温度を約500℃から2000℃とすることにより得られる。
【0019】
フィルムにした場合に耐スクラッチ性が良好であるためには、単斜晶以外の結晶構造の混在量が50wt%未満であり、好ましくは30wt%未満である。
【0020】
本発明で使用する酸化ジルコニウム粒子の添加量としては、熱可塑性ポリエステル100重量部に対して、0.01〜30重量部が好ましく、0.05〜10重量部が特に好ましい。
【0021】
本発明で使用する酸化ジルコニウム粒子の平均径は、成型時、例えばフィルム製造時にフィルム破れが少なく、またフィルム表面粗さが小さく、電気特性が良好な0.005〜3μm、特に0.005〜0.3μmが好ましい。
【0022】
本発明の熱可塑性ポリエステルフィルムは、例えば酸化ジルコニウム粒子を目的とするポリエステルの出発原料であるグリコール溶媒で混合撹拌して分散スラリーとし、熱可塑性ポリエステルの反応系に添加する製造方法などで得ることができる。なお、この際の処理方法は撹拌によらずとも、例えば超音波などによっても構わなく、またサンドグラインダなどの媒体型ミルを用いても構わない。
【0023】
ポリエステルへの配合にあたっては、上記した重合反応系に直接添加する方法以外にも、例えば酸化ジルコニウム粒子を溶融状態のポリエステルへ練り込む方法などでも可能である。前者の重合反応系に添加する際の添加時期は任意であるが、エステル交換反応前から重縮合反応の減圧開始前までの間が好ましい。後者の練り込みの場合は、粒子を乾燥してポリエステルに練り込む方法でも、スラリー状態で減圧しながら直接練り込む方法でも構わない。なお、分散性を考えると高剪断力の練り込み機にスラリー状態で減圧しながら直接練り込む方が好ましい。
【0024】
また、フイルムの走行性を得るために、本発明の酸化ジルコニウム粒子以外の粒子を併用してもよい。
【0025】
このような粒子としては、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化ケイ素、リン酸カルシウムなどの無機粒子、シリコーン、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、エチルビニルベンゼン−ジビニルベンゼン共重合体などの架橋高分子粒子、あるいはアルカリ金属およびアルカリ土類金属の少なくとも一種とリンを構成成分の一部とするポリエステル重合反応系で析出させた、いわゆる内部粒子などの不活性粒子が挙げられる。
【0026】
これらの粒子の粒子径は本発明の酸化ジルコニウム粒子よりも大きいことが好ましく、0.1〜2μmが好ましい。また、添加量は熱可塑性ポリエステル100重量部に対して0.005〜10重量部が好ましい。
【0027】
【実施例】
以下、本発明を実施例により、さらに詳細に説明する。なお、実施例中の物性は次のように測定した。
【0028】
(1) 粒子の平均粒子径の評価
粒子をポリエステルに配合せしめ、0.2μm厚みの超薄切片にカッティング後、透過型電子顕微鏡で観察し、粒子1000個の面積平均径(μm)で評価した。
【0029】
(2) 酸化ジルコニウム粒子の結晶構造の分析
X線回折測定(広角X線回折法)により分析した。X線発生装置は理学電機社製RU−200Bを使用し、X線源はCuKα線とした。ゴニオメーターは理学電機社製2155D型、計数記録装置は理学電機社製RAD−B型を使用した。得られた回折パターンを、JCPDS標準データを基準として解析し、結晶構造を決定した。
【0030】
(3) 耐摩耗性の評価
(a) ガイドロール汚れ
得られたポリエステル組成物を実施例に示す方法で二軸延伸フィルムとし、テープ走行性試験機TBT−300型((株)横浜システム研究所製)を使用し、25℃、50%RH雰囲気で1000回繰り返し走行させた後、ガイドロール表面に発生する白粉量を目視にて判定する。ここで、ガイド径は6mmφであり、ガイド材質はSUS27(表面粗度0.2S)、巻き付け角は180°、走行速度は6.0cm/秒である。次のようにランク付けした。
1級:白粉の発生が非常に少なく、目的を達成する。
2級:白粉の発生が少なく、目的を達成する。
3級:白粉の発生がやや多く、目的を達成しない。
4級:白粉の発生が非常に多く、目的を達成しない。
【0031】
(b) カレンダー汚れ
磁性層を塗布したテープを小型テストカレンダー装置(スチールロール、ナイロンロール、5段式、ナイロンロールがベースフィルム面に接する)で、温度:70℃、線圧:200kg/cmでカレンダー処理する。上記処理を延べ15000mにわたって続けた後、この処理によって発生したナイロンロールに付着した白粉を観察し、次のランクづけを行なう。
1級:白粉がほとんど付着していない。
2級:わずかに白粉が付着するが、加工工程上、製品性能上のトラブルに至らない。
3級:白粉の付着が多く、加工工程上、製品性能上のトラブルになり使用不可となった。
【0032】
(C) 耐スクラッチ性
フイルムを幅1/2インチのテープ状にスリットしたものをテープ走行性試験機を使用して、ガイドピン(表面粗さ:Raで0.1μm)上を走行させる。(走行速度1000m/分、走行回数15パス、巻き付け角60度、走行張力65g)。
この時、フイルムに入った傷を顕微鏡で観察し、幅2.5μm以上の傷がテープ幅あたり2本未満はA級、2本以上3本未満はB級、3本以上10本未満はC級、10本以上はD級とした。B級以上を合格とした。
【0033】
(4) 表面凹凸の評価
得られたポリエステル組成物を通常の方法で二軸延伸フィルムとし、JISB−0601に準じ、サーフコム表面粗さ計を用い、針径2μm、荷重70mg、測定基準長0.25mm、カットオフ0.08mmの条件下で中心線平均粗さ(Ra)を測定した。
【0034】
(5) ポリマーの固有粘度
O−クロロフェノールを溶媒として25℃で測定した。
【0035】
実施例1
X線回折パターンが図1に示すとおりであり、結晶構造が単斜晶である酸化ジルコニウム粒子を10重量部、エチレングリコール90重量部を混合して、常温下1時間ディゾルバーで撹拌処理し、酸化ジルコニウム/エチレングリコールスラリー(A)を得た。
【0036】
他方、ジメチルテレフタレート100重量部、エチレングリコール64重量部に触媒として酢酸マグネシウム0.06重量部を加えてエステル交換反応を行なった後、反応生成物に先に調製したスラリー(A)2重量部と触媒の酸化アンチモン0.03重量部、および耐熱安定剤としてトリメチルホスフェート0.03重量部を加え、重縮合反応を行ない、固有粘度0.615のポリエチレンテレフタレート組成物を得た。透過電子顕微鏡による平均粒子径は0.15μmであった。
【0037】
比較例1〜4
酸化ジルコニウム粒子以外の粒子を用いる以外は、実施例1と同様にしてポリエチレンテレフタレートを重合し、さらにフィルムの表面粗さ、耐摩耗性評価結果を表3、4に示した。この表からわかるように耐摩耗性を満足するものは得られなかった。
【0038】
実施例2〜6
酸化ジルコニウム粒子の結晶構造、粒子径、添加量あるいは併用粒子を変える以外は、実施例1と同様にしてポリエチレンテレフタレートを重合し、さらにその二軸延伸フィルムを得た。
【0039】
【発明の効果】
本発明の熱可塑性ポリエステルフィルムは、耐摩耗性に有効に効果を発揮するが、特に繰り返し摩擦使用される磁気テープに好適である。
【0040】
図2に、実施例2で使用した酸化ジルコニウム粒子のX線回折パターンを示した。
【0041】
比較例1〜4
酸化ジルコニウム粒子以外の粒子を用いる以外は、実施例1と同様にしてポリエチレンテレフタレートを重合し、さらにフィルムの表面粗さ、耐摩耗性評価結果を表4、5に示した。この表からわかるように耐摩耗性を満足するものは得られなかった。
【0042】
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【0043】
【発明の効果】
本発明のポリエステル組成物は、繊維、フィルムあるいはその他の成形品にした場合、耐摩耗性に有効に効果を発揮するが、特に繰り返し摩擦使用される磁気テープに好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で使用した酸化ジルコニウム粒子のX線回折パターンを示す。
【図2】実施例2で使用した酸化ジルコニウム粒子のX線回折パターンを示す。
Claims (1)
- 熱可塑性ポリエステルと単斜晶が50wt%以上である酸化ジルコニウム粒子とからなることを特徴とするポリエステルフィルム。
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