JP3543483B2 - 紡毛布帛の製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリエステル繊維から紡毛糸特有のソフトな風合いとふくらみ感を有し、かつ抗ピリング性に優れた紡毛布帛を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、紡毛布帛は、ウールなどの天然繊維を紡毛用梳枠機、紡毛用精紡機に通して作った紡毛糸から生産されていたが、さらに合成繊維の特長である寸法安定性や強度を生かすため、ポリエステル短繊維などを天然繊維に混紡した紡毛糸を用いるようにしたものも実用化されている。しかしながら、ポリエステル繊維の混紡率が高い紡毛糸やポリエステル繊維100%の紡毛糸を使用した布帛では、寸法安定性や強度特性には優れるものの、紡毛糸特有のルーズな糸構造に起因してもも毛やピリングを発生するという問題があった。
【0003】
また、ポリエステル繊維を使用する場合、細デニール化できる特徴を生かして、風合いのソフト化を試みたものもある。しかし、細デニールの合成繊維短繊維(ステープル)は、一般に紡毛用梳綿機の通過性が悪いため生産性を著しく低下させ、かつネップを形成しやすくなって品質を維持することに限界があったため、極端な細デニール化によるソフト化を得ることは困難であった。
【0004】
また、抗ピリング性については、ポリエステル繊維の強度を落せば得られるが、それに伴って布帛自体の強度も弱くなるため、ポリエステル繊維を使用する本来の特長が低減し、また起毛処理するとき繊維が脱落しやすくなって紡毛布帛独特の軽い肉厚感を得難くなるという欠点があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上述した従来の問題を解決し、ポリエステル繊維を使用しながら紡毛布帛独特のふくらみ、肉厚感、さらに天然繊維使い以上のソフトな風合いを合わせ持ち、かつポリエステル繊維使いの欠点とされている抗ピリング性を改善した紡毛布帛の製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する本発明による紡毛布帛の製造方法は、割繊可能な分割型複合繊維であって、割繊後の単繊維繊度が0.3デニール以下であるポリエステル短繊維から紡毛糸を形成し、該紡毛糸を布帛にした後、該布帛に対し起毛処理と前記ポリエステル短繊維の割繊処理とを行った後、該布帛の表面毛羽の仕上処理をすることを特徴とするものである。また、この製造方法において、布帛の表面毛羽の仕上処理として、好ましくは叩打・擦過処理を行うものである。
【0007】
上記各製造方法において、布帛の起毛処理とポリエステル短繊維の割繊処理とは、いずれを先に行ってもよいが、好ましくは布帛の起毛処理を先に行い、その後にその起毛状態にした布帛を溶剤などで処理してポリエステル短繊維を割繊処理するのがよい。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明において、紡毛布帛の原料繊維として使用する繊維は、分割型複合糸からなるポリエステル短繊維である。分割型複合糸とは、複合成分が易溶出成分と難溶出成分とからなり、かつ繊維横断面において難溶出成分が易溶出成分により複数の部分に分割された構造を有する複合糸をいう。また、上記繊維横断面構造によって、易溶出成分を溶解除去すると、複数本の難溶出成分の繊維に割繊される複合糸をいう。
【0009】
例えば、図1は上記分割型複合糸の一例を示す断面図である。1が易溶出成分、2が難溶出成分であり、難溶出成分2が易溶出成分1により複数の部分(図では6箇所の部分)に分割された構成になっている。この分割型複合糸は、溶剤を含む溶液で処理すると易溶出成分1が溶解除去され、図2に示すように、複数本(図では6本)の難溶出成分2からなる繊維に割繊される。
【0010】
また、本発明において原料繊維に使用する分割型複合糸は、上記のように複数本に割繊された後の繊維の単繊維繊度が0.3デニール以下、好ましくは0.25デニール以下になるものが使用される。割繊後の単繊維繊度を0.3デニール以下にすることにより、本発明の目的とする天然繊維使い以上のソフトな風合いが得られる。割繊後の単繊維繊度の下限としては、充分に実用に耐える強度を維持し、染色性や、さらには割繊前の紡績性の観点から0.03デニール以上にすることが好ましい。
【0011】
天然繊維紡毛使い以上のソフトな風合いは、繊維の曲げ剛性を小さくすると共に、さらに繊維が手や肌に接触するとき1本当たりが指紋の間隔以下で接触するような繊細さにすることにより得られる。これらのうち剛性は、繊度の2乗に比例することから、例えば、0.3デニールの繊維の剛性は、1デニールの繊維と比較すると、9/100にソフト化される。
【0012】
また、繊維が手の指紋の隙間に入り込んでヌメリやソフト性を与える太さは、少なくとも6ミクロン以下であるといわれている。例えば、微粉末の場合、粒径が6ミクロン以下であると、極めて心地よいソフト感が得られるとされている。繊維においても同様であり、そのような優れたソフト感を得るためには、直径6ミクロン以下の極細繊維にすることが望ましい。繊維の繊度dと直径D(μ)との関係は、比重をρとすると、D=11.91×√(d/ρ)で表わされる。したがって、ポリエステル繊維(ρ=1.38)の場合、繊維直径6ミクロンに相当する繊度dは0.24デニールになる。
【0013】
したがって、本発明において、原料繊維のポリエステル短繊維は、割繊後の単繊維繊度として、上述した剛性に基づくソフトさを得ることと、指紋間隔内に繊維を接触させるヌメリ、ソフト性の感触を得ることとの両観点から、0.3デニール以下にすることを必要とするものである。
また、本発明に使用するポリエステル短繊維の割繊前の繊度は、特に限定されないが、紡毛用梳綿機に対する通過性、布帛にするときの製織性や製編性などの観点から、好ましくは0.7〜5デニールの範囲にするのがよい。
【0014】
また、割繊前の繊度は、複合糸を構成する易溶出成分/難溶出成分の比率と、難溶出成分の分割数に関係し、割繊後の難溶出成分の単繊維繊度が0.3デニール以下になるようにすることが重要である。例えば、難溶出成分の分割数が8個、易溶出成分/難溶出成分の比率が25%/75%であるときは、ポリエステル短繊維の繊度を3デニールにすれば、割繊後の単繊維繊度を0.28デニールにすることができる。
【0015】
ポリエステル短繊維の繊維長としては特に限定されないが、紡毛紡績のし易さ、毛羽本数および布帛での起毛のし易さ、さらには布帛への出現、手や肌との単繊維接触本数などに関係し、繊維長が長くなると極端に毛羽本数が減るようになることから、好ましくは平均繊維長は30〜120mmの範囲にするとよい。
上述した分割型複合糸からなるポリエステル短繊維は、公知のいかなる複合紡糸方法、その後の延伸方法、ステープル化方法を採用することにより容易に製造することができる。
【0016】
分割型複合糸における易溶出成分と難溶出成分との比率(複合比)は、易溶出成分の割合が多いほど溶出による分割を容易にするが、反面多すぎても紡糸時の安定性、延伸性が低下し、かつ、分割型複合糸の強度、伸度が低下する。したがって、これらの観点から、易溶出成分:難溶出成分の複合比は、40:60〜2:98の範囲であることが好ましい。
【0017】
本発明において、分割型複合糸を構成する複合成分としては、特定の溶剤に対して一方が易溶出成分となり、他方が難溶出成分となる組合せであれば特に限定されない。
しかし、好ましくは、易溶出成分として、全構成単位の80モル%以上がエチレンテレフタレートで、3モル%以上がエチレン5−ソジュームスルホイソフタレートであるポリエステルを用い、また難溶出成分として、全構成単位の80モル%以上がエチレンテレフタレートのポリエステルを用いるとよい。
【0018】
もちろん、複合成分に使用するポリエステルには、上記エチレンテレフタレート単位およびエチレン5−ソジュームスルホイソフタレート単位以外の構成単位を含んでいてもよい。具体的には、例えばアジピン酸、セバシン酸、ドデカン酸などの脂肪族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジオール、キシリレングリコール、2,2−ビス(β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパンなどの芳香族ジオール、4−β−ヒドロキシエトキシ安息香酸などのオキシカルボン酸およびポリエチレングリコールなどのポリオキシアルキレングリコールなどからなる構成単位を用いることができる。
【0019】
本発明において、分割型複合糸のポリエステル短繊維から紡毛糸を製造する紡績方法としては、公知の紡毛糸の製造方法と同様であってよい。すなわち、紡毛用梳綿機および紡毛用精紡機を通過させて製造する方法である。
紡毛用梳綿機は、1山カード、3山カードのいずれであってもよく、カード紡出条件、テープ幅、粗糸番手などは特に限定されるものでない。また、紡毛用精紡機は、ミュール精紡機、紡毛リング精紡機などのいずれの機種であってもよく、紡出条件などは特に限定するものでない。
【0020】
さらに、製造する紡毛糸の番手、撚り数は特に限定されないが、好ましくは番手としては、メートル式で1/4〜1/28、また撚り数としては、メートル式撚係数(K)でK=1.5〜4.0の範囲にするのがよい。
上記のようにして得られた紡毛糸は、次いで布帛にする。布帛は織物であってもよく、編み物であってもよい。
【0021】
織物にする場合の製織方法は、公知の通常の方法でよい。この織物の製造において、上記紡毛糸は織物のタテ糸・ヨコ糸の両方に使用してもよく、あるいはタテ糸・ヨコ糸のいずれか一方だけに使用し、他方に別の紡績糸やフィラメント糸条を使用して交織するようにしてもよい。
しかし、上記紡毛糸をタテ糸・ヨコ糸の両方に使用する場合や、上記紡毛糸をタテ糸・ヨコ糸の一方だけにし、他方に紡績糸を使用する交織の場合には、織物の張り腰が足りなくなるため、好ましくはタテ糸・ヨコ糸のいずれか一方をポリエステルフィラメント糸条にした交織にすることが好ましい。特に、織物の張り腰はタテ糸の影響が大きいことから、タテ糸にポリエステルフィラメント糸条を使用し、ヨコ糸に上記紡毛糸を使用するようにした交織にすることが好ましい。タテ糸に用いるポリエステルフィラメント糸条としては、その断面、特性、繊度および織物の組織、密度などは特に限定されない。
【0022】
編み物にする場合は、上記紡毛糸を100%使いにしてもよく、または他素材(紡績糸、フィラメント糸など)との交編にしてもよい。
上述のようにして得た布帛は、次いで起毛処理し、さらに分割型複合糸のポリエステル短繊維を布帛の状態で割繊処理する。次いで、起毛、割繊処理した布帛を染色し、さらに表面毛羽の仕上処理をする。ここで、起毛処理と割繊処理との順序は、上記のように先に起毛処理を行い、次いで割繊処理を行うようにするのが好ましいが、もちろんこれを前後逆にするようにしてもよい。
【0023】
起毛は通常の針布起毛方法で行えばよい。針布の種類、起毛機種、起毛回数、起毛条件などは特に限定されない。
分割型複合糸からなるポリエステル短繊維の割繊処理は、そのポリエステル短繊維の紡毛糸を製織または製編した布帛の状態で行うが、その布帛をアルカリ溶液に浸漬して行うのがよい。この場合、短時間に、しかも均一に割繊処理するようにするには、酸処理とアルカリ(NaOH)処理とを併用するのがよい。例えば、マレイン酸溶液処理(1〜3g/リットル、120〜130℃×30分)した後、カセイソーダ溶液処理(NaOH 1%ows、80〜98℃×40〜50分)することにより、短時間に均一に割繊することができる。
【0024】
上記起毛処理と割繊処理とを終了した布帛は、次いでその表面毛羽の仕上処理をする。
表面毛羽の仕上処理は、布帛の表面を単に剪毛処理するだけでもよいが、好ましくは、布帛を叩打・擦過処理に付して毛羽の仕上げをするとよい。この叩打・擦過処理方法としては、好ましくは実開平5−89490号公報に記載される方法がよく、これにより合理的に効率よく表面仕上処理することができる。
【0025】
この叩打・擦過処理方法は、表面に研磨フィルムを貼り付けた可撓性の粗面材を使用する。研磨フィルムを貼り付ける粗面材は、薄い金属板を積層し、その先端ほど厚みを低減させてシャープな羽根状に形成したものである。この粗面材を回転ドラムの外周に複数枚放射状に植立させ、回転ドラムと共に回転させながら、先端の研磨フィルムで布帛表面を叩打する。すなわち、布帛を支持ローラー上に走行させながら、その布帛表面を粗面材の先端の研磨フィルムで叩打・擦過処理するのである。
【0026】
この叩打・擦過処理は、粗面材の回転数を150〜400r.p.m.、羽根の枚数を9〜30枚/ドラム、ドラム数を2〜4個、布帛の加工張力(タテ方向)を8〜30g/mm、粗面材に貼り付けた研磨フィルムの研磨剤粒度を#800〜#320、粗面材による擦過圧力を20〜60g/mm、加工速度を5〜20m/分にして処理することが好ましい。また、処理は布帛の片面を連続処理するようにするとよい。
【0027】
この叩打・擦過処理方法により、針布起毛された布帛表面に長く延びた粗い毛羽は、シャープな粗面材によって強く引き抜かれながら刈り取られ、同時にループや繊維の固りが切断除去されて、新たに若干短く密な毛羽をもつ表面を創出することができる。つまり、表面の“遊び毛”を除去し、“強い毛”のみを作るため、耐摩耗性を高め、優れた抗ピリング性を付与することができる。
【0028】
このような効果を得るため、上記粗面材としては、厚みが薄く、剛性の大きい金属板を積層し、かつその表面に研磨フィルム(研磨材)を貼り付けた“強い”粗面材にすることが望ましい。叩打・擦過の表面処理の強弱を制御する条件としては、研磨フィルムの研磨材の粒度、粗面材の枚数、回転数、処理回数などを適宜選択すればよいが、特に研磨材の粒度(メッシュの粗さ)の選択は安定加工のため重要である。
上記叩打・擦過処理後の布帛については、その後の毛焼きや抗ピリング樹脂加工などの仕上げ処理は必要としない。
【0029】
【実施例】
以下に説明する実施例において、評価に使用した物性は次の測定方法により行った。
(1)抗ピリング性
JIS L1076に規定の方法により測定し、5級(ピリングの発生がほとんどなく極めて良好)〜1級(ピリングの発生が著しく多く不良)の5段階で評価した。
(2)風合い
ソフト性、張り腰・反発性、ふくらみ感のそれぞれについて布帛の風合いを、5人の専門家による官能試験により評価し、その平均値により、次の3段階に分類した。
○:極めて良好、 △:やや問題あり、 ×:不良
【0030】
実施例1,2、比較例1
難溶出成分として、固有粘度0.68のポリエチレンテレフタレートを、易溶出成分として、エチレン5−ソジュームスルホイソフタレートとエチレンテレフタレート共重合体を使用し、図1の繊維断面になるように、それぞれ易溶出成分の複合比率を10%、20%、30%に異ならせた3種類の分割型複合糸を紡糸温度295℃、紡糸速度1200m/分で紡糸した。
【0031】
その後、上記3種類の複合未延伸糸を3.3倍の延伸倍率で通常の延伸を行ない、捲縮付与後にカットして、2.0デニール×51mmの分割型複合糸のポリエステル短繊維を得た。これら3種類のポリエステル短繊維は、上記易溶出成分の複合比率に対応して、それぞれ割繊後の単繊維繊度が0.31デニール(比較例1)、0.27デニール(実施例2)、0.23デニール(実施例1)となるものであった。
【0032】
上記3種類のポリエステル短繊維を、それぞれ100%で3山カードに仕掛け、コンデンサー部のデバイダーのテープ幅16mmを用い、粗糸番手(メートル式)1/12を作成し、引き続きミュール精紡機に仕掛けて、番手(メートル式)1/16、撚り係数K=90の紡毛糸を得た。
次いで、これら3種類の紡毛糸を、それぞれヨコ糸にし、150デニール,48フィラメントのポリエステルフィラメント糸条をタテ糸に用いて、タテ×ヨコ密度=62×43本/inの3種類の綾織物に製織した。
【0033】
得られた各織物を、それぞれ針布起毛した後に精錬し、次いでマレイン酸2g/リットル、130℃×35分にて酸処理し、引き続きカセイソーダ(NaOH)1%ows、98℃×55分で処理して、織物を構成するポリエステル短繊維中の易溶出成分を溶出させることにより、難溶出成分の繊維だけに割繊した。さらに、この布帛を染色した後、表面を剪毛処理して仕上げた。
【0034】
仕上がった織物の抗ピリング性、風合い(ソフト性、張り腰、ふくらみ感)の官能評価をそれぞれ行ない、その評価結果を表1に示した。
表1の結果から、比較例1の織物は、ポリエステル短繊維の割繊後の単繊維繊度が0.31デニールと太いため、本発明が狙いとする天然繊維紡毛使い布帛ののソフト性を得る点で問題であった。しかし、割繊後の単繊維繊度が0.3デニール以下の実施例1、2の織物は、抗ピリング性とともに、ソフト性、反発性、ふくらみ感に優れた紡毛製品であった。
【0035】
実施例3、4、比較例2
実施例1、2、比較例1の織物に、実開平5−89490号公報に記載の方法により、下記条件の叩打・擦過処理をした。
上記叩打・擦過処理で仕上げた織物について、抗ピリング性、風合い(ソフト性、張り腰、ふくらみ感)の官能評価を実施例1、2、比較例1と同様に行なった結果を表1に併記した。
【0036】
比較例2の織物は、叩打・擦過処理の有り、無しにかかわらず、割繊後の単繊維繊度が0.31デニールと太いため、本発明の狙いとするソフト性の点で問題があった。しかし、実施例3、4の織物は、実施例1、2の織物と同様に、官能風合が良好であり、抗ピリング性は4級以上を得ることができた。
【0037】
【表1】
【0038】
【発明の効果】
上述したように、本発明によれば、ポリエステル繊維を使用するものでありながら、紡毛糸独特のふくらみ感、肉厚感などを具備し、しかも単繊維繊度を0.3デニール以下の超極細にしたことによって従来の天然繊維紡毛糸使いのものよりも心地よいソフトな風合いを合わせ持ち、さらにポリエステル繊維特有の張り腰、反発性に優れ、しかもポリエステル繊維で問題であった抗ピリング性を解消した紡毛製品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に用いる分割型複合繊維の一例をモデル的に示す横断面図である。
【図2】図1の分割型複合繊維が分割された状態をモデル的に示す横断面図である。
【符号の説明】
1 易溶出成分
2 難溶出成分
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリエステル繊維から紡毛糸特有のソフトな風合いとふくらみ感を有し、かつ抗ピリング性に優れた紡毛布帛を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、紡毛布帛は、ウールなどの天然繊維を紡毛用梳枠機、紡毛用精紡機に通して作った紡毛糸から生産されていたが、さらに合成繊維の特長である寸法安定性や強度を生かすため、ポリエステル短繊維などを天然繊維に混紡した紡毛糸を用いるようにしたものも実用化されている。しかしながら、ポリエステル繊維の混紡率が高い紡毛糸やポリエステル繊維100%の紡毛糸を使用した布帛では、寸法安定性や強度特性には優れるものの、紡毛糸特有のルーズな糸構造に起因してもも毛やピリングを発生するという問題があった。
【0003】
また、ポリエステル繊維を使用する場合、細デニール化できる特徴を生かして、風合いのソフト化を試みたものもある。しかし、細デニールの合成繊維短繊維(ステープル)は、一般に紡毛用梳綿機の通過性が悪いため生産性を著しく低下させ、かつネップを形成しやすくなって品質を維持することに限界があったため、極端な細デニール化によるソフト化を得ることは困難であった。
【0004】
また、抗ピリング性については、ポリエステル繊維の強度を落せば得られるが、それに伴って布帛自体の強度も弱くなるため、ポリエステル繊維を使用する本来の特長が低減し、また起毛処理するとき繊維が脱落しやすくなって紡毛布帛独特の軽い肉厚感を得難くなるという欠点があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上述した従来の問題を解決し、ポリエステル繊維を使用しながら紡毛布帛独特のふくらみ、肉厚感、さらに天然繊維使い以上のソフトな風合いを合わせ持ち、かつポリエステル繊維使いの欠点とされている抗ピリング性を改善した紡毛布帛の製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する本発明による紡毛布帛の製造方法は、割繊可能な分割型複合繊維であって、割繊後の単繊維繊度が0.3デニール以下であるポリエステル短繊維から紡毛糸を形成し、該紡毛糸を布帛にした後、該布帛に対し起毛処理と前記ポリエステル短繊維の割繊処理とを行った後、該布帛の表面毛羽の仕上処理をすることを特徴とするものである。また、この製造方法において、布帛の表面毛羽の仕上処理として、好ましくは叩打・擦過処理を行うものである。
【0007】
上記各製造方法において、布帛の起毛処理とポリエステル短繊維の割繊処理とは、いずれを先に行ってもよいが、好ましくは布帛の起毛処理を先に行い、その後にその起毛状態にした布帛を溶剤などで処理してポリエステル短繊維を割繊処理するのがよい。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明において、紡毛布帛の原料繊維として使用する繊維は、分割型複合糸からなるポリエステル短繊維である。分割型複合糸とは、複合成分が易溶出成分と難溶出成分とからなり、かつ繊維横断面において難溶出成分が易溶出成分により複数の部分に分割された構造を有する複合糸をいう。また、上記繊維横断面構造によって、易溶出成分を溶解除去すると、複数本の難溶出成分の繊維に割繊される複合糸をいう。
【0009】
例えば、図1は上記分割型複合糸の一例を示す断面図である。1が易溶出成分、2が難溶出成分であり、難溶出成分2が易溶出成分1により複数の部分(図では6箇所の部分)に分割された構成になっている。この分割型複合糸は、溶剤を含む溶液で処理すると易溶出成分1が溶解除去され、図2に示すように、複数本(図では6本)の難溶出成分2からなる繊維に割繊される。
【0010】
また、本発明において原料繊維に使用する分割型複合糸は、上記のように複数本に割繊された後の繊維の単繊維繊度が0.3デニール以下、好ましくは0.25デニール以下になるものが使用される。割繊後の単繊維繊度を0.3デニール以下にすることにより、本発明の目的とする天然繊維使い以上のソフトな風合いが得られる。割繊後の単繊維繊度の下限としては、充分に実用に耐える強度を維持し、染色性や、さらには割繊前の紡績性の観点から0.03デニール以上にすることが好ましい。
【0011】
天然繊維紡毛使い以上のソフトな風合いは、繊維の曲げ剛性を小さくすると共に、さらに繊維が手や肌に接触するとき1本当たりが指紋の間隔以下で接触するような繊細さにすることにより得られる。これらのうち剛性は、繊度の2乗に比例することから、例えば、0.3デニールの繊維の剛性は、1デニールの繊維と比較すると、9/100にソフト化される。
【0012】
また、繊維が手の指紋の隙間に入り込んでヌメリやソフト性を与える太さは、少なくとも6ミクロン以下であるといわれている。例えば、微粉末の場合、粒径が6ミクロン以下であると、極めて心地よいソフト感が得られるとされている。繊維においても同様であり、そのような優れたソフト感を得るためには、直径6ミクロン以下の極細繊維にすることが望ましい。繊維の繊度dと直径D(μ)との関係は、比重をρとすると、D=11.91×√(d/ρ)で表わされる。したがって、ポリエステル繊維(ρ=1.38)の場合、繊維直径6ミクロンに相当する繊度dは0.24デニールになる。
【0013】
したがって、本発明において、原料繊維のポリエステル短繊維は、割繊後の単繊維繊度として、上述した剛性に基づくソフトさを得ることと、指紋間隔内に繊維を接触させるヌメリ、ソフト性の感触を得ることとの両観点から、0.3デニール以下にすることを必要とするものである。
また、本発明に使用するポリエステル短繊維の割繊前の繊度は、特に限定されないが、紡毛用梳綿機に対する通過性、布帛にするときの製織性や製編性などの観点から、好ましくは0.7〜5デニールの範囲にするのがよい。
【0014】
また、割繊前の繊度は、複合糸を構成する易溶出成分/難溶出成分の比率と、難溶出成分の分割数に関係し、割繊後の難溶出成分の単繊維繊度が0.3デニール以下になるようにすることが重要である。例えば、難溶出成分の分割数が8個、易溶出成分/難溶出成分の比率が25%/75%であるときは、ポリエステル短繊維の繊度を3デニールにすれば、割繊後の単繊維繊度を0.28デニールにすることができる。
【0015】
ポリエステル短繊維の繊維長としては特に限定されないが、紡毛紡績のし易さ、毛羽本数および布帛での起毛のし易さ、さらには布帛への出現、手や肌との単繊維接触本数などに関係し、繊維長が長くなると極端に毛羽本数が減るようになることから、好ましくは平均繊維長は30〜120mmの範囲にするとよい。
上述した分割型複合糸からなるポリエステル短繊維は、公知のいかなる複合紡糸方法、その後の延伸方法、ステープル化方法を採用することにより容易に製造することができる。
【0016】
分割型複合糸における易溶出成分と難溶出成分との比率(複合比)は、易溶出成分の割合が多いほど溶出による分割を容易にするが、反面多すぎても紡糸時の安定性、延伸性が低下し、かつ、分割型複合糸の強度、伸度が低下する。したがって、これらの観点から、易溶出成分:難溶出成分の複合比は、40:60〜2:98の範囲であることが好ましい。
【0017】
本発明において、分割型複合糸を構成する複合成分としては、特定の溶剤に対して一方が易溶出成分となり、他方が難溶出成分となる組合せであれば特に限定されない。
しかし、好ましくは、易溶出成分として、全構成単位の80モル%以上がエチレンテレフタレートで、3モル%以上がエチレン5−ソジュームスルホイソフタレートであるポリエステルを用い、また難溶出成分として、全構成単位の80モル%以上がエチレンテレフタレートのポリエステルを用いるとよい。
【0018】
もちろん、複合成分に使用するポリエステルには、上記エチレンテレフタレート単位およびエチレン5−ソジュームスルホイソフタレート単位以外の構成単位を含んでいてもよい。具体的には、例えばアジピン酸、セバシン酸、ドデカン酸などの脂肪族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジオール、キシリレングリコール、2,2−ビス(β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパンなどの芳香族ジオール、4−β−ヒドロキシエトキシ安息香酸などのオキシカルボン酸およびポリエチレングリコールなどのポリオキシアルキレングリコールなどからなる構成単位を用いることができる。
【0019】
本発明において、分割型複合糸のポリエステル短繊維から紡毛糸を製造する紡績方法としては、公知の紡毛糸の製造方法と同様であってよい。すなわち、紡毛用梳綿機および紡毛用精紡機を通過させて製造する方法である。
紡毛用梳綿機は、1山カード、3山カードのいずれであってもよく、カード紡出条件、テープ幅、粗糸番手などは特に限定されるものでない。また、紡毛用精紡機は、ミュール精紡機、紡毛リング精紡機などのいずれの機種であってもよく、紡出条件などは特に限定するものでない。
【0020】
さらに、製造する紡毛糸の番手、撚り数は特に限定されないが、好ましくは番手としては、メートル式で1/4〜1/28、また撚り数としては、メートル式撚係数(K)でK=1.5〜4.0の範囲にするのがよい。
上記のようにして得られた紡毛糸は、次いで布帛にする。布帛は織物であってもよく、編み物であってもよい。
【0021】
織物にする場合の製織方法は、公知の通常の方法でよい。この織物の製造において、上記紡毛糸は織物のタテ糸・ヨコ糸の両方に使用してもよく、あるいはタテ糸・ヨコ糸のいずれか一方だけに使用し、他方に別の紡績糸やフィラメント糸条を使用して交織するようにしてもよい。
しかし、上記紡毛糸をタテ糸・ヨコ糸の両方に使用する場合や、上記紡毛糸をタテ糸・ヨコ糸の一方だけにし、他方に紡績糸を使用する交織の場合には、織物の張り腰が足りなくなるため、好ましくはタテ糸・ヨコ糸のいずれか一方をポリエステルフィラメント糸条にした交織にすることが好ましい。特に、織物の張り腰はタテ糸の影響が大きいことから、タテ糸にポリエステルフィラメント糸条を使用し、ヨコ糸に上記紡毛糸を使用するようにした交織にすることが好ましい。タテ糸に用いるポリエステルフィラメント糸条としては、その断面、特性、繊度および織物の組織、密度などは特に限定されない。
【0022】
編み物にする場合は、上記紡毛糸を100%使いにしてもよく、または他素材(紡績糸、フィラメント糸など)との交編にしてもよい。
上述のようにして得た布帛は、次いで起毛処理し、さらに分割型複合糸のポリエステル短繊維を布帛の状態で割繊処理する。次いで、起毛、割繊処理した布帛を染色し、さらに表面毛羽の仕上処理をする。ここで、起毛処理と割繊処理との順序は、上記のように先に起毛処理を行い、次いで割繊処理を行うようにするのが好ましいが、もちろんこれを前後逆にするようにしてもよい。
【0023】
起毛は通常の針布起毛方法で行えばよい。針布の種類、起毛機種、起毛回数、起毛条件などは特に限定されない。
分割型複合糸からなるポリエステル短繊維の割繊処理は、そのポリエステル短繊維の紡毛糸を製織または製編した布帛の状態で行うが、その布帛をアルカリ溶液に浸漬して行うのがよい。この場合、短時間に、しかも均一に割繊処理するようにするには、酸処理とアルカリ(NaOH)処理とを併用するのがよい。例えば、マレイン酸溶液処理(1〜3g/リットル、120〜130℃×30分)した後、カセイソーダ溶液処理(NaOH 1%ows、80〜98℃×40〜50分)することにより、短時間に均一に割繊することができる。
【0024】
上記起毛処理と割繊処理とを終了した布帛は、次いでその表面毛羽の仕上処理をする。
表面毛羽の仕上処理は、布帛の表面を単に剪毛処理するだけでもよいが、好ましくは、布帛を叩打・擦過処理に付して毛羽の仕上げをするとよい。この叩打・擦過処理方法としては、好ましくは実開平5−89490号公報に記載される方法がよく、これにより合理的に効率よく表面仕上処理することができる。
【0025】
この叩打・擦過処理方法は、表面に研磨フィルムを貼り付けた可撓性の粗面材を使用する。研磨フィルムを貼り付ける粗面材は、薄い金属板を積層し、その先端ほど厚みを低減させてシャープな羽根状に形成したものである。この粗面材を回転ドラムの外周に複数枚放射状に植立させ、回転ドラムと共に回転させながら、先端の研磨フィルムで布帛表面を叩打する。すなわち、布帛を支持ローラー上に走行させながら、その布帛表面を粗面材の先端の研磨フィルムで叩打・擦過処理するのである。
【0026】
この叩打・擦過処理は、粗面材の回転数を150〜400r.p.m.、羽根の枚数を9〜30枚/ドラム、ドラム数を2〜4個、布帛の加工張力(タテ方向)を8〜30g/mm、粗面材に貼り付けた研磨フィルムの研磨剤粒度を#800〜#320、粗面材による擦過圧力を20〜60g/mm、加工速度を5〜20m/分にして処理することが好ましい。また、処理は布帛の片面を連続処理するようにするとよい。
【0027】
この叩打・擦過処理方法により、針布起毛された布帛表面に長く延びた粗い毛羽は、シャープな粗面材によって強く引き抜かれながら刈り取られ、同時にループや繊維の固りが切断除去されて、新たに若干短く密な毛羽をもつ表面を創出することができる。つまり、表面の“遊び毛”を除去し、“強い毛”のみを作るため、耐摩耗性を高め、優れた抗ピリング性を付与することができる。
【0028】
このような効果を得るため、上記粗面材としては、厚みが薄く、剛性の大きい金属板を積層し、かつその表面に研磨フィルム(研磨材)を貼り付けた“強い”粗面材にすることが望ましい。叩打・擦過の表面処理の強弱を制御する条件としては、研磨フィルムの研磨材の粒度、粗面材の枚数、回転数、処理回数などを適宜選択すればよいが、特に研磨材の粒度(メッシュの粗さ)の選択は安定加工のため重要である。
上記叩打・擦過処理後の布帛については、その後の毛焼きや抗ピリング樹脂加工などの仕上げ処理は必要としない。
【0029】
【実施例】
以下に説明する実施例において、評価に使用した物性は次の測定方法により行った。
(1)抗ピリング性
JIS L1076に規定の方法により測定し、5級(ピリングの発生がほとんどなく極めて良好)〜1級(ピリングの発生が著しく多く不良)の5段階で評価した。
(2)風合い
ソフト性、張り腰・反発性、ふくらみ感のそれぞれについて布帛の風合いを、5人の専門家による官能試験により評価し、その平均値により、次の3段階に分類した。
○:極めて良好、 △:やや問題あり、 ×:不良
【0030】
実施例1,2、比較例1
難溶出成分として、固有粘度0.68のポリエチレンテレフタレートを、易溶出成分として、エチレン5−ソジュームスルホイソフタレートとエチレンテレフタレート共重合体を使用し、図1の繊維断面になるように、それぞれ易溶出成分の複合比率を10%、20%、30%に異ならせた3種類の分割型複合糸を紡糸温度295℃、紡糸速度1200m/分で紡糸した。
【0031】
その後、上記3種類の複合未延伸糸を3.3倍の延伸倍率で通常の延伸を行ない、捲縮付与後にカットして、2.0デニール×51mmの分割型複合糸のポリエステル短繊維を得た。これら3種類のポリエステル短繊維は、上記易溶出成分の複合比率に対応して、それぞれ割繊後の単繊維繊度が0.31デニール(比較例1)、0.27デニール(実施例2)、0.23デニール(実施例1)となるものであった。
【0032】
上記3種類のポリエステル短繊維を、それぞれ100%で3山カードに仕掛け、コンデンサー部のデバイダーのテープ幅16mmを用い、粗糸番手(メートル式)1/12を作成し、引き続きミュール精紡機に仕掛けて、番手(メートル式)1/16、撚り係数K=90の紡毛糸を得た。
次いで、これら3種類の紡毛糸を、それぞれヨコ糸にし、150デニール,48フィラメントのポリエステルフィラメント糸条をタテ糸に用いて、タテ×ヨコ密度=62×43本/inの3種類の綾織物に製織した。
【0033】
得られた各織物を、それぞれ針布起毛した後に精錬し、次いでマレイン酸2g/リットル、130℃×35分にて酸処理し、引き続きカセイソーダ(NaOH)1%ows、98℃×55分で処理して、織物を構成するポリエステル短繊維中の易溶出成分を溶出させることにより、難溶出成分の繊維だけに割繊した。さらに、この布帛を染色した後、表面を剪毛処理して仕上げた。
【0034】
仕上がった織物の抗ピリング性、風合い(ソフト性、張り腰、ふくらみ感)の官能評価をそれぞれ行ない、その評価結果を表1に示した。
表1の結果から、比較例1の織物は、ポリエステル短繊維の割繊後の単繊維繊度が0.31デニールと太いため、本発明が狙いとする天然繊維紡毛使い布帛ののソフト性を得る点で問題であった。しかし、割繊後の単繊維繊度が0.3デニール以下の実施例1、2の織物は、抗ピリング性とともに、ソフト性、反発性、ふくらみ感に優れた紡毛製品であった。
【0035】
実施例3、4、比較例2
実施例1、2、比較例1の織物に、実開平5−89490号公報に記載の方法により、下記条件の叩打・擦過処理をした。
上記叩打・擦過処理で仕上げた織物について、抗ピリング性、風合い(ソフト性、張り腰、ふくらみ感)の官能評価を実施例1、2、比較例1と同様に行なった結果を表1に併記した。
【0036】
比較例2の織物は、叩打・擦過処理の有り、無しにかかわらず、割繊後の単繊維繊度が0.31デニールと太いため、本発明の狙いとするソフト性の点で問題があった。しかし、実施例3、4の織物は、実施例1、2の織物と同様に、官能風合が良好であり、抗ピリング性は4級以上を得ることができた。
【0037】
【表1】
【0038】
【発明の効果】
上述したように、本発明によれば、ポリエステル繊維を使用するものでありながら、紡毛糸独特のふくらみ感、肉厚感などを具備し、しかも単繊維繊度を0.3デニール以下の超極細にしたことによって従来の天然繊維紡毛糸使いのものよりも心地よいソフトな風合いを合わせ持ち、さらにポリエステル繊維特有の張り腰、反発性に優れ、しかもポリエステル繊維で問題であった抗ピリング性を解消した紡毛製品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に用いる分割型複合繊維の一例をモデル的に示す横断面図である。
【図2】図1の分割型複合繊維が分割された状態をモデル的に示す横断面図である。
【符号の説明】
1 易溶出成分
2 難溶出成分
Claims (8)
- 割繊可能な分割型複合繊維であって、割繊後の単繊維繊度が0.3デニール以下であるポリエステル短繊維から紡毛糸を形成し、該紡毛糸を布帛にした後、該布帛に対し起毛処理と前記ポリエステル短繊維の割繊処理とを行った後、該布帛の表面毛羽の仕上処理をする紡毛布帛の製造方法。
- 前記布帛の表面毛羽の仕上処理が、叩打・擦過処理である請求項1に記載の紡毛布帛の製造方法。
- 前記布帛が前記紡毛糸をヨコ糸にし、ポリエステルフィラメント糸条をタテ糸にした織物である請求項1または2に記載の紡毛布帛の製造方法。
- 前記分割型複合繊維が難溶出成分を易溶出成分により複数の部分に分割した横断面を有し、前記易溶出成分が全構成単位の80モル%以上がエチレンテレフタレートで、3モル%以上がエチレン5−ソジュームスルホイソフタレートであるポリエステルであり、前記難溶出成分が80モル%以上がエチレンテレフタレートのポリエステルである請求項1〜3のいずれかに記載の紡毛布帛の製造方法。
- 前記紡毛糸を前記ポリエステル短繊維を紡毛用梳綿機および紡毛用精紡機に通過させて形成する請求項1〜4のいずれかに記載の紡毛布帛の製造方法。
- 前記起毛処理が針布起毛である請求項1〜5のいずれかに記載の紡毛布帛の製造方法。
- 前記布帛を起毛処理した後、前記ポリエステル短繊維の割繊処理を行う請求項1〜6のいずれかに記載の紡毛布帛の製造方法。
- 前記叩打・擦過処理を、前記布帛を支持ローラー上に走行させながら、その布帛表面を研磨フィルムを表面に設けた可撓性粗面材で叩打して行う請求項2〜7のいずれかに記載の紡毛布帛の製造方法。
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