JP3562146B2 - 芯鞘型複合紡績糸および布帛 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、芯鞘型複合紡績糸およびそれを用いた布帛に関する。さらに詳しくは、外層部が分割型ポリエステル複合短繊維からなり、内層部にポリエステル短繊維を配置してなる、実ヨリを有する芯鞘型複合紡績糸および布帛に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、ソフトで高級綿などの天然繊維が有する超ソフト風合を合成繊維編織物で得るべく種々の検討がなされている。そのうち、織物表面に極細繊維を配置させ、極細繊維の欠点である張り腰不足を他の太デニール繊維などでカバーし、両特性をうまくバランスさせようとする検討がなされていた。例えば、特開平7−173741号公報には芯鞘型複合短繊維と太デニール収縮短繊維との混紡糸からなる織物の製造方法が提案がされている。これらは製織後、染色工程で収縮させ芯鞘型複合短繊維を織物表面に浮き上がらせアルカリ処理により鞘成分を除去し、ソフト性を得ようとするものである。しかしながら、これらは均一混紡で紡績糸のヨリ拘束と織物の拘束下での収縮処理であって単繊維移動は、ほとんどなされず、細デニール短繊維を充分に織物表面に出現させることができない欠点がある。しかも紡績での均一混紡は、太デニール短繊維が一般に糸表面に多くでることから、収縮短繊維のデニールを太くして張り腰を付与しょうとしても、太デニール収縮短繊維の一部が織物表面にでてソフト効果が得られない欠点を有している。
【0003】
また、特開平5−140831号公報ではソフト性を追及した分割型複合短繊維と長繊維との長短複合糸が提案されている。これらは高速紡糸により得た伸度の高い長繊維と伸度の低い分割繊維原糸を同時牽切し、伸度の低い分割繊維のみを牽切し短繊維とし、同時に物理的割繊を行った後、ノズルにより抱合交絡する方法である。これらの方法は、2種の原糸から一挙に、割繊された短繊維と長繊維の複合糸が得られるが、牽切時に抱合交絡により複合化することから均一な芯に長繊維の複合糸が得られないばかりか、実撚が付与されず長繊維と短繊維との親和性が乏しく布帛での表面品位がリング糸に比べ劣る他、表面がももけ易く、毛玉による品位低下などの欠点を有していた。
【0004】
さらに、長繊維は牽切時の延伸により若干の収縮率が付与されるがその値は低く、また該方式は、両素材の製糸条件などにより組合わせ素材が大幅に限定される欠点がある。
【0005】
【発明が解決すべき課題】
本発明の目的は、超ソフトな風合を有し、抗ピル性、表面品位の良好な製品を得ることにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の芯鞘型複合紡績糸は、前記課題を解決するため以下の構成を有する。
【0007】
すなわち、芯部が短繊維束A、鞘部が短繊維束Bからなる芯鞘型複合紡績糸であって、該短繊維束Aは熱水収縮率が20〜40%であるポリエステル繊維からなり、該短繊維束Bは、分割後の単繊維繊度が0.3デニール以下である分割可能型複合繊維からなることを特徴とする芯鞘型複合紡績糸である。
【0008】
本発明の布帛は、前記課題を解決するため以下の構成を有する。
【0009】
すなわち、芯部が短繊維束A、鞘部が短繊維束Bからなる芯鞘型複合紡績糸であって、該短繊維束Aは熱水収縮率が20〜40%であるポリエステル繊維からなり、該短繊維束Bは、分割後の単繊維繊度が0.3デニール以下である分割可能型複合繊維からなることを特徴とする芯鞘型複合紡績糸から形成され、分割可能型複合繊維が分割割繊処理されていることを特徴とする布帛である。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の芯鞘型複合紡績糸について説明する
本発明の芯鞘型複合紡績糸は、芯部が短繊維束A、鞘部が短繊維束Bからなるものである。また、短繊維束Aはポリエステル繊維からなり、短繊維束Bは、分割可能型複合繊維からなるものである。
【0011】
まず、本発明で用いる短繊維束Bの分割可能型複合繊維について説明する。
【0012】
分割可能型複合繊維は分割割繊後、単繊維繊度が0.3d以下となるものである。単繊維繊度は0.25d以下となるのがより好ましい。単繊維繊度は、0.03〜0.3dの範囲が好ましい。
【0013】
本発明の狙いとするソフト風合は、分割割繊後の、割繊された単繊維の曲げ剛性や、割繊された単繊維や布帛が手や肌に接触する本数、さらには割繊された単繊維のデニールが指紋の間隔以下となることによって得ることができる。このうち、単繊維の曲げ剛性はデニールの2乗に比例することから、例えば1dの繊維と比較すると0.3dの繊維の曲げ剛性は9/100にソフト化される。また、割繊された単繊維が手の指紋の隙間に入り込んでヌメリやソフト性を与えるためには、繊維直径が6ミクロン以下であるのが好ましい。繊維直径が6ミクロン以下でないと優れたソフト性を感じ得ない傾向がある。繊維のデニールと直径の関係は、繊維直径L(μm)、デニール(d) 、素材の比重ρとすると、L=11.91(d/ρ)1/2 で表わされる。例えばポリエステル(ρ=1.38)で6ミクロン以下の繊維直径に相当するデニールは0.35d以下になる。5ミクロンで0.24dである。すなわち本発明においては分割割繊後の割繊された単繊維のデニールは繊維の曲げ剛性に起因するソフトさと、繊維が指紋の隙間に入り込むことに起因するヌメリ、ソフト性を得るため0.3d以下であることが重要であって、0.3dを越えると優れたソフト性が得られない問題がある。
【0014】
さらに、割繊された単繊維の手や肌への接触本数がソフト性に影響を与えることから、手や肌に接触する単繊維本数は特に限定されないが、複合糸および布帛の表面にできるだけ出現させ、手や肌に直接、単繊維が接触することが好ましい。
【0015】
分割可能型複合繊維の分割前のデニールは特に限定しないが、0.7〜5dの範囲であるのが好ましい。分割前のデニールは上記の易溶出成分/難溶出成分比率と分割個数に関係し、分割後に難溶出成分繊維が単繊維繊度0.3d以下となることが重要である。例えば8分割の場合、易溶出成分/難溶出成分比率が25/75%である分割前のデニールが3dのものでは分割後には0.28dとなる。分割割繊後の単繊維繊度の下限としては分割後の単繊維が充分実用性に耐える強度であること、分割前の繊度で紡績可能なことなどを加味すると0.03d以上であるのが好ましい。
【0016】
分割可能型複合繊維の繊維長は特に限定されないが、複合紡績糸の作り易さ、紡績糸の毛羽本数、織物での起毛のし易さ、さらには織物表面へ分割された単繊維の出現、手や肌との単繊維接触本数などに影響を与え、繊維長が長くなると極端に毛羽本数が減ることから平均繊維長は30〜90mmの範囲が好ましい。
【0017】
このような分割可能型複合繊維は、例えば、一方成分により他方成分が複数個に分割された分割可能型複合繊維を複合紡糸法により製造する際に、一方成分として全構成単位の3モル%以上がエチレン5−ソジウムスルホイソフタレートであり、かつ80モル%以上がエチレンテレフタレートであるポリエステルを用い、他方成分として80モル%以上がエチレンテレフタレートであるポリエステルを用いることにより製造することができる。
【0018】
分割可能型複合繊維は、特公昭47−2485号公報、特公昭48−33415号公報、特公昭49−29129号公報などで示されているような各種の複合紡糸法によって得ることができる。
【0019】
易溶出成分と難溶出成分の分割可能型複合繊維における比率、すなわち複合比は易溶出成分が多いほど溶出による分割が容易であるが、反面多すぎると紡糸時の安定性、延伸のし易さが低下し、かつ分割可能型複合繊維の強度、伸度が低下する観点から易溶出成分:難溶出成分は40:60〜2:98の範囲が好ましい。
【0020】
分割可能型複合繊維を構成するポリエステルとしてはエチレンテレフタレート単位、エチレン5−ソジウムスルホイソフタレート単位以外の構成単位を含んでいてもよい。具体的にはアジビン酸、セバシン酸、ドデカン酸などの脂肪族ジカルボン酸、1.4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジオール、キシリレングリコール、2.2−ビス(β−ヒドロキシエトキシフエニル)プロパンなどの芳香族ジオール、4−β−ヒドロキシエトキシ安息香酸などのオキシカルホン酸およびポリエチレングリコールなどのポリオキシアルキレングリコールなどからの構成単位を用いることができる。
【0021】
次に、本発明に用いる短繊維束Aを構成するポリエステル繊維について説明する。
【0022】
芯部のポリエステル繊維は、熱水収縮率を20〜40%とするものである。
【0023】
熱水収縮率が20%に満たないと、布帛の状態で芯部のポリエステル繊維を収縮させても、収縮率が小さいため、拘束力に打ち勝った割繊された単繊維を布帛表面に浮き出させることができず、ふくらみのあるソフトタッチが得られない問題がある。一方、熱水収縮率が40%を越えると、収縮率が大き過ぎ、布帛設計が難しくなるほか、織物収縮加工時の収縮安定性が劣り、幅、長さなど均一な加工ができない問題がある。
【0024】
なお熱水収縮率はJIS−L1037、5、12によって求めることができる。
【0025】
芯部の短繊維束Aを構成するポリエステル繊維の単繊維繊度は特に限定されないが、布帛において張り腰、反発性を得る観点から2〜5dの範囲が好ましい。また、短繊維束Aを構成する単繊維の断面形状、素材、繊維長についても特に限定されないが、鞘部の分割可能型複合繊維に合わせた繊維長、素材が好ましい。
【0026】
本発明の芯鞘型複合紡績糸の番手、ヨリ数などは特に限定されないが、芯部、鞘部それぞれの成分の紡績糸断面構成繊維本数が40本以上となるよう番手設計するのが好ましい。また、ヨリ数は一般紡績糸よりやや高めに設定するのがよく、T/in=K(綿番手)1/2 (K:定数)においてK=3.4以上が好ましい。
【0027】
本発明の芯鞘型複合紡績糸の製造方法は特に限定されないが、例えば、一対のテーパーローラーからなるフロントトップローラーおよびフロントボトムローラーを有するリング精紡機により、トランペットを介してフロントローラーの送出し量の高い側へ通したエプロンドラフト後の短繊維束Bと、送出し量の低い側へ通したエプロンドラフト後の短繊維束Aとを同時に紡出し、芯部の短繊維束Aを中心に短繊維束Bを実撚付与時に順次巻回させ、芯部の短繊維束Aをこより状に包み込むように糸形成すればよい。
【0028】
図1は本発明の芯鞘型複合紡績糸を製造する方法の一例をモデル的に示す概略図である。
【0029】
精紡機にセットされた短繊維束Aと短繊維束Bは、それぞれトランペット1、2を経てバックローラー3に供給され、エプロンドラフト4を経た後一対のテーパーフロントローラー5a、5bに把持される。
【0030】
この一対のテーパーフロントローラー5a、5bでは、それぞれ送出し量の高い側(径の大きい側)へはトランペット1を介して短繊維束Bを供給し、送出し量の低い側(径の小さい側)へはトランペット2を介して短繊維束Aを供給する。次いでフロントローラー5a、5bに把持されながら出てきた両短繊維束A,Bを間隔3〜15mmの範囲にとって合体させ、これにリング、トラベラーで実撚を付与することによって短繊維束Aを芯部とし短繊維束Bを被覆させて芯鞘型複合紡績糸を形成し、ボビン7に巻取る。
【0031】
製織は通常の方法に従って行うことができるが、上記本発明の芯鞘型複合紡績糸をタテ・ヨコに用いる、あるいはタテ糸、またはヨコ糸に使用し他の紡績糸やフィラメントなどと交織してもよい。また組織、密度など特に限定されるものでない。
【0032】
また、編成も上記本発明の芯鞘型複合紡績糸100%、または他素材との交編など通常の方法に従って行うことができる。
【0033】
収縮処理は染色と同時に行ってもよく、通常の方法に従って行うことができるが、できる限り、高温による急激な収縮加工は避け、序々に収縮させるのが望ましい。
【0034】
布帛における分割割繊処理は特に限定されず、一般にアルカリで分割割繊処理できるが、短時間でしかも均一に分割処理できる観点から、酸処理とアルカリ(NaOH)処理を併用するのがよい。例えば、マレイン酸( 1〜3g/l、120〜130℃×30分)処理した後、NaOH( 1%OWS、80〜98℃×40〜50分)処理により分割される。
【0035】
【実施例】
[実施例1]
難溶出成分として固有粘度0.68のポリエチレンテレフタレート、易溶出成分としてエチレン5−ソジュームスルホイソフタレートとエチレンテレフタレート共重合体を特公昭47−2485号公報に記載の装置で紡糸温度295℃、紡糸速度1200m/minで紡糸した。図3に示す横断面の6分割型複合糸で、易溶出成分の複合比率を20%、30%、40%と変更し、その後、3.3倍の延伸倍率で通常の延伸を行い、ケン縮付与後カットして2.5d×51mmの分割可能型複合繊維を得た。(分割後の単繊維デニールは0.33d、0.29d、0.25d である。)これらの分割可能型複合繊維を短繊維束Bとして、それぞれ100%で通常の綿紡績方式に通し、太さ200ゲレン/ydの粗糸を作製した。一方、短繊維束Aとして3d×51mmで沸水収縮率が18%、24%、38%、42%のポリエステル高収縮繊維からなる原綿を用意し、同様にそれぞれ100%で太さ300ゲレン/ydの粗糸を作製した。上記で作製した粗糸を一対のフロントテーパーローラーを有する2インチリング精紡機に仕掛け、短繊維束Aの粗糸をトランペットを介してフロントローラーの送出し量の低い側へバックローラーから供給し、また、短繊維束Bの粗糸も同様にフロントローラーの送出し量の高い側へ供給した。精紡トータルドラフト32倍で番手16’S(綿番手)、撚係数K=3.7(14.8t/in)で芯鞘型複合繊維を製造した。
【0036】
これら芯鞘型複合繊維を90℃x 20minで撚止めセットした後、それぞれタテ×ヨコ密度=99×67本/inの平織物を作製し、湯洗いしたのち、マレイン酸2g/l、130℃×35minにて酸処理した。引き続きNaOH1%OWS 98℃x55minで脱海処理を行い、 130℃x45minで染色した。得られた織物を10人のパネラーで、ソフト性、張り腰、ふくらみを官能評価した。織物収縮加工時の収縮安定性と官能評価結果を表1に示した。
【0037】
表1の結果から、比較例1〜4は分割可能型複合繊維の分割割繊後のデニールが0.33dと太いため、狙いとした超ソフト性の点で不良であった。また比較例4、7、9は収縮率が高く、規定の織物幅が得られない他、収縮加工性が不安定で工業的に量産化できないものであった。さらにフィラメント収縮率の低い比較例1、5、8は織物にふくらみがなく、張り腰、反発性の点でも問題があった。一方、実施例1〜3は加工性、官能風合ともに優れた評価を得た。
【0038】
【表1】
Figure 0003562146
【0039】
【発明の効果】
本発明によれば、超マイクロファイバーの性能を生かし、パウダータッチ、ピーチ、超ソフト風合で張り腰・反発性、ふくらみを有し、抗ピル性、表面品位の良好な製品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の芯鞘型複合紡績糸の製造に用いる精紡機の一例をモデル的に示す概略図である。
【図2】本発明の芯鞘型複合紡績糸の製造に用いる精紡機の一例の要部をモデル的に示す概略図である。
【図3】本発明で用いる分割割繊前の分割可能型複合繊維の一例をモデル的に示す概略横断面図である。
【図4】本発明で用いる分割割繊後の分割可能型複合繊維の一例をモデル的に示す概略横断面図である。
【符号の説明】
1:トランペット
2:トランペット
3:バックローラー
4:エプロンドラフト
5a:テーパーフロントローラー
5b:テーパーフロントローラー
7:ボビン
A:短繊維束A
B:短繊維束B

Claims (3)

  1. 芯部が短繊維束A、鞘部が短繊維束Bからなる芯鞘型複合紡績糸であって、該短繊維束Aは熱水収縮率が20〜40%であるポリエステル繊維からなり、該短繊維束Bは、分割後の単繊維繊度が0.3デニール以下である分割可能型複合繊維からなり、かつ短繊維束Bの分割可能型複合繊維が一方成分により他方成分が複数個に分割された分割可能型複合繊維であって、一方成分が全構成単位の3モル%以上がエチレン5−ソジウムスルホイソフタレートであり、かつ80モル%以上がエチレンテレフタレートであるポリエステルであり、他方成分として80モル%以上がエチレンテレフタレートであり、かつ一方成分に対するアルカリ溶解速度比が0.5以下であるエチレンテレフタレートであるポリエステルからなることを特徴とする芯鞘型複合紡績糸。
  2. 一対のテーパーローラーからなるフロントトップローラーおよびフロントボトムローラーを有するリング精紡機を用いて糸形成されたこと特徴とする請求項1に記載の芯鞘型複合紡績糸。
  3. 請求項1または2に記載の芯鞘型複合紡績糸から形成され、分割可能型複合繊維が分割割繊処理されていることを特徴とする布帛。
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