JP3543354B2 - 交編糸用ドラム状パッケージ及びそれを用いた交編タイプストッキング編地の製造方法 - Google Patents
交編糸用ドラム状パッケージ及びそれを用いた交編タイプストッキング編地の製造方法 Download PDFInfo
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は弾性糸とナイロン6フラットヤーンとから交編タイプのストッキング編地を編成する際に用いられる交編糸用ドラム状パッケージ及びそれを用いた編地製造方法に関するものである。さらに詳しくは、そのナイロンフラットヤーンの供給パッケージを大型化して補給インターバルを延長することにより、交編編機の連続運転時間を大幅に延長しても、編地品位良好なストッキング用交編編地を得ることができる交編糸用ドラム状パッケージ及び編地製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
弾性糸とナイロンフラットヤーンとの交編により製造されるストッキング編地はフィット性が高くまた耐久性にも優れること等から、ストッキング製品の多くに使用されてきている。
【0003】
このようなストッキング用交編編地には、弾性糸として、“スパンデックス”をはじめとする伸度300〜600%程度のポリウレタン弾性糸、また、そのポリウレタン弾性糸にナイロン糸を1000〜3000t/m程度のカバリング撚数で一重に巻き付けてなるシングルカバリングヤーン(SCY)、二重に巻き付けてなるダブルカバリングヤーン(DCY)、あるいはポリウレタン弾性糸と被覆原糸とを同時仮撚りしてなる被覆弾性糸が使用されている。
【0004】
そして、この弾性糸は、製編する際に通常のナイロン糸(フラットヤーン)と交編され、得られるストッキング製品の透明性やソフト性を向上させることが一般的に行われている。
【0005】
この交編用のナイロン糸としては、従来、特開平2−139426号公報に記載されているように、通常の紡糸延伸法によるナイロン延伸糸が一般に用いられ、この延伸糸は綾角1〜5度のパーン状パッケージとして編立てに供せられてきた。
【0006】
例えば、通常の方法で紡糸して得られた未延伸糸を3〜4倍程度に延伸しパーン状パッケージに巻き取ったフィラメントヤーンが交編糸に用いられ、また、ストッキング編地用という点から、伸度30〜50%程度、強度4〜8g/d程度、フィラメント数1〜15程度(多くは2〜7)、糸条繊度6〜25デニール程度の糸条が用いられている。
【0007】
一方、弾性糸とナイロン糸とを交編してストッキング編地を製造する場合、供給原糸のパッケージのそれぞれ1個ないし数個をクリールに仕掛けて編機の運転を開始させ、それら仕掛けた供給原糸パッケージが空になると編機の運転を停止させて新しいパッケージと交換し供給原糸を繋ぎ換え再スタートさせるというバッチ式の作業が行われている。
【0008】
そこで、この供給原糸パッケージの交換頻度を減らして編立て生産性を向上させるために、供給原糸パッケージの大型化が要求されてきている。
【0009】
また、交編編機の編立て速度の高速化につれて編機を連続運転できる時間は短くなってきつつあり、この点からも供給原糸パッケージの大型化が要求されてきている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、交編用のナイロン糸パッケージの場合、パーン状パッケージの大型化には限界がある。即ち、パッケージ長を長くするとパーン上端と下端での解舒張力差が極めて高くなって、一般にパーンビケとよばれるようなヒケ状の斑が発生し、交編編地の品位を低下させる問題が生じてくるし、また、編立機のクリールスタンドの大型化や操作性悪化等の問題が生じてくるので、パーン長をあまり長くすることはできない。また、巻径を大きくするとパーン内外層の糸条物性差や解舒張力差が大きくなるので好ましくなく、さらに、リング延伸撚糸機におけるリング径を大きくしなくてはならないので、設備上の対応が容易ではない。
【0011】
これら状況からしてパーン状パッケージの場合は、一般的に2kg巻程度までしか実用的には使用できず、大型化の要求に十分対応できないという大きな問題があった。
【0012】
そこで、本発明は、弾性糸とナイロンフラットヤーンとを交編してストッキング編地を製造する工程において、交編糸供給パッケージを大型化した場合でも、また、ドラム状パッケージから供給するにもかかわらず、ヒケ状斑がなく染色均一性にも優れた高品位のストッキング用交編編地を得ることができる交編糸パッケージ及び交編編地製造方法の提供を主たる目的とする。
【0013】
また、ストッキング編地に要求される良好な編地品位や編立性を保ちつつ、交編編み機の連続運転時間の大幅延長を容易に行うことができ、生産性向上を図るために有効なパッケージ及び方法の提供を目的とする。
【0014】
さらに、供給パッケージの巻量を任意に設定することが容易であって、交編の連続運転時間の長短調整を容易に行うことができるパッケージ及び方法の提供を別の目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するため、本発明の交編糸用ドラム状パッケージは、交編タイプストッキングの交編糸用ナイロン6フラットヤーンを巻いてなるドラム状パッケージにおいて、1トラバース糸長A(m) 、巻幅B(mm)及び綾角C(度)が、下記式(I)、(II)及び(III)を同時に満足することを特徴とする。
1.35≧A≧0.75 ・・・(I)
120≧B≧45 ・・・(II)
1.5×[(B/20)+2]≧C≧B/20+2 ・・・(III)
【0016】
また、本発明の交編タイプストッキング編地の製造方法は、弾性糸とナイロン6フラットヤーンとを交編してストッキング編地を製造する際に、前記ナイロン6フラットヤーンが、前記した本発明の交編糸用ドラム状パッケージから解舒されつつ供給される糸条であることを特徴とする。
【0017】
なかでも、ドラム状パッケージの巻厚方向のドラム端部巻径D(mm)と最小巻径E(mm)とが下記式(IV)の関係を有することが交編ストッキング編地の均一性の点で好ましい。
3.0≧(D−E)/2≧0 ・・・(IV)
【0018】
ここで、ドラム状パッケージの巻厚方向のドラム端部巻径D(mm)、最小巻径E(mm)、巻幅B(mm)は、図1(ドラム状パッケージの巻形状を模式的に示すパッケージ断面図)中に図示した位置での径、幅である。
【0019】
また、ナイロン6フラットヤーンは、紡糸した糸条を巻取ることなく直接延伸して3000m/分以上の高速で巻取った、沸騰水収縮率12%以上であることが交編編地のヒケ斑の低減や均染性の点で好ましく、また糸条繊度6〜25デニール、フィラメント数1〜15であることが、交編ストッキング編地としての実用面で好ましい。
【0020】
本発明に係る交編糸用ドラム状パッケージは、その交編糸とするナイロン6フラットヤーンが、1トラバース糸長A(m) 、巻幅B(mm)及び綾角C(度)が、1.35≧A≧0.75、かつ、120≧B≧45、かつ、1.5×[(B/20)+2]≧C≧B/20+2の関係を満足することを特徴とする。
【0021】
このドラム状パッケージは本発明の第1の目的である交編用ナイロンフラットヤーンの補給インターバルを延長し、合理的に連続供給する上で2.2kg以上の巻量であることが望ましいが、特に限定されるものではない。
【0022】
一般的に交編編地用のナイロンフラットヤーンをドラム状パッケージで供給すると、ドラムの端面とストレート部との解舒張力変動差や収縮差などに起因してヒケ状の斑が編地上に発生し易いので、編地品位の良好なストッキング製品を得るためにドラム状パッケージでの交編糸の供給は従来は行われていなかった。
【0023】
ところが、ドラム状パッケージで供給する場合に特に生じ易いヒケ状の斑は、ドラム端面に起因するものであって、そのドラム状パッケージの1トラバース糸長A(m) 、巻幅B(mm)及び綾角C(度)と密接な関係にあり、これらの値を適正化することによってヒケ斑の発生は抑制できることを見いだし本発明に至った。即ち、ヒケ斑発生は1.35≧A≧0.75、かつ、120≧B≧45、かつ、1.5×[(B/20)+2]≧C≧B/20+2の関係を同時に満足する特定の範囲内にすることによって大幅に抑制できる。
【0024】
1トラバース糸長とはトラバース1往復あたりの巻取糸長をあらわすもので、1トラバース糸長A(m)がA>1.35の場合には、ドラム端面に露出する糸長が長くなり過ぎ、交編編地での部分的な収縮率差によってヒケ状のムラが目立つため実用に適さない。また0.75>Aの場合では巻取中の瞬間的な張力変動が大きくなると共に、一般的にドラム端面折返し部の糸の溜まり量が大きくなり、解舒時の張力変動も拡大するため不適当である。1トラバース糸長A(m)は下記式(V)を満たすことが、交編編地のヒケ状の斑を低減し、編地品位を向上する上でより好ましい。
【0025】
1.2≧A≧0.8 ・・・(V)
つぎに、巻幅B(mm)については、B<45の場合では同一重量を巻上げる場合のドラムの巻径が大きくなり過ぎ、また糸条を単位時間にトラバースさせる回数が大きくなり過ぎるために実用に適さない。一方、B>120の場合では、第1解舒ガイドから解舒側ドラム端面までの距離と第1解舒ガイドから反解舒側ドラム端面までの距離との差が大きくなり過ぎることにより、解舒時の瞬間的な張力変動が大きくなり過ぎ、ヒケ状の斑が目立ちやすい傾向にあるため不適当である。
【0026】
また綾角C(度)については、C<(B/20)+2の場合では、ドラム端面に露出する糸長が長くなり交編編地にヒケ状の斑が目立つと共に、ドラムの端面部がふくらむため、解舒時に輪抜けが発生してナイロンフラットヤーンの安定供給ができず、実用に適さない。また、1.5×[(B/20)+2]<Cの場合では、ドラム状パッケージの端面に溜る糸量が大きくなり過ぎ、いわゆる耳高の状態となり、解舒した瞬間のドラム端面部とストレート部の解舒張力差、収縮差が大きくなりヒケ状の斑が大きく、かつ多くでるため不適当である。
【0027】
具体的には、単一ドラムでのドラム端部の巻径D(mm)とドラム最小巻径E(mm)が下記式(IV)の関係を満たせばよい。
3.0≧(D−E)/2≧0.0 ・・・(IV)
このような関係を有するドラム状パッケージは、例えば、トラバースの折返しを早めるなどの手段により実現することが可能である。
【0028】
なお、巻始めから巻終わりに至るまでの綾角は一定である必要はなく、綾角の中心値に対し周期的に数%の揺動をかけたり、リボン帯を回避するために瞬間的に変化させたり、またさらにドラムフォームの改善等を目的に中心綾角に対して±50%程度の漸減や漸増を行うこともかまわない。この場合、巻始めから巻終わりまでの間の1トラバース糸長A(m)、巻幅B(mm)、綾角C(度)の値が本発明の範囲を満たしていればよい。
【0029】
交編用ナイロン糸は、その沸騰水収縮率が12%以上と高いことが交編編地上のヒケ斑発生を抑制する上で好適であり、さらには13%以上であることが好ましい。これは、交編糸の収縮レベルを高くすることによって、ドラムの端面部とストレート部との微少な熱収縮率差を吸収することができるため、ストッキング編地を熱セットする時のヒケ状斑の顕在化が抑えられるからである。
【0030】
沸騰水収縮率を高くするためには、そのナイロン糸の製糸工程における延伸倍率を高く、また熱処理温度を低くすることが有効である。
【0031】
さらに、弾性糸との交編を行ってストッキング編地を形成するという点からして、糸条繊度6〜25デニール、フィラメント数1〜15であることが実用上必要である。透明性、編地強度といったストッキング編地の要求特性を同時に満足させるためには、さらに2〜7フィラメント糸であることが特に好ましい。
【0032】
さらにまた、このような交編糸のパッケージは、溶融紡出した糸条を冷却、給油した後、引続き連続して延伸し、3000m/分以上の高速で巻取った、均一性の高いナイロン6ドラム状パッケージであることが好ましい。
【0033】
例えば、溶融紡出した糸条を冷却、給油した後に引取り、引続き1.5〜2.5倍程度に延伸し、120〜190℃程度で熱処理し、3000m/分以上、好ましくは4000m/分以上でドラム状に巻取ることによって製造できる。
【0034】
これに対し、従来の紡糸−延伸法による交編編地用ナイロンフラットヤーンは、未延伸糸段階で巻取って安定化させた後に延伸してパーン状パッケージに巻取った糸条であるため、未延伸糸段階での給湿斑による構造斑が延伸により拡大され、含金染料で染色すると編地にかすり状の染斑を誘発するので、均染性を高めることが困難である。
【0035】
この製糸に供するナイロン6は、ε−カプロラクタムの重合体の他、それを主体とする共重合体であってもよく、例えば、透明性を向上するなどの目的で特定のジアミド化合物を0.1〜1.0重量%程度配合することや、メチレン鎖長の異なるポリアミドを少量共重合させたり、あるいは溶融紡糸時にチップ添加などの手段により添加することも可能である。具体的な添加剤としては、エチレンビスステアリン酸アミドなどで代表されるジアミド化合物などや、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612などの他のポリアミドなどが挙げられる。
【0036】
またこれらに対して必要に応じて艶消し剤、顔料、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、染色性向上剤、抗菌剤などを配合してもよい。
【0037】
なおナイロン6フラットヤーンは通常の直線状繊維の形態であればよく、断面形状は丸断面、Y型断面、T型断面、偏平断面あるいはそれらの複合、もしくはそれらをさらに変形させたような形状でもかまわない。
【0038】
交編に用いる弾性糸は、弾性糸のまわりに被覆原糸を一重に巻付けたSCY
(シングルカバリングヤーン)、または二重に巻付けたDCY(ダブルカバリングヤーン)などの被覆弾性糸であることが望ましいが、弾性糸と被覆用糸を同時仮撚りした被覆弾性糸であってもよい。また、ポリウレタンのようなエラストマのみからなる弾性糸を用いて交編するベアニットインとしてもよい。
【0039】
沸騰水収縮率の測定方法: 巻糸体より1/30(g/デニール)の巻取張力で直取りを行い、枠周1.125mの検尺機により20回、綛を取る。枠から外した綛を24時間フリーで放置後、フックにかけ、フィラメントデニールの4/3の荷重を下端にぶら下げ、綛長を測定し、L1とする。次に100℃に沸騰した湯槽内に綛を沈め30分処理した後、24時間フリーの状態で風乾させる。その後、同様にフィラメントデニールの4/3の荷重を下端にぶら下げ、綛長を測定し、L2とする。沸騰水収縮率(%)は(L1−L2)/L1×100であらわす。
【0040】
【作用】
弾性糸とナイロンフラットヤーンとから交編タイプのストッキング編地を編成するにあたっては、ナイロンフラットヤーンの供給をドラム状パッケージにより行い、その巻量を大きくすれば、パッケージの補給インターバルを容易に延長できるので、連続編成時間を延長できる。
【0041】
しかし、このストッキング編地交編用のナイロンフラットヤーンを通常のドラム状パッケージで供給して交編編地を編成した場合には、染色、熱セットして得られた交編編地上にドラム状パッケージ端面に起因する周期的なヒケ状の斑が目立ち、ストッキング製品に要求される編地品位を満足させることができない。
【0042】
即ち、ドラム状パッケージの場合、ドラム端部とストレート部との短周期的な糸物性差(特に収縮差)や解舒張力差がかなりあるので、編地を形成した場合、その糸物性差や解舒張力差により編地を構成するループの形態差が生じヒケ状の斑として目立つようになるからである。
【0043】
そこで、このヒケ斑の問題を解消し、ストッキング編地に要求される良好な編地品位を得ることについて検討したところ、特定範囲の1トラバース糸長A、巻幅B及び綾角Cをとるドラム状パッケージとすれば、さらに好ましくは、ドラム状パッケージの形態(端部耳立ち)および交編ナイロン糸の沸騰水収縮率を特定水準にすれば、ヒケ斑を誘発するドラム端面部とストレート部との糸物性差や解舒張力差を抑制することができ、ヒケ斑を防止できるという知見が得られた。
【0044】
まず第1に、糸条長手方向の微細な糸条物性差を抑え平準化すると共に、編地としての極在的な収縮量が大きくならないようにすること、特にドラムパッケージの端面折返し部とストレート部の収縮差をできるだけ小さく、またドラム端面に露出する糸長を短くすることが必要である。
【0045】
第2に、弾性糸と交編編地を編成する時、ドラム状パッケージからナイロンフラットヤーンは解舒され交編編機に供給されるが、解舒される時の瞬間的な張力変動をできるだけ小さくすることが必要である。これは解舒張力の瞬間的な変動が、編込み時の張力変動となり編目ループの形成が不均一となること、さらに編地熱処理時の収縮斑としてヒケ状の斑となるためである。
【0046】
これに対し、パーン状パッケージでは、パーンの上端から下端までの解舒距離差が大きいため解舒張力変動は波状の大きな長周期となり、瞬間的な張力変動は小さくヒケ状斑にはなり難い。
【0047】
これら第1、2の必要条件に対し、具体的にはドラム状パッケージの1トラバース糸長A(m) 、巻幅B(mm)及び綾角C(度)の間を、1.35≧A≧0.75、かつ、120≧B≧45、かつ、1.5×[(B/20)+2]≧C≧B/20+2なる特定の関係を満たすように構成することによって、良好な品位の交編編地が得られることを見いだした。
【0048】
またさらに単一ドラムでのドラム端部の巻径D(mm)とドラム最小巻径E(mm)が3.0≧(D−E)/2≧0の関係を満たすように構成することが好ましい。3.0<(D−E)/2ではドラム巻取時におけるドラム端部と中央部の巻取速度差が大きくなり過ぎると共に、解舒時の張力変動が拡大するため、交編編地のヒケ状の斑が拡大するため好ましくない。また(D−E)/2<0では巻取時にドラム端部が崩れやすくなり、安定したドラム状パッケージを形成することが困難である。
【0049】
第3として、弾性糸と交編編地を構成するナイロンフラットヤーンは、その沸騰水収縮率が高いことがドラム端部とストレート部との微少な熱収縮率差を吸収することができ、ストッキング編地を熱セットする時のヒケ状斑の顕在化を抑えることができるため好ましく、具体的には12%以上であること、さらに好ましくは、13%以上であることがより好ましい。またさらにナイロンフラットヤーンの糸条繊度は6〜25デニール、フィラメント数は1〜15であることが実用上好ましい。
【0050】
本発明ではさらに3000m/分以上の高速で巻取った、均一性の高いナイロン6ドラム状パッケージであることが好ましい。従来の交編編地用ナイロン6フラットヤーンは、一般的に紡出して巻取った糸条(未延伸糸)を安定化させた後、延伸してパーン状パッケージに巻取っている。すなわち未延伸糸の段階で部分的に結晶化した糸条を延伸して巻取るため、結晶部分と非結晶部分の構造差が拡大され、含金染料などで染色するとかすり状の斑が発生する場合があるが、本発明のように紡出した糸条を直接延伸して高速で巻取ったドラム状パッケージを用いることにより、均染性の高い交編編地が得られるのである。
【0051】
ストッキング交編の場合、ドラム状パッケージを用いると、このように、ドラム端部とストレート部の糸物性差や短周期的な解舒張力差により、交編編地を構成する編目ループの形態差発生し易く、またその差が目立ち易くなるため、従来はパーン状パッケージでの供給が必要と考えられてきた。しかし本発明のように交編に供するドラム状パッケージの形態を特殊な値に規定することによって、ストッキング交編編地の品位を保持もしくはさらに向上した上で、ドラム状パッケージでの供給を可能としたものである。
【0052】
また、ドラム状パッケージは、パーン上パッケージに比べ、巻取時にその巻幅や巻厚を変更することが容易であるので、巻量を増大させることや巻量を任意水準に設定することが容易に行える。従って、巻量変更により、交編編機の連続運転時間を延長したり、あるいは、その連続運転時間を任意時間に設定することが容易に行える。
【0053】
【実施例】
[実施例(及び比較例)1]
艶消し剤を含まない98%硫酸相対粘度が2.7のナイロン6を溶融紡糸して冷却し、ガイド給油によりストレート油剤を付与した後、第1ゴデットローラーにて引き取り、引続き第2ゴデットローラーとの間で2.25倍に延伸するとともに、加熱した第2ゴデットローラーに引きまわして160℃で熱処理を行い、カムトラバース方式(=エンドレススクロールカムに係合したトラバースガイドを往復させて糸条をトラバースさせる方式)のスピンドルドライブ型巻取機にて巻取速度4000m/分で、外径125mmの紙製ボビン上に巻取り、巻取重量3.5kgのドラム状パッケージとした。巻取られたナイロン6フラットヤーンは、糸条繊度15デニール、3フィラメント、強度6.5g/d、伸度43%、沸騰水収縮率12.8%であった。
【0054】
この際、ドラム状パッケージの1トラバース糸長Aはカムスクロールの回転数により変更した。また巻幅Bはカムスクロールのスクロール幅を変更することにより、カムトラバースの振り幅を変えて変更した。綾角Cは巻取軸に対しての糸を綾振る角度であるため、1トラバース糸長Aと巻幅Bの相対関係により一義的に決定される。なおこの時、リボン帯抑制を目的としてトラバース速度中心値に対して、周期3秒、振幅4%の揺動を加えた。
【0055】
また、カムスクロールの折返し部分の角度を変更することによりドラム端部の巻径D(mm)と最小巻径E(mm)の差を変更した。
【0056】
弾性糸には、20デニール3フィラメントのポリウレタン系弾性繊維に7デニール、5フィラメントのナイロン6フィラメントヤーンを、下撚りZ方向2411t/m、上撚りS方向2066t/mで通常の方法で2重に被覆(ダブルカバリング)することによって得られた2重被覆弾性糸を用いた。
【0057】
上記したナイロン6フラットヤーンと弾性糸とを、それぞれ2本毎の4本給糸、針数400本、シリンダー径4インチのストッキング編立機で、回転数600rpmにて交編してストッキング用交編編地とした。この交編は、ナイロンフラットヤーンのドラム状パッケージが満管から消費され尽くすまでの連続編立てにより行った。
【0058】
この交編における編成糸切れや解舒性等によって編立性を評価した。
【0059】
交編糸用パッケージの巻量が3.5kgと大きいにもかかわらず、本発明に係る No.7、8、9、11、12の場合の交編は、編立性が良好であったので、従来の2.0kgのパーン状パッケージの場合(後述の比較例1)に比し、連続編立時間をおおむね1.75倍程度まで延長することができ、編立て作業性が大幅に改善された。
【0060】
次に、得られた交編編地を、酸性染料“キシレンブルー”を用い、加熱した染色バケツ内で常法にて染色し乾燥した後、幅145mmのアルミ製セットボードにセットして110℃、30秒間の熱セットを行った。このように酸性染料で染色して得られた交編編地を十分乾燥して幅140mmの白色のアクリルボードにはめ、編地を肉眼観察することによって、ヒケ状斑特性について4段階評価を行った。評価基準はそのヒケの大きさ、および数について行い、それぞれ、A:ヒケがなく良好、B:ややヒケがあるが実用上問題なし、C:ヒケがやや目立ち不良、D:ヒケが完全に目立ち不良、として表示した。
【0061】
また、酸性染料の代わりに含金染料“パラチンブルー”を用いて上記と同様に染色し、染色した交編編地の均染性を、上記と同様にして4段階評価を行った。評価結果は、それぞれ、A:染斑なく良好、B:やや染斑があるが実用上問題なし、C:染斑がやや目立ち不良、D:染斑が完全に目立ち不良、として表示した。
【0062】
本発明で特定した条件のドラム状パッケージを用いた No.7、8、9、11、12の場合は、その巻量が3.5kgと大きいにもかかわらず、ヒケ斑特性の点でも均染性の点でも問題なく編地品位の優れたストッキング用交編編地を得ることができた。
【0063】
これに対し、本発明で特定したドラム巻幅A及び綾角Bの条件が外れる No.1、2、3、4、5、6、10、13、14の場合は、ヒケ斑が目立ち、ストッキング用には不適当な交編編地であった。
【0064】
[比較例1]
実施例1と同一のナイロン6チップを溶融紡糸して冷却し、給油し、第1ゴデットローラーで引取り、延伸することなく第2ゴデットローラーで800m/分で引取って巻取った。得られた未延伸糸をボビン長(トラバース長)の異なる2種類のリング延伸撚糸機でそれぞれ3.8倍に延伸し、2.0kg又は3.5kgのパーン状パッケージに最終巻径が等しくなるように巻取った。このパーン状パッケージのナイロン6フラットヤーンを、実施例1と同様に交編し染色、熱セットして評価し、その結果を表1の No.15、16に示した。
【0065】
パッケージの巻量が2.0kgと少なかった No.15の場合は、ヒケ斑はみられなかったが、巻量が少ないことから連続編立時間は従来同様に短いものであったし、また、含金染料でのかすり状の染斑が目立ち均染性の点で劣っていた。
【0066】
また、巻量を3.5kgと多くしたパッケージの No.16の場合は、長周期のヒケ斑が目立ち、また、含金染料での均染性も劣っていた。
【0067】
【表1】
【0068】
[実施例2]
第1ゴデットローラーと第2ゴデットローラーとの間の延伸倍率を変更すると共に熱処理温度を変更して、得られるナイロン6糸の特性(沸水収縮率)を異ならせた以外は、実施例1と同様に紡糸及び延伸を行って4000m/分で巻取り、15デニール3フィラメントのナイロン6フラットヤーンを、1トラバース糸長(A)1.15m、巻幅(B)75mm、綾角(C)6.9度、巻量3.5kgのドラム状パッケージに巻上げた。
【0069】
得られたドラム状パッケージのナイロン6糸を交編糸に用いて、実施例1と同様に交編し酸性染料で染色し、実施例1のヒケ状斑特性と同様に評価した。
【0070】
表2に示すとおり、交編編地のヒケ状斑を抑制するためには、沸騰水収縮率が高い方が有効であり、12%以上であった No.17〜20の場合はヒケ斑の問題がなくストッキング用に好適な交編編地とすることができた。
【0071】
また、沸騰水収縮率を高くするためには、延伸倍率を高く、また熱処理温度を低くすることが有効であった。
【0072】
【表2】
【0073】
【発明の効果】
本発明によると、弾性糸とナイロンフラットヤーンとを交編してストッキング編地を製造する工程において、交編糸供給パッケージを大型化した場合でも、また、ドラム状パッケージから供給するにもかかわらず、ヒケ状斑がなく染色均一性にも優れた高品位のストッキング用交編編地を得ることができる。
【0074】
即ち、ストッキング編地に要求される良好な編地品位や編立性を保ちつつ、交編編み機の連続運転時間を大幅に延長させることが可能であり、編立工程における生産の効率化が推進され工業的実施に非常に有効である。
【0075】
また、交編糸パッケージの巻量調整が容易であるので、交編の連続運転時間の長短調整を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ドラム状パッケージの巻形状を模式的に示すパッケージ断面図である。
【符号の説明】
D:巻厚方向のドラム端部巻径、 E:巻厚方向の最小巻径、 B:巻幅
Claims (7)
- 交編タイプストッキングの交編糸用ナイロン6フラットヤーンを巻いてなるドラム状パッケージにおいて、1トラバース糸長A(m) 、巻幅B(mm)及び綾角C(度)が、下記式(I)、(II)及び(III)を同時に満足することを特徴とする交編糸用ドラム状パッケージ。
1.35≧A≧0.75 ・・・(I)
120≧B≧45 ・・・(II)
1.5×[(B/20)+2]≧C≧B/20+2 ・・・(III) - 前記交編糸用ナイロン6フラットヤーンが沸騰水収縮率12%以上を有するフィラメントからなることを特徴とする請求項1記載の交編糸用ドラム状パッケージ。
- 前記ドラム状パッケージの巻厚方向のドラム端部巻径D(mm)と最小巻径E(mm)とが下記式(IV)の関係を満足することを特徴とする請求項1又は2記載の交編糸用ドラム状パッケージ。
3.0≧(D−E)/2≧0 ・・・(IV) - 前記ドラム状パッケージの1トラバース糸長A(m) が下記式(V)の関係を満足することを特徴とする請求項1、2又は3記載の交編糸用ドラム状パッケージ。
1.2≧A≧0.8 ・・・(V) - 前記交編糸用ナイロン6フラットヤーンが糸条繊度6〜25デニール、フィラメント数1〜15を有することを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の交編糸用ドラム状パッケージ。
- 前記ドラム状パッケージの巻量が2.2kg以上であることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の交編糸用ドラム状パッケージ。
- 弾性糸とナイロン6フラットヤーンとを交編してストッキング編地を製造する際に、前記ナイロン6フラットヤーンが、請求項1、2、3、4、5又は6記載の交編糸用ドラム状パッケージから解舒されつつ供給されるフィラメント糸であることを特徴とする交編タイプストッキング編地の製造方法。
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JP05346894A JP3543354B2 (ja) | 1994-03-24 | 1994-03-24 | 交編糸用ドラム状パッケージ及びそれを用いた交編タイプストッキング編地の製造方法 |
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