JP3543165B2 - 木質床材および床材用木質板の製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、木質床材、特に遮音性を有する木質床材および同床材に用いられる木質板の製造方法に関する。
【0002】
なお、この明細書において、「遮音性」とは、床衝撃音遮断性能をいう。
【0003】
【従来の技術】
遮音性を有する木質床材としては、図10に示すように、裏面に開口した複数の溝(24)を有する木質板(22)と、木質板(22)の下に配された制振シート材、遮音シート材、緩衝シート材等の防音部材(6) とよりなるものが広く知られている。また、木質板(22)の表面には、通常、木質単板等の貼着や塗装等により化粧層(3) が形成されている。
【0004】
ここで、木質床材(21)の木質板(22)は、合板等の単体の板の下部に溝切り加工を施して裏面に開口した複数の溝(24)を形成することにより製造せられており、その溝(24)は、木質板(22)に可撓性を付与して床下地に馴染ませ易くするとともに、遮音性を向上させるために、深く形成されているものが少なくない。例えば、特開平6−336814号公報に開示されているように、木質板が5プライ合板よりなる場合、通常、上から2層目の単板まで達するような深さの溝が形成されている。
【0005】
また、図11に示すように、木質板(32)が上板(32A) と下板(32B) とよりなり、下板(32B) に裏面に開口した溝(34)が形成され、上板(32A) と下板(32B) との間に弾性シート材または緩衝シート材等の防音部材(33)が介在されている木質床材(31)も、従来より知られている。この木質床材(31)は、防音部材(33)、下板(32B) の溝(34)および防音部材(6) の3重の防音機能を有するため、非常に遮音性に優れている。
【0006】
そして、この木質床材(31)の木質板(32)は、上板(32A) と下板(32B) とを、防音部材(33)を介在させた状態で互いに接合したのち、下板(32B) の下部に溝切り加工を施して裏面に開口した複数の溝(34)を形成することにより製造せられている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来の木質床材のうち、図10に示す木質床材(21)については、次のような3つの問題があった。即ち、図10に示す木質床材(21)の場合、木質板(22)における溝(24)の上側部分が溝(24)のない部分に比べてかなり肉薄となるので、その部分の曲げ強度が十分とはいえなかった。したがって、施工された床材(21)の上を人が歩いて局部的な荷重がかかると、木質板(22)の溝(24)の上側部分が破損して、ミシッという不快な音(以下、「踏み鳴り」という。)を生じることがあった。
【0008】
しかも、上記木質床材(21)の場合、木質板(22)に谷反りを生じることが少なくなかった。このような谷反りの原因としては、木質板(22)の含水率分布にバラツキがあること、複数の深い溝(24)の形成により木質板(22)のバランスが損なわれていること、木質板(22)の表面に形成された化粧層(3) により木質板(22)の上下間のバランスが損なわれていること等が考えられる。そして、上述のように木質板(22)に谷反りが生じると、木質板(22)と防音部材(6) との接合や木質床材(21)の床下地への接着施工が行ない難いという問題があった。また、谷反りした木質床材(21)は、施工し難いだけでなく、施工後その一部が床下地から剥れて浮き上がるという問題があった。
【0009】
また、複数の深い溝(24)が形成された直後の木質板(22)は、瞬間的に谷反り傾向を示すが、深い溝(24)によって剛性が弱くなっているので、平面上に載置するとその自重によってフラットになることがあり、そのさい曲げ強度の不十分な溝(24)の上側部分が溝(24)の長さ方向に沿って折れ曲がってしまうことがあった。また、谷反りした状態の木質板(22)を防音部材(6) と接合するさい、さらには谷反りした状態の木質床材(21)を床下地に接着施工するさいにも、木質板(22)の溝(24)の上側部分が溝(24)の長さ方向に沿って折れ曲がる場合があった。これらの場合には、木質床材(21)表面に折れ曲がり部の条が現れ、美観上好ましくなかった。
【0010】
一方、図11に示す木質床材(31)の場合、上述した谷反りの問題や折れ曲がり部の条の表出の問題については、上板(32A) と下板(32B) との間に防音部材(33)が介在されることにより幾分解消されている。しかし、溝(34)の深さが下板(32B) の厚さよりもやや浅くなされている上、下板(32B) がいずれも弾性に富む上下2つの防音部材(33)(6) に挟まれているので、施工された木質床材(31)の上を人が歩くと、曲げ強度が少ない下板(32B) の溝(34)の上側部分が破損し、木質床材(21)の場合と同様に踏み鳴りを生じるという問題があった。
【0011】
さらに、図10および図11に示す木質床材(21,31) にあっては、これらの木質板(22,32) に溝(24,34) を形成するにあたり、丸鋸を用いて溝切り加工を行なっていたが、研磨の度合による丸鋸の直径の相違、加工時の丸鋸の振動、搬送時の木質板(22,32) の振動、木質板(22,32) の厚さのバラツキ等に起因して、溝(24,34) の深さにバラツキを生じ、その結果、遮音性が安定しないという問題があった。また、溝(24,34) が浅いと、木質板(22,32) の可撓性が低下して、床下地への馴染みが悪くなる。さらに、図11に示す木質床材(31)において、溝(34)が上板(32A) にまで達してしまうと、踏み鳴り、木質板の谷反り、および谷反りに伴う溝の上側部分の折れ曲がりによる条の表出が発生する。
【0012】
本発明は、上記の各問題点に鑑みてなされたものであって、歩行時における木質板の溝の上側部分の破壊による不快な踏み鳴り、木質板の谷反り、および谷反りに伴う溝の上側部分の折れ曲がりによる条の表出が生じ難い上、安定した遮音性を有する木質床材を提供することを、その目的としている。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明のうち請求項1記載の床材用木質板の製造方法は、互いに接合せられた上板および下板よりなりかつ裏面に開口した複数の溝を有する木質板を製造するにあたり、下板の上部に溝切り加工を施して複数の上部溝を形成しておいてから、上板と下板とを接合し、次いで、下板における上部溝のほぼ下側部分に溝切り加工を施して上部溝と連続する下部溝を形成することにより、下板の厚さと同じ深さの複数の溝を木質板に形成することを特徴とする。
【0014】
本発明のうち請求項2記載の床材用木質板の製造方法は、防音部材を介して互いに接合せられた上板および下板よりなりかつ裏面に開口した複数の溝を有する木質板を製造するにあたり、下板の上部に溝切り加工を施して複数の上部溝を形成しておいてから、防音部材を介して上板と下板とを接合し、次いで、下板における上部溝のほぼ下側部分に溝切り加工を施して上部溝と連続する下部溝を形成することにより、下板の厚さと同じ深さの複数の溝を木質板に形成することを特徴とする。
【0015】
上記各方法によれば、床材用木質板に、下板の厚さと同じ深さの複数の溝を確実に形成することができる。
【0016】
また、本発明のうち請求項3記載の木質床材は、請求項1または2記載の方法により製造された木質板と、これの下に配された防音部材とよりなるものである。
【0017】
上記木質床材によれば、木質板に、下板の厚さと同じ深さの複数の溝が形成せられているので、木質板の溝の深さにバラツキを生じることがなく、遮音性が安定する。また、木質板における各溝の上側部分には、溝が形成された下板とは別の上板が存在するので、単体の木質板に深い溝が形成された場合と比べて、同部分の曲げ強度が向上する。したがって、木質板としての曲げ強度が上板に依存できるため、上述のように下板の厚さと同じ深さの複数の溝を木質板に形成することができ、その結果、施工された木質床材の上を人が歩いたさいに破損するおそれのある箇所がなくなるので、踏み鳴りが確実に防止される。しかも、木質板の下板が溝によって分断されるため、木質板の可撓性が向上し、床下地への馴染みが良好となる。さらに、上板に溝が形成される心配がなく、したがって、上板は、板としてのバランスが損なわれないため、反りが生じ難く、ひいては木質板、さらには木質床材に反りが生じるのが軽減される上、反りに伴う溝の上側部分の折れ曲がりによる条の表出も生じ難い。
【0018】
【発明の実施の形態】
次に、この発明の実施の形態を図1〜図8を参照して説明する。
【0019】
図2は、本発明による木質床材の第1の実施形態を示し、同図の木質床材(1) は、互いに接合せられた上板(2A)および下板(2B)よりなりかつ裏面に開口した複数の横溝(4) を有する木質板(2) と、木質板(2) の下に接合せられた緩衝部材(6) とよりなる。上板(2A)と下板(2B)との間には、シート材(7) が介在せられている。但し、このシート材(7) は必ずしも必要ではない。木質板(2) の下板(2B)には、上面に開口しかつこれの長さ方向にのびる複数の上部縦溝(5) が形成されている。横溝(4) の深さは下板(2B)の厚さと一致しており、その中間部には段差が設けられて、段差の上側の溝幅が段差の下側の溝幅よりも狭くなされている。上板(2A)の表面には、化粧層(3) が形成されている。
【0020】
上板(2A)の材料としては、合板、中質繊維板(MDF)、パーティクルボード、ハードボード等が挙げられるが、表面への化粧および接合用加工の容易性ならびに曲げ強度を考慮して、合板または中質繊維板が好適に用いられる。合板の場合、3プライ以上のものが好ましい。合板は、通常の奇数プライのものの他に、偶数プライのものであってもよく、その場合、各層の単板の繊維方向が交互に直交するものであっても、一部の隣接する層の単板同士の繊維方向が互いに平行になるものであってもよい。また、上板(2A)は、上下2層で構成されるとともに、両層の間に、例えば、高密度軟質シートや発泡倍率1.5倍〜6倍の低発泡体シートが介在せられたものでもよい。上板(2A)の厚さは、好適には1.5〜7.5mmの範囲、より好適には2.4〜5.5mmの範囲で設定される。遮音性の面からいえば上板(2A)は薄い程良いが、厚さ1.5mm未満とすると、曲げ強度が不十分となって人が歩行するさいに溝(4,5) の上側部分が破損するおそれがあり、一方、厚さ7.5mmを越えると、床材としての剛性が高くなりすぎて遮音性が低下するおそれがあるからである。
【0021】
下板(2B)は、上板(2A)の材料の中から適当に選ばれるが、溝加工や接合用加工が容易で加工仕上りが良く、パーティクルボードやハードボードの場合よりも優れた強度の接合部が得られる合板または中質繊維板が好適に用いられる。なお、合板は、割れや抜け節等の欠陥が多く、通常化粧用台板合板として使用できない針葉樹製合板やラワン合板であってもよい。また、欠陥の多いパーティクルボードや針葉樹製合板等の周縁部に、加工が容易で、接合部の仕上りが良く、強度も相対的に強い合板や中質繊維板を配してなるものを用いてもよい。下板(2B)の厚さは、上板(2A)の厚さや木質床材(1) 全体の厚さとの関連において決定されるが、2.5〜15mmの範囲が適当である。下板(2B)にはその厚さと同じ深さの溝(4) が形成されるためか、下板(2B)の厚さが上記範囲であれば、他の条件を一致させる限り遮音性がほとんど変わらないことが判明した。もっとも、接合用加工の点からみれば、上板(2A)と下板(2B)とを合わせた厚さが5mm以上となるように、下板(2B)の厚さを設定するのが好ましい。なお、上板(2A)および下板(2B)が共に合板よりなる場合、上板(2A)の表単板の繊維方向と下板(2B)の表単板の繊維方向とは、互いに平行であっても交差していてもよい。また、上述のように上板(2A)と下板(2B)の表単板の繊維方向が互いに交差している場合において、上板(2A)の表単板の繊維方向が木質床材(1) の長さ方向と略直交するようになされているときは、木質床材(1) としての可撓性がより向上し、これによって床下地への馴染みがさらに良好となる。
【0022】
化粧層(3) は、木質単板、挽き板、コルク、模様が印刷された紙や合成樹脂シート等を上板(2A)の表面に貼着したり、塗装を施したりすることによって形成される。なお、上板(2A)が合板よりなり、化粧層(3) が木質単板よりなる場合、木質単板のヒワレを防ぐために、不織布、紙、布等の薄いシートを両者の間に介在させたり、また、合板の表単板と木質単板の繊維方向が互いに直交するように貼着するようにしてもよい。
【0023】
図2の木質床材(1) においては、その木質板(2) に、裏面に開口しかつその深さが下板(2B)の厚さと等しくなされている横溝(4) を有するものであるが、横溝(4) に加えて、或いは横溝(4) に代えて、裏面に開口しかつその深さが下板(2B)の厚さと等しくなされた縦溝を木質板(2) に形成するようにしてもよい。溝幅は、最も狭い部分において0.7mm以上であるのが好ましい。溝幅が0.7mm未満であると、遮音性を維持するために溝の数を増やす必要があり、また、切削加工用刃物の刃先を薄くする必要があって、これにより回転切削中に刃物の横振れが大きくなるので、溝付け状態の管理および刃物管理が難しくなるからである。隣り合う溝間の間隔は、好適には5〜50mm、より好適には8〜30mmとなされる。遮音性や床下地への馴染み易さという点からみれば、溝間の間隔は狭い程良いが、5mm未満では木質板(2) の強度が不十分となる一方、50mmを越えると遮音性の効果が十分とはいえず、遮音等級L−45やL−50のレベルを達成し難くなるからである。溝間の間隔は、必ずしも等間隔である必要はなく、適宜に間隔を変えてもよい。なお、化粧層(3) 表面に溝が施されている場合には、上板(2A)の破損を防止するために、化粧層(3) の溝と下板(2) の溝(4,5) とが一致しないようにするのが好ましい。下板(2B)面に占める溝(4,5) の面積比率は、好適には5〜30%、より好適には9〜22%である。5%未満であると溝の存在による遮音性等の効果が十分に発揮されない一方、30%を越えると木質板(2) の強度が不十分となるからである。
【0024】
シート材(7) は、木質床材(1) 表面の化粧層(3) とのバランスが良く、また、上板(2A)の谷反りの動きに抗し得るものが好ましく、具体的には、紙、不織布、合成樹脂含浸紙や、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニリデン、エチレン酢酸ビニル共重合体といった熱可塑性樹脂等からなる合成樹脂層の両面に同種類または異なる種類の紙、不織布等を配してなる3層シート、木質単板等が挙げられる。シート材(7) の厚さは、35μm〜0.4mmの範囲が好ましい。35μm未満では、化粧層(3) とのバランスがとれず、一方、0.4mmを越えても、谷反り防止効果に大差がないので製造コストの面から好ましくなく、しかも層間剥離のおそれがあるからである。化粧層(3) が木質単板よりなる場合、シート材(7) の引張り強さ(JIS・P8113に準じる)は、好適には幅15mm当り4kgf以上、より好適には5kgf以上であることが要求される。但し、シート材(7) に木質単板を用いる場合は、化粧層(3) と同じ性質を有するので、必ずしも上記の引張り強さを満たす必要はない。
【0025】
また、図示は省略したが、木質板(2) の下板(2B)の裏面に、例えば、ポリエチレン等の防湿性樹脂層の両面に同種類または異なる種類の紙、不織布等を配してなる防湿性3層シートを貼着するようにしてもよい。このようなシート材の存在によって、製造工程中における下板(2B)の裏面からの吸湿を防止することができ、ひいては吸湿による木質板(2) の谷反りを防止することができる。
【0026】
防音部材(6) としては、制振シート材、遮音シート材、緩衝シート材といった防音機能を有する公知の材料を、単独で、あるいは複数のものを組み合わせて用いることができ、具体例としては以下のものを例示することができる。制振シート材としては、例えば、合成ゴム、天然ゴム等のゴム、ポリ塩化ビニル、ポリウレンタン等の合成樹脂、合成樹脂と合成ゴムとの混合物、あるいはこれらの材料に鉛粉、鉄粉等の金属粉や硫酸バリウム等の粉粒体といった高比重物質を混入してなるものが挙げられる。遮音シート材としては、例えば、アスファルトにまたはアスファルトと合成樹脂若しくは合成ゴムとの混合物に鉄粉、鉄鋼スラグ等を混入して板状体にしたものが挙げられる。緩衝シート材としては、発泡体や繊維物質等が挙げられる。発泡体としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン等の合成樹脂、天然ゴム、合成ゴムを材料とする各発泡体や、これらのうちから数種類を組み合わせてなるものが挙げられ、発泡倍率は通常10〜50倍となされる。また、材料や発泡倍率、発泡形態(独立気泡、連続気泡)の異なる数種類の発泡体を組合わせてなるものを用いてもよい。繊維物質としては、インシュレーションボード、ガラス繊維、ポリエステル、ナイロン(商標)、ポリプロピレン等の不織布、フェルト、カーペット等が挙げられるが、これらの材料にアスファルトピッチ等の撥水剤や硬化後にも弾性を有するウレタン樹脂等の合成樹脂を含浸させてなるものが用いられてもよい。なお、ガラス繊維や不織布等については、木質板(2) と接着するさいに接着剤が完全に浸透して緩衝性が損なわれるという問題があるため、単独で使用する場合は厚さ4mm以上、他の材料と組み合せて使用する場合は厚さ1mm以上とするのが好ましい。また、鉄、鉛等の金属粉末、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の無機質粉末を混入してなる塩化ビニル系、合成ゴム系、アスファルト系等の材料からなる高比重(1.0以上)の軟質シートや、発泡倍率5倍以下の低発泡体シート、非発泡シートを、上記の材料と組み合わせて用いるようにしてもよい。また、床下地への接着施工のさいの接着剤の浸透による緩衝シート材の緩衝性の低下を防ぐために、木質単板、不織布、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂シート、塩化ビニル樹脂シート、合成または天然ゴムシート等を、緩衝シート材の下面に貼着し、若しくは緩衝シート材と床下地との間に介在させるようにしてもよく、または、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル樹脂といった柔軟性を有する厚さ10〜100μmの樹脂シートを、緩衝シート材の厚さの半分よりも下方に介在させるようにしてもよい。防音部材(6) の形状としては、平板状のものの他、上面および下面のうち少なくともいずれか一方に多数の凹凸が形成されたものであってもよい。防音部材(6) の厚さは、3〜10mmが一般的である。
【0027】
次に、上記の木質床材(1) の製造方法の一例を、図1に基づいて説明する。
【0028】
まず、下板(2B)の上部の幅方向および長さ方向の複数箇所に丸鋸を用いて溝切り加工を施し、これにより複数の上部横溝(4a)および上部縦溝(5) を形成する(図1(a) 参照)。
【0029】
次に、上板(2A)の裏面にシート材(7) を接着したのち、このシート材(7) の裏面に下板(2B)の表面を接着して、木質板(2) を形成する(図1(b) 参照)。なお、上記と逆の順序で接着を行なっても勿論よい。ここで、接着は、冷圧、熱圧のいずれによるものでもよく、また、高周波を利用したものであってもよく、任意に選択することができる。
【0030】
そして、木質板(2) の表面に化粧層(3) を形成し、また、木質板(2) の周縁部に接合用加工を施し、さらに必要に応じて着色・塗装処理を行なう(図1(c) 参照)。なお、化粧層(3) の形成等や接合用加工は、後述する木質板(2) と防音部材(6) との接着工程の前に行なってもよい。
【0031】
次に、下板(2B)における上部横溝(4a)の下側部分に丸鋸を用いて溝切り加工を施し、上部横溝(4a)よりも幅広でかつその幅中心が上部横溝(4a)の幅中心と一致するとともに上部横溝(4a)と連続する下部横溝(4b)を形成し、これによって下板(2B)の厚さと同じ深さを有する複数の横溝(4) を木質板(2) に形成する(図1(c) 参照)。なお、下部横溝(4b)は、必ずしも下板(2B)における全ての上部横溝(4a)の下側部分に形成する必要はなく、一部の上部横溝(4a)の下側部分にのみ形成するように、即ち、一部の上部横溝(4a)を残すようにしてもよい。また、上部横溝(4a)の下側部分以外にも下部横溝(4b)を形成するようにしてもよい。この場合、上部横溝(4a)の下側部分にこれらと連続しない下部横溝(4b)を形成すべきではない。仮にこのような下部横溝(4b)が形成されるとすれば、同溝(4b)と上部横溝(4a)との間の残存部が歩行時の荷重によって破壊されることによる踏み鳴りの要因となることが考えられるからである。なお、下板(2B)の上部縦溝(5) の下側部分にも、上記と同様の溝切り加工を施して上部縦溝(5) と連続する下部縦溝を形成し、これによって下板(2B)の厚さと同じ深さを有する複数の縦溝を木質板(2) に形成するようにしてもよい。
【0032】
図3〜図5は、横溝(4) の変形例を示している。即ち、木質板(2) の横溝(4) は、、図3(a) および(b) に示すように、下板(2B)における上部横溝(4a)のほぼ下側部分に、その幅中心が下板(2B)の上部横溝(4a)の幅中心よりも多少ずれた下部横溝(5b)を形成するように溝切り加工を施すことにより形成してもよく、或いは図1に示す横溝(4) と図3(a) および(b) に示す横溝(4) とが混在するようにしてもよい。また、図4(a) および(b) に示すように、上部横溝(4a)の幅を図3に示すものよりも幅広にしておくとともに、下板(2B)における上部横溝(4a)の下側部分に、上部横溝(4a)よりも幅狭でかつその幅中心が上部横溝(4a)の幅中心と一致するか若しくは多少ずれた下部横溝(4b)を形成するように溝切り加工を施すことにより形成してもよい。さらには、図5(a) および(b) に示すように、下板(2B)における上部横溝(4a)のほぼ下側部分に、上部横溝(4a)と同じ幅でかつその幅中心が上部横溝(4a)の幅中心と一致するか若しくは多少ずれた下部横溝(4b)を形成するように、溝切り加工を施すことにより形成してもよい。要するに、上部横溝(4a)と下部横溝(4b)とが連続することにより下板(2B)の厚さと同じ深さの溝(4) が木質板(2) に形成されるのであれば、上部横溝(4a)および下部横溝(4b)の幅や深さは特に限定されず、また、両溝(4a)(4b)の幅中心が互いに一致していてもずれていてもよく、さらには、上下両溝(4a)(4b)によって形成せられる溝(4) の形状は、全て同一であっても異なるものが混在していてもよい。
【0033】
そして、最後に、木質板(2) の裏面と防音部材(6) の表面とを接着する(図1(d) 参照)。こうして、木質床材(1) が得られる。
【0034】
上記木質床材(1) の施工は、例えば、床下地または木質床材(1) の裏面に、エポキシ系樹脂等の施工用接着剤を塗布し、木質床材(1) を床下地に順次敷設していくことにより行なう。なお、このさい隣り合う木質床材(1) 同士の接合部を施工用接着剤で部分的あるいは全体的に接着するようにしてもよい。
【0035】
そして、上記木質床材(1) によれば、その木質板(2) に形成された複数の横溝(4) が、これらの深さについて溝切り加工精度に基づくバラツキを生じることがないので、遮音性が安定するとともに、施工された木質床材(1) の上を人が歩いたさいに破損するおそれのある箇所がなく、したがって踏み鳴りが確実に防止される。また、木質板(2) における各溝(4,5) の上側部分には、溝(4,5) が形成された下板(2A)とは別の上板(2A)が存在するので、単体の木質板に深い溝が形成された場合と比べて、同部分の曲げ強度が向上する。しかも、木質板(2) の下板(2B)が横溝(4) によって分断されるため、木質板(2) の可撓性が向上し、床下地への馴染みが良好となる。さらに、木質板(2) の上板(2A)に誤って溝(4,5) が形成される心配がなく、したがって、上板(2A)は、板としてのバランスが損なわれないため、反りが生じ難く、ひいては木質板(2) 、さらには木質床材(1) に反りが生じるのが軽減される上、反りに伴う溝(4,5) の上側部分の折れ曲がりによる条の表出も生じ難いという効果が奏される。
【0036】
なお、上記木質床材(1) においては、木質板(2) と防音部材(6) とを接着したのち、これらを床下地に接着施工しているが、防音部材(6) を先に床下地に接着しておいてから、木質板(2) と防音部材(6) とを接着するようにしてもよい。また、木質床材(1) を木質板(2) のみで構成し、木質板(2) を直接床下地に接着施工することも可能である。
【0037】
図6および図7は、この発明の第2の実施形態を示しており、図示の木質床材(11)は、次の点を除いて図1〜図5に示す木質床材(1) と同じ構成であって、木質床材(1) とほぼ同様の作用効果を奏する。即ち、図7に示すように、木質床材(11)における上板(2A)と下板(2B)との間には、防音部材(8) が介在せられている。防音部材(8) としては、木質板(2) の下に配される防音部材(6) と同様のものを例示することができ、防音部材(6) と同様に、防音機能を有する材料を単独で、あるいは複数のものを組み合わせて用いることができる。さらに、制振、遮音、緩衝等の同種の機能を有するものではあるが、材料、形状、比重等のうち少なくともいずれか1つが異なる数種類のシート材を組み合わせて用いてもよい。また、防音部材(6) と同種のものでも異種のものでもよい。この防音部材(8) の厚みは、通常約0.4〜3.0mmとなされるが、好ましくは約0.5〜2.5mmである。
【0038】
なお、防音部材(8) を発泡体のみで構成する場合、発泡倍率が20倍以下のものを用いるのが好ましい。発泡倍率が20倍を越えると歩行時の浮沈感が大きくなりすぎるからである。また、防音部材(8) の厚みを上記範囲内のものとする限りにおいては、発泡倍率が20倍以内であれば、遮音性能に大差はない。もっとも、発泡体と制振シート材または遮音シート材とを組み合わせて防音部材(8) を構成する場合には、発泡体のみの場合と比べて発泡体が占める厚みが小さくなるので、発泡体の発泡倍率を20倍を越えるものとしてもよい。
【0039】
また、この木質床板(11)にあっては、上板(2A)と防音部材(8) との間に、前述したシート材(7) を介在させるようにしてもよい(図8参照)。このシート材(7) と木質床板(11)表面の化粧層(3) との間でバランスがとれるため、防音部材(6) と接合する前の木質板(2) 、さらには木質板829 と防音部材(6) とを接合してなる木質床材(11)が反り、特に谷反りを生じ難いものとなる。
【0040】
この木質床材(11)は、上板(2A)と下板(2B)との間に介在せられた防音部材(8) によって、前記木質床材(1) よりも遮音性に優れたものとなっている。
【0041】
図6は、木質床材(11)の製造方法の一例を示しており、次の点を除いて前記木質床材(1) の製造方法と同じであって、同方法とほぼ同様の効果を奏する。即ち、図6(b) に示すように、予め複数の上部横溝(4a)および上部縦溝(5) が形成せられた下板(2B)(図6(a) 参照)の表面に、防音部材(8) を接着等により接合したのち、この防音部材(8) の表面に上板(2A)を接着等により接合して、木質板(2) を形成する。なお、これらの接合は上記と逆の順序で行なっても勿論よい。ここで、接着は、冷圧、熱圧のいずれによるものでもよく、また、高周波を利用したものであってもよく、任意に選択することができる。
【0042】
【実施例】
次に、この発明の実施例を、比較例と併せて説明する(図2、図7、図8、図9、図10および図11参照)。
【0043】
実施例1
この実施例の木質床材(1) は、厚さ2.5mmの3プライ合板よりなる上板(2A)と厚さ8.5mmの針葉樹製3プライ合板よりなる下板(2B)とを、これらの間に耐熱性ポリエチレンシートの両面に紙を熱融着してなりかつ引張り強さ(JIS・P8113に準じる)が幅15mm当り5.5kgfである3層シートよりなるシート材(7) を介在させた状態で互いに接着接合して得られた木質板(2) と、発泡倍率45倍で連続発泡により形成された厚さ2.0mmの上部合成樹脂発泡体と発泡倍率30倍で独立発泡により形成された厚さ2.5mmの下部合成樹脂発泡体とよりなりかつ木質板(2) の裏面に接着せられた防音部材(6) とよりなり、その幅は145mm、長さは909mmである(図2参照)。木質板(2) の表面には、表面にウレタン樹脂塗装が施された厚さ0.25mmのナラ単板が接着せられて化粧層(3) が形成されている。木質板(2) には、木質板(2) の幅方向にのびるとともに上部の幅が1.5mm、下部の幅が3.0mmでかつその深さが下板(2B)の厚さと一致する段付きの横溝(4) が、木質板(2) の長さ方向に約12mm間隔おきに形成されている。また、木質板(2) の下板(2B)には、長さ方向にのびる幅1.5mm、深さ3.8mmの上面に開口した上部縦溝(5) が、木質板(2) の幅方向に約16mm間隔おきに形成されている。木質板(2) の周縁部には、本実加工が施されている(図示略)。そして、木質床材(1) は、接着工法により床下地に施工されている。ここで、木質板(2) の横溝(4) は、上板(2A)との接合前の下板(2B)の上部に、幅1.5mm、深さ4.5mmの上部横溝(4a)を丸鋸により形成しておいてから、上板(2A)と下板(2B)とを接合し、その後、下板(2B)における上部横溝(4a)の下側部分に、幅3.0mm、深さ5.0mmでかつその幅中心が上部横溝(4a)の幅中心と一致するような下部横溝(4b)を形成するように丸鋸により溝切り加工を施すことにより形成されている。
【0044】
実施例2
この実施例の木質床材は、上板(2A)と下板(2B)との間にシート材(7) が介在せられていない点、下板(2B)が厚さ5.5mmのラワン製5プライ合板よりなる点、木質板(2) の横溝(4) を構成する上部横溝(4a)の深さが2.9mm、同じく下部横溝(4b)の深さが3.8mmである点、および、下板(2) の上部縦溝(5) の深さが2.9mmであって、下板(2B)における上部縦溝(5) の下側部分に、幅3.0mm、深さ3.8mmでかつその幅中心が上部縦溝(5) の幅中心と一致するような下部縦溝を形成するように丸鋸により溝切り加工を施すことにより、裏面に開口しかつその深さが下板(2B)の厚さと等しい縦溝が木質板に形成されている点を除いて、実施例1と同じである(図示略)。
【0045】
実施例3
この実施例の木質床材(11)は、上板(2A)と下板(2B)との間に発泡倍率2.5倍で厚さ0.6mmの天然ゴム発泡体よりなる防音部材(8) が介在せられている点、および防音部材(6) が発泡倍率30倍で連続発泡により形成された厚さ3.0mmの上部合成樹脂発泡体と発泡倍率30倍で独立発泡により形成された厚さ1.0mmの下部合成樹脂発泡体とよりなる点を除いて、実施例2と同じである(図7参照)。
【0046】
実施例4
この実施例の木質床材(11)は、上板(2A)と防音部材(8) との間に、耐熱性ポリエチレンシートの両面に紙を熱融着してなりかつ引張り強さ(JIS・P8113に準じる)が幅15mm当り5.5kgfである3層シートよりなるシート材(7) が介在せられている点を除いて、実施例3と同じである(図8参照)。
【0047】
比較例1
比較例1の木質床材(41)は、木質板(2) の横溝(4) を上板(2A)と接合した後の下板(2B)に丸鋸で溝切り加工を施すことにより形成している点、および下板(2) に上部縦溝(5) を形成していない点を除いて実施例1と同じである(図9参照)。ここで、横溝(4) は、これらの幅が2.7mm、深さが8.0mmとなるように丸鋸を設定して形成したものであり、各横溝(4) の深さについては、設定値どおりのものが多かったものの、7.5mmのものや8.8mmと上板(2A)にまで達しているものもあり、1.3mmの範囲で寸法誤差が生じる結果となった。
【0048】
比較例2
この比較例の木質床材は、木質板(2) の横溝(4) および縦溝(図示略)を上板(2A)と接合した後の下板(2B)に丸鋸で溝切り加工を施すことによりそれぞれ形成している点を除いて実施例2と同じである(図示略)。ここで、横溝(4) は、これらの幅が2.0mm、深さが5.0mmとなるように丸鋸を設定して形成したものであり、各横溝(4) の深さについては、設定値どおりのものが多かったものの、4.5mmのものや5.7mmと上板(2A)にまで達しているものもあり、1.2mmの範囲で寸法誤差が生じる結果となった。また、縦溝は、これらの幅が2.5mm、深さが5.0mmとなるように丸鋸を設定して形成したものであり、各縦溝の深さについては、設定値どおりのものが多かったものの、4.5mmのものや5.7mmと上板(2A)にまで達しているものもあり、1.2mmの範囲で寸法誤差が生じる結果となった。
【0049】
比較例3
この比較例の木質床材(21)は、木質板(22)が厚さ9.0mmのラワン製5プライ合板よりなる点、木質板(22)の横溝(24)および縦溝を、木質板(22)の裏側から丸鋸で溝切り加工を施すことによりそれぞれ形成している点を除いて実施例2と同じである(図10参照)。ここで、横溝(24)は、これらの幅が2.7mm、深さが6.0mmとなるように丸鋸を設定して形成したものであり、各横溝(24)の深さについては、設定値どおりのものが多かったものの、5.5mmのものや6.5mmのものもあり、1.0mmの範囲で寸法誤差が生じる結果となった。また、縦溝は、これらの幅が2.7mm、深さが6.0mmとなるように丸鋸を設定して形成したものであり、各縦溝の深さについては、設定値どおりのものが多かったものの、5.5mmのものや6.5mmのものもあり、1.0mmの範囲で寸法誤差が生じる結果となった。
【0050】
比較例4
この比較例の木質床材(31)は、木質板(32)の横溝(34)および縦溝(図示略)を、防音部材(33)を介して上板(32A) と接合した後の下板(2B)に、丸鋸で溝切り加工を施すことにより形成している点を除いて実施例3と同じである(図11参照)。横溝(34)および縦溝の寸法誤差は、比較例2とほぼ同様であった。
【0051】
上記各実施例および比較例について、遮音性、踏み鳴りの有無、谷反りの有無、および表面の状態を観察、測定したところ、次のような結果が得られた。
【0052】
まず、遮音性に関しては、各床材36枚を厚さ150mmのコンクリートスラブ上に配置固定し、JIS・A1418に準じて軽量衝撃音テストを3カ所で行なったところ、実施例1および2については遮音等級L−44ないしL−45レベル、実施例3および4については遮音等級L−39ないしL−40レベルの測定結果が得られた。一方、比較例1ないし3については遮音等級L−44ないしL−48レベル、比較例4については遮音等級L−40ないしL−43レベルの測定結果が得られた。上記測定結果から明らかなように、実施例の方が比較例よりもバラツキが小さく、安定した遮音性が得られることがわかる。
【0053】
施工後の各木質床材(1,11,21,31,41) の上を歩行したところ、比較例1ないし4のみに、横溝(4) の上側部分の破壊によるミシッという踏み鳴りが発生した。
【0054】
防音部材(6) に接着する前の状態の木質板(2,24)について、その長さ方向の谷反りの有無を観察したところ、実施例1ないし4については、谷反りのないものがほとんどであり、僅かに谷反りしているものが少数あったが、比較例1ないし4については、僅かに谷反りしているものが実施例よりも多かった。また、木質板(2) に防音部材(6) を接着した木質床材(1,11,21,31,41) の状態では、上記と同様の傾向がみられたが、施工上の問題はなかった。
【0055】
施工後の各木質床材(1,11,21,31,41) の表面を観察したところ、比較例1、2および4については、上板(2A,32A)にまで達している横溝(4,34)の上側部分の折れ曲がりによる条、比較例3については、各横溝(24)の上側部分の折れ曲がりによる条がそれぞれ表面に現われていたが、実施例1ないし4については、そのような条は見られなかった。
【0056】
【発明の効果】
本発明の床材用木質板の製造方法によれば、下板の厚さと同じ深さの複数の溝を木質板に確実に形成することができる。
【0057】
また、本発明の木質床材によれば、木質板に、下板の厚さと同じ深さの複数の溝が形成せられているので、木質板の溝の深さにバラツキを生じることがなく、遮音性が安定する。また、木質板における各溝の上側部分には、溝が形成された下板とは別の上板が存在するので、単体の木質板に深い溝が形成された場合と比べて、同部分の曲げ強度が向上する。したがって、木質板としての曲げ強度が上板に依存できるため、上述のように下板の厚さと同じ深さの複数の溝を木質板に形成することができ、その結果、施工された木質床材の上を人が歩いたさいに破損するおそれのある箇所がなくなるので、踏み鳴りが確実に防止される。しかも、木質板の下板が溝によって分断されるため、木質板の可撓性が向上し、床下地への馴染みが良好となる。さらに、上板に溝が形成される心配がなく、したがって、上板は、板としてのバランスが損なわれないため、反りが生じ難く、ひいては木質板、さらには木質床材に反りが生じるのが軽減される上、反りに伴う溝の上側部分の折れ曲がりによる条の表出も生じ難い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す木質床材の製造工程図である。
【図2】本発明の第1の実施形態を示す木質床材の部分拡大縦断面図である。
【図3】木質板の溝の変形例を示す部分拡大縦断面図である。
【図4】木質板の溝の変形例を示す部分拡大縦断面図である。
【図5】木質板の溝の変形例を示す部分拡大縦断面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態を示す木質床材の製造工程図である。
【図7】本発明の第2の実施形態を示す木質床材の部分拡大縦断面図である。
【図8】本発明の第2の実施形態の変形例を示す木質床材の部分拡大縦断面図である。
【図9】比較例1の木質床材を示す部分拡大縦断面図である。
【図10】従来の木質床材を示す部分拡大縦断面図である。
【図11】従来の他の木質床材を示す部分拡大縦断面図である。
【符号の説明】
(1,11)…木質床材
(2) …床材用木質板
(2A)…上板
(2B)…下板
(4) …横溝
(4a)…上部横溝
(4b)…下部横溝
(6) …防音部材
(8) …防音部材
【発明の属する技術分野】
本発明は、木質床材、特に遮音性を有する木質床材および同床材に用いられる木質板の製造方法に関する。
【0002】
なお、この明細書において、「遮音性」とは、床衝撃音遮断性能をいう。
【0003】
【従来の技術】
遮音性を有する木質床材としては、図10に示すように、裏面に開口した複数の溝(24)を有する木質板(22)と、木質板(22)の下に配された制振シート材、遮音シート材、緩衝シート材等の防音部材(6) とよりなるものが広く知られている。また、木質板(22)の表面には、通常、木質単板等の貼着や塗装等により化粧層(3) が形成されている。
【0004】
ここで、木質床材(21)の木質板(22)は、合板等の単体の板の下部に溝切り加工を施して裏面に開口した複数の溝(24)を形成することにより製造せられており、その溝(24)は、木質板(22)に可撓性を付与して床下地に馴染ませ易くするとともに、遮音性を向上させるために、深く形成されているものが少なくない。例えば、特開平6−336814号公報に開示されているように、木質板が5プライ合板よりなる場合、通常、上から2層目の単板まで達するような深さの溝が形成されている。
【0005】
また、図11に示すように、木質板(32)が上板(32A) と下板(32B) とよりなり、下板(32B) に裏面に開口した溝(34)が形成され、上板(32A) と下板(32B) との間に弾性シート材または緩衝シート材等の防音部材(33)が介在されている木質床材(31)も、従来より知られている。この木質床材(31)は、防音部材(33)、下板(32B) の溝(34)および防音部材(6) の3重の防音機能を有するため、非常に遮音性に優れている。
【0006】
そして、この木質床材(31)の木質板(32)は、上板(32A) と下板(32B) とを、防音部材(33)を介在させた状態で互いに接合したのち、下板(32B) の下部に溝切り加工を施して裏面に開口した複数の溝(34)を形成することにより製造せられている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来の木質床材のうち、図10に示す木質床材(21)については、次のような3つの問題があった。即ち、図10に示す木質床材(21)の場合、木質板(22)における溝(24)の上側部分が溝(24)のない部分に比べてかなり肉薄となるので、その部分の曲げ強度が十分とはいえなかった。したがって、施工された床材(21)の上を人が歩いて局部的な荷重がかかると、木質板(22)の溝(24)の上側部分が破損して、ミシッという不快な音(以下、「踏み鳴り」という。)を生じることがあった。
【0008】
しかも、上記木質床材(21)の場合、木質板(22)に谷反りを生じることが少なくなかった。このような谷反りの原因としては、木質板(22)の含水率分布にバラツキがあること、複数の深い溝(24)の形成により木質板(22)のバランスが損なわれていること、木質板(22)の表面に形成された化粧層(3) により木質板(22)の上下間のバランスが損なわれていること等が考えられる。そして、上述のように木質板(22)に谷反りが生じると、木質板(22)と防音部材(6) との接合や木質床材(21)の床下地への接着施工が行ない難いという問題があった。また、谷反りした木質床材(21)は、施工し難いだけでなく、施工後その一部が床下地から剥れて浮き上がるという問題があった。
【0009】
また、複数の深い溝(24)が形成された直後の木質板(22)は、瞬間的に谷反り傾向を示すが、深い溝(24)によって剛性が弱くなっているので、平面上に載置するとその自重によってフラットになることがあり、そのさい曲げ強度の不十分な溝(24)の上側部分が溝(24)の長さ方向に沿って折れ曲がってしまうことがあった。また、谷反りした状態の木質板(22)を防音部材(6) と接合するさい、さらには谷反りした状態の木質床材(21)を床下地に接着施工するさいにも、木質板(22)の溝(24)の上側部分が溝(24)の長さ方向に沿って折れ曲がる場合があった。これらの場合には、木質床材(21)表面に折れ曲がり部の条が現れ、美観上好ましくなかった。
【0010】
一方、図11に示す木質床材(31)の場合、上述した谷反りの問題や折れ曲がり部の条の表出の問題については、上板(32A) と下板(32B) との間に防音部材(33)が介在されることにより幾分解消されている。しかし、溝(34)の深さが下板(32B) の厚さよりもやや浅くなされている上、下板(32B) がいずれも弾性に富む上下2つの防音部材(33)(6) に挟まれているので、施工された木質床材(31)の上を人が歩くと、曲げ強度が少ない下板(32B) の溝(34)の上側部分が破損し、木質床材(21)の場合と同様に踏み鳴りを生じるという問題があった。
【0011】
さらに、図10および図11に示す木質床材(21,31) にあっては、これらの木質板(22,32) に溝(24,34) を形成するにあたり、丸鋸を用いて溝切り加工を行なっていたが、研磨の度合による丸鋸の直径の相違、加工時の丸鋸の振動、搬送時の木質板(22,32) の振動、木質板(22,32) の厚さのバラツキ等に起因して、溝(24,34) の深さにバラツキを生じ、その結果、遮音性が安定しないという問題があった。また、溝(24,34) が浅いと、木質板(22,32) の可撓性が低下して、床下地への馴染みが悪くなる。さらに、図11に示す木質床材(31)において、溝(34)が上板(32A) にまで達してしまうと、踏み鳴り、木質板の谷反り、および谷反りに伴う溝の上側部分の折れ曲がりによる条の表出が発生する。
【0012】
本発明は、上記の各問題点に鑑みてなされたものであって、歩行時における木質板の溝の上側部分の破壊による不快な踏み鳴り、木質板の谷反り、および谷反りに伴う溝の上側部分の折れ曲がりによる条の表出が生じ難い上、安定した遮音性を有する木質床材を提供することを、その目的としている。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明のうち請求項1記載の床材用木質板の製造方法は、互いに接合せられた上板および下板よりなりかつ裏面に開口した複数の溝を有する木質板を製造するにあたり、下板の上部に溝切り加工を施して複数の上部溝を形成しておいてから、上板と下板とを接合し、次いで、下板における上部溝のほぼ下側部分に溝切り加工を施して上部溝と連続する下部溝を形成することにより、下板の厚さと同じ深さの複数の溝を木質板に形成することを特徴とする。
【0014】
本発明のうち請求項2記載の床材用木質板の製造方法は、防音部材を介して互いに接合せられた上板および下板よりなりかつ裏面に開口した複数の溝を有する木質板を製造するにあたり、下板の上部に溝切り加工を施して複数の上部溝を形成しておいてから、防音部材を介して上板と下板とを接合し、次いで、下板における上部溝のほぼ下側部分に溝切り加工を施して上部溝と連続する下部溝を形成することにより、下板の厚さと同じ深さの複数の溝を木質板に形成することを特徴とする。
【0015】
上記各方法によれば、床材用木質板に、下板の厚さと同じ深さの複数の溝を確実に形成することができる。
【0016】
また、本発明のうち請求項3記載の木質床材は、請求項1または2記載の方法により製造された木質板と、これの下に配された防音部材とよりなるものである。
【0017】
上記木質床材によれば、木質板に、下板の厚さと同じ深さの複数の溝が形成せられているので、木質板の溝の深さにバラツキを生じることがなく、遮音性が安定する。また、木質板における各溝の上側部分には、溝が形成された下板とは別の上板が存在するので、単体の木質板に深い溝が形成された場合と比べて、同部分の曲げ強度が向上する。したがって、木質板としての曲げ強度が上板に依存できるため、上述のように下板の厚さと同じ深さの複数の溝を木質板に形成することができ、その結果、施工された木質床材の上を人が歩いたさいに破損するおそれのある箇所がなくなるので、踏み鳴りが確実に防止される。しかも、木質板の下板が溝によって分断されるため、木質板の可撓性が向上し、床下地への馴染みが良好となる。さらに、上板に溝が形成される心配がなく、したがって、上板は、板としてのバランスが損なわれないため、反りが生じ難く、ひいては木質板、さらには木質床材に反りが生じるのが軽減される上、反りに伴う溝の上側部分の折れ曲がりによる条の表出も生じ難い。
【0018】
【発明の実施の形態】
次に、この発明の実施の形態を図1〜図8を参照して説明する。
【0019】
図2は、本発明による木質床材の第1の実施形態を示し、同図の木質床材(1) は、互いに接合せられた上板(2A)および下板(2B)よりなりかつ裏面に開口した複数の横溝(4) を有する木質板(2) と、木質板(2) の下に接合せられた緩衝部材(6) とよりなる。上板(2A)と下板(2B)との間には、シート材(7) が介在せられている。但し、このシート材(7) は必ずしも必要ではない。木質板(2) の下板(2B)には、上面に開口しかつこれの長さ方向にのびる複数の上部縦溝(5) が形成されている。横溝(4) の深さは下板(2B)の厚さと一致しており、その中間部には段差が設けられて、段差の上側の溝幅が段差の下側の溝幅よりも狭くなされている。上板(2A)の表面には、化粧層(3) が形成されている。
【0020】
上板(2A)の材料としては、合板、中質繊維板(MDF)、パーティクルボード、ハードボード等が挙げられるが、表面への化粧および接合用加工の容易性ならびに曲げ強度を考慮して、合板または中質繊維板が好適に用いられる。合板の場合、3プライ以上のものが好ましい。合板は、通常の奇数プライのものの他に、偶数プライのものであってもよく、その場合、各層の単板の繊維方向が交互に直交するものであっても、一部の隣接する層の単板同士の繊維方向が互いに平行になるものであってもよい。また、上板(2A)は、上下2層で構成されるとともに、両層の間に、例えば、高密度軟質シートや発泡倍率1.5倍〜6倍の低発泡体シートが介在せられたものでもよい。上板(2A)の厚さは、好適には1.5〜7.5mmの範囲、より好適には2.4〜5.5mmの範囲で設定される。遮音性の面からいえば上板(2A)は薄い程良いが、厚さ1.5mm未満とすると、曲げ強度が不十分となって人が歩行するさいに溝(4,5) の上側部分が破損するおそれがあり、一方、厚さ7.5mmを越えると、床材としての剛性が高くなりすぎて遮音性が低下するおそれがあるからである。
【0021】
下板(2B)は、上板(2A)の材料の中から適当に選ばれるが、溝加工や接合用加工が容易で加工仕上りが良く、パーティクルボードやハードボードの場合よりも優れた強度の接合部が得られる合板または中質繊維板が好適に用いられる。なお、合板は、割れや抜け節等の欠陥が多く、通常化粧用台板合板として使用できない針葉樹製合板やラワン合板であってもよい。また、欠陥の多いパーティクルボードや針葉樹製合板等の周縁部に、加工が容易で、接合部の仕上りが良く、強度も相対的に強い合板や中質繊維板を配してなるものを用いてもよい。下板(2B)の厚さは、上板(2A)の厚さや木質床材(1) 全体の厚さとの関連において決定されるが、2.5〜15mmの範囲が適当である。下板(2B)にはその厚さと同じ深さの溝(4) が形成されるためか、下板(2B)の厚さが上記範囲であれば、他の条件を一致させる限り遮音性がほとんど変わらないことが判明した。もっとも、接合用加工の点からみれば、上板(2A)と下板(2B)とを合わせた厚さが5mm以上となるように、下板(2B)の厚さを設定するのが好ましい。なお、上板(2A)および下板(2B)が共に合板よりなる場合、上板(2A)の表単板の繊維方向と下板(2B)の表単板の繊維方向とは、互いに平行であっても交差していてもよい。また、上述のように上板(2A)と下板(2B)の表単板の繊維方向が互いに交差している場合において、上板(2A)の表単板の繊維方向が木質床材(1) の長さ方向と略直交するようになされているときは、木質床材(1) としての可撓性がより向上し、これによって床下地への馴染みがさらに良好となる。
【0022】
化粧層(3) は、木質単板、挽き板、コルク、模様が印刷された紙や合成樹脂シート等を上板(2A)の表面に貼着したり、塗装を施したりすることによって形成される。なお、上板(2A)が合板よりなり、化粧層(3) が木質単板よりなる場合、木質単板のヒワレを防ぐために、不織布、紙、布等の薄いシートを両者の間に介在させたり、また、合板の表単板と木質単板の繊維方向が互いに直交するように貼着するようにしてもよい。
【0023】
図2の木質床材(1) においては、その木質板(2) に、裏面に開口しかつその深さが下板(2B)の厚さと等しくなされている横溝(4) を有するものであるが、横溝(4) に加えて、或いは横溝(4) に代えて、裏面に開口しかつその深さが下板(2B)の厚さと等しくなされた縦溝を木質板(2) に形成するようにしてもよい。溝幅は、最も狭い部分において0.7mm以上であるのが好ましい。溝幅が0.7mm未満であると、遮音性を維持するために溝の数を増やす必要があり、また、切削加工用刃物の刃先を薄くする必要があって、これにより回転切削中に刃物の横振れが大きくなるので、溝付け状態の管理および刃物管理が難しくなるからである。隣り合う溝間の間隔は、好適には5〜50mm、より好適には8〜30mmとなされる。遮音性や床下地への馴染み易さという点からみれば、溝間の間隔は狭い程良いが、5mm未満では木質板(2) の強度が不十分となる一方、50mmを越えると遮音性の効果が十分とはいえず、遮音等級L−45やL−50のレベルを達成し難くなるからである。溝間の間隔は、必ずしも等間隔である必要はなく、適宜に間隔を変えてもよい。なお、化粧層(3) 表面に溝が施されている場合には、上板(2A)の破損を防止するために、化粧層(3) の溝と下板(2) の溝(4,5) とが一致しないようにするのが好ましい。下板(2B)面に占める溝(4,5) の面積比率は、好適には5〜30%、より好適には9〜22%である。5%未満であると溝の存在による遮音性等の効果が十分に発揮されない一方、30%を越えると木質板(2) の強度が不十分となるからである。
【0024】
シート材(7) は、木質床材(1) 表面の化粧層(3) とのバランスが良く、また、上板(2A)の谷反りの動きに抗し得るものが好ましく、具体的には、紙、不織布、合成樹脂含浸紙や、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニリデン、エチレン酢酸ビニル共重合体といった熱可塑性樹脂等からなる合成樹脂層の両面に同種類または異なる種類の紙、不織布等を配してなる3層シート、木質単板等が挙げられる。シート材(7) の厚さは、35μm〜0.4mmの範囲が好ましい。35μm未満では、化粧層(3) とのバランスがとれず、一方、0.4mmを越えても、谷反り防止効果に大差がないので製造コストの面から好ましくなく、しかも層間剥離のおそれがあるからである。化粧層(3) が木質単板よりなる場合、シート材(7) の引張り強さ(JIS・P8113に準じる)は、好適には幅15mm当り4kgf以上、より好適には5kgf以上であることが要求される。但し、シート材(7) に木質単板を用いる場合は、化粧層(3) と同じ性質を有するので、必ずしも上記の引張り強さを満たす必要はない。
【0025】
また、図示は省略したが、木質板(2) の下板(2B)の裏面に、例えば、ポリエチレン等の防湿性樹脂層の両面に同種類または異なる種類の紙、不織布等を配してなる防湿性3層シートを貼着するようにしてもよい。このようなシート材の存在によって、製造工程中における下板(2B)の裏面からの吸湿を防止することができ、ひいては吸湿による木質板(2) の谷反りを防止することができる。
【0026】
防音部材(6) としては、制振シート材、遮音シート材、緩衝シート材といった防音機能を有する公知の材料を、単独で、あるいは複数のものを組み合わせて用いることができ、具体例としては以下のものを例示することができる。制振シート材としては、例えば、合成ゴム、天然ゴム等のゴム、ポリ塩化ビニル、ポリウレンタン等の合成樹脂、合成樹脂と合成ゴムとの混合物、あるいはこれらの材料に鉛粉、鉄粉等の金属粉や硫酸バリウム等の粉粒体といった高比重物質を混入してなるものが挙げられる。遮音シート材としては、例えば、アスファルトにまたはアスファルトと合成樹脂若しくは合成ゴムとの混合物に鉄粉、鉄鋼スラグ等を混入して板状体にしたものが挙げられる。緩衝シート材としては、発泡体や繊維物質等が挙げられる。発泡体としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン等の合成樹脂、天然ゴム、合成ゴムを材料とする各発泡体や、これらのうちから数種類を組み合わせてなるものが挙げられ、発泡倍率は通常10〜50倍となされる。また、材料や発泡倍率、発泡形態(独立気泡、連続気泡)の異なる数種類の発泡体を組合わせてなるものを用いてもよい。繊維物質としては、インシュレーションボード、ガラス繊維、ポリエステル、ナイロン(商標)、ポリプロピレン等の不織布、フェルト、カーペット等が挙げられるが、これらの材料にアスファルトピッチ等の撥水剤や硬化後にも弾性を有するウレタン樹脂等の合成樹脂を含浸させてなるものが用いられてもよい。なお、ガラス繊維や不織布等については、木質板(2) と接着するさいに接着剤が完全に浸透して緩衝性が損なわれるという問題があるため、単独で使用する場合は厚さ4mm以上、他の材料と組み合せて使用する場合は厚さ1mm以上とするのが好ましい。また、鉄、鉛等の金属粉末、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の無機質粉末を混入してなる塩化ビニル系、合成ゴム系、アスファルト系等の材料からなる高比重(1.0以上)の軟質シートや、発泡倍率5倍以下の低発泡体シート、非発泡シートを、上記の材料と組み合わせて用いるようにしてもよい。また、床下地への接着施工のさいの接着剤の浸透による緩衝シート材の緩衝性の低下を防ぐために、木質単板、不織布、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂シート、塩化ビニル樹脂シート、合成または天然ゴムシート等を、緩衝シート材の下面に貼着し、若しくは緩衝シート材と床下地との間に介在させるようにしてもよく、または、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル樹脂といった柔軟性を有する厚さ10〜100μmの樹脂シートを、緩衝シート材の厚さの半分よりも下方に介在させるようにしてもよい。防音部材(6) の形状としては、平板状のものの他、上面および下面のうち少なくともいずれか一方に多数の凹凸が形成されたものであってもよい。防音部材(6) の厚さは、3〜10mmが一般的である。
【0027】
次に、上記の木質床材(1) の製造方法の一例を、図1に基づいて説明する。
【0028】
まず、下板(2B)の上部の幅方向および長さ方向の複数箇所に丸鋸を用いて溝切り加工を施し、これにより複数の上部横溝(4a)および上部縦溝(5) を形成する(図1(a) 参照)。
【0029】
次に、上板(2A)の裏面にシート材(7) を接着したのち、このシート材(7) の裏面に下板(2B)の表面を接着して、木質板(2) を形成する(図1(b) 参照)。なお、上記と逆の順序で接着を行なっても勿論よい。ここで、接着は、冷圧、熱圧のいずれによるものでもよく、また、高周波を利用したものであってもよく、任意に選択することができる。
【0030】
そして、木質板(2) の表面に化粧層(3) を形成し、また、木質板(2) の周縁部に接合用加工を施し、さらに必要に応じて着色・塗装処理を行なう(図1(c) 参照)。なお、化粧層(3) の形成等や接合用加工は、後述する木質板(2) と防音部材(6) との接着工程の前に行なってもよい。
【0031】
次に、下板(2B)における上部横溝(4a)の下側部分に丸鋸を用いて溝切り加工を施し、上部横溝(4a)よりも幅広でかつその幅中心が上部横溝(4a)の幅中心と一致するとともに上部横溝(4a)と連続する下部横溝(4b)を形成し、これによって下板(2B)の厚さと同じ深さを有する複数の横溝(4) を木質板(2) に形成する(図1(c) 参照)。なお、下部横溝(4b)は、必ずしも下板(2B)における全ての上部横溝(4a)の下側部分に形成する必要はなく、一部の上部横溝(4a)の下側部分にのみ形成するように、即ち、一部の上部横溝(4a)を残すようにしてもよい。また、上部横溝(4a)の下側部分以外にも下部横溝(4b)を形成するようにしてもよい。この場合、上部横溝(4a)の下側部分にこれらと連続しない下部横溝(4b)を形成すべきではない。仮にこのような下部横溝(4b)が形成されるとすれば、同溝(4b)と上部横溝(4a)との間の残存部が歩行時の荷重によって破壊されることによる踏み鳴りの要因となることが考えられるからである。なお、下板(2B)の上部縦溝(5) の下側部分にも、上記と同様の溝切り加工を施して上部縦溝(5) と連続する下部縦溝を形成し、これによって下板(2B)の厚さと同じ深さを有する複数の縦溝を木質板(2) に形成するようにしてもよい。
【0032】
図3〜図5は、横溝(4) の変形例を示している。即ち、木質板(2) の横溝(4) は、、図3(a) および(b) に示すように、下板(2B)における上部横溝(4a)のほぼ下側部分に、その幅中心が下板(2B)の上部横溝(4a)の幅中心よりも多少ずれた下部横溝(5b)を形成するように溝切り加工を施すことにより形成してもよく、或いは図1に示す横溝(4) と図3(a) および(b) に示す横溝(4) とが混在するようにしてもよい。また、図4(a) および(b) に示すように、上部横溝(4a)の幅を図3に示すものよりも幅広にしておくとともに、下板(2B)における上部横溝(4a)の下側部分に、上部横溝(4a)よりも幅狭でかつその幅中心が上部横溝(4a)の幅中心と一致するか若しくは多少ずれた下部横溝(4b)を形成するように溝切り加工を施すことにより形成してもよい。さらには、図5(a) および(b) に示すように、下板(2B)における上部横溝(4a)のほぼ下側部分に、上部横溝(4a)と同じ幅でかつその幅中心が上部横溝(4a)の幅中心と一致するか若しくは多少ずれた下部横溝(4b)を形成するように、溝切り加工を施すことにより形成してもよい。要するに、上部横溝(4a)と下部横溝(4b)とが連続することにより下板(2B)の厚さと同じ深さの溝(4) が木質板(2) に形成されるのであれば、上部横溝(4a)および下部横溝(4b)の幅や深さは特に限定されず、また、両溝(4a)(4b)の幅中心が互いに一致していてもずれていてもよく、さらには、上下両溝(4a)(4b)によって形成せられる溝(4) の形状は、全て同一であっても異なるものが混在していてもよい。
【0033】
そして、最後に、木質板(2) の裏面と防音部材(6) の表面とを接着する(図1(d) 参照)。こうして、木質床材(1) が得られる。
【0034】
上記木質床材(1) の施工は、例えば、床下地または木質床材(1) の裏面に、エポキシ系樹脂等の施工用接着剤を塗布し、木質床材(1) を床下地に順次敷設していくことにより行なう。なお、このさい隣り合う木質床材(1) 同士の接合部を施工用接着剤で部分的あるいは全体的に接着するようにしてもよい。
【0035】
そして、上記木質床材(1) によれば、その木質板(2) に形成された複数の横溝(4) が、これらの深さについて溝切り加工精度に基づくバラツキを生じることがないので、遮音性が安定するとともに、施工された木質床材(1) の上を人が歩いたさいに破損するおそれのある箇所がなく、したがって踏み鳴りが確実に防止される。また、木質板(2) における各溝(4,5) の上側部分には、溝(4,5) が形成された下板(2A)とは別の上板(2A)が存在するので、単体の木質板に深い溝が形成された場合と比べて、同部分の曲げ強度が向上する。しかも、木質板(2) の下板(2B)が横溝(4) によって分断されるため、木質板(2) の可撓性が向上し、床下地への馴染みが良好となる。さらに、木質板(2) の上板(2A)に誤って溝(4,5) が形成される心配がなく、したがって、上板(2A)は、板としてのバランスが損なわれないため、反りが生じ難く、ひいては木質板(2) 、さらには木質床材(1) に反りが生じるのが軽減される上、反りに伴う溝(4,5) の上側部分の折れ曲がりによる条の表出も生じ難いという効果が奏される。
【0036】
なお、上記木質床材(1) においては、木質板(2) と防音部材(6) とを接着したのち、これらを床下地に接着施工しているが、防音部材(6) を先に床下地に接着しておいてから、木質板(2) と防音部材(6) とを接着するようにしてもよい。また、木質床材(1) を木質板(2) のみで構成し、木質板(2) を直接床下地に接着施工することも可能である。
【0037】
図6および図7は、この発明の第2の実施形態を示しており、図示の木質床材(11)は、次の点を除いて図1〜図5に示す木質床材(1) と同じ構成であって、木質床材(1) とほぼ同様の作用効果を奏する。即ち、図7に示すように、木質床材(11)における上板(2A)と下板(2B)との間には、防音部材(8) が介在せられている。防音部材(8) としては、木質板(2) の下に配される防音部材(6) と同様のものを例示することができ、防音部材(6) と同様に、防音機能を有する材料を単独で、あるいは複数のものを組み合わせて用いることができる。さらに、制振、遮音、緩衝等の同種の機能を有するものではあるが、材料、形状、比重等のうち少なくともいずれか1つが異なる数種類のシート材を組み合わせて用いてもよい。また、防音部材(6) と同種のものでも異種のものでもよい。この防音部材(8) の厚みは、通常約0.4〜3.0mmとなされるが、好ましくは約0.5〜2.5mmである。
【0038】
なお、防音部材(8) を発泡体のみで構成する場合、発泡倍率が20倍以下のものを用いるのが好ましい。発泡倍率が20倍を越えると歩行時の浮沈感が大きくなりすぎるからである。また、防音部材(8) の厚みを上記範囲内のものとする限りにおいては、発泡倍率が20倍以内であれば、遮音性能に大差はない。もっとも、発泡体と制振シート材または遮音シート材とを組み合わせて防音部材(8) を構成する場合には、発泡体のみの場合と比べて発泡体が占める厚みが小さくなるので、発泡体の発泡倍率を20倍を越えるものとしてもよい。
【0039】
また、この木質床板(11)にあっては、上板(2A)と防音部材(8) との間に、前述したシート材(7) を介在させるようにしてもよい(図8参照)。このシート材(7) と木質床板(11)表面の化粧層(3) との間でバランスがとれるため、防音部材(6) と接合する前の木質板(2) 、さらには木質板829 と防音部材(6) とを接合してなる木質床材(11)が反り、特に谷反りを生じ難いものとなる。
【0040】
この木質床材(11)は、上板(2A)と下板(2B)との間に介在せられた防音部材(8) によって、前記木質床材(1) よりも遮音性に優れたものとなっている。
【0041】
図6は、木質床材(11)の製造方法の一例を示しており、次の点を除いて前記木質床材(1) の製造方法と同じであって、同方法とほぼ同様の効果を奏する。即ち、図6(b) に示すように、予め複数の上部横溝(4a)および上部縦溝(5) が形成せられた下板(2B)(図6(a) 参照)の表面に、防音部材(8) を接着等により接合したのち、この防音部材(8) の表面に上板(2A)を接着等により接合して、木質板(2) を形成する。なお、これらの接合は上記と逆の順序で行なっても勿論よい。ここで、接着は、冷圧、熱圧のいずれによるものでもよく、また、高周波を利用したものであってもよく、任意に選択することができる。
【0042】
【実施例】
次に、この発明の実施例を、比較例と併せて説明する(図2、図7、図8、図9、図10および図11参照)。
【0043】
実施例1
この実施例の木質床材(1) は、厚さ2.5mmの3プライ合板よりなる上板(2A)と厚さ8.5mmの針葉樹製3プライ合板よりなる下板(2B)とを、これらの間に耐熱性ポリエチレンシートの両面に紙を熱融着してなりかつ引張り強さ(JIS・P8113に準じる)が幅15mm当り5.5kgfである3層シートよりなるシート材(7) を介在させた状態で互いに接着接合して得られた木質板(2) と、発泡倍率45倍で連続発泡により形成された厚さ2.0mmの上部合成樹脂発泡体と発泡倍率30倍で独立発泡により形成された厚さ2.5mmの下部合成樹脂発泡体とよりなりかつ木質板(2) の裏面に接着せられた防音部材(6) とよりなり、その幅は145mm、長さは909mmである(図2参照)。木質板(2) の表面には、表面にウレタン樹脂塗装が施された厚さ0.25mmのナラ単板が接着せられて化粧層(3) が形成されている。木質板(2) には、木質板(2) の幅方向にのびるとともに上部の幅が1.5mm、下部の幅が3.0mmでかつその深さが下板(2B)の厚さと一致する段付きの横溝(4) が、木質板(2) の長さ方向に約12mm間隔おきに形成されている。また、木質板(2) の下板(2B)には、長さ方向にのびる幅1.5mm、深さ3.8mmの上面に開口した上部縦溝(5) が、木質板(2) の幅方向に約16mm間隔おきに形成されている。木質板(2) の周縁部には、本実加工が施されている(図示略)。そして、木質床材(1) は、接着工法により床下地に施工されている。ここで、木質板(2) の横溝(4) は、上板(2A)との接合前の下板(2B)の上部に、幅1.5mm、深さ4.5mmの上部横溝(4a)を丸鋸により形成しておいてから、上板(2A)と下板(2B)とを接合し、その後、下板(2B)における上部横溝(4a)の下側部分に、幅3.0mm、深さ5.0mmでかつその幅中心が上部横溝(4a)の幅中心と一致するような下部横溝(4b)を形成するように丸鋸により溝切り加工を施すことにより形成されている。
【0044】
実施例2
この実施例の木質床材は、上板(2A)と下板(2B)との間にシート材(7) が介在せられていない点、下板(2B)が厚さ5.5mmのラワン製5プライ合板よりなる点、木質板(2) の横溝(4) を構成する上部横溝(4a)の深さが2.9mm、同じく下部横溝(4b)の深さが3.8mmである点、および、下板(2) の上部縦溝(5) の深さが2.9mmであって、下板(2B)における上部縦溝(5) の下側部分に、幅3.0mm、深さ3.8mmでかつその幅中心が上部縦溝(5) の幅中心と一致するような下部縦溝を形成するように丸鋸により溝切り加工を施すことにより、裏面に開口しかつその深さが下板(2B)の厚さと等しい縦溝が木質板に形成されている点を除いて、実施例1と同じである(図示略)。
【0045】
実施例3
この実施例の木質床材(11)は、上板(2A)と下板(2B)との間に発泡倍率2.5倍で厚さ0.6mmの天然ゴム発泡体よりなる防音部材(8) が介在せられている点、および防音部材(6) が発泡倍率30倍で連続発泡により形成された厚さ3.0mmの上部合成樹脂発泡体と発泡倍率30倍で独立発泡により形成された厚さ1.0mmの下部合成樹脂発泡体とよりなる点を除いて、実施例2と同じである(図7参照)。
【0046】
実施例4
この実施例の木質床材(11)は、上板(2A)と防音部材(8) との間に、耐熱性ポリエチレンシートの両面に紙を熱融着してなりかつ引張り強さ(JIS・P8113に準じる)が幅15mm当り5.5kgfである3層シートよりなるシート材(7) が介在せられている点を除いて、実施例3と同じである(図8参照)。
【0047】
比較例1
比較例1の木質床材(41)は、木質板(2) の横溝(4) を上板(2A)と接合した後の下板(2B)に丸鋸で溝切り加工を施すことにより形成している点、および下板(2) に上部縦溝(5) を形成していない点を除いて実施例1と同じである(図9参照)。ここで、横溝(4) は、これらの幅が2.7mm、深さが8.0mmとなるように丸鋸を設定して形成したものであり、各横溝(4) の深さについては、設定値どおりのものが多かったものの、7.5mmのものや8.8mmと上板(2A)にまで達しているものもあり、1.3mmの範囲で寸法誤差が生じる結果となった。
【0048】
比較例2
この比較例の木質床材は、木質板(2) の横溝(4) および縦溝(図示略)を上板(2A)と接合した後の下板(2B)に丸鋸で溝切り加工を施すことによりそれぞれ形成している点を除いて実施例2と同じである(図示略)。ここで、横溝(4) は、これらの幅が2.0mm、深さが5.0mmとなるように丸鋸を設定して形成したものであり、各横溝(4) の深さについては、設定値どおりのものが多かったものの、4.5mmのものや5.7mmと上板(2A)にまで達しているものもあり、1.2mmの範囲で寸法誤差が生じる結果となった。また、縦溝は、これらの幅が2.5mm、深さが5.0mmとなるように丸鋸を設定して形成したものであり、各縦溝の深さについては、設定値どおりのものが多かったものの、4.5mmのものや5.7mmと上板(2A)にまで達しているものもあり、1.2mmの範囲で寸法誤差が生じる結果となった。
【0049】
比較例3
この比較例の木質床材(21)は、木質板(22)が厚さ9.0mmのラワン製5プライ合板よりなる点、木質板(22)の横溝(24)および縦溝を、木質板(22)の裏側から丸鋸で溝切り加工を施すことによりそれぞれ形成している点を除いて実施例2と同じである(図10参照)。ここで、横溝(24)は、これらの幅が2.7mm、深さが6.0mmとなるように丸鋸を設定して形成したものであり、各横溝(24)の深さについては、設定値どおりのものが多かったものの、5.5mmのものや6.5mmのものもあり、1.0mmの範囲で寸法誤差が生じる結果となった。また、縦溝は、これらの幅が2.7mm、深さが6.0mmとなるように丸鋸を設定して形成したものであり、各縦溝の深さについては、設定値どおりのものが多かったものの、5.5mmのものや6.5mmのものもあり、1.0mmの範囲で寸法誤差が生じる結果となった。
【0050】
比較例4
この比較例の木質床材(31)は、木質板(32)の横溝(34)および縦溝(図示略)を、防音部材(33)を介して上板(32A) と接合した後の下板(2B)に、丸鋸で溝切り加工を施すことにより形成している点を除いて実施例3と同じである(図11参照)。横溝(34)および縦溝の寸法誤差は、比較例2とほぼ同様であった。
【0051】
上記各実施例および比較例について、遮音性、踏み鳴りの有無、谷反りの有無、および表面の状態を観察、測定したところ、次のような結果が得られた。
【0052】
まず、遮音性に関しては、各床材36枚を厚さ150mmのコンクリートスラブ上に配置固定し、JIS・A1418に準じて軽量衝撃音テストを3カ所で行なったところ、実施例1および2については遮音等級L−44ないしL−45レベル、実施例3および4については遮音等級L−39ないしL−40レベルの測定結果が得られた。一方、比較例1ないし3については遮音等級L−44ないしL−48レベル、比較例4については遮音等級L−40ないしL−43レベルの測定結果が得られた。上記測定結果から明らかなように、実施例の方が比較例よりもバラツキが小さく、安定した遮音性が得られることがわかる。
【0053】
施工後の各木質床材(1,11,21,31,41) の上を歩行したところ、比較例1ないし4のみに、横溝(4) の上側部分の破壊によるミシッという踏み鳴りが発生した。
【0054】
防音部材(6) に接着する前の状態の木質板(2,24)について、その長さ方向の谷反りの有無を観察したところ、実施例1ないし4については、谷反りのないものがほとんどであり、僅かに谷反りしているものが少数あったが、比較例1ないし4については、僅かに谷反りしているものが実施例よりも多かった。また、木質板(2) に防音部材(6) を接着した木質床材(1,11,21,31,41) の状態では、上記と同様の傾向がみられたが、施工上の問題はなかった。
【0055】
施工後の各木質床材(1,11,21,31,41) の表面を観察したところ、比較例1、2および4については、上板(2A,32A)にまで達している横溝(4,34)の上側部分の折れ曲がりによる条、比較例3については、各横溝(24)の上側部分の折れ曲がりによる条がそれぞれ表面に現われていたが、実施例1ないし4については、そのような条は見られなかった。
【0056】
【発明の効果】
本発明の床材用木質板の製造方法によれば、下板の厚さと同じ深さの複数の溝を木質板に確実に形成することができる。
【0057】
また、本発明の木質床材によれば、木質板に、下板の厚さと同じ深さの複数の溝が形成せられているので、木質板の溝の深さにバラツキを生じることがなく、遮音性が安定する。また、木質板における各溝の上側部分には、溝が形成された下板とは別の上板が存在するので、単体の木質板に深い溝が形成された場合と比べて、同部分の曲げ強度が向上する。したがって、木質板としての曲げ強度が上板に依存できるため、上述のように下板の厚さと同じ深さの複数の溝を木質板に形成することができ、その結果、施工された木質床材の上を人が歩いたさいに破損するおそれのある箇所がなくなるので、踏み鳴りが確実に防止される。しかも、木質板の下板が溝によって分断されるため、木質板の可撓性が向上し、床下地への馴染みが良好となる。さらに、上板に溝が形成される心配がなく、したがって、上板は、板としてのバランスが損なわれないため、反りが生じ難く、ひいては木質板、さらには木質床材に反りが生じるのが軽減される上、反りに伴う溝の上側部分の折れ曲がりによる条の表出も生じ難い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す木質床材の製造工程図である。
【図2】本発明の第1の実施形態を示す木質床材の部分拡大縦断面図である。
【図3】木質板の溝の変形例を示す部分拡大縦断面図である。
【図4】木質板の溝の変形例を示す部分拡大縦断面図である。
【図5】木質板の溝の変形例を示す部分拡大縦断面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態を示す木質床材の製造工程図である。
【図7】本発明の第2の実施形態を示す木質床材の部分拡大縦断面図である。
【図8】本発明の第2の実施形態の変形例を示す木質床材の部分拡大縦断面図である。
【図9】比較例1の木質床材を示す部分拡大縦断面図である。
【図10】従来の木質床材を示す部分拡大縦断面図である。
【図11】従来の他の木質床材を示す部分拡大縦断面図である。
【符号の説明】
(1,11)…木質床材
(2) …床材用木質板
(2A)…上板
(2B)…下板
(4) …横溝
(4a)…上部横溝
(4b)…下部横溝
(6) …防音部材
(8) …防音部材
Claims (3)
- 互いに接合せられた上板および下板よりなりかつ裏面に開口した複数の溝を有する床材用木質板を製造するにあたり、下板の上部に溝切り加工を施して複数の上部溝を形成しておいてから、上板と下板とを接合し、次いで、下板における上部溝のほぼ下側部分に溝切り加工を施して上部溝と連続する下部溝を形成することにより、下板の厚さと同じ深さの複数の溝を木質板に形成することを特徴とする床材用木質板の製造方法。
- 防音部材を介して互いに接合せられた上板および下板よりなりかつ裏面に開口した複数の溝を有する床材用木質板を製造するにあたり、下板の上部に溝切り加工を施して複数の上部溝を形成しておいてから、防音部材を介して上板と下板とを接合し、次いで、下板における上部溝のほぼ下側部分に溝切り加工を施して上部溝と連続する下部溝を形成することにより、下板の厚さと同じ深さの複数の溝を木質板に形成することを特徴とする床材用木質板の製造方法。
- 請求項1または2記載の方法により製造された木質板と、これの下に配された防音部材とよりなる木質床材。
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