JP3542954B2 - 紡績糸の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、天然繊維又は化学繊維よりなる粗糸と、和紙よりなる帯材とを加撚することによって軽量で新規な風合いを醸し出すことができる紡績糸の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、紡績糸は所定の繊維長を有する天然繊維又は化学繊維よりなる粗糸に撚りを加えることにより形成されている。また、粗糸に撚りを加えて形成した紡績糸以外に、通常は廃棄される短繊維から抄紙を抄造した後、抄紙から所定幅の紙テープを形成し、この紙テープに撚りを加えて形成した紡績糸もある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記従来の紡績糸によれば、粗糸又は紙テープに撚りを加える際、糸内部において繊維同士が隙間無く詰まることから、これ以上の軽量化を図り難いという問題があった。加えて、紡績糸の風合いを変えるには、異種の繊維よりなる粗糸同士に撚りを加えたり、異種の繊維を混合して抄紙を抄造したり、粗糸又は紙テープの撚り数を変えたり等するしかなく、従来のものと比較して新たな外観を発揮し、斬新な風合いを醸し出しているとは言い難かった。
【0004】
この発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、軽量化を図りつつ、新規な外観を発揮し、斬新な風合いを醸し出すことができる紡績糸の製造方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の紡績糸の製造方法の発明は、粗糸供給部から供給された天然繊維又は化学繊維よりなる粗糸に対し、帯材供給部から供給された和紙よりなる幅2〜4mmの帯材を、テンション機構により5〜20gfの張力を付与した状態で供給ガイドを介して合流させた後、該帯材及び粗糸がリングの回転による糸条の撚りの伝播により加撚されることを特徴とするものである。
【0008】
請求項に記載の紡績糸の製造方法の発明は、請求項1に記載の発明において、前記供給ガイドを位置調節して、帯材を粗糸から3〜4mm離間させて合流させることを特徴とするものである。
請求項に記載の紡績糸の製造方法の発明は、請求項1又は請求項のいずれか一項に記載の発明において、前記帯材は、前記紡績糸中における混合比率が60〜80重量%であることを特徴とするものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
図1(a)は、撚りを加える際の紡績糸のある一箇所を拡大した図である。紡績糸は、帯材11と、粗糸12とが螺旋状をなすようにして互いに巻き付き、絡み合うことにより形成されている。前記帯材11には、楮、三椏、雁皮、マニラ麻等の植物繊維を抄紙して得られる和紙を材料とし、この和紙を所定幅にカットしてテープ状としたものが使用されている。帯材11の幅は、1〜8mmの範囲内に設定されることが好ましく、2〜4mmの範囲内に設定されることがより好ましい。帯材11の幅が1mm未満の場合には得られる紡績糸の強度が低下するとともに、8mmより広い場合には得られる糸が太くなり、糸としての用途が少なくなる。
【0010】
前記和紙としては美濃紙、奉書、杉原紙、西ノ内、泉貨紙、鳥の子紙等が挙げられる。この実施形態では美濃紙が使用されている。また、前記粗糸12にはその材料として、羊毛、綿、絹等の天然繊維、ポリエステル、ナイロン、レーヨン等の化学繊維又は天然繊維と化学繊維を混合したものが使用されている。この実施形態では粗糸12の材料には天然繊維である綿が使用されている。
【0011】
紡績糸中における帯材11の混合比率は、60〜80重量%の範囲内に設定されることが好ましく、これと対応して粗糸12の混合比率は、40〜20重量%の範囲内に設定されることが好ましい。帯材11の比率が60重量%未満で、粗糸12の比率が40重量%より大きい場合、粗糸12が所々で膨らんだり、毛羽立ったり等して均一な太さの紡績糸を得づらくなる。また、帯材11の比率が80重量%より大きく、粗糸12の比率が20重量%未満の場合、帯材11と粗糸12が絡み合わず、紡績糸の形態を保持しづらくなる。
【0012】
紡績糸中において、帯材11は、撚りを加える際に捻れが加わり、空気を巻き込むとともに、若干嵩張り、粗糸12との間に隙間を形成している。従って、紡績糸の内部には帯材11及び粗糸12が緊密に詰まらず、空気が含まれることにより、同程度の太さの糸よりも軽量化が図られている。さらに、帯材11が和紙製であることから、和紙が有する優れた吸湿性及び放湿性を備えた紡績糸になるとともに、この帯材11と綿製の粗糸12が交互に入り交じることにより新規な外観が発揮され、斬新な風合いが醸し出される。
【0013】
また、図1(a)には帯材11及び粗糸12が互いに巻き付き合った形態の紡績糸を示したが、これ以外に図1(b)に示すように、帯材11を中心としてその周囲に粗糸12が巻き付いた形態の紡績糸と、図示はしないが粗糸12を中心としてその周囲に帯材11が巻き付いた形態の紡績糸とを製造することも可能である。そして、使用目的に合わせ、各形態の紡績糸を使い分けたり、組み合わせたり等することにより、さらに斬新な風合いを醸し出し、より新規な外観を発揮することも可能である。
【0014】
次に、上記紡績糸の製造装置について説明する。
図3に示すように、製造装置の粗糸供給部を構成する篠巻21は、図中で左側となる製造装置の最も上流側に配設され、その周面上には粗糸12が巻回された状態で保持されている。篠巻21の下流には、上流側から順番に各一対のバックローラ22、ミドルローラ23、テンサー24及びフロントローラ25が配設されている。各ミドルローラ23及びテンサー24の間には合成ゴム製の無端状ベルトよりなるエプロン26がそれぞれ張設されており、各エプロン26は、ミドルローラ23の回転に従動してミドルローラ23及びテンサー24の外周面上を移動するようになっている。また、フロントローラ25は、その回転速度がミドルローラ23の回転速度よりも速くなるように設定されている。
【0015】
上記の各一対のバックローラ22、ミドルローラ23、テンサー24、フロントローラ25及びエプロン26によりドラフト装置が構成されている。篠巻21から図示しないガイドを介して導出された粗糸12は、バックローラ22によりドラフト装置内へと引き出されるとともに、両ミドルローラ23の間に供給され、両エプロン26間で把持される。これらエプロン26間で把持された粗糸12は、その移動速度を維持されたままの状態でテンサー24の間へ移送される。そして、テンサー24の間に達した粗糸12は、フロントローラ25によりエプロン26の間から引き抜かれるとともに、テンサー24及びフロントローラ25の間で引き延ばされながら下流側へと送られる。
【0016】
テンサー24及びフロントローラ25の間における上方位置には帯材供給部が設けられ、帯材11がテンサー24及びフロントローラ25の間に上方から供給され、フロントローラ25の手前で粗糸12と合流されるようになっている。この帯材供給部の構成について説明する。
【0017】
帯材供給部を構成するストックチーズ27は、帯材供給部の最も上方に配設され、供給前の帯材11を巻回状態で保持している。ストックチーズ27の近傍には一対の供給ローラ28が配設され、ストックチーズ27からの帯材11の引き出し量を調整している。供給ローラ28よりも帯材11の進行側には、テンション機構を構成するテンションローラ29が配設されており、このテンションローラ29は帯材11の進行方向を案内するとともに、所定の張力を付与している。
【0018】
テンションローラ29により帯材11に付与される張力は、5〜20gfの範囲内に設定されており、好ましくは8〜13gfの範囲内である。張力が5gf未満の場合、帯材11の弛みにより紡績糸が均一な太さでなくなり、20gfより強い場合、帯材11が切れてしまう。また、テンションローラ29よりも帯材11の進行側にはテンサー24及びフロントローラ25の間へ帯材11を案内するための供給ガイド30が配設されている。
【0019】
上記のストックチーズ27、一対の供給ローラ28、テンション機構を構成するテンションローラ29及び供給ガイド30により帯材供給部が構成されている。そして、この帯材供給部から所定の張力を付与された状態で供給された帯材11は、フロントローラ25の手前で粗糸12と合流されるようになっている。
【0020】
フロントローラ25の側方には、糸条の進行方向を下方に案内するためのリング状をなすスネルワイヤ31が配設されている。このスネルワイヤ31の下方位置には紡績糸を巻き取るためのスピンドル32が回転可能に設けられるとともに、このスピンドル32上には紡績糸を巻き取って回収するためのボビン33が固定されている。ボビン33の周囲には、ボビン33の周囲を回転しつつ、図中に2点鎖線で示すように、ボビン33に対して上下に往復動可能に構成されたリング34が配設されている。
【0021】
上記スネルワイヤ31、スピンドル32、ボビン33、リング34等により巻き取り部が構成されている。前記フロントローラ25の手前で合流された帯材11及び粗糸12は、フロントローラ25で瞬間的に把持されるとともに、リング34の回転によりフロントローラ25及びリング34の間で加撚される。そして、帯材11及び粗糸12が加撚されることにより形成された紡績糸は、スネルワイヤ31にその進行方向を案内されながらリング34へ送り込まれるとともに、スピンドル32とともに回転するボビン33によりリング34から引き出され、巻き取られる。
【0022】
図2(a)は、前記製造装置を上方から見た状態で、帯材11及び粗糸12が合流する箇所を拡大した図である。前記供給ガイド30は、帯材11を粗糸12に対して所定間隔を保持した状態で合流させるようになっている。このとき、帯材11及び粗糸12の間隔Lは3〜4mmが好ましい。間隔Lが3mm未満の場合、粗糸12が毛羽立ち、膨らむことによって均一な太さの紡績糸を得づらくなり、間隔Lが4mmより広い場合、帯材11及び粗糸12を撚り合わせづらくなる。
【0023】
また、図2(a)に実線及び2点鎖線で示すように、供給ガイド30は、テンサー24及びフロントローラ25の間において、帯材11及び粗糸12の間隔Lを保持したまま、粗糸12の進行方向に対して直交する面内で移動可能に構成されている。そして、供給ガイド30を移動させて帯材11の粗糸12に対する合流位置を変更することにより、帯材11及び粗糸12の巻き付き形態を変更することができる。例えば、供給ガイド30が図2(a)中に実線で示す位置となる場合、紡績糸は図1(a)に示すような、帯材11及び粗糸12が互いに巻き付き合った形態となる。また、供給ガイド30が図2(a) 中に2点鎖線で示す位置となる場合、紡績糸は粗糸12を中心としてその周囲に帯材11が巻き付いた形態となる。さらに、図2(b)に示すように、供給ガイド30が粗糸12上に重なって位置する場合、紡績糸は図1(b)に示すような、帯材11を中心としてその周囲に粗糸12が巻き付いた形態となる。
【0024】
次いで、紡績糸の製造方法について説明する。
さて、粗糸供給部の篠巻21から導出された粗糸12は、ドラフト装置で引き延ばされつつ、フロントローラ25へと送られる。一方、帯材供給部にてテンションローラ29を通過して張力が付与された帯材11は、供給ガイド30へ送られ、ここから粗糸12に対して所定距離を保持した状態でテンサー24及びフロントローラ25の間に供給され、フロントローラ25の手前で粗糸12と合流される。続いて、フロントローラ25を通過した帯材11及び粗糸12がリング34の回転による糸条の撚りの伝播により加撚され、互いに巻き付き、絡み合うことにより、紡績糸が形成される。この紡績糸はスネルワイヤ31を経た後、上下動するリング34に到り、スピンドル32によりリング34よりも高速に回転するボビン33にリング34から引き出されつつ、ボビン33上に巻き取られる。
【0025】
上記加撚処理時において、帯材11は粗糸12に対し、捻れながら撚り合わされることにより、空気を巻き込みながら加撚される。従って、形成される紡績糸は、同程度の太さの通常糸と比較して、その内部に空気を含む多くの隙間を有し、軽量なものとなる。また、紡績糸は和紙の質感と、糸の質感といった異なる12種の質感を有することにより、かつてない新規な外観を発揮し、その風合いは斬新なものとなる。
【0026】
上記のような紡績糸を経糸又は緯糸の少なくとも一方に使用して織りあげることにより織物が得られ、紡績糸を編機で平編み、横編み、丸編み等して編みあげることにより編物が得られる。そして、この紡績糸を使用した織物及び編物は、和紙製の帯材11及び天然繊維製の粗糸12が糸条の表面で交互に入り交じって、新規な外観を発揮し、斬新な風合いを醸し出す。また、糸条が軽量であるため、織物及び編物は軽量なものになるとともに、糸条中の帯材11により吸湿性及び放湿性に優れたものになる。また、巻き付き形態の異なる帯材11及び粗糸12を使用することにより、さらに斬新な風合いを醸し出しつつ、変化に富む外観を発揮することができる。
【0027】
なお、本実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ テンション機構はテンションローラ29に限定されず、帯材11に所定の張力を付与できるのであれば、例えば帯材11の進行方向に対して横方向からピン、棒状のバー等を摺接させたり、供給ローラ28の回転速度をフロントローラ25よりも遅くなるように調節し、帯材11に張力を付与したり等してもよい。
【0028】
・ 帯材11及び粗糸12のうち一方のみを着色するか、あるいは帯材11及び粗糸12の両方をそれぞれ異なる色に着色してもよい。このように構成した場合、帯材11及び粗糸12部分で色合いが異なることにより、さらに斬新で良好な外観を備えた紡績糸を得ることができる。
【0029】
・ 例えば、図3に2点鎖線で示すように、供給ガイド30をバックローラ22及びミドルローラ23の間に配設し、ミドルローラ23の手前で帯材11を粗糸12と合流させてもよい。あるいは、供給ガイド30を篠巻21及びバックローラ22の間に配設し、バックローラ22の手前で帯材11を粗糸12と合流させてもよい。なお、帯材11を粗糸12とミドルローラ23又はバックローラ22の手前で合流させる場合には、ドラフト装置内を通過することによって所定以上の張力が加わり、帯材11が切れることを防止するために、エプロン26又はバックローラ22の外周面に溝部を凹設し、この溝部内を帯材11が通過するように構成することが好ましい。
【0030】
さらに、前記実施形態より把握できる技術的思想について以下に記載する。
・ 前記帯材の幅を1〜8mmの範囲内に設定した請求項1又は請求項2に記載の紡績糸。このように構成した場合、紡績糸の強度の低下を抑制しつつ、様々な用途に対応することができる。
【0031】
・ 天然繊維又は化学繊維よりなる粗糸を供給する粗糸供給部と、
和紙よりなる所定幅の帯材を供給して、供給ガイドを介して前記粗糸に合流させるとともに、供給される帯材に対し5〜20gfの張力を付与するためのテンション機構を有する帯材供給部と、
前記粗糸供給部及び帯材供給部から供給される帯材及び粗糸に撚りを加えて紡績糸を複合形成するドラフト装置と、
形成された紡績糸を巻き取る巻き取り部と
とを備えた紡績糸の製造装置。
【0032】
このように構成した場合、軽量化を図りつつ、斬新な風合いを発揮することができる紡績糸を製造することができる。
・ 請求項1又は請求項2に記載の紡績糸を織り上げて形成される織物。このように構成した場合、吸湿性及び放湿性に優れ、軽量な織物を得ることができる。
【0033】
・ 請求項1又は請求項2に記載の紡績糸を編み上げて形成される編物。このように構成した場合、吸湿性及び放湿性に優れ、軽量な編物を得ることができる。
【0034】
【発明の効果】
以上詳述したように、この発明によれば、次のような効果を奏する
【0035】
請求項1〜請求項に記載の発明によれば、軽量化を図りつつ、斬新な風合いを発揮することができる紡績糸を得ることができる。
【0036】
請求項に記載の発明によれば、帯材及び粗糸を確実に加撚しつつ、均一な太さの紡績糸を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は実施形態の加撚処理時の紡績糸を示す分解斜視図、(b)は別の撚り形態の加撚処理時の紡績糸を示す分解斜視図。
【図2】(a)は製造装置を上方から見た状態における実施形態の帯材及び粗糸が合流する箇所の概略を示す部分拡大図、(b)は製造装置を上方から見た状態における別形態の帯材及び粗糸が合流する箇所の概略を示す部分拡大図。
【図3】紡績糸の製造装置の概略を示す正面図。
【符号の説明】
11…帯材、12…粗糸、21…粗糸供給部を構成する篠巻、27…帯材供給部を構成するストックチーズ、29…テンション機構としてのテンションローラ、30…供給ガイド。

Claims (3)

  1. 粗糸供給部から供給された天然繊維又は化学繊維よりなる粗糸に対し、帯材供給部から供給された和紙よりなる幅2〜4mmの帯材を、テンション機構により5〜20gfの張力を付与した状態で供給ガイドを介して合流させた後、該帯材及び粗糸がリングの回転による糸条の撚りの伝播により加撚されることを特徴とする紡績糸の製造方法。
  2. 前記供給ガイドを位置調節して、帯材を粗糸から3〜4mm離間させて合流させることを特徴とする請求項1に記載の紡績糸の製造方法。
  3. 前記帯材は、前記紡績糸中における混合比率が60〜80重量%である請求項1又は請求項2に記載の紡績糸の製造方法。
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