JP3542266B2 - Icカード及びフレーム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はICカード及びフレームに関し、更に詳細には導線が実質的に同一平面上に複数回卷回されて成る平面コイルの端子と半導体素子の電極端子とが接続されたICカード及びICカードの平面コイルを製造する際に用いるフレームに関する。
【0002】
【従来の技術】
ICカードは、導線が複数回卷回されて成る平面コイルと半導体素子とから構成され、PVC等から成り且つ表面側に文字等が印刷されてICカードの表裏面を形成する各樹脂フィルムの内面側に形成されたポリウレタン樹脂等から成る接着剤層によって、平面コイル等が挟み込まれて封止されている。
かかるICカードは、カード処理装置に設けられた磁場内を通過する際に、ICカードの平面コイル内に電磁誘導による電力が発生して半導体素子を起動し、ICカードの半導体素子とカード処理装置との情報の授受をアンテナとしての平面コイルを介して行うことができる。
この様なICカードの平面コイルは、従来、被覆電線を卷回して形成されたものと、樹脂フィルム上に形成された金属箔にエッチング等を施して導線を形成するものとがある。
ところで、ICカードの普及を図るためには、ICカードの低コスト化と量産化とが必要であるが、前述した従来の平面コイルを用いたICカードでは、平面コイルの低コスト化と量産化とを充分に図ることができない。
このため、特開平6−310324号公報においては、プレス加工によって形成した平面コイルを用いたICカードが提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
前記公報で提案されたように、プレス加工によって平面コイルを形成することにより、従来の平面コイルよりも低コスト化及び量産化を図ることができる。
しかしながら、プレス加工によって形成された平面コイルは、図29に示す如く、平面コイル100の端子102、104がコイルの内側と外側とに形成されている。このため、平面コイル100の端子102、104と半導体素子106の電極端子108、110とを接続するワイヤ112、114のうち、ワイヤ114は平面コイル100を形成する導線101を横切る。従って、ワイヤ112、114に絶縁被覆ワイヤを使用する場合は、ICカードの更なる低コスト化を図ることが困難である。
一方、平面コイル100を横切ることのないワイヤ112に、非絶縁性ワイヤを使用し、平面コイル100を横切るワイヤ114に絶縁被覆ワイヤを使用する場合は、二種類のワイヤを使用しなくてはならず、ICカードの製造工程が複雑化され、ICカードの低コスト化及び量産化を図ることは困難である。
そこで、本発明の課題は、プレス加工によって形成された平面コイルを用いて低コスト化及び量産化を図り得るICカード及びICカードの平面コイルを製造する際に用いるフレームを提案することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は前記課題を解決すべく検討を重ねたところ、一般的に、半導体素子の電極端子を除く表面はパッシベイション膜によって電気的に絶縁されているため、電極端子を除く半導体素子の部分を平面コイルの導線と接触してもよいこと、及び半導体素子の電極端子を平面コイル側とすることによって、平面コイルの端子を半導体素子の電極端子に近接して配設できることが判明した。
このため、本発明者等は、平面コイル100に対し、電極端子108、110が導線101側となるように、半導体素子106を配設し、半導体素子106の電極端子108、110と平面コイル100の端子101、103との各々をワイヤによってボンディングした。このICカードでは、平面コイル101と半導体素子106とを接続するワイヤを絶縁被覆することを要しないこと、及び従来から半導体素子とリードフレームのインナーリードとのボンディング法として採用されているウェッジ・ボンディング法を採用できることを知り、本発明に到達した。
【0005】
すなわち、本発明は、導線が実質的に同一平面上に複数回卷回されて成る平面コイルが、金属板をプレス加工又はエッチング加工して形成され、且つ前記平面コイルの端子と半導体素子の電極端子とが電気的に接続されたICカードにおいて、該平面コイルが、前記半導体素子よりも厚い導線によって形成されていると共に、コイルの内側に形成された内側端子とコイルの外側に形成された外側端子とを具備し、前記半導体素子の全体が、その電極端子の形成面が平面コイルの導線に対し対向するように、前記平面コイルを形成する導線の途中に施された潰し加工によって、底面部が前記潰し加工が施されなかった前記導線の他の部分よりも薄く形成された凹部内に挿入されていると共に、前記平面コイルの内側端子及び外側端子と接続される半導体素子の電極端子の各々がコイルの内側と外側とに位置され、且つ前記半導体素子の電極端子が、コイルの内外方向に対して同一側に位置する平面コイルの端子と電気的に接続されていることを特徴とするICカードにある。
また、本発明は、ICカードの平面コイルを製造する際に用いるフレームであって、金属板にプレス加工又はエッチング加工を施して形成されたフレームを構成する、互いに平行な二本のレールの間に、搭載される半導体素子よりも厚い導線が実質的に同一平面上に複数回卷回されて成る複数個の平面コイルが、前記レールの長手方向に形成され、且つ前記平面コイルの各々には、前記平面コイルを形成する導線の途中に施された潰し加工によって、底面部が前記潰し加工が施されなかった前記導線の他の部分よりも薄く形成された、前記半導体素子の全体が挿入される凹部が設けられていることを特徴とするフレームでもある。
尚、本発明において言う「実質的に同一平面上」とは、平面コイルを構成する導線の一部に凹凸が形成されていても、平面コイル全体として同一平面上で導線が卷回されていればよい。
【0006】
【発明の実施の形態】
図1はICカードの一例を示す平面図である。図1において、プレス加工によって形成された厚さ80μm以上の導線11が実質的に同一平面上に複数回卷回して成る矩形状の平面コイル10が形成されている。この平面コイル10は、全体として同一平面に導線11が複数回卷回されているものである。かかる平面コイル10のコイルの内側と外側とに位置する端部の各々に設けられた端子10a、10bと、厚さ40〜50μmの半導体素子12に形成され且つ平面コイル10のコイルの内側と外側とに位置する電極端子12a、12bとは、コイルの内外方向に対して同一側に形成された端子同士が電気的に接続されている。
図1に示すICカードにおいて、半導体素子12が配設されている平面コイル10には、図2に示す様に、平面コイル10を構成する導線11が曲折されて形成された凹部14が形成されており、この凹部14内に半導体素子10が配設されている。この導線11の曲折はプレス加工によって行うことができる。かかる凹部14は、半導体素子10の全体が凹部14内に挿入されるサイズとする。
尚、図1において、矩形状の平面コイル10の角部間に凹部14を形成しているが、平面コイル10の角部に凹部14を形成して半導体素子10を配設してもよい。
【0007】
また、図1に示すICカードの部分断面図である図2に示す様に、半導体素子12と間隙を介して配設されている平面コイル10の端子10a、10bには、半導体素子12の電極端子12a、12bが形成された形成面と実質的に同一面となるように、潰し加工が施されて接続面16が形成されている。この接続面16が形成された部分は、図2に示す様に、半導体素子12と略同一厚さに形成されている。
この様に、図1及び図2に示すICカードでは、平面コイル10の端子10a、10bの接続面16と、半導体素子12の電極端子12a、12bの形成面とが、実質的に同一平面であるため、ウェッジ・ボンディング法によってワイヤボンディングを施すことができる。このため、図2に示す様に、平面コイル10の面からループの一部が突出することなく金、白金、又はアルミニウム製のワイヤ18、18により、平面コイル10の端子10a、10bと、半導体素子12の電極端子12a、12bとを電気的に接続できる。
尚、平面コイル10や半導体素子12等は、図2に示す様に、PVC等から成り且つ表面側に文字等が印刷されてICカードの表裏面を形成する樹脂フィルム20a、20bの内面側に形成された、ポリウレタン樹脂やポリオレフィン樹脂等から成る接着剤層22a、22bによって挟み込まれて封止されている。
【0008】
図1及び図2に示すICカードを製造する際に、平面コイル10としては、図3に示すフレームFを用いることが好ましい。このフレームFは、銅板等の金属板をプレス加工して形成されたものであり、互いに平行な二本のレール60、60の間に平面コイル10、10・・がレール60の長手方向に形成されている。かかる平面コイル10、10・・を構成する導線11のうち、最外周の導線11aは他の導線11よりも太く形成され、且つ平面コイル10の導線11aは隣接する平面コイル10の導線11aと連結部62によって互いに連結されている。このため、平面コイル10の各々の強度を向上でき、フレームFの運搬等における取扱性を向上できる。
図3に示すフレームFの平面コイル10は、その最外周の導線11aを太く形成しているが、導線11aを他の導線11よりも太い状態でICカードとしてもよく、連結部62等を切断する際に、最外周の導線11aを切断して他の導線11と同一太さとしてもよい。
【0009】
また、平面コイル10の強度を更に向上すべく、平面コイル10を構成する導線11を連結部で連結してもよい。この連結部は、ICカードの表裏面を形成する樹脂フィルム20a、20bの内面側に形成された接着剤層22a、22bによって挟み込む前に切断することによって、導線11間の短絡を防止できる。
ところで、図3に示すフレームFは、銅板等の金属板にエッチング加工を施すことによっても得ることができる。エッチング加工によって得られたフレームFは、プレス加工によって形成した平面コイルの導線11に比較して、細い導線11から成る平面コイル10を形成できる。
【0010】
図3に示すフレームFを用いてICカードを製造する際には、フレームFから切り離した平面コイル10に半導体素子12の搭載等を行ってもよいが、平面コイル10をフレームFから切り離すことなく半導体素子12の搭載等を行うことが好ましい。この場合、フレームFに形成された平面コイル10の各々に半導体素子12を搭載し、ボンディング装置を用いて平面コイル10の端子10a、10bと半導体素子12の電極端子12a、12bとをワイヤ18、18によってボンディングする。次いで、一面側に接着剤層22a、22bが形成された樹脂フィルム20a、20bによって、平面コイル10及び半導体素子12等を挟み込み封止した後、所定箇所を切断してフレームFから切り離すことによってICカードを得ることができる。
【0011】
このワイヤを用いたボンディングとしては、ウェッジ・ボンディング法がワイヤ18、18の膨らみ(ループの大きさ)を可及的に小さくでき好ましい。かかるウェッジ・ボンディング法は、図4に示すウェッジ・ボンディング装置を用いて行うことができる。このウェッジ・ボンディング装置は半導体装置の製造装置として汎用されている。
かかるウェッジ・ボンディング装置を用いたボンディングでは、ボンディングする端子(以下、ボンディング端子と称する)の一方の上方に移動してきたウェッジ24の先端部には、クランパ26で把持されたワイヤ18の先端部が斜めに挿通されている〔図4の(a)〕。このウェッジ24が降下し、ワイヤ18の先端を接続面上に圧着する〔図4の(b)〕。
次いで、ウエッジ24を、ボンディング端子の一方と実質的に同一平面に形成されている他方のボンディング端子の方向に移動させつつクランパ26を開き、ワイヤ18を他方のボンディング端子に案内した後〔図4の(c)〕、他方のボンディング端子の接続面にワイヤ18の先端を接続面上に圧着する〔図4の(d)〕。
【0012】
その後、クランパ26によってワイヤ18を把持して引っ張り、ワイヤ18を切断し〔図4の(e)〕、ボンディング操作を完了する。
かかる図4の(a)〜(e)の一連の操作を繰り返すことによって、ワイヤボンディングを引き続き行うことができる。
このウェッジ・ボンディング法によれば、図4に示す様に、クランパ26で把持されたワイヤ18の先端部がウェッジ24の先端部に斜めに挿通されているため、先端がボンディング端子の一方に圧着されたワイヤ18を他方のボンディング端子に案内する際に、ワイヤ18の膨らみ(ループの大きさ)を可及的に小さくできる。
このため、図2に示す様に、平面コイル10の面からループの一部が突出することなくワイヤ18、18により、平面コイル10の端子10a、10bと、半導体素子12の電極端子12a、12bとを電気的に接続できる。
【0013】
図2に示すループ状のワイヤ18は、一面側に接着剤層22a、22bが形成された樹脂フィルム20a、20bによって、平面コイル10及び半導体素子12等を挟み込み封止する際に、接着剤の流れ方向にワイヤ18のループ状部の変形、ワイヤ18の圧着部の剥離、或いはワイヤ18の切断等が発生し、ワイヤ18と平面コイル10の導線11とが接触するおそれがある。かかるループ状のワイヤ18の変形等を防止するには、図5に示す様に、平面コイル10の端子10bと半導体素子12の電極端子12bとに圧着されたワイヤ18の圧着部を樹脂15、15、特にUV硬化樹脂によって固定しておくことが好ましい。
【0014】
図1及び図2に示すICカードでは、平面コイル10の端子10a、10bと、半導体素子12の電極端子12a、12bとを電気的に接続するため、ワイヤ18、18によってボンディングをしている。この半導体素子12は、厚さが40〜50μm程度で軽いものであるため、ワイヤ18、18によって半導体素子12を充分に支承できる。
かかるワイヤ18、18のみによっては半導体素子12を支承できず、製造中に問題が発生するような場合は、図6に示す様に、半導体素子12を支承する支承用ワイヤ25、25を平面コイル10の導線11との間に設けてもよい。この場合、半導体素子12の電極端子12a、12bの形成面で且つ平面コイル10の外側及び内側となる位置に、支承用ワイヤ25、25を圧着する支承用ワイヤ用パッド23a、23bが設けられている。
尚、図6においては、支承用ワイヤ25を二本設けているが、一本の支承用ワイヤ25によって半導体素子12を充分に支承できるならば、支承用ワイヤ25は一本でもよい。
【0015】
図1〜図6に示した平面コイル10の端子10a、10bの接続面16は、潰し加工が施されて半導体素子12の電極端子12a、12bの形成面を含む平面と実質的に同一平面であればよく、その形状は任意の形状とすることができるが、図1、図2、及び図6に示す平面コイル10の端子10a、10bは、図7に示す端子形状のものが好ましい。図7に示す端子10a(10b)の潰し加工が施された接続面16は、導線11の幅を保持した状態で延出されており、導線11と略平行に張られたワイヤ18の端部と接続する箇所を充分に確保できる。
【0016】
また、平面コイル10の端子10a、10bと半導体素子12の電極端子12a、12bとの接続を、ボンディング装置の動作等の関係で図8に示す様に、半導体素子12を迂回して平面コイル10の内側及び外側に位置する電極端子12a、12bの近傍に設けられた端子10a、10bとの間で行ってもよい。図8は、両者を接続するワイヤ18、18が導線11に対して直角方向に張られた場合である。
かかる図8に示す平面コイル10の端子10a、10bは、図9に示すものが好ましい。図9の端子10a(10b)の潰し加工が施された接続面16は、導線11よりも拡幅されており、導線11に対して直角方向に張られたワイヤ18の端部と接続する箇所を充分に確保できる。
【0017】
図2に示すループ状のワイヤ18は、樹脂フィルム20a、20bの一面側に形成された接着剤層22a、22bによって挟み込まれて封止される際に、接着剤の流れる方向にワイヤ18が変形するおそれがある。特に、平面コイル10を構成する導線11間の間隙が狭い場合には、変形したワイヤ18が導線11に接触するおそれもある。このため、ワイヤ18近傍の接着剤の流れを緩和すべく、図10に示す様に、平面コイル10の内側及び外側に位置する端子10a、10bにおいて、接続面16の導線11側に対して反対側となる部分に壁部27を形成することが好ましい。この壁部27によって、ワイヤ18が接着剤層22a、22bに挟み込まれて封止される際に、端子10a、10b近傍の接着剤の流れを緩和して導線11と接触するようなワイヤ18の変形を防止できる。
かかる図10に示す平面コイル10の端子10a、10bとしては、図11に示すものが好ましい。図11の端子10a、10bには、導線11の端部が導線11の幅を保持した状態で延出されるように潰し加工が施された接続面16が形成され、且つこの接続面16の導線11側に対して反対側となる部分に壁部27が立設されている。
【0018】
この図11に示す平面コイル10の端子10a、10bに代えて、図12に示す端子10a、10bを用いることができる。図11の端子10a、10bには、導線11の端部が導線11の幅を保持した状態で延出されるように潰し加工が施された接続面16が形成され、且つこの接続面16の両側に壁部27a、27bが形成されている。かかる図12に示す端子10a、10bによれば、導線11と略平行に張られたワイヤ18の端部と接続する箇所を充分に確保でき、且つワイヤ18が接着剤層22a、22bに挟み込まれて封止される際に、端子10a、10b近傍の接着剤の流れを緩和し、導線11と接触するようなワイヤ18の変形を防止できる。また、例えワイヤ18が導線11側方向に変形しても、導線11側に形成されている壁部により、ワイヤ18と導線11との接触を防止できる。
【0019】
図7、図9、図11、及び図12に示す端子10a(10b)のいずれも、図13に示す平面コイル10を構成する導線11の端部に潰し加工を施すことによって形成できる。かかる潰し加工によって形成された端子10a、10bは、ワイヤ18によってボンディングされるため、ワイヤ10との接続を確実にすべく、端子10a、10bの接続面16には金めっき又はパラジウムめっきを施すことが好ましい。
唯、端子10a、10bは複雑な形状をしているため、その接続面16のみに金めっき又はパラジウムめっきを施すことは困難である。このため、図13に示す様に、導線11の端部の潰し加工を施す箇所28に、予め金めっき又はパラジウムめっきを施すことが好ましい。予め施された金めっき又はパラジウムめっきは、潰し加工の際に、展延されて端子10a、10bの接続面16を実質的に覆うことができる。
【0020】
以上、述べてきたICカードでは、平面コイル10の端子10a、10bと半導体素子12の電極端子12a、12bとの接続を、導電性に優れている金、白金、又はアルミニウム製のワイヤ18、18によってなされているが、ワイヤ18、18は細いために平面コイル10を構成する導線11よりも電気抵抗値が高い。このため、平面コイル10に電磁誘導によって発生した電力が半導体素子12に充分に送電されない懸念がある。
この懸念を解消するには、図14に示す様に、平面コイル10の端子10a、10bと半導体素子12の電極端子12a、12bとを、リボン状の接続金属部材30により接続することが好ましい。
このリボン状の接続金属部材30は、導線11の幅と略等しい幅で且つ銅、金、アルミニウム等の導電性が良好な金属によって形成されている。かかる接続金属部材30は、平板であってもよいが、図15に示す様に、途中がドーム状部30cに形成されたものが好ましい。平面コイル10と半導体素子12との熱膨張率差や、ICカードの曲げ等によって、平面コイル10に生じた応力等を吸収できるからである。この図15に示す接続金属部材30は、その両端部30a、30bが平坦に形成され、平面コイル10の端子10a(10b)と半導体素子12の電極端子12a(12b)とに接続される。
ここで、接続金属部材30が銅製の場合、両端子の接続は、接続金属部材30の接続面に金めっき、錫めっき、又ははんだめっきを施すと共に、半導体素子12の電極端子12a、12bと平面コイル10の端子10a、10bとに金めっきを施し、接続する両端子を加熱・圧着することにより、共晶合金によって行うことができる。一方、接続金属部材30が金又はアルミニウム製である場合、両端子の接続は、接続金属部材30の接続面に金属めっきを施さなくても行うことができる。また、両端子の接続は導電性接着剤を用いても行うことができる。
尚、ドーム状部30cは、平面コイル10から突出しない大きさとすることは勿論のことである。
【0021】
更に、平面コイル10の端子10a、10bと半導体素子12の電極端子12a、12bとの接続部の電気抵抗値の低下は、図16に示す様に、端子10b(10a)と電極端子12b(12a)とを直接接合することによっても可能である。かかる接合は、金めっきを施した半導体素子12の電極端子12a、12bと、金めっき、錫めっき、又ははんだめっき等の金属めっきを施した平面コイル10の端子10a、10bの電極端子12a、12bとを、加熱・加圧して共晶結合によって行うことができる。また、両端子の接続は導電性接着剤を用いても行うことができる。
この場合、端子10b(10a)と電極端子12b(12a)との接合を確実にすべく、図17に示す様に、端子10b(10a)の接続面に、半導体素子12の電極端子12b(12a)に当接して潰される突起部32を形成することが好ましい。
【0022】
図16に示す様に、半導体素子12の電極端子12b、12aと平面コイル10の端子10a、10bとが直接接合されている場合、ICカードに加えられる屈曲や熱等の応力に因り平面コイル10に生じる応力は両端子の接続部に集中し、両端子の接続が剥離することがある。この両端子の接続部への応力の集中を緩和するには、平面コイル10の端子10a、10bの近傍に、平面コイル10に加えられる応力を吸収する応力吸収部を形成することが好ましい。
かかる応力吸収部としては、図18に示す屈曲部34がプレス加工等で簡単に形成でき好ましい。この屈曲部34では、平面コイル10に加えられる応力を屈曲部34の伸縮によって吸収でき、両端子の接続部に加えられる応力を緩和できる。
【0023】
また、平面コイル10に形成される凹部14も、導線11を曲折して形成する他に、導線11の厚さが半導体素子12よりも厚いことを利用し、図19に示す様に、導線11の途中に潰し加工を施して凹部14を形成してもよい。この場合、平面コイル10及び半導体素子12を、ICカードの厚み方向の中央部に位置させることができ、ICカードを薄く形成できる。
尚、図19に示す様に、潰し加工が施された導線11の部分が他の導線11よりも薄くなるが、導線11自体の電気抵抗値には問題がない。
【0024】
これまで述べてきたICカードは、平面コイル10を構成する導線11に曲折又は潰し加工を施して凹部14を形成しているが、図20及び図21に示す様に、導線11の端部近傍を曲折すると共に、先端部に潰し加工を施すことによって、平面コイル10に凹部14を形成することなく平面コイル10の端子10a、10bの接続面16の各々を半導体素子12の電極端子12a、12bの形成面を含む平面と実質的に同一平面とすることができる。
この図20及び図21においては、平面コイル10の端子10a、10bと半導体素子12の電極端子12a、12bとをワイヤ18、18によってボンディングする際に、半導体素子12の上面を通過する平面コイル10の導線11と半導体素子12とを接着することなく行っている。これに対し、図22及び図23に示す様に、半導体素子12の上面を通過する平面コイル10の導線11と半導体素子12とを接着剤層36によって接着した後、平面コイル10の端子10a、10bと半導体素子12の電極端子12a、12bとをワイヤボンディングすることが好ましい。接着剤層36によって平面コイル10の導線11と半導体素子12とを接着することによって、ワイヤボンディングする際の位置決めを容易に行うことができる。
尚、図1〜図19においても、接着剤層36によって平面コイル10の導線11と半導体素子12とを接着した後、平面コイル10の端子10a、10bと半導体素子12の電極端子12a、12bとを接続することは好ましい。
【0025】
図6において、半導体素子12を支承すべく、支承用ワイヤ25を半導体素子12と平面コイル10の導線11との間に掛け渡したが、導線11の幅が狭い場合には、支承用ワイヤ25の一端を導線11に接合することが困難になることがある。この場合には、図24に示す様に、潰し加工が施された平面コイル10の端子10b(10a)の接続面を拡大し、半導体素子12の電極端子12b(12a)とを接続するワイヤ18と支承用ワイヤ25との一端を接合することが好ましい。かかる平面コイル10の端子10b(10a)には、半導体素子12の電極端子12b(12a)及び支承ワイヤ用パッド23b(23a)を具備する端部が挿入されるコ字状の凹部33が形成されている。この凹部33に、半導体素子12の端部を挿入することによって、平面コイル10の端子10b(10a)と接続される電極端子12b(12a)が設けられた半導体素子12の端部を囲むように、端子10b(10a)が半導体素子12の端部の端縁に沿って延出されている。このため、半導体素子12の位置決めを容易とすることができ、且つワイヤ18及び支承用ワイヤ25の長さを短くできて好ましい。この場合も、半導体素子12と平面コイル10の導線11とを接着剤層36(図22、図23)によって接着した後、ワイヤ18及び支承用ワイヤ25をボンディングすることが好ましい。
更に、図24に示す様に、ワイヤ18と支承用ワイヤ25とを、導線11に平行で且つ一直線状となるように張ることによって、両ワイヤのボンディングを容易に行うことができ且つ半導体素子12をバランスよく支承できる。
【0026】
また、図10において、ワイヤ18が接着剤層22a、22bに挟まれた際に、平面コイル10の端子10b(10a)近傍の接着剤の流れを緩和してワイヤ18の変形を防止すべく、平面コイル10の端子10a、10bの側面に壁部27を形成している。これに対し、半導体素子12の電極端子12b(12a)近傍の接着剤の流れを緩和してワイヤ18の変形を防止するには、図25に示す様に、半導体素子12の上面を通過する導線11の途中に形成した張出部38に、半導体素子12の電極端子12b(12a)が内部に位置するようなU字状部40を形成することが好ましい。かかる張出部38を形成してワイヤ18をガードする場合、平面コイル10の端子10b(10a)としては、図9に示す端子10b(10a)が好ましい。この端子10b(10a)は、潰し加工が施された接続面16が導線11よりも拡幅されており、導線11に対して直角方向に張られたワイヤ18の端部と接続する箇所を充分に確保できる。
更に、図25に示す場合でも、図5に示す様に、平面コイル10の端子10bと半導体素子12の電極端子12bとに圧着されたワイヤ18の圧着部を樹脂15、15、特にUV硬化樹脂により固定しておくことが、ワイヤ18の変形を更に防止でき好ましい。
尚、図25でも、半導体素子12と平面コイル10の導線11とを接着剤層36によって接着した後、ワイヤ18をボンディングすることが好ましい。
【0027】
以上のICカードでは、平面コイル10を形成する導線11が半導体素子12よりも厚い場合について説明してきたが、導線11と略等しい厚さの半導体素子12を用いる場合、図26に示す様に、平面コイル10に対し、電極端子12a、12bの形成面が導線11側に位置するように半導体素子10を配設し、平面コイル10の端子10a、10bに潰し加工等を施すことなく半導体素子12の電極端子12a、12bとをワイヤ18、18によって接続したICカードでもよい。この場合、ワイヤ18、18のループの一部が導線11から突出することがあるが、突出量は僅かである。このため、樹脂フィルム20a、20bの一面側に形成された接着剤層22a、22bによってワイヤ18、18を充分に封止でき、封止の際の変形も問題とならないものである。
【0028】
また、ワイヤ18、18のループを可及的に小さくすると共に、ワイヤ18、18のボンディングを容易とすべく、図27に示す様に、導線11の幅よりも広く形成した平面コイル10の端子10a、10bを、半導体素子12の電極端子12a、12bの近傍に接着剤層36によって接着した後、電極端子12a、12bとワイヤ18、18によって接続することが好ましい。このワイヤ18は、図28に示す様に、図26に示すワイヤ18に比較して、小さなループとすることができ、ワイヤ18等を封止する樹脂フィルム20a、20bの一面側に形成された接着剤層22a、22bを薄くできる。
この様に、平面コイル10の端子10a、10bを半導体素子12に接着剤層36によって接着した場合、平面コイル10に加えられる応力を吸収して両端子の接合は剥離することを防止すべく、図18に示す屈曲部34等の応力吸収部を平面コイル10の10a、10bの近傍の導線11に形成してもよい。
尚、半導体素子12の電極端子12a、12bの形成面を通過する平面コイルの導線11に、接着剤層36を介して半導体素子12を接着してもよいことは勿論のことである。
【0029】
【発明の効果】
本発明に係るICカードは、プレス加工によって形成された平面コイルの端子と半導体素子の電極端子との接続を、接続ワイヤが平面コイルを横切ることなく容易に行うことができる。このため、ICカードの低コスト化と量産化とを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ICカードの一例を説明するための正面図である。
【図2】図1に示すICカードの部分断面図である。
【図3】複数個の平面コイル10が形成されたフレームを説明する正面図である。
【図4】ウェッジ・ボンディング法を説明する説明図である。
【図5】ICカードの他の例を説明するための部分断面図である。
【図6】ICカードの他の例を説明するための部分正面図である。
【図7】図1、図2、図5、及び図6に示すICカードを構成する平面コイルの端子を説明するための部分斜視図である。
【図8】ICカードの他の例を説明するための部分正面図である。
【図9】図8に示すICカードを構成する平面コイルの端子を説明するための部分斜視図である。
【図10】ICカードの他の例を説明するための部分正面図である。
【図11】図10に示すICカードを構成する平面コイルの端子を説明するための部分斜視図である。
【図12】図11に示す平面コイルの端子の他の例を説明する部分斜視図である。
【図13】図7、図9、図11、及び図12に示すICカードを構成する平面コイル10の端子10a(10b)を形成する前の導線11の端部を説明する部分斜視図である。
【図14】ICカードの他の例を説明するための部分断面図である。
【図15】図14に示す接続金属部材30の形状を説明するための斜視図である。
【図16】ICカードの他の例を説明するための部分正面図である。
【図17】図16に示す平面コイル10の端子10b(10a)の形状を説明するための部分断面図である。
【図18】ICカードの他の例を説明するための部分正面図である。
【図19】本発明に係るICカードの一例を説明するための部分断面図である。
【図20】ICカードの他の例を説明するための部分正面図である。
【図21】図20に示すICカードを説明するための部分断面図である。
【図22】ICカードの他の例を説明するための部分正面図である。
【図23】図22に示すICカードを説明するための部分断面図である。
【図24】ICカードの他の例を説明するための部分斜視図である。
【図25】ICカードの他の例を説明するための部分斜視図である。
【図26】ICカードの他の例を説明するための部分正面図である。
【図27】ICカードの他の例を説明するための部分正面図である。
【図28】図27に示すICカードを説明するための部分断面図である。
【図29】従来のICカードの改良例を説明するための部分正面図である。
【符号の説明】
10 平面コイル
10a、10b 平面コイル10の端子
11 導線
12 半導体素子
12a、12b 半導体素子12の電極端子
14 凹部
16 端子10b(10a)の接続面
18 ワイヤ
20a、20b 樹脂フィルム
22a、22b 接着剤層
25 支承用ワイヤ
27 壁部
30 接続金属部材
32 突起部
Claims (12)
- 導線が実質的に同一平面上に複数回卷回されて成る平面コイルが、金属板をプレス加工又はエッチング加工して形成され、且つ前記平面コイルの端子と半導体素子の電極端子とが電気的に接続されたICカードにおいて、
該平面コイルが、前記半導体素子よりも厚い導線によって形成されていると共に、コイルの内側に形成された内側端子とコイルの外側に形成された外側端子とを具備し、
前記半導体素子の全体が、その電極端子の形成面が平面コイルの導線に対し対向するように、前記平面コイルを形成する導線の途中に施された潰し加工によって、底面部が前記潰し加工が施されなかった前記導線の他の部分よりも薄く形成された凹部内に挿入されていると共に、前記平面コイルの内側端子及び外側端子と接続される半導体素子の電極端子の各々がコイルの内側と外側とに位置され、
且つ前記半導体素子の電極端子が、コイルの内外方向に対して同一側に位置する平面コイルの端子と電気的に接続されていることを特徴とするICカード。 - ICカードの表裏面を形成する各樹脂フィルムの内面側に形成された接着剤層によって、平面コイル及び半導体素子が挟み込まれて封止されている請求項1記載のICカード。
- 平面コイルの端子が、半導体素子の電極端子が形成された形成面と実質的に同一平面となるように、潰し加工が施されている請求項1又は請求項2記載のICカード。
- 潰し加工が施された平面コイルの端子が、前記平面コイルの端子と接続される電極端子が設けられた半導体素子の端部を囲むように、前記半導体素子の端部の端縁に沿って延出されている請求項3記載のICカード。
- 平面コイルが、互いに平行な二本のレールの間に、前記レールの長手方向に複数個の平面コイルが形成されて成るフレームを用いて得られた請求項1〜4のいずれか一項記載のICカード。
- 平面コイルの端子と半導体素子の電極端子との接続が、ループ状のボンディングワイヤによってなされていると共に、前記ボンディングワイヤのループが平面コイル面から突出することがないように形成されている請求項1〜5のいずれか一項記載のICカード。
- ボンディングワイヤによる接続が、ウェッジ・ボンディング法によってなされている請求項6記載のICカード。
- 平面コイルの端子と半導体素子の電極端子との接続が、リボン状の接続金属部材によってなされている請求項1〜5のいずれか一項記載のICカード。
- 平面コイルの端子と半導体素子の電極端子とが直接接続されている請求項1〜5のいずれか一項記載のICカード。
- 平面コイルの端子の近傍に、前記平面コイルに生じる応力を吸収する応力吸収部が形成されている請求項9記載のICカード。
- ICカードの平面コイルを製造する際に用いるフレームであって、
金属板にプレス加工又はエッチング加工を施して形成されたフレームを構成する、互いに平行な二本のレールの間に、搭載される半導体素子よりも厚い導線が実質的に同一平面上に複数回卷回されて成る複数個の平面コイルが、前記レールの長手方向に形成され、
且つ前記平面コイルの各々には、前記平面コイルを形成する導線の途中に施された潰し加工によって、底面部が前記潰し加工が施されなかった前記導線の他の部分よりも薄く形成された、前記半導体素子の全体が挿入される凹部が設けられていることを特徴とするフレーム。 - 平面コイルの最外周の導線が、隣接する平面コイルの最外周の導線と連結部によって互いに連結されている請求項11記載のフレーム。
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