JP3542150B2 - 抗生物質スタロバシン - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、新規な抗生物質に関し、さらに詳しくは、シュウドモナス(Pseudomonas) sp.PBJ−5,360により産生される抗生物質スタロバシンA、B、C、D、E、F、およびGに関するものである。
【0002】
【従来技術と発明が解決すべき課題】
抗生物質の抗細菌活性は個々の細菌によって異なる上、しばしば耐性菌が出現して効果が低下することが知られている。今日では、多剤耐性菌の出現が問題となっており、治療を効果的に行うためには新規で有効な抗生物質の開発が望まれている。とりわけブドウ状球菌や溶血性連鎖状球菌などのグラム陽性菌には抗生物質耐性菌が多く、これらグラム陽性菌に対して高い活性を有する新規な抗生物質が必要とされている。
【0003】
【課題を解決する手段】
本発明は、シュウドモナス sp.PBJ−5,360が産生する抗生物質スタロバシンA、B、C、D、E、F、およびGからなる群から選ばれる抗生物質スタロバシンを提供するものである。この抗生物質は、上記シュウドモナス sp.PBJ−5,360によって産生されるペプチド抗生物質である。スタロバシンA〜G(以下、単にスタロバシンということがある)は、上記シュウドモナスの菌株を培養することにより、極めて近似した同族体の複合体として得られる。その抗菌活性は従来の抗生物質と比較して、極めて強力である。スタロバシンA〜Gは、以下の表4、表5、表6に示した物理化学的特性を有する。
【0004】
【表4】
【0005】
【表5】
【0006】
【表6】
【0007】
上記の物性で表される本発明の抗生物質スタロバシンは、インビトロおよびインビボで優れた抗菌活性を有し、特にグラム陽性菌に対して強力な作用を有することが分かった。
【0008】
即ち、下記表9に示したように、本発明のスタロバシンは優れた活性を示し、特にグラム陽性菌に高活性を有する。その作用機構は、細胞壁合成阻害作用に基づくと考えられる。
急性毒性としては、マウスへの300mg/kgおよび500mg/kg静脈内投与では、毒性死を認めなかった。
【0009】
本発明の抗生物質スタロバシンは、シュウドモナス属の菌株シュウドモナス sp.PBJ−5,360を同化可能な炭素源、窒素源および無機塩類を含有する培地中で常法通り好気的に液中培養することにより得られる。なお、この菌は後述の実験例2記載の方法で培養し、その形態学的所見、培養特性、生理学的および生化学的性状等を基に、バージーズ・マニュアル・オブ・システマティック・バクテリオロジー(Bergey's Manual of Systematic Bacteriology)、第1巻(1984)の記載を参照して総合的に判断し、上記菌株に帰属されたものである。この菌株は、自然発生的に、または人為的に変異する可能性があり、そのような変異体も、本発明のスタロバシンを産生する能力を保持している限り、本発明の範囲内に包含されるものであることは、当業者には明らかである。従って、本発明は、新規な抗生物質スタロバシンを産生する、シュウドモナス sp.PBJ−5,360および、その抗生物質スタロバシン産生性の変異体を提供するものである。シュウドモナス sp.PBJ−5,360は、茨城県つくば市東1−1−3の工業技術院微生物工学技術研究所に受託番号微工研菌寄第10578号の下で寄託されている(受託日:平成元年2月27日)。この寄託は平成5年6月17日にブダペスト条約に基づく寄託に移管された(受託番号:BP−4342)。
【0010】
また、本発明はこのような菌株を培養することにより、抗生物質スタロバシンを製造する方法をも提供するものである。
培地組成、培養条件などは抗生物質の生産に一般に用いられているものを用いるとよい。培地は原則として、炭素源、窒素源、無機塩などを含む。必要に応じて、ビタミン類、前駆物質などを加えてもよい。炭素源としては、例えば、グルコース、澱粉、デキストリン、グリセリン、糖蜜、有機酸などが単独でまたは混合物として用いられる。窒素源としては、例えば、大豆粉、コーンスチープリカー、肉エキス、酵母エキス、綿実粉、ペプトン、小麦胚芽、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウムなどが単独または、混合物として用いられる。無機塩としては、例えば、炭酸カルシウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸銅、塩化マンガン、硫酸亜鉛、塩化コバルト、各種リン酸塩などがあげられ、必要に応じて培地に添加する。本発明のシュウドモナス sp.PBJ−5,360を適当な培地中で、温度20〜35℃、好ましくは25〜29℃で約1〜7日間培養すると、充分量の抗生物質スタロバシンが培養物中に産生される。次いで、通常の方法で培養物から生成物を分離し、所望により、分離、精製する。そのような方法は、全て当業者にとって周知である。
【0011】
本発明の抗生物質スタロバシンは、インビトロおよびインビボで著しい活性を示し、種々の感染症、特にグラム陽性の多剤耐性菌による感染症の治療に有用と考えられる。
以下に実施例および実験例を挙げ、本発明を更に詳しく説明する。
【0012】
実施例1
(a)発酵工程
グルコース1.0%、酵母エキス(ディフコ製)0.5%、水道水よりなる培地800ml(pH7に2N−NaOHで調整)を含む2L容三角フラスコにシュウドモナスsp.PBJ−5,360の種菌(2mlバイアル、−80℃保存)を接種し、振幅70mm、毎分180回転で、28℃、20時間振盪培養を行う。この培養液800mlを、グルコース1.0%、酵母エキス(ディフコ製)0.4%、モルトエキス(ディフコ製)1.0%、ポリペプトン(日本製薬)0.1%、水道水よりなる培地25L(pH7に2N−NaOHで調整)を含む50L容ジャーファメンターに植菌し、通気量20L/分、内圧0.35kg/cm2、撹拌回転数200rpmで28℃、20時間培養する。
次いでこの培養液13Lをグルコース1.0%、モルトエキス(ディフコ製)1.0%、粉末酵母1.0%、トマトペースト(カゴメ)0.2%、β−シクロデキストリン1.0%、消泡剤P−2000(大日本インキ製)0.0008%、水道水よりなる培地250L(pH7に2N−NaOHで調整)を含む500Lタンクに植菌し、通気量120L/分、内圧0.35kg/cm2、撹拌回転数320rpmで28℃、94時間培養する。
【0013】
(b)分離工程
上記工程で得られた培養液375Lに、クロロホルム3.7Lを添加し殺菌する。次に2N−NaOHでpH8.5に調整し、ダイアイオンHP−20(三菱化成)27Lを加え、4時間撹拌混合し活性物質をバッチ吸着させる。1時間放置し、上液を捨て、ダイアイオンHP−20を回収する。樹脂を水洗した後、ガラスカラム(内径30cm)にセットし40L、10mM Na2HPO4〜40L、90%MeOHでグラジエント溶出する。
S.アウレウスJC−1に抗菌活性を有する分画21Lを集め(pH7.0に2N−HClで調整)減圧濃縮し3Lとする。次に酢酸エチル3Lで洗浄し脂容系の物質を除く。水層に溶けている酢酸エチルを減圧留去させた後、MCI−GEL CHP20P(三菱化成)カラム(5cmI.D.×51cm)に活性物質を吸着させ、2mM Na2HPO4〜80%MeOH・2mM Na2HPO4のステップワイズ溶出を行う。溶出された分画をHPLC分析し、スタロバシン群を含む分画を集め(pH7.0に2N−HClで調整)減圧濃縮・凍結乾燥する。3490mg。
【0014】
(c)精製工程
精製第一工程
上記工程で得られた粗抽出物質を2ロット分を合わせ230mlの水に溶解させる(pH8)。次にワットマンDE−52(Cl-)イオン交換セルロースカラム(2cmI.D.×50cm)に吸着させ、水洗した後、600ml 10mM Na2HPO4(pH7.5)〜600ml 1M NaCl 10mM Na2HPO4(pH7.5)でグラジエント溶出する。溶出された分画をHPLC分析し、スタロバシン群を含む分画370mlを集める(pH7.0に2N−HClで調整)。上記分画370mlをMCI−GEL CHP20P(三菱化成)カラム(2cmI.D.×50cm)に吸着させ、10mM Na2HPO4(pH7.5)〜90%MeOH・10mM Na2HPO4(pH7.5)でグラジエント溶出を行う。溶出された分画をHPLC分析し、スタロバシン群を含む分画を集め(pH7.0に2N−HClで調整)減圧濃縮・凍結乾燥する。
【0015】
【表7】
【0016】
精製第二工程
上に得たフラクションを、下記の条件で分取高速液体クロマトグラフィーにより精製した後、更に、リサイクル分取高速液体クロマトグラフィーにより精製して、スタロバシンA、B、C、D、E、F、およびGを得た。
Fr.63〜75(1400mg)を40mlの純水に溶解して、YMC ODSカラム(s−15/30μ、5.0×50cm、溶出液:アセトニトリル−2mMリン酸(50mM Na2SO4)47:53、流速:100ml/分、検出:220nm)を用いて、分取高速液体クロマトグラフィーを行い、スタロバシンBを主成分とする分画(1.2L)、スタロバシンEを主成分とする分画(2.0L)を得た。それぞれの分取液は、希苛性ソーダで中和し、アセトニトリルを留去後、pH7.4〜7.5に調整し、MIC−GEL CHP−20Pのカラムに吸着させ、カラムを水洗後、60%含水アセトンで溶出させる。溶出液は、それぞれ減圧下アセトンを留去後、凍結乾燥して、スタロバシンB分画92mg、スタロバシンE分画20mgを得た。
【0017】
上に得たスタロバシンB分画92mgをDevelosil5C18カラム(2.0×25cm、溶出液:アセトニトリル−2mMリン酸(50mM Na2SO4)47:53、流速:10ml/分、検出:220nm)を用いて、リサイクル分取高速液体クロマトグラフィー(反復回数2回)を行い、分取液を、アセトニトリルを留去後、希苛性ソーダで中和し、pH7.3〜7.5に調整し、MIC−GEL CHP−20Pのカラムに吸着させ、カラムを水洗後、60%含水アセトンで溶出させる。溶出液は、減圧下アセトンを留去後、凍結乾燥して、純粋なスタロバシンB42mgを得た。また、上に得たスタロバシンE分画20mgを同様にDevelosil5C18カラムを用いて、リサイクル分取高速液体クロマトグラフィー(反復回数2回)を行い、純粋なスタロバシンE9mgを得た。
精製第一工程で得たフラクションFr.91〜134(1250mg)を、同様に処理して純粋スタロバシンA(83mg)、C(2mg)、D(3mg)、F(19mg)、G(12mg)を得た。
【0018】
実施例2 DNP−スタロバシンAおよびBの調製
スタロバシンA、Bの混合物(203mg)を50%含水メタノール(20ml)に溶解、重曹(800mg)、10%2,4−ジニトロフルオロベンゼン(エタノール中)(4ml)を加えて、室温2時間撹拌する。希塩酸にて、pH3.0に調節した後、水層をエーテル、次いで、酢酸エチルで洗浄後、n−ブタノール抽出、有機層を乾燥後(Na2SO4)減圧下に溶媒を留去する。残分(240mg)を高速液体クロマトグラフィーにて分取し、DNP−スタロバシンA(2,4−ジニトロフルオロベンゼンとスタロバシンAの反応生成物)65mg(tR18分)、DNP−スタロバシンB29mg(tR20.2分)を得る。
【0019】
実施例1および2で得られたスタロバシンA、B、C、D、E、F、G、DNP−スタロバシンAおよびDNP−スタロバシンBの物理化学的性状は表4、表5、表6に示した通りである。さらに、スタロバシンA〜GのIRスペクトルをそれぞれ図1〜図7に、DNP−スタロバシンA、DNP−スタロバシンB、スタロバシンE、スタロバシンF、スタロバシンGのNMRスペクトルをそれぞれ図8〜図12に示した。さらにDNP−スタロバシンAおよびDNP−スタロバシンBの推定部分構造を以下に示す。
【0020】
【化1】
【0021】
【化2】
上記化1、化2に於いて、HyAspおよびHyIleはそれぞれヒドロキシアスパラギン酸およびヒドロキシイソロイシンを表し(HyAsp)はヒドロキシアスパラギン酸が含まれていることを表す。X1、X2、X3、X4、X5は構造未確認部分を表す(X1〜X5は、その一部または全てが単結合を表し、分子内のC14-15H24-26N4O13(HyAsp)部分に結合している可能性がある)。
【0022】
スタロバシンAおよびスタロバシンBの特異的性状
(1)図13の(a)に示した様に、スタロバシンAおよびBの混合物を高速液体クロマトグラフィーにかけると、Aおよびその異性体A'並びにBおよびその異性体B'の計4本のピークが観察される。しかしこの混合物を24時間放置して再び高速液体クロマトグラフィーにかけると、A'およびB'のピークは消失し、AおよびBの2本のピークだけが観察される様になる。そこでこのAおよびBをそれぞれ分取し、再度液体クロマトグラフィーにかけると、AからはAおよびA'、BからはBおよびB'の2本のピークが観察される様になり(b)、これを1日放置すると再びA'およびB'が消失してしまう(c)。
(2)スタロバシンBの分子式はC58H101N13O24であり、1747cm-1にIR吸収を有するが、希NaOHで処理すると分子式C58H103N13O25の化合物に変化し、1747cm-1の吸収が消失すると共に抗菌活性が大幅に減少する。
(3)スタロバシンAを各種pHの水溶液に溶解した時のAおよびA'の相互変換の様子を以下の表8に示す。
【0023】
【表8】
【0024】
実験例1 インビトロおよびインビボでの抗菌活性
1)インビトロ活性
実施例1で得た抗生物質スタロバシンA〜Gのインビトロでの抗菌活性を、寒天希釈法で検討した。結果を表9に示す。
【0025】
【表9】
【0026】
2)インビボ活性
スタロバシンAを用い、インビボの抗菌活性を調べた。マウスを感染性の細菌で腹腔内感染させ(チャレンジ)、チャレンジの1時間後に被験物質を皮下投与した。チャレンジから7日後の生存率に基づいて、ED50値を算出した。MICは寒天希釈法によって求めた。結果を下記の表10に示す。
【0027】
【表10】
【0028】
実験例2 PBJ−5,360の菌学的特性
本発明のPBJ−5,360の菌学的諸性状は以下の通りである。なお、PBJ−5,360は、京都府下で採取した土壌試料より分離した。
培養は原則として28℃で実施した。
A.形態
グラム陰性、桿菌であり、大きさは0.3〜0.5(μ)×0.8〜1.3(μ)である。一本以上の極鞭毛により激しく運動する。
【0029】
B.培養所見
1)肉汁培地における培養
菌体の生育は殆ど見られなかった。管底に灰白色半透明の沈澱がごくわずかに生成した。
2)肉汁寒天穿刺培養
穿刺線に沿って糸状乃至は小乳頭状の生育を認めた。ガスの発生および色素の生成は見られなかった。表面に赤味がかった薄い菌苔を形成したが、この菌苔は時間の経過と共に、うす茶色半透明となり疣状の突起を所々に認めた。好気性菌である。
3)肉汁寒天斜面培養
菌体の生育は決して早い方ではなく、28℃においては2日後より開始(目に見える)された。生育は糸状で、菌苔は半透明、淡黄色、隆起は扁平でぶつぶつした外観を呈した。周縁は全縁であった。菌苔の生育はその後良好となり、生育は糸状乃至は疣状で光沢を有し、湿潤したやや赤味を帯びた半透明褐色の菌苔になる。周縁は波状乃至は長波状である。ガスおよび色素の生成は認められなかった。
【0030】
4)肉汁ゼラチン穿刺培養
培養は室温下(22〜25℃)で実施した。ゼラチンを液化した。
5)肉汁寒天平板培地上での培養
菌体の生育は速くない。28℃、2日後よりコロニーは可視となった。コロニーは最初、小型、点状、褐色半透明であり、周縁は全縁である。隆起については、コロニーが小型過ぎて観察不可能であった。その後、コロニーは生長し、点状乃至は円型を呈し、周縁は全縁、隆起は扁平乃至は凸円状である。コロニーは半透明、茶褐色で光沢を有する。ガスおよび可溶性色素の生成は、一切認められなかった。
6)リトマスミルクにおける培養所見
酸を生成し、ペプトン化を行うが反応の開始は14日以後となるなど、反応はかなり遅い方である。ガスの発生はなかった。表面に灰赤紫色の薄い菌膜を時として形成する。上層は赤紫色半透明、下層は紫がかったベージュ色で不透明である。沈澱はベージュ色に近い赤紫色であった。
【0031】
C.生理学的および生化学的諸性状
1)カタラーゼテスト:陽性
2)オキシダーゼテスト:陽性
3)OF−テスト:陰性(アルカリ性を呈した)
4)溶血性テスト:陽性(弱い)
5)5℃における生育能:陰性
6)H2Sの生成:陰性
7)硝酸塩の還元能:陽性
8)脱窒反応:陰性、但しN2gasを発生しないが、NO2 -は還元する様であった。
9)クエン酸の利用能:陰性(クリステンセン培地、およびシモンズ培地)
10)NAC寒天培地上での生育:陰性(生育不可能)
【0032】
11)インドールの生成:陰性
12)Voges−Proskauer反応(フォーゲス・プロスカウエル・テスト):陰性
13)メチルレッドテスト:陰性
14)アルギニンの加水分解能:陽性
15)リジンの脱炭酸能:陽性
16)オルニチンの脱炭酸能:陽性
17)エスクリンの加水分解能:陰性
18)DNaseテスト:陰性
19)澱粉の加水分解能:陰性
20)ONPGテスト(37℃で培養):陰性
【0033】
21)アシルアミダーゼテスト:陰性
22)フォスファターゼテスト:陽性
23)キチンの加水分解能:陰性
24)シュークロースよりのレバンの生成能:陽性
25)糖類よりの酸およびガスの生成能:以下の13種の糖類から、酸およびガスを発生しない。糖類としては、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、キシロース、アラビノース、マルトース、ラクトース、ラムノース、シュークロース、セロビオース、トレハロース、マンニットである。
26)菌体内におけるpoly−β−ヒドロキシブチレートの蓄積:陰性
27)炭素源の資化能:無機塩を含む培地上において、単一の炭素源としてグルコース、および2ケト−グルコン酸カルシウムを資化して、菌体を形成することができる。この場合、生育のための特定のビタミン類は、特に要求する様には思われなかった。一方、D−(+)−トレハロース、DL−アルギニン、ゲラニオール、β−アラニン、L−バリン、イノシットを資化しなかった。
28)G+C mole %(HPLC法):60.4%(A+T mole %は39.6%であった)
【0034】
以上の諸結果より見て、本菌は好気性のグラム陰性の桿菌であり、1本以上の極鞭毛を用いて液体培地中で活発なる運動を行う。カタラーゼ陽性であって、オキシダーゼを有する。OF−テストは陰性(アルカリ性を示す)であった。これらの結果より見れば、本菌はシュウドモナス科の中のシュードモナス属に帰属されることは明らかである。
【0035】
シュウドモナス属について、バージーズ・マニュアル・オブ・システマティック・バクテリオロジー(Bergey's Manual of Systematic Bacteriology)、第1巻(1984)中に記載の菌体内にpoly−β−ヒドロキシブチレート(PHB)を蓄積しない菌複合体について、上述の各性状を対比した所、一致するものおよび近似のものを発見することはできなかった。それ故、本菌はシュウドモナスの一新種とも考えられるが、アルギニンを加水分解し、リジンおよびオルニチンを脱炭素する点で、かなり変わったシュウドモナスの一種といえる。そして、G+Cmole %も60.4%とシュウドモナスの中では、低い方のグループに帰属せられる。以上の諸結果を見て、本菌をシュウドモナス sp.PBJ−5,360と同定した。
【図面の簡単な説明】
【図1】スタロバシンAのIRスペクトルを示すグラフ。
【図2】スタロバシンBのIRスペクトルを示すグラフ。
【図3】スタロバシンCのIRスペクトルを示すグラフ。
【図4】スタロバシンDのIRスペクトルを示すグラフ。
【図5】スタロバシンEのIRスペクトルを示すグラフ。
【図6】スタロバシンFのIRスペクトルを示すグラフ。
【図7】スタロバシンGのIRスペクトルを示すグラフ。
【図8】DNP−スタロバシンAのNMRスペクトルを示すグラフ。
【図9】DNP−スタロバシンBのNMRスペクトルを示すグラフ。
【図10】スタロバシンEのNMRスペクトルを示すグラフ。
【図11】スタロバシンFのNMRスペクトルを示すグラフ。
【図12】スタロバシンGのNMRスペクトルを示すグラフ。
【図13】スタロバシンA、A'およびB、B'それぞれの相互変換を示す高速液体クロマトグラフィーのグラフ。
Claims (2)
- 工業技術院微生物工学技術研究所に寄託されている受託番号: BP-4342 のシュウドモナス sp.PBJ−5,360を培養し、培養物から請求項1記載の抗生物質スタロバシンAを分離、回収することからなる抗生物質スタロバシンAの製造方法。
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