JP3542014B2 - 単結晶または多結晶含有非晶質材料の作製方法及びその非晶質材料 - Google Patents
単結晶または多結晶含有非晶質材料の作製方法及びその非晶質材料 Download PDFInfo
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光通信やレーザーなどに用いられる単結晶または多結晶を含有した非晶質材料の作製方法および、その方法で作製した単結晶または多結晶体を含有した非晶質材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
単結晶または多結晶の光学素子は、光通信やレーザーの分野で重要な役割を担っている。特に光通信では、波長変換や光アイソレータなどの用途で、結晶の非線形性を応用した素子が主に使用されている。これらの光学素子用結晶は、一般に調和溶融組成からの引き上げ育成法(チョクラルスキ−法など)、格子定数が一致した基板を目的組成の融液に沈めて育成する方法(LPE法)、気相成長方法(MOCVDなど)などの方法で製造されている。
【0003】
一方、非晶質材料は生産性に優れ、ファイバーなどに使用される石英ガラス、レンズなどに使用される光学ガラス、反射や波長選択に使用される非晶質膜などが知られている。しかし、これらの非晶質材料は非線形性が小さく、結晶と比較すると光学素子としては性能が劣るとされている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ファイバーを中心とする光通信の発展やレーザー技術の進歩により、光学機能性素子への要求は高まる一方である。特に、高効率、小型化、低損失、低雑音、ファイバーとの接続の容易性などが求められている。ところが、結晶素子は高効率だがファイバーとの接続性や生産性が悪く高価であり、また非晶質素子はファイバーとの接続性は良好で安価だが、効率に問題があった。
【0005】
例えば、従来の結晶作製方法では、目的の光学素子を製造するまでに、結晶育成→切り出し加工→光学研磨→光軸合わせ、組立→検査、といった複雑な工程を経なければならないことから、部品の価格が高価になりやすい問題がある。特に、単結晶育成は数mm/hr以下の速度で行われるのが一般的であり、生産性が悪い。また、結晶方位の検査や表面の光学研磨など、後工程が煩雑で、コスト増加の原因となっている。このように、従来法による結晶作製、結晶素子作製方法では、大量かつ安価に供給することは困難である。
【0006】
一方、非晶質材料は、大量生産に適しているが、機能や効率は結晶よりも劣るとされている。例えば、波長変換などに使用される二次の非線形性は、非晶質材料では得られないなど、使用できる分野に制限があった。
【0007】
このような背景から、非晶質材料と同程度の生産性で製造可能であり、結晶材料と同程度の性能や効率を発揮し、ファイバーとの接続性が良好な素子や材料が求められていた。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、このような問題を解決するために鋭意検討の結果、適当な組成の非晶質母材(例えばガラスや非晶質膜)にパルス光を照射することで、照射部分または集光部分だけに結晶を選択的に析出させ、単結晶または多結晶、あるいは単結晶または多結晶を含む非晶質材料を作製できることを見いだした。
【0009】
すなわち本発明は、非晶質な母材に、パルス光を照射または集光し、照射または集光部分に、選択的に単結晶または多結晶を析出させた、単結晶または多結晶を含有する非晶質材料の作製方法および、この方法を用いて作製した、単結晶または多結晶を含有する非晶質材料を提供するものである。
【0010】
以下に、本発明について詳述する。
一般に、適切に選択された組成の非晶質母材(例えば、ガラスや非晶質膜)を加熱処理すると、特定組成の結晶が析出することはよく知られている。しかし、加熱による結晶化は、限定された領域だけを結晶化させるには不向きであり、析出する結晶粒子のサイズ制御も困難であることから、機能性素子としての実用化は困難である。
【0011】
一方、レーザーに代表される光エネルギーは、制御性に優れており、特定箇所に特定時間だけ照射、集光することが可能である。最近になって、パルスエネルギーの特に大きな光源が市販されるようになり、感光性非晶質材料中での結晶の析出、消滅が報告されている(近藤裕己ら、第45回応用物理学関係連合講演会(1998年春季)28p−G−4)。しかし、報告された方法は結晶析出に熱処理を必要とし、光だけを用いた方法ではないため、熱処理による問題を完全には回避できない。光エネルギーだけを用いて結晶を析出させると、熱を利用する場合と異なり、熱的に不安定な非晶質材料中にも、選択部分だけに結晶を析出させることができ、これまでにない材料が作製可能になる。
【0012】
光の照射方法は、結晶化に十分な光エネルギーを供給できればどんな方法でも良い。結晶化部分を限定するためには、マスクを用いたり集光するなどして、照射部分を制限することで、容易に達成できる。また、材料内部だけに結晶を析出させる場合は、非晶質材料内部に光を集光し、集光部分だけが結晶化に必要な光エネルギー密度に達するように、集光方法や光源の光強度を調整すればよい。
【0013】
光源としては、結晶化に必要な光エネルギーを付与できるものなら何でも良いが、照射位置や焦点深度の制御性の観点から、レーザーを使用することが好ましい。特に、集光時の照射エネルギー密度を高めることができるパルスレーザーが好ましい。パルスレーザーを使用する場合、パルスの幅は、材料が破壊しないように、10−9秒以下であることが特に好ましい。
【0014】
本発明で用いる非晶質材料は、特に組成は限定しないが、所望の結晶が析出可能な組成である必要がある。このため、析出させる結晶の組成に比較的近い組成をもった非晶質材料であることが好ましい。
【0015】
大きな二次の光学的非線形性を示す結晶としては、特に限定するものではないが、KTiOPO4(KTP),LiNbO3(LN),LiTaO3(LT),LiB3O5(LBO),β−BaB2O4(β−BBO),CsLiB6O10(CLBO),GdCa4B3O10(GdCBO)などが挙げられ、陽イオンとして、Nb,La,Li,Bなどを含むことが特徴である。これらの結晶で非線形性に直接関与するのは、B−O結合やP−O結合であると言われている。また、B−O結合、P−O結合、Nb−O結合は、非晶質材料の網目構造を形成することが知られており、結晶組成と比較的近い組成でも非晶質材料を作製可能である。これらの結晶を析出させる非晶質組成としては、特に限定するものではないが、例えば、LBOにはLi2O−SiO2−B2O3系が、LNやLTにはLi2O−Nb(Ta)2O5−SiO2系が、BBOにはSiO2−BaO−B2O3系の非晶質組成が適している。
【0016】
また、大きな光電気効果(圧電性、強誘電性)を示す結晶は、Ti,Ta,Nb,W,Mo,Si,Li,Ca,Sr,Ba,Bi,Al,Gaを含む酸化物やフッ化物が挙げられ、特に限定するものではないが、BaTiO3(BTO),Sr0.75Ba0.25Nb2O6(SBN),Ba2NaNb5O15(BNN),La3Ga5SiO14(ランガサイト),Bi12SiO20(BSO),Bi12GeO20(BGO),Pb(Zr,Ti)O3(PZT)などが知られている。これらの結晶を析出させる非晶質組成としては、特に限定するものではないが、例えばBTOにはBaO−TiO2−SiO2系、SBNにはSrO−BaO−Nb2O5−SiO2系、ランガサイトにはLa2O3−Ga2O3−SiO2系、BSOにはBi2O3−SiO2系などが適している。
【0017】
次に、大きな光磁気効果を示す結晶としては、遷移金属や希土類を含有した結晶が知られている。例えば、特に限定するものではないが、Y3Fe5O12(YIG)が知られている。これらの結晶を析出させる非晶質組成としては、特に限定するものではないが、例えばYIGにはY2O3−Fe2O3−SiO2−Na2O系が適している。
【0018】
さらに、レーザー発振媒質として作用を示す結晶としては、希土類や遷移金属を添加した結晶が挙げられる。添加する活性元素としては、特に限定するものではないが、例えば、Ce,Pr,Nd,Eu,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Cr,Mn,Fe,Ni,Tiなどが挙げられ、価数も2価,3価,4価などの種類が知られている。中でも、Ce,Pr,Nd,Eu,Dy,Ho,Tm,Yb,Cr,Mn,Ni,Fe,Tiは、酸化還元の程度によって様々な価数を取り得ることが知られている。また、最近では超短パルスレーザーの照射によって、これらの元素の価数を変化させられることが判っており、結晶の析出と同時に価数の制御も行えば、周囲の非晶質部分と析出した結晶部分で、異なる価数を持たせることができる。通常のレーザー結晶では、励起波長と発振波長にある程度の吸収を持っており、励起エネルギー密度の高い部分だけがレーザー発振に寄与し、その他の部分は損失の原因となっていた。ところが、結晶を析出させた領域だけ価数を変化させたような材料では、周囲の非晶質材料が励起波長とレーザー発振波長で吸収を持たないように調節することができるため、しきい値の低いレーザー材料を提供できる。結晶の種類としては、特に限定するものではないが、Y3Al5O12(YAG),Gd3Ga5O12(GGG),LiYF4(YLF),LiSrAlF6(LiSAF),Al2O3(サファイア),ルビー,などが知られている。これらの結晶を析出させる非晶質組成としては、特に限定するものではないが、例えばYAGやGGGにはY(Gd)2O3−Al(Ga)2O3−SiO2−Na2O系、YLFにはLiF−YF3−BaO−P2O5系、LiSAFにはLiF−SrF2−AlF3−Ba(PO3)2系が適している。
【0019】
本発明において、上述したような結晶(単結晶または多結晶)を構成する元素を含む非晶質材料が用いられ、上述したような効果、作用を得るには、B,Ti,Ta,Nb,La,W,Mo,Si,Li,Ca,Sr,Ba,Bi,Al,Gaから選ばれる少なくとも一種類の元素を含有することが必要である。
【0020】
本発明の作製方法は、非晶質母材にパルス光を照射する前、照射中、照射後のいずれか、または複合的に、外部場を加えながら結晶を析出させると、析出結晶の方位制御や単ドメイン化などの処理ができる。加える外部場は、目的に応じて変える必要があるが、電場、磁場、X線やγ線のような高エネルギー線が挙げられ、特に電場や磁場が効果的である。
【0021】
結晶の方位を制御する方法としては、種結晶や方位の制御された基板を利用することも効果的である。この場合、種結晶や基板に非晶質材料を接触させ、その接触部分から結晶化が開始されるように、パルス光の照射、集光方法を制御することが必要である。また、この結晶化速度などを適切に制御すれば、欠陥の少ない単結晶または多結晶が選択部分だけに任意の形状で得られる。
【0022】
このような方法で得られた単結晶または多結晶は、母材である非晶質材料中に閉じこめられ、結晶に特有の晶癖が出現しにくい利点がある。例えば、単結晶ファイバーを融液から作製する方法は広く行われているが、ファイバー表面に晶癖が出現し、断面が円形にならない。このため、伝送損失が大きく、機能性素子としての応用が制限されている。これに対し、本発明の作製方法で単結晶または多結晶を析出させれば、母材の非晶質層が取り囲んでいるため、自由な表面が存在せず、晶癖は出現できない。このため、断面が円形で損失の少ない単結晶または多結晶が作製できる。
【0023】
また、非晶質膜を結晶化させる場合は、基板に適切な格子定数を持ったウェハを使用することによって、基板のウェハと接触した面は結晶化し、膜表面は非晶質のまま保持されるような材料も、簡単に作製できる。
【0024】
次に、照射するパルス光としては、非晶質母材の種類にもよるが、結晶析出に十分なパルスエネルギーを照射できれば特に限定されない。しかし、三次元的に結晶を析出させる場合には、照射波長は母材に強く吸収されない波長を選定することが好ましい。このようなパルス光源としては、レーザーが好ましく、波長可変レーザーであれば非晶質母材の透過特性に合わせて最適波長に調整ができるので、さらに好ましい。
【0025】
パルスレーザーのパルス幅としては、1パルス当たりのエネルギーが大きい、ピコ秒からフェムト秒領域のパルスレーザーが好ましい。このようなレーザーとしては、例えばTi添加サファイアレーザー、Cr添加LiSrAlF6レーザー、Cr添加YAGレーザー、色素レーザー、パルス圧縮されたファイバーレーザーなど、多くのレーザーが利用可能である。また、これらのレーザーをパラメトリック発振器を通して望みの波長に変換したり、再生増幅器などを用いて、パルスエネルギーを増幅することも好ましい使用方法である。さらに、複数のレーザーを同時に使用して結晶作製を行うこともできる。この場合、一つのレーザーでは結晶析出に不十分なパワー密度しかない場合でも、複数のレーザーを交差させて、交点だけに結晶を析出させることができる。また、この方法を拡張して、一回の照射で複数の交点を得られるように調整すれば、生産性の高い結晶析出システムを構築できる。本発明において、照射するパルス光の集光部分の光パワー密度は109W/cm2以上が好ましい。
【0026】
パルス光のエネルギーを時間的、空間的に周期変調させることで、析出させる結晶種や結晶サイズを周期的に変調し、様々な機能を持たせることができる。また、母材となる非晶質材料の応答特性にもよるが、パルス光照射前、照射中、照射後に加える外部場を、時間的、空間的に周期変調することで、同様の効果を得られる場合もある。外部場としては、電場、磁場、X線やγ線のような高エネルギー線が挙げられる。ここで時間的に周期変調することとは、例えば、電場を所定の周波数でON/OFFまたは交流とすることに相当し、空間的に周期変調することとは、例えば、所定の周期長さでスリットの入ったマスクなどを通して高エネルギー線を照射することに相当する。このような変調構造は、結晶材料の性能を最大限に引き出すために、不可欠となる場合がある。例えば、二次の非線形性を示す結晶を析出させた場合、位相整合条件を満たす方位は限られているが、そのような方位で最大の非線形応答を示すとは限らない。このような結晶を析出させる場合、最大の非線形応答が得られる方位で使用するために、周期的な方位制御による疑似位相整合を行うことが必要となる。
【0027】
析出させる結晶の種類は、照射するパルス光のパルス幅、エネルギー密度、繰り返し速度などの照射条件、加える外部場の種類、場の強さ、変調方法などで制御することも可能であり、非晶質材料の組成で制御することも可能である。結晶の種類を非晶質材料の組成で制御する場合、複数の非晶質材料組成において、結晶の析出に必要なパルス光照射条件が同一になるように整えておくと、予め接合した非晶質材料に連続的にパルス光を照射し、異なる種類の結晶が析出した非晶質材料を一括して作製できる。また、同様な効果はパルス光や外部場の照射などの条件を、不連続または連続的に変化させることでも得られる。このような方法を採用すると、一つの非晶質材料中に複数の結晶種が析出した複合的な材料を得ることができる。このような非晶質材料を作製すると、例えば非線形光学素子と高速変調素子の一体化など、素子の小型化、集積化が可能となる。
【0028】
また、パルス光の照射条件や外部場を加える条件を最適化すると、室温、大気圧下では本来育成できない結晶相を、非晶質材料に閉じ込めて析出させることができる。例えば、強誘電体の一部には、組成−温度−安定な結晶相の間に微妙な関係があり、室温付近で強誘電体として安定な組成は限定されることが知られている(例えば、J.Lian 他,Ferroelectrics,vol96,127−130(1989).)。このような強誘電体結晶では、通常の結晶育成において、室温大気圧で安定な結晶相以外の結晶相を育成、利用することはほとんど不可能である。ところが、非晶質材料中にパルス光によって結晶を析出させる場合、結晶は非晶質材料中で原子の移動や体積変化を起こすことが極めて困難なため、通常では実現できない高圧を作り出し、かつ実質的に相転移不可能となり、高温高圧相や低温高圧相を生成させることができる。このため、従来は利用不可能であった組成や結晶相を利用可能となる。このような高圧相の結晶は、一般的に高密度かつ高屈折率であり、周囲の非晶質相に対して大きな比屈折率差を持たせることができる。例えば、室温では5×108Pa以上の高圧下でしか生成しないため、人工的には水熱合成法でしか育成できないヒスイ輝石は、同じ組成のガラスよりも6%程度高屈折率である。このような高屈折率部分を非晶質材料内部に形成すれば、光記録の高密度化ができる。本発明の方法では、その圧力範囲を、大気圧から連続的に高圧にできるため、作製した結晶は、通常の結晶育成法では特に育成困難な、107Pa以上の領域で生成する高圧結晶相を有する。
【0029】
本発明の結晶作製方法は、無機材料に限らず、有機材料や有機−無機複合材料にも適用できる。例えば、室温において非晶質状態にある有機材料(特にポリマー)の選択部分にパルス光を照射し、結晶化させることや、有機−無機複合材料の選択部分を分相、結晶化させ、有機−無機混合材料に変化させることもできる。
【0030】
本発明の作製方法によって得られる単結晶または多結晶含有非晶質材料の応用範囲としては、特に限定するものではないが、二次の非線形性を利用した波長変換素子、光磁気効果を利用した光アイソレータ、希土類や遷移金属イオンを活性イオンとするレーザー材料、光電気効果を利用した高速変調素子や光スイッチなどが挙げられる。
【0031】
本発明の単結晶または多結晶含有非晶質材料の作製方法によって、大量に生産可能な非晶質材料に高性能な結晶を選択的に作製することができるだけでなく、一次元的、二次元的、三次元的な配置が可能となる。また、多機能結晶回路、複合機能化、小型集積化なども容易となり、光通信やレーザー分野で要求される各種光学素子の作製が可能となる。
【0032】
【実施例】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0033】
実施例1
母材となる非晶質材料として、Ba−Si−B−O系のガラス(ガラス組成:46BaO−2SiO2−52B2O3(数字はmol%))を使用し、パルス幅120fs(1fs=10−15秒)、パルスエネルギー1mJのレーザー光をガラス内部に集光照射した(図1)。その結果、集光照射した部分だけ選択的に結晶化し、ほかの部分は全く影響を受けなかった。この結晶化部分に波長0.796μmのレーザー光を照射すると、0.398μmの光に波長変換された。母材のガラスに0.796μmのレーザー光を照射しても、波長変換しないことから、析出した結晶が二次の非線形性を示すことがわかった。波長変換されたスペクトルを図2に示す。また、結晶化部分を取り出し、粉末X線回折法で分析した結果、結晶がβ−BaB2O4であることがわかった。
【0034】
実施例2
母材となる非晶質材料として、Li−Al−Ti−B−O系のガラス(ガラス組成:32Li2O−3Al2O3−3TiO2−62B2O3(数字はmol%))を使用し、パルス幅120fs(1fs=10−15秒)、パルスエネルギー1mJのレーザー光をガラス内部に集光照射した。その結果、集光照射した部分だけ選択的に結晶化し、ほかの部分は全く影響を受けなかった。この結晶化部分に波長0.8μmのレーザー光を照射すると、0.4μmの光に波長変換された。母材のガラスに0.8μmのレーザー光を照射しても、波長変換しないことから、析出した結晶が二次の非線形性を示すことがわかる。また、結晶化部分を取り出し、粉末X線回折法で分析した結果、結晶がLi2B4O7であることがわかった。
【0035】
実施例3
実施例1と同様のガラスを用い、同様の方法で結晶を析出させる工程で、ガラスに電場を加えながら結晶を析出させた。このときのガラスの厚みは5mm、電圧は20KVである。析出した結晶の方位分布を調べるため、消光比を測定した。その結果、電場を加えない場合と比較して、20倍の消光比を得た。このことから、析出した結晶が一方向に配向していることがわかる。また、波長変換効率を比較した結果、電場を加えずに析出した場合に対し、5倍の変換効率を得た。
【0036】
実施例4
実施例1と同様のガラス組成にFeを100ppm添加し、実施例1と同様の方法で結晶を析出させる工程で、ガラスに磁場を加えながら結晶を析出させた。このときのガラスの厚みは2mm、磁場の強さは50000Am−1である。析出した結晶の方位分布を調べるため、消光比を測定した。その結果、磁場を加えない場合と比較して、10倍の消光比を得た。このことから、析出した結晶が一方向に配向していることがわかる。また、波長変換効率を比較した結果、磁場を加えずに析出した場合に対し、2倍の変換効率を得た。
【0037】
実施例5
組成:54B2O4−46BaO(数字はmol%)のガラスに、あらかじめβ−BBO単結晶(種結晶)と接合した材料を用いた。結晶とガラスの接合部は、完全に密着するようにガラスを軟化させて圧着、一体化した。この材料の接合部分に実施例1と同様にレーザーを照射し、接合部分から結晶化させた結果、種結晶と同一の方位でβ−BBO単結晶が成長していることがわかった。0.8μmの光を0.4μmに変換する波長変換効率は、種結晶部分と析出させた単結晶部分で差がなかった。このことから、光学的に良質な単結晶が、ガラス内部に選択的に作製できることがわかった。また、この時の結晶成長速度は10mm/min程度であり、非常に高速な単結晶育成ができる。さらに、この単結晶はガラス内部に閉じこめられていることから、一般的な単結晶ファイバーに見られるような自由表面に起因する晶癖がなく、導波路として理想的な性質を持っている。
【0038】
実施例6
実施例1と同様のガラスを用い、同様の方法で結晶を析出させる工程で、ガラスに周期的な電場を加えながら結晶を析出させた。電場は、くし形電極を用いて加えた。このときのガラスの厚みは2mm、電圧は5KV、電場の反転周期は2mmである。析出した結晶の方位分布を調べるため、消光比を測定した。その結果、電場を印加しない場合と比較して、20倍の消光比を得た。このことから、析出した結晶が一方向に配向していることがわかる。また、最大の波長変換効率を得られる長さに調整して切断研磨した結果、電場を加えずに結晶を析出した場合に対し、5倍の変換効率を得た。
【0039】
実施例7
実施例1と同様のガラスを用い、同様の方法で結晶を析出させる工程で、結晶析出に必要な条件を探るため、集光点の光パワー密度と波長変換効率の関係を調べた。入射パルス数は200ショットに統一した。結果を図3に示す。波長変換効率は、(0.396μmの出射エネルギー)/(0.796μmの入射エネルギー)の比とする。波長変換素子として実用化可能な1%以上の変換効率を得るためには、109W/cm2以上のパワー密度が必要である。また、ガラス内部の特定部分だけが109W/cm2以上になるように集光方法を工夫すると、ガラス内部に結晶を閉じこめた形で析出可能となる。
【0040】
実施例8
実施例4と同様に磁場を加える方法で、30Y2O3−25Fe2O3−35SiO2−10Na2O(数字はmol%)のガラスに結晶を析出させた。粉末X線回折法で分析した結果、析出した結晶はY3Fe5O12であった。ガラス部分と結晶化部分のファラデー回転能の比は1:3であり、結晶化部分はガラスよりも高効率であることがわかった。
【0041】
実施例9
実施例8と同様の組成のガラスをスパッタリングターゲットとして用い、石英ガラス上に非晶質膜を形成した。膜の厚みは20μmであった。この膜に実施例4と同様に磁場を加える方法で結晶を析出させた。膜をX線回折法で分析した結果、析出した結晶はY3Fe5O12であった。非晶質部分と結晶化部分のファラデー回転能の比は1:5であり、結晶化部分は非晶質膜の部分より高効率であることがわかった。
【0042】
実施例10
実施例1と同様な方法で結晶を析出させる工程で、一様な電場を加えながら結晶を析出させた。この時の電圧は5kV、ガラスの厚みは2mmである。使用したガラス組成は、29.5Y2O3−0.5Nd2O3−20Al2O3−5Ti2O3−35SiO2−10Na2O(数字はmol%)である。粉末X線回折法で分析した結果、析出した結晶はY3Al5O12(YAG)であった。結晶化部分に、波長0.8μmのレーザーを集光し、共振器を構成してレーザー発振させた。その結果、励起パワーが2Wの時、繰り返し10Hz、20μJ/パルスのパルスレーザー発振を確認した。発振波長はNd:YAGと同じ1.06μmであった。
【0043】
実施例11
実施例1と同様な方法で結晶を析出させる工程で、一様な電場を加えながら結晶を析出させた。この時の電圧は5kV、ガラスの厚みは2mmである。使用したガラス組成は、30LiF−30SrF2−29.5AlF3−0.5CrF3−10Ba(PO3)2(数字はmol%)である。粉末X線回折法で分析した結果、析出した結晶はLiSrF6(LiSAF)であった。結晶化部分に、波長0.63μmのレーザーを集光し、共振器を構成してレーザー発振させた。その結果、励起パワーが2Wの時、繰り返し10Hz、8μJ/パルスのパルスレーザー発振を確認した。発振波長はCr:LiSAFと同じ0.8μmであった。
【0044】
実施例12
組成が30Li2O−49Nb2O5−1MgO−20SiO2(数字はmol%)のガラスをスパッタリングターゲットとして用い、石英ガラス上に厚さ20μmの非晶質膜を形成した。この膜に実施例6と同様にくし形電極を形成して、電場を加えながら結晶を析出させた。この結晶化部分に波長1.5μmの光を通しながら電場をON/OFFすると、透過する光強度の変化が観測でき、光電気効果が確認できた。
【0045】
実施例13
組成:17Na2O−17Al2O3−66SiO2(数字はmol%)のガラス中に、実施例1と同様な方法で結晶を析出させた。析出した結晶を屈折率,複屈折率などを測定して分析した結果、室温では5×108Pa以上の圧力でしか生成しないヒスイ輝石であることがわかった。この時の周囲のガラスの屈折率は1.54、結晶部分の屈折率は1.64であり、高屈折率化が確認できた。
【0046】
実施例14
組成:40LiF−34YF3−1EuF3−25Ba(PO3)2(数字はmol%)のガラス原料を、H2を1vol%含有したN2中で溶融し、Euを2価に還元した。このガラスに実施例10と同様に電場を加える方法で結晶を析出させた。この結果得られた材料は、ガラスマトリックス部分が2価のEuを含有し、析出した結晶部分が3価のEuを含有したLiYF4(YLF)結晶であった。この結晶化部分に波長464nmのレーザーを集光し、共振器を構成してレーザー発振させた。その結果、励起パワーが0.5Wの時、繰り返し10Hz、2μJ/パルスのパルスレーザー発振を確認した。発振波長は3価Eu:YLFと同じ0.61μmであった。
【0047】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の単結晶または多結晶含有非晶質材料の作製方法は、安価で大量供給可能な非晶質材料中に、高効率、高機能な単結晶または多結晶を三次元的に作製可能な方法であり、その単結晶または多結晶含有非晶質材料は二次の非線形光学効果、光磁気効果、光電気効果、レーザー発振媒質として作用するものであり、光通信やレーザーに必要な結晶素子、結晶回路等を供給できる。また、これらの素子を用いることによって、光通信システムやレーザー装置の性能を飛躍的に向上させ、しかも装置の小型化、高効率化、低価格化に貢献できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】ガラス内部に結晶を析出させる方法の概略図である。
【図2】実施例1で作製した結晶を用いて、0.796μmのレーザー光が、1/2波長に変換されたスペクトルを示す。
【図3】集光点の光パワー密度と波長変換効率の関係を示す。
【発明の属する技術分野】
本発明は、光通信やレーザーなどに用いられる単結晶または多結晶を含有した非晶質材料の作製方法および、その方法で作製した単結晶または多結晶体を含有した非晶質材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
単結晶または多結晶の光学素子は、光通信やレーザーの分野で重要な役割を担っている。特に光通信では、波長変換や光アイソレータなどの用途で、結晶の非線形性を応用した素子が主に使用されている。これらの光学素子用結晶は、一般に調和溶融組成からの引き上げ育成法(チョクラルスキ−法など)、格子定数が一致した基板を目的組成の融液に沈めて育成する方法(LPE法)、気相成長方法(MOCVDなど)などの方法で製造されている。
【0003】
一方、非晶質材料は生産性に優れ、ファイバーなどに使用される石英ガラス、レンズなどに使用される光学ガラス、反射や波長選択に使用される非晶質膜などが知られている。しかし、これらの非晶質材料は非線形性が小さく、結晶と比較すると光学素子としては性能が劣るとされている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ファイバーを中心とする光通信の発展やレーザー技術の進歩により、光学機能性素子への要求は高まる一方である。特に、高効率、小型化、低損失、低雑音、ファイバーとの接続の容易性などが求められている。ところが、結晶素子は高効率だがファイバーとの接続性や生産性が悪く高価であり、また非晶質素子はファイバーとの接続性は良好で安価だが、効率に問題があった。
【0005】
例えば、従来の結晶作製方法では、目的の光学素子を製造するまでに、結晶育成→切り出し加工→光学研磨→光軸合わせ、組立→検査、といった複雑な工程を経なければならないことから、部品の価格が高価になりやすい問題がある。特に、単結晶育成は数mm/hr以下の速度で行われるのが一般的であり、生産性が悪い。また、結晶方位の検査や表面の光学研磨など、後工程が煩雑で、コスト増加の原因となっている。このように、従来法による結晶作製、結晶素子作製方法では、大量かつ安価に供給することは困難である。
【0006】
一方、非晶質材料は、大量生産に適しているが、機能や効率は結晶よりも劣るとされている。例えば、波長変換などに使用される二次の非線形性は、非晶質材料では得られないなど、使用できる分野に制限があった。
【0007】
このような背景から、非晶質材料と同程度の生産性で製造可能であり、結晶材料と同程度の性能や効率を発揮し、ファイバーとの接続性が良好な素子や材料が求められていた。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、このような問題を解決するために鋭意検討の結果、適当な組成の非晶質母材(例えばガラスや非晶質膜)にパルス光を照射することで、照射部分または集光部分だけに結晶を選択的に析出させ、単結晶または多結晶、あるいは単結晶または多結晶を含む非晶質材料を作製できることを見いだした。
【0009】
すなわち本発明は、非晶質な母材に、パルス光を照射または集光し、照射または集光部分に、選択的に単結晶または多結晶を析出させた、単結晶または多結晶を含有する非晶質材料の作製方法および、この方法を用いて作製した、単結晶または多結晶を含有する非晶質材料を提供するものである。
【0010】
以下に、本発明について詳述する。
一般に、適切に選択された組成の非晶質母材(例えば、ガラスや非晶質膜)を加熱処理すると、特定組成の結晶が析出することはよく知られている。しかし、加熱による結晶化は、限定された領域だけを結晶化させるには不向きであり、析出する結晶粒子のサイズ制御も困難であることから、機能性素子としての実用化は困難である。
【0011】
一方、レーザーに代表される光エネルギーは、制御性に優れており、特定箇所に特定時間だけ照射、集光することが可能である。最近になって、パルスエネルギーの特に大きな光源が市販されるようになり、感光性非晶質材料中での結晶の析出、消滅が報告されている(近藤裕己ら、第45回応用物理学関係連合講演会(1998年春季)28p−G−4)。しかし、報告された方法は結晶析出に熱処理を必要とし、光だけを用いた方法ではないため、熱処理による問題を完全には回避できない。光エネルギーだけを用いて結晶を析出させると、熱を利用する場合と異なり、熱的に不安定な非晶質材料中にも、選択部分だけに結晶を析出させることができ、これまでにない材料が作製可能になる。
【0012】
光の照射方法は、結晶化に十分な光エネルギーを供給できればどんな方法でも良い。結晶化部分を限定するためには、マスクを用いたり集光するなどして、照射部分を制限することで、容易に達成できる。また、材料内部だけに結晶を析出させる場合は、非晶質材料内部に光を集光し、集光部分だけが結晶化に必要な光エネルギー密度に達するように、集光方法や光源の光強度を調整すればよい。
【0013】
光源としては、結晶化に必要な光エネルギーを付与できるものなら何でも良いが、照射位置や焦点深度の制御性の観点から、レーザーを使用することが好ましい。特に、集光時の照射エネルギー密度を高めることができるパルスレーザーが好ましい。パルスレーザーを使用する場合、パルスの幅は、材料が破壊しないように、10−9秒以下であることが特に好ましい。
【0014】
本発明で用いる非晶質材料は、特に組成は限定しないが、所望の結晶が析出可能な組成である必要がある。このため、析出させる結晶の組成に比較的近い組成をもった非晶質材料であることが好ましい。
【0015】
大きな二次の光学的非線形性を示す結晶としては、特に限定するものではないが、KTiOPO4(KTP),LiNbO3(LN),LiTaO3(LT),LiB3O5(LBO),β−BaB2O4(β−BBO),CsLiB6O10(CLBO),GdCa4B3O10(GdCBO)などが挙げられ、陽イオンとして、Nb,La,Li,Bなどを含むことが特徴である。これらの結晶で非線形性に直接関与するのは、B−O結合やP−O結合であると言われている。また、B−O結合、P−O結合、Nb−O結合は、非晶質材料の網目構造を形成することが知られており、結晶組成と比較的近い組成でも非晶質材料を作製可能である。これらの結晶を析出させる非晶質組成としては、特に限定するものではないが、例えば、LBOにはLi2O−SiO2−B2O3系が、LNやLTにはLi2O−Nb(Ta)2O5−SiO2系が、BBOにはSiO2−BaO−B2O3系の非晶質組成が適している。
【0016】
また、大きな光電気効果(圧電性、強誘電性)を示す結晶は、Ti,Ta,Nb,W,Mo,Si,Li,Ca,Sr,Ba,Bi,Al,Gaを含む酸化物やフッ化物が挙げられ、特に限定するものではないが、BaTiO3(BTO),Sr0.75Ba0.25Nb2O6(SBN),Ba2NaNb5O15(BNN),La3Ga5SiO14(ランガサイト),Bi12SiO20(BSO),Bi12GeO20(BGO),Pb(Zr,Ti)O3(PZT)などが知られている。これらの結晶を析出させる非晶質組成としては、特に限定するものではないが、例えばBTOにはBaO−TiO2−SiO2系、SBNにはSrO−BaO−Nb2O5−SiO2系、ランガサイトにはLa2O3−Ga2O3−SiO2系、BSOにはBi2O3−SiO2系などが適している。
【0017】
次に、大きな光磁気効果を示す結晶としては、遷移金属や希土類を含有した結晶が知られている。例えば、特に限定するものではないが、Y3Fe5O12(YIG)が知られている。これらの結晶を析出させる非晶質組成としては、特に限定するものではないが、例えばYIGにはY2O3−Fe2O3−SiO2−Na2O系が適している。
【0018】
さらに、レーザー発振媒質として作用を示す結晶としては、希土類や遷移金属を添加した結晶が挙げられる。添加する活性元素としては、特に限定するものではないが、例えば、Ce,Pr,Nd,Eu,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Cr,Mn,Fe,Ni,Tiなどが挙げられ、価数も2価,3価,4価などの種類が知られている。中でも、Ce,Pr,Nd,Eu,Dy,Ho,Tm,Yb,Cr,Mn,Ni,Fe,Tiは、酸化還元の程度によって様々な価数を取り得ることが知られている。また、最近では超短パルスレーザーの照射によって、これらの元素の価数を変化させられることが判っており、結晶の析出と同時に価数の制御も行えば、周囲の非晶質部分と析出した結晶部分で、異なる価数を持たせることができる。通常のレーザー結晶では、励起波長と発振波長にある程度の吸収を持っており、励起エネルギー密度の高い部分だけがレーザー発振に寄与し、その他の部分は損失の原因となっていた。ところが、結晶を析出させた領域だけ価数を変化させたような材料では、周囲の非晶質材料が励起波長とレーザー発振波長で吸収を持たないように調節することができるため、しきい値の低いレーザー材料を提供できる。結晶の種類としては、特に限定するものではないが、Y3Al5O12(YAG),Gd3Ga5O12(GGG),LiYF4(YLF),LiSrAlF6(LiSAF),Al2O3(サファイア),ルビー,などが知られている。これらの結晶を析出させる非晶質組成としては、特に限定するものではないが、例えばYAGやGGGにはY(Gd)2O3−Al(Ga)2O3−SiO2−Na2O系、YLFにはLiF−YF3−BaO−P2O5系、LiSAFにはLiF−SrF2−AlF3−Ba(PO3)2系が適している。
【0019】
本発明において、上述したような結晶(単結晶または多結晶)を構成する元素を含む非晶質材料が用いられ、上述したような効果、作用を得るには、B,Ti,Ta,Nb,La,W,Mo,Si,Li,Ca,Sr,Ba,Bi,Al,Gaから選ばれる少なくとも一種類の元素を含有することが必要である。
【0020】
本発明の作製方法は、非晶質母材にパルス光を照射する前、照射中、照射後のいずれか、または複合的に、外部場を加えながら結晶を析出させると、析出結晶の方位制御や単ドメイン化などの処理ができる。加える外部場は、目的に応じて変える必要があるが、電場、磁場、X線やγ線のような高エネルギー線が挙げられ、特に電場や磁場が効果的である。
【0021】
結晶の方位を制御する方法としては、種結晶や方位の制御された基板を利用することも効果的である。この場合、種結晶や基板に非晶質材料を接触させ、その接触部分から結晶化が開始されるように、パルス光の照射、集光方法を制御することが必要である。また、この結晶化速度などを適切に制御すれば、欠陥の少ない単結晶または多結晶が選択部分だけに任意の形状で得られる。
【0022】
このような方法で得られた単結晶または多結晶は、母材である非晶質材料中に閉じこめられ、結晶に特有の晶癖が出現しにくい利点がある。例えば、単結晶ファイバーを融液から作製する方法は広く行われているが、ファイバー表面に晶癖が出現し、断面が円形にならない。このため、伝送損失が大きく、機能性素子としての応用が制限されている。これに対し、本発明の作製方法で単結晶または多結晶を析出させれば、母材の非晶質層が取り囲んでいるため、自由な表面が存在せず、晶癖は出現できない。このため、断面が円形で損失の少ない単結晶または多結晶が作製できる。
【0023】
また、非晶質膜を結晶化させる場合は、基板に適切な格子定数を持ったウェハを使用することによって、基板のウェハと接触した面は結晶化し、膜表面は非晶質のまま保持されるような材料も、簡単に作製できる。
【0024】
次に、照射するパルス光としては、非晶質母材の種類にもよるが、結晶析出に十分なパルスエネルギーを照射できれば特に限定されない。しかし、三次元的に結晶を析出させる場合には、照射波長は母材に強く吸収されない波長を選定することが好ましい。このようなパルス光源としては、レーザーが好ましく、波長可変レーザーであれば非晶質母材の透過特性に合わせて最適波長に調整ができるので、さらに好ましい。
【0025】
パルスレーザーのパルス幅としては、1パルス当たりのエネルギーが大きい、ピコ秒からフェムト秒領域のパルスレーザーが好ましい。このようなレーザーとしては、例えばTi添加サファイアレーザー、Cr添加LiSrAlF6レーザー、Cr添加YAGレーザー、色素レーザー、パルス圧縮されたファイバーレーザーなど、多くのレーザーが利用可能である。また、これらのレーザーをパラメトリック発振器を通して望みの波長に変換したり、再生増幅器などを用いて、パルスエネルギーを増幅することも好ましい使用方法である。さらに、複数のレーザーを同時に使用して結晶作製を行うこともできる。この場合、一つのレーザーでは結晶析出に不十分なパワー密度しかない場合でも、複数のレーザーを交差させて、交点だけに結晶を析出させることができる。また、この方法を拡張して、一回の照射で複数の交点を得られるように調整すれば、生産性の高い結晶析出システムを構築できる。本発明において、照射するパルス光の集光部分の光パワー密度は109W/cm2以上が好ましい。
【0026】
パルス光のエネルギーを時間的、空間的に周期変調させることで、析出させる結晶種や結晶サイズを周期的に変調し、様々な機能を持たせることができる。また、母材となる非晶質材料の応答特性にもよるが、パルス光照射前、照射中、照射後に加える外部場を、時間的、空間的に周期変調することで、同様の効果を得られる場合もある。外部場としては、電場、磁場、X線やγ線のような高エネルギー線が挙げられる。ここで時間的に周期変調することとは、例えば、電場を所定の周波数でON/OFFまたは交流とすることに相当し、空間的に周期変調することとは、例えば、所定の周期長さでスリットの入ったマスクなどを通して高エネルギー線を照射することに相当する。このような変調構造は、結晶材料の性能を最大限に引き出すために、不可欠となる場合がある。例えば、二次の非線形性を示す結晶を析出させた場合、位相整合条件を満たす方位は限られているが、そのような方位で最大の非線形応答を示すとは限らない。このような結晶を析出させる場合、最大の非線形応答が得られる方位で使用するために、周期的な方位制御による疑似位相整合を行うことが必要となる。
【0027】
析出させる結晶の種類は、照射するパルス光のパルス幅、エネルギー密度、繰り返し速度などの照射条件、加える外部場の種類、場の強さ、変調方法などで制御することも可能であり、非晶質材料の組成で制御することも可能である。結晶の種類を非晶質材料の組成で制御する場合、複数の非晶質材料組成において、結晶の析出に必要なパルス光照射条件が同一になるように整えておくと、予め接合した非晶質材料に連続的にパルス光を照射し、異なる種類の結晶が析出した非晶質材料を一括して作製できる。また、同様な効果はパルス光や外部場の照射などの条件を、不連続または連続的に変化させることでも得られる。このような方法を採用すると、一つの非晶質材料中に複数の結晶種が析出した複合的な材料を得ることができる。このような非晶質材料を作製すると、例えば非線形光学素子と高速変調素子の一体化など、素子の小型化、集積化が可能となる。
【0028】
また、パルス光の照射条件や外部場を加える条件を最適化すると、室温、大気圧下では本来育成できない結晶相を、非晶質材料に閉じ込めて析出させることができる。例えば、強誘電体の一部には、組成−温度−安定な結晶相の間に微妙な関係があり、室温付近で強誘電体として安定な組成は限定されることが知られている(例えば、J.Lian 他,Ferroelectrics,vol96,127−130(1989).)。このような強誘電体結晶では、通常の結晶育成において、室温大気圧で安定な結晶相以外の結晶相を育成、利用することはほとんど不可能である。ところが、非晶質材料中にパルス光によって結晶を析出させる場合、結晶は非晶質材料中で原子の移動や体積変化を起こすことが極めて困難なため、通常では実現できない高圧を作り出し、かつ実質的に相転移不可能となり、高温高圧相や低温高圧相を生成させることができる。このため、従来は利用不可能であった組成や結晶相を利用可能となる。このような高圧相の結晶は、一般的に高密度かつ高屈折率であり、周囲の非晶質相に対して大きな比屈折率差を持たせることができる。例えば、室温では5×108Pa以上の高圧下でしか生成しないため、人工的には水熱合成法でしか育成できないヒスイ輝石は、同じ組成のガラスよりも6%程度高屈折率である。このような高屈折率部分を非晶質材料内部に形成すれば、光記録の高密度化ができる。本発明の方法では、その圧力範囲を、大気圧から連続的に高圧にできるため、作製した結晶は、通常の結晶育成法では特に育成困難な、107Pa以上の領域で生成する高圧結晶相を有する。
【0029】
本発明の結晶作製方法は、無機材料に限らず、有機材料や有機−無機複合材料にも適用できる。例えば、室温において非晶質状態にある有機材料(特にポリマー)の選択部分にパルス光を照射し、結晶化させることや、有機−無機複合材料の選択部分を分相、結晶化させ、有機−無機混合材料に変化させることもできる。
【0030】
本発明の作製方法によって得られる単結晶または多結晶含有非晶質材料の応用範囲としては、特に限定するものではないが、二次の非線形性を利用した波長変換素子、光磁気効果を利用した光アイソレータ、希土類や遷移金属イオンを活性イオンとするレーザー材料、光電気効果を利用した高速変調素子や光スイッチなどが挙げられる。
【0031】
本発明の単結晶または多結晶含有非晶質材料の作製方法によって、大量に生産可能な非晶質材料に高性能な結晶を選択的に作製することができるだけでなく、一次元的、二次元的、三次元的な配置が可能となる。また、多機能結晶回路、複合機能化、小型集積化なども容易となり、光通信やレーザー分野で要求される各種光学素子の作製が可能となる。
【0032】
【実施例】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0033】
実施例1
母材となる非晶質材料として、Ba−Si−B−O系のガラス(ガラス組成:46BaO−2SiO2−52B2O3(数字はmol%))を使用し、パルス幅120fs(1fs=10−15秒)、パルスエネルギー1mJのレーザー光をガラス内部に集光照射した(図1)。その結果、集光照射した部分だけ選択的に結晶化し、ほかの部分は全く影響を受けなかった。この結晶化部分に波長0.796μmのレーザー光を照射すると、0.398μmの光に波長変換された。母材のガラスに0.796μmのレーザー光を照射しても、波長変換しないことから、析出した結晶が二次の非線形性を示すことがわかった。波長変換されたスペクトルを図2に示す。また、結晶化部分を取り出し、粉末X線回折法で分析した結果、結晶がβ−BaB2O4であることがわかった。
【0034】
実施例2
母材となる非晶質材料として、Li−Al−Ti−B−O系のガラス(ガラス組成:32Li2O−3Al2O3−3TiO2−62B2O3(数字はmol%))を使用し、パルス幅120fs(1fs=10−15秒)、パルスエネルギー1mJのレーザー光をガラス内部に集光照射した。その結果、集光照射した部分だけ選択的に結晶化し、ほかの部分は全く影響を受けなかった。この結晶化部分に波長0.8μmのレーザー光を照射すると、0.4μmの光に波長変換された。母材のガラスに0.8μmのレーザー光を照射しても、波長変換しないことから、析出した結晶が二次の非線形性を示すことがわかる。また、結晶化部分を取り出し、粉末X線回折法で分析した結果、結晶がLi2B4O7であることがわかった。
【0035】
実施例3
実施例1と同様のガラスを用い、同様の方法で結晶を析出させる工程で、ガラスに電場を加えながら結晶を析出させた。このときのガラスの厚みは5mm、電圧は20KVである。析出した結晶の方位分布を調べるため、消光比を測定した。その結果、電場を加えない場合と比較して、20倍の消光比を得た。このことから、析出した結晶が一方向に配向していることがわかる。また、波長変換効率を比較した結果、電場を加えずに析出した場合に対し、5倍の変換効率を得た。
【0036】
実施例4
実施例1と同様のガラス組成にFeを100ppm添加し、実施例1と同様の方法で結晶を析出させる工程で、ガラスに磁場を加えながら結晶を析出させた。このときのガラスの厚みは2mm、磁場の強さは50000Am−1である。析出した結晶の方位分布を調べるため、消光比を測定した。その結果、磁場を加えない場合と比較して、10倍の消光比を得た。このことから、析出した結晶が一方向に配向していることがわかる。また、波長変換効率を比較した結果、磁場を加えずに析出した場合に対し、2倍の変換効率を得た。
【0037】
実施例5
組成:54B2O4−46BaO(数字はmol%)のガラスに、あらかじめβ−BBO単結晶(種結晶)と接合した材料を用いた。結晶とガラスの接合部は、完全に密着するようにガラスを軟化させて圧着、一体化した。この材料の接合部分に実施例1と同様にレーザーを照射し、接合部分から結晶化させた結果、種結晶と同一の方位でβ−BBO単結晶が成長していることがわかった。0.8μmの光を0.4μmに変換する波長変換効率は、種結晶部分と析出させた単結晶部分で差がなかった。このことから、光学的に良質な単結晶が、ガラス内部に選択的に作製できることがわかった。また、この時の結晶成長速度は10mm/min程度であり、非常に高速な単結晶育成ができる。さらに、この単結晶はガラス内部に閉じこめられていることから、一般的な単結晶ファイバーに見られるような自由表面に起因する晶癖がなく、導波路として理想的な性質を持っている。
【0038】
実施例6
実施例1と同様のガラスを用い、同様の方法で結晶を析出させる工程で、ガラスに周期的な電場を加えながら結晶を析出させた。電場は、くし形電極を用いて加えた。このときのガラスの厚みは2mm、電圧は5KV、電場の反転周期は2mmである。析出した結晶の方位分布を調べるため、消光比を測定した。その結果、電場を印加しない場合と比較して、20倍の消光比を得た。このことから、析出した結晶が一方向に配向していることがわかる。また、最大の波長変換効率を得られる長さに調整して切断研磨した結果、電場を加えずに結晶を析出した場合に対し、5倍の変換効率を得た。
【0039】
実施例7
実施例1と同様のガラスを用い、同様の方法で結晶を析出させる工程で、結晶析出に必要な条件を探るため、集光点の光パワー密度と波長変換効率の関係を調べた。入射パルス数は200ショットに統一した。結果を図3に示す。波長変換効率は、(0.396μmの出射エネルギー)/(0.796μmの入射エネルギー)の比とする。波長変換素子として実用化可能な1%以上の変換効率を得るためには、109W/cm2以上のパワー密度が必要である。また、ガラス内部の特定部分だけが109W/cm2以上になるように集光方法を工夫すると、ガラス内部に結晶を閉じこめた形で析出可能となる。
【0040】
実施例8
実施例4と同様に磁場を加える方法で、30Y2O3−25Fe2O3−35SiO2−10Na2O(数字はmol%)のガラスに結晶を析出させた。粉末X線回折法で分析した結果、析出した結晶はY3Fe5O12であった。ガラス部分と結晶化部分のファラデー回転能の比は1:3であり、結晶化部分はガラスよりも高効率であることがわかった。
【0041】
実施例9
実施例8と同様の組成のガラスをスパッタリングターゲットとして用い、石英ガラス上に非晶質膜を形成した。膜の厚みは20μmであった。この膜に実施例4と同様に磁場を加える方法で結晶を析出させた。膜をX線回折法で分析した結果、析出した結晶はY3Fe5O12であった。非晶質部分と結晶化部分のファラデー回転能の比は1:5であり、結晶化部分は非晶質膜の部分より高効率であることがわかった。
【0042】
実施例10
実施例1と同様な方法で結晶を析出させる工程で、一様な電場を加えながら結晶を析出させた。この時の電圧は5kV、ガラスの厚みは2mmである。使用したガラス組成は、29.5Y2O3−0.5Nd2O3−20Al2O3−5Ti2O3−35SiO2−10Na2O(数字はmol%)である。粉末X線回折法で分析した結果、析出した結晶はY3Al5O12(YAG)であった。結晶化部分に、波長0.8μmのレーザーを集光し、共振器を構成してレーザー発振させた。その結果、励起パワーが2Wの時、繰り返し10Hz、20μJ/パルスのパルスレーザー発振を確認した。発振波長はNd:YAGと同じ1.06μmであった。
【0043】
実施例11
実施例1と同様な方法で結晶を析出させる工程で、一様な電場を加えながら結晶を析出させた。この時の電圧は5kV、ガラスの厚みは2mmである。使用したガラス組成は、30LiF−30SrF2−29.5AlF3−0.5CrF3−10Ba(PO3)2(数字はmol%)である。粉末X線回折法で分析した結果、析出した結晶はLiSrF6(LiSAF)であった。結晶化部分に、波長0.63μmのレーザーを集光し、共振器を構成してレーザー発振させた。その結果、励起パワーが2Wの時、繰り返し10Hz、8μJ/パルスのパルスレーザー発振を確認した。発振波長はCr:LiSAFと同じ0.8μmであった。
【0044】
実施例12
組成が30Li2O−49Nb2O5−1MgO−20SiO2(数字はmol%)のガラスをスパッタリングターゲットとして用い、石英ガラス上に厚さ20μmの非晶質膜を形成した。この膜に実施例6と同様にくし形電極を形成して、電場を加えながら結晶を析出させた。この結晶化部分に波長1.5μmの光を通しながら電場をON/OFFすると、透過する光強度の変化が観測でき、光電気効果が確認できた。
【0045】
実施例13
組成:17Na2O−17Al2O3−66SiO2(数字はmol%)のガラス中に、実施例1と同様な方法で結晶を析出させた。析出した結晶を屈折率,複屈折率などを測定して分析した結果、室温では5×108Pa以上の圧力でしか生成しないヒスイ輝石であることがわかった。この時の周囲のガラスの屈折率は1.54、結晶部分の屈折率は1.64であり、高屈折率化が確認できた。
【0046】
実施例14
組成:40LiF−34YF3−1EuF3−25Ba(PO3)2(数字はmol%)のガラス原料を、H2を1vol%含有したN2中で溶融し、Euを2価に還元した。このガラスに実施例10と同様に電場を加える方法で結晶を析出させた。この結果得られた材料は、ガラスマトリックス部分が2価のEuを含有し、析出した結晶部分が3価のEuを含有したLiYF4(YLF)結晶であった。この結晶化部分に波長464nmのレーザーを集光し、共振器を構成してレーザー発振させた。その結果、励起パワーが0.5Wの時、繰り返し10Hz、2μJ/パルスのパルスレーザー発振を確認した。発振波長は3価Eu:YLFと同じ0.61μmであった。
【0047】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の単結晶または多結晶含有非晶質材料の作製方法は、安価で大量供給可能な非晶質材料中に、高効率、高機能な単結晶または多結晶を三次元的に作製可能な方法であり、その単結晶または多結晶含有非晶質材料は二次の非線形光学効果、光磁気効果、光電気効果、レーザー発振媒質として作用するものであり、光通信やレーザーに必要な結晶素子、結晶回路等を供給できる。また、これらの素子を用いることによって、光通信システムやレーザー装置の性能を飛躍的に向上させ、しかも装置の小型化、高効率化、低価格化に貢献できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】ガラス内部に結晶を析出させる方法の概略図である。
【図2】実施例1で作製した結晶を用いて、0.796μmのレーザー光が、1/2波長に変換されたスペクトルを示す。
【図3】集光点の光パワー密度と波長変換効率の関係を示す。
Claims (13)
- 非晶質な母材内部に、材料に対して吸収のない波長のパルス光を集光照射し、集光部分のみ選択的に結晶化させて、非線形を有する単結晶または多結晶を析出させることを特徴とする単結晶または多結晶含有非晶質材料の作製方法。
- 非晶質な母材内部に、外部場を加えながら単結晶または多結晶を析出させることを特徴とする請求項1に記載の単結晶または多結晶含有非晶質材料の作製方法。
- 非晶質な母材内部に、種結晶または結晶質基板を接触させ、接触部分から単結晶または多結晶の領域を連続して作製することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の単結晶または多結晶含有非晶質材料の作製方法。
- パルス光が少なくとも1種類のレーザー光からなることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の単結晶または多結晶含有非晶質材料の作製方法。
- 加える外部場が、電場または磁場からなることを特徴とする請求項2〜請求項4のいずれかに記載の単結晶または多結晶含有非晶質材料の作製方法。
- 加える外部場が、少なくとも空間的または時間的に変調されていることを特徴とする請求項5に記載の単結晶または多結晶含有非晶質材料の作製方法。
- 照射するパルス光を集光し、集光部分の光パワー密度が、109W/cm2以上であることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の単結晶または多結晶含有非晶質材料の作製方法。
- 請求項1〜請求項7のいずれかに記載の方法で作製した単結晶または多結晶が、二次の非線形光学効果を示すことを特徴とする単結晶または多結晶含有非晶質材料。
- 請求項1〜請求項7のいずれかに記載の方法で作製した単結晶または多結晶が、光磁気効果を示すことを特徴とする単結晶または多結晶含有非晶質材料。
- 請求項1〜請求項7のいずれかに記載の方法で作製した単結晶または多結晶が、希土類や遷移金属イオンを活性イオンとするレーザー発振媒質として作用することを特徴とする単結晶または多結晶含有非晶質材料。
- 請求項1〜請求項7のいずれかに記載の方法で作製した単結晶または多結晶が、光電気効果を示すことを特徴とする単結晶または多結晶含有非晶質材料。
- 請求項1〜請求項7のいずれかに記載の方法で作製した単結晶または多結晶が、線状または平板状に形成されていることを特徴とする単結晶または多結晶含有非晶質材料。
- 請求項1〜請求項7のいずれかに記載の方法で作製した単結晶または多結晶の結晶化部分が、二次元的または三次元的に相互接続していることを特徴とする単結晶または多結晶含有非晶質材料。
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