JP3511204B2 - 光機能素子、該素子用単結晶基板、およびその使用方法 - Google Patents
光機能素子、該素子用単結晶基板、およびその使用方法Info
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Description
た光情報処理、光加工技術、光通信技術、光計測制御等
々の分野で利用する、LiTaO3単結晶基板の分極反転構造
を利用して光を制御する光機能素子、該光機能素子用単
結晶基板、該光機能素子用単結晶基板の使用方法に関す
る。
いる、タンタル酸リチウム(LiTaO3)単結晶(以下適宜
「LT」と略記する)は、主に表面弾性波素子の基板とし
て使用されている。この結晶は、大口径で組成均質性の
高い単結晶が比較的安価で供給可能である。さらに、
紫外から赤外の広い波長域で透明であり、数十kV/mm程
度の高電界を加えることで室温でも強誘電体分極を反転
することが可能なことから、近年、分極反転構造を利用
した非線形光学素子や電気光学素子など各種光機能素子
の基板としても注目されている。
ザを非線形光学効果により半波長の青色光に変換する導
波路型の光第二高調波発生(SHG)素子の開発が期待さ
れており、なかでも、光ディスクの高密度記録・再生用
光源として、LTやニオブ酸リチウム(LiNbO3)単結晶
(以下適宜「LN」と略記する)などの無機強誘電体単結
晶の分極を周期的に反転した構造の素子を用いた波長変
換素子は最も良く研究されている。この波長変換素子は
疑似位相整合(Quasi Phase Matching; QPM)方式によ
るもので、基本波と高調波の伝搬定数の差を周期構造で
補償して位相整合をとる方式である。
と、出力光の平行ビーム化・回折限界集光が容易である
こと、適用できる材料や波長に制限がないことなど、多
くの優れた特徴を持っている。QPMのための周期構造と
しては、SHG係数(d33係数)の符号を周期的に反転した
構造が高い効率を得る上で最も有効であり、強誘電体結
晶ではd係数の正負は強誘電体分極の極性に対応するの
で、強誘電分極ドメインを周期的に反転させる形成技術
が重要である。
et al., Optics Letters, 21, p1972,1996)にあるよ
うにLT単結晶に約21kV/mmの電界を加え、周期反転構造
を作成したQPM素子を用い、Nd:YVO4単結晶を基本波とす
る内部共振器による緑色光波長変換素子が報告されてい
る。特に、LT単結晶はLN単結晶と並ぶ大きな非線形光学
定数(d33が26pm/V)を持ち、LN単結晶に比べて光損傷
に強く、また、基礎吸収端が280nmまで伸びており短波
長の波長変換材料として有望である。
おいては、例えば、公知文献(M. Yamada et al., App
l.Phys.Lett., 69,p3659,1996)によると、強誘電体結
晶であるLN単結晶に高電界を印加することで、結晶中に
レンズやプリズム状の分極反転構造を形成し、これを通
過したレーザ光を電気光学効果を利用して偏向する光素
子やシリンドリカルレンズ、ビームスキャナー、スイッ
チなどが新しい光素子として注目され、LN単結晶より短
波長まで透明なLT単結晶は、紫外〜可視光を用いる光素
子の優れた基板材料として有望とされている。
の分極反転構造を利用した波長変換素子や電気光学素子
は、いずれの場合にも基板結晶としては、市販されてい
る無添加のコングルエント組成のLT単結晶が用いられて
きた。この理由は、これまで入手可能なLT単結晶は、工
業的な面から安価で大口径の育成が可能なチョクラルス
キー法で育成されたコングルエント組成の結晶に限られ
ているためである。LT結晶では、ストイキオメトリ組成
(化学量論組成または以下定比組成とよぶ)とコングル
エント組成(一致溶融組成)は一致しないことは温度-
組成比の相関図(相図)から良く知られている。
組成とが一致し、結晶全体にわたって均一組成の結晶を
育成することが出来る組成であるため、現在、各種用途
に製造、使用されているLT単結晶の組成はLi2O/(Ta2O5
+Li2O)のモル分率が約0.483(Li/Taのモル比は約0.9
3)のコングルエント組成である。このため、従来のコ
ングルエント組成LT単結晶はTa成分が過剰であるため、
数%に達するTaイオンがLiイオンを置き換えている(ア
ンチサイト欠陥)し、Liイオンサイトにやはり数%の空
位欠陥をもたらしている。この影響は表面弾性波素子応
用としては深刻でないとしても、光学素子応用には無視
することはできない。このため、光機能素子応用への基
板として、不定比の欠陥を減らした定比に近い組成を持
つ結晶の開発が望まれていた。
の場合、Li濃度が定比よりも高い組成の融液から定比に
近い組成の結晶が析出できる。しかし、従来から大口径
のLT結晶を工業的に大量生産する手段として使用されて
いるチョクラルスキー法を用いて定比組成結晶を育成し
ようとした場合には、結晶の析出に伴ってLi成分の過剰
分が坩堝内に残されることになり、融液のLiとTaの組成
比が徐々に変化するため、育成開始後すぐに融液組成比
は共晶点に至ってしまう。このため、結晶の固化率はわ
ずか10%程度に制限され、析出した結晶の品質も光機能
素子応用に使用できるものではなかった。
グルエント組成のLT結晶と異なる新規物質として、コン
グルエント組成の不定比欠陥濃度を大幅に低減したLi2O
/(Ta2O5+Li2O)のモル分率が0.495〜0.50(Li/Taのモ
ル比は約0.98〜1.00)の定比組成に近いタンタル酸リチ
ウム単結晶の発明をなし、特許出願した(特開平11-353
93号公報)。また、この新規結晶に関して下記のように
文献報告した。この不定比欠陥を低減して高品質結晶を
開発する手段として、本発明者等は、例えば、公知文献
(Y. Furukawa etal. J. Crystal Growth 197,p889,199
9)において、原料を連続的に供給しながら育成する方
法(以後連続供給法と略記する)が提案されている。
2O)のモル分率をLi成分の過剰の58.0〜59.0(Li/Taのモ
ル比は約1.38〜1.44)とし、るつぼを二重構造にして内
側のるつぼから定比組成に近いLT結晶を引き上げ、引き
上げている結晶の重量を随時測定することで成長レート
を求め、そのレートで結晶と同じ定比組成の成分の原料
粉末を外るつぼと内るつぼの間に連続的に供給するとい
う方法である。この方法を用いることで、長尺の結晶育
成が可能となり、原料供給量に対して100%の結晶固化
率を実現されている。この方法で育成された結晶は、キ
ュリー温度が675〜685℃と、従来のコングルエント組成
結晶のキュリー温度の601℃よりはるかに高温度にあ
り、Ta過剰の定比組成に近いタンタル酸リチウム単結晶
が得られたことが報告されている。
剰の定比組成に近づいた結晶では、分極反転に要する印
加電圧が従来の10分の1程度で済むことを報告した(K.
Kitamura etal. Appl. Phys. Lett.,73, p3073,1998年
や古川保典他、第43回人工結晶討論会講演要旨集1A12、
第23項、1998年)。すなわち、従来のコングルエント組
成結晶における数%の不定比欠陥(アンチサイト欠陥や
空位欠陥)の存在が、LT結晶が本来有する光学特性や、
周期的な分極構造を作成するのに必要な印加電圧を高く
している可能性があることを報告している。
晶毎による耐光損傷閾値が数桁以上もばらつくことが知
られているが、Ta過剰の定比組成に近いタンタル酸リチ
ウム単結晶では従来のコングルエント組成に較べると、
波長532nmの緑色光レーザ照射に対して耐光損傷閾値が
向上し、結晶毎のばらつきも若干小さくなることが報告
されている(古川保典他、第60回応用物理学会学術講演
会講演予稿集2p-ZB-1,第3分冊1001項、1999年)。
対して、MgOを添加した定比組成に近いLT単結晶は、従
来のコングルエント組成よりも優れた耐光損傷閾値を示
すことが知られている(宮本晃男他、4回人工結晶討論
会講演要旨集27A、第75項、1999年)。また、いずれの
組成でもTa過剰なLT単結晶の光損傷は照射するレーザの
波長が短くなると発生しやすくなり、波長が400nm近傍
での耐光損傷閾値は波長532nmでの耐光損傷閾値よりも2
桁以上も低下することが知られている。この場合、Mgが
Liサイトも置換するのでMgの添加量が増えるに従いLi/T
aモル比は無添加の結晶に較べて小さくなり、得られた
結晶のLi/Taモル比は0.95〜1.0となっている。
ム単結晶定比組成に近いLT単結晶(キュリー温度が680
〜685℃)を用いた疑似位相整合(Quasi-Phase-Matchin
g;QPM)素子としての近赤外域バルクOPO素子の研究
が、例えば、公知文献(畑中孝明他、第60回応用物理学
会学術講演会講演予稿集2a-k-7,第3分冊932頁,1999
年)で報告されている。zカットの定比組成に近いLT単
結晶の片面に周期電極を反対面に一様電極を設けてこの
電極を通じて数kV/mm程度のパルス電圧を印加すること
で厚さ1〜2mmの近赤外域バルクOPO素子が比較的容易に
作成できている。しかし、分極反転の均一化が困難であ
るために、素子作成は微少な面積における分極反転構造
の形成に限られ、大面積に亘り分極反転を形成できるま
でには至っていない。
応用物理学会学術講演会講演予稿集30p-ZD-3,第3分冊11
05頁,2000年)によると、本発明者等が先に発明したTa
過剰の定比組成に近いLT単結晶を基板に用いて結晶基板
厚みが3mmのOPO素子の作成を検討したが、分極反転制御
はより困難になり、これを基板に用いたバルクOPO素子
は得られていない。
上に分極反転構造を形成し、分極反転部を通過する光の
非線形光学効果や電気光学効果との相互作用を利用した
光機能素子を実現する上で最も重要な技術は、数個~数
百個にも及ぶ数ミクロンから数十ミクロンサイズの分極
反転構造を精度よくかつ均一に作成することである。
法や電圧印加法がよく知られており一般的によく使用さ
れている。これら光機能素子では分極反転部を光を通過
させて使用するために、特に、それぞれの分極反転境界
部に光学的歪みやロスがあると素子全体としては非常に
大きな光学的な不均一性を引き起こしてしまうため、高
効率の素子が実現できなくなる。
し、10-3〜10-4以上の非常に大きな屈折率変化が生じ
る。これが通過レーザ光の散乱をもたらし、これによっ
て素子動作も理想条件からずれるため素子効率が低下す
るという大きな問題があることが、公知例(V. Gopalan
et al., J.Appl. Phys., 第80巻, 6104頁,1996年)に
おいて指摘されている。この大きな屈折率変化により誘
起される光学的歪みを除くためには、分極反転構造を作
成したLT単結晶を、結晶を350℃で約12時間加熱し、光
学的歪みを緩和させなければならないことが報告されて
いる。
Optics Letters, 21, p1972,1996年)によると、強誘
電体結晶であるLT単結晶に約21kV/mmの電界を加え、周
期反転構造を作成したQPM素子を用い、Nd:YVO4単結晶を
基本波とする内部共振器による緑色光波長変換素子にお
いても、電界印加による分極反転形成後に熱処理が必要
であることを報告している。この場合には、結晶を100
℃以上に加熱することで、結晶内部の伝搬ロスが2.5%
から0.1%にまで低減できることが報告されている。
コングルエント組成のLT単結晶を用い、結晶の片面に周
期電極を、反対面に一様電極を設けて、試料を室温また
は200℃程度までに加熱し、電極を通じてパルス電圧を
印加することで周期電極直下の部分をz軸方位に向けて
分極反転させている。従来のコングルエント組成のLT単
結晶の場合には、分極反転に必要な印加電圧は21kV/mm
以上と高電圧が必要とされている。
極反転技術は、キュリー温度以下の温度で強制的に分極
の方向、すなわち結晶中のTa及びNbやLiイオンの位置を
変えるわけである。LTおよびLN単結晶において分極反転
に必要とされる高電圧が、光学的歪みを引き起こす直接
の原因であるとは必ずしも言えないことが示唆されてい
る。
l., Optics Letters, 22,p805,1997年)において、MgO
を5モル%添加したコングルエント組成のLN単結晶では分
極反転に必要とされる電圧が通常のコングルエント組成
より約1/5程度に小さくなるが、この材料を用いた場合
でも、コロナ放電法を用いてMgOを添加したLN単結晶に
4.75ミクロン周期で分極反転構造を形成したSHGレーザ
を作成する場合には、光学的歪みを除去するために約50
0℃で3時間加熱することが必要とされることが報告され
ている。
T結晶を基板に用い、基板上に分極反転構造を形成した
素子の分極反転境界を偏光顕微鏡で観察すると、図1の
(a)に様子を示したように、分極反転部の境界は滑らか
ではなく、かつ、大きな光学的歪みがすべての分極反転
境界部において観察された。さらに分極反転部を横切る
ように使用するレーザ光を通過させると数%から十数%
もの非常に大きな伝搬ロスが観察された。このような分
極反転境界における光学的歪みの発生は、大きな伝搬ロ
スの問題だけではなく、この光学的歪みを緩和するため
の光機能素子の製作における余分な熱処理工程を必要と
させることにもなる。
熱処理中に、単一分極基板の一部に電界印加法などで一
旦形成された数ミクロンサイズの分極反転部で、焦電効
果が発生し結晶が破壊したり、反転分極のサイズや位置
がほんのわずかであるが変化させることである。この変
化は高効率の素子を再現性良く作成する上で大きな問題
となった。
問題を解決するため、強誘電体単結晶としてLT単結晶の
特性究明を鋭意継続していたところ、定比組成に近い組
成のLT単結晶は、分極反転を形成しても反転境界部での
光学的歪や光の伝搬ロスが非常に小さく、これを基板に
用いることで分極反転構造を持つ光機能素子として優れ
た特性を有することを見いだした。
結晶基板の一部に、電子ビーム走査照射法または電圧印
加法を用いてキュリー温度以下の温度で分極反転構造を
形成し、この分極反転部を通過した光を制御する光機能
素子であって、該単結晶はLiTaO3結晶であり、該LiTaO3
結晶は、Li/Taのモル比が0.95 〜 1.02 の範囲であり、該 L
iTaO 3 結晶を単一分域化するための熱処理が施された後
に、該 LiTaO 3 結晶の光学的歪みを緩和するための、さら
なる熱処理が施されていないか、または、100℃以下の
温度で熱処理が施されており、該Li/Taのモル比は、該
分極反転構造を形成直後の分極反転部を通過させた光の
伝搬ロスが2%以下の所望の値となるように、該 0.95 〜
1.02 の範囲から選択されることを特徴とする光機能素
子、である。
基板の一部に、電子ビーム走査照射法または電圧印加法
を用いてキュリー温度以下の温度で分極反転構造を形成
し、この分極反転部を通過した光を制御する光機能素子
であって、該単結晶はLiTaO3結晶であり、該LiTaO3結晶
は、Li/Taのモル比が0.95 〜 1.02 の範囲であり、該 LiTaO
3 結晶を単一分域化するための熱処理が施された後に、
該 LiTaO 3 結晶の光学的歪みを緩和するための、さらなる
熱処理が施されていないか、または、100℃以下の温度
で熱処理が施されており、該Li/Taのモル比は、分極反
転境界部の屈折率変化が1×10-4以下の所望の値となる
となるように、該 0.95 〜 1.02 の範囲から選択されること
を特徴とする光機能素子、である。
用いる強誘電体単結晶基板は、原料連続供給二重るつぼ
で育成されることを特徴とする上記(1)または(2)
の光機能素子、である。また、本発明は、(4)前記光
機能素子に用いる強誘電体単結晶基板は、原料連続供給
二重るつぼで育成したMg,Zn,Sc,Inから選ばれる少なく
とも一つの元素を0.1〜4.8モル%ドーピングして含有す
るLi/Taのモル比が0.95〜1.00の範囲のLiTaO3結晶であ
ることを特徴とする上記(3)に記載の光機能素子、で
ある。また、本発明は、(5)両面光学研磨された厚み
0.30mm〜5.0mmの強誘電体単結晶基板の一部に、1.5〜3k
V/mmの電界を印加する電圧印加法を用いてキュリー温度
以下の温度で分極反転構造を形成し、非線形光学効果を
利用して周期的反転分極構造を持つ単結晶内に入射した
レーザ光の波長変換を行う光波長変換素子であって、該
単結晶はLiTaO3結晶であり、該LiTaO3結晶は、Li/Taの
モル比が0.95 〜 1.02 の範囲であり、該 LiTaO 3 結晶を単一
分域化するための熱処理が施された後に、該 LiTaO 3 結晶
の光学的歪みを緩和するための、さらなる熱処理が施さ
れていないか、または、100℃以下の温度で熱処理が施
されており、該Li/Taのモル比は、該分極反転構造を形
成直後の分極反転部を通過させたレーザ光の伝搬ロスが
2%以下、かつ分極反転境界部の屈折率変化が1×10-4以
下の所望の値となるように、該 0.95 〜 1.02 の範囲から選
択されることを特徴とするレーザの波長変換素子、であ
る。また、本発明は、(6)前記強誘電体単結晶基板の
厚みが1.0mm〜5.0mmであることを特徴とする上記(5)
のレーザ光の波長変換素子、である。また、本発明は、
(7)レーザ光の偏向または集光を制御する光機能素子
であって、両面光学研磨された厚み 0.20mm 〜 3.0mm の、
1.5 〜 3kV/mm のパルス状の電圧を印加する電圧印加法を
用いてキュリー温度以下の温度で形成された分極反転部
と非分極反転部とを有し、該分極反転部の形状は、プリ
ズム状またはレンズ状である、強誘電体単結晶基板と、
該光学研磨された面それぞれの該分極反転部に形成され
た電極と、該電極を介して該分極反転部にパルス状の電
圧を印加する電源とを備え、該強誘電体単結晶基板は、
LiTaO 3 結晶であり、該 LiTaO 3 結晶は、 Li/Ta のモル比が
0.95 〜 1.02 の範囲であり、該 LiTaO 3 結晶を単一分域化す
るための熱処理が施された後に、該 LiTaO 3 結晶の光学的
歪みを緩和するための、さらなる熱処理が施されていな
いか、または、 100 ℃以下の温度で熱処理が施されてお
り、該 Li/Ta のモル比は、該分極反転部の形成直後に該
分極反転部を通過した該レーザ光の伝搬ロスが 2 %以
下、かつ、該分極反転部と該非分極反転部との境界にお
ける該レーザ光の屈折率変化が 1 × 10 -4 以下となるよう
に、該 0.95 〜 1.02 の範囲から選択され、該パルス状の電
圧を印加する電源が該分極反転部に電圧を印加すること
によって、該強誘電体単結晶基板に生じる電気光学効果
に基づいて、該分極反転部において該強誘電体単結晶基
板に入射された該レーザ光が偏向するか、または、該レ
ーザ光が集光する、光機能素子 、である。
射法または電圧印加法によりキュリー温度以下の温度で
の分極反転構造を形成する強誘電体単結晶基板であっ
て、該単結晶基板はLiTaO3結晶であり、該LiTaO3結晶
は、Li/Taのモル比が0.95 〜 1.02 の範囲であり、該 LiTaO
3 結晶を単一分域化するための熱処理が施された後に、
該 LiTaO 3 結晶の光学的歪みを緩和するための、さらなる
熱処理が施されていないか、または、100℃以下の温度
で熱処理が施されており、該Li/Taのモル比は、該分極
反転構造を形成直後の分極反転部を通過させた光の伝搬
ロスが2%以下、かつ分極反転境界部の屈折率変化が1×
10-4以下の所望の値となるように、該 0.95 〜 1.02 の範囲
から選択されることを特徴とする分極反転部を通過した
光を制御する光機能素子用単結晶基板、である。
板の一部に、電子ビーム走査照射法または電圧印加法を
用いてキュリー温度以下の温度で分極反転構造を形成
し、この分極反転部を通過した光を制御する光機能素子
の製造方法であって、該単結晶としてLiTaO3結晶を用
い、その際に、該LiTaO3結晶のLi/Taのモル比を0.95 〜
1.02 の範囲とすることによって、該 LiTaO 3 結晶を単一分
域化するための熱処理を施した後に、該 LiTaO 3 結晶の光
学的歪みを緩和するための、さらなる熱処理を施してい
ないか、または、100℃以下の温度で熱処理を施すこと
で、該分極反転構造を形成直後の該分極反転部を通過さ
せた該光の伝搬ロスを2%以下の所望の値まで低減させ
ることを特徴とする光機能素子の製造方法、である。
れた厚み0.30mm〜5.0mmの強誘電体単結晶基板の一部
に、1.5〜3kV/mmの電界を印加する電圧印加法を用いて
キュリー温度以下の温度で分極反転構造を形成し、非線
形光学効果を利用して周期的反転分極構造を持つ単結晶
内に入射したレーザ光の波長変換を行う光波長変換素子
の製造方法であって、該単結晶としてLiTaO3結晶を用
い、該LiTaO3結晶のLi/Taのモル比を0.95 〜 1.02 の範囲
とすることによって、該 LiTaO 3 結晶を単一分域化するた
めの熱処理を施した後に、該 LiTaO 3 結晶の光学的歪みを
緩和するための、さらなる熱処理を施していないか、ま
たは、100℃以下の温度で熱処理を施すことで、該分極
反転構造を形成直後の分極反転部を通過させたレーザ光
の伝搬ロスを2%以下、かつ分極反転境界部の屈折率変
化を1×10-4以下の所望の値まで低減させることを特徴
とするレーザ光の波長変換素子の製造方法、である。ま
た、本発明は、(11)両面光学研磨された厚み0.2mm
〜3.0mmの強誘電体単結晶基板の一部に、1.5〜3kV/mmの
パルス状の電圧を印加する電圧印加法を用いてキュリー
温度以下の温度で分極反転構造を形成し、電気光学効果
を利用してプリズムまたはレンズ形状に反転した分極構
造を持つ単結晶内に入射されたレーザ光の偏向または集
光を制御する光機能素子の製造方法であって、該単結晶
としてLiTaO3結晶を用い、該LiTaO3結晶のLi/Taのモル
比を0.95 〜 1.02 の範囲とすることによって、該 LiTaO 3 結
晶を単一分域化するための熱処理を施した後に、該 LiTa
O 3 結晶の光学的歪みを緩和するための、さらなる熱処理
を施していないか、または、100℃以下の温度で熱処理
を施すことで、該分極反転構造を形成直後の分極反転部
を通過させたレーザ光の伝搬ロスを2%以下、かつ分極
反転境界部の屈折率変化を1×10-4以下の所望の値まで
低減させることを特徴とするレーザ光の偏向または集光
を制御する光機能素子の製造方法、である。
構造を利用した光機能素子における素子性能や分極反転
制御性の問題点は単結晶基板にあることを突き止めた。
本発明は、強誘電体単結晶の分極反転構造を利用した光
機能素子用途として、ある組成範囲にあるLT結晶単結晶
基板に着目した点にある。Li/Taのモル比が0.95〜1.0
2、特に0.98〜1.02の範囲であるニオブ酸リチウム単結
晶が従来の材料の特性と異なり、分極反転素子材料の品
質を大幅に向上させることが可能になった。
も飛躍的に向上することが明らかになった。今回見いだ
された分極反転特性についても、このモル分率を有する
LT単結晶特有の効果である。定比組成に近いLT単結晶
は、原料連続供給二重坩堝法によって、最近ようやく光
学的に均質な基板作製が可能になった結晶であり、その
光学特性については、未だ総てが明らかにされていな
い。特に、これらの結晶の分極反転境界の光学特性につ
いては、本発明者らが初めて明らかにしたものである。
また、この特性を利用した光機能素子特性の大幅な向上
については、さらに未開拓な分野であった。
成のLT単結晶基板は単結晶育成技術の制約から多量のTa
成分が過剰のものである。Li/Taモル比が0.94であるた
め数%にもおよぶ多量の不定比欠陥を含んでいる。一
方、本発明者等は、原料連続供給二重坩堝法によってLi
成分過剰の融液から結晶を育成し、より定比組成に近い
Li/Taモル比が0.95〜1.02のLT単結晶が育成でき、Ta成
分過剰による不定比欠陥濃度を低減した単結晶が光機能
素子基板として優れた特性を示すことをはじめて明らか
にしたものである。
より形成される多量の不定比欠陥が、分極反転構造を利
用する光機能素子応用にとって大きな問題を引きおこす
ことを見い出した。この欠陥の存在によって、分極反転
に必要な印加電圧と自発分極の関係を示すヒステリシス
曲線は非対称的になり、分極反転には数十kV/mmの高電
圧が必要とされ、しかも分極反転を行うとその反転境界
部には大きな光学的歪みと伝搬ロスが導入されることが
わかった。さらに、不定比欠陥が多く結晶内部で欠陥が
不均一に分布しており欠陥濃度が高いような箇所では分
極反転がピンニングされやすいために、より大きな歪み
が蓄積され結晶の破壊の原因になることを明らかになっ
た。
るLT単結晶の製造方法と物性を示す。市販の高純度Li2C
O3、Ta2O5の原料粉末を準備し、 Li成分過剰原料として
Li2CO3:Ta2O5の比が0.56:0.44〜0.66:0.34の割合で
混合し、化学量論比組成原料としてLi2CO3: Ta2O5=0.
50:0.50の割合で混合した。次に1ton/cm2の静水圧で
ラバープレス成形し、約1050℃の大気中で焼結し原料棒
を作成した。また、連続供給用粉末原料として混合済み
の化学量論比組成原料を約1350℃の大気中で焼結して化
学量論比組成原料も作成した。
定比組成に近いLi過剰のLT単結晶の育成を行った。二重
るつぼ内のLi成分過剰組成の融液に種結晶をつけ、引き
上げ速度0.5mm/h、結晶回転数20rpmで定比組成に近い、
すなわち不定比欠陥濃度を極力抑えた単結晶を得た。不
定比欠陥の密度や構造を精密に制御するために、結晶化
した成長量に見合った量のLi2O /(Ta2O5+Li2O)のモル
分率が0.50の化学量論組成比の原料を外側坩堝に自動的
に供給しながら結晶を育成した。
できており、外側るつぼは直径125mm高さ70mm、内側る
つぼは直径85mm高さ90mmとした。この場合にも融液組成
を均一化させるために育成に際して坩堝を4rpmの速度で
種結晶と反対方向に回転させた。育成条件は結晶回転速
度を20rpm、引き上げ速度は0.5mm/hで一定とし、育成雰
囲気を0.05%酸素を含む窒素中とした。
コングルエントLT単結晶の育成と同じように、光損傷を
誘起する一要因と考えられている鉄やクロム等の遷移金
属不純物はできるだけ入らないように注意を払った。約
1週間の育成により直径約55mm、長さ約70mmの大きさ
で、クラックのない無色透明のLT結晶体を得た。得ら
れたアズグロウン結晶の内部の分域状態は多分域状態で
あった。
単結晶キュリー温度を示唆熱分析法により求めた。予
め、定比組成に調合し1500℃で焼結した定比組成の標準
焼結試料を準備し、そのキュリー温度は690℃であるこ
とを確認した。二重るつぼ内のLi成分過剰組成の融液
(例えばLi2O/(Ta2O5+Li2O)のモル分率で0.59〜0.61)
組成から得られたそれぞれのLT単結晶のキュリー温度を
測定した。それぞれの結晶のキュリー温度は689〜691℃
の範囲にあり定比組成の標準焼結試料のキュリー温度に
近いにことが分かった。
晶の上部、中心、下部の3ヶ所から試料を切り出しLi/Ta
モル比を化学分析より求めた。化学分析では組成比の絶
対値を精度良く求めるために、非常に慎重に組成を分析
した。分析は同一試料について数カ所の異なる分析装置
を用いて評価した結果の平均値として求めた。その結
果、前記融液組成から育成されたLT単結晶の組成範囲
はLi/Taモル比が0.95〜1.02であった。
原料を調製した。市販の高純度Li2CO3、Ta2O5、MgO(ま
たはMg2CO3)の原料粉末を準備した。融液原料として
は、Li 2CO3: Ta2O5の比が0.56:0.44〜0.66:0.34の割
合で準備し、これに、[MgO]/([LiNbO3]+[MgO])で表記し
た[MgO]のモル%が0.1〜5.0となるようにMgO原料粉末を
追加して、混合した。化学量論比組成原料としてLi2C
O3: Ta2O5=0.50:0.50の割合で混合した。次に無添加
の場合と同じように、プレス成形、焼結、単結晶育成を
行った。
を置換していくので、Mgの添加量が増えるに従いLi/Ta
モル比は変化し、得られた結晶のLi/Taモル比は0.95よ
り大きく1.0より小さい範囲にあった。Mg以外にZn、S
c、Inから選ばれる少なくとも一つの元素を添加した場
合には、元素の種類によって結晶内での偏析係数は異な
るため、添加量に対する結晶内含有量は異なるものの、
いずれの添加元素においても、添加元素がLiやTaサイト
を置換していくので、添加元素の添加量が増えるに従い
Li/Taモル比は変化し、得られた結晶のLi/Taモル比は0.
95より大きく1.0より小さい範囲にあった。
温度以上の約750℃に加熱した後、結晶のZ軸方向から約
5〜10V/cmの電圧を印加し、室温まで冷却することで単
一分域化した。単一分域化されたLT単結晶から大きさが
35mm×35mm×50mmのブロック状試料を切り出し、メカノ
ケミカル研磨により表面研磨を行った。試料の光学的均
質性をマッハツェンダー干渉法により評価したところ、
マクロな欠陥や光学的に不均一な部分は見られず、試料
内の屈折率変化は1×10-5以下が得られ光学的均質性に
優れていることが確認された。
て、両面光学研磨された厚み0.5mmの基板上に電界印加
法により周期的分極反転構造を形成した後に、分極反転
部を偏光顕微鏡で詳細に観察した様子の一例を示してい
る。分極反転の周期は約3〜4μmで、波長850nm近傍の基
本光の波長に応じて擬似位相整合するように設計した。
基板1に用いた場合の様子である。図1 (b)は、基板4
に上述した定比組成に近い組成のLT単結晶を用いた場
合の様子である。両者の違いは明らかで、図1(a)で
は、周期的分極反転部2に非常に大きな光学歪み3があ
るのが観察されたのに対し、図1 (b)では、偏光顕微鏡
下で光は均一に透過し周期的分極反転部5に歪みは観察
されなかった。
さの分極反転を形成し、基板の違いによる分極反転境界
部での歪みを観察し、レーザ干渉法により分極反転境界
での屈折率の大きさを評価すると従来結晶では8×10-3
〜3×10-4と非常に大きな屈折率変化が観察された。一
方、本発明での結晶基板を用いた光機能素子では、熱処
理を行わなくても光学的歪みは1×10-4以下が得られる
ことが確認された。
ーム照射法および電界印加法で周期的分極反転構造を形
成した、長さ5mm、厚さ0.5mmの各種組成のLT単結晶の両
端面を鏡面研磨し、分極反転部を伝搬していく光が結晶
内部で散乱や歪みなどで引き起こされる伝搬ロスの大き
さを評価した結果を示したグラフである。
はコングルエント組成LTに対し、わずかなモル分率の変
化であるが、化学量論比に近づくに従いその結晶特性は
大幅に異なる。特に、結晶のLi/Taのモル比が0.95〜1.0
2の範囲で従来のコングルエント組成の結晶とは大きく
異なる光学特性を有する。
時の印加電圧、電極の形状、電極材質、温度などによっ
て伝搬ロスにはばらつきが見られた。Li/Taモル比が0.9
4のコングルエント組成結晶では、伝搬ロスは3.5〜6%
と非常に大きいことが分かった。これに対して、Li/Ta
モル比が0.95で1〜2%、0.98で0.5%以下のように定比
に近い無添加のLT単結晶や、3モル%程度のMgOを含むLi
/Taモル比0.95のLT単結晶など多くの結晶で伝搬ロスが2
%以下が得られ、中には0.1%以下の伝搬ロスの良質な
分極反転結晶も得られた。
ーム照射法および電界印加法で周期的分極反転構造を形
成した、長さ5mm、厚さ0.5mmの結晶の分極反転部を通過
していく光の伝搬ロスが熱処理によってどれだけ低減で
きるかを示したグラフである。従来のコングルエント組
成結晶を用いると分極反転処理後は、散乱や光学歪みな
どの影響によりロスは非常に大きく、コングルエントLT
結晶では、少なくとも100℃以上の高温度に基板を加熱
してやらないとロスが下がらない結果が得られた。これ
に対して、本発明の定比組成に近いLT単結晶を基板に用
いた光機能素子の場合には熱処理をしなくてもロスは小
さく光機能素子の性能向上が期待できることが明らかで
ある。
誘電相において、LiとTaイオンは電気的中性位置に配置
しているが、キュリー温度以下の強誘電相ではLiおよび
Taイオンが+zもしくは-z方向に少しずれる。このイオン
のずれの方向によってドメインの正負の分極方向が決定
されている。分極反転構造を持つ光機能素子では、高電
界を加えることでこのイオンを低温で強制的に移動させ
ることが必要になる。
Liサイトに入った過剰のTaを移動させることは容易では
ないため、分極反転には大きな印加電圧が必要となる。
さらに、高電界を印加して強制的に分極を反転させるわ
けであるから、その境界部には大きな光学的歪みが導入
されると考えられる。現状では、本発明の光機能素子で
見られた光学的歪みや伝搬ロスの低減の原因について、
結晶の反転電圧や内部電界の大きさだけでは十分な説明
ができているわけではない。
来のコングルエント組成結晶よりも、不定比欠陥を1桁
以上低減した光学歪みやロスの小さな定比組成に近いLT
単結晶が分極反転素子の基板として優れることは明らか
である。このことから、強誘電体単結晶基板として定比
組成に近い組成のLT単結晶を用いることで、分極反転を
形成しても反転境界部での光学的歪みを示さず、分極反
転境界部での光学的歪みを除去するための加熱工程なし
に、分極反転境界部の屈折率変化が1×10-4以下が得ら
れるため、分極反転構造の制御性に優れ、レーザ光の散
乱がなく伝搬ロスが小さく光機能素子として優れた特性
を有する。
に説明する。 実施例1 LT単結晶を光波長変換素子に適用した場合の特性につい
て説明する。図4は、定比組成に近い単結晶(Li/Taモル
比が0.98〜1.02の無添加LT単結晶)を基板6に用いて、
基板6上に分極反転領域7、周期的分極反転幅8の周期
的分極反転構造を形成したQPMデバイスの概略構成図
である。両面光学研磨された厚み0.30mm〜5.0mmの基板6
の+z面に櫛形電極と平行電極をパターニングした。周
期は約3〜4μmで、波長約850nm近傍の基本波に対して擬
似位相整合するように設計された。上記組成の結晶基板
の−z面は、電極を全面に蒸着した。櫛形電極と平行電
極の間、および櫛形電極と−z面の裏面電極に、それぞ
れ1.5〜3kV/mm程度の従来のコングルエント結晶より1/7
以下程度の低い電界を印加して、絶縁破壊なしに周期的
分極反転領域7を形成した。
の分極反転部を偏光顕微鏡で詳細に観察したが光学的歪
みは見られなかった。また、分極反転部に波長可変レー
ザ9からレーザ光をレンズ10を通して通過させたが、
レーザ光の散乱は全く観察されず、このため、熱処理は
全く不要で、しかも高効率の波長変換が得られた。用い
たLT結晶は予め分極状態は非常に均一化されている。結
晶に周期状の分極反転を形成する際にも、定比組成に近
いLT単結晶においては、結晶の均一性に優れているた
め、均一な分極反転構造の形成が可能になる。
LT結晶を基板として用いたときに見られた問題は解決さ
れていた。さらに、分極反転構造を形成した後、結晶を
取り外し、断面となる結晶のy面を研摩、フッ酸・硝酸
の混合液でエッチングして、分極の反転の様子を調べ
た。周期分極反転幅比その分極の形は印加電圧のパルス
幅や電流を最適化することで、試料全体にわたり周期分
極の分極反転幅比を理想的な比に精度よく作成すること
ができていることが確認された。
の試料についても同様に高精度に形成が可能であった。
しかも光学的歪みは見られず、伝搬損失も0.2%以下と
非常に少なかった。これらの厚い試料では、特に、分極
反転後の熱処理が不要なことは大きなメリットとなっ
た。これは、1mm以上の厚さを持つ試料では、部分的な
結晶のマクロな欠陥や、電極の不均一、熱的な不均一が
あると、光学的歪みを除去する熱処理中に分極反転境界
部が容易に移動したり、焦電効果で結晶が破壊してしま
う問題があったからである。
一性と分極反転制御性に優れた光機能素子は、特に伝搬
ロスの小さなことが要求される内部共振器型の波長変換
素子として最適であると考えられる。
して、波長可変高出力Tiサファイヤレーザ(波長850n
m)を用いて行い、高効率の光波長変換が確認できた。
その様子を図5に示す。従来のコングルエント組成LT結
晶を基板に用いた場合、熱処理前ではほとんど効率良い
波長変換は得られない。熱処理により変換効率が改善さ
れる様子が見られたが、本発明の光機能素子ではより高
い変換効率が得られている。
な理由として考えられる。さらに、基板の非線形光学定
数が大きいことに加え、光学的歪みがなく、かつ熱処理
不要のため分極反転構造の完全性がより高いことも高性
能な光機能素子が得られるのに寄与していると考えられ
る。
基本波に対して青色光を発生するQPM-SHG素子を作成し
た実施例に付いて詳しく述べたが、本発明によれば、基
本波がこの二つの波長に限ることはなく、LT単結晶が透
明でかつ位相整合が可能である波長域に関して適用する
ことが可能である。
転させ、可視から近赤外域の波長を持った入射レーザの
波長を短波長化あるいは長波長化させる本発明の光機能
素子は第二高調波発生素子に限らず、光パラメトリック
発振素子や差周波、和周波発生素子をはじめ、光スイッ
チや光変調器など分極反転構造を利用する高性能光素子
を実現することが可能である。その応用も、さらにはリ
モートセンシング、ガス検知をはじめとする応用分野
や、波長ミキサーやパルス成形素子などの光通信分野へ
の適用も可能である。
ュリー温度以下の温度において分極反転構造を形成する
実施例として、電圧印加法を用いたLT単結晶の光機能素
子について説明したが、キュリー温度以下の温度におけ
る分極反転構造を形成する方法として、電子ビーム走査
照射法であっても同様の効果が得られる。
単結晶)を基板に用いて、レンズやプリズム状の分極反
転構造を作製し電気光学効果を利用した偏向素子や、シ
リンドリカルレンズ、ビームスキャナー、スイッチなど
の光素子を製作した。図6および図7は、それぞれレン
ズ14およびプリズム9状の分極反転領域13、18を
作成し、作成した電気光学効果を利用して単結晶内に入
射された半導体レーザ12、17からのレーザ光を制御
するフォーカシングおよびスキャンニングを行う光機能
素子の概略構成図である。直径1.5インチ、厚み0.2〜3.
0mm、両面研摩されたz-カットの上述したLT単結晶を準
備し、両z面に厚さ約0.2ミクロンのAl電極をスパッタ
リングにより形成し、リソグラフを用いて、レンズやプ
リズム状パターンを形成した。その後、+z面にパルス
状の印加電圧15、20を約1.5〜3kV/mm印加し分極を
反転させた。
微鏡で詳細に観察したが光学的歪みは見られなかった。
また、分極反転部にレーザ光を通過させたが、レーザ光
の散乱は全く観察されず、このため、熱処理は全く不要
で、しかも光機能素子が得られた。用いたLT結晶は予め
分極状態は非常に均一化されている。さらに結晶の端面
を鏡面研磨仕上げを行い、レーザ光の入出射面とした。
を形成したLT単結晶の電気光学効果を利用した光素子の
性能は、レンズやプリズム状の分極反転構造の設計や分
極反転構造の作製プロセスの精度、および材料の持つ電
気光学定数の大きさで決定された。本実施例のレンズや
プリズム状パターンの分極反転構造で、特筆すべきこと
は分極反転性境界での伝搬ロスと光学的歪みがなく、か
つ分極反転性の制御が非常に容易であることから良好な
素子特性が得られたことである。
が短くなり反転構造が複雑になると、精度の良いレンズ
やプリズム状の分極反転構造の作製は困難で、かつ熱処
理が必要であった。これに対し、定比組成に近いLT単結
晶を、分極反転構造を利用した光機能素子用途として用
いることにより、光機能素子の高精度な分極反転の形成
が可能であった。
も大きな電気光学定数r33を有しているので、より小さ
な動作電圧でより優れたデバイス性能が得られた。例え
ば偏向素子の場合には約600V/mmの電圧で約6°と大きな
偏向角が得られた。また、約100V/mm近傍で動作するレ
ンズや、約500V/mmでのスイッチング動作も得られた。
ュリー温度以下の温度において分極反転構造を形成する
実施例として、電圧印加法を用いたLT単結晶の光機能素
子について説明したが、キュリー温度以下の温度におけ
る分極反転構造を形成する方法として、電子ビーム走査
照射法であっても同様の効果が得られる。
ば、強誘電体単結晶基板の一部に、キュリー温度以下の
温度において、電子ビーム走査照射法、または電圧印加
法を用いて分極反転構造を形成し、この分極反転部を通
過した光を制御する光機能素子において、強誘電体単結
晶としてLi/Taのモル比が0.95〜1.02の範囲の定比組成
に近い組成のLT単結晶を用いることによって、2%以下
の伝搬ロスが得られ、自発分極の方向反転に伴う分極反
転境界部での光学的歪みを除去するための加熱工程なし
に、分極反転境界部の屈折率変化が1×10-4以下を得る
ことができるため、分域境界で歪みがなく、かつ光学的
均質性と分極反転制御性とに優れた素子が実現できるた
め、光機能素子特性の大幅な向上が期待できる。これに
より、本発明は、レーザ光を利用した光情報処理、光加
工技術、光通信技術、光計測制御等々の分野での光機能
素子の実用化を促進させる大きな効果をもたらす。
透過偏光観察した外観図であり、(a)は、従来のコング
ルエント組成LN結晶基板、(b)は、定比組成に近いLN結
晶基板を示す。
スの関係を示したグラフ。
伝搬ロスの関係を示したグラフ。
図。
フ。
Claims (11)
- 【請求項1】 強誘電体単結晶基板の一部に、電子ビー
ム走査照射法または電圧印加法を用いてキュリー温度以
下の温度で分極反転構造を形成し、この分極反転部を通
過した光を制御する光機能素子であって、該単結晶はLi
TaO3結晶であり、該LiTaO3結晶は、Li/Taのモル比が0.9
5 〜 1.02 の範囲であり、該 LiTaO 3 結晶を単一分域化する
ための熱処理が施された後に、該 LiTaO 3 結晶の光学的歪
みを緩和するための、さらなる熱処理が施されていない
か、または、100℃以下の温度で熱処理が施されてお
り、該Li/Taのモル比は、該分極反転構造を形成直後の
分極反転部を通過させた光の伝搬ロスが2%以下の所望
の値となるように、該 0.95 〜 1.02 の範囲から選択される
ことを特徴とする光機能素子。 - 【請求項2】 強誘電体単結晶基板の一部に、電子ビー
ム走査照射法または電圧印加法を用いてキュリー温度以
下の温度で分極反転構造を形成し、この分極反転部を通
過した光を制御する光機能素子であって、該単結晶はLi
TaO3結晶であり、該LiTaO3結晶は、Li/Taのモル比が0.9
5 〜 1.02 の範囲であり、該 LiTaO 3 結晶を単一分域化する
ための熱処理が施された後に、該 LiTaO 3 結晶の光学的歪
みを緩和するための、さらなる熱処理が施されていない
か、または、100℃以下の温度で熱処理が施されてお
り、該Li/Taのモル比は、分極反転境界部の屈折率変化
が1×10-4以下の所望の値となるとなるように、該 0.95
〜 1.02 の範囲から選択されることを特徴とする光機能素
子。 - 【請求項3】 前記光機能素子に用いる強誘電体単結晶
基板は、原料連続供給二重るつぼで育成されることを特
徴とする請求項1または2に記載の光機能素子。 - 【請求項4】 前記光機能素子に用いる強誘電体単結晶
基板は、原料連続供給二重るつぼで育成したMg,Zn,Sc,I
nから選ばれる少なくとも一つの元素を0.1〜4.8モル%
ドーピングして含有するLi/Taのモル比が0.95〜1.00の
範囲のLiTaO3結晶であることを特徴とする請求項3に記
載の光機能素子。 - 【請求項5】 両面光学研磨された厚み0.30mm〜5.0mmの
強誘電体単結晶基板の一部に、1.5〜3kV/mmの電界を印
加する電圧印加法を用いてキュリー温度以下の温度で分
極反転構造を形成し、非線形光学効果を利用して周期的
反転分極構造を持つ単結晶内に入射したレーザ光の波長
変換を行う光波長変換素子であって、該単結晶はLiTaO3
結晶であり、該LiTaO3結晶は、Li/Taのモル比が0.95 〜
1.02 の範囲であり、該 LiTaO 3 結晶を単一分域化するため
の熱処理が施された後に、該 LiTaO 3 結晶の光学的歪みを
緩和するための、さらなる熱処理が施されていないか、
または、100℃以下の温度で熱処理が施されており、該L
i/Taのモル比は、該分極反転構造を形成直後の分極反転
部を通過させたレーザ光の伝搬ロスが2%以下、かつ分
極反転境界部の屈折率変化が1×10-4以下の所望の値と
なるように、該 0.95 〜 1.02 の範囲から選択されることを
特徴とするレーザ光の波長変換素子。 - 【請求項6】 前記強誘電体単結晶基板の厚みが1.0mm〜
5.0mmであることを特徴とする請求項5に記載のレーザ
の波長変換素子。 - 【請求項7】 レーザ光の偏向または集光を制御する光
機能素子であって、両面光学研磨された厚み 0.20mm 〜 3.
0mm の、 1.5 〜 3kV/mm のパルス状の電圧を印加する電圧印
加法を用いてキュリー温度以下の温度で形成された分極
反転部と非分極反転部とを有し、該分極反転部の形状
は、プリズム状またはレンズ状である、強誘電体単結晶
基板と、 該光学研磨された面それぞれの該分極反転部に形成され
た電極と、 該電極を介して該分極反転部にパルス状の電圧を印加す
る電源とを備え、 該強誘電体単結晶基板は、 LiTaO 3 結晶であり、該 LiTaO 3
結晶は、 Li/Ta のモル比が 0.95 〜 1.02 の範囲であり、該 L
iTaO 3 結晶を単一分域化するための熱処理が施された後
に、該 LiTaO 3 結晶の光学的歪みを緩和するための、さら
なる熱処理が施されていないか、または、 100 ℃以下の
温度で熱処理が施されており、該 Li/Ta のモル比は、該
分極反転部の形成直後に該分極反転部を通過した該レー
ザ光の伝搬ロスが 2 %以下、かつ、該分極反転部と該非
分極反転部との境界における該レーザ光の屈折率変化が
1 × 10 -4 以下となるように、該 0.95 〜 1.02 の範囲から選
択され、 該パルス状の電圧を印加する電源が該分極反転部に電圧
を印加することによって、該強 誘電体単結晶基板に生じ
る電気光学効果に基づいて、該分極反転部において該強
誘電体単結晶基板に入射された該レーザ光が偏向する
か、または、該レーザ光が集光する、光機能素子 。 - 【請求項8】 電子ビーム走査照射法または電圧印加法
によりキュリー温度以下の温度での分極反転構造を形成
する強誘電体単結晶基板であって、該単結晶基板はLiTa
O3結晶であり、該LiTaO3結晶は、Li/Taのモル比が0.95
〜 1.02 の範囲であり、該 LiTaO 3 結晶を単一分域化するた
めの熱処理が施された後に、該 LiTaO 3 結晶の光学的歪み
を緩和するための、さらなる熱処理が施されていない
か、または、100℃以下の温度で熱処理が施されてお
り、該Li/Taのモル比は、該分極反転構造を形成直後の
分極反転部を通過させた光の伝搬ロスが2%以下、かつ
分極反転境界部の屈折率変化が1×10-4以下の所望の値
となるように、該 0.95 〜 1.02 の範囲から選択されること
を特徴とする分極反転部を通過した光を制御する光機能
素子用単結晶基板。 - 【請求項9】 強誘電体単結晶基板の一部に、電子ビー
ム走査照射法または電圧印加法を用いてキュリー温度以
下の温度で分極反転構造を形成し、この分極反転部を通
過した光を制御する光機能素子の製造方法であって、該
単結晶としてLiTaO3結晶を用い、その際に、該LiTaO3結
晶のLi/Taのモル比を0.95 〜 1.02 の範囲とすることによ
って、該 LiTaO 3 結晶を単一分域化するための熱処理を施
した後に、該 LiTaO 3 結晶の光学的歪みを緩和するため
の、さらなる熱処理を施していないか、または、100℃
以下の温度で熱処理を施すことで、該分極反転構造を形
成直後の該分極反転部を通過させた該光の伝搬ロスを2
%以下の所望の値まで低減させることを特徴とする光機
能素子の製造方法。 - 【請求項10】 両面光学研磨された厚み0.30mm〜5.0mm
の強誘電体単結晶基板の一部に、1.5〜3kV/mmの電界を
印加する電圧印加法を用いてキュリー温度以下の温度で
分極反転構造を形成し、非線形光学効果を利用して周期
的反転分極構造を持つ単結晶内に入射したレーザ光の波
長変換を行う光波長変換素子の製造方法であって、該単
結晶としてLiTaO3結晶を用い、該LiTaO3結晶のLi/Taの
モル比を0.95 〜 1.02 の範囲とすることによって、該 LiTa
O 3 結晶を単一分域化するための熱処理を施した後に、該
LiTaO 3 結晶の光学的歪みを緩和するための、さらなる熱
処理を施していないか、または、100℃以下の温度で熱
処理を施すことで、該分極反転構造を形成直後の分極反
転部を通過させたレーザ光の伝搬ロスを2%以下、かつ
分極反転境界部の屈折率変化を1×10-4以下の所望の値
まで低減させることを特徴とするレーザ光の波長変換素
子の製造方法。 - 【請求項11】 両面光学研磨された厚み0.2mm〜3.0mm
の強誘電体単結晶基板の一部に、1.5〜3kV/mmのパルス
状の電圧を印加する電圧印加法を用いてキュリー温度以
下の温度で分極反転構造を形成し、電気光学効果を利用
してプリズムまたはレンズ形状に反転した分極構造を持
つ単結晶内に入射されたレーザ光の偏向または集光を制
御する光機能素子の製造方法であって、該単結晶として
LiTaO3結晶を用い、該LiTaO3結晶のLi/Taのモル比を0.9
5 〜 1.02 の範囲とすることによって、該 LiTaO 3 結晶を単
一分域化するための熱処理を施した後に、該 LiTaO 3 結晶
の光学的歪みを緩和するための、さらなる熱処理を施し
ていないか、または、100℃以下の温度で熱処理を施す
ことで、該分極反転構造を形成直後の分極反転部を通過
させたレーザ光の伝搬ロスを2%以下、かつ分極反転境
界部の屈折率変化を1×10-4以下の所望の値まで低減さ
せることを特徴とするレーザ光の偏向または集光を制御
する光機能素子の製造方法。
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北村健二,強誘電体光学結晶のブレークスルー,応用物理,2000年 5月10日,第69巻、第5号,p.511−516 |
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