JP3541434B2 - 塗装方法、塗装装置および被塗物 - Google Patents

塗装方法、塗装装置および被塗物 Download PDF

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    • B05D1/00Processes for applying liquids or other fluent materials
    • B05D1/002Processes for applying liquids or other fluent materials the substrate being rotated

Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、自動車のボディ等の被塗物の表面を塗装する方法、該方法を実施するための装置および上記方法により塗装された被塗物に関し、更に詳しくは、塗料を被塗物の表面にダレ限界厚以上の厚さに塗布すると共に該塗料のダレを防止すべく上記被塗物を略水平方向軸周りに回転させる回転塗装方法、該方法を実施するための装置および上記方法により塗装された被塗物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、自動車ボディ等の被塗物の表面に塗料を塗布して塗装を行う場合、塗料の塗布量を増大して塗膜を厚くすれば塗膜表面の平滑性が向上することが知られている。
【0003】
即ち、塗料を被塗物に塗布した場合、塗膜の表面は塗料の表面張力によって塗膜表面と平行な方向内で左右に引っ張られて自ずと平滑になろうとする。この表面張力による平滑化は塗料の流動性が大きいほど良好に行われ、塗料の流動性は塗料の塗布量(塗膜の厚さ)が大きくなるとそれに応じて大きくなる。従って、塗料の塗布量を多くするとそれに応じて塗料の流動性が増大して塗膜の平滑性が向上し、特に、塗料をダレ限界厚(ダレ限界厚とは、被塗面が略上下方向に延びる面である場合に該被塗面に塗料を塗布した後該被塗面をそのまま上下方向に位置させておくと重力による塗料ダレが生じる最小膜厚を意味する。以下同様。)以上の厚さに塗布すると、塗料が高い流動性を有し、上記表面張力による平滑化が十分に行われ、極めて良好な平滑性を得ることができる。
【0004】
ところが、塗料をダレ限界厚以上の厚さに塗布すると、被塗物が略上下方向に延びる被塗面を有している場合、その被塗面においては重力によって塗料ダレが生じ、この塗料ダレによって塗膜表面の平滑性は大きく損なわれてしまうこととなる。
【0005】
しかるに、塗料を塗布した後被塗物を水平方向軸周りに回転させれば、上記塗料に重力とは反対方向の力を作用させて略上下方向に延びる被塗面における重力による塗料ダレを防止することができる。また、その様に被塗物を水平方向軸周りに回転させれば、上記重力による塗料ダレを防止することができるだけでなく、該回転により上記塗料に対し塗膜表面と平行な方向内での左右方向への力が作用し、これにより上記表面張力による平滑化が助長され、もって極めて優れた平滑性が得られる。
【0006】
そこで、近年、例えば特開平4−227885号公報に記載されている様に、塗膜表面の平滑性を向上させるべく被塗面にダレ限界厚以上の厚さに塗料を塗布すると共に、このダレ限界厚以上の厚さに塗料が塗布された被塗物を塗料塗布後少なくとも塗料ダレが生じ始める前から最早塗料ダレが生じなくなるまでの間、被塗物を略水平方向軸周りに回転させて塗料ダレの発生を防止し、もって塗料ダレの発生を防止しつつ十分な膜厚を得て塗膜表面の平滑性の向上を図るようにしたいわゆる回転塗装と称される塗装方法が提案されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の如き回転塗装について本発明者等が種々検討してみると、塗料をダレ限界厚以上に塗布しかつ被塗物を回転させて塗料ダレが生じないようにしても、必ずしも常に優れた塗膜表面の平滑性が得られるとは限らないことが判明した。
【0008】
この点について、本発明者等が更に検討を行った結果、上記の如き回転塗装においては、塗料を塗布しようとする被塗面即ち下地に微細な凹凸が存在する場合、その凹凸の影響を受けることなく優れた平滑性が得られる場合と、その凹凸の影響を受けて塗膜表面に凹凸が出現し優れた平滑性が得られない場合とがあることを見出だした。
【0009】
本発明の目的は、上記事情に鑑み、上記の如き回転塗装において下地の凹凸の影響を回避して優れた平滑性を得ることの出来る塗装方法、該方法を実施するための装置および上記方法により塗装された被塗物を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
<本願の第1の発明に係る塗装方法>
本願の第1の発明に係る塗装方法は、上記目的を達成するため、
溶剤を含有する塗料を被塗物に塗布する塗布工程と、該塗布工程の後に上記塗料から上記溶剤を蒸発させるセッティング工程と、該セッティング工程の後に上記塗料を硬化させる硬化工程とを備えて成り、上記塗布工程では、上記セッティング工程において上記被塗物の上下方向に延びる面で通常では塗料ダレが生じるであろう厚さ以上の厚さに上記塗料を塗布し、該塗料の塗布後、上記塗料ダレが生じないように上記被塗物を略水平方向軸周りに回転させる塗装方法において、
上記セッティング工程中のいずれかの時点もしくは上記セッティング工程終了時点で、上記塗料が流動性を有したまま該塗料における上記溶剤の占有率30重量%以下にすることを特徴とする。上記溶剤の占有率は10重量%以下であればより好ましい。上記セッティング工程は、上記溶剤を常温で蒸発させるものとすることができる。
【0011】
上記塗料として溶剤を有すると共に加熱により硬化する熱硬化型塗料を使用し、上記硬化工程として塗料を加熱して硬化させる加熱硬化工程を採用することができる。また、上記塗料として溶剤を含有すると共に紫外線照射により硬化する紫外線硬化型塗料を使用し、上記硬化工程として塗料に紫外線を照射して硬化させる紫外線硬化工程を採用することもできる。
【0012】
上記塗料として溶剤を含有すると共に加熱により硬化する熱硬化型塗料を使用し、上記硬化工程として塗料を加熱して硬化させる加熱硬化工程を採用した場合には、上記塗布工程では、上記セッティング工程および上記加熱硬化工程において上記被塗物の上下方向に延びる面で通常では塗料ダレが生じるであろう厚さ以上の厚さに上記塗料を塗布し、上記セッティング工程および上記加熱硬化工程では、上記塗料ダレが生じないように上記被塗物を略水平方向軸周りに回転させる様に構成することができる。
【0013】
上記塗布工程における塗料の塗布は最上層の塗膜を形成するものとすることができる。また、上記被塗物は自動車のボディとすることができる。
【0014】
<本願の第2の発明に係る塗装方法>
本願の第2の発明に係る塗装方法は、上記目的を達成するため、
溶剤を含有すると共に加熱により硬化する熱硬化型塗料を被塗物に塗布する塗布工程と、該塗布工程の後に上記塗料を加熱して硬化させる加熱硬化工程とを備えて成り、上記塗布工程では、上記加熱硬化工程において上記被塗物の上下方向に延びる面で通常では塗料ダレが生じるであろう厚さ以上の厚さに上記塗料を塗布し、該塗料の塗布後、上記塗料ダレが生じないように上記被塗物を略水平方向軸周りに回転させる塗装方法において、
上記加熱硬化工程中のいずれかの時点で、上記塗料が流動性を有したまま該塗料における上記溶剤の占有率30重量%以下にすることを特徴とする。上記溶剤の占有率は10重量%以下であればより好ましい。
【0015】
上記塗布工程と上記加熱硬化工程との間に上記塗布工程において塗布された上記塗料から上記溶剤を蒸発させるセッティング工程を備え、上記塗布工程では、上記セッティング工程および上記加熱硬化工程において上記被塗物の上下方向に延びる面で通常では塗料ダレが生じるであろう厚さ以上の厚さに上記塗料を塗布し、上記セッティング工程および上記加熱硬化工程では、上記塗料ダレが生じないように上記被塗物を略水平方向軸周りに回転させる様に構成することができる。上記セッティング工程は、上記溶剤を常温で蒸発させるものとすることができる。
【0016】
上記塗布工程における塗料の塗布は最上層の塗膜を形成するものとすることができる。また、上記被塗物は自動車のボディとすることができる。
【0017】
<本願の第3の発明に係る塗装方法>
本願の第3の発明に係る塗装方法は、上記目的を達成するため、
加熱により硬化する熱硬化型塗料を被塗物に塗布する塗布工程と、該塗布工程の後に上記塗料を加熱して硬化させる加熱硬化工程とを備えて成り、該加熱硬化工程は、上記塗料の温度を該塗料の反応開始温度まで上昇させる加温を行う加温工程と該加温工程の後において上記塗料の温度を上記反応開始温度以上として該塗料を反応硬化させる反応硬化工程とから成り、上記塗布工程では、上記加温工程において上記被塗物の上下方向に延びる面で通常では塗料ダレが生じるであろう厚さ以上の厚さに上記塗料を塗布し、該塗料の塗布後、上記塗料ダレが生じないように上記被塗物を略水平方向軸周りに回転させる塗装方法において、
上記加温工程では上記塗料の温度を上記反応開始温度まで上昇させる過程で該反応開始温度より低く常温より高い温度であって、上記塗料の流動性を保持しつつ上記溶剤を蒸発させることのできる所定温度に所定時間保持する温度保持加温を行うことを特徴とする。上記被塗物の回転は、上記加温工程および反応硬化工程において行わせることができる。
【0018】
上記塗料として溶剤を含有すると共に加熱により硬化する熱硬化型塗料を使用することができる。その場合は、上記加温工程中のいずれかの時点もしくは上記加温工程終了時点において上記塗料が流動性を有したまま該塗料における上記溶剤の占有率30重量%以下になるように構成することができる。また、この溶剤の占有率は10重量%以下であればより好ましい。
【0019】
上記塗料として溶剤を含有すると共に加熱により硬化する熱硬化型塗料を使用する場合は、上記塗布工程と上記加温工程との間に上記塗布工程において塗布された上記塗料から上記溶剤を蒸発させるセッティング工程を備えた構成とすることができる。この場合においては、上記セッティング工程は、上記溶剤を常温で蒸発させるものとすることができる。また、この場合においては、上記塗布工程では、上記セッティング工程および上記加温工程において上記被塗物の上下方向に延びる面で通常では塗料ダレが生じるであろう厚さ以上の厚さに上記塗料を塗布し、上記セッティング工程および上記加温工程では、上記塗料ダレが生じないように上記被塗物を略水平方向軸周りに回転させる様に構成することができる。さらに、この場合においては、上記被塗物の回転は、上記反応硬化工程においても行うことができる。
【0020】
上記所定温度は上記所定時間に応じて設定することができる。また、上記所定時間は上記所定温度に応じて設定することができる。上記加温工程は、それぞれ独立して温度制御可能な熱源を有する加熱領域を所定方向に複数個並設して成る分割加熱炉内に上記被塗物を上記所定方向に移動させることによって上記加温を行う様に構成することができる。また、上記加温工程は、遠赤外線により上記加温を行う様に構成することができる。
【0021】
上記塗布工程における塗料の塗布は最上層の塗膜を形成するものとすることができる。また、上記被塗物は自動車のボディとすることができる。
【0022】
<本願の第4の発明に係る塗装装置>
本願の第4の発明に係る塗装装置は、上記目的を達成するため、
加熱により硬化する熱硬化型塗料を被塗物に塗布する塗布手段と、上記塗料を塗布した後に該塗料を加熱して硬化させる加熱硬化手段とを備えて成り、該加熱硬化手段は、上記塗料の温度を該塗料の反応開始温度まで上昇させる加温を行う加温手段と該加温の後において上記塗料の温度を上記反応開始温度以上として該塗料を反応硬化させる反応硬化手段とから成り、上記塗布手段は上記加温手段による加温中に上記被塗物の上下方向に延びる面で通常では塗料ダレが生じるであろう厚さ以上の厚さに上記塗料を塗布するものであり、かつ該塗料の塗布後上記塗料ダレが生じないように上記被塗物を略水平方向軸周りに回転させる回転手段を有する塗装装置において、
上記加温手段により上記塗料の温度を上記反応開始温度まで上昇させる過程で上記塗料の温度を上記反応開始温度より低く常温より高い温度であって、上記塗料の流動性を保持しつつ上記溶剤を蒸発させることのできる所定温度に所定時間保持する温度保持加温を行うように上記加温手段を制御する加温制御手段を備えていることを特徴とする。上記被塗物の回転手段は、上記加温手段による加温時および反応硬化手段による塗料の反応硬化時に上記被塗物を回転させるものとすることができる。
【0023】
上記塗料として溶剤を含有すると共に加熱により硬化する熱硬化型塗料を使用することができる。その場合は、上記加温制御手段は上記加温手段による加温中のいずれかの時点もしくは加温終了時点において上記塗料が流動性を有したまま該塗料における上記溶剤の占有率が30重量%以下になるように上記加温手段を制御するものとすることができる。また、溶剤の占有率が10重量%以下になるように制御するものであればより好ましい。
【0024】
上記塗料として溶剤を含有すると共に加熱により硬化する熱硬化型塗料を使用する場合は、上記塗布手段により塗布された塗料を上記加温手段で加温する前に上記塗料から上記溶剤を蒸発させるセッティングを行うセッティング手段を備えた構成とすることができる。この場合においては、上記セッティング手段は、上記溶剤を常温で蒸発させるセッティングを行なうものとすることができる。また、この場合においては、上記塗布手段は、上記セッティング中および上記加温中において上記被塗物の上下方向に延びる面で通常では塗料ダレが生じるであろう厚さ以上の厚さに塗料を塗布するものとし、上記回転手段は、上記セッティング手段によるセッティング時および上記加温手段による加温時に上記被塗物を回転させるものとすることができる。さらに、この場合においては、上記回転手段は、上記反応硬化手段による塗料の反応硬化時にも上記被塗物を回転させるものとすることができる
【0025】
上記加温手段は、内部を上記被塗物が移動すると共にそれぞれ独立して温度制御可能な熱源を有する加熱領域を上記被塗物の移動方向に複数個並設して成る分割加熱炉により構成することができる。また、上記加温制御手段は、上記分割加熱炉内における上記被塗物の移動速度に応じて上記温度保持加温に供する加熱領域の数を変更制御するものとすることができる。また、上記加温制御手段は、上記分割加熱炉内における上記被塗物の移動速度に応じて上記所定温度を変更制御するものとすることができる。また、上記加温手段は、熱源として遠赤外線照射手段を備えて成るものとすることができる。
【0026】
上記塗布手段による塗料の塗布は最上層の塗膜を形成するものとすることができる。また、上記被塗物は自動車のボディとすることができる。
【0027】
<本願の第5の発明に係る被塗物>
本願の第5の発明に係る被塗物は、上記目的を達成するため、
上記本願の第1,第2もしくは第3の発明に係る塗装方法により塗装したことを特徴とする。上記被塗物は自動車のボディとすることができる。
【0028】
<第1〜第5の発明全体に関する説明>
上記溶剤としては、揮発性の溶剤即ち有機系の溶剤に限らず、水系の溶剤も用い得る。
【0029】
上記「塗料ダレが生じる」とは、塗料が2mm以上タレることを意味する。また、上記「塗料が流動性を有する」とは、塗料が1mm以上タレ得る状態を意味する。この様に定義した理由については後に詳述する。なお、この定義からも理解される様に、塗料ダレが生じ得る状態であれば必ず流動性を有していることになる。
【0030】
上記「上下方向に延びる面で通常では塗料ダレが生じる」とは、上下方向に延びる面に塗料を塗布した場合にその上下面を回転させることなくそのまま上下方向に位置させておくと重力により塗料ダレが生じるつまり塗料が2mm以上タレるという意味である。また、「上記塗料ダレが生じるであろう厚さ」とは、塗料ダレが生じるであろうつまり塗料が2mm以上タレるであろう最小膜厚を意味し、これは前に述べたダレ限界厚に相当する。
【0031】
上記「塗料の塗布後、上記塗料ダレが生じないように上記被塗物を略水平方向軸周りに回転させる」とは、塗料の塗布後において塗料ダレが生じないように、つまり塗料が2mm以上タレることがないように回転させるということであり、少なくとも塗料の塗布後該塗料が2mm以上タレる前から最早塗料が2mm以上タレなくなるまでの間回転させることを意味する。
【0032】
この被塗物の回転は、通常は塗料の塗布後少なくとも塗料が塗料ダレを生じ得る塗料状態である間、好ましくは少なくとも塗料が流動性を有するつまり1mm以上タレ得る塗料状態である間、さらに好ましくは少なくとも塗料が流動性を完全に消失してしまうまでの間行なわれる。具体的には、上記塗料ダレは上記セッティング工程もしくは硬化工程特に加熱硬化工程において生じ得るものであり、セッティング工程において塗料ダレが生じ得る塗料状態である場合は少なくともそのセッティング工程において塗料ダレが生じ得る塗料状態である間、硬化工程において塗料ダレが生じ得る塗料状態である場合は少なくともその硬化工程において塗料ダレが生じ得る塗料状態である間、またセッティング工程と硬化工程との双方において塗料ダレが生じ得る塗料状態である場合は少なくともその両工程において塗料ダレが生じ得る塗料状態である間、被塗物の回転が行われる。勿論、この被塗物の回転は塗料ダレが生じ得ない塗料状態となった後も引き続き行うことができる。
【0033】
上記セッティング工程は、塗料の塗布後被塗物を直ちに硬化工程特に加熱硬化工程に移行させると、塗料は未だ多くの溶剤を含有している状態で塗膜の表面が先に急激に硬化し、その後中に残っている溶剤が硬化した塗膜表面から抜け出して該表面に穴が開く等の問題が生じるので、これを防止するため、塗料の塗布後硬化工程特に加熱硬化工程の前段において溶剤をある程度蒸発させておくためのものである。かかるセッティング工程は、溶剤が有機系溶剤(揮発性溶剤)の場合は通常は常温で所定時間被塗物を放置することによって行われ、溶剤が水の場合は常温より高い温度で所定時間、例えば80℃×5〜7分間被塗物を放置することによって行われる。なお,有機系溶剤の場合もセッティング温度を常温より高くすることも可能であるが、その場合でも通常は40℃以下で行われる。
【0034】
本発明は塗料をダレ限界厚以上の厚さに塗布すると共に塗料ダレを防止すべく被塗物を回転させる回転塗装を前提とするものであり、基本的には上下方向に延びる被塗面を有する被塗物を対象とするものであるが、上下方向に延びる被塗面を有しない被塗物を対象とすることも可能である。
【0035】
<第1の発明に関する説明>上記第1の発明に係る塗装方法は、セッティング工程が設けられ、このセッティング工程において塗料ダレが生じ得る塗料状態であることを前提とするものであり、硬化工程においては塗料ダレが生じ得る塗料状態であってもそうでなくても良い。
【0036】
塗料は溶剤を含有するものであれば良く、加熱により硬化する熱硬化型塗料であっても、紫外線照射により硬化する紫外線硬化型塗料等の加熱以外の方法で硬化する塗料であっても構わない。硬化工程は、塗料が熱硬化型塗料の場合は加熱により塗料を硬化させる加熱硬化工程となり、紫外線硬化型塗料の場合は紫外線照射により塗料を硬化させる紫外線硬化工程となり、それ以外の方法で硬化する塗料の場合は当該方法で硬化させる硬化工程となる。
【0037】
この第1の発明において使用される典型的な塗料は溶剤を含有する熱硬化型塗料であり、一般的な熱硬化型塗料は、加熱によりその固形分が一旦軟化(粘度低下)して高い流動性を示し、その後更なる加熱によって塗料の温度が反応開始温度以上となって架橋反応を開始して硬化するものである。従ってこの様な塗料をセッティング工程において塗料ダレが生じるであろう厚さ以上の厚さに塗布した場合、該セッティング工程における塗料状態は当然に塗料ダレが生じ得る状態であり、セッティング工程の終了時点においては未だ塗料ダレが生じ得る状態である場合と溶剤の蒸発により最早塗料ダレは生じ得ない状態になっている場合とがあるが、いずれの場合であっても加熱硬化工程に移行すると該加熱硬化工程の初期において塗料固形分が軟化してその流動性が増大し塗料ダレが生じ得る状態となり得る。
【0038】
この第1の発明に係る塗装方法は、上述の様に硬化工程において塗料ダレが生じ得る塗料状態である必要はなく、従って塗料は硬化工程において直ちに硬化してしまう場合であっても良い。その様な場合の例としては、上述の紫外線硬化型塗料が紫外線照射により直ちに硬化してしまう場合の他に例えば熱硬化型塗料の場合において加熱により塗料温度がすぐに反応開始温度以上となって軟化する暇なく直ちに硬化してしまう場合を挙げることができる。
【0039】
この第1の発明に係る塗装方法においては、上述のように少なくともセッティング工程においては塗料ダレが生じ得る塗料状態であるものであり、従ってセッティング工程においては上記被塗物の回転が行われる。硬化工程においても塗料ダレが生じ得る塗料状態である場合には該硬化工程においても上記被塗物の回転が行われる。硬化工程においては塗料ダレが生じ得ない塗料状態である場合には該硬化工程においては上記被塗物の回転を行っても行わなくても良い。
【0040】
<第2の発明に関する説明>
上記第2の発明に係る塗装方法は、熱硬化型塗料を用い、加熱硬化工程において塗料ダレが生じ得る塗料状態であることを前提とするものであり、セッティング工程は設けても設けなくても良く、かつセッティング工程を設けた場合、そのセッティング工程においては塗料ダレが生じ得る塗料状態であってもそうでなくても良い。上記熱硬化型塗料としては、上記加熱硬化工程で塗料ダレが生じ得る状態を確保可能な塗料であればどの様な塗料でも使用可能であり、一般的には上記の様な加熱により一旦軟化する塗料が使用されるが、軟化しない塗料でも使用可能である。
【0041】
この第2の発明に係る塗装方法においては、上述のように少なくとも加熱硬化工程においては塗料ダレが生じ得る塗料状態であるものであり、従って加熱硬化工程においては上記被塗物の回転が行われる。セッティング工程が設けられている場合、該セッティング工程においても塗料ダレが生じ得る塗料状態である場合には該セッティング工程においても上記被塗物の回転が行われる。セッティング工程においては塗料ダレが生じ得ない塗料状態である場合には該セッティング工程においては上記被塗物の回転を行っても行わなくても良い。
【0042】
<第3の発明に関する説明>
上記第3の発明に係る塗装方法は、熱硬化型塗料を用い、加熱硬化工程を上述の加温工程と反応硬化工程とで構成し、加温工程において塗料ダレが生じ得る塗料状態であることを前提とし、その加温工程で上述の温度保持加温を行なうものである。セッティング工程は設けても設けなくても良い。セッティング工程を設けた場合、該セッティング工程においては塗料ダレが生じ得る塗料状態であってもそうでなくても良い。上記熱硬化型塗料としては、上記加温工程で塗料ダレが生じ得る塗料状態さえ確保可能な塗料であればどの様な塗料でも使用可能であり、一般的には上記の様な加熱により一旦軟化する塗料が使用されるが、軟化しない塗料でも使用可能である。
【0043】
この第3の発明に係る塗装方法においては、上述のように少なくとも加温工程においては塗料ダレが生じ得る塗料状態であるものであり、従って加温工程においては上記被塗物の回転が行われる。セッティング工程が設けられている場合には、該セッティング工程においても塗料ダレが生じ得る塗料状態である場合には該セッティング工程においても上記被塗物の回転が行われる。セッティング工程においては塗料ダレが生じ得ない塗料状態である場合には該セッティング工程においては上記被塗物の回転を行っても行わなくても良い。また、上記いずれの場合も、反応硬化工程においても上記被塗物の回転を行うことかできる。
【0044】
<第4の発明に関する説明>
上記第4の発明に係る塗装装置は、上記第3の発明に係る塗装方法を実施するための装置である。
【0045】
【作用および発明の効果】
<回転塗装による塗膜表面の平滑化>
上述の様に、塗料をダレ限界厚以上の厚さに塗布すると共に被塗物を水平方向軸周りに回転させる回転塗装を行えば、先ず塗料をダレ限界厚以上の厚さに塗布したことにより塗料が高い流動性を有するので表面張力による優れた平滑性が得られ、また被塗物を水平方向軸周りに回転させることにより塗料をダレ限界厚以上の厚さに塗布した場合に生じる塗料ダレを防止しつつ更に該回転により塗膜表面の平滑化を助長し、もってきわめて優れた塗膜表面の平滑性が得られる。
【0046】
<塗膜表面における下地の影響>
しかしながら、上記の如き回転塗装について種々検討してみると、その様な回転塗装であっても常に優れた平滑性が得られるとは限らず、本発明者等はこの点について鋭意研究した結果、塗料をダレ限界厚以上の厚さに塗布しかつ被塗物を水平方向軸回りに回転させることによって塗膜表面が十分に平滑になっていても、その塗膜表面が流動性を消失した後において溶剤の蒸発量が大きいと塗膜の収縮量が大きく、この収縮量が大きいとその収縮に伴なって下地の凹凸の影響が塗膜表面に出現してその平滑性が阻害され、収縮量が小さいと下地の凹凸の影響が塗膜表面に出現する割合が小さく、塗膜表面の平滑性はそのまま維持されることを見出だした。
【0047】
より具体的には、塗料が溶剤の蒸発や塗料固形分の粘度の低下等によって流動性を消失した後における塗膜の収縮量が小さいほど下地の凹凸の影響が塗膜表面に出現する割合が小さくなり、この収縮量は塗料中に含まれる溶剤の量によってほぼ定まり、塗料が流動性を消失した時点で溶剤の塗料中における占有率が30重量%以下であれば十分に下地の凹凸の影響を回避して従来の塗装方法で得られていた平滑性よりも良好な平滑性を得ることができ、また上記溶剤の占有率が10重量%以下であればさらに優れた平滑性を得ることができることを見出だした。
【0048】
即ち、塗料が流動性を消失した後における塗膜の収縮量が大きければ下地凹凸の影響の出現割合が大きく、塗膜収縮量が小さければ小さい程下地凹凸の影響の出現割合が小さくなる。そして、もし塗料が流動性を消失した後において塗膜の収縮量が大きくそれによって塗膜表面に下地凹凸の影響が出現すると、塗料は既に流動性を消失しているので表面張力による自己平滑化能力を有しておらず、たとえ被塗物を回転させていてもその塗膜表面に出現した凹凸を修復して平滑化することはできず、該凹凸はそのまま残存して塗膜表面の平滑性が損なわれこととなり、一方、塗料が流動性を消失した後の収縮量が小さければ塗膜の収縮による下地凹凸の影響出現は回避され,回転塗装により得られた上記塗膜表面の優れた平滑性はそのまま維持される。
【0049】
本発明は、上記知見に基づいて成されたものであり、回転塗装において塗膜表面が平滑化した状態の下で塗料が流動性を消失することを前提とし、この場合において塗料が流動性を消失した後における塗膜の収縮量を下地凹凸の影響が出現しない程度まで小さくし、即ち塗料が流動性を消失した時点での溶剤量を下地凹凸の影響が出現しない程度まで少なくし、つまり溶剤の占有率を30重量%もしくは10重量%以下とし、もって下地凹凸の影響出現を回避して回転塗装により得られた塗膜表面の平滑性を維持しようとするものである。
【0050】
ところで、下地凹凸の影響を受けることなく塗膜表面の十分な平滑性を得るためには、上述のように回転塗装によって塗膜表面が十分な平滑性を有する状態下で塗料が流動性を消失し、その消失時点で溶剤の占有率が30重量%もしくは10重量%以下であることが必要である。
【0051】
しかるに、回転塗装は少なくとも塗料ダレが生じなくなるまで被塗物を回転させることにより塗膜表面の十分な平滑性が得られるものであるから、回転中に塗料が流動性を消失する場合は勿論のこと、回転が終了した後に塗料が流動性を消失する場合であっても、その消失時点では必ず塗膜表面は十分な平滑性を有している(回転終了時点では今だ塗料が流動性を有していても、その回転終了時点では塗料は少なくとも塗料ダレが2mm以下という流動性が極めて小さい状態となっているので、その後流動性を消失するまでの間は十分に塗膜表面の平滑性が維持される)。
【0052】
従って、回転塗装においては、「塗料がいずれかの時点において流動性を有しかつ溶剤の占有率が30重量%もしくは10重量%以下」であれば、その後塗料が流動性を最終的に消失する時点では必ず溶剤の占有率は30重量%もしくは10重量%以下となり、かつその流動性消失時点では塗膜表面は十分な平滑性を有していることとなるので、「塗料がいずれかの時点において流動性を有しかつ溶剤の占有率が30重量%もしくは10重量%以下」ということは、「塗膜表面が十分な平滑性を有する状態下で塗料が流動性を消失し、その消失時点で溶剤の占有率が30重量%もしくは10重量%以下」ということと同義である。
【0053】
なお、本発明においては、上記のように、塗料ダレが生じるとは塗料が2mm以上タレることを意味し、塗料が流動性を有するとは塗料が1mm以上タレ得る状態を意味すると定義した。
【0054】
上記被塗物に塗料を塗料ダレが生じ得る厚さ以上の厚さに塗布するのは、そのように多量に塗布することによって塗料に十分な流動性を付与し、それによって回転塗装で十分な塗膜表面の平滑性を得るためであり、この回転塗装によって十分な塗膜表面の平滑性を得るために必要な塗料の流動性は塗料が2mm以上タレ得る流動性であることから上記のごとく定義した。つまり、塗料が2mm以上タレ得る状態でないと流動性が十分でなく、回転塗装を行っても十分な塗膜表面の平滑性を得ることは出来ず、この塗料が2mm以上タレ得るということは、回転塗装により十分な塗膜表面の平滑性を得るための基本条件である。
【0055】
また、上記塗料が流動性を有する時点で溶剤の占有率が30重量%もしくは10重量%以下にするのは、塗料が流動性を消失した後に塗膜が大きく収縮して下地凹凸の影響が塗膜表面に出現すると、塗料は既に流動性を消失しているので表面張力による自己平滑化能力を有しておらず、下地凹凸の影響により塗膜表面に出現した凹凸を修復して平滑化することはできず、該凹凸はそのまま残存して塗膜表面の平滑性は損なわれ、従って自己平滑化が可能な流動性を有している時点において塗膜が収縮しても下地凹凸の影響が出現しない程度まで溶剤量を減少させておくことが必要であるからであり、かかる自己平滑化が可能な流動性は、上記塗料ダレが生じ得る流動性に至らない微小な流動性で良く、数知的には塗料が1mm以上タレ得る流動性で良いことから、上記のごとく定義した。
【0056】
<第1の発明にかかる塗装方法>
第1の発明にかかる塗装方法は、上記の様に、セッティング工程が設けられ、少なくともこのセッティング工程において塗料が塗料ダレを生じ得る状態である回転塗装を対象とするものである。
【0057】
この場合は、セッティング工程中のいずれかの時点もしくはセッティング工程終了時点において、塗料が流動性を有しかつ該塗料における溶剤の占有率が30重量%以下になるようにすれば、その後のセッティング工程もしくは硬化工程等において塗料が流動性を消失した時点における溶剤の占有率は必ず30重量%以下となり、従ってその流動性を消失した時点において残存している溶剤が蒸発して塗膜の収縮が生じても、その収縮は小さくそれによって下地凹凸が塗膜表面に影響を及ぼす程度は非常に小さく、よって下地凹凸の影響の少ない良好な平滑性を得ることができる。
【0058】
本願の第1の発明に係る塗装方法は、上記の様に、セッティング工程において被塗物の上下方向に延びる面で通常では塗料ダレが生じるであろう厚さ以上の厚さに塗料を塗布し、該塗料の塗布後、上記塗料ダレが生じないように被塗物を略水平方向軸周りに回転させる塗装方法において、セッティング工程中のいずれかの時点もしくはセッティング工程終了時点において塗料が流動性を有しかつ該塗料における溶剤の占有率が30重量%以下になるように塗装条件を設定して成るので、常に下地凹凸の影響の少ない良好な平滑性を得ることができる。
【0059】
上記溶剤の占有率が上記30重量%以下に代えて10重量%以下になるようにすれば、更に下地凹凸の影響を回避してより優れた平滑性を得ることができる。
【0060】
上記塗料として溶剤を含有すると共に加熱により硬化する熱硬化型塗料を使用し、上記硬化工程として塗料を加熱して硬化させる加熱硬化工程を採用した場合は、セッティング工程および加熱硬化工程において被塗物の上下方向に延びる面で通常では塗料ダレが生じるであろう厚さ以上の厚さに塗料を塗布し、セッティング工程および加熱硬化工程の双方で上記塗料ダレが生じないように被塗物を略水平方向軸周りに回転させる様に構成することができ、その場合は加熱硬化工程中のいずれかの時点で塗料が流動性を有しかつ該塗料における溶剤の占有率が30重量%以下になるようにしても同様に下地凹凸の影響を受けない優れた平滑性を得ることが出来るが、その様に加熱硬化工程で流動性を有するものであっても、セッティング工程において塗料が流動性を有しかつ該塗料における溶剤の占有率が30重量%以下になるように塗装条件を設定しておけば、その後の加熱硬化工程での塗料の状態の如何にかかわら確実に下地凹凸の影響を受けない優れた平滑性を得ることができる。
【0061】
上記塗料として溶剤を有すると共に紫外線照射により硬化する紫外線硬化型塗料を使用し、上記硬化工程として塗料に紫外線を照射して硬化させる紫外線硬化工程を採用した場合は、塗料はこの紫外線硬化工程で直ちに流動性を消失して硬化してしまうので、セッティング工程において塗料が流動性を有しかつ該塗料における溶剤の占有率が30重量%以下になるように塗装条件を設定しておかなければならず、かつそうすることにより下地凹凸の影響を受けない優れた平滑性を得ることができる。
【0062】
<第2の発明にかかる塗装方法>
第2の発明にかかる塗装方法は、上記の様に、少なくとも加熱硬化工程において塗料が塗料ダレを生じ得る状態である回転塗装を対象とするものである。
【0063】
この場合は、加熱硬化工程中のいずれかの時点において、塗料が流動性を有しかつ該塗料における溶剤の占有率が30重量%以下になるようにすれば、その後この加熱硬化工程で塗料が流動性を消失した時点における溶剤の占有率は必ず30重量%以下となり、従って流動性を消失した時点において残存している溶剤が蒸発して塗膜の収縮が生じても、その収縮は小さくそれによって下地凹凸が塗膜表面に影響を及ぼす程度は非常に小さく、よって下地の凹凸影響の少ない良好な平滑性を得ることができる。
【0064】
本願の第2の発明に係る塗装方法は、上記の様に、加熱硬化工程において被塗物の上下方向に延びる面で通常では塗料ダレが生じるであろう厚さ以上の厚さに塗料を塗布し、該塗料の塗布後、上記塗料ダレが生じないように被塗物を略水平方向軸周りに回転させる塗装方法において、加熱硬化工程中のいずれかの時点において塗料が流動性を有しかつ該塗料における溶剤の占有率が30重量%以下になるように塗装条件を設定して成るので、常に下地凹凸の影響の少ない良好な平滑性を得ることができる。
【0065】
上記溶剤の占有率が上記30重量%以下に代えて10重量%以下になるようにすれば、更に下地凹凸の影響を回避してより優れた平滑性を得ることができる。
【0066】
上記セッティング工程を備えているものにおいては、セッティング工程および加熱硬化工程の双方において被塗物の上下方向に延びる面で通常では塗料ダレが生じるであろう厚さ以上の厚さに塗料を塗布し、セッティング工程および加熱硬化工程の双方で上記塗料ダレが生じないように被塗物を略水平方向軸周りに回転させる様に構成することができ、その場合においても、加熱硬化工程中のいずれかの時点において塗料が流動性を有しかつ該塗料における溶剤の占有率が30重量%以下になるように塗装条件を設定しておけば、セッティング工程中の塗料状態がいかなるものであっても、常に下地凹凸の影響の少ない良好な平滑性を得ることができる。
【0067】
<第3の発明にかかる塗装方法>
第3の発明にかかる塗装方法は、上記の様に、加熱硬化工程を加温工程と反応硬化工程とで構成し、少なくとも加温工程において塗料が塗料ダレを生じ得る状態である回転塗装を対象とするものである。
【0068】
この場合は、上記加温工程において、塗料の温度を反応開始温度(塗料が反応を開始して硬化し始める温度)まで上昇させる過程で該反応開始温度より低く常温より高い所定温度に所定時間保持する温度保持加温を行えば、通常の加熱硬化工程の様に塗料の温度を反応開始温度まで直線的に上昇させるものと比較して、塗料がより高い流動性を有する状態を所定時間確保することができ、塗料がより高い流動性を有するということは上記塗料の表面張力および被塗物の回転により塗料に作用する力による平滑化がより促進される状態であるということであり、この平滑化がより促進される状態を所定時間維持することにより極めて優れた平滑化が達成され、下地凹凸の影響が少ない良好な塗膜表面の平滑性が得られる。
【0069】
本願の第3の発明に係る塗装方法は、上記の様に加熱硬化工程を、塗料の温度を該塗料の反応開始温度まで上昇させる加温を行う加温工程と該加温工程の後において上記塗料の温度を上記反応開始温度以上として該塗料を反応硬化させる反応硬化工程とで構成し、加温工程において被塗物の上下方向に延びる面で通常では塗料ダレが生じるであろう厚さ以上の厚さに塗料を塗布し、該塗料の塗布後、上記塗料ダレが生じないように被塗物を略水平方向軸周りに回転させる塗装方法において、上記加温工程では塗料の温度を反応開始温度まで上昇させる過程で該反応開始温度より低く常温より高い所定温度に所定時間保持する温度保持加温を行う様に構成されているので、該温度保持加温により平滑化がより促進され、下地凹凸の影響が少ない良好な塗膜表面の平滑性が得られる。
【0070】
上記熱硬化型塗料として溶剤を含有すると共に加熱により硬化する塗料を使用した場合には、加温工程中のいずれかの時点もしくは加温工程の終了時点において塗料が流動性を有しかつ溶剤の占有率が30重量%以下になるように、好ましくは10重量%以下になるようにすれば、それによって上述の様に流動性を消失した後の塗膜の収縮量を小さくでき、それによってさらに下地凹凸の影響を小さくし、より優れた塗膜表面の平滑性を得ることができる。
【0071】
特に、この様に反応開始温度より低く常温より高い所定温度に所定時間保持する温度保持加温を行なえば、塗料の流動性を保持しつつより多くの溶剤を蒸発させることができ、それによって通常の加熱硬化工程の様に塗料の温度を反応開始温度まで直線的に上昇させるものと比較して、塗料が流動性を消失した時点の溶剤量をより小さくすることができ、下地凹凸の影響を殆んど受けない極めて良好な塗膜表面の平滑性を得ることができる。より具体的には、通常の加熱硬化工程では、加熱炉内の雰囲気温度が塗料の反応開始温度以上とされ、塗料の温度は被塗物の熱容量に対して成り行きで上昇し、この様に成り行きで直線的に上昇する場合、塗料の温度は短時間で反応開始温度に到達して塗料の反応硬化による粘性上昇(流動性阻害)を引き起こすので、流動性を保ちながら溶剤量を10重量%以下にするのは困難であるが、上記の温度保持加温を行えば、塗料の温度を反応開始温度より低く常温より高い所定温度で所定時間保持することにより塗料が反応硬化することなく流動性を維持した状態の下で十分に溶剤を蒸発させることができるので、該塗料が流動性を消失した時点の溶剤量を10重量%以下とすることが可能であり、それによって温度保持加温を行なわないものでは得ることが困難な極めて優れた平滑性を得ることができる。
【0072】
また、溶剤量を同じ程度まで減少させることを考えた場合には、温度保持加温を行なわない場合に比してこの温度保持加温を行なうことにより、溶剤を早く蒸発させて短時間に目標溶剤量まで低減させることができ、それによって加熱硬化工程の時間短縮を図ることができる。
【0073】
上記熱硬化型塗料として溶剤を含有すると共に加熱により硬化する塗料を使用した場合には、塗布工程と加温工程との間に該塗布工程において塗布された塗料から溶剤を蒸発させるセッティング工程を設け、セッティング工程および加温工程において被塗物の上下方向に延びる面で通常では塗料ダレが生じるであろう厚さ以上の厚さに塗料を塗布し、セッティング工程および加温工程(必要に応じてさらに反応硬化工程)では上記塗料ダレが生じないように被塗物を略水平方向軸周りに回転させる様に構成することができるが、その様に加温工程の前にセッティング工程を設ければ、該セッティング工程によりある程度溶剤を蒸発させることができるので、加温工程以降において流動性を消失した時点における溶剤量をより小さくすることができる。
【0074】
上記所定温度は上記所定時間に応じて設定することができ、上記所定時間は上記所定温度に応じて設定することができる。上記所定温度および所定時間をこの様に相互の関係で適宜変更して設定すれば、例えば上記温度保持加温を行う加熱炉内での被塗物の搬送速度の変化等が生じた場合にもスムーズにその変化に対応して適切な温度保持加温を行うことができる
【0075】
それぞれ独立して温度制御可能な熱源を有する加熱領域を所定方向に複数個並設して成る分割加熱炉内に被塗物を上記所定方向に移動させることによって温度保持加温を行う様に構成すれば、例えば温度保持加温を行う加熱炉内での被塗物の搬送速度を変化させなければならない様な場合にも、温度保持加温に供する加熱領域の数を適宜変更することにより極めて簡単に上記所定時間を実現することができる。また、遠赤外線により温度保持加温を行う様に構成すれば、迅速に塗料の温度を上記所定温度まで上昇させることができ、加熱硬化工程における所要時間の短縮を図ることができる。
【0076】
<第4の発明にかかる塗装装置>
第4の発明に係る塗装装置は、上述の様に、上記第3の発明に係る塗装方法を実施するための装置である。この第4の発明に係る塗装装置の作用、効果は、基本的に上記第3の発明に係る塗装方法における作用、効果と同一である。
【0077】
【実施例】
以下、図面を参照しながら本発明の実施例について詳細に説明する。以下に説明する実施例は、被塗物としての自動車ボディを塗装する場合に本発明を適用したものである。
【0078】
<自動車ボディの塗装>
自動車ボディの塗装の一例を図1に従って説明する。自動車ボディの塗装は、一般的に、まず下塗塗装が行なわれ、次に中塗塗装が行なわれ、最後に上塗塗装が行なわれる。
【0079】
上記下塗塗装においては、まず表面処理が行なわれる。この表面処理ではボディ鉄板の油落しが行なわれ、次に鉄板と塗料との接着性を良くするため鉄板表面にリン酸亜鉛の皮膜を形成する処理が行なわれる。続いてエポキシ系塗料を電着させ、その後この電着塗料を加熱して硬化させる加熱硬化が行なわれる。
【0080】
上記中塗塗装においては、ポリエステル系塗料を用いた中塗りが行なわれ、続いて上記中塗塗料を加熱して硬化させる加熱硬化が行なわれる。
【0081】
上記上塗塗装においては、ソリッド塗装を行なう場合とベース・クリア塗装を行なう場合とがある。ソリッド塗装を行なう場合は、該ソリッド塗装により形成されるソリッド塗膜が最上層の塗膜となり、ソリッド塗料を塗布後該ソリッド塗料を加熱して硬化させる加熱硬化が行なわれる。ベース・クリア塗装を行なう場合は、まずアクリル樹脂等から成るベース塗料を塗布し、次いでその上にアクリル樹脂等から成るクリア塗料を塗布し、その後ベース塗料およびクリア塗料を加熱して硬化させる加熱硬化が行なわれる。このベース・クリア塗装の具体例としては、例えばアルミやマイカ等の光輝材を含むベース塗料を塗布した後に無色透明クリア塗料を塗布する場合、アルミやマイカ等の光輝材を含むベース塗料を塗布した後に着色透明クリア塗料を塗布する場合、アルミやマイカ等の光輝材を含まないベース塗料を塗布した後に無色透明クリア塗料を塗布する場合、およびアルミやマイカ等の光輝材を含まないベース塗料を塗布した後に着色透明クリア塗料を塗布する場合を挙げることができる。なお、このベース・クリア塗装のうち、ベース塗料の塗布および加熱硬化をベース塗装、クリア塗料の塗布および加熱硬化をクリア塗装と称す。
【0082】
上記は自動車塗装の一例であり、例えば上記中塗塗装を2回行なったり上記クリア塗装を2回行なうこともできる。また、上記下塗塗装や中塗塗装においても、上記した以外の種々の処理、例えばシール処理や耐チップ処理等を行なうことができる。
【0083】
<回転塗装>
上記塗装においては、塗膜表面の良好な平滑性を得るため、回転塗装が行われる。かかる回転塗装は、塗膜表面に平滑性が要求される塗装であればどの様な塗装に対しても適用可能であり、例えば上記中塗塗装や上塗塗装等に適用可能であるが、特に、最上層の塗膜を形成する塗装即ち上塗塗装がソリッド塗装の場合はソリッド塗装に、ベース・クリア塗装の場合はクリア塗装に好適に適用することができる。
【0084】
かかる回転塗装は、基本的には、図2に示す様に塗料を塗布する際に被塗物2の上下方向に延びる被塗面2aに通常では塗料ダレが生じるであろう厚さ(ダレ限界厚)以上の厚さに塗料4を塗布し、その後上記塗料ダレが生じない様に被塗物2を紙面に垂直な略水平方向軸6周りに回転させるものである。
【0085】
上記上下方向に延びる被塗面2aで通常では塗料ダレが生じるとは、上下方向に延びる被塗面2aに塗料を塗布した後その被塗面2aをそのまま上下方向に位置させておいた場合に塗料が重力によって下方にタレることであり、本発明の場合塗料ダレが生じるとは、上述の様に塗料が2mm以上タレた場合(2mm以上塗料がタレると塗膜表面にタレにより許容範囲を越える凹凸が生じ、所望の平滑性が得られない)を意味する。より具体的には、図3に示す様に、上下方向に延びる被塗面2aに対して下半分にテープ8を貼り付けてマスクをし、その状態で全面に塗料を塗布してテープ8を剥し、この状態で塗料ダレがそれ以上大きくならなくなるまで放置し、その際に生じた塗料ダレ4aの長さlを測定し、その長さが2mm以上であるときに塗料ダレが生じたものとする。従って、上記ダレ限界厚は、塗布する塗料の厚さを徐々に大きくしながら所定のセッティング雰囲気中あるいは加熱雰囲気中で上記塗料ダレ長さの測定を繰り返し行ない、上記塗料ダレ長さが2mmになったときの塗料の塗布厚を求めることによって知ることができる。
【0086】
上記塗料ダレは、上述の様に塗料が流動性を有するが故に重力によって下方にタレる現象であり、従って、図2に示す様に被塗物2を略水平方向軸6周りに回転させると、その回転によって塗料に対し重力と同方向の力と重力と反対方向の力とが交互に作用し、それによって塗料ダレが防止される。即ち、図2に示す例の場合、被塗物2は矢印A方向に連続的に回転せしめられ、図示の様に塗料4が右側に位置しているときは上記回転により塗料4に被塗面2aに対して相対的に矢印Bに示す重力と反対方向の慣性力が作用し、被塗物2の回転によって上記塗料4が左側に位置しているときは該回転により塗料4に被塗面2aに対して相対的に矢印Cに示す重力と同方向の慣性力が作用し、この様に回転によって塗料4に対し重力と同方向の力と反対方向の力とが交互に作用することによって塗料の重力による一方向へのタレが防止される。なお、上記被塗物2は必ずしも360 °同方向に連続して回転させる必要はなく、360°の回転を交互に反対方向に行なわせても良いし、所定角度範囲、たとえば45°、90°あるいは135°の範囲で交互に反対方向に回転させても良い。
【0087】
上記回転は、回転によって重力による塗料ダレを防止するものであり、従って塗料の塗布後重力により塗料ダレが生じる前に回転を開始し、その後塗料の流動性が低くなりあるいは硬化して最早重力による塗料ダレが生じ得ない状態になるまで回転を行なわせることが必要である。また、上記回転は、回転によって重力による塗料ダレを防止するものであり、従って回転によって重力による塗料ダレを阻止し得る力を生じさせることができる速度例えば重力により塗料ダレが生じる速度よりも速い速度で回転させると共に、回転による遠心力によって塗料ダレが生じることのない速度で回転させることが必要である(略水平方向軸6から半径方向に延びる被塗面が存在する場合は、該被塗面上では遠心力により塗料ダレが生じ得る。)。
【0088】
<回転塗装の各種態様>
回転塗装は、塗料を塗布する塗布工程と、塗布された塗料を硬化させる硬化工程とを備えて成る。塗料が溶剤を含有する場合は、必要に応じて塗布工程と硬化工程との間に溶剤を蒸発させるセッティング工程を設けることができる。
【0089】
塗料ダレは、セッティングおよび/または硬化工程で生じ得る。上記回転塗装では、回転塗装によって優れた塗膜表面の平滑性を得るため、塗布工程において、セッティング工程および/または硬化工程で塗料ダレが生じるであろう厚さ以上の厚さに塗料を塗布する必要がある。すなわち、セッティング工程が設けられていない場合は硬化工程で上記塗料ダレが生じるであろう厚さ以上の厚さに塗料を塗布して硬化工程で塗料ダレが生じ得る塗料状態にする必要がある。また、セッティング工程が設けられている場合は、セッティング工程で上記塗料ダレが生じるであろう厚さ以上の厚さに塗料を塗布してセッティング工程で塗料ダレが生じ得る塗料状態にするか、硬化工程で上記塗料ダレが生じるであろう厚さ以上の厚さに塗料を塗布して硬化工程で塗料ダレが生じ得る塗料状態にするか、あるいはセッティング工程と硬化工程の双方で塗料ダレが生じるであろう厚さ以上の厚さに塗料を塗布して両工程で塗料ダレが生じ得る塗料状態にする必要がある。
【0090】
上記いずれの場合でも、塗料ダレが生じるであろうセッティング工程もしくは硬化工程においては該塗料ダレが生じないように被塗物を略水平方向軸周りに回転させる必要がある。
【0091】
<回転塗装による塗膜表面の平滑化>
上記塗料は、例えば図4(a)に示す様に、スプレーによって下地10上に塗布される。上記下地10は塗料が塗布される被塗面であり、例えば上記塗料塗布が被塗物の表面に直接行なわれる場合はその被塗物の表面、中塗塗装の場合は下塗塗膜の表面、ソリッド塗装の場合は中塗塗膜の表面、クリア塗装の場合はベース塗膜の表面が該当する。
【0092】
塗料がある程度の厚さに塗布されると、図4(b)において矢印Dで示す様に塗膜5の表面は塗料の表面張力によって塗膜表面と平行な方向内で左右に引っ張られて平滑になろうとする。この場合塗料の塗布量が少ないと塗料の流動性が低く、上記表面張力による平滑化が十分に行われず、良好な平滑性を得ることは困難である。しかるに、塗料をダレ限界厚以上の厚さに塗布すると、塗料が十分な流動性を有し、上記表面張力による平滑化が十分に行われ、良好な平滑性を得ることができる。
【0093】
ところが、塗料をダレ限界厚以上の厚さに塗布すると、被塗物が略上下方向に延びる被塗面を有している場合その略上下方向に延びる被塗面においては重力によって塗料ダレが生じ、この塗料ダレによって塗膜表面の平滑性は大きく損なわれてしまうこととなる。
【0094】
そこで、上述した様に、塗料を塗布した被塗物を水平方向軸周りに回転させることにより、上記塗料に重力方向の力と重力とは反対方向の力とを交互に作用させ、これによって略上下方向に延びる被塗面における重力による塗料ダレを防止することができる。そして、その様に被塗物を水平方向軸周りに回転させれば、上記重力による塗料ダレを防止することができるだけでなく、上記図4(b)において矢印Eで示す様に、該回転により上記塗料に対し塗膜表面と平行な方向内での左右方向への力が作用し、これにより上記表面張力による平滑化が助長され、もって図4(c)に示す様に極めて優れた平滑性が得られる。
【0095】
すなわち、塗料をダレ限界厚以上の厚さに塗布すると共に被塗物を水平方向軸周りに回転させる回転塗装によれば、先ず塗料をダレ限界厚以上の厚さに塗布したことにより上記の様に表面張力による優れた平滑性が得られ、また被塗物を水平方向軸周りに回転させることにより塗料をダレ限界厚以上の厚さに塗布した場合に生じる塗料ダレを防止しつつ更に該回転により上記の様に塗膜表面の平滑化を助長し、もってきわめて優れた塗膜表面の平滑性が得られることとなる。
【0096】
<塗膜表面における下地の影響>
(溶剤量と下地の影響)
しかしながら、塗料が溶剤を含有するものである場合、塗料をダレ限界厚以上の厚さに塗布しかつ被塗物を略水平方向軸周りに回転させることによって図4(c)に示す様に塗膜表面が十分に平滑になっていても、その塗膜表面が流動性を消失した後における溶剤の蒸発量が大きいと塗膜の収縮量が大きく、この収縮量が大きいと図4(d)に示す様にその収縮に伴なって下地10の凹凸が塗膜表面に出現してその平滑性が阻害され、収縮量が小さいと図4(e)に示す様に下地10の凹凸が塗膜表面に出現する割合が小さく、塗膜表面の平滑性がそのまま維持される。
【0097】
より具体的には、塗料が溶剤の蒸発や塗料固形分の粘度の低下等によって流動性を消失した後における塗膜の収縮量が小さいほど下地凹凸の影響が塗膜表面に出現する割合が小さくなり、この収縮量は塗料中に含まれる溶剤の量によってほぼ定まり、塗料が流動性を消失した時点で溶剤の塗料中における占有率が30重量%以下であれば十分に下地凹凸の影響を回避して従来の塗装方法で得られていた平滑性よりも良好な平滑性を得ることができ、また溶剤の占有率が10重量%以下であればさらに優れた平滑性を得ることができる。
【0098】
なお、ここでいう塗料の流動性とは、塗膜表面が塗料の表面張力等によって平滑化可能な流動性を意味し、本発明の場合、上述の様に塗料ダレが1mm以上生じ得る塗料状態の場合その塗料は流動性を有し、塗料ダレが1mm未満の場合は流動性を有しないものと定義する。
【0099】
(温度保持加温と下地の影響)一方、塗料が加熱により硬化する熱硬化型塗料を使用し、加熱硬化工程において塗料ダレが生じるであろう厚さ以上の厚さに塗料を塗布し、かつこの加熱硬化工程で塗料ダレが生じないように被塗物を略水平方向軸の周りに回転させれば、加熱硬化工程において上述のように極めて優れた塗膜表面の平滑性が得られる。この場合、加熱硬化工程を、塗料の温度を該塗料の反応開始温度まで上昇させる加温を行う加温工程と該加温工程の後において塗料の温度を反応開始温度以上として該塗料を反応硬化させる反応硬化工程とで構成し、上記加温工程では塗料の温度を反応開始温度まで上昇させる過程で該反応開始温度より低く常温より高い所定温度に所定時間保持する温度保持加温を行えば、通常の加熱硬化工程の様に温度を反応開始温度まで直線的に上昇させるものと比較して、塗料がより高い流動性を有する状態を所定時間確保することができ、塗料がより高い流動性を有するということは塗料の表面張力および被塗物の回転により塗料に作用する力による平滑化がより促進される状態であるということであり、この平滑化がより促進される状態を所定時間維持することにより極めて優れた平滑化が達成され、下地凹凸の影響が少ない良好な塗膜表面の平滑性が得られる。
【0100】
また、上記熱硬化型塗料として溶剤を含有すると共に加熱により硬化する塗料を使用した場合には、加温工程中のいずれかの時点もしくは加温工程の終了時点において塗料が流動性を有しかつ溶剤の占有率が30重量%以下になるように、好ましくは10重量%以下になるようにすれば、それによって上述の様に流動性を消失した後の塗膜の収縮量を小さくでき、それによってさらに下地凹凸の影響を小さくし、より優れた塗膜表面の平滑性を得ることができる。
【0101】
特に、この様に反応開始温度より低く常温より高い所定温度に所定時間保持する温度保持加温を行なえば、塗料の流動性を保持しつつより多くの溶剤を蒸発させることができ、それによって通常の加熱硬化工程の様に塗料の温度を反応開始温度まで直線的に上昇させるものと比較して、塗料が流動性を消失した時点の溶剤量をより小さくすることができ、下地凹凸の影響を殆んど受けない極めて良好な塗膜表面の平滑性を得ることができる。より具体的には、通常の加熱硬化工程では、加熱炉内の雰囲気温度が塗料の反応開始温度以上とされ、塗料の温度は被塗物の熱容量に対して成り行きで上昇し、この様に成り行きで直線的に上昇する場合、塗料の温度は短時間で反応開始温度に到達して塗料の反応硬化による粘性上昇(流動性阻害)を引き起こすので、流動性を保ちながら溶剤量を10重量%以下にするのは困難であるが、上記の温度保持加温を行えば、塗料の温度を反応開始温度より低く常温より高い所定温度で所定時間保持することにより塗料が反応硬化することなく流動性を維持した状態の下で十分に溶剤を蒸発させることができるので、該塗料が流動性を消失した時点の溶剤量を10重量%以下とすることが可能であり、それによって温度保持加温を行なわないものでは得ることが困難な極めて優れた平滑性を得ることができる。
【0102】
また、溶剤量を同じ程度まで減少させることを考えた場合には、温度保持加温を行なわない場合に比してこの温度保持加温を行なうことにより、溶剤を早く蒸発させて短時間に目標溶剤量まで低減させることができ、それによって加熱硬化工程の時間短縮を図ることができる。
【0103】
<塗装装置>
次に本発明に係る塗装方法の一実施例を実施するための塗装装置について、該装置の全体の概要を示す平面図である図5、該装置の要部のみの概要を示す正面図である図6、空台車メンテナンスゾーン部分の概要を示す正面図である図7、回転用台車の概要を示す正面図である図8、回転用台車の概要を示す右側面図である図9、加熱硬化工程を実施するための予備加熱炉の概要を示す正面図である図10、上記予備加熱炉の概要を示す側面図である図11、加熱硬化工程を実施するための本加熱炉の概要を示す正面図である図12、上記本加熱炉の概要を示す側面図である図13を参照しながら説明する。
【0104】
なお、以下に述べる塗装装置によって実施される塗装方法は、クリア塗装に対して本発明に係る回転塗装方法を適用したものであり、溶剤を含有すると共に加熱により硬化する熱硬化型のクリア塗料を使用し、塗布工程と加熱硬化工程との間にセッティング工程を設け、加熱硬化工程は塗料を半硬化させる予備加熱硬化工程と塗料を本硬化させる本加熱硬化工程とに分けて構成し、予備加熱硬化工程の初期に温度保持加温を行い、かつセッティング工程および予備加熱硬化工程(特に温度保持加温)の双方において塗料ダレが生じ得るようにクリア塗料を塗布すると共にそれらの両工程で塗料ダレを防止すべく被塗物を回転させ、さらにセッティング工程または予備加熱硬化工程(特に温度保持加温)のいずれかの時点において塗料が流動性を有しかつ溶剤の占有率が30重量%もしくは10重量%以下になるようにしたものである。
【0105】
図示の塗装装置は、図5および図6に示す様に、第1一般(非回転用)搬送コンベア12と、第2一般搬送コンベア14と、回転用搬送コンベア16とを備えて成る。上記第1,第2一般搬送コンベア12,14は、被塗物である自動車ボディ18を静止状態で保持する一般(非回転用)台車20をそれぞれ矢印方向に搬送する。上記回転用搬送コンベア16は、上記自動車ボディ18を略水平方向軸周りに回転可能に保持する回転用台車22を矢印方向に搬送する。
【0106】
上記回転用搬送コンベア16は全体としてエンドレス状に配設され、回転用台車22はこの回転用搬送コンベア16により循環搬送される。この回転用搬送コンベア16は、それぞれが互いに独立して回転用台車22を搬送制御可能な第1コンベア24と、第2コンベア26と、第3コンベア28とを組み合せて成る。第1コンベア24の始端は位置aにおいて以下に述べるリフタ29に接続されると共にその終端は位置bにおいて第2コンベア26の始端に接続され、第2コンベア26の終端は位置cにおいて第3コンベア28の始端に接続され、第3コンベア28の終端は位置dにおいて上記リフタ29に接続され、かつ該リフタ29を介して上記第1コンベア24の始端に接続されている。
【0107】
上記回転用搬送コンベア16は、図示の如く以下に述べる上塗ベース塗布ゾーンから予備加熱硬化ゾーンまでの部分においてラインAとラインBとの2ライン並列構成とされ、従って上記第1コンベア24は分岐点eで分岐された2つの分岐コンベア24A,24Bを備え、上記第2コンベア26はこの2つの分岐コンベア24A,24Bに接続する2つのコンベア26A,26Bを備え、上記第3コンベア28はこれらのコンベア26A,26Bに接続すると共に合流点fで合流する2つの分岐コンベア28A,28Bを備えて成る。この回転用搬送コンベア16は、必要に応じて、上記分岐点eから合流点fまでの間のラインA,Bの搬送速度に対して、その他の部分つまり合流点fから分岐点eまでの間のコンベア部分の搬送速度の方を大きく設定することができる。
【0108】
上記第1一般搬送コンベア12上には回転治具取付ゾーン30が設けられ、上記回転用搬送コンベア16上には、上流側から順に回転エアブローゾーン32、上塗準備ゾーン34、上塗ベース塗布ゾーン36、第1クリア塗布ゾーン38aと第2クリア塗布ゾーン38bとを備えて成る上塗クリア塗布ゾーン38、セッティングゾーン40、加温ゾーン42aと半加熱硬化ゾーン42bとを備えて成る予備加熱硬化ゾーン42、プール用搬送コンベア44aを備えて成るプールゾーン44および上記リフタ29と空台車メンテナンス用搬送コンベア45とを備えて成る空台車メンテナンスゾーン46が設けられ、上記第2一般搬送コンベア14上には本加熱硬化ゾーン48が設けられ、上記上塗ベース塗布ゾーン36から予備加熱硬化ゾーン42までは上記ラインAとラインBとにそれぞれ設けられている。
【0109】
上記回転エアブローゾーン32、上塗準備ゾーン34、上塗ベース塗布ゾーン36は第1コンベア24上に設けられている。上記上塗クリア塗布ゾーン38は第1コンベア24と第2コンベア26との接続部に設けられ、第1クリア塗布ゾーン38aは第1コンベア24上に、第2クリア塗布ゾーン38bは第2コンベア26上に位置している。上記セッティングゾーン40と予備加熱硬化ゾーン42とは上記第2クリア塗布ゾーン38bと共に第2コンベア26上に設けられている。上記プールゾーン44は第3コンベア28上に設けられている。また、上記第3コンベア28の終端と第1コンベア24の始端との間に空台車メンテナンスゾーン46が設けられている。
【0110】
上記第1一般搬送コンベア12と第1コンベア24との間には、第1一般搬送コンベア12上の一般台車10により搬送されてきた自動車ボディ18を第1コンベア24上の回転用台車22上に移載する第1移載手段50が設けられ、上記第2一般搬送コンベア14と第3コンベア28との間には、第3コンベア28上の回転用台車22により搬送されてきた自動車ボディ18を第2一般搬送コンベア14上の一般台車20上に移載する第2移載手段52が設けられている。
【0111】
上記回転エアブローゾーン32、セッティングゾーン40および予備加熱硬化ゾーン42には、上記回転用台車22がそれらのゾーンを通過する間該回転用台車22上の自動車ボディ18を回転させるためのサブコンベア54,56が配設されている。
【0112】
上記第1,第2一般搬送コンベア12,14および回転用搬送コンベア16は2階部分58に配設され、上記空台車メンテナンス用搬送コンベア45は1階部分60に配設されている。上記リフタ29は、図7に示す様に、1階部分60から2階部分58にかけて上下方向に延びる支柱29aと該支柱29aに嵌合されて図示しない駆動手段により上下動せしめられる台車受け29bとで構成されており、第2移載手段52により自動車ボディ18が搬出された空の回転用台車22を1階部分の空台車メンテナンス用搬送コンベア45に移送し、またこの空台車メンテナンス用搬送コンベア45から空の回転用台車22を2階部分の第1コンベア24に移送する。上記空台車メンテナンス用搬送コンベア45は上記2階部分の回転用搬送コンベア16に対応する位置に上記リフタ29を介してエンドレス状に配設されている。
【0113】
上記回転用台車22は、図8,9に示す様に、車輪62を有する基台64と、該基台64上に搬送方向に所定間隔を置いて立設された支持台66,68と、両支持台66,68にそれぞれ同一直線上に位置して略水平方向に延びる回転軸線L回りに回転可能に取り付けられた回転支承台70,72とを備えて成る。
【0114】
自動車ボディ18はその前端および後端に回転治具74,76が取り付けられ、回転治具74,76はそれぞれ上記回転支承台70,72に連結され、もって自動車ボディ18は両支持台66,68の間で略水平方向に延びる回転軸線Lの周りに回転可能に回転用台車22に保持される。
【0115】
上記回転用台車22の後方支持台68には後方回転支承台72を回転させる回転伝達機構78が設けられている。該回転伝達機構78は、回転支承台72の回転軸80に固設された傘歯車82、該傘歯車82に噛合する傘歯車84、該傘歯車84が固設されている軸86に固設された傘歯車88、該傘歯車88と噛合する傘歯車90、該傘歯車90が固設された軸92に固設されたスプロケット94とで構成されており、該スプロケット94はチェーンから成る上述のサブコンベア54,56に噛合する。従って、回転用台車22の搬送速度とサブコンベア54,56の駆動速度との間に相対速度差が生じると、スプロケット94が回転し、この回転が上記回転伝達機構78を介して上記回転支承台72に伝達され、自動車ボディ18が上記回転軸線L周りに回転せしめられる。この場合、サブコンベア54,56の駆動速度を調節することによって自動車ボディ18の回転速度や回転方向を変更可能であると共に、回転用台車22が停止した状態においても自動車ボディ18を回転させることができる。
【0116】
上記基台64の前部には、前方に延びる係合子95が軸96を中心として上下方向に回転可能に設けられ、該係合子95が突起95aを介してチェーンから成る回転用搬送コンベア16に係合し、この突起95aを介して回転用台車22が回転用搬送コンベア16によりその駆動速度で搬送される。また、上記基台64の後部には、後方に延びる係合解除子98が図示しない保持部材を介して図示の様に所定高さを保持した状態で設けられている。従って、前方の回転用台車22に対して後方の回転用台車22が近接してくると、後方の回転用台車の係合子95が前方の回転用台車の係合解除子98に当接してその上に乗り上げて上方へ回動し、係合子95の回転用搬送コンベア16に対する係合が解除され、それによって後方の回転用台車22は前方の回転用台車22が停止している状態で回転用搬送コンベア16が作動していても該前方の回転用台車22の直前で停止することとなる。
【0117】
上記予備加熱硬化ゾーン42にはその全長に亘って予備加熱炉が設けられ、自動車ボディ18をこの予備加熱炉内を通過させることによってベース塗膜およびクリア塗膜の予備加熱硬化が行なわれる。
【0118】
図10および図11に示す様に、予備加熱炉100は搬送方向に延びるトンネル状に形成された遠赤外線炉により構成され、上記第2コンベア26およびサブコンベア56が炉内を通過して設けられ、この第2コンベア26により自動車ボディ18が回転用台車22を介して炉内を通過せしめられる。この予備加熱炉100は、搬送方向に複数個(本実施例では6個)の加熱領域P1〜P6を連設して成る分割加熱炉により構成されており、各加熱領域P1〜P6はそれぞれ独立して温度制御可能な熱源としての遠赤外線照射手段102を備えて成る。遠赤外線照射手段102は、各加熱領域P1〜P6において、図11に示す様に炉の内面に所定間隔を置いて略逆U字状に複数個設けられており、制御手段104により各加熱領域毎に供給する電圧を制御して各加熱領域毎に独立して温度制御可能とされている。この予備加熱炉100には、塗料から蒸発した溶剤が炉内に充満することを防止する等のための換気手段106が設けられている。この換気手段106は、炉内の下方位置に設けられた給気ボックス108と、炉内の上方位置に設けられた排気ボックス110と、両ボックス108,110間を接続する空気通路112に設けられた給排気手段114とを備えて成り、給排気手段114は、蒸気を熱源とする熱交換器116と、フィルタ118と、給気ファン120とを備えて成る。上記換気手段106により、熱交換器116で所定温度に加熱された温風が給気ボックス108から炉内に送出され炉内を上昇して排気ボックス110から排出され、この排出された空気は一部が大気側に放出されると共に一部は新気と一緒に給排気手段114により所定温度に加熱され、給気ボックス108を介して炉内に送出される。なお、各加熱領域P1〜P6の遠赤外線照射手段102には温度センサ122(加熱領域P1についてのみ図示)が設けられ、この温度センサ122の出力に基づい制御手段104はフィードバック制御を行なう。
【0119】
上記各加熱領域のうち上流側の複数の加熱領域(本実施例ではP1〜P4)が上記加温ゾーン42aを形成し、下流側の複数の加熱領域(本実施例ではP5,P6)が上記半加熱硬化ゾーン42bを形成している。
【0120】
上記本加熱硬化ゾーン48にはその全長に亘って本加熱炉が設けられ、自動車ボディ18をこの本加熱炉内を通過させることによってベース塗膜およびクリア塗膜の本加熱硬化が行なわれる。
【0121】
図12,13に示す様に、本加熱炉124は、搬送方向に延びるトンネル状に形成されると共に実際に加熱を行なう基部124aの両端に傾斜部124bを設けて基部124aを高い位置に配した山型炉であって、かつ熱源として熱風を用いる熱風炉として構成され、上記第2一般搬送コンベア14が炉内を通過して設けられ、この第2一般搬送コンベア14により自動車ボディ18が一般台車20を介して炉内を通過せしめられる。この本加熱炉124は、基部124aが搬送方向に複数個(本実施例では3個)の加熱領域P1〜P3を連設して成り、各加熱領域P1〜P3にはそれぞれ独立して熱風の温度および風量を制御可能な熱風供給手段126が設けられている。該熱風供給手段126は、炉の下方位置に設けられた給気ボックス128と、上方位置に設けられた排気ボックス130と、両ボックス128,130を接続する空気通路132に設けられた給排気手段134とを備えて成り(空気通路132および給排気手段134については加熱領域P1についてのみ図示)、給排気手段134は、蒸気を熱源とする熱交換器136と、フィルタ138と、給気ファン140とを備えて成る。
【0122】
上記熱風供給手段126により、熱交換器136で所定温度に加熱された熱風が給気ボックス128から炉内に送出され、炉内を上昇して排気ボックス130から排出され、再度給排気手段134により所定温度に加熱されて炉内に送り出されて循環せしめられる。なお、各加熱領域P1〜P3の熱風供給手段126には、炉内に送出される熱風の温度を検出する温度センサ142が設けられ、該センサ142の出力に基づいて熱風温度のフィードバック制御が行なわれる。
【0123】
<塗装方法>
次に、上記装置による塗装方法について説明する。上記塗装装置においては、中塗塗装が終了した自動車ボディ18が一般台車20に保持されて第1一般搬送コンベア12により矢印方向に搬送され、回転治具取付ゾーン30で上述の回転治具74,76が自動車ボディ18の前端部および後端部に取り付けられ、続いて第1移載手段50により自動車ボディ18が一般台車20から回転用搬送コンベア16上の回転用台車22に移載される。
【0124】
この回転用台車22に移載された自動車ボディ18は、該回転用台車22を介してまず回転エアブローゾーン32に送られ、該ゾーン32を通過する間、上記サブコンベア54によって回転せしめられながらエアーの吹き付けが行なわれ、ボディ表面や内部に存在するゴミ、塵埃等の除去が行なわれる。次に上塗準備ゾーン34に送られ、該ゾーン34においてさらにダチョーの羽根でボディ表面を掃いて表面に付着したゴミ、塵埃等の除去の完全を期し、続いて位置eで交互にラインAとラインBとに振り分けられて上塗ベース塗布ゾーン36に送られ、該ゾーン36で上塗ベース塗布が行なわれる。この上塗ベース塗布は、本実施例ではアルミ、マイカ等の光輝材および顔料等を含むアクリル−メラミン樹脂から成るベース塗料を中塗塗膜の上に塗布するものであり、例えばボディの外表面に1回塗布し、次にロボットでドアを開いてドア開口部やドアの内側等に塗布し、その後外表面にさらに2回塗布するという複数回塗布により行なわれる。上記ベース塗料は、通常溶剤として沸点が低く蒸発しやすいものを用いるので溶剤の蒸発は早く、また膜厚も例えば20μ程度と薄いので、塗料ダレが生じる虞はない。
【0125】
上記上塗ベース塗布が終了したら、次に上塗クリア塗布ゾーン38に送られ、該ゾーン38において塗布ロボット等の塗料塗布手段により上塗クリア塗布が行なわれる。上塗ベース塗布ゾーン36と上塗クリア塗布ゾーン38との間には所定間隔が置かれ、この所定間隔部分はアイドルゾーンとしてこのアイドルゾーンを通過中にベース塗料の溶剤の十分な蒸発が行なわれる。
【0126】
上記上塗クリア塗布は、上記ベース塗膜の上にクリア塗料を塗布することにより行なわれ、クリア塗料としては、本実施例では揮発性溶剤を含有したアクリル−メラミン樹脂から成る透明樹脂塗料が用いられる。この上塗クリア塗布においてはクリア塗料が2回重ね塗りされる。即ち、まず、第1コンベア24の終端部分に設けられた第1クリア塗布ゾーン38aにおいてクリア塗料がベース塗膜上にセッティングゾーン40におけるダレ限界厚未満の膜厚となる様に塗布され、その後自動車ボディ18は位置bで第2コンベア26に乗り移って該第2コンベア26の始端部分に設けられた第2クリア塗布ゾーン38bに搬送され、そこでクリア塗膜がセッティングゾーン40および加温ゾーン42aにおけるダレ限界厚以上の膜厚となる様に上記第1クリア塗布ゾーン38aで塗布されたクリア塗膜上にさらに上記クリア塗料が塗布される。
【0127】
このクリア塗料の塗布が終了したら、自動車ボディ18はセッティングゾーン40に搬入され、このセッティングゾーン40通過中にクリア塗料中の揮発性溶剤が常温下で自然蒸発せしめられる。このセッティングゾーン40通過中は、上記第2クリアゾーン38bでダレ限界厚以上の厚さに塗布されたクリア塗料のタレを防止すべく、上記サブコンベア56により自動車ボディ18を回転させる。
【0128】
このセッティングゾーン通渦中にクリア塗料中の揮発性溶剤が徐々に蒸発して溶剤量が減少し、それに伴ってクリア塗料の流動性が低下し、場合によってはセッティング終了時点においては既に流動性を消失してしまっていることもあり得る。セッティング条件即ちセッティング温度およびセッティング時間は、前述のセッティングの目的を達成すべく、クリア塗料の種類(樹脂および溶剤の種類、量等)、膜厚、予備加熱硬化条件等に応じて適宜に設定すれば良い。
【0129】
上記セッティングが終了したら、次に、自動車ボディ18は予備加熱硬化ゾーン42に搬入され、該ゾーン42に設置された予備加熱炉を通過する間にクリア塗膜の予備加熱硬化が行なわれる。この予備加熱硬化ゾーン42においては、まず、上記加温ゾーン42aでクリア塗料の温度を常温から反応開始温度まで上昇させる加温が行われると共にその過程において常温より高くかつ反応開始温度より低い所定温度で所定時間保持する温度保持加温が行なわれ、この温度保持加温によってクリア塗料の流動性を維持した状態の下で溶剤が十分に蒸発せしめられ、続いて上記半加熱硬化ゾーン42bでクリア塗料の温度を反応開始温度以上の温度に保持し、該塗料を一部反応させて半硬化させる半加熱硬化が行われる。この半加熱硬化は、クリア塗料の表面にゴミ等が付着してもその後加熱するとこのゴミ等が焼けてすぐに落ちる程度まで半硬化せしめるものであり、例えば塗料の架橋反応が40%程度行なわれる程度まで硬化させる。なお、この予備加熱効果ゾーン42においては、上記ベース塗膜も同様に加温ゾーン42aで温度保持加温が行われ、また半加熱硬化ゾーン42bで半硬化せしめられる。
【0130】
上記クリア塗料は上記セッティング終了時点で流動性が低下もしくは流動性を消失しているが、この予備加熱硬化ゾーン42の初期つまり上記加温ゾーン42aにおいて塗料の温度が常温から反応開始温度まで上昇せしめられる過程で、該温度上昇によって塗料の固形分つまり樹脂分が軟化(粘度低下)して流動性が急激に増大して塗料ダレが生じ得る状態となり、その後溶剤の蒸発が進行して流動性は低下し、予備加熱硬化ゾーン42の後期つまり半加熱硬化ゾーン42bにおいて塗料の温度が反応開始温度以上となって樹脂分が反応硬化し始めた時点で流動性は一挙に消失する。
【0131】
上記温度保持加温における所定温度および所定時間は、該温度保持加温によりクリア塗料の流動性を維持しつつ溶剤量を目標値まで低下させ得るように、クリア塗料の種類(樹脂および溶剤の種類、量等)、膜厚、セッティング条件等に応じて適宜に設定すれば良く、かつ所定温度は所定時間に応じて、所定時間は所定温度に応じて変更することができる。上記所定温度は、常温より20℃以上高く(通常は40℃以上)かつ塗料の反応開始温度より10℃以下の範囲が望ましい。また、上記所定時間は、目標とする溶剤量即ち30重量%以下もしくは10重量%以下になりかつ流動性を有する状態の下で1分以上保持し得る時間であることが望ましい。また、上記半加熱硬化ゾーン42bにおける半加熱硬化条件(温度および時間)も、クリア塗料を半硬化させ得るように、クリア塗料の種類(樹脂および溶剤の種類、量等)、膜厚、セッティング条件、温度保持加温条件等に応じて適宜に設定すれば良い。
【0132】
図14は上記予備加熱硬化ゾーン42におけるクリア塗料の温度変化の一例を実線で示す図である。図示の様に、セッティングゾーン40において塗料は常温(本実施例では20℃)に維持され、予備加熱硬化ゾーン42に搬入されると、まず加熱領域P1〜P4から成る加温ゾーン42aにおいて塗料の温度を反応開始温度(本実施例では70〜80℃)まで上昇させると共にその上昇途中において塗料の温度を常温よりく反応開始温度より低い所定温度(本実施例では60℃。なお、この所定温度は必ずしも一定値である必要はなく、所定温度範囲内で変化、例えば図中においてわずかに右肩上りで変化しても良い。)に所定時間保持する温度保持加温が行なわれ、続いてP5,P6から成る半加熱硬化ゾーン42bにおいて塗料の温度を反応開始温度以上の所定温度(本実施例では140℃)まで上昇させて該温度で塗料が上記半硬化せしめられる。
【0133】
上記温度保持加温における所定温度を変更する場合は該温度保持加温に供する加熱領域P1〜P4の温度(雰囲気温度)を変更することによって行なうことができ、所定時間を変更する場合は温度保持加温に供する加熱領域の数を変更することによって行なうことができる。また、例えば1日に塗装する自動車ボディ18の数が変更される場合回転用搬送コンベア16の搬送速度が変更され、それによって予備加熱炉内を通過する自動車ボディ18の移動速度も変化し、その場合は例えば同じ加熱領域P1〜P4までを温度保持加温に供していると温度保持加温の時間が変化することとなる。この様な場合には、その自動車ボディの移動速度に応じて温度保持加温に供する加熱領域の数を変更する、例えば移動速度が遅くなった場合は加熱領域P1〜P3を温度保持加温に供する(加熱領域P1〜P3の温度を温度保持加温用の温度とする。この場合は、加熱領域P4,P5を半加熱硬化ゾーンとしてこの加熱領域P4,P5の温度を半加熱硬化用の温度とし、かつ加熱領域P6による加熱は行なわないようにする。)ことによって、自動車ボディ18の移動速度が変化しても容易に所定時間を確保することができる。
【0134】
半加熱硬化ゾーン42bにおける塗料温度および加熱時間も該半加熱硬化ゾーン42bを構成する加熱領域の数および雰囲気温度を変更することによって容易に変更することができる。
【0135】
上記実施例では加熱領域P1〜P4間での炉内の雰囲気温度は一定とされているが、被塗物の熱容量が大きく炉に入った後塗料が上記所定温度まで上昇するのに時間がかかる場合は、その分だけ加温ゾーン42aの長さを長くしなければならなくなるので、その場合は例えば加熱領域P1の炉内雰囲気温度をその他の加熱領域よりも高くして塗料温度が所定温度まで上昇する時間を短くし、もって予備加熱炉の長さを短くすることもできる。つまり、各加熱領域をそれぞれ別個に温度制御し得ることにより、温度上昇パターンを種々変更制御し、それによって種々の利点を享受し得る。
【0136】
上記予備加熱硬化ゾーン42、特に加温ゾーン42aにおいては、塗料の固形分が温度上昇によって軟化して粘度が低下し、非常に高い流動性を有することとなって塗料ダレが生じ得る塗料状態となる。そこで、この予備加熱硬化ゾーン42においては、該ゾーン42を通過する間サブコンベア56により上記セッティングゾーン40から引き続いて自動車ボディ18を回転せ、塗料ダレの防止が図られる。なお、この回転は要するに塗料ダレを防止できれば良いものであり、例えば図14に示す加熱領域P5において塗料ダレが生じない状態となるのであれば、該加熱領域P5まで回転させれば十分であり、加熱領域P6まで回転させる必要はない。
【0137】
なお、本実施例では上記予備加熱硬化ゾーン42に加温ゾーン42aを設け、該加温ゾーン42aで温度保持加温を行なう様にしているが、この温度保持加温は必ずしも行なわなければならないものではなく、温度保持加温を行なうことなく塗料温度を反応開始温度以上まで上昇させる様にしても良い。その場合には、例えば上記図14中において破線で示す様に、塗料温度は反応開始温度以上まで直線的に上昇せしめられる。
【0138】
上記予備加熱硬化ゾーン42において予備加熱硬化が終了したら、続いて自動車ボディ18は位置cで第3コンベア28に乗り移り、途中の位置fでラインAとラインBの自動車ボディ18が合流した上でプールゾーン44に搬入され、必要に応じてこのプールゾーン44で適宜プールされた後、第2移載手段52で回転用台車22上から上記第2一般搬送コンベア14上の一般台車20上に移載され、該台車20上に保持されてこの第2一般搬送コンベア14により本加熱硬化ゾーン48に搬入され、該ゾーン48に設置された本加熱炉を通過する間に、ベース塗膜およびクリア塗膜の温度を反応開始温度以上の温度に所定時間保持してベース塗膜およびクリア塗膜を本硬化、例えば架橋反応が80%以上行なわれる程度まで硬化させる本加熱硬化が行なわれる。
【0139】
なお、上記本加熱硬化ゾーン48における本加熱硬化工程および予備加熱硬化ゾーン中の半加熱硬化ゾーン42bにおける半加熱硬化工程では、共に塗料の温度が反応開始温度以上とされて該塗料は反応硬化せしめられるので、それらの本加熱硬化工程および半加熱硬化工程は加熱硬化工程中の反応硬化工程を構成する。
【0140】
上記本加熱硬化ゾーン48で本加熱硬化が終了したら、自動車ボディ18は第2一般搬送コンベア14によって図示しない検査ゾーンに搬送され、該ゾーンで塗装検査が行なわれる。
【0141】
また、上記第2移載手段52で自動車ボディ18が第2一般搬送コンベア14に移載された後の空の回転用台車22は、第3コンベア28で上述のリフタ29まで搬送され、該リフタ29によって1階部分の空台車メンテナンス用搬送コンベア45に送られ、該コンベア45上を搬送され一周してリフタ29に戻る途中で必要に応じて台車22の清掃、保持、点検等のメンテナンスが行なわれた後、リフタ29により再度第1コンベア24上に送り出され、回転用搬送コンベア16上を循環せしめられる。即ち、回転用台車22は回転用搬送コンベア16を1周するごとに空台車メンテナンス用搬送コンベア45に送られて清掃、保守、点検等のメンテナンスが行われ、その後再使用される。また、回転用搬送コンベア16は定期的にメンテナンスが行われる。この場合、回転用台車22は全て回転用搬送コンベア16から一旦1階部分の空台車メンテナンス用搬送コンベア45に送られ、空になった状態で回転用搬送コンベア16のメンテナンスが行われる。従って、この空台車メンテナンス用搬送コンベア45は回転用搬送コンベア16上に位置する全ての回転用台車22を収容し得るだけの長さを必要とする。また、この回転用搬送コンベア16のメンテナンスと同時に空台車メンテナンス用搬送コンベア45上に送られた回転用台車22のメンテナンスを行うこともできる。
【0142】
<塗装装置の変更態様>
本実施例では、加熱硬化工程を実現するための加熱炉を予備加熱炉と本加熱炉とに分離し、それらを別個の場所に設置した構成を採用しているが、必ずしも予備加熱炉と本加熱炉とに分離する必要はなく、予備加熱硬化と本加熱硬化とを1つの加熱炉で行うようにしても良い。また、本実施例では予備加熱炉を遠赤外線式とし、本加熱炉を熱風式としているが、それらの加熱方式は実施例のものに限定されるものではなく、適宜の方式を採用することができる。
【0143】
本実施例のように予備加熱炉と本加熱炉とを分離した場合には、以下のような利点を享受することができる。即ち、加熱炉としては熱風式のものが構成も簡単であり熱源コストも安価であるので好都合であるが、予備加熱硬化と本加熱硬化とを1つの加熱炉で行うようにした場合、該加熱炉の前部すなわち上記予備加熱硬化を行う部分においては、塗料は未だ塗料ダレを生じ得る状態であり得るので被塗物を回転させる必要があり、この様に被塗物を回転させると自動車ボディ内の塵埃やゴミが出てきてそこに熱風を吹き付けるとその塵埃やゴミが未だ未硬化の塗膜表面に付着してしまうという問題が生じる。そこで、そのような問題を回避するため加熱炉は例えば遠赤外線による加熱炉を採用することとなるが、その様な遠赤外線による加熱炉は非常に高価である。そこで、上記のように予備加熱硬化を行う部分と本加熱硬化を行う部分とを分離し、予備加熱炉を例えば遠赤外線式とし、本加熱炉を熱風式とすることにより、上記の塵埃やゴミ付着の問題を解消しつつ炉を全体として安価に構成することができる。
【0144】
また、上述のように加熱炉の前部すなわち上記予備加熱硬化を行う部分においては、塗料は未だ塗料ダレを生じ得る状態であり得るので被塗物を回転させる必要があり、従って予備加熱硬化と本加熱硬化とを1つの加熱炉で行うようにした場合、該加熱炉は上記の回転用搬送コンベア16上に配設しなければならず、そうすると回転用搬送コンベア16つまり回転塗装ラインが長くなるという問題が生じる。そこで、上記のように予備加熱硬化を行う部分と本加熱硬化を行う部分とを分離し、回転が必要な予備加熱炉のみを回転用搬送コンベア16上に配設し、回転が不必要な本加熱炉は一般搬送コンベア14上に配設することにより、回転塗装ラインを短くすることができる。
【0145】
さらに、予備加熱硬化と本加熱硬化とを1つの加熱炉で行うようにした場合、上述のように加熱炉としては熱風式のものが構成も簡単であり熱源コストも安価であるので好都合であるが、熱風式とする場合には熱効率の関係から山型炉を使用したい。山型炉は、高くなった基部に熱が蓄えられ、平型炉に比して炉の両端部分から熱が逃げにくいからである。しかしながら、加熱炉のうち上記予備加熱硬化を行う部分では上述のように回転用台車を使用する必要があり、この回転用台車は一般台車に比してその全長が長く、従ってもしこの予備加熱硬化を行う部分を山型炉で構成すると、その山型炉のうち傾斜部の両端における平坦部との接続部部分をよりなだらかする必要があり(台車の全長が長いとこの接続部分がなだらかでないと台車がコンベアから外れてしまう)、そのため炉長が長くなり、結果として回転塗装ラインが長くなるが、上記のように予備加熱硬化を行う部分と本加熱硬化を行う部分とを分離し、回転が必要な予備加熱炉のみを遠赤外線式の平型炉として回転用搬送コンベア16上に配設し、回転が不必要な本加熱炉は熱風式の山型炉として一般搬送コンベア14上に配設することにより、回転塗装ラインを短くすると共に炉全体を安価に構成することができる。
【0146】
また、上記実施例では加温と半加熱硬化とを1つの予備加熱炉で行っているが、加温を行う加熱炉と半加熱硬化を行う加熱炉とを分離して別個に配置することも可能である。この場合には、塗料ダレは基本的に加温工程で生じ、半加熱硬化工程では生じないので、自動車ボディの回転は、この加温工程を行う加熱炉のみとすることも可能である。
【0147】
<プールゾーン>
次に、上記プールゾーン44について説明する。上述の様に、予備加熱硬化ゾーン42と第2移載手段52との間において第3コンベア28にプールゾーン44が設けられている。このプールゾーン44は予備加熱硬化が終了した自動車ボディ18を保持した回転用台車22を所定台数一時的に貯留するためのものである。
【0148】
被塗物に対する塗料の塗布は通常複数回に分けて行なわれ、塗布された塗料の膜厚がダレ限界厚以上とされるのは通常最終的な塗布ゾーンである。上記塗料がダレ限界厚以上の厚さに塗布される上塗クリア塗布においても第1クリア塗布ゾーン38aと第2クリア塗布ゾーン38bとで2回に分けて塗料の塗布が行なわれ、最終の第2クリア塗布ゾーン38bにおいて塗料がダレ限界厚以上の厚さに塗布される。
【0149】
この場合において、塗料をダレ限界厚以上の厚さに塗布する前の工程で不都合が発生して、例えば塗料塗布ロボットや搬送コンベアが故障して塗装ラインが停止すると、第2クリア塗布ゾーン38bにおいてダレ限界厚以上の厚さに塗料が塗布された自動車ボディ18もその位置で停止することとなり、この停止によってやがて塗料のダレが生じ、塗装不良という事態が生じる。
【0150】
そこで、上記塗装ラインにおいては、上塗クリア塗布ゾーン38のうち塗料をダレ限界厚未満の厚さに塗布する第1クリア塗布ゾーン38aとその後に塗料をダレ限界厚以上の厚さに塗布する第2クリア塗布ゾーン38bとの間で搬送コンベアを分離し、第1クリア塗布ゾーン38a側の第1コンベア24と第2クリア塗布ゾーン38b側の第2コンベア26とを別個独立に駆動制御可能に構成されている。かかる構成により、第1クリア塗布ゾーン38aあるいはそれより上流側において何等かの故障が発生して第1コンベア24が停止しても、第2コンベア26はそのまま作動させて第2クリア塗布ゾーン38bでダレ限界厚以上の厚さに塗料が塗布された自動車ボディ18を第2クリア塗布ゾーン38bから引き出し、自動車ボディ18を回転させるセッティングゾーン40に搬入し、該ゾーン40で自動車ボディ18を回転させて塗料ダレを防止することができる。
【0151】
しかしながら、上記の如きコンベア構成を採用しても、第2クリア塗布ゾーン38bより下流側の工程、例えば上記塗装ラインの場合第2移載手段52、本加熱硬化ゾーン48あるいはその後の検査、組立工程で不都合が発生し、そこから下流側に自動車ボディ18を搬送し得なくなった場合、第2クリア塗布ゾーン38bよりも下流側の搬送コンベア上に回転用台車等の搬送台車が詰まっていると、該第2クリア塗布ゾーン38bから回転用台車22を引き出して自動車ボディ18を回転領域(セッティングゾーン40または予備加熱硬化ゾーン42)に搬入し回転させることが不可能となり、塗装不良が生じる。
【0152】
上記プールゾーン44は、上記の如き不都合を解消するためのものであり、かかるプールゾーン44の存在により、該プールゾーン44よりも下流側の工程で、例えば第2移載手段52、本加熱硬化ゾーン48、第2一般搬送コンベア14あるいは検査、組立工程等で不都合が生じても、該プールゾーン44に回転用台車22を一時的に貯留することにより、第2クリア塗布ゾーン38bにおいてダレ限界厚以上の厚さに塗料が塗布された自動車ボディ8を該第2クリア塗布ゾーン38bから確実に引き出して自動車ボディ18を回転領域に搬入して回転させる、さらには単に回転させてダレ防止を図るだけでなく予備加熱硬化も行ってゴミ等の付着の問題解消をも図ることが可能である。
【0153】
上記プールゾーン44は、本実施例では第3コンベア28に別個の貯留用コンベア44aを位置α,βで接続し、この貯留用コンベア44a上に回転用台車22を一時的に貯留可能とすることにより構成されているが、その他にも次の様な態様でプールゾーン44を構成することができる。
【0154】
例えば、図示の様に第1クリア塗布ゾーン38aと第2クリア塗布ゾーン38bとの間で搬送コンベアを分離し、コンベアの搬送能力(単位時間当りに搬送可能な台車の数)を、第1クリア塗布ゾーン38a側の第1コンベア24よりも第2クリア塗布ゾーン38b側の第2および第3コンベア26,28の方を大とし、この搬送能力の差を利用して第2もしくは第3コンベア26,28そのものによって構成することができる。即ち、第1コンベア24よりも第2、第3コンベア26、28の搬送能力を大きくすれば、第2、第3コンベア26、28上においては各回転用台車22の間に所定長の間隔が生じ、必要に応じてこの各回転用台車22を近接させてそれぞれの間隔を狭めれば、上記所定長の間隔を寄せ集めただけのスペースが第2、第3コンベア26、28上に生じ,この第2、第3コンベア26、28上のスペースをプールゾーン44として利用することができる。
【0155】
あるいは、図示の様に、上記第2クリア塗布ゾーン38b側のコンベアを予備加熱硬化ゾーン42終了地点より下流側の所定地点(本実施例では予備加熱硬化ゾーン42終了地点)cにおいて別個独立に制御可能な2つのコンベアつまり第2コンベア26と第3コンベア28とに分離し、第2コンベア26よりも第3コンベア28の搬送能力を大とし、この搬送能力の差を利用して第3コンベア28そのものによってプールゾーン44を構成することもできる。
【0156】
上記プールゾーン44における貯留可能台車数は、上記第2クリア塗布ゾーン38bでダレ限界厚以上に塗料が塗布された自動車ボディ18を該ゾーン38bから全て引き出し可能とすべく、少なくとも該第2クリア塗布ゾーン38b中に位置する台車の数とすることが必要である。
【0157】
上記プールゾーン44における貯留可能台車数は、第2クリア塗布ゾーン38b中に位置する台車の数のみでなくさらにセッティングゾーン40中に位置する台車の数を加えた数であることが望ましい。そうすれば、少なくとも第2クリア塗布ゾーン38b中の回転用台車22とセッティングゾーン40中の回転用台車22との全てを予備加熱硬化ゾーン42中に搬入もしくは通過させることができ、セッティングゾーン40において自動車ボディ18を長時間回転させている間に塗膜にゴミ等が付着するという問題を回避することができる。
【0158】
さらに、プールゾーン44における貯留可能台車数は、第2クリア塗布ゾーン38bおよびセッティングゾーン40中に位置する台車の数にさらに予備加熱硬化ゾーン42中に位置する台車の数を加えた数以上であることが望ましい。そうすれば、少なくとも第2クリア塗布ゾーン38bおよびセッティングゾーン40中の回転用台車22と予備加熱硬化ゾーン42中の回転用台車22との全てを予備加熱硬化ゾーン42を通過させて該台車22上の自動車ボディの塗膜の予備加熱硬化を終了させることができ、自動車ボディ18の塗膜にゴミ等が付着するという問題を確実に回避することができる。
【0159】
<塗膜硬化に至るまでの塗料状態の制御>
次に、上記クリア塗装においてクリア塗料が塗布された後該塗料が硬化するまでの間における該クリア塗料の状態制御について説明する。
【0160】
前述の様に、クリア塗装においては、塗料として揮発性溶剤を有すると共に加熱により硬化する熱硬化型塗料であるクリア塗料が用いられ、該クリア塗料が、第2クリア塗布ゾーン38bで、セッティングゾーン40におけるセッティング工程においておよび予備加熱硬化ゾーン42における予備加熱硬化工程において、自動車ボディ18の上下方向に延びる面では通常では重力による塗料ダレが生じるであろう厚さ以上の厚さに塗布され、かつそのセッティング工程および予備加熱硬化工程では塗料ダレが生じないように自動車ボディ18が回転せしめられる。
【0161】
この場合において、クリア塗料は、前述の様に、下地凹凸の影響を回避すべく、所定時点において塗料が流動性を有しかつ該塗料中の揮発性溶剤の占有率が30重量%以下になるように、好ましくは10重量%以下になるように制御される。
【0162】
上記所定時点はクリア塗料をダレ限界厚以上の厚さに塗布した後該塗料が硬化し始めまでの間のいずれの時点でも良く、従って例えばセッティング工程中のいずれかの時点もしくはセッティング工程終了時点において塗料が流動性を有しかつ該塗料中の揮発性溶剤の占有率が30重量%以下好ましくは10重量%以下になるようにしても良いし、予備加熱硬化工程中において塗料が流動性を有しかつ該塗料中の揮発性溶剤の占有率が30重量%以下好ましくは10重量%以下になるようにしても良い。
【0163】
上記塗料状態の制御は、塗料の種類、溶剤の種類や量、塗料の塗布厚さ、セッティング条件や予備加熱硬化条件等を適宜調整することにより行なわれる。
【0164】
この塗料状態の制御の具体例を挙げると次の通りである。
【0165】
(1) セッティング工程中のいずれかの時点もしくはセッティング工程終了時点における塗料状態の制御
(a) 流動性は十分にあるが溶剤量が大きい場合
この場合は流動性を確保しながら溶剤量を下げる調整を行なう。具体例は次の通りである。
【0166】
i) 溶剤の一部を蒸発の速いもの(沸点が低いもの)に変更する。
【0167】
ii) 塗料の固形分の占有率を増やす。
【0168】
iii) セッティング時間を延ばす。
【0169】
iv) セッティング温度を上げる(但し、セッティング温度は40℃を超えない範囲とする)。
【0170】
(b) 溶剤量は少ないが流動性が得られない場合
この場合は溶剤量を増やして流動性を付与する調整を行なう。具体例は次の通りである。
【0171】
i) 溶剤の一部を蒸発の遅いもの(沸点が高いもの)に変更する。
【0172】
ii) 塗料の固形分の占有率を減らす。
【0173】
iii) セッティング時間を縮める。
【0174】
また、溶剤量をそのままにして流動性を付与する調整を行なっても良い。具体例は次の通りである。
【0175】
iv) 塗膜の膜厚を大きくする。
【0176】
(2) 加熱硬化工程中のいずれかの時点における塗料状態の制御(温度保持加温を行なわず、塗料温度を略直線的に上昇させる場合)
(a) 流動性は十分にあるが、溶剤量が大きい場合
この場合は、流動性を確保しながら溶剤量を下げる調整を行なう。具体例は次の通りである。
【0177】
i) 温度保持加温を行う前(セッティング工程を有する場合はセッティング工程終了時)の塗料固形分の占有率を増大させる。この場合の調整方法としては、上記(1) (a) i),ii),iii),iv)を用いることができる。
【0178】
ii) 昇温速度を遅くする。
【0179】
(b) 溶剤量は少ないが流動性が得られない場合
この場合は、溶剤量を増やして流動性を付与する調整を行なう。具体例は次の通りである。
【0180】
i) 温度保持加温を行う前(セッティング工程を有する場合はセッティング工程終了時)の塗料固形分の占有率を減少させる。この場合の調整方法としては、上記(1) (b) i),ii),iii)を用いることができる。
【0181】
ii) 昇温速度を速くする。
【0182】
また、溶剤量をそのままにして流動性を付与する調整を行なっても良い。具体例は次の通りである。
【0183】
iii) 塗膜の膜厚を大きくする。
【0184】
iv) 反応開始温度の高い塗料に変更する。
【0185】
(3) 加熱硬化工程中のいずれかの時点における塗料状態の制御(セッティング工程を有しかつ温度保持加温を行なう場合)
(a) 流動性は十分にあるが、溶剤量が大きい場合
この場合は流動性を確保しながら溶剤量を下げる調整を行なう。具体例は次の通りである。
【0186】
i) セッティング工程終了時の塗料固形分の占有率を増大させる。この場合の調整方法としては、上記(1) (a) i),ii),iii),iv)を用いることができる。
【0187】
ii) 温度保持加温の温度を上げる。
【0188】
iii) 温度保持加温の時間を延長する。
【0189】
(b) 溶剤量は少ないが流動性が得られない場合
この場合は、溶剤量を増やして流動性を付与する調整を行なう。具体例は次の通りである。
【0190】
i) セッティング工程終了時の塗料固形分の占有率を減少させる。この場合の調整方法としては、上記(1) (b) i),ii),iii)を用いることができる。
【0191】
ii) 温度保持加温の温度を下げる。
【0192】
iii) 温度保持加温の時間を短くする。
【0193】
また、溶剤量をそのままにして流動性を付与する調整を行なっても良い。具体例は次の通りである。
【0194】
iv) 塗膜の膜厚を大きくする。
【0195】
(4) 加熱硬化工程中のいずれかの時点における塗料状態の制御(セッティング工程なしで温度保持加温を行なう場合)
(a) 流動性は十分にあるが、溶剤量が大きい場合
この場合は流動性を確保しながら溶剤量を下げる調整を行なう。具体例は次の通りである。
【0196】
i) 溶剤の一部を蒸発の速いもの(沸点が低いもの)に変更する。
【0197】
ii) 塗料の固形分の占有率を増やす。
【0198】
iii) 温度保持加温の温度を上げる。
【0199】
iv) 温度保持加温の時間を延長する。
【0200】
(b) 溶剤量は少ないが流動性が得られない場合
この場合は溶剤量を増やして流動性を付与する調整を行なう。具体例は次の通りである。
【0201】
i) 溶剤の一部を蒸発の遅いもの(沸点が高いもの)に変更する。
【0202】
ii) 塗料の固形分の占有率を減らす。
【0203】
iii) 温度保持加温の温度を下げる。
【0204】
iv) 温度保持加温の時間を短くする。
【0205】
また、溶剤量をそのままにして流動性を付与する調整を行なっても良い。具体例は次の通りである。
【0206】
v) 塗膜の膜厚を大きくする。
【0207】
(セッティング工程中における塗料状態の制御)
まず、セッティング工程中における塗料状態の制御について、より詳細に説明する。本発明者らは、セッティング工程中における塗料状態を種々変化させて該塗料状態と塗膜表面の平滑性との関係を調べる試験を行なった。以下、この試験について説明する。
【0208】
(I) 試験条件
(1) 試験片
(a) 試験板
横300×縦100×厚さ0.7mm(各試験片間の表面凹凸の程度を均一にするため、表面をレーザ凹凸処理した鋼板を用いた。)
(b) 下地処理
i) 電着塗装:膜厚20μ、175℃×30分加熱硬化
ii) 中塗塗装:膜厚35μ、熱硬化オイルフリーポリエステル塗料、140℃×25分加熱硬化
【0209】
中塗塗装後、ポリエステルテープを貼り付けた塗面のPGD値が0.6のものを選別し、仕上りレベルを均一とした。PGD値は、写像鮮鋭度を表わす値の1つであり、視力表と同様に大きさを大から小に徐々に変化させた複数の数字を記載したチャートを塗膜表面に映し、これを撮像装置で撮像して読み取り、読み取った数字のうちどの大きさの数字までが判別できるかによって定められる値である。PGD値0.6は以下に述べる同じく写像鮮鋭度を表わす値の1つであるNSIC値の50〜60程度に相当し、PGD値の1.0以上はNSIC値の約85以上に相当する。なお、PGD値は反射を利用して測定するものであるが、中塗塗膜表面は光沢がないので、中塗塗膜表面にポリエステルテープを貼り付け、そこに反射させて測定した。
【0210】
(2) 上塗塗装
(a) ベース塗布
i) 膜厚 20μ
ii) 塗料 熱硬化アクリル−メラミン塗料、NV(塗料中の固形分)20重量%、粘度13秒/#4FC・20℃
iii) 塗布条件
・塗布機 静電エア霧化塗布機
・エアー圧 3.0kg/cm2
・吐出量 350cc/min
・電圧 −90kV
・距離 300mm
iv) 塗布方法
・2回塗り(1回目と2回目との間の放置時間5分)
・被塗物を上下方向に固定し、コンベアで搬送(搬送速度4.0m/分)しながら被塗物に対して直角方向にレシプロ塗布(レシプロストローク1000mm、レシプロ速度70m/分)する。
・1回目と2回目との膜厚配分 1:1
(b) クリア塗布
i) 膜厚・標準膜厚 60μ
・比較膜厚 40μ
ii) 塗料
・標準塗料熱硬化アクリル−メラミン塗料、NV40重量%、粘度22秒/#4FC・20℃
・比較塗料1
上記標準塗料において溶剤を蒸発速度の大きいものに変更、NV41.8重量%、粘度25秒/#4FC・20℃
・比較塗料2
上記標準塗料において溶剤を蒸発速度の小さいものに変更、NV38.9重量%、粘度18秒/#4FC・20℃
【0211】
上記各塗料の組成およびダレ特性は下記表1および表2に示す通りである。なお、表1中の溶剤の各成分に付記した温度はそれぞれの成分の沸点である。また、表2中のダレ限界厚は塗料温度を20℃に保った場合のダレ限界厚である。
【0212】
【表1】
Figure 0003541434
【0213】
【表2】
Figure 0003541434
【0214】
表2中のセッティング時のダレ量は、前述の図3に示す様に下半分にテープを貼った被塗面に塗料を塗布した後被塗面を上下方向にセットしてテープ剥ぎ、その状態で雰囲気温度20℃×60分のセッティングを行ない、該セッティング終了時に測定したダレ量であり、上記加熱時のダレ量は、同じく下半分にテープを貼った被塗面に塗料を塗布した後被塗面を回転させながら雰囲気温度20℃×8分のセッティングを行ない、その後被塗面を上下方向にセットしてテープを剥ぎ、その状態で加熱炉に投入して炉内雰囲気温度を15℃/分×8分で昇温させて140℃まで上昇させ、140℃に到達した後炉内雰囲気温度を140℃に維持した状態の下で20分間放置して加熱を続け、その加熱が終了した時点で測定したダレ量である。
【0215】
iii) インターバル
ベース塗布終了からクリア塗布開始までの放置時間8分
iv) 塗布条件
・塗布機 静電回転霧化塗布機
・シェーピングエアー 1.5kg/cm2
・吐出量 200〜300cc/分
・電圧 −90kV
・距離 300mm
v) 塗布方法
・2回塗り(1回目と2回目との間の放置時間2分)
・被塗物を上下方向に固定し、コンベアで搬送(搬送速度4.0m/分)しながら被塗物に対して直角方向にレシプロ塗布(レシプロストローク500mm、レシプロ速度18m/分)する。
・1回目と2回目との膜厚配分 2:3(吐出量で調整)
(c) 吹付室の条件
温度20±1℃、湿度75±5%RH、風速0.3〜0.4m/s
(d) 回転条件
自動車ボディの塗装条件を考慮して、クリア塗料の吹付けが終了した後その吹付け位置で2分間放置し、その後試験片を回転装置に対して該装置の回転軸心から80cm離れた位置にセットし、回転数10rpmで回転させた。なお、上記2分間の放置では塗料ダレは生じない。
(e) セッティング条件および加熱硬化条件は以下の試験および試験結果に記載の通り。
【0216】
(II) 試験
(1) 試験1
前述の試験片に前述の下地処理および上塗塗布(クリア塗布は標準塗料を使用し、膜厚は標準膜厚60μ)を行ない、それを前述の回転条件で回転させながら下記の条件でセッティングおよび加熱硬化を行ない、セッティング終了時の塗料の状態と硬化後の塗膜表面の平滑性とを下記の方法で測定した。
【0217】
(a) セッティング
下記の2種類のセッティング温度(セッティング雰囲気温度)の下でセッティング時間を下記の通り異ならせ、上記回転条件で回転させながらセッティングを行なった。
i) セッティング温度
20±1℃,30±1℃(湿度75±5%RH、風速0.3〜0.4m/秒)
ii) セッティング時間
4,6,8,10,15,30,60分
【0218】
(b) 加熱硬化
上記回転条件で回転させながら上記の各セッティング条件でセッティングを行なった試験片を、セッティング終了後直ちに同じく上記回転条件で回転させながら炉内雰囲気温度を140℃に維持した加熱炉に投入し、投入してから10分後に回転を停止し、その後その140℃に維持した加熱炉内にさらに15分間放置して加熱を続けた。
【0219】
(c) 塗料状態の測定
i) NV量の測定
上記クリア塗料の吹付け後(セッティング開始前)および加熱炉投入直前(セッティング終了時点)のそれぞれの時点におけるクリア塗料のNV量(クリア塗料に含まれる固形分の比率)を重量法で下式により測定した。
【0220】
【数1】
Figure 0003541434
【0221】
ii) 流動性(ダレ量)の測定
上記クリア塗料の加熱炉投入直前(セッティング終了時点)における流動性(ダレ量)を次の方法で測定した。即ち、前述の試験片(ただし、寸法は400×400mm)に前述の下地処理を行ない、その後図3に示す様に試験片の下半分にテープを貼り付け、このテープを貼り付けた側の全表面に前述と同様のベース塗布およびクリア塗布を行ない、これを前述の回転条件で回転させながら前述の各セッティング条件でセッティングし、セッティング終了後上記テープを剥いでテープが貼られていた側を下にして上下方向にセットし、それぞれのセッティング温度下で60分放置した際のダレ量(ダレ長さ)を測定した。
【0222】
(d) 塗膜表面の平滑性の測定
上記加熱硬化を行なった後の塗膜表面の平滑性を次の方法で測定した。即ち、スガ試験器(株)製の写像鮮映測定装置(NSIC)を用いて塗膜表面の写像鮮映度(平滑度)を測定した。この測定は、被測定面と光源との間に直線スリットが形成されたスリット板を配置し、光源からの光をスリット板のスリットを通して被測定面に照射し、その被測定面を撮像装置で撮像し、撮像された画像中のスリット線像の直線性および明度差(スリット線像とその隣りの背景像との明度差)とに基づいて写像鮮映度(NSIC値)を演算するものであり、被測定面が黒鏡の場合を100とし、それとの相対値で表わされる。
【0223】
(2) 試験2
上記試験1において、膜厚は変更せず塗料を上記標準塗料から比較塗料1に変更し、その他は上記試験1と全く同様の方法で試験を行なった。ただし、セッティングは20±1℃で4分,6分,8分のみとした。
【0224】
(3) 試験3
上記試験1において、塗料は変更せず膜厚を上記標準膜厚60μから比較膜厚40μに変更し、その他は上記試験1と全く同様の方法で試験を行なった。ただし、セッティングは20±1℃で4分,6分,8分,10分,15分,30分,60分のみとした。
【0225】
(4) 試験4
上記試験1において、膜厚は変更せず塗料を上記標準塗料から比較塗料2に変更し、その他は上記試験1と全く同様の方法で試験を行なった。ただし、セッティングは20±1℃で4分,6分,8分,10分,15分,30分,60分のみとした。
【0226】
(5) 参考試験
上記試験1,2に対しては参考試験を行なった。この参考試験は下地が極めて平滑な試験片に対して同様のクリア塗布、セッティングおよび加熱硬化を行なった場合の塗膜表面の平滑度を調べたものであり、上記下地が極めて平滑な試験片としては、ミガキ板に中塗塗布(膜厚40〜50μ)を行ない、中塗塗布を加熱硬化させた後その表面を水研(#1000)して平滑化したものを用いた。
【0227】
(III) 試験結果
上記試験1〜4および参考試験の結果を下記表3,表4に示す。なお、上記試験1〜4において、試験片は上述の様に小さいのでその熱容量も小さく、従って塗料の温度は多少の時間遅れはあるものの雰囲気温度と同一になるとみなされる。この点については以下の試験においても同様である。
【0228】
【表3】
Figure 0003541434
【0229】
【表4】
Figure 0003541434
【0230】
上記試験1〜4は、セッティング条件、クリア塗料の種類(特に含有されている溶剤の種類および量)およびクリア塗膜の厚さ(クリア塗料の塗布量)を種々異ならせることによりセッティング終了時点もしくはそれ以前のセッティング中の所定時点(以下これらをまとめてセッティング時点と称す)における塗料の流動性とNV量とを種々異ならせ、かつセッティング終了後試験片を直ちに炉内雰囲気温度が140℃に維持された加熱炉に直投して直ちに塗料を硬化させ、それによって加熱炉内で生じる流動性による塗膜表面の平滑性への影響を排除し、もってセッティング時の塗料の状態と最終的な塗膜表面の平滑性との関係を調べたものである。
【0231】
これらの試験結果から、セッティング時点において塗料が流動性を有しかつNV量が70重量%以上つまり溶剤量が30重量%以下であれば、NSIC値は80以上となり、下地凹凸の影響を受けない極めて良好な塗膜表面の平滑性が得られることが認められる。なお、従来の一般的な塗装方法により塗装した場合にはその塗膜表面の平滑性はNSIC値で70台が上限であり、80台のNSIC値を得ることは極めて困難であった。従って、上記NSIC値が80以上ということは従来の塗装方法とは明確に区別し得る極めて優れた平滑性が得られていることを意味する。
【0232】
次に、上記試験1〜4の結果について、より具体的に説明する。
【0233】
まず、試験1の結果から、炉前即ちセッティング終了時点において塗料が流動性を有する(ダレ量が1mm以上)場合にはNV量が大きくなる程塗膜表面の平滑性は良くなることが認められる。このことは、試験1ではセッティング終了後直ちに140℃の加熱炉に直投して塗料を硬化させるのでセッティング終了時のNV量は流動性を消失する直前のNV量であるとみなすことができ、従って塗料が流動性を消失する直前のNV量が大きい程塗膜表面の平滑性は良くなる、つまり流動性消失時点のNV量が大きい程塗膜表面の平滑性は良くなることを意味する。
【0234】
また、この試験1の結果から、流動性を消失する直前のNV量が70重量%より小であるとNSIC値も80より小であるが、NV量が70重量%以上になるとNSIC値が80以上になることが認められる。
【0235】
さらに、20℃および30℃のいずれの場合も30分,60分のときはセッティング終了時点で既に流動性を消失しており、そのときのNSIC値はそれぞれの温度において15分の場合と同じ値となっている。しかして、30分,60分の場合はセッティングの途中で流動性を消失し、その消失直前のNV量は15分のセッティング終了時点のNV量と略同じ(15分の場合のダレ量は20℃のとき2mm、30℃のとき1mmであり、これはほぼ流動性を消失する直前であることを意味する)であるはずである。従って、上記30分,60分の場合のNSIC値は15分の場合のNSIC値と同じであるということから、セッティング終了時点であるとセッティング中であるとに拘らず、結局流動性を消失する直前のNV量が塗膜表面の平滑性を支配することが理解され、かつ試験1の結果全体から結局流動性を消失する時点のNV量が大きければ平滑性は向上し、かつそのNV量が70重量%以上であればNSIC値は80以上になることが認められる。
【0236】
また、試験2の結果からも、上記試験1の場合と同様に、塗料の流動性を消失する直前のNV量が大きい程塗膜表面の平滑性は向上し、かつ数値的にはNV量が70重量%以上であればNSIC値は80以上になることが認められる。また、この試験2は、塗料の溶剤を蒸発速度の大きいものに変更し、同じセッティング条件の下において試験1の場合よりもセッティング終了時点のNV量を増大させたものであり(20℃×4分,6分,8分の場合、炉前のNV量が試験1では63,68,72重量%であるのに対し、試験2では70,74,78重量%と増大している)、この試験2の結果から塗料を変更してNV量を増大させればそれに応じてNSIC値も増大することが認められる。
【0237】
また、試験3は上述の様に膜厚を40μに減らして流動性を小さくしたものであり、この試験3の結果からセッティング終了時点においてNV量が70重量%以上であっても流動性を有していない場合にはNSIC値は非常に小さく、80以上にはならないことが認められる。
【0238】
また、試験4の結果からも、上記試験1の場合と同様に、塗料が流動性を消失する直前のNV量が大きい程塗膜表面の平滑性は向上し、かつ数値的にはNV量が70重量%以上であればNSIC値が80以上になることが認められる。また、この試験4は上述の様に塗料の溶剤を蒸発速度の小さいものに変更し、同じセッティング条件の下において試験1の場合よりもセッティング終了時点のNV量を減少させたものであり、(例えば20℃×4分,6分,8分の場合、炉前のNV量が試験1では63,68,72重量%であるのに対し試験4では55,57,60重量%と減少している)、この試験4の結果から塗料を変更してNV量を小さくすればそれに応じてNSIC値も減少することが認められる。
【0239】
さらに、上記試験1,2に対しては上記参考試験を行なっており、試験1,2の結果と参考試験の結果とを比較すると、同じセッティング条件同志でのNSIC値の差はNV量が大きくなる程小さくなっている。例えば試験1のセッティング温度20℃の場合を例に挙げると下記の通りである。
【0240】
Figure 0003541434
この様にNSIC値の差がNV量の増大に伴なって小さくなるということは、結局NV量が増大する程下地の凹凸の影響を受けにくくなっているということを意味し、従って上記NV量の増大に伴なう平滑性の増大はNV量の増大に伴なう下地の凹凸の影響回避度合の増大に起因するものであることが認められる。
【0241】
(加熱硬化工程中における塗料状態の制御)
次に、加熱硬化工程中における塗料状態の制御について、より詳細に説明する。本発明者らは、加熱硬化工程中における塗料状態を種々変化させて該塗料状態と塗膜表面の平滑性との関係を調べる試験を行なった。以下、この試験について説明する。
【0242】
(I) 試験条件
試験条件、即ち試験片および上塗塗装については、前述のセッティング工程中における塗料状態の制御の場合の試験と同一である。ただし、クリア塗布において膜厚は標準膜厚60μ、塗料は標準塗料のみを用いた。
【0243】
(II) 試験
(1) 試験5
前述の試験片に前述の下地処理、ベース塗布およびクリア塗布(上述の様に、クリア塗布は標準塗料を使用し、膜厚は標準膜厚60μ)を行ない、それを前述の回転条件で回転させながら下記の条件でセッティングおよび加熱硬化を行ない、加熱硬化中の塗料の状態と硬化後の塗膜表面の平滑性とを下記の方法で測定した。なお、平滑性の測定方法は前述の通りである。
【0244】
(a) セッティング
下記のセッティング温度の下でセッティング時間を下記の通り異ならせ、前述の回転条件で回転させながらセッティングを行なった。
i) セッテイング温度
20±1℃(湿度75±5%RH、風速0.3〜0.4m/秒)
ii) セッティング時間
4,6,8,10,15,30,60分
【0245】
(b) 加熱硬化
前述の回転条件で回転させながら上記の各セッティング条件でセッティングを行なった試験片を、セッティング終了後直ちに同じく前述の回転条件で回転させながら加熱炉に投入し、該加熱炉において炉内雰囲気温度を15℃/分で8分間20℃から140℃まで昇温させ、140℃に到達した後炉内雰囲気温度を140℃に維持した状態の下で10分後に回転を停止し、その140℃に維持した状態の下でさらに15分間放置して加熱を続けた。この場合の塗料の温度変化状態を図15に示す。
【0246】
(c) 塗料状態の測定
i) NV量の測定
上記クリア塗料の吹付け後(セッティング開始前)、加熱炉投入直前(セッティング終了時点)および加熱炉内での昇温開始3分後(炉内雰囲気温度65℃)のそれぞれの時点におけるクリア塗料のNV量を前述の場合と同様の重量法で測定した。
【0247】
ii) 流動性(ダレ量)の測定
下半分にテープを貼り付け、その上にベース塗布およびクリア塗布を行なった前述の流動性測定の場合と同様の試験片を用意し、この試験片を前述の回転条件で回転させながら上記セッティングおよび加熱硬化と同じ条件でセッティングおよび加熱硬化を行ない、加熱炉に投入し昇温開始3分後に回転を停止して炉から取り出し、上記テープを剥いでテープが貼られていた側を下にして上下方向にセットし、上記昇温開始3分後の炉内雰囲気温度65℃で60分間放置した際のダレ量(ダレ長さ)を測定した。
【0248】
なお、昇温開始3分後の時点におけるNV量とダレ量とを測定した理由は、その昇温開始3分後の65℃という温度が炉内において塗料がその流動性を消失する直前の炉内雰囲気温度であると判断したからである。
【0249】
即ち、上述の様に塗膜表面の平滑性は塗料が流動性を失う直前のNV量によって支配されると考えられ、従って炉内において塗料が流動性を失う直前のNV量と塗膜表面のNSIC値との関係を調べる必要がある。そこで本発明者らは炉内において塗料が流動性を消失する温度を調べるため、加熱炉に投入する直前のNV量を80重量%にした試料を炉に投入し、20℃から10℃/分、15℃/分、20℃/分の3つの昇温条件で昇温させ、それぞれの昇温条件の下での各時間経過後におけるダレ量を測定した。その結果は下記表5の通りである。
【0250】
【表5】
Figure 0003541434
【0251】
上記試験結果から、流動性を消失するのは大体炉内雰囲気温度が70〜80℃の時点であると認められ、従って流動性を消失する直前の炉内雰囲気温度即ち流動性を保持する限界炉内雰囲気温度は約65℃であると判断した。そして、この試験結果に基づき、炉内雰囲気温度が65℃になる昇温開始3分後の時点における流動性とNV量とを測定した。
【0252】
(2) 参考試験
上記試験5に対しては、前述の参考試験と全く同様の方法で参考試験を行なった。なお、この試験5に対する参考試験は、セッティングが20℃×4分,8分,30分,60分の場合についてのみ行なった。
【0253】
(III) 試験結果
上記試験5および参考試験の結果を下記表6に示す。
【0254】
【表6】
Figure 0003541434
【0255】
上記試験5は、セッティング条件を異ならせることにより炉内で塗料が流動性を消失する直前のNV量を異ならせ、この流動性を消失する直前のNV量と最終的な塗膜表面の平滑性との関係を調べたものである。この試験5の結果から、加熱炉内において塗料が流動性を消失する直前のNV量が増大すれば塗膜表面の平滑性も増大し、かつ数値的にはNV量が90重量%以上であればNSIC値も90以上になることが認められる。
【0256】
なお、この試験5においては炉内において流動性を消失する直前のNV量は最低で81重量%であり、その場合のNSIC値は86である。従って、流動性を消失する直前のNV量がいくらであればNSIC値が80以上になるかは、この試験5からは明らかでない。しかしながら、この試験5および上記試験1〜4の結果から明らかな様に、NSIC値は塗料が流動性を消失する直前のNV量、つまり塗料が流動性を消失した後の溶剤の蒸発による収縮量によって支配されることが認められ、そうであれば塗料が流動性を消失するのがどの時点つまりセッティング時であるか炉内であるかは特に問題にならないと推察される。従って、この炉内で流動性を消失する場合においても、セッティング時に流動性を消失する場合と同様に流動性を消失する直前のNV量が70重量%以上であればNSIC値は80以上になると推察され、かつこのことは試験5中の流動性を消失する直前のNV量とNSIC値との関係からも十分是認し得るものである。
【0257】
また、同様の理由により、本試験5で流動性を消失する直前のNV量が90重量%以上のときはNSIC値も90以上になることから、前述の試験1〜4においてもNV量が90重量%以上であればNSIC値も90以上になるものと推察され、かつこのことは試験1〜4中の流動性を消失する直前のNV量とNSIC値との関係からも十分是認し得るものである。
【0258】
なお、この試験5においてもそのNSIC値と参考試験のNSIC値とを比較すれば、試験1,2の場合と同様にNV量が大きくなればなる程下地の凹凸の影響回避度合が大きくなり、塗膜表面の平滑性が増大することが認められる。
【0259】
(温度保持加温を行なう加熱硬化工程中における塗料状態の制御)
次に、加熱硬化工程中における塗料状態の制御であって、特に加熱硬化工程においてその初期に温度保持加温を行なう場合の塗料状態の制御について、より詳細に説明する。
【0260】
上述の様に、加熱硬化工程中において塗料が流動性を消失する直前のNV量が大きければ大きい程NSIC値は良くなる。そこで、本発明者らは、加熱硬化工程において塗料の温度をその反応開始温度よりも低く常温よりも高い所定温度で所定時間保持する温度保持加温を行なえば、塗料を反応が開始せず従って流動性を消失しない状態に維持しつつ速やかにかつより多くの溶剤を蒸発させることができ、従って流動性を消失する直前のNV量を速やかにかつより大きくすることができ、より高いNSIC値を得ることが可能になると考えた。
【0261】
そこで、本発明者らは、加熱硬化工程の初期に温度保持加温を行ない、そうした場合の温度保持加温終了時の塗料の状態と塗膜表面の平滑性との関係を調べる試験を行なった。以下、この試験について説明する。
【0262】
(I) 試験条件
試験条件、即ち試験片および上塗塗布については、前述のセッティング工程中における塗料状態の制御の場合の試験と同一である。ただし、クリア塗布において膜厚は標準膜厚60μ、塗料は標準塗料のみを用いた。
【0263】
(II) 試験
(1) 試験6
前述の試験片に前述の下地処理、ベース塗布およびクリア塗布(上述の様に、クリア塗布は標準塗料を使用し、膜厚は標準膜厚60μ)を行ない、それを前述の回転条件で回転させながら下記の条件でセッティングおよび温度保持加温を有する加熱硬化を行ない、温度保持加温終了時の塗料の状態と硬化後の塗膜表面の平滑性とを下記の方法で測定した。なお、平滑性の測定方法は前述の通りである。
【0264】
(a) セッティング
下記のセッティング温度の下でセッティング時間を下記の通り異ならせ、前述の回転条件で回転させながらセッティングを行なった。
i) セッティング温度
20±1℃(湿度75±5%RH、風速0.3〜0.4m/秒)
ii) セッティング時間
6,10,30分
【0265】
(b) 加熱硬化
前記の回転条件で回転させながら上記の各セッティング条件でセッティングを行なった試験片を、セッティング終了後直ちに同じく前述の回転条件で回転させながら上記温度保持加温を行なうべく炉内雰囲気温度を所定温度に維持された第1加熱炉に直投して該炉内に所定時間保持し、その後直ちに前述の回転条件で回転させながら炉内雰囲気温度を140℃に維持された第2加熱炉に投入し、10分間炉内に保持した後回転を停止し、その後さらにその140℃に維持された炉内に15分間放置して加熱した。
【0266】
上記温度保持加温としては、クリア塗料の反応開始温度が大体70〜80℃であることに鑑み、50℃×2分,5分および65℃×2分,5分の4種類を行なった。温度保持加温50℃×5分の場合の塗料の温度変化状態を図16示す。
【0267】
(c) 塗料状態の測定
i) NV量の測定
上記クリア塗料の吹付け後(セッティング開始前)、第1加熱炉投入直前(セッティング終了時点)および第1加熱炉での温度保持加温終了時のそれぞれの時点におけるクリア塗料のNV量を前述の場合と同様の重量法で測定した。
【0268】
ii) 流動性(ダレ量)の測定
下半分にテープを貼り付け、その上にベース塗布およびクリア塗布を行なった前述の流動性測定の場合と同様の試験片を用意し、この試験片を前述の回転条件で回転させながら上記セッティングおよび温度保持加温と同じ条件でセッティングおよび温度保持加温を行ない、温度保持加温が終了した時点で回転を停止して上記テープを剥いでテープが貼られていた側を下にして上下方向にセットし、その温度保持加温と同じ温度雰囲気中で60分間放置してダレ量(ダレ長さ)を測定した。
【0269】
(2) 試験7
上記試験6はセッティングを行なった後温度保持加温を行なった場合の試験であるが、この試験6に対してセッティングを行なわないでクリア塗料の吹付け後直ちに温度保持加温を行なった場合の温度保持加温終了時の塗料状態と塗膜表面の平滑性との関係を調べた。
【0270】
この試験7は、試験6に対し、セッティングを省略し、従ってセッティング終了時のNV量測定はなく、かつ温度保持加温が50℃×2分,5分,10分および65℃×2分,5分,10分の6種類を行なった点以外は、全て試験6と同一である。温度保持加温50℃×10分の場合の塗料の温度変化状態を図17に示す。
【0271】
(3) 参考試験
上記試験6,7に対しては、前述の参考試験と全く同様の方法で参考試験を行なった。なお、この試験6に対する参考試験はセッティングが20℃×6分および30分の場合についてのみ、試験7に対する参考試験は温度保持加温が50℃×2分,10分および65℃×2分,10分の場合についてのみ行なった。
【0272】
(III) 試験結果
上記試験6,7および参考試験の結果を下記表7に示す。なお、この試験6,7においては試験片を温度保持加温の直後に140℃に維持された第2加熱炉に投入するので、試験1の場合と同様に温度保持加温終了時のNV量(表7中では炉内のNV量として記載されている)は塗料が流動性を消失する直前のNV量とみなすことができる。
【0273】
【表7】
Figure 0003541434
【0274】
上記試験6の結果から、加熱硬化において炉内雰囲気温度を試験5の様に直線的に上昇させる場合よりも、この試験6の様に常温より高く塗料の反応開始温度よりも低い所定温度で所定時間加温する温度保持加温を行なえば、塗料が流動性を消失する直前のNV量を増大させることができ、それによってNSIC値をより一層増大させることができることが認められる。
【0275】
即ち、上記試験5と試験6との結果を比較して見ると、下記の表8に示す様に、セッティングが20℃×6分,10分および30分のいずれの場合においても、試験5の場合に比して、50℃×2分の温度保持加温の場合は特に差はないが、50℃×5分、65℃×2分および5分の温度保持加温を行なった場合はいずれも、流動性消失直前のNV量が増大し、それに伴なってNSIC値も増大していることが認められ、かつ数値的には、NV量が90重量%以上であればNSIC値も90以上を確保できることが認められる。
【0276】
【表8】
Figure 0003541434
【0277】
また、セッティングを行なわずに加熱硬化を行なう場合は、炉に入る前のNV量が小さく、従って炉内での流動性消失直前のNV量は小さくなりNSIC値も大きな値を期待することは困難であると考えられるが、この様なセッティングを行なわない場合であっても加熱硬化の初期に温度保持加温を行なえば、上記試験7の結果に示される様に、流動性消失直前のNV量を70重量%以上とすることができ(温度保持加温が50℃×2分の場合を除く)、これに伴ないNSIC値も80以上を確保することができることが認められる。
【0278】
なお、この試験6,7においてもそのNSIC値と参考試験のNSIC値とを比較すれば、試験1,2の場合と同様にNV量が大きくなればなる程下地の凹凸の影響回避度合が大きくなり、塗膜表面の平滑性が増大することが認められる。
<試験結果のまとめ>
上述の様に、塗料をダレ限界厚以上の厚さに塗布し、かつ塗料のダレが生じない様に被塗物を回転させる回転塗装においては、その回転中において塗料が流動性を消失する直前の塗料中のNV量が大きければ大きい程、つまり溶剤の占有率が小さければ小さい程最終的な塗膜表面のNSIC値は増大し、より優れた平滑性が得られる。上記塗料が流動性を消失する時点は、セッティング中もしくはセッティング終了時あるいは加熱硬化中のいずれでも良い。
【0279】
また、塗料が流動性を消失する直前のNV量が70重量%以上つまり溶剤の占有率が30重量%以下であれば下地凹凸の影響を回避してNSIC値は80以上となり、従来の塗装方法では得られなかった優れた塗膜表面の平滑性を常に確保することができ、NV量が90重量%以上、つまり溶剤の占有率が10重量%以下であればNSIC値は90以上となり、さらに下地凹凸の影響を回避して優れた塗膜表面の平滑性を常に確保することができる。
【0280】
換言すれば、セッティング中もしくはセッティング終了時あるいは加熱中のいずれかの時点において、塗料が流動性を有しかつ溶剤の占有率が30重量%以下であればNSIC値が常に80以上となり優れた塗膜表面の平滑性が得られ、溶剤の占有率が10重量%以下であればNSIC値が常に90以上となりさらに優れた塗膜表面の平滑性が得られる。
【0281】
また、加熱硬化工程中において塗料を常温より高くかつ塗料の反応硬化開始温度より低い所定温度に所定時間維持する温度保持加温を行なえば、塗料が流動性を消失する直前の溶剤の占有率をより小さくすることができ、それによってより優れた塗膜表面の平滑性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】塗装の概略を示すフローチャート
【図2】塗料のダレ防止のための回転を説明する図
【図3】ダレ量の測定を説明する図
【図4】下地の影響出現を説明する図
【図5】本発明に係る塗装方法の一実施例を実施する装置を示す概略平面図
【図6】図5に示す装置の要部を示す概略正面図
【図7】図5に示す装置の空台車ストレージ部分を示す概略正面図
【図8】回転用台車の一例を示す正面図
【図9】図8の回転用台車の右側面図
【図10】予備加熱炉を示す正面図
【図11】図10の予備加熱炉の右側面図
【図12】本加熱炉を示す正面図
【図13】図12の本加熱炉の右側面図
【図14】温度保持加温を有する予備加熱硬化工程での塗料の温度変化状態を示す図
【図15】試験5における塗料の温度変化状態を示す図
【図16】試験6における塗料の温度変化状態を示す図
【図17】試験7における塗料の温度変化状態を示す図
【符号の説明】
18 被塗物
38 クリア塗布ゾーン
40 セッティングゾーン
42 予備加熱硬化ゾーン
42a 加温ゾーン
44 プールゾーン

Claims (46)

  1. 溶剤を含有する塗料を被塗物に塗布する塗布工程と、該塗布工程の後に上記塗料から上記溶剤を蒸発させるセッティング工程と、該セッティング工程の後に上記塗料を硬化させる硬化工程とを備えて成り、上記塗布工程では、上記セッティング工程において上記被塗物の上下方向に延びる面で通常では塗料ダレが生じるであろう厚さ以上の厚さに上記塗料を塗布し、該塗料の塗布後、上記塗料ダレが生じないように上記被塗物を略水平方向軸周りに回転させる塗装方法において、
    上記セッティング工程中のいずれかの時点もしくは上記セッティング工程終了時点で、上記塗料が流動性を有したまま該塗料における上記溶剤の占有率30重量%以下にすることを特徴とする塗装方法。
  2. 上記セッティング工程中のいずれかの時点もしくは上記セッティング工程終了時点において上記塗料が流動性を有したまま該塗料における上記溶剤の占有率10重量%以下にすることを特徴とする請求項1記載の塗装方法。
  3. 上記セッティング工程が、上記溶剤を常温で蒸発させるものであることを特徴とする請求項1もしくは2記載の塗装方法。
  4. 上記塗料が溶剤を含有すると共に加熱により硬化する熱硬化型塗料であり、上記硬化工程が塗料を加熱して硬化させる加熱硬化工程であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の塗装方法。
  5. 上記塗料が溶剤を含有すると共に紫外線照射により硬化する紫外線硬化型塗料であり、上記硬化工程が塗料に紫外線を照射して硬化させる紫外線硬化工程であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の塗装方法。
  6. 上記塗布工程では、上記セッティング工程および上記加熱硬化工程において上記被塗物の上下方向に延びる面で通常では塗料ダレが生じるであろう厚さ以上の厚さに上記塗料を塗布し、上記セッティング工程および上記加熱硬化工程では、上記塗料ダレが生じないように上記被塗物を略水平方向軸周りに回転させることを特徴とする請求項4記載の塗装方法。
  7. 上記塗布工程における塗料の塗布が最上層の塗膜を形成するものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の塗装方法。
  8. 上記被塗物が自動車のボディであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の塗装方法。
  9. 溶剤を含有すると共に加熱により硬化する熱硬化型塗料を被塗物に塗布する塗布工程と、該塗布工程の後に上記塗料を加熱して硬化させる加熱硬化工程とを備えて成り、上記塗布工程では、上記加熱硬化工程において上記被塗物の上下方向に延びる面で通常では塗料ダレが生じるであろう厚さ以上の厚さに上記塗料を塗布し、該塗料の塗布後、上記塗料ダレが生じないように上記被塗物を略水平方向軸周りに回転させる塗装方法において、
    上記加熱硬化工程中のいずれかの時点で、上記塗料が流動性を有したまま該塗料における上記溶剤の占有率30重量%以下にすることを特徴とする塗装方法。
  10. 上記加熱硬化工程中のいずれかの時点において上記塗料が流動性を有したまま該塗料における上記溶剤の占有率10重量%以下にすることを特徴とする請求項9記載の塗装方法。
  11. 上記塗布工程と上記加熱硬化工程との間に上記塗布工程において塗布された上記塗料から上記溶剤を蒸発させるセッティング工程を備え、上記塗布工程では、上記セッティング工程および上記加熱硬化工程において上記被塗物の上下方向に延びる面で通常では塗料ダレが生じるであろう厚さ以上の厚さに上記塗料を塗布し、上記セッティング工程および上記加熱硬化工程では、上記塗料ダレが生じないように上記被塗物を略水平方向軸周りに回転させることを特徴とする請求項9もしくは10記載の塗装方法。
  12. 上記セッティング工程が、上記溶剤を常温で蒸発させるものであることを特徴とする請求項11記載の塗装方法。
  13. 上記塗布工程における塗料の塗布が最上層の塗膜を形成するものであることを特徴とする請求項9〜12のいずれかに記載の塗装方法。
  14. 上記被塗物が自動車のボディであることを特徴とする請求項9〜13のいずれかに記載の塗装方法。
  15. 溶剤を含有すると共に加熱により硬化する熱硬化型塗料を被塗物に塗布する塗布工程と、該塗布工程の後に上記塗料を加熱して硬化させる加熱硬化工程とを備えて成り、該加熱硬化工程は、上記塗料の温度を該塗料の反応開始温度まで上昇させる加温を行う加温工程と該加温工程の後において上記塗料の温度を上記反応開始温度以上として該塗料を反応硬化させる反応硬化工程とから成り、上記塗布工程では、上記加温工程において上記被塗物の上下方向に延びる面で通常では塗料ダレが生じるであろう厚さ以上の厚さに上記塗料を塗布し、該塗料の塗布後、上記塗料ダレが生じないように上記被塗物を略水平方向軸周りに回転させる塗装方法において、
    上記加温工程では上記塗料の温度を上記反応開始温度まで上昇させる過程で該反応開始温度より低く常温より高い温度であって、上記塗料の流動性を保持しつつ上記溶剤を蒸発させることのできる所定温度に所定時間保持する温度保持加温を行うとともに、
    上記加温工程中のいずれかの時点もしくは上記加温工程終了時点において、上記塗料が流動性を有したまま該塗料における上記溶剤の占有率を 30 重量%以下にすることを特徴とする塗装方法。
  16. 上記加温工程および上記反応硬化工程において上記被塗物の回転を行わせることを特徴とする請求項15記載の塗装方法
  17. 上記加温工程中のいずれかの時点もしくは上記加温工程終了時点において上記塗料が流動性を有したまま該塗料における上記溶剤の占有率10重量%以下にすることを特徴とする請求項15もしくは16記載の塗装方法。
  18. 上記塗布工程と上記加温工程との間に上記塗布工程において塗布された上記塗料から上記溶剤を蒸発させるセッティング工程を備えていることを特徴とする請求項17記載の塗装方法。
  19. 上記セッティング工程が、上記溶剤を常温で蒸発させるものであることを特徴とする請求項18記載の塗装方法。
  20. 上記塗布工程では、上記セッティング工程および上記加温工程において上記被塗物の上下方向に延びる面で通常では塗料ダレが生じるであろう厚さ以上の厚さに上記塗料を塗布し、上記セッティング工程および上記加温工程では、上記塗料ダレが生じないように上記被塗物を略水平方向軸周りに回転させることを特徴とする請求項18もしくは19記載の塗装方法。
  21. 上記セッティング工程、上記加温工程および上記反応硬化工程において上記被塗物の回転を行わせることを特徴とする請求項2記載の塗装方法。
  22. 上記所定温度が上記所定時間に応じて設定されるものであることを特徴とする請求項15〜2のいずれかに記載の塗装方法。
  23. 上記所定時間が上記所定温度に応じて設定されるものであることを特徴とする請求項15〜2のいずれかに記載の塗装方法
  24. 上記加温工程は、それぞれ独立して温度制御可能な熱源を有する加熱領域を所定方向に複数個並設して成る分割加熱炉内に上記被塗物を上記所定方向に移動させることによって上記加温を行うものであることを特徴とする請求項15〜2のいずれかに記載の塗装方法。
  25. 上記加温工程は、遠赤外線により上記加温を行うものであることを特徴とする請求項15〜2のいずれかに記載の塗装方法。
  26. 上記塗布工程における塗料の塗布が最上層の塗膜を形成するものであることことを特徴とする請求項15〜2のいずれかに記載の塗装方法。
  27. 上記被塗物が自動車のボディであることを特徴とする請求項15〜2のいずれかに記載の塗装方法。
  28. 溶剤を含有すると共に加熱により硬化する熱硬化型塗料を被塗物に塗布する塗布手段と、上記塗料を塗布した後に該塗料を加熱して硬化させる加熱硬化手段とを備えて成り、該加熱硬化手段は、上記塗料の温度を該塗料の反応開始温度まで上昇させる加温を行う加温手段と該加温の後において上記塗料の温度を上記反応開始温度以上として該塗料を反応硬化させる反応硬化手段とから成り、上記塗布手段は上記加温手段による加温中に上記被塗物の上下方向に延びる面で通常では塗料ダレが生じるであろう厚さ以上の厚さに上記塗料を塗布するものであり、かつ該塗料の塗布後上記塗料ダレが生じないように上記被塗物を略水平方向軸周りに回転させる回転手段を有する塗装装置において、
    上記加温手段により上記塗料の温度を上記反応開始温度まで上昇させる過程で上記塗料の温度を上記反応開始温度より低く常温より高い温度であって、上記塗料の流動性を保持しつつ上記溶剤を蒸発させることのできる所定温度に所定時間保持する温度保持加温を行うように上記加温手段を制御する加温制御手段を備えているとともに、
    上記加温制御手段は、上記加温手段による加温中のいずれかの時点もしくは加温終了時点において、上記塗料が流動性を有したまま該塗料における上記溶剤の占有率が 30 重量%以下になるように上記加温手段を制御するものであることを特徴とする塗装装置。
  29. 上記回転手段が、上記加温手段による加温時および上記反応硬化手段による塗料の反応硬化時に上記被塗物を回転させるものであることを特徴とする請求項28記載の塗装装置
  30. 上記加温制御手段は、上記加温手段による加温中のいずれかの時点もしくは加温終了時点において上記塗料が流動性を有したまま該塗料における上記溶剤の占有率が10重量%以下になるように上記加温手段を制御するものであることを特徴とする請求項28もしくは29記載の塗装装置。
  31. 上記塗布手段により塗布された塗料を上記加温手段で加温する前に上記塗料から上記溶剤を蒸発させるセッティングを行うセッティング手段を備えていることを特徴とする請求項30記載の塗装装置。
  32. 上記セッティング手段が、上記溶剤を常温で蒸発させるセッティングを行なうものであることを特徴とする請求項3記載の塗装装置。
  33. 上記塗布手段は、上記セッティング中および上記加温中において上記被塗物の上下方向に延びる面で通常では塗料ダレが生じるであろう厚さ以上の厚さに塗料を塗布するものであり、上記回転手段は、上記セッティング手段によるセッティング時および上記加温手段による加温時に上記被塗物を回転させるものであることを特徴とする請求項3もしくは3記載の塗装装置。
  34. 上記回転手段が、上記セッティング手段によるセッティング時、上記加温手段による加温時および上記反応硬化手段による塗料の反応硬化時に上記被塗物を回転させるものであることを特徴とする請求項3記載の塗装装置
  35. 上記加温手段は、内部を上記被塗物が移動すると共にそれぞれ独立して温度制御可能な熱源を有する加熱領域を上記被塗物の移動方向に複数個並設して成る分割加熱炉により構成されていることを特徴とする請求項2834のいずれかに記載の塗装装置。
  36. 上記加温制御手段は、上記分割加熱炉内における上記被塗物の移動速度に応じて上記温度保持加温に供する加熱領域の数を変更制御するものであることを特徴とする請求項35記載の塗装装置。
  37. 上記加温制御手段は、上記分割加熱炉内における上記被塗物の移動速度に応じて上記所定温度を変更制御するものであることを特徴とする請求項36記載の塗装装置。
  38. 上記加温手段は、熱源として遠赤外線照射手段を備えて成ることを特徴とする請求項2837のいずれかに記載の塗装装置。
  39. 上記塗布手段による塗料の塗布が最上層の塗膜を形成するものであることを特徴とする請求項2838のいずれかに記載の塗装装置。
  40. 上記被塗物が自動車のボディであることを特徴とする請求項2839のいずれかに記載の塗装装置。
  41. 上記請求項1記載の塗装方法により塗装したことを特徴とする被塗物。
  42. 上記被塗物が自動車のボディであることを特徴とする請求項4記載の被塗物。
  43. 上記請求項9記載の塗装方法により塗装したことを特徴とする被塗物。
  44. 上記被塗物が自動車のボディであることを特徴とする請求項4記載の被塗物。
  45. 上記請求項15記載の塗装方法により塗装したことを特徴とする被塗物。
  46. 上記被塗物が自動車のボディであることを特徴とする請求項45記載の被塗物。
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