JP3513631B2 - プーリ式変速機 - Google Patents

プーリ式変速機

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JP3513631B2 JP17716595A JP17716595A JP3513631B2 JP 3513631 B2 JP3513631 B2 JP 3513631B2 JP 17716595 A JP17716595 A JP 17716595A JP 17716595 A JP17716595 A JP 17716595A JP 3513631 B2 JP3513631 B2 JP 3513631B2
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博文 宮田
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、プーリ式変速機の
改良技術に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、農業機械等においては、エン
ジンの動力を変速して駆動車輪或いは各種の作業装置に
伝達するために、ベルト伝動を利用したプーリ式の変速
機が多用されている。このベルト伝動を利用したプーリ
式変速機の一例として、従来、例えば実開昭57―16
4352号公報に示されるように、互いに平行に配置さ
れた1対の回転軸の各々に、回転軸の各々に対して回転
一体にかつ摺動不能に固定された固定シーブと、各回転
軸に固定シーブとの間に断面略V字状のベルト溝を形成
するように対向配置されて回転一体にかつ摺動自在に支
持された可動シーブとからなり、一方の可動シーブの固
定シーブへの向きと他方の可動シーブの固定シーブへの
向きとが互いに逆向きに設定された1対の変速プーリを
設けるとともに、これら両変速プーリのベルト溝間に伝
動ベルトを巻き掛け、上記各変速プーリの可動シーブ背
面側に、各々、回転軸回りに回動可能な回動カムと固定
体に連結されて回動不能な固定カムとからなり回動カム
の固定カムに対する回動により可動シーブを固定シーブ
に接離するように移動させるカム機構を配設し、両カム
機構の回動カムをロッド及び変速軸で連結することによ
り、一方の変速プーリの可動シーブがそれに対向する固
定シーブに接近すると、他方の変速プーリの可動シーブ
がそれと対向する固定シーブから離れるように上記両カ
ム機構の回動カムを互いに連係して回動させ、各変速プ
ーリの伝動ベルトに対する有効半径(プーリ径)を変化
させて両回転軸間の変速比を変化させるようにした変速
プーリ式のものが知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、このように
変速プーリの可動シーブをカム機構によって軸方向に移
動させてベルト推力を発生させる場合に、カム機構にお
ける固定カムの回動カムとのカム接触によって可動シー
ブをその背面側から固定シーブ側に押圧する位置とし
て、プーリにおけるベルト入口側と出口側との2箇所に
設定したとき、駆動プーリ側カム機構のベルト推力が従
動プーリ側カム機構のベルト推力よりも高くなるのは避
けられない。しかし、通常、その差は極めて大きくな
り、しかもベルト推力自体、従って変速操作力を低減す
るのも限度がある。
【0004】本発明は斯かる点に鑑みてなされたもので
あり、その目的は、上記変速プーリの可動シーブを駆動
するカム機構等の押圧機構の構造を改良することで、そ
の駆動プーリ側及び従動プーリ側押圧機構間のベルト推
力の差及び変速操作力を可及的に低減できるようにする
ことにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、この発明では、各プーリの可動シーブ背面側に、
ベルト入口側及び出口側の1対のベルト押圧部を有する
押圧機構を備えた変速機に対し、これらベルト入口側及
び出口側押圧部の荷重分担率を異ならせ、駆動プーリ側
押圧機構にあってはベルト入口側押圧部の荷重分担率を
出口側押圧部の荷重分担率よりも、また従動プーリ側押
圧機構にあってはベルト出口側押圧部の荷重分担率を入
口側押圧部の荷重分担率よりもそれぞれ大きくするよう
にした。
【0006】具体的には、請求項1の発明では、互いに
平行に配置された1対の回転軸と、この各回転軸上にそ
れぞれ設けられ、各々、回転軸に回転一体にかつ軸方向
に移動不能に固定支持された固定シーブ、及び該固定シ
ーブとの間に断面略V字状のベルト溝を形成するように
上記固定シーブに対向して設けられ、かつ背面側に軸方
向に延びるボス部を有し、該ボス部にて回転軸に回転一
体にかつ軸方向に移動可能に外嵌支持された可動シーブ
からなり、一方の可動シーブの固定シーブへの向きと他
方の可動シーブの固定シーブへの向きとが互いに逆向き
に設定された駆動及び従動プーリと、これら駆動及び従
動プーリのベルト溝間に巻き掛けられたベルトと、上記
駆動及び従動プーリの各可動シーブ背面側にそれぞれ配
置され、かつプーリのベルト入口側及び出口側にそれぞ
れ位置するベルト入口側及び出口側押圧部を有し、上記
両押圧部の双方でそれぞれ可動シーブを固定シーブ側に
向けて押すことで、可動シーブを固定シーブに対して接
離させるように軸方向に移動させて上記各プーリの有効
半径を変化させる駆動プーリ側及び従動プーリ側押圧機
構と、上記駆動及び従動プーリの一方の可動シーブが、
対向する固定シーブに接近すると他方の可動シーブが対
向する固定シーブから離れるように上記両押圧機構を作
動させることで上記両回転軸間の変速比を変化させる変
速切換機構と、上記駆動及び従動プーリ間に配置され、
両プーリ間に巻き掛けられるベルトの緩み側スパンを該
ベルトが各プーリのベルト溝に食い込むように押圧し
て、ベルトへの推力を発生させるテンション機構とを備
えたプーリ式変速機が前提である。
【0007】そして、上記駆動プーリ側押圧機構におけ
るプーリのベルト入口側押圧部の荷重分担率をベルト出
口側押圧部の荷重分担率よりも大とする一方、従動プー
リ側押圧機構における従動プーリのベルト出口側押圧部
の荷重分担率をベルト入口側押圧部の荷重分担率よりも
大とする
【0008】すなわち、駆動及び従動プーリ間でベルト
が走行するとき、両プーリ間の1対ベルトスパンのうち
の張り側スパンのベルト張力は緩み側スパンよりも大き
い。このため、駆動プーリのベルト入口側部では高い張
力のベルトによって可動シーブがプーリ外側(固定シー
ブと反対側)に押され、その回転軸での摺動クリアラン
スの分だけ、ベルト入口側部がプーリ外側に向かうよう
に、またベルト出口側部は逆にプーリ内側に向かうよう
にそれぞれ移動して可動シーブが傾く。一方、従動プー
リでも、その可動シーブのベルト出口側部が張り側スパ
ンの高い張力のベルトによって外側に押されて該可動シ
ーブの摺動クリアランス分だけプーリ外側に向かい、逆
にベルト入口側部では内側に向かうように移動する。そ
して、この発明では、上記駆動プーリ側押圧機構におけ
駆動プーリのベルト入口側押圧部の荷重分担率がベル
ト出口側押圧部の荷重分担率よりも大であり、従動プー
リ側押圧機構における従動プーリのベルト出口側押圧部
の荷重分担率がベルト入口側押圧部の荷重分担率よりも
大であるので、駆動プーリの可動シーブはベルト入口側
部でその押圧部により背面側から押圧規制された状態と
なる一方、従動プーリの可動シーブはベルト出口側部で
その押圧部により背面側から押圧規制された状態と
り、ベルトが駆動プーリの入口側から出口側に回行移動
したときでも、該ベルトがベルト出口側押圧部により可
動シーブから押されることで面圧が高くなることで面圧
が高くなることはなく、またベルトが従動プーリの入口
側から出口側に回行移動するときに、該ベルトがベルト
入口側押圧部により可動シーブから押されることで面圧
が高くなることもない。このようにベルトの張り側及び
緩み側スパン間の張力の変化に伴う可動シーブの姿勢変
化に対応するように、駆動プーリ及び従動プーリにおけ
る可動シーブのベルト入口側部及び出口側部をそれぞれ
押圧する押圧部の荷重分担率が異なっているので、各押
圧機構は必要で十分な最小の押圧力で可動シーブを押圧
できることとなり、駆動側及び従動側押圧機構間のベル
ト推力の差及び変速操作力を可及的に低減することがで
きる。
【0009】請求項2の発明では、上記各押圧機構はカ
ム機構とする。すなわち、このカム機構は、各々、互い
にカム接触する第1カムと第2カムとからなり、上記第
1及び第2カムの一方が可動シーブのボス部上にベアリ
ングを介して軸方向に可動シーブと共に移動一体にかつ
相対回転可能に支持され、他方が回転軸に軸方向に移動
不能にかつ回転軸に対して相対回転可能に設けられ、両
カムの一方は回転軸回りに回動可能な回動カムとされる
一方、他方は回動不能な固定カムとされ、上記回動カム
と固定カムとの相対回転により可動シーブを固定シーブ
に対して接離させるように軸方向に移動させて上記各プ
ーリの有効半径を変化させるものとする。
【0010】そして、押圧部は、上記各カム機構におけ
る第1カム及び第2カムの対向端部の少なくとも一方に
形成された傾斜カム面を備えているものとする。
【0011】この発明では、両回転軸間の変速比を切り
換える場合、駆動プーリ側又は従動プーリ側カム機構の
一方の回動カム(第1又は第2カムの一方)を固定カム
(第1又は第2カムの他方)に対し相対回転させると、
該カム機構側のプーリの可動シーブが軸方向に移動して
固定シーブに接近し、該プーリが閉じる。これに対し、
上記駆動及び従動プーリ側カム機構における回動カム同
士は変速切換機構により連動するように連結されている
ので、駆動プーリ側又は従動プーリ側カム機構の他方の
回動カムも固定カムに対し相対回転し、該カム機構側の
プーリの可動シーブが軸方向に移動して固定シーブから
離れ、該プーリが開く。こうして両プーリは、各々の可
動シーブの固定シーブに対する接離動作が逆方向にな
り、この両可動シーブの逆方向の移動によって両回転軸
間の変速比が切換変更される。
【0012】そして、上記駆動及び従動の両プーリ間に
巻き掛けられるベルトの緩み側スパンがテンション機構
により押圧されて、ベルトは各プーリのベルト溝に食い
込み、そのときの楔効果によりベルト推力が発生し、こ
のベルト推力により回転軸間で動力が伝達される。
【0013】また、こうしてベルトへの推力はその緩み
側スパンの押圧により発生し、両回転軸間の変速切換時
には上記変速切換機構により駆動及び従動プーリ側カム
機構における回動カムが連動して、両プーリが互いに同
期して開閉するため、駆動及び従動プーリの開閉の挙動
は逆になり、両プーリ間の開閉推力が部分的に相殺し合
い、その残りが変速操作力となる。すなわち、一般に、
ベルトに作用する初張力は、駆動プーリに入力される回
転トルクにより張り側及び緩み側張力に分れ、この両張
力の差により駆動プーリから従動プーリに動力伝達が行
われるが、各プーリに発生する推力(ベルトをプーリが
推す力)は、プーリが回転しない静的状態、或いは回転
していても伝動負荷の小さい軽負荷状態では略同じとな
る。これに対し、伝動負荷が大きくなると、ベルトにお
ける張力分布の変化により、駆動プーリ側の推力が常に
従動プーリ側の推力よりも大きくなり、両推力に差が生
じる。そして、この発明では、各プーリの可動シーブの
背面側にカム機構が配置され、これらはいずれも第1カ
ムと第2カムとの相対回転により可動シーブを軸方向に
移動させるものであるため、両プーリに発生する推力は
互いに相殺され、両推力の差よりも大きな外力を与える
ことで、変速操作することができる。従って、このよう
に変速操作力は、両プーリに発生する推力の差を越えた
操作力でよいので、軽負荷時には勿論のこと高負荷時で
あっても変速操作力を大幅に軽減することができる。
【0014】しかも、そのとき、一方のプーリに発生す
る推力を他方のプーリに推力として伝達するのを、各プ
ーリの可動シーブ背面側に配置したカム機構で行ってい
るので、各プーリの推力を効率よく該プーリ側カム機構
の両カムを相対回転させるためのトルクに転換でき、ま
た、その間の動力伝達経路が短くて摺動抵抗が極めて小
さくなり、変速操作力をより一層軽減することができ
る。
【0015】そのとき、上記プーリの推力から転換され
た、第1及び第2カムを相対回転させるためのトルクに
より、両カムにはそれぞれカム回転反力が生じる。そし
て、可動シーブのボス部上にベアリングを介して支持さ
れている一方のカムに生じるカム回転反力は、該カムを
支持している可動シーブのボス部を押圧するように作用
する。つまり、このボス部に対するカム回転反力は、ボ
ス部と回転軸との摺動部分におけるクリアランスによっ
て可動シーブがベルトから推力を受けたときに可動シー
ブを回転軸に対して傾倒させる方向に働くモーメントと
は逆方向のモーメントが生じるように作用し、この逆方
向のモーメントにより上記ボス部が回転軸に対して略平
行度を保つようになるとともに、上記カム回転反力によ
る押圧力は所定幅のベアリングを介して上記ボス部に作
用するので、可動シーブのボス部内周の回転軸外周に対
する面圧分布が軸方向に分散して大きなピークがなくな
り、その結果、ボス部の摺動抵抗が小さくなる。この摺
動抵抗が小さくなった分だけ、ベルト発生推力が従来よ
りも大きな取出推力としてカム機構に伝達されることと
なる。
【0016】そして、変速機は、両プーリ間の開閉力が
逆になって両プーリ間の開閉力が部分的に互いに相殺し
合うように両カム機構の回動カム同士が変速切換機構で
連結され、一方のカム機構の取出推力を他方のカム機構
のベルト推力に利用するようにしていることから、この
関係をシーソーに例えた場合、変速比が一定で変速切換
えを行わないときには、上記取出推力自体は本発明の場
合が従来の場合よりも大きくなるものの、駆動側及び従
動側で取出推力は同じとなり、これらが互いに釣り合っ
て推力の取出効率は従来の場合と同じである。
【0017】ところが、変速比を変化させるときには、
ベルト発生推力と取出推力との差が変速操作に必要な荷
重(操作力)であるので、従来の場合では、取出推力が
小さい分だけ残りの操作力が大きくなるのに対し、この
発明では、取出推力が大きいことから、その分、逆に操
作力が小さくて済むこととなる。その結果、両回転軸間
の変速切換えが小さな操作力で敏速に行われる。そし
て、この発明の構成によると、押圧機構の望ましい構造
が得られる。
【0018】このカム機構の場合において、請求項3の
発明では、さらに、駆動プーリ側押圧機構のカムにおけ
駆動プーリのベルト入口側にある傾斜カム面をベルト
出口側にある傾斜カム面よりも、対向するカム面側に突
出させる一方、従動プーリ側押圧機構のカムにおける従
動プーリのベルト出口側にある傾斜カム面をベルト入口
側にある傾斜カム面よりも、対向するカム面側に突出さ
せる
【0019】こうすると、駆動プーリのベルト入口側に
ある傾斜カム面及び従動プーリのベルト出口側にある傾
斜カム面が、それぞれそれらに接触する対向カム面側に
突出している分だけ、その荷重分担率が高くなり、可動
シーブのベルト入口側及びベルト出口側をそれぞれ押圧
する押圧部の荷重分担率を互いに異ならせる構造が具体
的かつ容易に得られる。
【0020】請求項4の発明では、請求項1の発明のプ
ーリ式変速機において、各押圧機構は上記請求項2の発
明と同様のカム機構とし、押圧部は、各カム機構におけ
る第1カム及び第2カムの一方の他方カムとの対向端部
に形成された傾斜カム面と、他方の対向端部に設けら
れ、上記傾斜カム面に転動しながら接触する転動体とを
備えているものとする。この発明でも押圧機構の望まし
い構造が得られる。
【0021】その場合、請求項5の発明では、駆動プー
リ側押圧機構のカムにおける駆動プーリのベルト入口側
にある傾斜カム面をベルト出口側にある傾斜カム面より
も、対向する転動体側に突出させる一方、従動プーリ側
押圧機構のカムにおける従動プーリのベルト出口側にあ
る傾斜カム面をベルト入口側にある傾斜カム面よりも、
対向する転動体側に突出させる
【0022】逆に、請求項6の発明では、上記請求項4
の発明のプーリ式変速機において、駆動プーリ側押圧機
構のカムにおける駆動プーリのベルト入口側にある転動
体をベルト出口側にある転動体よりも、対向する傾斜カ
ム面側に突出させる一方、従動プーリ側押圧機構のカム
における従動プーリのベルト出口側にある転動体をベル
ト入口側にある転動体よりも、対向する傾斜カム面側に
突出させる
【0023】また、請求項7の発明では、請求項5の発
明のプーリ式変速機において、請求項6の発明と同様
に、駆動プーリ側押圧機構のカムにおける駆動プーリの
ベルト入口側にある転動体をベルト出口側にある転動体
よりも、対向する傾斜カム面側に突出させて、ベルト入
口側では傾斜カム面及び転動体の双方を突出させる。
方、従動プーリ側押圧機構のカムにおける従動プーリの
ベルト出口側にある転動体をベルト入口側にある転動体
よりも、対向する傾斜カム面側に突出させて、ベルト出
口側でも傾斜カム面及び転動体の双方を突出させる。
【0024】こうすることで、駆動プーリのベルト入口
側にある傾斜カム面又は転動体の少なくとも一方の突出
構造、及び従動プーリのベルト出口側にある傾斜カム面
又は転動体の少なくとも一方の突出構造により、その荷
重分担率が高くなり、プーリのベルト入口側及びベルト
出口側をそれぞれ押圧する押圧部の荷重分担率を異なら
せる構造が具体的かつ容易に得られる。
【0025】請求項8の発明では、上記請求項3又は5
の発明のプーリ式変速機において、各カムは、カム本体
と、このカム本体に取付固定され、カム面を有するカム
チップとを備えてなる構成とし、駆動プーリのベルト入
口側にあるカムチップとカム本体との間、及び従動プー
リのベルト出口側にあるカムチップとカム本体との間
所定厚さのシムを介在させる。
【0026】この構成により、駆動プーリのベルト入口
側にあるカムチップがカム本体に対し両者間に介在され
るシムにより、駆動プーリのベルト出口側にあるカムチ
ップのカム面よりも突出して、そのカム面の高さが高く
なる。また、従動プーリのベルト出口側にあるカムチッ
プがカム本体に対し両者間に介在されるシムにより、従
動プーリのベルト入口側にあるカムチップのカム面より
も突出して、そのカム面の高さが高くなり、よって、駆
動プーリ及び従動プーリのベルト入口側及びベルト出口
側をそれぞれ押圧する押圧部の荷重分担率を異ならせる
構造がさらに容易に得られる。
【0027】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を図面に
基づいて説明する。図11及び図12は本発明の実施形
態に係るプーリ式無段変速機Tの全体構成を示し、この
変速機Tは、図示しないが走行型の農業機械においてエ
ンジンと駆動車輪との間の動力伝達経路に配設されてい
る。
【0028】図11及び図12において、1は変速機T
のケースで、この変速機ケース1は図11の左側にある
前ケース2と、右側の後ケース3とに2分割されてい
る。前ケース2は、図11で右側に開放された皿状のも
ので、その図11で上部にはボス状(円筒状)の入力軸
受孔2aが貫通形成され、また下部には同形状の出力軸
受穴2bが凹陥形成されている。また、後ケース3は、
図11で左側に開放された皿状のもので、その図11で
上部にはボス状の入力軸受孔3aが上記前ケース2の入
力軸受孔2aに対応して、また下部には同様の出力軸受
孔3bが前ケース2の出力軸受孔3bに対応してそれぞ
れ貫通形成されている。そして、前ケース2の開口縁部
にはフランジ2cが形成され、このフランジ2cには複
数のねじ孔4,4,…が開口されている。一方、後ケー
ス3の開口縁部には上記前ケース2のフランジ2cと接
合されるフランジ3cが形成され、このフランジ3cに
は前ケース2のねじ孔4,4,…に対応して複数のボル
ト挿通孔5,5,…が設けられており、前後ケース2,
3の組付時に両フランジ2c,3cを当接させて後ケー
ス3の各ボルト挿通孔5にそれぞれ組付ボルト6を挿通
し、この各組付ボルト6の先端部を前ケース2の対応す
るねじ孔4に螺合締結することで、両ケース2,3を一
体に組み付けるようにしている。
【0029】上記前ケース2における複数のねじ孔4,
4,…のうち、後述するテンションプーリ41の近傍に
位置するねじ孔4(図12上端左側のもの)と、該ねじ
孔4に対してテンションプーリ41と略反対側にあるね
じ孔4(図12下端右側のもの)との1対にはそれぞれ
カラー7,7がノックピンとして嵌挿されており、この
カラー7,7によって前後ケース2,3の組付時の芯出
しを行うようになっている。
【0030】尚、図12に示す如く、変速機ケース1下
部の左右中間部は、変速機Tの下側を農業機械の前後方
向に延びるプロペラシャフト113と干渉しないように
部分的に凹陥されている。
【0031】変速機ケース1には、互いに平行に配置し
た入力軸9(回転軸)及び出力軸13が前後ケース2,
3に亘って回転可能に支承されている。尚、入力軸9及
び出力軸13は図12で反時計回り方向に回転する。入
力軸9の前端部(図11の左端部)は前ケース2の入力
軸受孔2aにベアリング10を介して、また後端部は後
ケース3の入力軸受孔3aにベアリング11を介してそ
れぞれ回転可能に支持されている。入力軸9の前端(図
11の左端)はケース1から外部に突出し、この端部に
図外のエンジンの出力軸が駆動連結される。
【0032】一方、出力軸13の前端部(図11の左端
部)には小径部13aが形成され、この小径部13aに
て出力軸13が前ケース2の出力軸受穴2bにベアリン
グ14を介して回転可能に支持されている。一方、出力
軸13の後端部は後ケース3の出力軸受孔3bにベアリ
ング15を介して回転可能に支持され、この出力軸13
の後端はケース1外に突出していて、図外の駆動車輪に
駆動連結されている。そして、出力軸13の中間部には
スリーブ16(この実施形態ではスリーブ16と出力軸
13とで本発明でいう回転軸が構成される)が相対回転
可能に外嵌合されている。このスリーブ16の前端部内
径は他の部分よりも大径とされて大径部16aが形成さ
れ、この大径部16aと、出力軸13前端の小径部13
aで上記ベアリング14の位置よりも後側部分との間に
はベアリング17がその内輪17aを出力軸13の小径
部13aに、また外輪17bをスリーブ16にそれぞれ
係合せしめて介設されている。
【0033】変速機ケース1内には、上記入力軸9及び
出力軸13をVベルト30によって変速可能に駆動連結
する変速プーリ機構20が収容されている。この変速プ
ーリ機構20は、入力軸9上に配置された変速プーリか
らなる駆動プーリ21を有する。この駆動プーリ21
は、入力軸9上に回転一体にかつ摺動不能にキー結合さ
れたフランジ状の固定シーブ22と、入力軸9上に固定
シーブ22に対向するようにボス部23aにて摺動可能
にかつ相対回転可能に支持されたフランジ状の可動シー
ブ23とからなり、これら両シーブ22,23間に断面
略V字状のベルト溝24が形成されている。上記固定シ
ーブ22の背面には、円周方向に等間隔をあけて放射状
に配置された送風冷却用の複数のフィン22a,22
a,…が一体に形成されている。
【0034】一方、出力軸13に外嵌合されているスリ
ーブ16上には駆動プーリ21と同径の変速プーリから
なる従動プーリ26が設けられている。この従動プーリ
26は、上記駆動プーリ21と同様の構成であり、出力
軸13のスリーブ16上に回転一体にかつ摺動不能にキ
ー結合されたフランジ状の固定シーブ27と、スリーブ
16(出力軸13)に、固定シーブ27に対し上記駆動
プーリ21における固定シーブ22に対する可動シーブ
23の対向方向と逆方向でもって対向するようにボス部
28aにて摺動可能にかつ相対回転可能に結合されたフ
ランジ状の可動シーブ28とからなり、これら両シーブ
27,28間には断面略V字状のベルト溝29が形成さ
れている。この従動プーリ26における固定シーブ27
の背面にも、円周方向に等間隔をあけて放射状に配置さ
れた送風冷却用の複数のフィン27a,27a,…が一
体に形成されており、この各固定シーブ22,27のフ
ィン22a,27aによってケース1内に空気流を生成
して発熱部分を冷却するようにしている。
【0035】上記駆動プーリ21の可動シーブ23の入
力軸9に対する摺動構造、及び従動プーリ26の可動シ
ーブ28のスリーブ16(出力軸13)に対する摺動構
造はいずれも同じであり、ここでは、従動プーリ26に
ついて説明することとし、駆動プーリ21側については
同じ符号を付して詳細な説明は省略する。すなわち、図
13にも示すように、従動プーリ26における可動シー
ブ28のボス部28a内周面には、その直径方向に対向
する位置に、ボス部28aの固定シーブ27側端から固
定シーブ27と反対側端に至る全体に亘って軸方向に延
びる断面略矩形状の1対の係合溝31,31がブローチ
加工によって形成されている。
【0036】一方、スリーブ16(駆動プーリ21側で
は入力軸9)の外周面には直径方向に対向する位置に、
スリーブ16外周面の軸方向の一部を部分的に接線方向
と平行に所定深さだけ切り欠いてなる切欠き32,32
が形成されている。また、スリーブ16及び出力軸13
(回転軸)には両者を直径方向に貫通するピン33がス
リーブ16に対し圧入により固定支持され(駆動プーリ
21側では入力軸9に対し圧入固定)、このピン33の
両端部は上記各切欠き32から所定寸法だけ突出してい
る。図13に示すように、このピン33は出力軸13に
おいてピン33の外径よりも大きい長径を有する長孔3
6に挿通されていて、出力軸13と所定角度だけ相対回
転可能とされている。そして、ピン33両端の突出部に
それぞれベアリング34,34が1対となって各々の内
輪34bにて支持されており、この各ベアリング34は
それぞれ上記可動シーブ28のボス部28a内周におけ
る係合溝31に係合されて、外輪34aが係合溝31の
側面に当接して転動するようになっている。また、各ベ
アリング34の外径(外輪34aの外径)はスリーブ1
6(入力軸9)の外径の1/2.5以上とされている。
【0037】そして、上記駆動プーリ21のベルト溝2
4と従動プーリ26のベルト溝29との間には例えばブ
ロックベルト等からなる上記Vベルト30が巻き掛けら
れており、両プーリ21,26の各可動シーブ23,2
8をそれぞれ固定シーブ22,27に対して接離させて
各プーリ21,26のベルト巻付け径を変更する。例え
ば駆動プーリ21の可動シーブ23を固定シーブ22に
接近させ、かつ従動プーリ26の可動シーブ28を固定
シーブ27から離隔させたときには、駆動プーリ21の
ベルト巻付け径を従動プーリ26よりも大きくすること
により、入力軸9の回転を出力軸13に増速して伝達す
る高速状態とする。一方、逆に、駆動プーリ21の可動
シーブ23を固定シーブ22から離隔させ、かつ従動プ
ーリ26の可動シーブ28を固定シーブ27に接近させ
たときには、駆動プーリ21のベルト巻付け径を小に
し、従動プーリ26のベルト巻付け径を大きくすること
により、入力軸9の回転を減速して出力軸13に伝える
低速状態とするようになされている。
【0038】また、変速機ケース1内には、駆動及び従
動プーリ21,26間に張られたVベルト30の1対の
スパン30a,30bのうちの緩み側スパン30bをそ
の内面から外方に押圧してベルト30に張力を与えるこ
とでベルト推力を発生するテンション機構38が設けら
れている。このテンション機構38は、図14にも示す
ように、前ケース2における出力軸受穴2b周囲のボス
状部分に基端側のボス部39aにて回動可能に外嵌合支
持されたテンションアーム39を有し、このテンション
アーム39のボス部39aは、テンションアーム39の
本体に一体的に溶接されている。テンションアーム39
の先端部には出力軸13(入力軸9)と平行に後方に延
びるテンション軸40が一体に溶接され、このテンショ
ン軸40の先端部は各プーリ21,26におけるベルト
溝24,29部分に位置し、この先端部には、Vベルト
30の緩み側スパン30bを内面から押圧可能なテンシ
ョンプーリ41がベアリング42を介して回転可能に支
持されている。このテンションプーリ41の位置は、変
速に伴うVベルト30の軸方向の移動に拘らず、常にテ
ンションプーリ41がベルト30内面の一部に接触して
それを押圧可能な位置に設定されている。尚、テンショ
ンプーリ41の断面形状の両側面は各プーリ21,26
のベルト溝24,29側面に平行な角度とされ、このこ
とでテンションプーリ41側面の傾斜角度はベルト溝2
4,29の断面角度に一致し、テンションプーリ41外
周面の軸方向長さはベルト30外面側の幅よりも小さく
されている。
【0039】そして、上記テンションアーム39にはそ
の先端から基端側に向かう方向(テンション軸40と略
反対側)に延長されてなるばね取付アーム部43が一体
形成され、このばね取付アーム部43の先端部は前側に
折り曲げられていて、その折曲げ部には凹部からなるば
ね係止部44が形成されている。一方、図12及び図1
5に示す如く、前ケース2の一方の内側面には、リング
状のテンション用カラー46が出力軸13(入力軸9)
と平行に延びる取付ボルト47により取付固定され、こ
のテンション用カラー46には引張ばねからなるテンシ
ョンスプリング48の一端部が外嵌合状態で係止され、
このスプリング48の他端部は上記テンションアーム3
9のばね取付アーム部43のばね係止部44に係止され
ており、このテンションスプリング48のばね力により
テンションアーム39を図12で反時計回り方向に回動
付勢して、テンションプーリ41にVベルト30の緩み
側スパン30bの内面を押圧させる。そして、テンショ
ンスプリング48のテンションアーム39に対する回動
付勢力は、テンションプーリ41がベルト30の緩み側
スパン30bを該緩み側スパン30bに発生する最大張
力よりも大きい張力で押圧するように設定されており、
この張力によりベルト推力を発生させるようにしてい
る。
【0040】上記入力軸9上には駆動プーリ21におけ
る可動シーブ23背面側に、該可動シーブ23を固定シ
ーブ22に対して接離させるための駆動プーリ側押圧機
構としての駆動プーリ側カム機構50が設けられてい
る。このカム機構50は例えばアルミニウム合金製の円
筒状のカム本体52を有する回動カム51を備え、該回
動カム51は、可動シーブ23のボス部23a上にベア
リング57を介して入力軸9回りに相対回転可能にかつ
軸方向に移動一体に外嵌合支持されている。カム本体5
2の駆動プーリ21と反対側端面には、上記ベアリング
57よりも半径方向外側でかつ円周方向に等角度間隔
(180°間隔)をあけた上下位置に、図5〜図7に示
すように1対の焼結金属からなる円弧板状のカムチップ
53,53が、タッピングねじ54を各カムチップ53
に形成したボルト挿通孔53aに挿通してカム本体52
に螺合締結することで取付固定され、この各カムチップ
53の表面にはそれぞれ所定角度に傾斜した傾斜カム面
55が形成されている。
【0041】上記カム本体52の外周には上記両カムチ
ップ53,53を通る線に沿って下方に延びる回動レバ
ー56(図12参照。図11では説明のために出力軸1
3と反対側に延びるように記載している)が回動一体に
突設されている。
【0042】また、上記回動カム51の背面側には上記
各カムチップ53と対応した位置に、各カムチップ53
のカム面55とカム接触する固定カムとしての1対のカ
ム受けベアリング59,59が配置され、この各カム受
けベアリング59は、前ケース2の内面に入力軸9の半
径方向に沿って配置固定した支持軸60に支持されてい
る。すなわち、図8に拡大して示す如く、前ケース2の
内面には所定位置に、入力軸9の半径方向に並んだ1対
の軸受部61,63が突設され、この一方の軸受部61
には入力軸9と平行な方向つまり前ケース2の内面から
開口に向かう方向に延びる有底状のねじ孔62が形成さ
れている。また、他方の軸受部63の先端には断面略半
円状の凹部64が形成されている。そして、支持軸60
の一端部は平板状とされて貫通状のボルト孔60aが形
成されており、支持軸60の他端部を上記他方の軸受部
63の凹部64に密嵌合した状態で、取付ボルト65を
支持軸60一端部のボルト孔60aを挿通して一方の軸
受部61のねじ孔62に螺合締結することで、カム受け
ベアリング59を支持軸60により前ケース2内面に固
定支持するようになっている。
【0043】そして、上記各カムチップ53とそのカム
面55上を転動する各カム受けベアリング59との双方
によりそれぞれ上下1対の押圧部66,66が形成さ
れ、下側の押圧部66は駆動プーリ21のベルト入口側
に配置されていてベルト入口側押圧部に、また上側の押
圧部66は同ベルト出口側に配置されていてベルト出口
側押圧部にそれぞれ構成されている。
【0044】一方、出力軸13上には、従動プーリ26
における可動シーブ28の背面側に、該可動シーブ28
を固定シーブ27に対して接離させる従動プーリ側押圧
機構としての従動プーリ側カム機構67が設けられてい
る。この従動プーリ側カム機構67は、上記駆動プーリ
側カム機構50と同様の構成で、可動シーブ28のボス
部28aに外嵌合したベアリング用カラー68上にベア
リング74を介して出力軸13回りに相対回転可能にか
つ軸方向に移動一体に外嵌合支持された回動カム69を
有する。この回動カム69はカム本体70と、その従動
プーリ26と反対側端面でベアリング74よりも出力軸
13の半径方向外側でかつ円周方向に等角度間隔をあけ
た上下位置に取付固定され、各々傾斜カム面72を有す
る1対の焼結金属からなるカムチップ71,71とから
なり、この各カムチップ71は、上記駆動プーリ側カム
機構50の回動カム51と同様に(尚、この回動カム5
1と同じ図5〜図7に基づいて説明する)、タッピング
ねじ54をカムチップ71のボルト挿通孔71aに挿通
してカム本体70に螺合締結することで固定されてい
る。また、このカム本体70の外周には、上記両カムチ
ップ71,71を通る線に沿って下方、つまり上記駆動
プーリ側カム機構50の回動レバー56と同じ方向に延
びる回動レバー73(図11では説明のために入力軸9
と反対側に延びるように記載している)が回動一体に突
設されている。
【0045】また、回動カム69の背面側には、上記各
カムチップ71とカム接触する固定カムとしての1対の
カム受けベアリング76,76がカムチップ71,71
と対応して配置され、この各カム受けベアリング76
は、後ケース3の内面に出力軸13の半径方向に沿って
配置固定した支持軸77上に支持されている。このカム
受けベアリング76の支持構造は上記駆動プーリ側カム
機構50のものと同じであるので(図8参照)、図8と
同じ部分については同じ符号を付してその説明は省略す
る。
【0046】上記各カムチップ71とそのカム面72上
を転動する各カム受けベアリング76との双方により上
下1対の押圧部78,78が形成され、上側の押圧部7
8は従動プーリ26のベルト入口側に配置されるベルト
入口側押圧部に、また下側の押圧部78は同ベルト出口
側に配置されるベルト出口側押圧部にそれぞれ構成され
ている。
【0047】そして、本発明の特徴として、図5に仮想
線にて示すように、上記駆動プーリ側カム機構50にお
いて駆動プーリ21のベルト入口側(下側)にあるベル
ト入口側押圧部66についてのみ、そのカムチップ53
とカム本体52との間に所定厚さ(例えば0.2mm)
のシム84が介在されていて、該ベルト入口側にあるカ
ムチップ53がベルト出口側にあるカムチップ53に比
べカム本体52から突出していて、前者のカム面55
カム本体52からの高さが後者のカム面55よりも大に
設定されており、このことにより、駆動プーリ21のベ
ルト入口側押圧部66の荷重分担率がベルト出口側押圧
66の荷重分担率よりも大とされている。一方、従動
プーリ側カム機構67において従動プーリ26のベルト
出口側(下側)にあるベルト出口側押圧部78について
のみ、上記と同様に、そのカムチップ71とカム本体7
0との間に所定厚さのシム84が介在されていて、該ベ
ルト出口側にあるカムチップ71がベルト入口側にある
カムチップ71に比べカム本体70から突出し、前者の
カム面72のカム本体70からの高さが後者のカム面7
2よりも大に設定され、従動プーリ26のベルト出口側
押圧部78の荷重分担率がベルト入口側押圧部78の荷
重分担率よりも大とされている。
【0048】図9及び図10にも示す如く、上記駆動プ
ーリ側カム機構50におけるカム51外周の回動レバー
56先端部と、従動プーリ側カム機構67のカム69外
周の回動レバー73先端部とは互いに連係して回動する
ようにリンクバー79により連結されている。このリン
クバー79は略細長い三角形の板材からなり、その中間
部は上記変速機ケース1下部の凹部(図12参照)と干
渉しないように上側に折り曲げられ、その前縁にはリブ
状のフランジ79aが一体形成されている。リンクバー
79の一端部(三角形の3頂点の1つをなす部分)には
ピン孔80が、また駆動プーリ側カム機構50の回動レ
バー56先端部には上記ピン孔80よりも小径のピン孔
81がそれぞれ入力軸9と平行に貫通形成され、両ピン
孔80,81を合致させかつリンクバー79のピン孔8
0に焼結金属からなるブッシュ82を嵌挿した状態でリ
ンクピン83を両ピン孔80,81に挿通して抜き止め
することで、リンクバー79と回動レバー56先端部と
がリンクピン83により揺動可能に連結されている。
【0049】一方、リンクバー79の他端部における後
端部(三角形の残りの2頂点の1つをなす部分)にもピ
ン孔85が、また従動プーリ側カム機構67の回動レバ
ー73先端部にも上記ピン孔85よりも小径のピン孔8
6がそれぞれ出力軸13と平行に貫通形成され、両ピン
孔85,86を合致させかつリンクバー79のピン孔8
5に焼結金属製ブッシュ87を嵌挿した状態でリンクピ
ン88を両ピン孔85,86に挿通して抜き止めするこ
とで、リンクバー79と回動レバー73の先端部とがリ
ンクピン88により揺動可能に連結されている。そし
て、上記回動レバー56,73、リンクピン83,88
及びリンクバー79により変速切換機構89が構成され
ており、この変速切換機構89により、各カム機構5
0,67における回動カム51,69を互いに連係して
可動シーブ23,28のボス部23a,28a回りに回
動させ、その各カムチップ53,71のカム面55,7
2上でカム受けベアリング59,76を転動させること
により、各プーリ21,26の可動シーブ23,28を
軸方向に移動させて固定シーブ22,27に対し互いに
相反して接離させ、そのベルト溝24,29の有効半径
つまり各プーリ21,26でのベルト巻付け径を可変と
し、両プーリ21,26間のプーリ比つまり変速機Tの
変速比を変化させるようにしている。
【0050】上記従動プーリ26側には、伝動トルクが
作用して可動シーブ28と出力軸13とが相対回転した
ときにその可動シーブ28を軸方向に移動させてベルト
推力を発生させるトルクカム機構91が設けられてい
る。このトルクカム機構91は、図13にも示すよう
に、可動シーブ28のボス部28aにおける直径方向に
対向した位置(上記両係合溝31,31と90°ずれた
位置)に、出力軸13の軸線方向に向かって円周方向に
向かうように傾斜しかつボス部28aの内外面に亘り貫
通する1対のカム孔92,92を備えている。また、出
力軸13において上記スリーブ16により覆われていな
い部位の外周面には直径方向に対向する位置に、出力軸
13外周面の軸方向の一部を部分的に接線方向と平行に
所定深さだけ切り欠いてなる切欠き93,93が形成さ
れている。そして、出力軸13には直径方向に貫通する
ピン94が圧入により固定支持され、該ピン94の両端
部は上記切欠き93,93から所定寸法だけ突出し、こ
のピン94両端の突出部にはそれぞれ、上記可動シーブ
28のボス部28aにおけるカム孔92に係合して外輪
95aをカム孔92側面に当接して転動させるベアリン
グ95が支持されており、従動プーリ26に伝動トルク
が作用したとき、カム孔92とベアリング95とのカム
効果により可動シーブ28を軸方向に移動させてベルト
推力を発生させるようにしている。
【0051】さらに、前ケース2の前壁部には、略入力
軸9及び出力軸13間でかつ両軸9,13の各軸心を通
る平面上の位置にボス状の軸挿通孔97が貫通形成さ
れ、この軸挿通孔97には入力軸9(出力軸13)と平
行方向に延びる操作軸98がベアリング99によって回
転可能に支持され、この操作軸98の一端は変速機ケー
ス1外に延びていて断面四角形状とされ、その端部に図
外の操作レバーが回動一体に取り付けられる。
【0052】図9、図10及び図12に示すように、操
作軸98の他端は変速機ケース1内に位置し、その他端
部にはクランクアーム100の基端が回転一体に溶接固
定されている。このクランクアーム100は略く字形状
に彎曲した板材からなり、その先端部には連結ロッド1
02の一端部が連結されている。この連結ロッド102
は、各々先端部に直交方向の軸部101aが回動可能に
支持された1対のリンクボール101,101を軸部1
01a,101aが逆向きに配置されるよう結合してな
るもので、クランクアーム100の先端部に連結ロッド
102の一方のリンクボール101がその軸部101a
にて連結されている。この連結ロッド102の他端部つ
まり他方のリンクボール101の軸部101aは、上記
リンクバー79において駆動プーリ側カム機構50の回
動レバー56近傍に連結されている。そして、操作軸9
8を操作レバーによりLo位置及びHi位置の間で回動
切換操作することで、変速切換機構89を作動させて、
各回動カム51,69に突設されている各回動アーム5
6,73をLo及びHi位置間で回動させ、変速プーリ
機構20のプーリ比を変えることで、上記出力軸13を
入力軸9に対し減速状態又は増速状態に切り換えて変速
するようになされている。また、107は入力軸9、出
力軸13及び操作軸98周りに配置されたダストシール
である。
【0053】次に、上記実施形態に係る変速機の作動に
ついて説明する。農業機械に搭載したエンジンが変速機
Tの入力軸9に駆動連結され、その出力軸13が駆動車
輪に駆動連結されているので、エンジンの回転動力は変
速機Tで変速された後、駆動車輪に伝達される。そし
て、駆動及び従動プーリ側カム機構50,67における
回動レバー56,73同士がリンクバー79により連係
されているため、操作軸98の切換操作により変速プー
リ機構20のプーリ比が変えられて変速機Tの変速比が
切り換えられる。
【0054】(低速状態)具体的には、変速機Tの変速
比を下げて低速状態(Lo状態)とするとき、操作軸9
8が操作レバーにより回動切換操作されてLo位置に位
置付けられる。すなわち、操作軸98の内端にはクラン
クアーム100の基端部が一体に固定され、このクラン
クアーム100の先端部は連結ロッド102を介してリ
ンクバー79に連結され、このリンクバー79は、駆動
プーリ側カム機構50における回動カム51外周の回動
レバー56と、従動プーリ側カム機構67における回動
カム69外周の回動レバー73とを連結しているので、
操作軸98の回動に伴ってクランクアーム100が回動
して両回動レバー56,73が回動する。そして、上記
操作軸98のLo位置への切換状態では、上記従動プー
リ側カム機構67の回動カム69がそのカムチップ7
1,71のカム面72,72上でそれぞれカム受けベア
リング76,76を転動させながら従動プーリ26にお
ける可動シーブ28のボス部28a回りに一方向に回動
する。この回動により、上記各カム面72がカム受けベ
アリング76に押されて回動カム69が出力軸13周囲
のスリーブ16上を移動し、該カム69にベアリング7
4を介して移動一体の可動シーブ28が同方向に移動し
て固定シーブ27に接近する。このことにより従動プー
リ26が閉じてそのベルト巻付け径が増大し、このベル
ト巻付け径の増大によりVベルト30が従動プーリ26
側に引き寄せられる。
【0055】また、これと同時に、上記操作軸98のL
o位置への切換えに伴い、上記従動プーリ26の可動シ
ーブ28の動きに同期して、駆動プーリ側カム機構50
の回動カム51が入力軸9上を上記従動プーリ側カム機
構67のカム69と同じ一方向に回動する。このカム5
1の回動によりその各カムチップ53のカム面55のカ
ム受けベアリング59に対する押圧がなくなる。このた
め、上記従動プーリ26側に移動するベルト30の張力
により、カム51及びそれにベアリング57を介して連
結されている可動シーブ23は固定シーブ22から離れ
る方向に入力軸9上を移動し、この両シーブ22,23
の離隔により駆動プーリ21が開いてベルト巻付け径が
減少する。これらの結果、従動プーリ26のベルト巻付
け径が駆動プーリ21よりも大きくなり、入力軸9の回
転が減速されて出力軸13に伝達される。このことで変
速機TはLo状態になり、エンジンの回転が減速されて
駆動車輪に伝達される。
【0056】尚、テンション機構38のテンションスプ
リング48の付勢力によりテンションアーム39が図1
2で時計回り方向に回動付勢され、その先端のテンショ
ンプーリ41がベルト30の緩み側スパン30b内面を
押圧し、この押圧によりベルト30に張力が付与され
る。このとき、この張力は緩み側スパン30bに発生す
る最大張力よりも大きいため、このベルト張力によりベ
ルト30のプーリ21,26に対するくさび効果が生じ
て推力が発生し、この推力により両プーリ21,26間
でベルト30を介して動力が伝達される。
【0057】(高速状態)一方、上記操作軸98をHi
位置に位置付けると、このHi位置への切換状態では、
上記駆動プーリ側カム機構50のカム51がその各カム
チップ53のカム面55上でカム受けベアリング59を
転動させながら駆動プーリ21における可動シーブ23
のボス部23a回りに他方向に回動する。このことによ
り、上記カム面55がカム受けベアリング59に押され
てカム51が入力軸9上を移動し、該カム51に移動一
体の可動シーブ23が同方向に移動して固定シーブ22
に接近する。このことにより駆動プーリ21が閉じてそ
のベルト巻付け径が増大し、このベルト巻付け径の増大
によりVベルト30が駆動プーリ21側に引き寄せられ
る。
【0058】また、これと同時に、上記従動プーリ側カ
ム機構67のカム69がスリーブ16上で上記駆動プー
リ側カム機構50のカム51と同じ他方向に回動する。
このカム69の回動によりカム受けベアリング76に対
する押圧がなくなる。このため、上記駆動プーリ21側
に移動するベルト30の張力により、カム69及びそれ
にベアリング74を介して連結されている可動シーブ2
8は固定シーブ27から離れる方向にスリーブ16上を
移動し、この両シーブ27,28の離隔により従動プー
リ26が開いてベルト巻付け径が減少する。これらの結
果、駆動プーリ21のベルト巻付け径が従動プーリ26
よりも大きくなり、入力軸9の回転が増速されて出力軸
13に伝達される。この結果、変速機TはHi状態にな
り、エンジンの回転が増速されて駆動車輪に伝達され
る。
【0059】この実施形態の場合、変速プーリ機構20
の各プーリ21,26における可動シーブ23,28の
ボス部23a,28a上に各カム機構50,67の回動
カム51,69がベアリング57,74を介して支持さ
れ、これら両回動カム51,69外周の回動レバー5
6,73同士が1つのリンクバー79で連結されている
ので、上記変速プーリ機構20の変速切換時に、前ケー
ス2及び後ケース3にそれぞれ支持されたカム受けベア
リング59,76から回動カム51,69におけるカム
チップ53,71のカム面55,72に力が該カム面5
5,72と直角方向に作用し、この力の入力軸9及び出
力軸13に直交方向の直角分力が入力軸9及び出力軸1
3の軸心とリンクバー79への連結点とを結ぶ線と直角
に作用したとき、入力軸9及び出力軸13の軸心とリン
クバー79への連結点とを結ぶ線に対しプーリ比の変化
に拘らず直角でかつ上記直角分力と逆向きのカム回転反
力が生じ、このカム回転反力は、回動カムが支持されて
いる可動シーブ23,28のボス部23a,28aに対
し、プーリ21,26のベルト30が巻き掛けられてい
る範囲の中央位置においてボス部23a,28aを押圧
するように作用する。つまり、このボス部23a,28
aに対するカム回転反力は、ボス部23a,28aと入
力軸9及び出力軸13との摺動部分におけるクリアラン
スで、可動シーブ23,28がベルト30から推力を受
けたときに可動シーブ23,28を入力軸9及び出力軸
13に対し傾倒させる方向に働くモーメントとは逆方向
のモーメントが生じるように作用し、このモーメントに
より元のモーメントが相殺されて小さくなり、可動シー
ブ23,28のボス部23a,28a内周の入力軸9及
び出力軸13外周に対する面圧分布が軸心方向に分散
し、ボス部23a,28aの摺動抵抗が小さくなる。こ
の摺動抵抗が小さくなった分だけ、ベルト発生推力の回
動カム51,69による固定点に与える荷重(つまり取
出推力)が大きくなり、換言すれば、ベルト発生推力が
大きな抵抗なく回動カム51,69に取出推力として伝
達されることとなる。そして、プーリ比を変化させると
きには、ベルト発生推力と取出推力との差が変速操作に
必要な荷重(操作力)であるので、取出推力が大きい分
だけ、逆に操作力が小さくて済むこととになる。その結
果、上記変速プーリ機構20における両変速プーリ2
1,26間のベルト30の推力バランスにより変速操作
力を低減することができる。
【0060】そして、この実施形態では、上記の如きベ
ルト伝動時に駆動及び従動プーリ21,26間でVベル
ト30が走行するとき、両プーリ21,26間の1対の
ベルトスパン30a,30bのうち、張り側スパン30
aのベルト張力は緩み側スパン30bよりも大きいた
め、その張力分布を示すと図2のようになる(図2では
矢印の大きさで張力の大きさを示している)。そして、
例えば図1に示すように、駆動プーリ21ではそのベル
ト入口側(下側)で、Vベルト30の高い張力の張り側
スパン30aによって可動シーブ23がプーリ外側(固
定シーブ22と反対側)に押され、そのボス部23aの
入力軸9に対する摺動クリアランスの分だけ、ベルト入
口側部分が外側に向かうように移動し、逆にベルト出口
側部(上側部)ではプーリ内側に向かうように移動し
て、可動シーブ23が図1で仮想線にて示すように傾
く。一方、従動プーリ26でも、張り側スパン30aの
高い張力のベルト30によって可動シーブ28ベルト出
口側部(下側部)がプーリ外側に押されて、そのスリー
ブ16に対する摺動クリアランスの分だけ外側に向かう
ように傾き、逆にベルト入口側部(上側部)ではプーリ
内側に向かうように移動する。そして、上記駆動プーリ
側カム機構50における駆動プーリ21のベルト入口側
(下側)にある押圧部66のカムチップ53とカム本体
52との間にシム84が介在されていて、該ベルト入口
側にあるカムチップ53の傾斜カム面55がベルト出口
側にあるカムチップ53の傾斜カム面55よりもカム本
52から高く突出し、駆動プーリ21のベルト入口側
押圧部66の荷重分担率がベルト出口側押圧部66の荷
重分担率よりも大である一方、従動プーリ側カム機構6
7におけるプーリ26のベルト出口側(下側)にある押
圧部78のカムチップ71とカム本体70との間にもシ
ム84が介在されていて、該ベルト出口側にあるカムチ
ップ71の傾斜カム面72がベルト入口側にあるカムチ
ップ71の傾斜カム面72よりもカム本体70から高く
突出し、従動プーリ26のベルト出口側押圧部78の荷
重分担率がベルト入口側押圧部78の荷重分担率よりも
大であるので、駆動プーリ21においては、その可動シ
ーブ23がベルト入口側でその押圧部66により位置規
制された状態となり、ベルト30が駆動プーリ21の入
口側部から出口側部に回行移動したときでも、ベルト3
0がベルト出口側押圧部66により可動シーブ23から
押されることによって面圧が高くなることはない。
方、従動プーリ26においては、その可動シーブ28が
ベルト出口側でその押圧部78により位置規制された状
態となり、ベルト30が従動プーリ26の入口側部から
出口側部に回行移動するときに、ベルト30がベルト入
口側押圧部78により可動シーブ23から押されること
によって面圧が高くなることはない。このようにベルト
張力の変化に伴う可動シーブ23の姿勢変化に応じるよ
うに、駆動プーリ21及び従動プーリ26における可動
シーブ23,28のベルト入口側部及び出口側部をそれ
ぞれ押圧部66,78により異なった荷重分担率で押圧
しているので、カム機構50は必要で最小の押圧力で可
動シーブ23を押圧できることとなり、駆動プーリ側及
び従動プーリ側カム機構50,67間のベルト推力の差
及び変速操作力を可及的に低減することができる。
【0061】図3及び図4は本発明者が行った実験のデ
ータであり、各カム機構50,67における回動カム5
1,69にロードセルを連結し、変速機Tの伝動負荷を
無負荷状態から最大負荷状態まで所定負荷毎に段階的に
増大させたときの回動カム51,69の回転トルク(従
って変速操作力に相当するベルト推力)を上記ロードセ
ルで測定したものであり、図3は駆動プーリ側カム機構
50のベルト入口側押圧部66の荷重分担率を出口側押
圧部66よりも高くしかつ従動プーリ側カム機構67の
ベルト出口側押圧部78の荷重分担率を入口側押圧部7
8よりも高くしたもの(本発明例)のデータである。一
方、図4は、逆に駆動プーリ側カム機構50のベルト出
口側押圧部66の荷重分担率を入口側押圧部66よりも
高くしかつ従動プーリ側カム機構67のベルト入口側押
圧部78の荷重分担率を出口側押圧部78よりも高く
たもの(比較例)である。これら図3及び図4によれ
ば、駆動プーリ側カム機構50におけるベルト入口側押
圧部66の荷重分担率を出口側押圧部66よりも大きく
しかつ従動プーリ側カム機構50,67におけるベルト
出口側押圧部78の荷重分担率を入口側押圧部78より
も大きくすることで、駆動プーリ側及び従動プーリ側カ
ム機構50,67間のベルト推力の差が小さくなり、し
かも各カム機構50,67による回動カム51,69の
回転トルク自体をも下げて変速操作力を可及的に低減で
きることが判る。
【0062】また、上記の如き変速時、駆動プーリ21
の可動シーブ23が入力軸9上を、また従動プーリ26
の可動シーブ28がスリーブ16上をそれぞれ伝動負荷
トルクを受けて軸方向に移動する際、入力軸9又はスリ
ーブ16の外周に突設されているピン33上の各ベアリ
ング34が各可動シーブ23,28のボス部23a,2
8a内周面の係合溝31内を、ベアリング34の外輪3
4a外周面を係合溝31側面に当接させた状態で転動す
る。このときの摺動抵抗は、ベアリング34の外輪34
a外周面と係合溝31側面との転がり抵抗及びベアリン
グ34の内外輪での転がり抵抗となり、滑り抵抗は生じ
ない。従って、この転がり抵抗からなる摺動抵抗によっ
て変速操作力をさらに低減することができる。
【0063】そして、上記ベアリング34の外径が入力
軸9又はスリーブ16の外径の1/2.5以上で比較的
大径であるので、係合溝31及びベアリング34に発生
するヘルツ応力は小さくなり、ベアリング34の外輪3
4a外周面や係合溝31側面を焼入処理する必要はな
く、コストダウンを図ることができる。
【0064】さらに、1本のピン33を入力軸9又はス
リーブ16に直径方向に貫通させて両端部を入力軸9又
はスリーブ16表面に突出させ、その突出したピン33
の両端部にそれぞれ上記ベアリング34,34が支持さ
れているので、両ベアリング34,34を支持するピン
33を共用化して部品点数の低減及び組立ての容易化を
図ることができる。
【0065】また、上記各可動シーブ23,28のボス
部23a,28a内周における係合溝31はボス部23
a,28aの長さ方向にブローチ加工されるので、この
係合溝31をボス部23a,28a外周側から孔開け状
に加工する場合に比べ、可動シーブ23,28のシーブ
部に邪魔されることなく係合溝31をボス部23a,2
8aの長さ方向の全体に亘って加工でき、ベアリング3
4が有効に移動する長さを長くして、その分、ボス部2
3a,28aの全長を短くでき、可動シーブ23,28
ひいてはプーリ21,26のコンパクト化を図ることが
できる。
【0066】さらに、上記各カム機構50,67におけ
る回動カム51,69が、カム本体52,70と、該カ
ム本体52,70に取り付けられた焼結金属からなるカ
ムチップ53,71とで構成されている、つまり回動カ
ム51,69におけるカム受けベアリング59,76と
接する部分のみが他の部分とは分けられて、それとは異
なる硬質焼結金属製のカムチップ53,71とされてい
るので、回動カム51,69でのカム面55,72がカ
ム受けベアリング59,76の転動の繰返しによって摩
耗することは殆どなく、変速機Tの変速操作性を長期間
に亘り安定して保つことができる。
【0067】また、このように各カム51,69のカム
面55,72をカム本体52,70とは別体のカムチッ
プ53,71に形成したことで、カムチップ53,71
を他のものに容易に交換することができ、カム面55,
72の傾斜の仕様変更が容易となる。
【0068】しかも、上記各回動カム51,69の各カ
ムチップ53,71は、カム本体52,70を可動シー
ブ23,28のボス部23a,28a上に支持するベア
リング57,74の位置よりも半径方向外側に配置され
ているので、このカムチップ53,71のカム面55,
72をベアリング57,74よりもプーリ21,26中
央側(固定シーブ22,27側)に配置することができ
る。その分、カム機構50,67の軸方向の長さを短く
してプーリ21,26の大きさをコンパクトにすること
ができる。
【0069】また、従動プーリ26側にはトルクカム機
構91が設けられているので、従動プーリ26に伝動ト
ルクが作用して可動シーブ28と出力軸13とが相対回
転したとき、可動シーブ28のボス部28aの傾斜状の
各カム孔92の側面がスリーブ16外周のベアリング9
5から軸方向に移動するように押され、このカム効果に
より可動シーブ28が軸方向に移動してベルト推力が発
生する。
【0070】そのとき、上記トルクカム機構91の1対
のベアリング95,95は、スリーブ16により覆われ
ていない部位の出力軸13に圧入固定したピン94の両
端部に支持されている一方、可動シーブ28を摺動可能
にスリーブ16に係合するベアリング34支持用のピン
33は、出力軸13においてピン33の外径よりも大き
い長径を有する長孔36への挿通により出力軸13と所
定角度だけ相対回転可能とされているので、出力軸13
のトルクカム機構91による可動シーブ28への係合
と、スリーブ16の可動シーブ28への係合とが分離さ
れる。よって、トルクカム機構91を備えたプーリ26
であっても、その可動シーブ28の摺動構造をベアリン
グ34を利用したものとすることができる。
【0071】また、上記出力軸13前端の小径部13a
に配置したベアリング17の外輪17bにスリーブ16
が当接する一方、内輪17aに出力軸13の小径部13
aと他の部分との段部が係止されているので、ベアリン
グ17の内輪17aで上記トルクカム機構91によるス
ラスト荷重を、また外輪17bで固定シーブ27にベル
ト30から作用するスラスト荷重をそれぞれ分担して受
け持たせて、スリーブ16及び出力軸13の相対回転の
抵抗をベアリング17での内外輪17a,17b間の小
さな転がり抵抗とすることができる。尚、スリーブ16
内周面と出力軸13外周面との間にニードルベアリング
(図示せず)を介在させてもよく、また、このニードル
ベアリングと上記ベアリング17と組み合わせて設ける
こともできる。
【0072】また、上記テンション機構38において、
テンションアーム39、そのボス部39a、テンション
軸40及びばね取付アーム部43が全て溶接により結合
されて一体化されているので、テンション機構38の構
造が簡略化され、部品点数の低減や組付性の向上も図れ
る。
【0073】また、上記テンションスプリング48の固
定側端部が、変速機ケース1内に取付固定したテンショ
ン用カラー46に係止されているので、そのスプリング
48のケース1側への係止固定が容易となるとともに、
スプリング48が変速機ケース1外に出ないので、その
変速機ケース1の密閉度を高めることができる。
【0074】また、上記リンクバー79は略三角形状の
板材からなり、その3つの頂点の1つである一端部に駆
動プーリ側カム機構50の回動カム51の回動レバー5
6が連結され、残り2つの頂点のうち後側頂点である部
分に従動プーリ側カム機構67の回動カム69外周の回
動レバー73が連結され、操作軸98側の連結ロッド1
02の端部は上記駆動プーリ側カム機構50の回動レバ
ー56寄りに連結されているので、連結ロッド102の
端部を上記残り2つの頂点のうち前側頂点である部分に
連結する場合に比べ、リンクバー79への曲げ応力の集
中がなく、その折損等を確実に防止することができる。
【0075】また、上記リンクバー79の両端部のピン
孔80,85にそれぞれ焼結金属からなるブッシュ8
2,87が嵌挿され、このブッシュ82,87を嵌挿し
た状態でリンクピン83,88がピン孔80,85と回
動レバー56,73先端部のピン孔81,86とに挿通
されて、各回動レバー56,73とリンクバー79とが
揺動可能に連結されているので、これらの連結部の摩耗
をブッシュ82,87により低減して、長期間に亘って
安定した変速操作性を得ることができる。
【0076】また、上記各カム機構50,67における
カム受けベアリング59,76は、変速機ケース1内面
に取り付けた支持軸60,77上に支持され、この支持
軸60,77の一端部は変速機ケース1内面の軸受部6
3の凹部64に嵌合され、他端部が取付ボルト65によ
り他の軸受部61に螺合締結されているので、取付ボル
ト65はその他端部のみをボルト締結するだけでケース
1に取付固定でき、カム受けベアリング59,76を変
速機ケース1内面に対し片持ち状態の支持軸60,77
によって容易に取付支持することができる。
【0077】そして、上記支持軸60,77の端部を締
結する取付ボルト65を螺合させるねじ孔62は、変速
機ケース1において入出力軸9,13と平行な方向に変
速機ケース1の内面から開口に向かう方向に延びている
ので、変速機ケース1を鋳造する際にねじ孔62用の穴
部を成形しておけば、その後にねじ部を加工するだけで
容易に形成することができ、ねじ孔62を入出力軸9,
13と直交する方向に形成する場合の工具挿通用の孔や
その加工後の蓋部が不要となる。
【0078】尚、上記実施形態では、カム機構50(6
7)における回動カム51(69)のベルト入口側(出
口側)のカムチップ53(71)をシム84の介在によ
りカム本体52(70)から突出させることで、そのカ
ムチップ53(71)の傾斜カム面55(72)のカム
本体52(70)からの高さをベルト出口側(入口側)
にあるカムチップ53(71)よりも高くしているが、
両カムチップ53,71の傾斜カム面55,72のカム
本体52,70からの高さは互いに同じとし、その代
り、1対のカム受けベアリング59,76のケース2,
3からの突出量をベルト入口側(ベルト出口側)でベル
ト出口側(ベルト入口側)よりも大きくなるように異な
らせてもよい。さらにはカムチップ53,71の傾斜カ
ム面55,72の高さ及びカム受けベアリング59,7
6の高さの双方をベルト入口側(ベルト出口側)で出口
(入口側)に比べ大きくするようにすることもでき
る。要は、駆動プーリ21のベルト入口側押圧部66の
荷重分担率をベルト出口側押圧部66の荷重分担率より
も大としかつ従動プーリ26のベルト出口側押圧部78
の荷重分担率をベルト入口側押圧部78の荷重分担率よ
りも大とすればよく、その他の構造を採用することがで
きる。
【0079】また、上記実施形態では、可動シーブ2
3,28を固定シーブ22,27側に押圧駆動する押圧
機構として、回動カム51,69とカム受けベアリング
59,76とを組み合わせたカム機構50,67を採用
しているが、固定カム及び回動カムの傾斜カム面同士を
カム接触させるようにしたカム機構や、カム機構以外の
他の機構、例えばばね機構等を採用することもできる。
【0080】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1の発明で
は、互いに平行に配置された1対の回転軸上にそれぞれ
設けられた変速プーリからなる駆動及び従動プーリと、
この両プーリ間に巻き掛けられたベルトと、各プーリの
可動シーブ背面側に配置され、プーリのベルト入口側及
び出口側にそれぞれ位置する入口側及び出口側押圧部の
双方で可動シーブを固定シーブ側に向けて押して、各プ
ーリの有効半径を変化させる駆動プーリ側及び従動プー
リ側押圧機構と、駆動及び従動プーリの一方の可動シー
ブが、対向する固定シーブに接近すると他方の可動シー
ブが対向する固定シーブから離れるように上記両押圧機
構を作動させることで両回転軸間の変速比を変化させる
変速切換機構と、両プーリ間に巻き掛けられるベルトの
緩み側スパンを該ベルトが各プーリのベルト溝に食い込
むように押圧して、ベルトへの推力を発生させるテンシ
ョン機構とを備えたプーリ式変速機において、上記駆動
プーリ側押圧機構における駆動プーリのベルト入口側押
圧部の荷重分担率をベルト出口側押圧部の荷重分担率よ
りも大とし、かつ従動プーリ側押圧機構における従動プ
ーリのベルト出口側押圧部の荷重分担率をベルト入口側
押圧部の荷重分担率よりも大としたことにより、各プー
のベルト入口側及び出口側押圧部の荷重分担率をプー
リ間のベルト張力の変化に伴う可動シーブの姿勢変化に
対応させて、押圧機構に必要最小の押圧力で可動シー
ブを押圧させることができ、駆動プーリ側及び従動プー
リ側押圧機構間のベルト推力の差及び変速操作力の大幅
な低減を図ることができる。
【0081】請求項2の発明では、各押圧機構は、各
々、互いにカム接触する第1カムと第2カムとからな
り、第1及び第2カムの一方が可動シーブのボス部上に
ベアリングを介して軸方向に可動シーブと共に移動一体
にかつ相対回転可能に支持され、他方が回転軸に軸方向
に移動不能にかつ回転軸に対して相対回転可能に設けら
れ、両カムの一方は回転軸回りに回動可能な回動カムと
される一方、他方は回動不能な固定カムとされ、上記回
動カムと固定カムとの相対回転により可動シーブを固定
シーブに対して接離させるように軸方向に移動させて上
記各プーリの有効半径を変化させるカム機構とし、押圧
部は、各カム機構における第1カム及び第2カムの対向
端部の少なくとも一方に形成された傾斜カム面を備えて
いるものとした。また、請求項4の発明では、各押圧機
構は上記と同様のカム機構とし、押圧部は、各カム機構
における第1カム及び第2カムの一方の他方カムとの対
向端部に形成された傾斜カム面と、他方の対向端部に設
けられ、上記傾斜カム面に転動しながら接触する転動体
とを備えているものとした。これらの発明によると、上
記押圧機構の望ましい構造が得られる。
【0082】請求項3の発明では、上記請求項2の発明
のベルト変速機において、駆動プーリ側押圧機構のカム
における駆動プーリのベルト入口側にある傾斜カム面を
ベルト出口側にある傾斜カム面よりも、対向するカム面
側に突出させるとともに、従動プーリ側押圧機構のカム
における従動プーリのベルト出口側にある傾斜カム面を
ベルト入口側にある傾斜カム面よりも、対向するカム面
側に突出させた。また、請求項5の発明では、請求項4
の発明において、駆動プーリ側押圧機構のカムにおける
駆動プーリのベルト入口側にある傾斜カム面をベルト出
口側にある傾斜カム面よりも、対向する転動体側に突出
させるとともに、従動プーリ側押圧機構のカムにおける
従動プーリのベルト出口側にある傾斜カム面をベルト入
口側にある傾斜カム面よりも、対向する転動体側に突出
させた。一方、請求項6の発明では、逆に駆動プーリ側
押圧機構のカムにおける駆動プーリのベルト入口側にあ
る転動体をベルト出口側にある転動体よりも、対向する
傾斜カム面側に突出させるとともに、従動プーリ側押圧
機構のカムにおける従動プーリのベルト出口側にある転
動体をベルト入口側にある転動体よりも、対向する傾斜
カム面側に突出させた。さらに、請求項7の発明では、
請求項5の発明のプーリ式変速機において、請求項6の
発明と同様に、駆動プーリ側押圧機構のカムにおける
プーリのベルト入口側にある転動体をベルト出口側に
ある転動体よりも、対向する傾斜カム面側に突出させる
とともに、従動プーリ側押圧機構のカムにおける従動プ
ーリのベルト出口側にある転動体をベルト入口側にある
転動体よりも、対向する傾斜カム面側に突出させた。こ
れらの発明によると、プーリのベルト入口側及びベル
ト出口側をそれぞれ押圧する押圧部の荷重分担率を異な
らせる構造を具体的かつ容易に得ることができる。
【0083】請求項8の発明によると、上記傾斜カム面
と転動体とを接触させるカム機構を有するプーリ式変速
機において、各カムは、カム本体と、このカム本体に取
付固定され、カム面を有するカムチップとを備えてなる
構成とし、駆動プーリのベルト入口側にあるカムチップ
とカム本体との間、及び従動プーリのベルト出口側にあ
るカムチップとカム本体との間に所定厚さのシムを介在
させたことにより、駆動プーリのベルト入口側にあるカ
ムチップのカム面をシムによりカム本体に対し駆動プー
リのベルト出口側にあるカムチップのカム面よりも突出
させ、かつ従動プーリのベルト出口側にあるカムチップ
のカム面をシムによりカム本体に対し従動プーリのベル
ト入口側にあるカムチップのカム面よりも突出させる
とができ、押圧部の荷重分担率を異ならせる構造をより
一層容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】駆動プーリにおいてベルト張力分布の変化によ
る可動シーブの傾き動作を示す模式説明図である。
【図2】駆動及び従動プーリ間に巻き掛けられるベルト
の張力分布を示す模式説明図である。
【図3】本発明に係るプーリ式変速機において負荷の変
化に伴う駆動プーリ側及び従動プーリ側カム機構のカム
回転トルクの変化を示す実験データの特性図である。
【図4】プーリ式変速機においてベルト出口側押圧部の
荷重分担率をベルト入口側押圧部よりも大きくしたとき
の図3相当図である。
【図5】カム本体に対するカムチップの取付構造を示す
拡大展開図である。
【図6】カム本体に対するカムチップの取付構造を示す
拡大正面図である。
【図7】カム本体に対するカムチップの取付構造を示す
拡大断面図である。
【図8】ケースにおけるカム受けベアリング取付部の構
造を示す拡大断面図である。
【図9】変速切換機構のリンクバー、連結ロッド、クラ
ンクアーム及び操作軸の連結構造を示す拡大正面図であ
る。
【図10】変速切換機構のリンクバー、連結ロッド、ク
ランクアーム及び操作軸の連結構造を示す拡大平面図で
ある。
【図11】本発明の実施例に係るプーリ式変速機の水平
断面図である。
【図12】プーリ式変速機をケースを開けた状態で示す
正面図である。
【図13】図11のXIII−XIII線拡大断面図である。
【図14】テンションアームの拡大正面図である。
【図15】ケースにおけるスプリング取付部の構造を示
す拡大断面図である。
【符号の説明】
T 変速機 1 変速機ケース 2 前ケース 3 後ケース 4 ねじ孔 7 カラー 9 入力軸 13 出力軸 16 スリーブ 17 ベアリング 20 変速プーリ機構 21 駆動プーリ 26 従動プーリ 22,27 固定シーブ 23,28 可動シーブ 23a,28a ボス部 24,29 ベルト溝 30 Vベルト 30a 張り側スパン 30b 緩み側スパン 31 係合溝 33 ピン 34 ベアリング 38 テンション機構 39 テンションアーム 41 テンションプーリ 48 テンションスプリング 50 駆動プーリ側カム機構 66,78 押圧部 67 従動プーリ側カム機構 51,69 回動カム 52,70 カム本体 53,71 カムチップ 55,72 傾斜カム面 56,73 回動レバー 57,74 ベアリング 59,76 カム受けベアリング 60,77 支持軸 61,63 軸受部 62 ねじ孔 64 凹部 65 取付ボルト 70 カム本体 84 シム 79 リンクバー 80,85 ピン孔 82,87 ブッシュ 83,88 リンクピン 89 変速切換機構 91 トルクカム機構 98 操作軸 102 連結ロッド

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 互いに平行に配置された1対の回転軸
    と、 上記各回転軸上にそれぞれ設けられ、各々、回転軸に回
    転一体にかつ軸方向に移動不能に固定支持された固定シ
    ーブと、該固定シーブとの間に断面略V字状のベルト溝
    を形成するように上記固定シーブに対向して設けられ、
    かつ背面側に軸方向に延びるボス部を有し、該ボス部に
    て回転軸に回転一体にかつ軸方向に移動可能に外嵌支持
    された可動シーブとからなり、一方の可動シーブの固定
    シーブへの向きと他方の可動シーブの固定シーブへの向
    きとが互いに逆向きに設定された駆動及び従動プーリ
    と、 上記駆動及び従動プーリのベルト溝間に巻き掛けられた
    ベルトと、 上記駆動及び従動プーリの各可動シーブ背面側にそれぞ
    れ配置され、かつプーリのベルト入口側及び出口側にそ
    れぞれ位置するベルト入口側及び出口側押圧部を有し、
    上記両押圧部の双方でそれぞれ可動シーブを固定シーブ
    側に向けて押すことで、可動シーブを固定シーブに対し
    て接離させるように軸方向に移動させて上記各プーリの
    有効半径を変化させる駆動プーリ側及び従動プーリ側押
    圧機構と、 上記駆動及び従動プーリの一方の可動シーブが、対向す
    る固定シーブに接近すると他方の可動シーブが対向する
    固定シーブから離れるように上記両押圧機構を作動させ
    ることで上記両回転軸間の変速比を変化させる変速切換
    機構と、 上記駆動及び従動プーリ間に配置され、両プーリ間に巻
    き掛けられるベルトの緩み側スパンを該ベルトが各プー
    リのベルト溝に食い込むように押圧して、ベルトへの推
    力を発生させるテンション機構とを備えたプーリ式変速
    機において、 上記駆動プーリ側押圧機構における駆動プーリのベルト
    入口側押圧部の荷重分担率がベルト出口側押圧部の荷重
    分担率よりも大とされている一方、 上記従動プーリ側押圧機構における従動プーリのベルト
    出口側押圧部の荷重分担率がベルト入口側押圧部の荷重
    分担率よりも大とされている ことを特徴とするプーリ式
    変速機。
  2. 【請求項2】 請求項1記載のプーリ式変速機におい
    て、 各押圧機構は、各々、互いにカム接触する第1カムと第
    2カムとからなり、上記第1及び第2カムの一方が可動
    シーブのボス部上にベアリングを介して軸方向に可動シ
    ーブと共に移動一体にかつ相対回転可能に支持され、他
    方が回転軸に軸方向に移動不能にかつ回転軸に対して相
    対回転可能に設けられ、両カムの一方は回転軸回りに回
    動可能な回動カムとされる一方、他方は回動不能な固定
    カムとされ、上記回動カムと固定カムとの相対回転によ
    り可動シーブを固定シーブに対して接離させるように軸
    方向に移動させて上記各プーリの有効半径を変化させる
    カム機構であり、 押圧部は、上記各カム機構における第1カム及び第2カ
    ムの対向端部の少なくとも一方に形成された傾斜カム面
    を備えていることを特徴とするプーリ式変速機。
  3. 【請求項3】 請求項2記載のプーリ式変速機におい
    て、 駆動プーリ側押圧機構のカムにおける駆動プーリのベル
    ト入口側にある傾斜カム面がベルト出口側にある傾斜カ
    ム面よりも、対向するカム面側に突出している一方、 従動プーリ側押圧機構のカムにおける従動プーリのベル
    ト出口側にある傾斜カム面がベルト入口側にある傾斜カ
    ム面よりも、対向するカム面側に突出している ことを特
    徴とするプーリ式変速機。
  4. 【請求項4】 請求項1記載のプーリ式変速機におい
    て、 各押圧機構は、各々、互いにカム接触する第1カムと第
    2カムとからなり、上記第1及び第2カムの一方が可動
    シーブのボス部上にベアリングを介して軸方向に可動シ
    ーブと共に移動一体にかつ相対回転可能に支持され、他
    方が回転軸に軸方向に移動不能にかつ回転軸に対して相
    対回転可能に設けられ、両カムの一方は回転軸回りに回
    動可能な回動カムとされる一方、他方は回動不能な固定
    カムとされ、上記回動カムと固定カムとの相対回転によ
    り可動シーブを固定シーブに対して接離させるように軸
    方向に移動させて上記各プーリの有効半径を変化させる
    カム機構であり、 押圧部は、上記各カム機構における第1カム及び第2カ
    ムの一方の他方カムとの対向端部に形成された傾斜カム
    面と、他方の対向端部に設けられ、上記傾斜カム面に転
    動しながら接触する転動体とを備えていることを特徴と
    するプーリ式変速機。
  5. 【請求項5】 請求項4記載のプーリ式変速機におい
    て、 駆動プーリ側押圧機構のカムにおける駆動プーリのベル
    ト入口側にある傾斜カム面がベルト出口側にある傾斜カ
    ム面よりも、対向する転動体側に突出している一方、 従動プーリ側押圧機構のカムにおける従動プーリのベル
    ト出口側にある傾斜カム面がベルト入口側にある傾斜カ
    ム面よりも、対向する転動体側に突出している ことを特
    徴とするプーリ式変速機。
  6. 【請求項6】 請求項4記載のプーリ式変速機におい
    て、 駆動プーリ側押圧機構のカムにおける駆動プーリのベル
    ト入口側にある転動体がベルト出口側にある転動体より
    も、対向する傾斜カム面側に突出している一方、 従動プーリ側押圧機構のカムにおける従動プーリのベル
    ト出口側にある転動体がベルト入口側にある転動体より
    も、対向する傾斜カム面側に突出している ことを特徴と
    するプーリ式変速機。
  7. 【請求項7】 請求項5記載のプーリ式変速機におい
    て、 駆動プーリ側押圧機構のカムにおける駆動プーリのベル
    ト入口側にある転動体がベルト出口側にある転動体より
    も、対向する傾斜カム面側に突出している一方、 従動プーリ側押圧機構のカムにおける従動プーリのベル
    ト出口側にある転動体がベルト入口側にある転動体より
    も、対向する傾斜カム面側に突出している ことを特徴と
    するプーリ式変速機。
  8. 【請求項8】 請求項3又は5記載のプーリ式変速機に
    おいて、 各カムは、カム本体と、 上記カム本体に取付固定され、カム面を有するカムチッ
    プとを備えてなり、 駆動プーリのベルト入口側にあるカムチップとカム本体
    との間、及び従動プーリのベルト出口側にあるカムチッ
    プとカム本体との間に所定厚さのシムが介在されている
    ことを特徴とするプーリ式変速機。
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