JP4200728B2 - トロイダル型無段変速機及び無段変速装置 - Google Patents

トロイダル型無段変速機及び無段変速装置 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
この発明に係るトロイダル型無段変速機及び無段変速装置は、自動車用自動変速装置として、或はポンプ等の各種産業機械の運転速度を調節する為の変速装置として利用する。
【0002】
【従来の技術】
自動車用変速機を構成する変速機の一種としてトロイダル型無段変速機が知られ、一部で実施されている。この様な既に一部で実施されているトロイダル型無段変速機は、入力部から出力部への動力の伝達を互いに並列に設けられた2系統に分けて行なう、所謂ダブルキャビティ型と呼ばれているものである。この様なトロイダル型無段変速機は従来から、特許文献1、特許文献2、特許文献3等、多数の刊行物に記載されて周知であるが、その基本構造に就いて、図10により説明する。
【0003】
この図10に示したトロイダル型無段変速機は、特許請求の範囲に記載した回転軸に相当する入力回転軸1を有する。そして、この入力回転軸1の中間部基端寄り(図10の左寄り)部分及び先端寄り(図10の右寄り)部分の周囲に、それぞれが請求項1に記載した外側ディスクである入力側ディスク2a、2bを支持している。これら両入力側ディスク2a、2bは上記入力回転軸1に対し、それぞれが請求項1に記載した軸方向片側面であってトロイド曲面である入力側面3、3同士を互いに対向させた状態で、それぞれボールスプライン4、4を介して支持している。従って上記両入力側ディスク2a、2bは、上記入力回転軸1の周囲に、この入力回転軸1の軸方向の変位自在に、且つ、この入力回転軸1と同期した回転自在に支持されている。
【0004】
又、上記入力回転軸1の基端部(図10の左端部)と上記入力側ディスク2aの外側面との間に、転がり軸受5と、ローディングカム式の押圧装置6とを設けている。そして、この押圧装置6を構成するカム板7を、駆動軸8により回転駆動自在としている。これに対して、上記入力回転軸1の先端部(図10の右端部)と上記別の入力側ディスク2bの外側面との間に、ローディングナット9と、大きな弾力を有する皿板ばね10とを設けている。
【0005】
上記入力回転軸1の中間部は、トロイダル型無段変速機を収納したケーシング11(本発明の実施の形態を示す図1〜3参照)内に設置した隔壁部12に設けた通孔13を挿通している。この通孔13の内径側には円筒状の出力筒14を、1対の転がり軸受15、15により回転自在に支持しており、この出力筒14の中間部外周面に出力歯車16を固設している。又、この出力筒14の両端部で上記隔壁部12の両外側面から突出した部分に、請求項1に記載した内側ディスクに相当する出力側ディスク17a、17bを、スプライン係合により、上記出力筒14と同期した回転自在に支持している。
【0006】
この状態で、請求項1に記載した軸方向両側面であってそれぞれがトロイド曲面である、上記各出力側ディスク17a、17bの出力側面18、18が、前記各入力側面3、3に対向する。又、これら両出力側ディスク17a、17bの内周面のうちで上記出力筒14の端縁よりも突出した部分と上記入力回転軸1の中間部外周面との間に、それぞれニードル軸受19、19を設けている。そして、上記各出力側ディスク17a、17bに加わる荷重を支承しつつ、上記入力回転軸1に対するこれら各出力側ディスク17a、17bの回転及び軸方向変位を自在としている。
【0007】
又、上記入力回転軸1の周囲で上記入力、出力両側面3、18同士の間部分(キャビティ)に、それぞれ複数個(一般的には2個又は3個)ずつのパワーローラ20、20を配置している。これら各パワーローラ20、20はそれぞれ、上記入力、出力両側面3、18に当接する周面21、21を球状凸面とされたもので、請求項1に記載した支持部材であるトラニオン22、22の側面部分に、支持軸23、23と、ラジアルニードル軸受24、24と、スラスト玉軸受25、25と、スラストニードル軸受26、26とにより、回転及び若干の揺動変位自在に支持されている。即ち、上記各支持軸23、23は、基半部と先半部とが互いに偏心した偏心軸であり、このうちの基半部を上記各トラニオン22、22の中間部に、図示しない別のラジアルニードル軸受により、揺動変位自在に支持している。
【0008】
上記各パワーローラ20、20は、この様な支持軸23、23の先半部に、上記ラジアルニードル軸受24、24と上記スラスト玉軸受25、25とにより、回転自在に支持している。又、構成各部材の弾性変形に基づく、上記入力回転軸1の軸方向に関する上記各パワーローラ20、20の変位を、上記別のラジアルニードル軸受と上記各スラストニードル軸受26、26とにより、自在としている。
【0009】
更に、上記各トラニオン22、22は、(図10で表裏方向の)両端部に設けた枢軸27、27(本発明の実施の形態を示す図3参照)を、前記ケーシング11内に設置した支持板28a、28b(本発明の実施の形態を示す図1〜4参照)に、揺動並びに軸方向の変位自在に支持している。即ち、上記各トラニオン22、22は、図10の時計方向及び反時計方向の揺動変位自在に支持すると共に、油圧式のアクチュエータ29、29(本発明の実施の形態を示す図3参照)により、上記各枢軸27、27の軸方向(図1、2、3、4の上下方向、図10の表裏方向)に変位させられる様にしている。
【0010】
上述の様に構成するトロイダル型無段変速機の運転時には、前記駆動軸8により前記入力側ディスク2aを、前記押圧装置6を介して回転駆動する。この押圧装置6は、軸方向の推力を発生させつつ上記入力側ディスク2aを回転駆動するので、上記入力側ディスク2aを含む1対の入力側ディスク2a、2bが、前記各出力側ディスク17a、17bに向け押圧されつつ、互いに同期して回転する。この結果、上記各入力側ディスク2a、2bの回転が、上記各パワーローラ20、20を介して上記各出力側ディスク17a、17bに伝わり、前記出力筒14を介してこれら各出力側ディスク17a、17bと結合された、前記出力歯車16が回転する。
【0011】
運転時には上記押圧装置6が発生する推力により、上記各パワーローラ20、20の周面21、21と上記入力、出力両側面3、18との各当接部の面圧が確保される。又、この面圧は、上記駆動軸8から上記出力歯車16に伝達する動力(トルク)が大きくなる程高くなる。この為、トルク変化に関わらず、良好な伝達効率を得られる。又、伝達すべきトルクが0若しくは僅少の場合にも、前記皿板ばね10及び上記押圧装置6の内径側に設けた予圧ばね30により、上記各当接部の面圧を或る程度確保する。従って、上記各当接部でのトルク伝達は、起動直後から、過大な滑りを伴う事なく、円滑に行なわれる。
【0012】
上記駆動軸8と上記出力歯車16との間の変速比を変える場合には、前記アクチュエータ29、29により上記各トラニオン22、22を、図10の表裏方向(図1〜4の上下方向)に変位させる。この場合、図10の上半部のトラニオン22、22と下半部のトラニオン22、22とは、互いに逆方向に、同じ量だけ変位させる。この変位に伴って、上記各パワーローラ20、20の周面21、21と上記入力、出力両側面3、18との当接部の接線方向に加わる力の向きが変化する。そして、この接線方向の力によって、上記各トラニオン22、22が、それぞれの両端部に設けた枢軸27、27を中心として揺動する。
【0013】
この揺動に伴って、上記各パワーローラ20、20の周面21、21と上記入力、出力両側面3、18との当接部の、これら両側面3、18の径方向に関する位置が変化する。これら各当接部が、上記入力側面3の径方向外側に、上記出力側面18の径方向内側に、それぞれ変化する程、上記変速比は増速側に変化する。これに対して、図10に示す様に、上記各当接部が、上記入力側面3の径方向内側に、上記出力側面18の径方向外側に、それぞれ変化する程、上記変速比は減速側に変化する。
【0014】
ところで、図10に示した従来構造の場合、1対の出力側ディスク17a、17bの外側面31、31同士の間に、出力歯車16に加えて、1対の転がり軸受15、15、並びにこの転がり軸受15、15を支持する為の隔壁部12を設置している為、上記両外側面31、31同士の間隔D31が大きくなる。この為、トロイダル型無段変速機の軸方向寸法が嵩み、このトロイダル型無段変速機が大型化し重量が増大する。この様な大型化及び重量の増大は、上記間隔D31の増大によるものだけでなく、上記各出力側ディスク17a、17bの軸方向の厚さが嵩む事でも生じる。この理由は、次の通りである。
【0015】
図10に示した、トロイダル型無段変速機の減速状態で、各パワーローラ20、20の周面21、21は、上記各出力側ディスク17a、17bの出力側面18、18の外径寄り部分に当接した状態で、これら各出力側面18、18を押圧する。この為、上記各出力側ディスク17a、17bには、出力筒14とのスプライン係合部を中心とする、大きなモーメントが加わる。この様な大きなモーメントに拘らず、変速比のずれを抑えると共に上記各出力側ディスク17a、17bの耐久性を確保する為には、これら各出力側ディスク17a、17bの弾性変形を抑える必要がある。そして、この為には、これら各出力側ディスク17a、17bの軸方向に関する厚さ寸法を大きくして、これら各出力側ディスク17a、17bの剛性を高くする必要がある。この様な理由により、これら各出力側ディスク17a、17bの軸方向に関する厚さ寸法を大きくすると、その分、上述の様にトロイダル型無段変速機が大型化する。
【0016】
これに対して特許文献4には、一体型の出力側ディスクを入力側回転軸の中間部周囲に、それぞれ1対ずつのラジアルニードル軸受及びスラストニードル軸受により回転自在に支持する構造が記載されている。この様な特許文献4に記載された構造によれば、図10に示した従来構造から隔壁部12を省略すると共に出力側ディスクの軸方向寸法の短縮化も可能になる為、トロイダル型無段変速機全体としての小型・軽量化を図れる。
【0017】
但し、特許文献4に記載された構造に組み込まれるスラストニードル軸受は、各ニードルの転動面と相手軌道面との転がり接触部で滑り摩擦に基づく発熱が著しい等の理由により、予圧を付与した状態での使用が難しい。言い換えれば、上記スラストニードル軸受の寿命を十分に確保する事を考慮した場合には、このスラストニードル軸受を、正の隙間を有する状態で使用しなければならない。この為、出力側ディスクの軸方向位置を厳密に規制する事が難しく、この出力側ディスクに設けた出力側面と、各パワーローラの周面との当接位置が微妙にずれる可能性がある。
【0018】
この様な原因で上記出力側面と上記周面との当接位置がずれると、これら両面同士の転がり接触部でサイドスリップが発生し、上記各パワーローラを支承したトラニオンが枢軸を中心として回動し、トロイダル型無段変速機の変速比が無用に変化する可能性がある。この様な状態は、運転者に違和感を与える為、好ましくない。特に、トロイダル型無段変速ユニットと遊星歯車式変速ユニットとを組み合わせて、無限大の変速比を実現する無段変速装置の場合、上記トロイダル型無段変速ユニットを大きなトルクが通過する状態で、微妙な変速比制御が必要になる。この為、上述の様な理由で変速比が無用に変化する事は、特に好ましくない。
【0019】
【特許文献1】
特開平2−283949号公報
【特許文献2】
特開平8−4869号公報
【特許文献3】
特開平8−61453号公報
【特許文献4】
特開2001−116097号公報
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
上述の様な不都合を解消すべく、一体型の出力側(内側)ディスクを入力側回転軸の中間部周囲に、それぞれが予圧を付与されたスラストアンギュラ型である、1対の玉軸受により回転自在に支持する事が考えられる。但し、予圧を付与したスラスト玉軸受により、上記出力側ディスクを支持する構造を採用した場合、温度変化に拘らず、上記各玉の予圧が変化しない様に考慮する必要がある。この理由は、次の通りである。
【0021】
上記出力側ディスクを初めとして、トロイダル型無段変速機の内部部品は、運転時に加わる大きな力に基づいて変形する事を防止する為に、軸受鋼等の鉄系合金により造る。これに対して、上記内部部品を収納するケーシングは、軽量化の為にアルミニウム合金製とする。周知の様に、アルミニウム合金の熱膨張率は鉄系合金の熱膨張率よりも大きい。この為、温度変化に伴う内部部品とケーシングとの寸法変化の差により、上記玉軸受の予圧が変化する。温度変化に伴う予圧変化の機構及びその方向の詳細に就いては後述するが、何れにしても、予圧の変化は、トロイダル型無段変速機の伝達効率や耐久性を確保する面から悪影響がある。即ち、予圧が低下した場合には、上記出力側ディスクの位置決めが不完全となって伝達効率の低下に結び付く一方、予圧の上昇は、上記玉軸受の転がり疲れ寿命の低下に結び付く。上記ケーシングを鉄系合金製とすれば、上述の様な問題が生じる事を防止できるが、体積の嵩むケーシングを鉄系合金製とする事は、重量が徒に増加する原因となる為、採用できない。
本発明のトロイダル型無段変速機及び無段変速装置は、この様な事情に鑑みて発明したものである。
【0022】
【課題を解決するための手段】
本発明のトロイダル型無段変速機は、前述した従来から知られているトロイダル型無段変速機と同様に、ケーシングと、回転軸と、1対の外側ディスクと、内側ディスクと、複数個の支持部材と、第一、第二の1対の支持板と、複数個のパワーローラとを備える。
このうちの回転軸は、上記ケーシング内に回転自在に支持されている。
又、上記各外側ディスクは、それぞれが断面円弧形である互いの軸方向片側面同士を対向させた状態で上記回転軸の軸方向2個所位置に、この回転軸と同期した回転を自在として支持されている。
又、上記内側ディスクは、上記回転軸の中間部周囲に、断面円弧形である軸方向両側面を上記各外側ディスクの軸方向片側面に対向させた状態で、上記回転軸に対する相対回転を自在に支持されている。
又、上記各支持部材は、軸方向に関して、上記内側ディスクの軸方向両側面と各外側ディスクの軸方向片側面との間位置にそれぞれ複数個ずつ、上記回転軸に対し捩れの位置にある枢軸を中心とする揺動変位を自在に設けられている。
又、上記各支持板は、上記各支持部材の両端部に設けられた上記枢軸を支持する為のものである。
更に、上記各パワーローラは、上記各支持部材に回転自在に支持され、球状凸面としたそれぞれの周面を、上記内側ディスクの軸方向両側面と各外側ディスクの軸方向片側面とに当接させている。
【0023】
特に、本発明のトロイダル型無段変速機に於いては、上記内側ディスクの軸方向両側面と上記各外側ディスクの軸方向片側面との間に、それぞれの中間部に支持環部を有する1対の支柱を、この支持環部に上記回転軸を挿通した状態で配置している。
そして、上記両支柱の支持環部に上記内側ディスクの軸方向両端部を、玉軸受により回転自在に支持している。
又、上記両支柱の一端部同士のピッチを、上記第一の支持板に上記回転軸の軸方向に離隔した状態で形成した第一の支持孔に上記両支柱の中間部一端寄り部分を内嵌する事で規制すると共に、上記両支柱の他端部同士のピッチを、上記第二の支持板に上記回転軸の軸方向に離隔した状態で形成した第二の支持孔に上記両支柱の中間部他端寄り部分を内嵌する事で規制している。
又、上記各支持部材を上記各枢軸の軸方向に変位させる為のアクチュエータを収納した単一のアクチュエータボディーに上記1対の支柱の一端部を結合固定すると共に、これら各支柱の他端部を、単一の連結板に結合固定している。
そして、この連結板及び上記アクチュエータボディーを、上記ケーシング内に支持固定している。
更に、上記両支柱の上記支持環部と、上記第一の支持孔に内嵌される、これら両支柱の中間部一端寄り部分と、上記第二の支持孔に内嵌される、これら両支柱の中間部他端寄り部分と、上記アクチュエータボディーに結合固定される、これら両支柱の一端部と、上記連結板に結合固定される、これら両支柱の他端部とを、それぞれの支柱毎に互いに一体に形成している。
【0024】
又、請求項4に記載した本発明の無段変速装置は、トロイダル型無段変速ユニットと遊星歯車式変速ユニットとを組み合わせると共に、このうちのトロイダル型無段変速ユニットの回転軸に繋がる入力軸と、上記遊星歯車式変速ユニットの構成部材に繋がる出力軸とを備える。
そして、このうちのトロイダル型無段変速ユニットは、上述の様なトロイダル型無段変速機である。
又、上記遊星歯車式変速ユニットは、上記トロイダル型無段変速ユニットの回転軸と内側ディスクとから動力を伝達されるものであって、動力の伝達経路を2系統に切り換える切換手段を有する。
【0025】
又、好ましくは、請求項5に記載した様に、上記遊星歯車式変速ユニットは、キャリアと、複数の第一の遊星歯車と、第一の太陽歯車と、複数の第二の遊星歯車と、第二の太陽歯車と、リング歯車とを備えたものである。
このうちのキャリアは、上記トロイダル型無段変速ユニットを構成する1対の外側ディスクにこれら両外側ディスクと同心に結合固定されて、これら両外側ディスクと共に回転する。
又、上記各第一の遊星歯車は、上記キャリアの軸方向両側面のうちで一方の外側ディスクに対向する軸方向片面に、回転自在に支持されている。
又、上記第一の太陽歯車は、上記トロイダル型無段変速ユニットを構成する回転軸の周囲に配置された中空回転軸により内側ディスクに結合された状態で、上記各ディスクと同心に且つ回転自在に設けられ、上記各第一の遊星歯車と噛合している。
又、上記各第二の遊星歯車は、上記キャリアの他面に回転自在に支持されている。
又、上記第二の太陽歯車は、上記各ディスクと同心に且つ回転自在に設けられて、上記各第二の遊星歯車と噛合している。
又、上記リング歯車は、上記各ディスクと同心に且つ回転自在に設けられて、上記各第一の遊星歯車と噛合している。
そして、切換手段は、上記リング歯車を通じて上記内側ディスクから取り出した動力を出力軸に伝達するモードと、上記第二の太陽歯車を通じてこの内側ディスクから取り出した動力を出力軸に伝達するモードとを選択するものである。
【0026】
【作用】
上述の様な本発明のトロイダル型無段変速機及び無段変速装置の場合には、前述した従来構造の如く、1対の内側ディスク同士の間に、転がり軸受、並びにこの転がり軸受を支持する為の隔壁部を設置する必要がなくなる。従って、これら両内側ディスク同士の間隔を縮めたり、内側ディスクを一体化する事も可能になって、トロイダル型無段変速機の小型・軽量化を図れる。
又、内側ディスクを支持する玉軸受は、適正な予圧を付与する事ができ、しかも、予圧を付与した状態でも耐久性が著しく低下する事はないので、この玉軸受の耐久性を確保しつつ上記内側ディスクが軸方向にずれ動く事を防止できる。この為、変速比が不用意に変化する事を防止して、運転者に違和感を与える事のない無段変速装置を実現できる。
更に、1対の支柱の両端部を、単一のアクチュエータボディー及び単一の連結板を介してケーシングに支持固定する為、内側ディスク等の内部部品とケーシングとの熱膨張差により、上記玉軸受の予圧が変化する事を防止できる。この結果、トロイダル型無段変速機の伝達効率及び耐久性の確保を図れる。
特に、上記玉軸受をスラストアンギュラ玉軸受とすれば、この様な玉軸受を設ける為のスペースが嵩む事を防止できる。この為、トロイダル型無段変速機の更なる小型化を図れると共に、上記内側ディスクと外側ディスクとの間部分に存在するパワーローラや支持部材、更にはこの支持部材に固定された部材等と上記玉軸受とを、互いに干渉しにくくできる。
【0027】
【発明の実施の形態】
先ず、図1〜5は、本発明の実施の形態の1例である。尚、図1〜3には縦横比等の寸法関係を、実際の寸法関係で示している。又、図4〜5に就いても、実際の寸法関係に則して描いている。本例の無段変速装置は、請求項1〜3に記載したトロイダル型無段変速機に対応するトロイダル型無段変速ユニット32と、第一〜第三の遊星歯車式変速ユニット33〜35とを組み合わせて成り、入力軸36と出力軸37とを有する。図示の例では、これら入力軸36と出力軸37との間に、上記トロイダル型無段変速ユニット32の入力回転軸1aと、伝達軸38とを、これら両軸36、37と同心に、且つ、これら両軸36、37に対する相対回転を自在に設けている。そして、上記第一、第二の遊星歯車式変速ユニット33、34を上記入力回転軸1aと上記伝達軸38との間に掛け渡す状態で、上記第三の遊星歯車式変速ユニット35をこの伝達軸38と上記出力軸37との間に掛け渡す状態で、それぞれ設けている。
【0028】
このうちのトロイダル型無段変速ユニット32は、それぞれが外側ディスクである1対の入力側ディスク2a、2bと、内側ディスクである一体型の出力側ディスク17cと、複数のパワーローラ20、20とを備える。そして、上記1対の入力側ディスク2a、2bは、上記入力回転軸1aを介して互いに同心に、且つ、同期した回転を自在として結合されている。又、上記出力側ディスク17cは、上記両入力側ディスク2a、2b同士の間に、これら両入力側ディスク2a、2bと同心に、且つ、これら両入力側ディスク2a、2bに対する相対回転を自在として支持されている。更に、上記各パワーローラ20、20は、上記出力側ディスク17cの軸方向両側面と上記両入力側ディスク2a、2bの軸方向片側面との間に、それぞれ複数個(本例の場合は2個)ずつ挟持されている。そして、これら両入力側ディスク2a、2bの回転に伴って回転しつつ、これら両入力側ディスク2a、2bから上記出力側ディスク17cに動力を伝達する。
【0029】
又、本例の場合、図3に示す様に、上記各パワーローラ20、20を支持するトラニオン22、22の長さ方向両端部に設けた、1対の折れ曲がり壁部39、39の先端部同士を、連結部材40、40により連結している。この様な連結部材40は、上記パワーローラ20を跨ぐ様に設けると共に、その両端面を上記トラニオン22の各折れ曲がり壁部39、39の先端部内側面に突き当てた状態で、ねじ41、41により、上記各トラニオン22、22に結合固定している。この様な連結部材40、40を設けた本例の場合には、これら各トラニオン22、22の曲げ剛性の向上を図れ、これら各トラニオン22、22を弾性変形しにくくできる。この結果、これら各トラニオン22、22の変形に基づく支持軸23aの傾斜を防止し、この支持軸23aの先半部に支持した上記各パワーローラ20、20の位置がずれるのを抑える事ができるので、変速動作を安定させる事ができる。尚、本例の場合、上記支持軸23aと、上記パワーローラ20を回転自在に支持するスラスト玉軸受25を構成する外輪42とを、一体に形成している。
【0030】
更に、本例の場合には、上記出力側ディスク17cの軸方向両端部を、(第一、第二の)1対のスラストアンギュラ玉軸受43a、43bにより、回転自在に支持している。この為に本例の場合には、ケーシング11の内側に、単一のアクチュエータボディー44及び単一の連結板50を介して、(第一、第二の)1対の支柱45a、45bを設けている。これら各支柱45a、45bはそれぞれ、前記入力回転軸1aを挟んで径方向反対側に、互いに同心に設けられた1対の支持ポスト部46a、46bを、円環状の支持環部47a、47bにより連結して成る。上記入力回転軸1aは、この支持環部47a、47bの内側を緩く挿通している。尚、本例のトロイダル型無段変速機を構成する各部材のうち、上記ケーシング11のみがアルミニウム合金製であり、他の部材は、シールリングや転がり軸受の保持器、或は後述する低速用、高速用各クラッチ64、65を構成するクラッチ板の摩擦材等、一部の部材を除き、軸受鋼、炭素鋼、ステンレス鋼等の鉄系合金製である。従って、上記ケーシング11(及び保持器を銅系合金で造る場合には保持器)を除き、他の金属製部材の熱膨張率同士の間には、問題となる程の差は存在しない(殆ど同じである)。又、図1〜3並びに後述する図8、9から明らかな様に、本例の場合は、上記両支柱45a、45bを構成する、上記支持環部47a、47bと上記両支持ポスト部46a、46bとを、互いに一体に形成している。
【0031】
又、上記各支柱45a、45bの下端部は、上記アクチュエータボディー44の上面に、それぞれ複数本ずつのボルト48、48により結合固定している。この為に上記アクチュエータボディー44の上面には、上記各支柱45a、45bの下端部を内嵌する為の凹部49、49を形成している。又、これら各支柱45a、45bの下端部には、下端面に開口する複数のねじ孔を形成している。これら各支柱45a、45bは、それぞれの下端部を上記各凹部49、49に内嵌した状態で、上記アクチュエータボディー44を下方から挿通して上記各ねじ孔に螺合し、更に緊締した上記各ボルト48、48により、上記アクチュエータボディー44の上面の所定位置に固定している。
【0032】
これに対して上記各支柱45a、45bの上端部は、前記単一の連結板50の下面に、それぞれボルト51、51により結合固定している。この為に上記連結板50の下面には、上記各支柱45a、45bの上端部を内嵌する為の凹部52、52を形成している。又、これら各支柱45a、45bの上端部には、上端面中央部に開口する1個ずつのねじ孔を形成している。これら各支柱45a、45bは、それぞれの上端部を上記各凹部52、52に内嵌した状態で、上記連結板50を上方から挿通して上記各ねじ孔に螺合し、更に緊締した上記各ボルト51、51により、上記連結板50の下面に固定している。
【0033】
上記1対の支柱45a、45bは、上述の様に上記アクチュエータボディー44の上面と上記連結板50の下面との間に、掛け渡す様に連結固定している。この状態で、上記各支柱45a、45bの両端部近傍に設けた、前記各支持ポスト部46a、46bのうち、下側の支持ポスト部46a、46aは、上記アクチュエータボディー44の上面の直上位置に存在する。そして、上記両支柱45a、45bの支持ポスト部46a、46aに、前記1対の支持板28a、28bのうちの下側の(第一の)支持板28aに形成した(第一の)支持孔53a、53aを、がたつきなく外嵌している。又、上側の支持ポスト部46b、46bは上記連結板50の下面の直下位置に存在する。そして、上記両支柱45a、45bの支持ポスト部46b、46bに、上記1対の支持板28a、28bのうちの上側の(第二の)支持板28bに形成した(第二の)支持孔53b、53bを、がたつきなく外嵌している。上記両支持板28a、28bにそれぞれ1対ずつ形成した、上記支持孔53a、53b同士の、前記入力回転軸1aの軸方向に関するピッチは、適正に規制されている。従って、上記各支持ポスト部46a、46bに上記各支持孔53a、53bをがたつきなく外嵌した状態で、上記1対の支柱45a、45bの上下両端部同士のピッチが適正に規制される。
【0034】
尚、図示の例では、上記下側の支持板28aに、前記各トラニオン22、22の傾斜角度を制限する為のストッパとして機能する、凸部54a、54b、54c(図4)を突設している。即ち、上記支持板28aの幅方向(図1〜2の表裏方向、図3の左右方向)両側縁部の、前後方向(図1〜2の左右方向、図3の表裏方向)両端部と中央部との3個所位置に、上記凸部54a、54b、54cを形成している。これら各凸部54a、54b、54cは、上記各トラニオン22、22がそれぞれの両端部に設けた枢軸27、27を中心として過度に傾斜する事を防止する為のストッパとして機能するものである。そして、上記各トラニオン22、22に支持したパワーローラ20、20の周面21が、前記入力側ディスク2a、2b、出力側ディスク17cの入力側、出力側両面3、18からこれら各ディスク2a、2b、17cの径方向外方に外れる事を防止する。
【0035】
又、上記1対の支柱45a、45bにより互いに結合された、上記アクチュエータボディー44と上記連結板50とのうち、アクチュエータボディー44は前記ケーシング11の下部に、三次元方向の位置決めを図った状態で固定している。この為に、このケーシング11を構成する1対の側壁部55、55の内面の下端開口寄り部分に段部56a、56bを、上記アクチュエータボディー44の幅方向(図1〜2の表裏方向、図3の左右方向)両端寄り部分にボルト挿通孔57、57(図4)を、それぞれ形成している。上記アクチュエータボディー44を上記ケーシング11内に固定する際には、このアクチュエータボディー44の上面幅方向両端寄り部分を上記各段部56a、56bに突き当てる。そして、上記各ボルト挿通孔57、57を下方から挿通した図示しないボルトを、上記各段部56a、56bに開口したねじ孔に螺合し更に緊締する。
【0036】
上記三次元方向に関する位置決めのうち、長さ方向(図1、2、5の左右方向、図3の表裏方向)及び幅方向(図1、2の表裏方向、図3の左右方向、図5の上下方向)に関する位置決めは、上記アクチュエータボディー44と上記各段部56a、56bとの間の2箇所以上に掛け渡す状態で設けたノックピン(図示せず)により図っている。又、上下方向(図1〜3の上下方向)に関する位置決めは、上記各段部56a、56bと前記各支柱45a、45bの支持環部47a、47bの中心との上下方向に関する距離を規制する事により実現する。
【0037】
一方、上記連結板50は上記ケーシング11内に、凹凸係合に基づいて長さ方向及び幅方向の位置を規制した状態で設置されている。この位置規制を行なう為に、上記連結板50の上面と、上記ケーシング11の天板部58の下面との、互いに対向する部分に、それぞれ位置決め凹部59a、59bを形成している。これら各位置決め凹部59a、59bは、それぞれ円形の平面形状を有する。上記アクチュエータボディー44を上記ケーシング11内に固定した状態で、上記連結板50の上面に形成した各位置決め凹部59a、59aと、上記天板部58の下面に形成した位置決め凹部59b、59bとの間に円筒状の位置決めスリーブ60、60を掛け渡している。この構造により、前記1対の支柱45a、45bの上下両端部を上記ケーシング11に対し、長さ方向、幅方向、上下方向(三次元方向)に関する位置決めをした状態で支持固定している。尚、上記各位置決めスリーブ60、60は、上記ケーシング11と上記連結板50との熱膨張差に基づく強い力が加わった場合には、弾性変形により上記熱膨張差を逃がす。
【0038】
上述の様にして上記ケーシング11内の所定位置に固定した1対の支柱45a、45bの中間部に設けられ、それぞれが前記入力側ディスク2a、2bと前記出力側ディスク17cとの入力側、出力側両面3、18同士の間に存在する各キャビティ(空間)の中央部に配置された、前記各支持環部47a、47bにより、上記出力側ディスク17cを、回転自在に支持している。この為に、これら各支持環部47a、47bとこの出力側ディスク17cの軸方向両端面、即ち、この出力側ディスク17cの軸方向両側面に設けた出力側面18、18よりも内径側部分との間に、前記各スラストアンギュラ玉軸受43a、43bを設けている。図示の例の場合、これら各スラストアンギュラ玉軸受43a、43bを構成する1対の軌道輪61a、61bの外側面(互いに反対側の側面)の内径寄り部分に短円筒状の突条部62、62(図2)を、全周に亙って形成している。
【0039】
そして、これら各突条部62、62を、上記各支持環部47a、47b及び上記出力側ディスク17cの端部にがたつきなく内嵌する事により、上記各スラストアンギュラ玉軸受43a、43bの径方向に関する位置決めを図っている。又、一方の軌道輪61a、61a(又は他方の軌道輪61b、61b)の外側面と上記各支持環部47a、47b(又は出力側ディスク17cの端面)との間にシム板63、63(図2)を挟持して、上記各スラストアンギュラ玉軸受43a、43bの軸方向に関する位置決めを図っている。又、この状態で、これら各スラストアンギュラ玉軸受43a、43bに、適切な予圧を付与している。従って上記出力側ディスク17cは、各キャビティ内に1対ずつ設けた上記各支柱45a、45b同士の間に、径方向及び軸方向に関する位置決めを図られた状態で、がたつきなく回転自在に支持されている。尚、上記各シム板63、63として適正な厚さ寸法を有するものを選択しつつ構成各部材を組み立てる方法に就いては、後述する。
【0040】
又、図示の無段変速装置の場合、前記入力回転軸1aの基端部(図1の左端部)を図示しないエンジンのクランクシャフトに、前記入力軸36を介して結合し、このクランクシャフトにより上記入力回転軸1aを回転駆動する様にしている。又、前記両入力側ディスク2a、2bの軸方向片側面(入力側面3、3)及び上記出力側ディスク17cの軸方向両側面(出力側面18、18)と前記各パワーローラ20、20の周面21、21との転がり接触部(トラクション部)に適正な面圧を付与する為の押圧装置6aとして、油圧式のものを使用している。又、ギヤポンプ等の図示しない油圧源により、この押圧装置6a及び変速の為に前記各トラニオン22、22を変位させる為の油圧式のアクチュエータ29、29、並びに後述する低速用クラッチ64及び高速用クラッチ65を断接させる為の油圧シリンダに、圧油を供給自在としている。
【0041】
又、上記出力側ディスク17cに中空回転軸66の基端部(図1〜2の左端部)をスプライン係合させている。そして、この中空回転軸66を、エンジンから遠い側(図1〜2の右側)の入力側ディスク2bの内側に挿通して、上記出力側ディスク17cの回転力を取り出し自在としている。更に、上記中空回転軸66の先端部(図1〜2の右端部)で上記入力側ディスク2bの外側面から突出した部分に、前記第一の遊星歯車式変速ユニット33を構成する為の、第一の太陽歯車67を固設している。
【0042】
一方、上記入力回転軸1aの先端部(図1〜2の右端部)で上記中空回転軸66から突出した部分と上記入力側ディスク2bとの間に、第一のキャリア68を掛け渡す様に設けて、この入力側ディスク2bと上記入力回転軸1aとが、互いに同期して回転する様にしている。そして、上記第一のキャリア68の軸方向両側面の円周方向等間隔位置(一般的には3〜4個所位置)に、それぞれがダブルピニオン型である前記第一、第二の遊星歯車式変速ユニット33、34を構成する為の遊星歯車69〜71を、回転自在に支持している。更に、上記第一のキャリア68の片半部(図1〜2の右半部)周囲に第一のリング歯車72を、回転自在に支持している。
【0043】
上記各遊星歯車69〜71のうち、前記トロイダル型無段変速ユニット32寄り(図1〜2の左寄り)で上記第一のキャリア68の径方向に関して内側に設けた遊星歯車69は、上記第一の太陽歯車67に噛合している。又、上記トロイダル型無段変速ユニット32から遠い側(図1〜2の右側)で上記第一のキャリア68の径方向に関して内側に設けた遊星歯車70は、前記伝達軸38の基端部(図1の左端部)に固設した第二の太陽歯車73に噛合している。又、上記第一のキャリア68の径方向に関して外側に設けた、残りの遊星歯車71は、上記内側に設けた遊星歯車69、70よりも軸方向寸法を大きくして、これら両遊星歯車69、70に噛合させている。更に、上記残りの遊星歯車71と上記第一のリング歯車72とを噛合させている。尚、径方向外寄りの遊星歯車を、第一、第二の遊星歯車ユニット33、34同士の間で互いに独立させる代りに、幅広のリング歯車をこれら両遊星歯車に噛合させる構造も、採用可能である。
【0044】
一方、前記第三の遊星歯車式変速ユニット35を構成する為の第二のキャリア74を、前記出力軸37の基端部(図1の左端部)に結合固定している。そして、この第二のキャリア74と上記第一のリング歯車72とを、前記低速用クラッチ64を介して結合している。又、上記伝達軸38の先端寄り(図1〜2の右端寄り)部分に第三の太陽歯車75を固設している。又、この第三の太陽歯車75の周囲に、第二のリング歯車76を配置し、この第二のリング歯車76と前記ケーシング11等の固定の部分との間に、前記高速用クラッチ65を設けている。更に、上記第二のリング歯車76と上記第三の太陽歯車75との間に配置した復数組の遊星歯車77、78を、上記第二のキャリア74に回転自在に支持している。これら各遊星歯車77、78は、互いに噛合すると共に、上記第二のキャリア74の径方向に関して内側に設けた遊星歯車77を上記第三の太陽歯車75に、同じく外側に設けた遊星歯車78を上記第二のリング歯車76に、それぞれ噛合している。
【0045】
上述の様に構成する本例の無段変速装置の場合、入力回転軸1aから1対の入力側ディスク2a、2b、各パワーローラ20、20を介して一体型の出力側ディスク17cに伝わった動力は、前記中空回転軸66を通じて取り出される。そして、上記低速用クラッチ64を接続し、上記高速用クラッチ65の接続を断った状態では、前記トロイダル型無段変速ユニット32の変速比を変える事により、上記入力回転軸1aの回転速度を一定にしたまま、前記出力軸37の回転速度を、停止状態を挟んで正転、逆転に変換自在となる。
【0046】
即ち、この状態では、上記入力回転軸1aと共に正方向に回転する第一のキャリア68と、上記中空回転軸66と共に逆方向に回転する前記第一の太陽歯車67との差動成分が、前記第一のリング歯車72から、上記低速用クラッチ64、上記第二のキャリア74を介して、上記出力軸37に伝達される。この状態では、上記トロイダル型無段変速ユニット32の変速比を所定値にする事で上記出力軸37を停止させられる他、このトロイダル型無段変速ユニット32の変速比を上記所定値から増速側に変化させる事により上記出力軸37を、車両を後退させる方向に回転させられる。これに対して、上記トロイダル型無段変速ユニット32の変速比を上記所定値から減速側に変化させる事により上記出力軸37を、車両を前進させる方向に回転させられる。
【0047】
更に、上記低速用クラッチ64の接続を断ち、上記高速用クラッチ65を接続した状態では、上記出力軸37を、車両を前進させる方向に回転させる。即ち、この状態では、上記入力回転軸1aと共に正方向に回転する第一のキャリア68と、上記中空回転軸66と共にこの第一のキャリア68と逆方向に回転する前記第一の太陽歯車67との差動成分に応じて回転する、前記第一の遊星歯車式変速ユニット33の遊星歯車69の回転が、別の遊星歯車71を介して、前記第二の遊星歯車式変速ユニット34の遊星歯車70に伝わり、前記第二の太陽歯車73を介して、前記伝達軸38を回転させる。そして、この伝達軸38の先端部に設けた第三の太陽歯車75と、この第三の太陽歯車75と共に前記第三の遊星歯車式変速ユニット35を構成する第二のリング歯車76及び遊星歯車77、78との噛合に基づき、前記第二のキャリア74及びこの第二のキャリア74に結合した上記出力軸37を、前進方向に回転させる。この状態では、上記トロイダル型無段変速ユニット32の変速比を増速側に変化させる程、上記出力軸37の回転速度を速くできる。
【0048】
図6は、上記トロイダル型無段変速ユニット32の変速比(減速比)と、無段変速装置全体としての速度比との関係の1例を示している。図6の縦軸は、上記トロイダル型無段変速ユニット32の変速比を、同じく横軸は、排気量が3L程度のエンジンで前記入力回転軸1aを一定回転(5600min-1 )させた場合に於ける理論上の車速(km/h)を、それぞれ表している。
【0049】
この様な図6から明らかな通り、前記低速用クラッチ64を接続し、前記高速用クラッチ65の接続を断った状態で、上記トロイダル型無段変速ユニット32の変速比を0.6程度とする事により、上記入力回転軸1aを回転させた状態のまま、上記出力軸37を停止させる事ができる。又、上記トロイダル型無段変速ユニット32の変速比を、0.6程度を境にして変化させる事により、車両を前進或は後退させる事ができる。更に、上記トロイダル型無段変速ユニット32の変速比が2.2〜2.3程度を境に、上記低速用クラッチ64の接続を断ち、上記高速用クラッチ65を接続した状態で、上記トロイダル型無段変速ユニット32の変速比を増速側に変化させる事により、車両の速度を速くできる。
【0050】
上述の様に構成し作用する、本例の無段変速装置の組立時には、上記トロイダル型無段変速ユニット32及び前記第一、第二の遊星歯車式変速ユニット33、34を、これら各ユニット32〜34を前記ケーシング11内に収納するのに先立って、図4に示す様に、予めこのケーシング11外で組み立てる。即ち、前記アクチュエータボディー44にそれぞれの下端を結合固定した1対の支柱45a、45b(図1〜3参照)により、出力側ディスク17c及び中空回転軸66(図1〜3参照)を回転自在に支持できる。又、上記両支柱45a、45bの上下両端部に設けた各支持ポスト部46a、46bに外嵌支持した上下1対の支持板28a、28bにより、複数のトラニオン22、22及びパワーローラ20、20を所定位置に支持できる。更に、上記中空回転軸66を挿通した前記入力回転軸1aに、前記押圧装置6a、前記1対の入力側ディスク2a、2b、上記第一、第二の遊星歯車式変速ユニット33、34等を組み付けて、図4に示す様なモジュール79とする。
【0051】
尚、この様なモジュール79を組み立てる際には、上記出力側ディスク17cを上記入力回転軸1aの中間部周囲にがたつきなく回転自在に支持する事が重要である。そして、この為には、前述した様に、前記各スラストアンギュラ玉軸受43a、43bに適切な予圧を付与すべく、前記各シム板63、63として、適切な厚さ寸法を有するものを使用する事が重要である。そこで、これら各シム板63、63として適切な厚さ寸法を有するものを選択しつつ、前記トロイダル型無段変速ユニット32を組み立てる手順に就いて、図7〜9を参照しつつ説明する。
【0052】
先ず、図7に示す様な治具80を用意する。この治具80は、作業台上に載置自在な基体81の中央部にボルト82を、その雄ねじ部83を上にして、下方から上方に挿通して成る。
第一工程では、図7に示す様に、この様な治具80のボルト82に上記中空回転軸66を、前記第一の太陽歯車67を下にして、緩く外嵌する。そして、同図に示す様に、この中空回転軸66の周囲に、上記第一の遊星歯車式変速ユニット33の側に設ける一方の外側ディスク2bを、ニードル軸受91を介して、上記第一の太陽歯車67を設けていない上側から外嵌する。
【0053】
次いで、第二工程として、図8に示す様に、上記中空回転軸66の中間部周囲に、前記出力側ディスク17cの軸方向一端部を支持する為の第一の支柱45aの支持環部47a及び第一のスラストアンギュラ玉軸受43aを外嵌する。この外嵌作業は、上記中空回転軸66のうちで上記第一の太陽歯車67を設けていない側である上側から、上記支持環部47aを上記一方の外側ディスク2bの側(下側)に位置させた状態で行なう。
そして、図8に示す様に、上記中空回転軸66の中間部外周面で上記第一のスラストアンギュラ玉軸受43aよりも上側に露出している部分に、第一の止め輪84を係止する。
【0054】
次いで、第三工程として、図9に示す様に、上記中空回転軸66に上記出力側ディスク17cを、スプライン係合させつつ外嵌する。そして、この中空回転軸66の端部でこの出力側ディスク17cよりも上側(上記第一の止め輪84と反対側)に突出した部分の外周面に、第二の止め輪85を係止する。この結果、上記出力側ディスク17cが上記中空回転軸66に対し、回転及び軸方向の変位を阻止した状態で外嵌固定される。
【0055】
次いで、第四工程として、図9に示す様に、上記出力側ディスク17cの上端部(軸方向他端部)に、この出力側ディスク17cの軸方向他端部を支持する為の第二の支柱45bの支持環部47b及び第二のスラストアンギュラ玉軸受43bを配置する。この配置作業は、この第二のスラストアンギュラ玉軸受43bを上記出力側ディスク17cの側(下側)に位置させた状態で行なう。
【0056】
次いで、第五工程として、前記ボルト82の上端部に設けた雄ねじ部83にナット86を螺合し、このナット86を所定のトルクで緊締して、座板87を介して上記第二の支柱45bの支持環部47bを、前記第一の支柱45aの支持環部47aに向け押圧する。そして、これら第一、第二の支柱45a、45b同士の間に、上記第一、第二のスラストアンギュラ玉軸受43a、43bに適切な予圧を付与する為に必要な、互いに近付く方向の軸方向荷重を付与する。この状態で、上記第一、第二の支柱45a、45bのうちで、前記各支持板28a、28bにそれぞれ形成した第一、第二の支持孔53a、53bと当接すべき部分である、前記各支持ポスト部46a、46bの互いに反対側周面同士の間の軸方向距離L1 を測定する。尚、この軸方向距離L1 は、上記第一、第二の支柱45a、45bにそれぞれ1対ずつ設けた上記各支持ポスト部46a、46b同士の間で(2個所の軸方向距離に就いて)行なう。この理由は、上記第一、第二の支柱45a、45bの傾斜による影響を排除する為である。
【0057】
又、上記第一、第二の支柱45a、45bの両端部に設けた上記各支持ポスト部46a、46bを内嵌する為に、上記1対の支持板28a、28bにそれぞれ形成した、上記第一、第二の支持孔53a、53bの内周面同士の軸方向距離L2 (図2)を測定しておく。この軸方向距離L2 は、これら第一、第二の支持孔53a、53bの内周面のうちで上記各支持ポスト部46a、46bの外周面と当接すべき部分である、互いに反対側の内周面同士の間で測定する。尚、上記軸方向距離L2 は、上記両支持板28a、28bに就いて行なう。この理由は、これら両支持板28a、28b同士の間での加工誤差の影響をなくす為である。
【0058】
次いで、第六工程として、上記第一、第二の支持孔53a、53bに関する軸方向距離L2 と、上記第五工程で測定した軸方向距離L1 との差(L2 −L1 )に基づいて、前記第二のスラストアンギュラ玉軸受43bの軸方向端面と上記第二の支柱45bの支持環部47bの軸方向片面との間に挟持すべきシム板63の厚さTを計算する。他の部分に設けるシム板の厚さを変えない場合、この厚さTは、上記両軸方向距離L2 、L1 の差「L2 −L1 」となる。そして、この厚さTを求めると共に、上記第二の支柱45bを取り除く。上記両軸方向距離L2 、L1 を求めた後ならば、上記厚さTを求める為の計算と上記第二の支柱45bの取り除き作業との前後は問わない。
【0059】
次いで、第七工程として、上記第六工程で計算した厚さTを有するシム板63(第四工程でシム板63を仮取付した場合には、このシム板63の厚さに上記Tを加えた厚さを有するシム板63)を、上記第二のスラストアンギュラ玉軸受43bの軸方向端面と上記第二の支柱45bの支持環部47bの軸方向片面との間に挟持する。そして、再び図9に示す様に、上記第二の支柱45bを組み付ける。
次いで、第八工程として、上記第二の支柱45b及び前記第一の支柱45aの両端部に設けた各支持ポスト部46a、46bを、前記1対の支持板28a、28bの第一、第二の支持孔53a、53bに内嵌する。これと共に、これら両支持板28a、28b同士の間に、前記複数のトラニオン22、22の両端部に設けた前記各枢軸27、27を、揺動及び軸方向の変位自在に組み付け支持する。又、上記第一、第二の支柱45a、45bの下端部を前記アクチュエータボディー44に、同じく上端部を前記連結板50に、それぞれ結合支持する。
【0060】
上記第一、第二の支柱45a、45bの下端部は、それぞれが鉄系合金であるアクチュエータボディー44と支持板28aとにより、同じく上端部はそれぞれが鉄系合金である連結板50と支持板28bとにより、それぞれ前記入力回転軸1aの軸方向に関する位置決めを図られている。従って、温度変化に拘らず、上記第一、第二の支柱45a、45bの中間部に設けた支持環部47a、47b同士の間隔が過度にずれ動く事はなく、前記各スラストアンギュラ玉軸受43a、43bに付与した予圧を、適正範囲内に納める事ができる。この点に就いては、後で詳しく述べる。
【0061】
上述の様にして、第一、第二の支柱45a、45bの上下両端部に、上記アクチュエータボディー44と上記連結板50とを結合支持したならば、次いで、無段変速装置を構成する他の部材、即ち、前記トロイダル型無段変速ユニット32及び前記第一、第二の遊星歯車式変速ユニット33、34の主要部を、前記ケーシング11内に組み込む以前に、このケーシング11外で組み立てる。そして、図4に示す様な、上記無段変速装置の主要部となる、前記モジュール79とする。このモジュール79の組立作業は、上記ケーシング11に邪魔される事なく、広い空間で行なう事ができて、組立作業が容易になる。又、上記モジュール79を組立後、上記ケーシング11内に収納する以前に、このモジュール79の作動状態を確認できる。そして、この作動状態が不良である場合には、上記ケーシング11外の広い空間で、分解・再組立を容易に行なえる。
【0062】
これに対して、上記モジュール79の作動状態が適正であった場合には、このモジュール79を、上記連結板50を上にして上記ケーシング11内に、図5に示した様な、このケーシング11の下端開口から挿入する。そして、前記連結板50の上面に形成した各位置決め凹部59a、59aと前記天板部58の下面に形成した位置決め凹部59b、59bとの間に円筒状の位置決めスリーブ60、60を掛け渡すと共に、前記アクチュエータボディー44の上面幅方向両端寄り部分を、前記各段部56a、56bに突き当てる。そして、上記アクチュエータボディー44のボルト挿通孔57、57を下方から挿通した図示しないボルトを、上記各段部56a、56bに開口したねじ孔に螺合し更に緊締して、上記モジュール79を上記ケーシング11内に固定する。この状態で、前記各支柱45a、45bは、それぞれの上下両端部が上記ケーシング11に対し、三次元方向の位置決めを厳密に図られた状態で固定される。そこで、この固定作業の後、このケーシング11の下端開口は、オイルパン92により塞ぐ。
【0063】
尚、前記第三の遊星歯車式変速ユニット35等、上記モジュール79に含まれない構成部分は、このモジュール79を上記ケーシング11内に組み付けた後、このケーシング11内に組み付ける。又、図示の例では、上記各支柱45a、45bの上部に、前記トラクション部に潤滑油(トラクションオイル)を供給する為の給油ノズル88、88を設けている。これら各給油ノズル88、88には、上記天板部58及び上記連結板50内に設けた給油通路から、上記各位置決め凹部59a、59bと前記各ボルト51、51の中心孔とを通じて、上記潤滑油を送り込む。又、前記各トラニオン22、22の内部に、前記各パワーローラ20、20に関する転がり軸受部に潤滑油を送り込む為の給油通路89、89を設け、上記天板部58内に設けた給油通路から上記各トラニオン22、22内の給油通路89、89に、潤滑油を送り込み自在としている。
【0064】
これに合わせて上記連結板50の下面に、上記各給油通路89、89に向け潤滑油を送り込む為の給油プラグ90、90を設け、上記ケーシング11内への上記モジュール79の組み込みに伴って、上記連結板50側の給油通路と上記各トラニオン22、22側の給油通路89、89とを連通させる様にしている。又、本例の場合、出力側ディスク17cの外周縁及び押圧装置6a外周縁に、径方向に関する凹凸を円周方向等間隔に設け、上記出力側ディスク17c及び入力側ディスク2a、2bの回転速度を検出自在としている。
【0065】
上述の様にしてケーシング11内に組み込まれるモジュール79を構成する、前記トロイダル型無段変速ユニット32の場合には、前記出力側ディスク17cを支持するスラストアンギュラ玉軸受43a、43bは、前述の様に適切な厚さ寸法を有するシム板63、63を選択する事で、適正な予圧を付与する事ができる。しかも、ころ軸受(ニードル軸受)の場合とは異なり、予圧を付与した状態でも耐久性が著しく低下する事はないので、上記スラストアンギュラ玉軸受43a、43bの耐久性を確保しつつ、上記出力側ディスク17cが軸方向にずれ動く事を防止できる。この為、変速比が不用意に変化する事を防止して、運転者に違和感を与える事のない無段変速装置を実現できる。
【0066】
更に、前記1対の支柱45a、45bの両端部を、前記単一のアクチュエータボディー44及び単一の連結板50を介して前記ケーシング11に支持固定する為、上記出力側ディスク17c等の鉄系合金製の内部部品と、アルミニウム合金製のケーシング11との熱膨張差により、上記各スラストアンギュラ玉軸受43a、43bの予圧が変化する事を防止できる。
【0067】
即ち、本発明の場合とは異なり、例えば上記各支柱45a、45bの上端部を、上記ケーシング11の内面に直接結合固定すると、温度変化に伴って上記各支柱45a、45bが、前記各支持ポスト部46b、46bと前記各支持孔53b、53bとの嵌合部を中心として揺動変位する。例えば、温度上昇時には、アルミニウム合金製のケーシング11の内面に結合固定した、上記各支柱45a、45bの上端面同士のピッチが、鉄系合金製の支持板28bの支持孔53b、53bに嵌合した、上記各支持ポスト部46b、46bのピッチよりも大きくなる。この結果、上記各支柱45a、45bが、それぞれの中間部に設けた支持環部47a、47b同士を互いに近づけ合う方向に湾曲し、上記各スラストアンギュラ玉軸受43a、43bの予圧が増大する。そして、これら各スラストアンギュラ玉軸受43a、43bの転がり疲れ寿命が低下する等、トロイダル型無段変速機の耐久性確保の面から悪影響を生じる。
【0068】
又、温度低下時には、アルミニウム合金製のケーシング11の内面に結合固定した、上記各支柱45a、45bの上端面同士のピッチが、鉄系合金製の支持板28bの支持孔53b、53bに嵌合した、上記各支持ポスト部46b、46bのピッチよりも小さくなる。この結果、上記各支柱45a、45bが、それぞれの中間部に設けた支持環部47a、47b同士を互いに遠ざかる方向に湾曲し、上記各スラストアンギュラ玉軸受43a、43bの予圧が低下する。そして、これら各スラストアンギュラ玉軸受43a、43bの剛性が低下し、前記出力側ディスク17cの位置決め精度が低下して、トロイダル型無段変速機の伝達効率確保の面から悪影響を生じる。
【0069】
これに対して本発明の場合には、上記各支柱45a、45bの上下両端部を結合固定した部分(アクチュエータボディー44及び連結板50)と、これら各支柱45a、45bの支持ポスト部46a、46bを嵌合する支持孔53a、53bを形成した支持板28a、28bとが、何れも鉄系合金製である。この為、温度変化に拘らず、上記各支柱45a、45bの上下両端面のピッチと、同じく支持ポスト部46a、46bのピッチとに差が生じる事はなく、上記各支柱45a、45bが湾曲方向に弾性変形する事もない。そして、これら各支柱45a、45bの中間部に設けた支持環部47a、47bと上記出力側ディスク17cの両端面との間に設けた、上記各スラストアンギュラ玉軸受43a、43bの予圧変化を抑えられる。この結果、上記トロイダル型無段変速機の耐久性及び伝達効率を十分に確保できる。
【0070】
又、図示の例の場合には、前記モジュール79の構成部材と他の構成部材との位置決め作業を、容易且つ確実に行なえる。即ち、上記モジュール79を前記ケーシング11内に、前記各位置決め凹部59a、59bと位置決めスリーブ60、60とを凹凸嵌合させると共に、前記ノックピンを前記段部56a、56bと前記アクチュエータボディー44との間に掛け渡しつつ収納する事により、上記モジュール79の三次元方向の位置決めを行なえる。この作業は、特に熟練を要する事なく容易に行なえる為、トロイダル型無段変速機の組立コストを高くする事がない。
【0071】
又、図示の例の場合には、前述の図10に示した従来構造の場合とは異なり、1対の出力側ディスク17a、17b同士の間に転がり軸受15、15、並びにこの転がり軸受15、15を支持する為の隔壁部12(図7参照)を設置する必要がなくなる。そして、一体型の出力側ディスク17cを使用する等、この出力側ディスク17cの設置部分の軸方向寸法を短縮する事ができる。この為、この様に軸方向寸法を短縮した分だけ、トロイダル型無段変速ユニット32の小型・軽量化を図れる。
【0072】
しかも、本例の場合には、上記出力側ディスク17cを、軸方向両側面を出力側面18、18とした一体構造としているので、トロイダル型無段変速ユニット32の運転時に上記各出力側面18、18に加わる力が、上記出力側ディスク17c内で互いに相殺される。この結果上記出力側ディスク17cは、前記各パワーローラ20、20から加わるモーメント荷重に拘らず、弾性変形を抑えられる。この為、上記出力側ディスク17cの軸方向に関する厚さ寸法の短縮化が可能になり、その面からもトロイダル型無段変速機の小型・軽量化が可能になる。
【0073】
尚、図示は省略するが、一体型の出力側ディスクの外周縁部に出力歯車を一体に設ける事もできる。この様な構造を採用する場合には、上記出力側ディスクから動力を取り出す為の伝達軸を、入力回転軸と平行に設ける。そして、この伝達軸の端部に固設した別の歯車を、上記出力歯車に噛合させる。
【0074】
【発明の効果】
本発明は、以上に述べた通り構成され作用するので、軸方向寸法を短縮して、必要とする性能を確保しつつ、小型・軽量化が可能になり、より小型の車体に組み付け可能になる等、トロイダル型無段変速機の実用化に寄与できる。しかも、特にコストを高くする事なく、且つ、十分な耐久性を確保しつつ、内側ディスクの位置決めを正確に行なう事ができて、高性能のトロイダル型無段変速機を低コストで実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の1例を示す断面図。
【図2】図1のA部拡大図。
【図3】図1のB−B断面図。
【図4】トロイダル型無段変速ユニットの主要部を組み立てたモジュールの斜視図。
【図5】ケーシングを下方から見た斜視図。
【図6】トロイダル型無段変速ユニットの変速比(減速比)と車速(無段変速装置全体としての変速比)との関係を示す線図。
【図7】シム板の適正厚さを求める為の作業の初期工程を示す断面図。
【図8】同じく続く工程を示す断面図。
【図9】同じく終期工程を示す断面図。
【図10】従来から広く知られているトロイダル型無段変速機の基本構成の1例を示す断面図。
【符号の説明】
1、1a 入力回転軸
2a、2b 入力側ディスク
3 入力側面
4 ボールスプライン
5 転がり軸受
6、6a 押圧装置
7 カム板
8 駆動軸
9 ローディングナット
10 皿板ばね
11 ケーシング
12 隔壁部
13 通孔
14 出力筒
15 転がり軸受
16 出力歯車
17a、17b、17c 出力側ディスク
18 出力側面
19 ニードル軸受
20 パワーローラ
21 周面
22 トラニオン
23、23a 支持軸
24 ラジアルニードル軸受
25 スラスト玉軸受
26 スラストニードル軸受
27 枢軸
28a、28b 支持板
29 アクチュエータ
30 予圧ばね
31 外側面
32 トロイダル型無段変速ユニット
33 第一の遊星歯車式変速ユニット
34 第二の遊星歯車式変速ユニット
35 第三の遊星歯車式変速ユニット
36 入力軸
37 出力軸
38 伝達軸
39 折れ曲がり壁部
40 連結部材
41 ねじ
42 外輪
43a、43b スラストアンギュラ玉軸受
44 アクチュエータボディー
45a、45b 支柱
46a、46b 支柱ポスト部
47a、47b 支持環部
48 ボルト
49 凹部
50 連結板
51 ボルト
52 凹部
53a、53b 支持孔
54a、54b、54c 凸部
55 側壁部
56a、56b 段部
57 ボルト挿通孔
58 天板部
59a、59b 位置決め凹部
60 位置決めスリーブ
61a、61b 軌道輪
62 突条部
63 シム板
64 低速用クラッチ
65 高速用クラッチ
66 中空回転軸
67 第一の太陽歯車
68 第一のキャリア
69 遊星歯車
70 遊星歯車
71 遊星歯車
72 第一のリング歯車
73 第二の太陽歯車
74 第二のキャリア
75 第三の太陽歯車
76 第二のリング歯車
77 遊星歯車
78 遊星歯車
79 モジュール
80 治具
81 基体
82 ボルト
83 雄ねじ部
84 第一の止め輪
85 第二の止め輪
86 ナット
87 座板
88 給油ノズル
89 給油通路
90 給油プラグ
91 ニードル軸受
92 オイルパン

Claims (5)

  1. ケーシングと、このケーシング内に回転自在に支持された回転軸と、それぞれが断面円弧形である互いの軸方向片側面同士を対向させた状態でこの回転軸の軸方向2個所位置に、この回転軸と同期した回転を自在として支持された1対の外側ディスクと、この回転軸の中間部周囲に、断面円弧形である軸方向両側面を上記各外側ディスクの軸方向片側面に対向させた状態で、上記回転軸に対する相対回転を自在に支持された内側ディスクと、軸方向に関してこれら内側ディスクの軸方向両側面と各外側ディスクの軸方向片側面との間位置にそれぞれ複数個ずつ、上記回転軸に対し捩れの位置にある枢軸を中心とする揺動変位を自在に設けられた支持部材と、これら各支持部材の両端部に設けられた上記枢軸を支持する為の第一、第二の一対の支持板と、上記各支持部材に回転自在に支持され、球状凸面としたそれぞれの周面を、上記内側ディスクの軸方向両側面と各外側ディスクの軸方向片側面とに当接させたパワーローラとを備えたトロイダル型無段変速機に於いて、上記内側ディスクの軸方向両側面と上記各外側ディスクの軸方向片側面との間に、それぞれの中間部に支持環部を有する1対の支柱を、この支持環部に上記回転軸を挿通した状態で配置し、これら両支柱の支持環部に上記内側ディスクの軸方向両端部を、玉軸受により回転自在に支持し、上記両支柱の一端部同士のピッチを、上記第一の支持板に上記回転軸の軸方向に離隔した状態で形成した第一の支持孔に上記両支柱の中間部一端寄り部分を内嵌する事で規制すると共に、上記両支柱の他端部同士のピッチを、上記第二の支持板に上記回転軸の軸方向に離隔した状態で形成した第二の支持孔に上記両支柱の中間部他端寄り部分を内嵌する事で規制しており、上記各支持部材を上記各枢軸の軸方向に変位させる為のアクチュエータを収納した単一のアクチュエータボディーに上記1対の支柱の一端部を結合固定すると共に、これら各支柱の他端部を、単一の連結板に結合固定し、この連結板及び上記アクチュエータボディーを、上記ケーシング内に支持固定しており、上記両支柱の上記支持環部と、上記第一の支持孔に内嵌される、これら両支柱の中間部一端寄り部分と、上記第二の支持孔に内嵌される、これら両支柱の中間部他端寄り部分と、上記アクチュエータボディーに結合固定される、これら両支柱の一端部と、上記連結板に結合固定される、これら両支柱の他端部とを、それぞれの支柱毎に互いに一体に形成した事を特徴とするトロイダル型無段変速機。
  2. 玉軸受が、予圧を付与されたスラストアンギュラ玉軸受である、請求項1に記載したトロイダル型無段変速機。
  3. ケーシングがアルミニウム合金製であり、内側ディスクと、第一、第二の支持板と、アクチュエータボディーと、連結板とが、それぞれ鉄系合金である、請求項1〜2の何れかに記載したトロイダル型無段変速機。
  4. トロイダル型無段変速ユニットと遊星歯車式変速ユニットとを組み合わせると共に、このうちのトロイダル型無段変速ユニットの回転軸に繋がる入力軸と、上記遊星歯車式変速ユニットの構成部材に繋がる出力軸とを備え、
    このうちのトロイダル型無段変速ユニットは、請求項1〜3の何れかに記載されたトロイダル型無段変速機であり、
    上記遊星歯車式変速ユニットは、上記トロイダル型無段変速ユニットの回転軸と内側ディスクとから動力を伝達されるものであって、動力の伝達経路を2系統に切り換える切換手段を有するものである
    無段変速装置。
  5. 遊星歯車式変速ユニットは、トロイダル型無段変速ユニットを構成する1対の外側ディスクにこれら両外側ディスクと同心に結合固定されてこれら両外側ディスクと共に回転するキャリアと、このキャリアの軸方向両側面のうちで一方の外側ディスクに対向する軸方向片面に回転自在に支持された複数の第一の遊星歯車と、上記トロイダル型無段変速ユニットを構成する回転軸の周囲に配置された中空回転軸により内側ディスクに結合された状態で上記各ディスクと同心に且つ回転自在に設けられ、上記各第一の遊星歯車と噛合した第一の太陽歯車と、上記キャリアの他面に回転自在に支持された複数の第二の遊星歯車と、上記各ディスクと同心に且つ回転自在に設けられてこれら各第二の遊星歯車と噛合した第二の太陽歯車と、上記各ディスクと同心に且つ回転自在に設けられて上記各第一の遊星歯車と噛合したリング歯車とを備えたものであり、
    切換手段は、上記リング歯車を通じて上記内側ディスクから取り出した動力を出力軸に伝達するモードと、上記第二の太陽歯車を通じてこの内側ディスクから取り出した動力を出力軸に伝達するモードとを選択するものである、
    請求項4に記載した無段変速装置。
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