JP3740812B2 - トロイダル型無段変速機用出力側ディスクユニット - Google Patents

トロイダル型無段変速機用出力側ディスクユニット Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明に係るトロイダル型無段変速機用出力側ディスクユニットは、例えば自動車用の変速機として、或は各種産業機械用の変速機として、それぞれ利用するトロイダル型無段変速機の組立作業を容易にすると共に、精度向上に基づく性能向上を図るものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車用変速機として、図6〜7に略示する様なトロイダル型無段変速機を使用する事が研究されている。このトロイダル型無段変速機は、例えば実開昭62−71465号公報に開示されている様に、入力軸1と同心に入力側ディスク2を支持し、この入力軸1と同心に配置した出力軸3の端部に出力側ディスク4を固定している。トロイダル型無段変速機を納めたケーシングの内側には、上記入力軸1並びに出力軸3に対して捻れの位置にある枢軸5、5を中心として揺動するトラニオン6、6を設けている。
【0003】
即ち、これら各トラニオン6、6は、それぞれの両端部外面に上記枢軸5、5を、互いに同心に設けている。又、これら各トラニオン6、6の中間部には変位軸7、7の基端部を支持し、上記枢軸5、5を中心として上記各トラニオン6、6を揺動させる事により、上記各変位軸7、7の傾斜角度の調節を自在としている。上記各トラニオン6、6に支持した変位軸7、7の周囲には、それぞれパワーローラ8、8を回転自在に支持している。そして、これら各パワーローラ8、8を、上記入力側、出力側両ディスク2、4の、互いに対向する内側面2a、4a同士の間に挟持している。これら各内側面2a、4aは、それぞれ断面が、上記枢軸5を中心とする円弧を回転させて得られる凹面をなしている。そして、球状凸面に形成した上記各パワーローラ8、8の周面8a、8aを、上記内側面2a、4aに当接させている。
【0004】
上記入力軸1と入力側ディスク2との間には、ローディングカム式の押圧装置9を設け、この押圧装置9によって、上記入力側ディスク2を出力側ディスク4に向け、弾性的に押圧自在としている。この押圧装置9は、入力軸1と共に回転するカム板10と、保持器11により転動自在に保持した複数個(例えば4個)のローラ12、12とから構成している。上記カム板10の片側面(図6〜7の左側面)には、円周方向に亙る凹凸面である駆動側カム面13を形成し、上記入力側ディスク2の外側面(図6〜7の右側面)にも、同様の形状を有する被駆動側カム面14を形成している。そして、上記複数個のローラ12、12を、上記入力軸1の中心に関し放射方向の軸を中心とする回転自在に支持している。
【0005】
上述の様に構成するトロイダル型無段変速機の使用時、入力軸1の回転に伴ってカム板10が回転すると、駆動側カム面13が複数個のローラ12、12を、入力側ディスク2の外側面に形成した被駆動側カム面14に押圧する。この結果、上記入力側ディスク2が、上記複数のパワーローラ8、8に押圧されると同時に、上記駆動側、被駆動側両カム面13、14と複数個のローラ12、12との押し付け合いに基づいて、上記入力側ディスク2が回転する。そして、この入力側ディスク2の回転が、前記複数のパワーローラ8、8を介して出力側ディスク4に伝達され、この出力側ディスク4に固定の出力軸3が回転する。
【0006】
入力軸1と出力軸3との回転速度比(変速比)を変える場合で、先ず入力軸1と出力軸3との間で減速を行なう場合には、前記各枢軸5、5を中心として前記各トラニオン6、6を所定方向に揺動させる。そして、上記各パワーローラ8、8の周面8a、8aが図6に示す様に、入力側ディスク2の内側面2aの中心寄り部分と出力側ディスク4の内側面4aの外周寄り部分とにそれぞれ当接する様に、前記各変位軸7、7を傾斜させる。反対に、増速を行なう場合には、上記枢軸5、5を中心として上記各トラニオン6、6を反対方向に揺動させる。そして、上記各パワーローラ8、8の周面8a、8aが図7に示す様に、入力側ディスク2の内側面2aの外周寄り部分と出力側ディスク4の内側面4aの中心寄り部分とに、それぞれ当接する様に、上記各変位軸7、7を傾斜させる。各変位軸7、7の傾斜角度を図6と図7との中間にすれば、入力軸1と出力軸3との間で、中間の変速比を得られる。
【0007】
又、図8〜9は、実願昭63−69293号(実開平1−173552号)のマイクロフィルムに記載された、より具体化されたトロイダル型無段変速機の1例を示している。入力側ディスク2と出力側ディスク4とは、請求項の回転軸に相当する円管状の入力軸15の周囲に、それぞれが請求項のラジアル転がり軸受に相当するニードル軸受16、16を介して、回転自在に支持している。即ち、上記入力側ディスク2及び出力側ディスク4の中心部には断面形状が円形である貫通孔17、17を、それぞれ上記各ディスク2、4の内側面と外側面とを軸方向(図8の左右方向)に貫通する状態で形成している。上記各ニードル軸受16、16は、上記各貫通孔17、17の内周面と上記入力軸15の中間部外周面との間に設けている。又、上記各貫通孔17、17の内側面寄り端部内周面に形成した係止溝18、18には止め輪19、19を係止して、上記各ニードル軸受16、16が上記各貫通孔17、17から、上記各ディスク2、4の内側面側に抜け出る事を防止している。又、カム板10は上記入力軸15の端部(図8の左端部)外周面にスプライン係合させ、鍔部20により上記入力側ディスク2から離れる方向への移動を阻止している。そして、このカム板10とローラ12、12とにより、上記入力軸15の回転に基づいて上記入力側ディスク2を、上記出力側ディスク4に向け押圧しつつ回転させる、ローディングカム式の押圧装置9を構成している。上記出力側ディスク4には出力歯車21を、キー22、22により結合し、これら出力側ディスク4と出力歯車21とが同期して回転する様にしている。
【0008】
1対のトラニオン6、6の両端部は1対の支持板23、23に、揺動並びに軸方向(図8の表裏方向、図9の左右方向)に亙る変位自在に支持している。そして、上記各トラニオン6、6の中間部に形成した円孔24、24部分に、変位軸7、7を支持している。これら各変位軸7、7は、互いに平行で且つ偏心した支持軸部25、25と枢支軸部26、26とを、それぞれ有する。このうちの各支持軸部25、25を上記各円孔24、24の内側に、ラジアルニードル軸受27、27を介して、回転自在に支持している。又、上記各枢支軸部26、26の周囲にパワーローラ8、8を、別のラジアルニードル軸受28、28を介して、回転自在に支持している。
【0009】
尚、上記1対の変位軸7、7は、上記入力軸15に対して180度反対側位置に設けている。又、これら各変位軸7、7の各枢支軸部26、26が各支持軸部25、25に対し偏心している方向は、上記入力側、出力側両ディスク2、4の回転方向に関し同方向(図9で左右逆方向)としている。又、偏心方向は、上記入力軸15の配設方向に対しほぼ直交する方向としている。従って、上記各パワーローラ8、8は、上記入力軸15の配設方向に亙る若干の変位自在に支持される。この結果、回転力の伝達状態で構成各部材に加わる大きな荷重に基づく、これら構成各部材の弾性変形に起因して、上記各パワーローラ8、8が上記入力軸15の軸方向(図8の左右方向、図9の表裏方向)に変位する傾向となった場合でも、上記構成各部品に無理な力を加える事なく、この変位を吸収できる。
【0010】
又、上記各パワーローラ8、8の外側面と上記各トラニオン6、6の中間部内側面との間には、パワーローラ8、8の外側面の側から順に、スラスト玉軸受29、29とスラストニードル軸受30、30とを設けている。このうちのスラスト玉軸受29、29は、上記各パワーローラ8、8に加わるスラスト方向の荷重を支承しつつ、これら各パワーローラ8、8の回転を許容するものである。又、上記各スラストニードル軸受30、30は、上記各パワーローラ8、8から上記各スラスト玉軸受29、29を構成する外輪31、31に加わるスラスト荷重を支承しつつ、前記各枢支軸部26、26及び上記外輪31、31が、前記支持軸部25、25を中心に揺動する事を許容する。
【0011】
更に、上記各トラニオン6、6の一端部(図9の左端部)にはそれぞれ駆動ロッド32、32を結合し、これら各駆動ロッド32、32の中間部外周面に駆動ピストン33、33を固設している。そして、これら各駆動ピストン33、33を、それぞれ駆動シリンダ34、34内に油密に嵌装している。
【0012】
上述の様に構成するトロイダル型無段変速機の場合には、入力軸15の回転は、押圧装置9を介して入力側ディスク2に伝わる。そして、この入力側ディスク2の回転が、1対のパワーローラ8、8を介して出力側ディスク4に伝わり、更にこの出力側ディスク4の回転が、出力歯車21より取り出される。入力軸15と出力歯車21との間の回転速度比を変える場合には、上記1対の駆動ピストン33、33を互いに逆方向に変位させる。これら各駆動ピストン33、33の変位に伴って上記1対のトラニオン6、6が、それぞれ逆方向に変位し、例えば図9の下側のパワーローラ8が同図の右側に、同図の上側のパワーローラ8が同図の左側に、それぞれ変位する。この結果、これら各パワーローラ8、8の周面8a、8aと上記入力側ディスク2及び出力側ディスク4の内側面2a、4aとの当接部に作用する、接線方向の力の向きが変化する。そして、この力の向きの変化に伴って上記各トラニオン6、6が、支持板23、23に枢支された枢軸5、5を中心として、互いに逆方向に揺動する。この結果、前述の図6〜7に示した様に、上記各パワーローラ8、8の周面8a、8aと上記各内側面2a、4aとの当接位置が変化し、上記入力軸15と出力歯車21との間の回転速度比が変化する。
【0013】
尚、この様に上記入力軸15と出力歯車21との間で回転力の伝達を行なう際には、構成各部材の弾性変形に基づいて上記各パワーローラ8、8が、上記入力軸15の軸方向に変位し、これら各パワーローラ8、8を枢支している前記各変位軸7、7が、前記各支持軸部25、25を中心として僅かに回動する。この回動の結果、前記各スラスト玉軸受29、29の外輪31、31の外側面と上記各トラニオン6、6の内側面とが相対変位する。これら外側面と内側面との間には、前記各スラストニードル軸受30、30が存在する為、この相対変位に要する力は小さい。従って、上述の様に各変位軸7、7の傾斜角度を変化させる為の力が小さくて済む。
【0014】
更に、伝達可能なトルクを増大すべく、図10〜11に示す様に、入力軸15aの周囲に入力側ディスク2A、2Bと出力側ディスク4、4とを2個ずつ設け、これら2個ずつの入力側ディスク2A、2Bと出力側ディスク4、4とを動力の伝達方向に関して互いに並列に配置する構造も、従来から知られている。これら図10〜11に示した構造は何れも、上記入力軸15aの中間部周囲に出力歯車21aを、この入力軸15aに対する回転を自在として支持し、この出力歯車21aの中心部に設けた円筒部の両端部に上記各出力側ディスク4、4を、スプライン係合させている。そして、これら各出力側ディスク4、4の内周面と上記入力軸15aの外周面との間にニードル軸受16、16を設け、これら各出力側ディスク4、4を上記入力軸15aの周囲に、この入力軸15aに対する回転、並びにこの入力軸15aの軸方向に亙る変位を自在に支持している。又、上記各入力側ディスク2A、2Bは、上記入力軸15aの両端部に、この入力軸15aと共に回転自在に支持している。この入力軸15aは、駆動軸35により、ローディングカム式の押圧装置9を介して回転駆動する。尚、この駆動軸35の先端部(図10〜11の左端部)外周面と上記入力軸15aの基端部(図10〜11の右端部)内周面との間には、滑り軸受、ニードル軸受等のラジアル軸受36を設けている。従って、上記駆動軸35と入力軸15aとは、互いに同心に配置された状態のまま、回転方向に亙る若干の変位自在に組み合わされている。
【0015】
但し、一方(図10〜11の左方)の入力側ディスク2Aは、背面(図10〜11の左面)をローディングナット37に、直接(図11に示した構造の場合)又は大きな弾力を有する皿板ばね51を介して(図10に示した構造の場合)突き当てて、上記入力軸15aに対する軸方向(図10〜11の左右方向)の変位を実質的に阻止している。これに対して、カム板10に対向する入力側ディスク2Bは、ボールスプライン38により上記入力軸15aに、軸方向に亙る変位自在に支持している。そして、この入力側ディスク2Bの背面(図10〜11の右面)とカム板10の前面(図10〜11の左面)との間に、皿板ばね39とスラストニードル軸受40とを、互いに直列に設けている。このうちの皿板ばね39は、上記各ディスク2A、2B、4の内側面2a、4aとパワーローラ8、8の周面8a、8aとの当接部に予圧を付与する役目を果たす。又、スラストニードル軸受40は、押圧装置9の作動時に、上記入力側ディスク2Bとカム板10との相対回転を許容する役目を果たす。
【0016】
又、図10に示した構造例の場合、前記出力歯車21aはハウジングの内側に設けた仕切壁41に、それぞれがアンギュラ型である1対の玉軸受42、42により、軸方向に亙る変位を阻止した状態で、回転自在に支持している。これに対して図11に示した構造例の場合、出力歯車21aの軸方向に亙る変位は自在である。尚、上述した図10〜11に示した様に、2個ずつの入力側ディスク2A、2Bと出力側ディスク4、4とを動力の伝達方向に関して互いに並列に配置する、所謂ダブルキャビティ型のトロイダル型無段変速機が、カム板10に対向する一方又は双方の入力側ディスク2A、2Bをボールスプライン38、38aにより上記入力軸15aに、軸方向に亙る変位自在に支持している理由は、これら両ディスク2A、2Bの回転を完全に同期させつつ、上記押圧装置9の作動に伴う構成各部材の弾性変形に基づいて上記両ディスク2A、2Bが、上記入力軸15aに対し軸方向に変位する事を許容する為である。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
上述の様に構成され作用するトロイダル型無段変速機を組み立てる場合に従来は、このトロイダル型無段変速機の本体を収納するハウジング43(図9)の内側に構成各部材を、順番に組み付ける様にしていた。従って、構成各部材が正しく機能するか否かは、これら構成各部材を上記ハウジング43内に総て組み付けた後でしか確認できなかった。
一方、トロイダル型無段変速機の効率並びに耐久性を確保する為には、構成各部材が正しく機能しなければならない。この為、一部の構成部材のみが正しく機能しない場合でも、上記ハウジング43内で組み立てたトロイダル型無段変速機の分解及び再組立を行なわなければならない。
従って、上述の様にしてトロイダル型無段変速機の組立作業を行なうと、トロイダル型無段変速機の製造作業が面倒で、コストの低廉化を図れない。
本発明のトロイダル型無段変速機用出力側ディスクユニットは、この様な事情に鑑みて、発明したものである。
【0018】
【課題を解決する為の手段】
本発明のトロイダル型無段変速機用出力側ディスクユニットは、内側面を断面円弧状の凹面とし、中心部に軸方向に貫通する断面形状が円形である貫通孔を有し、回転軸の中間部周囲にこの回転軸に対する回転を自在に支持する出力側ディスクと、上記貫通孔の内側に配置したラジアル転がり軸受と、この貫通孔の内周面に形成した係止溝に係止し、このラジアル転がり軸受がこの貫通孔から抜け出る事を防止する止め輪とを備える。又、この貫通孔の内周面は、軸方向中間部の内側面寄り部分に設けられ、上記ラジアル転がり軸受の外輪軌道として機能する円筒面部と、内側面側の軸方向端部に設けられてこの円筒面部よりも大きな内径を有する内側面側大径部とを有するものである。そして、上記ラジアル転がり軸受及び上記止め輪を上記出力側ディスクに対し、トロイダル型無段変速機を構成する他の部材と共にハウジング内に組み付ける以前に、このトロイダル型無段変速機の組立完了後の位置関係に予め組み立てておく。
【0019】
【作用】
上述の様に構成する本発明のトロイダル型無段変速機用出力側ディスクユニットを含んで構成するトロイダル型無段変速機は、前述した従来のトロイダル型無段変速機と同様の作用に基づき、入力側ディスクと出力側ディスクとの間で回転力の伝達を行ない、更にトラニオンの傾斜角度を変える事により、これら両ディスク同士の間の回転速度比を変える。
【0020】
特に、本発明のトロイダル型無段変速機用出力側ディスクユニットの場合には、互いに別体の部材である出力側ディスクとラジアル転がり軸受と止め輪とを、トロイダル型無段変速機への組み付け以前に、このトロイダル型無段変速機の組立完了後の位置関係に予め組み立てている。この為、上記出力側ディスクユニットの構成各部材が正しく機能するか否かを、これら構成各部材をハウジング内に組み付けてトロイダル型無段変速機を構成する以前に確認できる。従って、このハウジング内に上記出力側ディスクユニットを含む多数のユニット及び部材を組み付けて構成したトロイダル型無段変速機全体を分解、再組立する等の面倒な作業を要する事なく、トロイダル型無段変速機の効率並びに耐久性を確保すべく、上記出力側ディスクユニットの構成各部材同士の位置関係を高精度に維持できる。更に、内側面側大径部の内径を円筒面部の内径よりも大きくしている為、係止溝への止め輪の係止作業を容易に行なえる。
【0021】
【発明の実施の形態】
図1〜3は、本発明の実施の形態の第1例を示している。尚、本発明の特徴は、トロイダル型無段変速機を構成する出力側ディスク4の内側に、ニードル軸受16及び止め輪19を組み付けた構造をユニット化した点にある。その他の部分の構造及び作用に就いては、前述した従来構造と同様である為、重複する図示及び説明を省略若しくは簡略にし、以下、本発明の特徴部分を中心に説明する。
【0022】
上記出力側ディスク4は、軸受鋼等の硬質金属に鍛造加工を施す事により一体形成したもので、内側面4aを断面円弧状の凹面とし、中心部に断面形状が円形である貫通孔17を、軸方向(図1〜3の左右方向)に貫通する状態で設けている。この様な出力側ディスク4は、図3に示す様に、回転軸である入力軸15aの中間部周囲に、この入力軸15aに対する回転を自在に支持する。この為に、上記貫通孔17の内周面には、ラジアル転がり軸受であるニードル軸受16を配置している。上記貫通孔17の内周面は、内側面側大径部44と、円筒面部45と、雌スプライン部46と、外側面側大径部47とを、内側面側から外側面側に向け(図1の左から右に)、軸方向に関して互いに直列に配置して成る。
【0023】
このうちの円筒面部45は、軸方向中間部の内側面寄り(図1の左寄り)部分に設けられたもので、上記ニードル軸受16の外輪軌道として機能する。又、上記雌スプライン部46は、上記入力軸15aの中間部周囲に、この入力軸15aに対する回転自在に配置したスリーブ48(図3)の端部に形成した雄スプライン部に係合して、上記出力側ディスク4を上記スリーブ48に、同期した回転を自在に結合する。更に、上記外側面側大径部47は、上記雌スプライン部46と雄スプライン部とを係合させた状態で、上記スリーブ48の中間部でこの雄スプライン部よりも中央寄り部分に密に外嵌し、このスリーブ48の中心軸と上記出力側ディスク4の中心軸とを一致させる。尚、上記出力側ディスク4の回転を取り出す為の出力歯車21aは、上記スリーブ48の中間部外周面に、このスリーブ48と一体に形成している。又、このスリーブ48はハウジング43内に設けた仕切壁41の内側に、それぞれがアンギュラ型である1対の玉軸受42、42により、回転自在に支持している。
【0024】
又、上記円筒面部45の内側には、保持器49により複数本のニードル50、50を転動自在に保持して成る、上記ニードル軸受16を配置している。トロイダル型無段変速機への組み付け状態で、このニードル軸受16を構成する上記各ニードル50、50の転動面は、内輪軌道として機能する、上記入力軸15aの中間部外周面に当接する。又、上記内側面側大径部44と円筒面部45との間には係止溝18を形成し、この係止溝18に止め輪19を係止して、上記ニードル軸受16が上記円筒面部45の内側から、上記内側面側大径部44側(図1〜2の左側)に抜け出る事を防止している。尚、上記ニードル軸受16が上記円筒面部45の内側から上記外側面側大径部47側に抜け出る事は、上記保持器49と上記雌スプライン部46の端縁との係合により防止する。
【0025】
上記円筒面部45の内径R45及び上記外側面側大径部47の内径R47は、上記雌スプライン部46の溝底の外接円の直径D46よりも大きく(R45>D46、R47>D46)している。従って、上記雌スプライン部46を構成する為の凹溝を前記貫通孔17の内周面に形成する作業を、ブローチ加工により能率良く行なう事ができ、上記雌スプライン部46を有する前記出力側ディスク4の製作費低減を図れる。尚、上記雌スプライン部46のスプラインモジュールは、前記スリーブ48の端部に形成した雄スプライン部の肉厚を確保して、これら両スプライン部同士の係合部でのトルク容量を確保する面から、1〜2程度にするのが好ましい。尚、スプライン係合部の許容トルクは、モジュール、歯数、スプライン長さにより決まる。更に、上記内側面側大径部44の内径R44は、上記円筒面部45の内径R45よりも更に大きい(R 44 >R 45 )。この様に内側面側大径部44の内径R44を大きくしている為、上記係止溝18に止め輪19を係止する作業を容易に行なえる。
【0026】
上述の様な形状の貫通孔17を中心部に形成した前記出力側ディスク4と、前記保持器49とニードル50、50とから成るニードル軸受16と、上記止め輪19とは、図3に示す様にトロイダル型無段変速機に組み付ける以前に、図1に示す様に、このトロイダル型無段変速機の組立完了後の位置関係に予め組み立てておく。そして、これら各部材4、49、50、19を図1に示す様に組み立てた状態で、これら構成各部材4、49、50、19が正しく機能するか否かを、これら構成各部材4、49、50、19を、図3に示す様にハウジング43内に組み付ける以前に確認しておく。そして、正しく機能する事を確認した出力側ディスクユニットを、他の構成部材と共に、図3に示す様にハウジング43内に組み付けてトロイダル型無段変速機を構成する。従って、このハウジング43内に上記出力側ディスクユニットを含む多数のユニット及び部材を組み付けて構成したトロイダル型無段変速機全体を分解、再組立する等の面倒な作業を要する事なく、トロイダル型無段変速機の効率並びに耐久性を確保すべく、上記出力側ディスクユニットの構成各部材同士の位置関係を高精度に維持できる。尚、上記構成各部材4、49、50、19を組み立てて図1に示す様な出力側ディスクユニットを構成した状態で、これら構成各部材4、49、50、19の表面には防錆油を塗布しておく。この防錆油としては、上記ハウジング43内に注入するトラクション油と混ざった場合にもこのトラクション油を劣化させる事のない、指定防錆油を使用する事が好ましい。
【0027】
尚、図3に示す様に、ハウジング43内に上記出力側ディスクユニットを含む構成各部材を組み付けてトロイダル型無段変速機を構成した状態で、各出力側ディスク4、4の内側面4a、4aと各入力側ディスク2A、2Bの内側面2a、2aとの間には、それぞれ2個又は3個ずつのパワーローラ8、8(図6〜11参照)を挟持する。これら各内側面4a、2a同士の間に挟持するパワーローラ8、8の数が2個ずつである場合には、上記各入力側ディスク2A、2Bから上記各出力側ディスク4、4への動力伝達時に、これら各出力側ディスク4、4の中心部に形成した前記貫通孔17、17の内周面形状が、楕円形に弾性変形する。この様な変形に拘らず、前記ニードル軸受16を構成する各ニードル50、50の転動面の端部に過大な荷重(エッヂロード)が加わる事を防止する為、上記各ニードル50、50として、転動面に大きなクラウニングを施したものを使用する事が好ましい。
【0028】
次に、図4は、本発明の実施の形態の第2例を示している。本例の構造は、各入力側ディスク2A、2Bから各出力側ディスク4、4への動力伝達時にこれら各出力側ディスク4、4の弾性変形を抑え、これら各出力側ディスク4、4の耐久性を確保できる構造を実現すべく考えたものである。即ち、上記動力伝達時に上記各出力側ディスク4、4には、それぞれ2〜3個ずつのパワーローラ8、8(図6〜11参照)から大きなスラスト荷重が加わる。上記各出力側ディスク4、4は、このスラスト荷重に基づいて繰り返し弾性変形するが、この弾性変形量が大きくなると、上記各出力側ディスク4、4の耐久性を確保する事が難しくなる。特に、トロイダル型無段変速機が減速状態で運転される際には、上記各パワーローラ8、8の周面8a、8aが上記各出力側ディスク4、4の内側面4a、4aの外周寄り部分に当接する。これら各出力側ディスク4、4の軸方向に関する肉厚は、上記外周寄り部分が最も小さく、上記減速状態での運転時の弾性変形量が大きくなりがちである。
【0029】
そこで、本例の場合には、前述した図11の構造と同様に、トロイダル型無段変速機の構造を、1対の出力側ディスク4、4同士の間に仕切壁41(図3、10)を設けない構造とすると共に、スリーブ48の中間部外周面に設けた出力歯車21bの両側面外周寄り部分を、上記各出力側ディスク4、4の外側面外周寄り部分に当接させて、上記減速状態での運転時に上記各出力側ディスク4、4の外周寄り部分の弾性変形を抑える様にしている。即ち、上記各出力側ディスク4、4の外側面の内周寄り部分と外周寄り部分とを、上記出力歯車21bの側面の内周寄り部分と外周寄り部分とを、それぞれ入力軸15aに対し直角方向に存在する単一平面上に位置させて、これら各部分同士を互いに当接させている。従って、上記各出力側ディスク4、4の外側面は上記出力歯車21bにより、それぞれの内径寄り部分を支持(バックアップ)されるだけでなく、これら各出力側ディスク4、4の軸方向に関する厚さが最も薄くなっている(断面円弧状の内側面4aの底部に対応する)部分が、上記出力歯車21bにより支持されている。従って、特に上記各出力側ディスク4、4の肉厚を大きくしなくても、トロイダル型無段変速機の運転時に於ける、上記各出力側ディスク4、4の弾性変形を抑えて、これら各出力側ディスク4、4の耐久性を確保する事が容易になる。従って、トロイダル型無段変速機の軽量化と耐久性確保との両立を図れる。
【0030】
次に、図5は、本発明の実施の形態の第3例を示している。本例の場合も、上述した第2例の場合と同様に、入力側ディスク2から出力側ディスク4への動力伝達時に出力側ディスク4の弾性変形を抑え、この出力側ディスク4の耐久性を確保できる構造を実現するものである。上述した第2例の場合、この様な構造を、前述の図11に示した様な、入力側ディスク2A、2Bと出力側ディスク4、4とを2個ずつ設けた、所謂ダブルキャビティ型のトロイダル型無段変速機に適用しているのに対して、本例の場合には、前述の図8に示した様な、入力側ディスク2と出力側ディスク4とを1個ずつ設けた、所謂シングルキャビティ型のトロイダル型無段変速機に適用したものである。この為に本例の場合には、出力歯車21cの外周寄り部分を幅広に形成し、この外周寄り部分の片側面(図5の左側面)と、上記出力側ディスク4の外側面で断面円弧状の内側面4aの底部に対応する部分とを当接させている。
【0031】
【発明の効果】
本発明のトロイダル型無段変速機用出力側ディスクユニットは、以上に述べた通り構成され作用する為、トロイダル型無段変速機の組立作業の能率化により、トロイダル型無段変速機の価格低減を図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の第1例を、出力側ディスクとニードル軸受と止め輪とを組み合わせた状態で示す断面図。
【図2】図1のA部拡大図。
【図3】出力側ディスクユニットをトロイダル型無段変速機に組み込んだ状態で示す断面図。
【図4】本発明の実施の形態の第2例を示す、図3と同様の断面図。
【図5】同第3例を示す、図3と同様の断面図。
【図6】従来から知られているトロイダル型無段変速機の基本的構成を、最大減速時の状態で示す側面図。
【図7】同じく最大増速時の状態で示す側面図。
【図8】従来の具体的構造の第1例を示す断面図。
【図9】図8のB−B断面図。
【図10】従来の具体的構造の第2例を示す部分断面図。
【図11】同第3例を示す部分断面図。
【符号の説明】
1 入力軸
2a 内側面
2、2A、2B 入力側ディスク
3 出力軸
4 出力側ディスク
4a 内側面
5 枢軸
6 トラニオン
7 変位軸
8 パワーローラ
8a 周面
9 押圧装置
10 カム板
11 保持器
12 ローラ
13 駆動側カム面
14 被駆動側カム面
15、15a 入力軸
16 ニードル軸受
17 貫通孔
18 係止溝
19 止め輪
20 鍔部
21、21a、21b、21c 出力歯車
22 キー
23 支持板
24 円孔
25 支持軸部
26 枢支軸部
27 ラジアルニードル軸受
28 ラジアルニードル軸受
29 スラスト玉軸受
30 スラストニードル軸受
31 外輪
32 駆動ロッド
33 駆動ピストン
34 駆動シリンダ
35 駆動軸
36 ラジアル軸受
37 ローディングナット
38、38a ボールスプライン
39 皿板ばね
40 スラストニードル軸受
41 仕切り壁
42 玉軸受
43 ハウジング
44 内側面側大径部
45 円筒面部
46 雌スプライン部
47 外側面側大径部
48 スリーブ
49 保持器
50 ニードル
51 皿板ばね

Claims (3)

  1. 内側面を断面円弧状の凹面とし、中心部に軸方向に貫通する断面形状が円形である貫通孔を有し、回転軸の中間部周囲にこの回転軸に対する回転を自在に支持する出力側ディスクと、上記貫通孔の内側に配置したラジアル転がり軸受と、この貫通孔の内周面に形成した係止溝に係止し、このラジアル転がり軸受がこの貫通孔から抜け出る事を防止する止め輪とを備え、この貫通孔の内周面は、軸方向中間部の内側面寄り部分に設けられ、上記ラジアル転がり軸受の外輪軌道として機能する円筒面部と、内側面側の軸方向端部に設けられてこの円筒面部よりも大きな内径を有する内側面側大径部とを有するものであり、上記ラジアル転がり軸受及び上記止め輪を上記出力側ディスクに対し、トロイダル型無段変速機を構成する他の部材と共にハウジング内に組み付ける以前に、このトロイダル型無段変速機の組立完了後の位置関係に予め組み立てたトロイダル型無段変速機用出力側ディスクユニット。
  2. 貫通孔の内周面の外側面側の軸方向端部に外側面側大径部が、軸方向中間部の外側面寄り部分に雌スプライン部が、それぞれ設けられており、円筒面部及び外側面側大径部の内径が、この雌スプライン部の溝底の外接円の直径よりも大きい、請求項1に記載したトロイダル型無段変速機用出力側ディスクユニット。
  3. 回転軸の中間部でトロイダル型無段変速機への組み付け状態に於いて出力側ディスクの外側面に対向する部分には、この出力側ディスクと同期して回転する出力歯車を回転自在に支持し、この出力歯車の一部で上記出力側ディスクの肉厚が最も薄くなっている部分に対向する部分は、この出力側ディスクの外側面に当接させる、請求項1〜2の何れかに記載したトロイダル型無段変速機用出力側ディスクユニット。
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