JP3513047B2 - スプレッド - Google Patents

スプレッド

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JP3513047B2
JP3513047B2 JP09306399A JP9306399A JP3513047B2 JP 3513047 B2 JP3513047 B2 JP 3513047B2 JP 09306399 A JP09306399 A JP 09306399A JP 9306399 A JP9306399 A JP 9306399A JP 3513047 B2 JP3513047 B2 JP 3513047B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、予め調製した解乳
化特性の異なる乳化組成物の2種以上を混合してなり、
特性や物性の設計を容易とするスプレッドに関する。本
発明によれば、異なる風味やフレーバー物質が口中にお
いて時間差で広がるスプレッドや安定性の良好な低脂肪
スプレッド等を提供することができる。
【0002】
【従来の技術】近年、消費者の嗜好は多様化しており、
スプレッドに関しても従来にないようなスプレッドが求
められている。しかしながら、スプレッドは油相と水相
を混合撹拌して乳化した後、冷却可塑化して調製される
ものであり、保存中に分離、凝集又は合一といった組織
の劣化が生じ易いため、乳化剤、増粘剤、保存料又は防
腐剤を添加して保存中の安定性を維持しているのが現状
であり、新たに各種の添加剤を用いて新規な特性や物性
を有するスプレッドを提供する場合、風味などの点から
添加剤の使用が制限される場合もあり、従来技術に基づ
いてスプレッドの物性や特性を自由に設計することは困
難な場合が多い。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、先にス
プレッドの解乳化特性を電気伝導度の値の変化を用いて
示すことが可能であり、口中で解乳化するスプレッドの
条件としては、口中温度付近、すなわち35〜37℃の
温度範囲において電気伝導度が300秒以内に0.2m
S/cm以上上昇するものが口中で解乳化が良好である
という知見を得た。
【0004】さらに、本発明者らは、この知見をもとに
研究を進めたところ、口中温度付近における電気伝導度
の変化特性、例えば上昇特性や平衡電気伝導度の値が異
なる乳化組成物を2種以上混合することにより、口中で
異なる風味やフレーバー物質が時間差で広がるスプレッ
ドや安定性の良好な低脂肪スプレッドを所望に応じて調
製可能であることを見出した。
【0005】すなわち、本発明は口中温度付近での解乳
化特性の指標としての電気伝導度の変化特性が異なる乳
化組成物を2種以上混合することにより、特性や物性の
設計が容易であり、例えば口中で異なる風味やフレーバ
ー物質が時間差で広がるスプレッドや安定性の良好な低
脂肪スプレッドなどを提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決し得る本
発明のスプレッドは、解乳化特性の異なる2種類以上の
乳化組成物を調製し、これらを混合してなることを特徴
とする。
【0007】本発明において解乳化とは、乳化が破壊さ
れることをいい、解乳化特性の違いには、例えば、解乳
化するものとしないものの違い、あるいは解乳化の速度
の違いなどが含まれる。また、この解乳化特性は、以下
に示す電気伝導度を指標として評価することができる。
この電気伝導度とは、電解質水溶液中の電流の流れやす
さを示す指標のことであり、常法により測定可能であ
る。本発明では、スプレッドを脱イオン水中に置いた状
態で、脱イオン水の電気伝導度を測定し、スプレッドが
解乳化した場合、すなわち乳化が壊れて水相に含まれて
いる食塩などの電解質が脱イオン水中に放出される際の
電気伝導度の変化が測定され、その変化によってスプレ
ッドの解乳化特性が判定される。
【0008】図1に、本発明における試料スプレッドの
解乳化特性を判定するための電気伝導度の変化を測定す
る装置の一例を示す。この装置での電気伝導度の測定
は、試料が直接電極に触れないよう2つのビーカーをネ
ットを挟んで連結させ、そして口中温度とほぼ同等の3
6℃の脱イオン水に試料を添加した状態で行う。電気伝
導度は、脱イオン水に添加された試料スプレッドが解乳
化した時に、水槽の脱イオン水中にスプレッドの水相に
含有される塩分などの電解質が放出され、それにより上
昇する。スプレッドの場合、口溶けが良く、食べたとき
に口中に良好な風味が広がるためには、通常体温付近
(36℃付近、例えば35〜37℃)で解乳化するもの
が好ましいため、本測定もこの温度付近で行う。
【0009】従来の脂肪率が50重量%以上のスプレッ
ド、例えば脂肪率71重量%、食塩含有率1.0重量%
であって、乳化剤としてモノグリセリン脂肪酸エステル
(以下、MGと略す)を0.4重量%用いて調製したス
プレッドの36℃における電気伝導度を測定すると、図
2の○に示すように200秒付近から電気伝導度が上昇
しはじめ1,500秒付近にて0.6mS/cmの値を
示す。一方、脂肪率71重量%、食塩含有率が1.0重
量%であって、乳化剤として乳化力の強いポリグリセリ
ン縮合リシノレイン酸エステル(以下、PGPRと略
す)を0.01重量%用いて調製したスプレッドの36
℃における電気伝導度を測定すると、図2の□に示すよ
うに、200秒付近でわずかに電気伝導度が上昇するだ
けで、その後はほとんど上昇しない。
【0010】また、上記スプレッドを実際に食した場
合、脂肪率71重量%、食塩含有率1.0重量%であっ
て、乳化剤としてMGを用いたスプレッドは、口中で解
乳化し良好な風味が広がったが、脂肪率71重量%、食
塩含有率が1.0重量%であって、乳化剤として乳化力
の強いPGPRを用いたスプレッドは、口中で乳化が壊
れず、風味が広がらず味に乏しかった。
【0011】このように、スプレッドの電気伝導度の増
加速度が異なるということは、口中での解乳化の仕方が
異なる、すなわち解乳化特性を示す解乳化速度が異なる
ということである。更に、このような電気伝導度の増加
速度が異なる乳化組成物を2種以上混合した場合、お互
いの乳化状態が破壊されることなく混合でき、しかも異
なる風味が時間差で広がるスプレッドが得られることが
わかった。例えば、36℃における電気伝導度が300
秒で0.5mS/cmに上昇する乳化組成物と、36℃
における電気伝導度が300秒で0.2mS/cm上昇
する乳化組成物とに異なる風味を付与して組み合わせる
ことにより、口中で異なる風味が時間差で広がるスプレ
ッドを得ることができる。これは、各乳化組成物が混合
時に独立して各解乳化特性を維持して分散混合し、解乳
化の速度が異なる乳化組成物からなる部分がスプレッド
中に混在するようになっためである。
【0012】更に、例えば、36℃付近における電気伝
導度が300秒で0.5mS/cm以上上昇する乳化組
成物と、36℃付近で解乳化しない低脂肪の乳化組成物
とを組合せることにより安定性があり、風味の良好な低
脂肪スプレッドを提供することができる。これは各乳化
組成物が混合時に独立して乳化特性を維持して分散混合
し、解乳化しない乳化組成物がスプレッド中で乳化が壊
れずに安定であり、解乳化する乳化組成物は口中で解乳
化し、良好な風味が広がるようになるためである。
【0013】以上のように、本発明において、混合する
異なる解乳化特性を有する乳化組成物間で、風味やフレ
ーバー物質などを異ならせることで、口中での解乳化時
にこれらの特性を時間差で生じさせることが可能とな
る。なお、風味やフレーバー物質など乳化組成物の水相
または油相、あるいはその両方に保持させることがで
き、解乳化とともに風味やフレーバー物質を拡散させる
には水相に風味を形成し得る材料やフレーバー物質を含
有させるようにするのが好ましい。さらに、解乳化する
乳化組成物と、解乳化しない乳化組成物とを組み合わせ
て混合することで、スプレッドの組成設計が容易とな
り、例えば安定性のある低脂肪スプレッドを容易に提供
することが可能となる。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明では、解乳化特性の異なる
乳化組成物を調製し、これらの乳化組成物を2種以上混
合することにより、特性や物性の設計が容易なスプレッ
ドを提供することができる。この解乳化特性が異なる乳
化組成物の組合せとしては、例えば、所定の温度で解乳
化する乳化組成物Aに、解乳化しない乳化組成物B、及
び乳化組成物Aとは異なる解乳化速度で解乳化する乳化
組成物Cの少なくとも一方の組合せなどを挙げることが
できる。
【0015】ここで、解乳化速度は、先に述べたとお
り、所定温度における電気伝導度の上昇速度で表わすこ
とができ、この電気伝導度の上昇速度や電気伝導度の上
昇のパターンが異なる乳化組成物を、解乳化特性の異な
る乳化組成物とすることができる。
【0016】このような解乳化特性の異なる乳化組成物
の2種以上の混合によるスプレッドの調製において、例
えば、解乳化特性の異なる乳化組成物間で風味及びフレ
ーバー物質の少なくとも一方を異ならせることで、異な
る風味やフレーバー物質が口中で時間差を持って広がる
スプレッドを製造することができる。
【0017】以下に、所定温度における電気伝導度の上
昇速度の異なる2種の乳化組成物を調製し、これらの配
合割合を変化させ、その時の電気伝導度を測定し、さら
に実際に食べた時の風味の広がり方について評価した例
を示す。
【0018】乳化組成物1の調製:油脂に乳化剤を添加
し、加温して油相を調製した。次いで、水に食塩、フレ
ーバー物質を添加して水相を調製した。油相に水相を撹
拌しながら加えて、乳化組成物を調製し、これを殺菌し
た後、冷却し、さらに急冷可塑化して、練圧することに
より、脂肪率71重量%、食塩含有率1.0重量%であ
って、乳化剤としてMGを0.4重量%用いた乳化組成
物を得た。この乳化組成物の36℃における300秒後
の電気伝導度を測定したところ、0.1mS/cmであ
り、食したところ口中に風味やフレーバー物質が広がり
良好であった。
【0019】乳化組成物2の調製:油脂に乳化剤を添加
し、加温して油相を調製した。次いで、水に食塩、フレ
ーバー物質を添加して水相を調製した。油相に水相を撹
拌しながら加えて、乳化組成物を調製し、これを殺菌し
た後、冷却し、さらに急冷可塑化して、練圧することに
より、脂肪率71重量%、食塩含有率1.0重量%であ
って、乳化剤としてPGPRを0.01重量%用いた乳
化組成物を得た。この乳化組成物の36℃における30
0秒後の電気伝導度を測定したところ、0.01mS/
cmであり、食したところ口中に風味やフレーバー物質
が広がらず、好ましくなかった。
【0020】上記乳化組成物1及び2を乳化組成物1:
乳化組成物2が、100:0、75:25、50:5
0、25:75、0:100となるように混合し、その
後冷却可塑化してスプレッドを調製した。各スプレッド
の36℃における電気伝導度の変化を測定したところ、
図2に示すような値を示した。なお、図2においては、
乳化組成物1と乳化組成物2の混合比率が、100:0
を記号○、75:25を記号×、50:50を記号△、
25:75を記号+、0:100を記号□、で示した。
図2より、1,500秒後における各スプレッドの電気
伝導度がほぼ平衡状態に近いことがわかる。そこで、こ
の1,500秒後における電気伝導度の値(平衡電気伝
導度)と、乳化組成物1と乳化組成物2の配合割合との
関係を図3に示す。図3から明らかなように、口中温度
付近で解乳化する乳化組成物1の配合割合が増加するに
つれて、平衡電気伝導度も増加することがわかる。すな
わち、各乳化組成物は、混合時に独立に分散混合し、口
中温度付近におけるこれらの解乳化特性は相互に作用し
ないことがわかる。
【0021】なお、上記試験において、電気伝導度の測
定は、電極(HORIBA 3582−10D)と導電
率メーター(HORIBA ES−12)を用いて行な
うことができ、図1に示すように電極に触れないよう2
つのビーカーをネットを挟んで連結させ、口中温度とほ
ぼ同等の36℃の水相400gに試料10gを添加し、
水相の電気伝導度を測定することにより、得られる値で
ある。水相は、恒温槽(東京理化器械PCC−700
0)を用いて温度を36℃と一定にして、スターラーに
より約120rpmで撹拌する。この時の電気伝導度の
経時的変化は、電圧測定装置(HP3852A)で読み
込み算出された値をmS/cmで示す。電気伝導度は、
スプレッドの水相中に含有される塩分の放出により測定
するため、水相中には塩分が含有されることが必要とな
る。通常のスプレッドには、約1重量%の塩分が含有さ
れ、本発明においても同量の塩分が含有されていればよ
い。電気伝導度測定時に、スプレッドが36℃付近で解
乳化した場合、スプレッド水相中に含有される塩分が放
出され、電気伝導度が上昇する。こうしてスプレッドが
解乳化することにより、水相中に含有される塩分ととも
に香料などの成分が放出され、良好な風味が口の中に広
がる。
【0022】本発明によれば、上述のように、解乳化特
性の異なる乳化組成物を2種以上混合することにより、
口中で異なる風味が時間差で広がるスプレッドなどを提
供することができる。
【0023】本発明において口中温度付近で解乳化する
乳化組成物としては、脂肪率40重量%以上のスプレッ
ドを調製する場合であれば、乳化剤として、MGを0.
01〜1.0重量%添加すればよく、脂肪率40重量%
未満であれば、乳化剤としてPGPRを0〜5.0重量
%及びMGを0〜1.0重量%を用いればよい。
【0024】この場合、油相に比べ、水相の含有率が多
いため、乳化が不安定となりやすい。そこで、このよう
な場合には、乳化力の強い乳化剤を用いるが、このよう
な乳化剤は口中温度付近において解乳化しずらい場合が
ある。このような乳化剤を用いた場合には、水相にリン
脂質を0.001〜1.0重量%含有するように添加
し、乳化剤としてスプレッドに対して、PGPRを0.
005〜5.0重量%及びMGを0.1〜5.0重量%
添加することにより、口中温度付近における電気伝導度
が300秒以内に0.2mS/cm以上上昇するものが
得られる。
【0025】また、水相にリン脂質0.001〜1.0
重量%を含有し、PGPRを0.1〜1.0重量%、M
Gを0.1〜1.0重量%、有機酸モノグリセリドを
0.03〜0.5重量%用いることにより、口中温度付
近における電気伝導度が300秒以内に0.4mS/c
m以上上昇する乳化組成物が得られる。さらに、乳化剤
として、PGPRを0.1〜1.0重量%及びMGを
0.1〜1.0重量%及び有機酸モノグリセリドを0.
03〜0.5重量%含有するように添加することで、口
中温度付近における電気伝導度が300秒以内に0.4
mS/cm以上上昇する乳化組成物が得られる。
【0026】また、本発明において、油相に用いること
のできる油脂としては、スプレッドの製造で通常用いら
れているものであれば、いずれの油脂を用いてもよく、
例えば、植物油脂、動物油脂などの油脂やこれらの硬化
油、エステル交換油、分別油などの油脂性原料又は乳脂
などを挙げることができ、これらを2種以上混合したも
のも用いることができる。また、水相としては、スプレ
ッドの製造で通常用いられているものであればよく、例
えば、水又は生乳、牛乳、脱脂乳、脱脂粉乳などの水溶
液などを用いることができる。なお、水相には、塩分、
ゼラチンなどの安定剤、各種フレーバー物質などの水溶
性成分を添加することができる。塩分は、最終製品の塩
分含有率が0.8〜1.5重量%、好ましくは1.0〜
1.3重量%程度となるように添加することが好まし
い。ゼラチンなどの安定剤は、最終製品の脂肪率に合わ
せて適宜添加することが好ましい。各種フレーバー物質
としては、バターフレーバー、バターオイル、クリーム
フレーバー、バターミルクフレーバー、ミルクフレーバ
ー、コーヒーフレーバー、ピーナッツフレーバー、ガー
リックフレーバー、ストロベリーフレーバーなどの果実
フレーバーなどを挙げることができ、最終製品中に0.
0005〜5.0重量%、好ましくは0.03〜0.1
重量%程度となるように添加することが好ましい。この
ように各種フレーバー物質を添加し、口中温度付近にお
ける電気伝導度の変化特性、あるいは平衡電気伝導度の
値が異なる乳化組成物を混合することにより、食した時
に異なる風味が時間差をもって発現される。
【0027】さらに、口中温度付近で解乳化する乳化組
成物と、口中温度付近で解乳化しない低脂肪の乳化組成
物とを混合することにより、解乳化による風味などの口
中での良好な広がりが得られ、かつ安定性のある低脂肪
スプレッドを提供することもできる。この場合に用いる
口中温度付近で解乳化する乳化組成物としては、先に挙
げた口中温度付近で解乳化する乳化組成物を用いること
ができ、また、口中温度付近で解乳化しない乳化組成物
としては、乳化力の強い乳化剤、例えばPGPRを0.
01重量%以上使用した乳化組成物などを用いることが
できる。
【0028】
【実施例】以下、実施例を示して、本願発明を詳細に説
明する。 実施例1 (1)乳化組成物Aの調製 表1に示す配合に従い、脂肪率70重量%の乳化組成物
Aを調製した。まず、大豆油及び大豆硬化油の混合物に
乳化剤としてMGを添加し、60℃に加温しながら撹拌
し、乳化剤を溶解させて油相を調製した。次いで、水に
食塩及びバターフレーバーを添加、混合溶解し水相を調
製した。水相に油相を撹拌しながら添加して乳化させ、
乳化組成物Aを調製した。 (2)乳化組成物Bの調製 表1に示す配合に従い、脂肪率70重量%の乳化組成物
Bを調製した。まず、大豆油及び大豆硬化油の混合物に
乳化剤としてPGPRを添加し、60℃に加温しながら
撹拌し、乳化剤を溶解させて油相を調製した。次いで、
水に食塩を添加、混合溶解し水相を調製した。水相に油
相を撹拌しながら添加して乳化させ、乳化組成物Bを調
製した。
【0029】乳化組成物A及び乳化組成物Bを60℃
で、配合割合を50:50(重量比)として混合し、8
0℃で殺菌した後、冷却可塑機としてコンビネーター
(Schroeder社製)を用い、10℃に冷却、練圧するこ
とにより脂肪率70重量%のスプレッド(本発明品1)
を得た。
【0030】
【表1】 乳化組成物A、乳化組成物B及び本発明品1の電気伝導
度の測定を行った。電気伝導度の測定は、図1に示すよ
うに、電極(HORIBA 3582−10D)に触れ
ないように恒温槽(東京理化器械PCC−7000)に
2つのビーカーを入れ、これをネットを挟んで連結さ
せ、ビーカーの底部にはスターラーを配置した装置によ
り以下の操作に従って行った。まず、ビーカー内の脱イ
オン水(400g)を36℃に調温し一定とした。一方
のビーカーに試料(10g)を添加し、他方のビーカー
に電極を挿入し、スターラーにより120rpmで撹拌
させ、電気伝導度の経時的変化を電圧測定装置(HP3
852A)で読み込み算出された値をmS/cmで示し
た。測定の結果、乳化組成物Aの300秒付近における
電気伝導度は0.61mS/cmであり、乳化組成物B
は、乳化剤としてPGPRを用いており、36℃では解
乳化しなかった。また、本発明品1の電気伝導度は30
0秒後には、0.1mS/cm(図4)となり、その後
も上昇した。 比較例1 表2に示す配合に従い、脂肪率70重量%のスプレッド
を調製した。
【0031】まず、大豆油及び大豆硬化油の混合物に乳
化剤としてMGを添加し、60℃に加温しながら撹拌
し、乳化剤を溶解させて油相を調製した。次いで、水に
食塩を添加、混合溶解し、水相を調製した。水相に油相
を撹拌しながら添加して乳化させ、乳化組成物を調製し
た。この乳化組成物を80℃で殺菌した後、冷却可塑機
としてコンビネーター(Schroeder社製)を用い、10
℃に冷却、練圧することによりスプレッド(比較品1)
を得た。実施例1と同様の方法で比較品1の電気伝導度
の測定を行った。比較品1の電気伝導度は300秒後
に、0.1mS/cm(図5)となり、その後も上昇し
た。
【0032】
【表2】 試験例1 実施例1及び比較例1で得られた本発明品1及び比較品
1のスプレッドを5℃で7日間保存した。7日間保存後
の本発明品1及び比較品1のスプレッドについて、以下
に示す方法で離水、組織及び官能評価を行った。
【0033】離水は20名のパネラーに目視にて評価て
もらい、5点:離水がない、4点:やや離水がある、3
点:判断し難い、2点:やや離水が目立つ、1点:離水
が目立つ、とした。組織は、20名のパネラーに試料2
5g(5℃)を食パンに塗ってもらい、5点:組織が滑
らか、4点:やや組織が滑らか、3点:判断し難い、2
点:やや組織がざらつく、1点:組織がざらつく、とし
た。官能評価は、20名のパネラーに、試料を5g(5
℃)ずつ食してもらい風味について、5点:好ましい、
4点:やや好ましい、3点:どちらとも言えない、2
点;やや好ましくない、1点:好ましくない、で評価し
てもらった。いずれもこれら平均点で示す(少数点第2
位を四捨五入した)。結果を表3に示す。
【0034】
【表3】 官能評価に関しては、本発明品1及び比較品1ともに食
した時に口中で解乳化し良好な風味が広がった。一方、
離水及び組織に関しては、本発明品1の方が離水が少な
く、組織も良好であった。これは、本発明品1が乳化剤
としてMGを用いて調製した乳化組成物AとPGPRを
用いて調製した乳化組成物Bを混合することにより得ら
れ、乳化力の強いPGPRにより調製された乳化組成物
Bは保存中に安定であるためである。 実施例2 (1)乳化組成物Cの調製 表4に示す配合に従い、脂肪率60重量%の乳化組成物
Cを調製した。まず、大豆油及び大豆硬化油の混合物に
乳化剤としてMG及びPGPRを添加し、60℃に加温
しながら撹拌し、乳化剤を溶解させて油相を調製した。
次いで、水にゼラムパウダー、食塩及びバターフレーバ
ーを添加、混合溶解し、水相を調製した。水相に油相を
撹拌しながら添加して乳化させ、乳化組成物Cを調製し
た。 (2)乳化組成物Dの調製 表4に示す配合に従い、脂肪率20重量%の乳化組成物
Dを調製した。まず、大豆油及び大豆硬化油の混合物に
乳化剤としてMG及びPGPRを添加し、60℃に加温
しながら撹拌し、乳化剤を溶解させて油相を調製した。
次いで、水にゼラムパウダー、ゼラチン、食塩及びスト
ロベリーフレーバーを添加、混合溶解し、水相を調製し
た。水相に油相を撹拌しながら添加して乳化させ、乳化
組成物Dを調製した。
【0035】乳化組成物C及び乳化組成物Dを60℃
で、配合割合を50:50として混合し、80℃で殺菌
した後、冷却可塑機としてコンビネーター(Schroeder
社製)を用い、10℃に冷却、練圧することにより、脂
肪率40重量%のスプレッド(本発明品2)を得た。
【0036】
【表4】 実施例1と同様の方法で乳化組成物C、乳化組成物D及
び本発明品2の電気伝導度の測定を行った。測定の結
果、乳化組成物Cの300秒付近における電気伝導度は
0.45mS/cm(図6の参照)であり、乳化組成
物Dの300秒付近における電気伝導度は、0.11m
S/cm(図6の参照)であり、また、本発明品2の
電気伝導度は300秒後には、0.3mS/cm(図6
の参照)となり、その後も上昇した。 試験例2 実施例2で得られた本発明品2のスプレッドを5℃で7
日間保存した。7日間保存後の本発明品2のスプレッド
について、試験例1と同様の方法で離水、組織及び官能
評価を行った。結果を表5に示す。
【0037】
【表5】 また、本発明品2は、乳化組成物Cと乳化組成物Dが時
間差をもって、口中で解乳化したので、初めに口中にバ
ターフレーバーが広がり、続いてストロベリーフレーバ
ーが広がった。
【0038】
【発明の効果】本発明のスプレッドは、予め調製した解
乳化特性の異なる乳化組成物の2種以上を混合してなる
ものであり、これらの乳化組成物の組成、物性などを異
ならせることで、スプレッドの特性や物性の設計が容易
となる。また、口中での解乳化速度の異なる乳化組成物
の2種以上を混合し、これらにおける風味またはフレー
バー物質を異ならせておくことで、口中で異なる風味や
フレーバー物質が時間差を持って広がるスプレッドを提
供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】電気伝導度の測定に用いた装置の概要を示す図
である。
【図2】2種の解乳化特性の異なる乳化組成物の配合割
合を変えて混合した場合の各混合物における電気伝導度
の上昇特性を示す図である。
【図3】図2に用いた各混合物における配合割合の変化
と1,500秒後の電気伝導度の値との関係を示す図で
ある。
【図4】実施例1で得られたスプレッドの電気伝導度の
変化を示す図である。
【図5】比較例1で得られたスプレッドの電気伝導度の
変化を示す図である。
【図6】実施例2で調製した各乳化組成物及びスプレッ
ドの電気伝導度の変化を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭63−279750(JP,A) 特開 平5−49398(JP,A) 特開 平6−237690(JP,A) 特開 平6−30699(JP,A) 特開 平6−78671(JP,A) 特開 昭59−196036(JP,A) 国際公開99/015025(WO,A1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A23D 7/00

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 解乳化特性の異なる2種類以上の乳化組
    成物を調製し、これらを混合してなるスプレッドであっ
    て、 (1)解乳化する乳化組成物と解乳化しない乳化組成物
    の組合せ、及び (2)解乳化速度の異なる乳化組成物の組合せの少なく
    とも一方の組合せを含む ことを特徴とするスプレッド。
  2. 【請求項2】 前記解乳化速度が、36℃付近における
    解乳化速度である請求項1に記載のスプレッド。
  3. 【請求項3】 前記解乳化する乳化組成物と解乳化しな
    い乳化組成物の組合せが、36℃付近で解乳化する乳化
    組成物と解乳化しない乳化組成物との組合せである請求
    項1に記載のスプレッド。
  4. 【請求項4】 前記36℃付近で解乳化する乳化組成物
    の少なくとも1つが、36℃付近における電気伝導度が
    300秒以内に0.1mS/cm以上に上昇する乳化組
    成物である請求項2または3に記載のスプレッド。
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