JP3509902B2 - 新規微細藻類及びそれを用いて高濃度二酸化炭素を固定する方法 - Google Patents

新規微細藻類及びそれを用いて高濃度二酸化炭素を固定する方法

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  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
  • Treating Waste Gases (AREA)
  • Physical Or Chemical Processes And Apparatus (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、空気中のそれよりもは
るかに高い濃度の二酸化炭素を含むガスを付加して培養
を行っても活発に分裂増殖する新規海産微細藻類クロロ
コックム ドルシベントラレ(Chlorococcum dorsivent
rale)、及び、それを用いて排ガス中の二酸化炭素を固
定する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】通常、微細藻類(特に緑藻)の培養にお
いては、増殖速度を上げるために5%程度の二酸化炭素
を含むガスを付加していたが、それ以上の濃度の二酸化
炭素を含むガスを用いて緑藻を培養している例はなかっ
た。また、微細藻類を用いて有用物質を生産したりバイ
オマスを生産した例は数多くあるが、太平洋の外洋域か
ら新規に微細藻類を分離しその株によって積極的に排ガ
ス中に含まれる高濃度二酸化炭素を固定しようとする方
法はなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、広く
太平洋の外洋域の海水を採取し、その中から新規な微細
藻類株を見いだし、その中からさらに高濃度二酸化炭素
に耐性のある株をスクリーニングし、得られた微細藻類
株を用いて増殖の条件を検討し、効率よく排ガス中の二
酸化炭素を固定する方法を開発することにある。
【0004】
【課題を解決しようとする手段】本発明は、太平洋外洋
域から得られた高濃度の二酸化炭素に耐性を有する新規
微細藻クロロコックム ドルシベントラレ(Chlorococc
um dorsiventrale)にある。また、本発明は太平洋外洋
域から得られた高濃度二酸化炭素に耐性を有する新規微
細藻クロロコックム ドルシベントラレ クラノ エト
チハラ エスピーノブ(Chlorococcum dorsiventrale
Kurano et Chihara sp. nov. )株にある。
【0005】さらに、本発明は排ガス中の二酸化炭素を
固定する方法において、新規微細藻類クロロコックム
ドルシベントラレ(Chlorococcum dorsiventrale)を使
用することを特徴とする二酸化炭素固定法にある。以
下、本発明を詳細に説明する。発明者らは、広く太平洋
外洋域の海水を採取しメンブランフィルターにて海水中
に含まれる微細藻類を濃縮した。フィルター上に濃縮さ
れた微細藻類を表1に示すMC培地を10ml入れた試
験管にフィルターごと移し、そこへ連続的に光を照射し
ながら20%二酸化炭素を通気した。
【0006】
【表1】
【0007】その結果、西太平洋グアム島沖外洋域の海
水サンプルから20%二酸化炭素通気条件下で活発に生
育する新規微細藻クロロコックム ドルシベントラレ
クラノ エト チハラ エスピー ノブ(Chlorococcum
dorsiventrale Kurano et Chihara sp. nov. )(以
下、本株と略す)を単離した。なお、本株は(株)海洋
バイオテクノロジー研究所において保存番号26-0/8等と
して保存管理されている。
【0008】本株の藻類学的性質は次の通りである。 1.形態的性質 (1)栄養細胞の体は単細胞で緑色をしている。細胞は
球形ないしやや楕円形に近い球形である。 (2)栄養細胞の体は培養の経過とともに直径2.5−
13μmの範囲で容積を増大させる。 (3)厚さ0.1−0.2μmの細胞壁を有する。壁の
周囲には寒天状の物質は認められない。 (4)葉緑体は一個で杯状である。ピレノイド及び核は
ともに一個である。ピレノイドの中に葉緑体チラコイド
膜が貫通しており、ピレノイドの周囲には2枚ないし数
枚の時計皿状のでんぷんをつける。 (5)一細胞中に4、8、12、16、32の遊走子あ
るいは自生胞子をつくる。この場合には、一細胞中の葉
緑体、核、ピレノイドの数は胞子の数に等しい。 (6)遊走子は左右非相称で等長の2本の鞭毛を有す
る。すなわち、鞭毛基部を頭とすると腹と背が識別され
る(図1)。この点で既知のクロロコックム リトラレ
Chlorococcum littorale)と明白に異なっている。 (7)遊走子は基質に付着した後、しばらくは原形を保
つ。すなわち、細胞壁を有している。 (8)遊走子の前端が接合する有性生殖が観察される。 2.生理学的性状 (1)集積培養:組成中にカルシウムを含まないMC培
地を用いた場合に、特徴的に集積される。すなわち、こ
の藻はカルシウム要求性が低い。 (2)培養:海水ベース、人工海水ベースのいずれの培
地においても良好な生育を示すが淡水ベースの培地にお
いては著しい生育低下が認められる。 (3)光合成能:光独立栄養的に生育可能である。貯蔵
物質としてでんぷんを蓄積する。 (4)光合成色素:クロロフィルa、クロロフィルb、
ルテイン、ヴィオラキサンティン、ゼアキサンティンを
含み、典型的な緑藻の色素組成を示す。 (5)生育温度域:15〜30℃。 (6)生育pH域:pH4〜9。 (7)生育NaCl濃度域:1〜10%。 3.属及び種の決定 本株は、光合成色素としてクロロフィルa、クロロフィ
ルb、ルテイン、ヴィオラキサンティン、ゼアキサンテ
ィンを含んでおり、典型的な緑藻のパターンを示す。ま
た、上述の形態的性質は、緑藻網(Chlorophycea)、ク
ロロコックム目(Chlorococcales)、クロロコックム属
Chlorococcum)と完全に一致する。従って、本株はク
ロロコックム属の株である。
【0009】現在までに、海産のクロロコックム属はク
ロロコックム サブマリヌム(Chlorococcum submarinu
m)、とクロロコックム リフトラレ(Chlorococcum li
ftorale)が知られている。本株は、細胞壁の厚さと細
胞の外周に寒天上の物質を持たない点でC.submarinum
異なっており、また、遊走子の形態の点で明白にC.lift
oraleと異なっている。以上の点を考慮して、20%二
酸化炭素通気条件下で活発に生育する本株をクロロコッ
クム ドルシベントラレ クラノ エト チハラ エス
ピー ノブ(Chlorococcum dorsiventrale Kurano et C
hihara sp. nov. )と命名した。なお、種名は遊走子の
特徴的な形態、すなわち、背と腹が区別される背腹性を
有している点にちなんでいる。
【0010】以下に、二酸化炭素固定の観点から見て重
要である増殖特性について述べる。 1.二酸化炭素濃度 本株は、図2に示すように空気レベルから60%の分圧
の二酸化炭素濃度まで生育可能である。また、20%の
分圧の場合、ほとんど生育阻害を受けない。これは、排
ガスに含まれる程度の二酸化炭素の濃度では、生育速度
が低下せず十分な二酸化炭素固定能力を発揮できること
を示している。 2.pH 本株は、図3に示すようにpH4から9の広い範囲で生
育可能である。20%二酸化炭素を微細藻培養液に吹き
込んだ場合、緩衝作用の強い海水をベースにした培地の
場合でもpHが4程度まで低下してしまう。このような
場合でも、本株を用いることにより、効率的な二酸化炭
素固定が可能である。 3.NaCl濃度 図4に示すように本株は、淡水を基本とした培地では生
育できない。しかし、その培地に、NaClを1%添加
すると海水の場合と同等以上の生育速度を示す。さら
に、最終藻体濃度や生育速度は低下するがNaClを1
0%添加した場合でも生育する。この点は、屋外におけ
る粗放的な培養システムを考えた場合に非常に有利な点
である。大量の排ガスを処理するためには、なるべく手
間のかからない粗放的な方法も望ましい手段の一つの選
択肢である。屋外での培養池による二酸化炭素処理シス
テムの場合、培養の経過に伴って水分の蒸発による培養
液中の塩濃度が上昇しそれによって惹起される増殖阻害
が問題となるが、本株の場合、株自身が高塩濃度耐性を
有しており特にその問題に対する対策を考慮する必要が
ない。この点でも、二酸化炭素固定に適した性質を有し
ている。
【0011】
【実施例】以下、実施例により本発明を説明する。ただ
し、本発明の技術的範囲は実施例によりなんら限定され
るものではない。 (実施例1)内径140mm、高さ300mmの透明円
筒形ガラス製培養槽に岩手県釜石湾から採取した海水を
ベースとした栄養塩培地(MC培地、表1に組成を示
す)を4リットルいれて、オートクレーブ滅菌したもの
に本株の前培養液100mlを添加し、培養を開始し
た。培養槽の回りからサークライン蛍光灯によって断続
的に光を供給し、温度は25℃、通気量は0.25vo
l/vol/min、攪拌速度200rpmを保って培
養した。この培養条件で、通気するガス中の二酸化炭素
分圧を0〜70%まで変化させた時の増殖の経過を図2
に示す。本株は、5%、20%の二酸化炭素分圧におい
ても活発に分裂増殖する能力を有した。
【0012】(実施例2)実施例1と同じ培養装置と条
件で、本株の二酸化炭素固定能力を測定した。本株は、
20%二酸化炭素通気条件下で、対数増殖期の倍加時間
が8時間、直線増殖期の生育速度が1リットルの培養液
あたり1日あたり0.5グラムの乾燥重量増、最高到達
藻体濃度が1リットルあたり4グラム乾燥重量という高
い生育能力を示した。そして、直線増殖期の二酸化炭素
固定能力は、に示すように約1リットルの培養液あたり
1日あたり0.73グラム二酸化炭素であった。直線増
殖期は図に示すように約20日間続いたので、トータル
の二酸化炭素固定量は1リットルあたり約15グラムで
あった。
【0013】(実施例3)内径18mmの試験管に10
mlの淡水ベースのMC培地を入れて、そこにNaCl
を0〜10%添加して本株を培養した。培養条件は、実
施例1に準じた。結果を図4に示す。本株は、海水の代
わりにNaClを添加した培地での生育が可能であった
が、NaClの濃度が0の場合ほとんど生育しなかっ
た。また、海水よりも高いNaCl濃度においても最高
時の半分程度の藻体濃度まで到達した。
【0014】
【発明の効果】本株は、高濃度二酸化炭素耐性、低pH
耐性、高塩濃度耐性のいずれをも兼ね備えており、他の
微細藻類に比べて排ガス中の二酸化炭素固定に適してい
る。本株を用いることにより、粗放的なシステムによる
排ガス中二酸化炭素処理が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本株の特徴である遊走子の形態を示す透過電
子顕微鏡写真
【図2】 本株の各二酸化炭素濃度における増殖の経過
【図3】 本株の各pHにおける培養2週間後の増殖量
【図4】 本株の各NaCl濃度における培養2週間後
の増殖量

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 5〜60%の濃度の二酸化炭素に耐性を
    有する微細藻類クロロコックム ドルシベントラレ ク
    ラノ エト チハラ エスピー ノブ(Chlorococcum d
    orsiventrale Kurano et Chihara sp. nov.)株。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の微細藻類クロロコックム
    ドルシベントラレ クラノエト チハラ エスピー
    ノブ株を用いて、排ガス中の二酸化炭素を固定する方
    法。
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NZ606131A (en) * 2010-06-23 2015-02-27 Bernard A J Stroïazzo-Mougin Process for producing (poly)unsaturated fatty acids employing microalgae
CL2017002565A1 (es) * 2017-10-11 2018-04-27 Univ Antofagasta Método de cultivo al exterior u “outdoor” de la microalga muriellopsis sp. para producir biomasa con alto contenido en luteína y bajo contenido en metales que tiene buenas propiedades antioxidantes y útil para preparar alimento animal o de consumo humano
JP7455386B2 (ja) * 2018-10-02 2024-03-26 国立研究開発法人科学技術振興機構 淡水産微細藻類の培養方法

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