JP3488742B2 - ソフトフェライトの製造方法 - Google Patents

ソフトフェライトの製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ソフトフェライトの製
造方法に関わり、特に圧粉成形体を製造するための粉体
の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ソフトフェライトの製造工程は、通常図
3の製造工程に示すように、主構成元素である鉄、マン
ガン、マグネシウム、銅、亜鉛等の個々の酸化物または
加熱により容易に酸化物に変化する炭酸塩等の化合物を
所定のモル比率で混合した後に、800〜1000℃の
温度で仮焼し、粉砕して添加物を加え、さらに造粒後
に、造粒体を成形機により成形し、焼成し、機械加工す
ることにより構成される。
【0003】造粒は、量産時に粉体の輸送と取扱いを容
易にするために行なわれるが、その際に顆粒の流動性を
高めることが、成形時の金型のキャビティ内に均一に造
粒体を給粉するために特に重要となる。しかしながら、
造粒体を成形すると、図4に示したようなクラック2が
成形時に成形体1にしばしば発生し、製品の歩留り、特
性を劣化させる原因となる。また、このクラック2は、
高い成形密度を得るために成形圧力を上げるほど大きく
なる。成形圧力を下げるとクラックは無くなるが、成形
密度の低下に伴い、成形体のハンドリング時の欠け等が
生じ易く、また焼結後の製品中に粗大空孔が残留し、焼
結体の特性劣化を招いていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上述のよう
な成形密度の高い成形体を得ようとする際に問題となる
クラックの発生を解決し、信頼性の高いソフトフェライ
トの製造方法を提供しようとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、前述の課題を
解決するためになされたものであって、その第1発明
は、ソフトフェライト原料粉末を造粒して造粒体を製造
し、この造粒体を圧縮成形して成形体を作製し、この成
形体を焼結してなるソフトフェライトの製造方法におい
て、水分量W(重量%)を有する造粒体を、温度T
(℃)、相対湿度RH(%)がそれぞれ、 10≦T≦45 20≦RH≦80 を満足する雰囲気中に、滞留時間t(時間)が、 t≧1.1W2 +0.9 を満足する滞留時間滞留させた後、この造粒体を用いて
成形体を作製し、焼結することを特徴とするソフトフェ
ライトの製造方法である。
【0006】また、本発明の第2発明は、造粒体の水分
量が0.3重量%以下の場合、雰囲気の温度と湿度の関
係を規定することによりさらに信頼性の高いソフトフェ
ライトを製造し得ることを知見した結果なされたもの
で、ソフトフェライト原料粉末を造粒して造粒体を製造
し、この造粒体を圧縮成形して成形体を作製し、この成
形体を焼結してなるソフトフェライトの製造方法におい
て、0.3重量%以下の水分量を有する造粒体を、温度
T(℃)、相対湿度RH(%)が、 10≦T≦45 20≦RH≦80 T≦−0.583RH+56.7 を満足する雰囲気中に、1時間以上滞留させた後、この
造粒体を用いて成形体を作製し、焼結することを特徴と
するソフトフェライトの製造方法である。
【0007】
【作用】以下に本発明の限定理由について述べる。造粒
体は、造粒後成形までの滞留時の雰囲気により水分量が
変化する。高い相対湿度下で滞留させた場合、多量の水
分を吸収し、造粒体の流動性が著しく低下してクラック
も発生しやすくなるため、相対湿度RHを80%以下に
制限する必要がある。一方、雰囲気の相対湿度が低過ぎ
ると、造粒体中の水分量が低下し、造粒体の流動性は向
上するが、クラックの発生頻度が高まるので、20%以
上に限定する。
【0008】また、クラックの発生は、滞留時の雰囲気
の相対湿度だけでなく温度にも関係しており、その抑制
のためには、温度を10〜45℃の範囲に維持する必要
がある。この範囲を逸脱するとクラックが発生し不適当
である。以上の2つのパラメータ、すなわち、温度、相
対湿度と成形時のクラックの発生との関係を図1に示し
た。実験条件については実施例の項で説明するが、10
≦T≦45(℃)、20≦RH≦80(%)の範囲でク
ラック発生が少ないことが判った。
【0009】とりわけ造粒体に含まれる水分量が0.3
重量%以下の場合、クラック発生に及ぼす雰囲気の影響
は大きく、図2に示すごとく、10≦T≦45℃、20
≦RH≦80(%)に加えてT≦−0.583RH+5
6.7なる条件が必要であった。造粒体が滞留する雰囲
気に安定になるまでの時間は、造粒体に含まれる水分量
により異なり、t≧1.1W2 +0.9で示される以上
の時間が必要である。これより短い時間ではクラックが
発生し易い。
【0010】なお、造粒体に含まれる初期の水分量は
0.3重量%以下が望ましい。これより多いと雰囲気に
安定になるまでの時間が長くなりコスト的に不利であ
る。本発明方法を適用することにより、造粒体の流動性
を低下させることなく、クラック発生のない高密度成形
体を得ることが可能になる。
【0011】
【実施例】実施例−1 原料粉体としてスプレードライヤにより製造したPVA
をバインダとして含み、水分量の異なる平均粒径250
μmのMn−Znフェライトを使用し、滞留時間が成形
時の流動度とクラック発生に与える影響を調べた。水分
の異なる造粒体を、温度25℃、相対湿度65%の雰囲
気下に0〜12時間滞留させ、その後、外径25mm、
重量15gの円板状に1.3t/cm2 の圧力で成形
し、成形体(コア)断面のクラック発生状況と流動度を
調べた結果を表1に示す。
【0012】成形体断面のクラック発生状況は、倍率1
0倍の拡大鏡で観察した。〇印は、成形後のコア10個
の断面に図4(b)に示したようなクラックが発生した
コアが1個もなかったことを意味する。また、△印は、
クラックの発生したコアが1個だけあったことを示し、
×印は、クラックの発生したコアが2個以上あったこと
を意味する。流動度の測定は、JISZ2502−19
58に規定されている測定方法にしたがって行った。
【0013】表1にから判るように、安定した流動度を
得て、成形体にクラックが入らないようにするには造粒
体に含まれる水分量が0.3重量%以下の場合には1時
間以上、1重量%以下の場合には2時間以上、2重量%
の場合には6時間以上となり、おおむねt≧1.1W2
+0.9で示される滞留時間が必要であった。
【0014】
【表1】
【0015】実施例−2 表2は、実施例と比較例それぞれについて、示された温
度、相対湿度の条件下に滞留されたソフトフェライト造
粒体を用いて成形した成形体のクラック発生状況を示し
たものである。原料粉体としてスプレードライヤにより
製造したPVAをバインダーとして含み、水分量が0.
5、1及び2重量%である平均粒径250μmのMn−
Znフェライトを使用した。これらの造粒体を、温度、
相対湿度の異なる雰囲気下に所定時間滞留させ、その
後、外径25mm、重量15gの円板状に1.3t/c
2 の圧力で成形し、成形体(コア)断面のクラック発
生状況を調べた。クラックの発生状況は実施例−1と同
様に観察し、評価した。
【0016】表2の結果を図示したものが図1である。
図1において、〇印は水分量0.5、1.2%のものを
総合的にみてクラックの発生が少ない状態を示し、×印
はクラックの発生が多い状態を示すものである。雰囲気
温度10〜45℃、相対湿度20〜80%を外れる条件
下に造粒体を滞留させると成形体にクラックが発生した
り、成形時の粉の流動性が低下する等の問題が生じる
が、雰囲気温度及び相対湿度を上記の範囲内とすること
で上記の問題が解決できることがわかる。
【0017】
【表2】
【0018】実施例−3 表3は、特に造粒体中の水分量が0.15及び0.30
重量%の場合について、示された温度、相対湿度の条件
下に滞留されたソフトフェライト造粒体を用いて成形し
た成形体のクラック発生状況を示したものである。原料
粉体としてスプレードライヤにより製造したPVAをバ
インダーとして含み、水分量が0.15および0.30
重量%である平均粒径250μmのMn−Znフェライ
トを使用した。これらの造粒体を温度、相対湿度の異な
る雰囲気下に2時間滞留させ、その後、外径25mm、
重量15gの円板状に1.3t/cm2 の圧力で成形
し、成形体(コア)断面のクラック発生状況と流動度を
調べた。クラックの発生状況は実施例−1と同様に観察
し、評価した。流動度の測定及び評価は実施例−1と同
様にJISZ2502−1958に従ったが、流動度の
判定は次の通りとした。すなわち、●は、上記の流動度
測定装置により測定中に、ロート内で粉体がブリッジを
形成し、粉体が流動せず、測定が不可能であったことを
示す。◎は測定が可能であったことを示す。
【0019】表3の結果を図示したものが図2である。
図2において、〇印は成形後のコア10個にクラックが
発生したコアが1個もなく、かつ流動性も良好な状態を
示すまた、△印はクラックの発生したコアが1個だけあ
ったが、流動性は良好であったことを示し、×印はクラ
ックの発生したコアが2個以上あったことを示すもので
ある。
【0020】雰囲気温度10〜45℃、相対湿度20〜
80%を外れる条件下に造粒体を滞留させると成形体に
クラックが発生したり、成形時の粉の流動性が低下する
等の問題が生じるが、雰囲気温度及び相対温度を上記の
範囲内とすることで上記の問題が解決できる。特に雰囲
気温度10〜45℃、相対湿度20〜80%に加えて、
相対湿度をRH(%)としたとき、温度T(℃)がT≦
−0.583RH+56.7なる条件を付加することで
成形体中のクラックが皆無となる。
【0021】
【表3】
【0022】
【発明の効果】本発明により、成形体の作製時に、流動
性を阻害することなく、クラックを発生させることなく
高密度成形体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例および比較例により得た成形体のクラッ
クの発生状況および造粒体の流動性と造粒体滞留時の温
度と相対湿度の関係を示すグラフである。
【図2】実施例および比較例により得た成形体のクラッ
クの発生状況および造粒体の流動性と造粒体滞留時の温
度と相対湿度の関係を示すグラフである。
【図3】ソフトフェライトの乾式製造プロセスを示すブ
ロック図である。
【図4】ソフトフェライトの成形体に発生するクラック
を説明するための円板状成形体の図であり、図(a)は
外観図であり、図(b)は(a)におけるABCD断面
を示す。
【符号の説明】
1 成形体 2 クラック

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ソフトフェライト原料粉末を造粒して造
    粒体を製造し、該造粒体を圧縮成形して成形体を作製
    し、該成形体を焼結してなるソフトフェライトの製造方
    法において、水分量W(重量%)を有する造粒体を、温
    度T(℃)、相対湿度RH(%)がそれぞれ、 10≦T≦45 20≦RH≦80 を満足する雰囲気中に、滞留時間t(時間)が t≧1.1W2 +0.9 を満足する滞留時間滞留させた後、該造粒体を用いて成
    形体を作製し、焼結することを特徴とするソフトフェラ
    イトの製造方法。
  2. 【請求項2】 ソフトフェライト原料粉末を造粒して造
    粒体を製造し、該造粒体を圧縮成形して成形体を作製
    し、該成形体を焼結してなるソフトフェライトの製造方
    法において、0.3重量%以下の水分量を有する造粒体
    を、温度T(℃)、相対湿度RH(%)が、 10≦T≦45 20≦RH≦80 T≦−0.583RH+56.7 を満足する雰囲気中に1時間以上滞留させた後、該造粒
    体を用いて成形体を作製し、焼結することを特徴とする
    ソフトフェライトの製造方法。
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