JP3484674B2 - 粉末冶金用鉄基銅複合粉末の製造方法 - Google Patents

粉末冶金用鉄基銅複合粉末の製造方法

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靖幸 飯綱
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、鉄系粉末冶金用材料な
らびに含銅粉末冶金材料に関するもので、特に合金成分
を混合する際に、偏析しにくいような材料を提供するも
のである。
【0002】
【従来の技術とその課題】高強度焼結機械部品を得るた
めの方法として、従来から純鉄粉を主原料にニッケルや
銅、モリブデン等の金属粉と黒鉛を混合し、成形焼結す
る方法がとられてきた。
【0003】しかしながらこの方法では、原料粉混合後
の鉄粉と合金粉末の粒度や形状又は比重が異なるため、
搬送やプレス成形時の振動等によって、鉄粉と合金粉末
が分離し、焼結体の物性の不均一性が生じ、その結果起
こる焼結体の強度や寸法のばらつきが問題になってい
た。
【0004】これに対し、純鉄粉にあらかじめ合金成分
を溶かし込んだアトマイズ鋼粉を使用する、いわゆるプ
レアロイ法は、成分偏析による組織の不均一化は防ぐこ
とができるが、粉末粒子の硬度が高くなるため圧縮性が
低下し、同一の成形圧では高強度のものが得られないと
いう問題がある。
【0005】これに対処するものとして、特公昭45−
9649号に開示されているように、純鉄粉に合金成分
となる金属粉末を加熱によって拡散付着させた、いわゆ
る部分拡散合金鋼粉を用いる手段も知られているが、こ
れでは先の成分の偏析と成形時の圧縮性の低下は回避す
ることができても、金属粉末を拡散付着するための工程
が増えるので、その分、製造コストが増えるという問題
点があった。
【0006】また銅系焼結含油軸受部品を作成する際、
鉄粉と銅粉を混合して成形するときの偏析をさけるた
め、例えば特公昭51−29486号に記載の方法を更
に改良して製造した銅被覆鉄粉(商品名ニューコーチロ
ン,同和鉄粉工業(株)製)等を用いる場合は、銅被覆
鉄粉製造工程で鉄粉を硫酸銅溶液に浸漬して銅イオンと
鉄の置換反応によって銅被覆鉄粉を得るため、それに伴
う乾燥処理、乾燥時の表面酸化物の還元処理、置換反応
で派生する硫酸鉄廃液の処理などにより、製造コスト高
になるという問題がある。
【0007】本発明は、上記従来の部分拡散合金鋼粉の
問題点を解決し、より低コストで偏析のない粉末冶金用
鉄基銅複合粉の製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記の目的を
達成するため、レーザー光散乱式粒度分析計( LEEDS&
NORTHRUP 社製のマイクロトラック粒度分析計)の平均
粒子径が5μm以下で、しかも比表面積が10m2 /g
以上の微細な酸化銅を、水素ガス等の還元性ガスによる
仕上還元と焼鈍を行っていない粉末冶金用鉄粉に一定割
合で混合し、温度700℃〜950℃の還元性雰囲気中
で酸化物の還元と合金成分の拡散付着を同時に行わせる
という手段を用いたものである。
【0009】又、上記粉末冶金用鉄粉と微細な酸化銅を
混合するに当たり、更にカーボンを0.15〜5.0重
量%添加するという手段も用いた。
【0010】この鉄基銅複合粉末を用いて、銅系焼結含
油軸受の一般的な組成である銅20%−鉄80%(JIS
B1581 のSBF2218 種相当)とし、その粉末冶金特性を測
定して通常の方法である銅粉と鉄粉を混合して焼結した
ものとの特性を比較した。
【0011】
【作用】本発明の粉末冶金用鉄基銅複合粉末を使用する
ことにより、従来から用いられる微粉の金属銅粉を混合
する方法と比べて、一般粉末冶金用鉄粉と見掛密度と粒
度分布が同程度で、単体分離した銅微粉がないため、は
るかに成分偏析が少なく、従って寸法変化のばらつき
や、機械的強度のばらつきが少ない焼結部品が得られ、
しかも部分拡散合金鋼粉よりも安価に生産できるという
格別に顕著な作用を有する。
【0012】又、上記の鉄粉と酸化銅の混合に際して少
量のカーボンを用いたものは、次の還元工程で水素ガス
等の消費量を減らし、効率的な還元が行えるという作用
を奏するものである。
【0013】
【実施例】以下、本発明における実施例としての具体的
な製造工程を説明する前に、発明の構成要件となる微細
な酸化銅及び粉末冶金用鉄粉の特性等について述べる。
【0014】本発明で使用する酸化銅は、直径約0.1
μの一次粒子が凝集して二次粒子を形成しており、平均
粒子径3μmのもので比表面積は35m2 /gである。
ちなみに、比重5.4g/ccで直径5μの球形単一粒
子の酸化銅の比表面積の計算値は、0.19m2 /gで
あり、また実際に市販されている平均粒子径4μの酸化
銅(NC社製,N−130)でも、その比表面積は0.
5m2 /gに過ぎないことから、本発明に使用する酸化
銅が、如何に比表面積が大きく活性であり、付着性の強
いことが予想される。
【0015】又、上述した微細な酸化銅を得る手段とし
ては、銅(II)塩溶液にアルカリを作用させて生じた青
白色の水酸化銅(II)水和物のゲルを、液とともに加熱
すると黒色の酸化銅(II)となる。この銅(II)液に例
えばプリント基板のエッチング処理における副産物であ
る塩化第二銅を、撹拌装置付き反応容器に連続的に注入
してPHコントローラーにより、そのPHを10〜12
に調整しながら苛性ソーダ溶液を添加し、液温を60〜
90℃の範囲で一定に保って中和と加水分解を畧同時に
行い、酸化銅スラリーをオーバーフローさせてデカンテ
ーション法で水洗し、スプレードライヤーにて乾燥して
得たものである。
【0016】この方法によれば、水酸化銅ゲルが分解し
てできた微細な酸化銅が一次粒子となって、あたかも雪
だるまのように集合して二次凝集し、数μの酸化銅を形
成して比表面積の大きいものが得られるのである。この
酸化銅と市販の酸化銅(NC社製)及び本発明の実施例
で用いる鉄粉(同和鉄粉工業(株)DOWA−NC)の
見掛密度、粒度分布、平均粒子径、比表面積、化学成分
などを、表1に示す。
【0017】
【表1】
【0018】本発明に使用される上記酸化銅を得る手段
は、上述した方法に限定するものではなく、本発明にお
ける酸化銅の限定範囲である平均粒子径5μm以下で、
かつ比表面積が10m2 /g以上の酸化銅は、かなり特
殊なもので、活性で鉄粉表面との馴染みがよく、酸化銅
と鉄粉との混合工程で二次凝集していた酸化銅粒子が容
易に破壊されて0.1μm程度の微細な一次粒子となる
ものを多く含み、鉄粉との接触面積が大となって有機質
や無機質の結合材を用いて湿式混合などをしなくても、
鉄粉表面を酸化物粒子が薄い膜状に覆って均一に付着す
る性質を発揮するものであればよい。
【0019】次に、鉄基銅複合粉末の基になる鉄粉につ
いては、水素やアンモニア分解ガス等の還元性ガス雰囲
気による仕上げ還元工程を施していない、粉末冶金用鉄
粉を選んだ。この鉄粉と酸化銅の混合には、破砕と混合
効率が良いとされているヘンシェルミキサーを用いた。
むろん一般的なV型ミキサーやWコーン型ミキサーで
も、混合時間を延ばせば同一の効果が得られよう。
【0020】実施例 同和鉄粉工業(株)製のDOWA−NC(商品名)の仕
上げ還元を行っていない鉄粉100kgに対し、上述し
た方法で得た平均粒子径3.5μmの酸化銅31.7k
g(金属銅換算で20重量%)を高速ミキサー(ヘンシ
ェルミキサー)を用いて混合し、還元雰囲気の温度70
0℃で還元して金属銅を鉄粉表面に拡散付着させたもの
である。
【0021】併せて、比較用に上記の鉄粉100kgと
市販の酸化銅粉(NC社製,N−130)を31.3k
g(金属銅換算で20重量%)を混合し、実施例と同
一の条件で加熱・還元したものの鉄粉表面に対する酸化
銅の付着状態を、電子顕微鏡で観察した。但し、図1は
本発明方法の鉄基銅複合粉末、図2は市販の酸化銅粉と
鉄粉を混合して得た鉄基銅複合粉末であり、各々を15
00倍に拡大した電子顕微鏡写真である。
【0022】図1に見られるように、本発明で用いた酸
化銅は、細かい一次粒子が多数集まって二次粒子を構成
しているため、造粒された粒子が混合の際にすり潰され
て活性で鉄粉に均一に付着している状況がよく窺える
が、図2の市販酸化銅の場合は、銅粉が鉄粉の窪みに付
着しているだけである。
【0023】実施例 この実施例は、上記実施例における二種類の鉄粉─酸
化銅粉の混合粉の拡散付着状態を比較するためのもので
あって、縦・横・高さが、それぞれ130mm×290
mm×50mmのステンレス製のトレーに上記二種類の
混合粉を1.5kg宛充填し、700℃、800℃およ
び950℃の各温度で、3m3 /hrの水素ガスを流し
て加熱還元を行い、これによって得られた還元ケーキを
ハンマーミルで解粒し、パルベライザー(微粉砕機)で
見掛密度を管理しながら粉砕して2.5g/ccに調整
し、177μの篩で粗粉を除いて整粒した複合粉体につ
いて、単体分離した銅量を自社製非磁着物量測定試験器
を使用して非磁着物の量を測り評価した。表2に各還元
温度で作成した複合粉体の177μ以下の歩留り、見掛
密度、粒度分布、化学成分を示す。尚、表2中、Aおよ
びBは本発明、Cは市販酸化銅使用の比較例である。
【0024】
【表2】
【0025】表2から各試料とも還元温度が高い程O2
量が少なく、よく還元されていることが分かるが、全て
の還元温度で、本発明の試料A・Bの方が非磁着物の量
が少なく、O2 の量が少ない。これは本発明で使用した
酸化銅が、市販の酸化銅に比べて一次粒子が小さいので
還元され易く、拡散付着し易いことを物語っている。
【0026】また、還元ケーキからの177μ以下の歩
留りは、還元温度が高く、銅量の多い複合粉ほど悪化し
ているが、同じ銅量の試料B・Cを比較すると、特に還
元温度が950℃の場合、試料Cの方がより悪化してい
る。これは、前記したように試料Cの粒子表面の接触が
鉄同士となって、より強固な焼結を生じたものと思われ
る。そのため粒度分布が本発明の複合粉に比べ、より粗
めに推移している。
【0027】更に表3に、得られた複合粉を106μの
篩で篩分し、その篩上と篩下について、それぞれの化学
成分の分析を行った結果を示す。同表によれば、本発明
の複合粉の方が還元温度に関わらず、篩上と篩下の銅成
分の量が均等であることがわかる。これに対して比較試
料Cの複合粉は、還元温度が低いほど、特に700℃の
低温では篩下の銅量が増しており、分離した銅がより多
く、拡散付着が十分でないことを示している。
【0028】
【表3】
【0029】以上述べた本発明は、要するに仕上げ還元
前の鉄粉と、上記特定の酸化銅を金属換算量で10〜5
0重量%混合し、温度700℃〜950℃の還元性雰囲
気内で加熱還元することによって金属酸化物の酸素が有
効に作用して鉄粉中の残留炭素を取り除き、しかも仕上
げ還元分の製造コストを低下させることにある。従っ
て、ここで鉄粉と酸化銅の混合粉の還元温度を700℃
〜950℃に限定した理由は、700℃未満の低温で
は、微細酸化物は十分還元したが、鉄粉の脱炭と鉄粉の
有する酸化物の還元と焼鈍が十分でなっかったので70
0℃以上とした。また、還元温度が950℃以上になる
と焼結が著しく、解砕後の篩分歩留まりが悪化する上、
粉末冶金特性も劣化しためである。
【0030】次に、本発明において酸化銅粉と鉄粉の混
合割合を、金属換算量で10〜50重量%に限定した理
由であるが、まず銅量で50重量%を越えると、銅粉が
鉄粉に充分付着せずに単体分離するものが増え、逆に1
0重量%未満であると、所定の合金組成とするために粉
末冶金用鉄粉と調合する際、鉄基複合粉体の使用量が増
えコストメリットがなくなるためである。
【0031】つまり、得られた鉄基銅複合粉末を母合金
とし、これが所定の合金組成となるように仕上げ焼鈍を
施した一般的な粉末冶金用鉄粉、例えばDOWA−NC
と黒鉛と潤滑剤を混合して焼結部品を成形する場合にお
いて、例えば20%Cu−80%Feの組成の鉄基複合
粉末を使用し、2.0%Cu−0.8%C−残部Feな
る焼結部品を作成するとしたならば、鉄基複合粉末を1
0重量部、一般粉末冶金用鉄粉89.2重量部、黒鉛
0.8重量部、潤滑剤1.0重量部となるわけである
が、5%Cu−95%Feの銅の少ない鉄基複合粉末を
使用し、前記と同一組成にするには鉄基複合粉末は40
重量部と先の4倍必要となるからである。
【0032】実施例 以上の他、本発明では酸化銅と鉄粉を混合する際に、
0.1〜5.0重量%の微量のカーボンブラックなどの
炭素を添加するという手段も採用した。これは次の還元
工程で使用する水素ガスの使用量を減らし、効率的な還
元を行う目的である。この場合は、残留Oと残留Cを同
時に減少させる必要があるため、添加する炭素量は微調
整を行う必要があるが、このようにして得られた鉄基銅
複合粉末の粉末冶金特性は、添加カーボン無しのものと
ほぼ同一であったが、寸法変化が添加カーボン無しのも
のは収縮傾向が見られたのに対し、カーボン添加のもの
は寸法変化のない、つまり±0%に近づけることが可能
となった。
【0033】この点について更に具体的に述べると、本
実施例における上記の鉄粉と微細な酸化銅粉の混合比
は、実施例のものと同一とし、これを10リットルの
V型ミキサーを用いて混合粉2kgに対して0.15
%,0.25%,0.35%,0.5%のカーボンブラ
ックを混合したものについて、実施例のステンレス製
トレーに充填し、950℃で1時間、水素ガスを2m3
/hr流して加熱還元を行った。この時の単位重量当た
りの水素ガス量を実施例と比べると、充填量が1.5
kgから2kgに増えたのに対し、ガス量が3m3 /h
rから2m3 /hrに減ったので、実質は1/2の使用
量になる。また参考のためにカーボンブラック無添加の
ものも同様に還元した。
【0034】このようにして得られた還元ケーキは、実
施例と同様に粉砕して整粒して177μの篩下歩留
り、見掛密度、粒度分布等を測定したものを表4に示
す。同表のE−1のカーボン添加量が0.5%では、化
学成分のCが0.02%と若干残留した。E−5のカー
ボン無添加では、Oが0.42%となり、やや還元が不
十分であった。
【0035】
【表4】
【0036】次にこのE−1とE−5を除いた、複合粉
の粉末冶金特性を、実施例と同様に測定し、その結果
を表5に示す。表5のB−2(800℃還元、カーボン
無添加)のデータと比べて、ラトラー値や成形体密度、
硬度に大差はないが、寸法変化(収縮)が小さくなっ
た。
【0037】
【表5】
【0038】実施例 この実施例の目的は、実施例の複合粉の粉末冶金特性
と、鉄粉と銅粉を混合して焼結する通常の方法によるも
の(比較例D)の粉末冶金特性を測定し、比較するため
ものである。
【0039】比較例の銅粉と鉄粉の混合は、銅粉にNK
製#52を200g、鉄粉にDOWA−NC800g
を、1リットルのV型ミキサーで30分混合して得たも
のである。この混合粉と銅含有量20%と10%の鉄基
銅複合粉に、ステアリン酸亜鉛を0.8%添加して、2
〜3t/cm2 の圧力で成形し、成形密度ラトラー値を
測定し、1120℃で30分間RXガス中で焼結し、焼
結体密度、寸法変化、圧環強度を測定した。その際のテ
ストピースは、ラトラー値は直径12mm、成形体密度
と寸法変化率と硬度は20mm、圧環強度は外形22m
m−内径12mmの寸法に成形した。表6にその結果を
示す。
【0040】
【表6】
【0041】上表によれば、ラトラー値は本発明の複合
粉の方が比較用の混合粉よりも遥かに良く、比較混合粉
よりも良好であることがわかる。寸法変化に関しては、
混合粉が膨張するのに対して本発明の複合粉はいずれも
収縮する。また硬さと圧環強度では、本発明の複合粉は
混合粉と比べて同一レベルである。
【0042】実施例 本実施例の目的は、実施例の複合粉を一般粉末冶金用
鉄粉と混合して焼結体を作り、焼結体の物性を比較し偏
析防止効果を評価するためのものである。
【0043】実施例の950℃で還元したA−1、B
−1、C−1の複合粉に、2.0Cu−0.8C−残F
eとなるように黒鉛と鉄粉(DOWA−NC)を加え
て、各1kgを作成し、さらに潤滑剤としてステアリン
酸を0.8%添加し1リットルV型ミキサーで30分間
混合し、更に比較例として鉄粉と黒鉛と銅粉(NK製#
52)の混合粉をV型ミキサーで、30分間混合して作
成した。成形圧力5t/cm2 で、ラトラー用は3個、
硬度と圧環強度用のテストピースは各10個作成した。
表7にその結果を示す。
【0044】
【表7】
【0045】粉末冶金特性は、実施例との比較例におい
てほぼ同一のレベルであるが、硬度と圧環強度の測定値
のばらつきが、混合分に比べて、複合粉の方が少い。こ
のことから、複合粉を母合金粉として用いると、合金成
分の偏析防止効果が認められる。
【0046】
【考察】上記実施例の微細な酸化銅を鉄粉と混合し、
酸化銅が鉄粉表面に均一に付着した状態で還元して拡散
付着した鉄基銅複合粉末は、一般的な粉末冶金用鉄粉と
見掛密度や粒度分布に大差が無く、しかもこれを成形し
て焼結した場合、全く色むらを生じていないことから、
偏析が確実に防止できていることがわかった。これは、
単純に鉄粉と銅粉を混合して成形した場合に、焼結体表
面が金属銅の色で縞状になり、偏析していることが明白
であったことからも判断できる。
【0047】そしてこの鉄基銅複合粉末を焼結し、粉末
冶金特性を測定したところ、焼結体の測定位置ごとの硬
さの変動が、混合粉を焼結した場合と比べて少ない結果
となった。
【0048】更に、この鉄基銅複合粉末を母合金粉と
し、これを一般的な粉末冶金用鉄粉で希釈するような方
法で鉄粉と黒鉛等の炭素を所定の合金組成となるよう調
合し、成形、焼結を行って、通常の銅粉と黒鉛と鉄粉を
混合する方法で焼結したものと特性の比較を行った。
【0049】この場合も、合金成分である銅の偏析が生
じにくいため、焼結体の諸特性のばらつき、特にロック
ウェル硬度や圧環強度のばらつきが少なくなった。
【0050】鉄基銅複合粉末を作成するに当たり、合金
成分となる金属に酸化銅の平均粒子径が5μ以下で、且
つBET比表面積が10m2 /g以上のものを選び、仕
上げ還元前の鉄粉と混合し、これを還元し拡散付着させ
た。この場合、酸化物の代わりに金属銅の微粉を鉄粉と
混合し、還元性雰囲気で拡散付着する方法もあるが、製
造コスト面で比較すると、本発明の酸化銅は後述するよ
うに安価な塩化銅を出発原料として製造し、そのうえ鉄
粉も仕上げ還元を施していないものを使用し、還元性雰
囲気で加熱することにより、酸化銅と鉄酸化物の還元と
拡散付着を兼ねているので、鉄粉の仕上げ還元工程を省
くことができるため、本発明方法の方が遥かに有利であ
る。
【0051】また一般に粉体粒子同士の付着性は、分子
間力(van der Waals 力)や静電気力、磁気的な力、水
分などの表面張力の作用によるもの、など種々の力が働
いて生じる(“粉体の表面化学”、小石・角田 著,日
刊工業新聞社)とされているが、本発明で用いる酸化銅
は、平均粒子径から予想される比表面積に比べて、異常
に大きな比表面積を有し、上記の磁気的要因を除くすべ
ての影響力により、非常に活性で、粒子同士が付着しや
すい性質を持つ。
【0052】
【発明の効果】以上詳述した通り、本発明に係る粉末冶
金用鉄基銅複合粉末の製法を用いて銅系焼結含油軸受の
一般的な組成である銅20%−鉄80%(JIS B1581のS
BF2218 種相当)で、粉末冶金特性を測定し、通常の方
法である銅粉と鉄粉を混合して焼結したものと特性を比
較したところ、微細な酸化銅を鉄粉と混合し、鉄粉表面
に均一に付着した状態で酸化銅が還元して拡散付着した
鉄基銅複合粉末は、一般の粉末冶金用鉄粉と比較して見
掛密度や粒度分布に大差がなく、しかもこれを成形して
焼結した場合、単純に銅粉と鉄粉を混合して成形したも
のは、焼結体表面が金属銅の色で縞状になり、明白に偏
拆しているのが分かるのに対し、本発明のものは全く色
むらを生じないことからして、偏拆が防止できるという
効果が裏付けられた。
【0053】そしてこの鉄基銅複合粉末を焼結し、粉末
冶金特性を測定したところ、焼結体の測定位置ごとの硬
さの変動が、混合粉を焼結した場合と比べて少ない結果
となった。
【0054】更に、この鉄基銅複合粉末を母合金粉と
し、これを一般的な粉末冶金用鉄粉で希釈するような方
法で、鉄粉と黒鉛等の炭素を所定の合金組成となるよう
調合し、成形、焼結を行って、通常の銅粉と黒鉛と鉄粉
を混合する方法で焼結したものと特性の比較を行った。
【0055】この場合も、合金成分である銅の偏析が生
じにくいため、焼結体の諸特性のばらつき、特にロック
ウェル硬度や圧環強度のばらつきが少なくなった。
【0056】また、微粉の銅粉を仕上げ還元を施す前の
鉄粉と混合し、仕上げ還元と銅粉の拡散付着を兼ねて還
元性雰囲気で熱処理する方法も考えられるが、微粉の銅
粉で商業的に採用できそうなものは、せいぜい平均粒子
径10μ後のもので、酸化物の場合は鉄粉粒子の表面に
均一に付着しているのに対し、取り扱いの途中で偏析を
生じる可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による粉末冶金用鉄基銅複合粉末におい
て、鉄粉と酸化銅を混合し、加熱還元して拡散付着させ
た状態の原子顕微鏡写真(×1500)である。
【図2】市販酸化銅および市販銅粉を混合し、加熱還元
して拡散付着させた状態を図1と比較して示す原子顕微
鏡写真である。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】仕上還元を行っていない粉末冶金用鉄粉に
    対し、平均粒子径が5μm以下で、かつ、比表面積が1
    0m 2 /g以上である酸化銅を、金属銅換算量で10〜
    50重量%となるように混合し、還元雰囲気中700℃
    〜950℃の温度で加熱還元することにより、金属銅を
    鉄粉表面に拡散付着させることを特徴とする粉末冶金用
    鉄基銅複合粉末の製造方法。
  2. 【請求項2】鉄粉と微細な酸化銅を混合するに当たり、
    カーボンを0.15〜5.0重量%添加した請求項1の
    粉末冶金用鉄基銅複合粉末の製造方法。
JP25471094A 1994-09-21 1994-09-21 粉末冶金用鉄基銅複合粉末の製造方法 Expired - Fee Related JP3484674B2 (ja)

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