JP3475759B2 - 非水電解液二次電池 - Google Patents

非水電解液二次電池

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Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は非水電解液二次電池
の、とくにそのマンガンを含むリチウム含有遷移金属酸
化物を正極に用いた場合の負極の構造に関するものであ
る。 【0002】 【従来の技術】近年、飛躍的に進歩する小形電子機器の
駆動用バッテリーとして、より高容量・高エネルギー密
度で、経済的に優れる再充電可能な二次電池の要望がま
すます強くなっている。代表的な二次電池としては、鉛
蓄電池、アルカリ蓄電池、リチウム二次電池(非水電解
液二次電池)等が知られている。特にリチウム二次電池
は高出力・高エネルギー密度の電池として注目されてい
る。 【0003】リチウム二次電池用負極には当初リチウム
金属や合金が検討されていたが、安全性の観点から最近
は負極に炭素を用いたリチウム二次電池が主流となり、
数社で商品化されている。その場合、負極には反応に関
与するリチウムが含まれないため、正極には、リチウム
を含有する化合物、例えば、リチウムコバルト酸化物
(LiCoO2)、リチウムニッケル酸化物(LiNi
2)、リチウムマンガン酸化物(LiMn24)が通
常用いられる。中でも安価な材料として、特公平4−3
0146号公報に開示されたようなスピネル型構造を有
するリチウムマンガン酸化物LiMn24が注目され、
これを正極活物質とするリチウム二次電池の開発が盛ん
である。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このリ
チウムマンガン酸化物は、充放電サイクルや高温保存に
よってマンガンイオンが電解液中に溶出し、負極表面上
でリチウム及び電解液とで何らかのマンガン化合物を生
成、堆積しそれに伴うサイクル特性の劣化や保存後の容
量劣化が大きいという課題があった。 【0005】負極上でのマンガン化合物の堆積によるサ
イクル特性の劣化、または保存後の容量劣化の原因とし
ては、マンガン化合物が堆積することにより負極表面全
体が覆われ、負極活物質が直接電解液と接触できないこ
とや、堆積によって電池の内部抵抗が上昇し、充放電過
程における分極が大きくなるためであると考えられる。 【0006】また、マンガン溶出の原因としては、リチ
ウムマンガン酸化物中の3価のマンガンイオンが不均化
反応によって2価と4価になり、そのうちのマンガン2
価イオンが電解液に溶出しているという考察(Solid Sta
te Ionics,69,(1994)56-67)や、電解液が電極上で電気
化学的に酸化されその副生成物がリチウムマンガン酸化
物と反応してマンガン2価イオンを溶出しているという
考察(J.Electrochem.Soc.,143,(1996)2204-2211)などが
ある。 【0007】いずれにしても電解液中に溶出したマンガ
ンイオンが負極上で化合物となって極板表面全体を被覆
し電池内部抵抗を上昇させることにより、電池特性が低
下していると考えられる。 【0008】本発明はこのような課題を解決するもので
あり、電池の保存時、あるいは充放電サイクル時に正極
に含まれるマンガンイオンが負極の表面全体に析出し電
池の内部抵抗を上昇することを防止するものである。 【0009】 【課題を解決するための手段】本発明は、リチウムイオ
ンを含む非水電解液と、リチウムを含有し、少なくとも
マンガンを含む遷移金属酸化物からなる正極と、リチウ
ムイオンを吸蔵、放出可能な材料を用いた負極とを備え
た非水電解液二次電池であって、前記負極は表面に台状
の凸部を複数個有し、隣り合う凸部間の間隔が0.5m
m以上5mm以下であるとともに、負極合剤の密度は凸
部が凹部に比べて小さくなりその密度差が凸部の20%
以下であるものである。 【0010】 【発明の実施の形態】本発明の非水電解液二次電池は、
マンガンを含む遷移金属酸化物からなる正極を用いた場
合に負極表面に台状の凸部を複数個設けたものであり、
凹凸を有さない負極では表面全体にマンガン化合物が堆
積するのに比べ、台状の凸部を備えた負極は凸部にマン
ガン化合物が堆積しやすくなるために、電池の内部抵抗
の上昇を防止し、充放電時の分極を抑制して電池特性の
劣化を低減させることができる。 【0011】図1に本発明の負極板を示す。図1(A)
は上面からみた図であり、(B)は(A)のA・A’断
面図である。 【0012】負極に凹凸部を施す手段としては、あらか
じめ圧延用ローラーに凹凸加工を施すことや、最終圧延
時に凹凸を有するシートの間に挟んで圧延する方法など
が挙げられるが、これらに限定するものではない。 【0013】また、台状の凸部の形状は図1に示した四
角柱型の他、くさび型、四角錐型、三角錐型、編み目模
様、などが挙げられるが、これに限定するものではな
い。 【0014】本発明において、隣り合う凸部間の間隔は
0.5mm〜5mmであるが、特に好ましくは、0.8
mm〜3mmである。0.5mm以下では凹凸を施す際
に凸部をつぶしてしまう可能性があり、5mm以上では
凹凸の効果があまり期待できない。 【0015】また凹凸の高さは材料の種類、負極板の厚
みによって異なるが、凹部と凸部での合剤密度の差が2
0%以内であることが好ましい。合剤密度の差が20%
以上になると充放電の過程において、均一な反応が期待
できないためである。よって20%を超えない範囲でな
るべく大きな凹凸差が好ましい。 【0016】なお本発明の対象とする負極板の材料は、
リチウムイオンを吸蔵、放出できる化合物であればよ
い。特にリチウム金属合金、炭素質化合物、無機酸化
物、無機カルコゲナイド、金属錯体有機高分子化合物が
好ましい。これらは、単独でも組み合わせて用いても良
い。 【0017】また、正極活物質に使用する化合物は少な
くともマンガンを含有し、可逆的にリチウムイオンを吸
蔵、放出できる遷移金属酸化物が対象であり、遷移金属
酸化物の製造方法、出発原料、混合比率、及び、第三元
素の添加は特に限定されるものではない。 【0018】電解液の溶質としてはLiAsF6、Li
BF4、LiClO4、LiCF3SO 3、を用いることが
できるが、二次電池の特性を考慮すればLiPF6、L
iCF 3SO4が特に好ましい。 【0019】また、使用可能な溶媒として、プロピレン
カーボネート(PC)、エチレンカーボネート(E
C)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチル
カーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DE
C)、ジメトキシエタン(DME)、ビニレンカーボネ
ート(VC)、γ−ブチロラクトン(γ−BL)、テト
ラヒドロフラン(THF)、ジオキソラン(DOX
L)、1,2−ジエトキシエタン(1,2−DEE)、
ブチレンカーボネート(BC)、プロピオン酸メチル
(MP)、プロピオン酸エチル(EP)等が使用でき、
電池設計に応じてこれらの混合溶媒が適宜使用できる。 【0020】 【実施例】以下に本発明の実施例を図面を用いて詳細に
説明する。 【0021】(実施例1)図2に本実施例で用いた円筒
形電池の縦断面図を示す。図において正極板と負極板は
セパレータを介して渦巻き状の極板群1とされ、この極
板群1は耐非水電解液製のニッケルメッキ鋼板を加工し
た電池ケース2に収納されている。この電池ケース2の
上部は、安全弁を備えた封口板3で封口されている。 【0022】また、正極からは正極リード4が引き出さ
れて封口板3に接続されており、負極からは負極リード
5が引き出されて電池ケース2と接続されている。図2
中6は電池ケース2と封口板3との間を絶縁する絶縁パ
ッキング、7はケース2の内底部と極板群1の下部との
間に位置させた絶縁板である。以下負、正極板等につい
て詳しく説明する。 【0023】負極板はリチウムイオンを吸蔵、放出する
材料としてメソフェーズ小球体を2800℃の高温で黒
鉛化したもの(以下メソフェーズ黒鉛と称す)を用い
た。メソフェーズ黒鉛100重量部に、フッ素系樹脂結
着剤10重量部を混合しカルボキシメチルセルロース水
溶液に懸濁させてペースト状の負極合剤にした。そして
この負極合剤を厚さ0.015mmの銅箔に塗着し、乾
燥させた。 【0024】乾燥後の極板を幅50mm、長さ400m
mに切り出し、あらかじめ極板厚みが0.255mmに
なるように圧延ロールで圧延した。次にこの極板を図3
に示すような凹凸部を施した圧延ローラーで圧延を行っ
た。 【0025】図3に圧延ローラーの表面形状を示す。図
3(A)に上面から見た図、(B)に(A)の断面図を
示す。表面凸部は高さ0.05mm、縦・横それぞれ2
mmとし、凸部間距離を1mmとした。この圧延により
負極板は凹凸状に成形され、最終極板厚みが凹部で0.
228mm、合剤密度1.21g/cc、凸部で0.2
46mm、合剤密度1.12g/ccとなり、凹凸差が
0.018mm、合剤密度の差が7.4%となる極板を
得た。この成形された極板を幅39mm、長さ410m
mに切り出し負極板とした。 【0026】正極は、リチウム含有遷移金属酸化物とし
てスピネル型リチウムマンガン酸化物を用いた。スピネ
ル型リチウムマンガン酸化物(LiMn24)は炭酸リ
チウム(Li2CO3)とMn34をLiとMnのモル比
が1:2になるように混合して混合物を調製し、酸素雰
囲気中850℃で30時間焼成して得た。これを分級
し、平均粒径5μmのものを用いた。 【0027】このようにして得られた正極粉末100重
量部にアセチレンブラック3重量部とフッ素系樹脂結着
剤7重量部を混合し、カルボキシメチルセルロース水溶
液に懸濁させてペースト状にした。このペーストをアル
ミ箔の両面に塗着した。ついで、これを250℃で乾
燥、圧延して極板厚み0.200mmとし、幅37m
m、長さ390mmに切り出して正極板とした。 【0028】これらの正極板と負極板をポリプロピレン
製のセパレータを介して渦巻き状に巻回し、非水電解液
とともに直径17mm、高さ50mmのケースに収納し
た。このようにして作製した電池を本発明の非水電解液
二次電池A1とした。 【0029】ここで電解液はエチレンカーボネートとエ
チルメチルカーボネートとの等容積混合溶媒に6フッ化
燐酸リチウム(LiPF6)を1mol/L溶解したも
のを用いた。 【0030】(実施例2)(実施例1)で負極板の成形
工程において、あらかじめ極板厚み0.450mmに圧
延した極板を、直径1mmの穴を1.5mm間隔で施さ
れ、厚み0.030mmのステンレス製パンチングメタ
ル板2枚で極板をはさみ、圧延ローラで圧延を5回行っ
た。この圧延により極板の最終厚みが凹部で0.224
mm、合剤密度1.23g/cc、凸部で最終極板厚み
が0.244mm、合剤密度1.13g/cc、凹凸差
が0.020mm、合剤密度の差が8.1%となる極板
を得た。この成形された極板を幅39mm、長さ410
mmに切り出し、負極板とした他は(実施例1)と同様
にして本発明の非水電解液二次電池A2とした。 【0031】(比較例1)(実施例1)で塗着・乾燥し
た負極板を圧延ローラを用いて極板厚み0.250m
m、合剤密度1.10g/ccにしたものを用いて負極
板にした。その後、(実施例1)と同様にして比較の非
水電解液二次電池B1を作製した。 【0032】(比較例2)(実施例1)で塗着・乾燥し
た負極板を圧延ローラを用いて極板厚み0.230m
m、合剤密度1.20g/ccにしたものを用いて負極
板にした。その後(実施例1)と同様にして比較の非水
電解液二次電池B2を作製した。 【0033】これら本発明の非水電解液二次電池A1、
A2及び比較の非水電解液二次電池B1、B2の負極板
の凹部・凸部の密度差、高低差及び表面積を(表1)に
まとめる。 【0034】 【表1】【0035】次に、本発明の電池と比較の電池を5時間
率相当の定電流で充電電圧4.3V、放電終止電圧3.
0Vで3サイクル充放電させ、3サイクル目の放電容量
を初期容量、また、3サイクル目の内部抵抗を初期内部
抵抗とし、その後充電状態にして60℃で20日間の加
速保存試験を行った。保存後、最初の放電容量を維持容
量、次のサイクルの容量を回復容量として初期容量に対
するそれぞれの容量維持率・容量回復率、及び初期内部
抵抗に対する内部抵抗増加率を(表2)に示す。 【0036】 【表2】 【0037】(表2)から、比較の非水電解液二次電池
では容量維持率が24〜25%、容量回復率が28%
と、加速温度試験後は電池としての特性が得られていな
い。また、保存後の内部抵抗も1Ωを越えて、その増加
率は500%を越えている。これらの比較の電池を分解
してみると、負極合剤とセパレータが密着しており、負
極芯材から剥がれてしまい、負極合剤とセパレータの間
にはマンガンとリチウムと電解液からなると思われる白
色ゼリー状の化合物が認められた。 【0038】これに対して、本発明の電池はA1、A2
共に、容量維持率が71〜75%、容量回復率も79〜
83%となり比較の電池に比べ維持率・回復率がともに
高く、また、内部抵抗増加率も38〜54%と比較の電
池に比べはるかに小さいことがわかる。これら本発明の
電池を保存後分解してみると、負極板とセパレータは容
易に剥がすことができ、負極合剤が負極芯材から凸部に
沿って剥がれがみられた。残った負極板の凹部全体には
白色ゼリー状の化合物が認められた。 【0039】上記の結果から、60℃、20日間の加速
保存試験によって、正極板のスピネル構造を有するリチ
ウムマンガン酸化物からマンガンイオンが電解液中に溶
出し、負極板表面で白色ゼリー状のマンガン化合物を形
成するが、本発明の電池の負極板では優先的に凸部にマ
ンガン化合物が堆積するために、凹部ではほとんどマン
ガン化合物が堆積せず、このマンガン化合物の堆積によ
る内部抵抗上昇を抑制し、結果的に保存後の放電維持・
回復率が高いものと考えられる。 【0040】本発明の電池と比較の電池を0.2C相当
の定電流で充電電圧4.3V、放電終止電圧3.0Vで
300サイクル充放電試験を行った。その結果を(表
3)に示す。 【0041】 【表3】 【0042】(表3)から本発明の電池および比較の電
池とも徐々に劣化しているが、300サイクル後の放電
容量維持率は比較の電池では72〜74%であるのに対
して、本発明の電池は300サイクル後も85%以上と
非常に高かった。この結果も本発明の電池の方が300
サイクル後の内部抵抗上昇率がはるかに小さかったこと
から加速保存試験と同様の効果があったと考えられる。 【0043】 【発明の効果】以上のように、本発明は正極にマンガン
を含む遷移金属酸化物を用いた場合に、負極の表面に台
状の凸部を複数個形成し、隣り合う凸部間の間隔が0.
5mm以上5mm以下とするとともに、負極合剤の密度
は凹部に比べて凸部を小さくし、その密度差を凸部の2
0%以下としたものであるので、電池の保存時や充放電
サイクル時に正極から溶出したマンガンイオンを、負極
表面の凸部に選択的に化合物として堆積させるので、負
極表面全体がマンガン化合物で覆われることを防止し
て、電池の内部抵抗の上昇を抑制することができ、電池
の充放電サイクル特性および高温保存特性を向上させる
ことができる。
【図面の簡単な説明】 【図1】(A)本発明の極板の上面図 (B)同極板の断面図 【図2】本発明の円筒形電池の縦断面図 【図3】(A)本発明の負極板作製に用いたローラーの
一部上面図 (B)同ローラーのAA’間の断面図 【符号の説明】 1 電池ケース 2 封口板 3 絶縁パッキング 4 極板群 5 正極リード 6 負極リード 7 絶縁リング
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平9−147835(JP,A) 特開 平9−190820(JP,A) 特開 平9−283139(JP,A) 特開 平8−7882(JP,A) 特開 平4−43572(JP,A) 特開 平10−172537(JP,A) 特開 平8−96795(JP,A) 国際公開96/027910(WO,A1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01M 4/02 H01M 10/40

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 リチウムイオンを含む非水電解液と、リ
    チウムを含有し、少なくともマンガンを含む遷移金属酸
    化物からなる正極板と、リチウムイオンを吸蔵、放出可
    能な材料を用いた負極板を備え、前記負極表面に負極合
    剤からなる台状の凸部を複数個有し、隣り合う凸部間の
    間隔が0.5mm以上5mm以下であるとともに、負極
    合剤の密度は凸部が凹部に比べて小さくなり、その密度
    差が凸部の20%以下である非水電解液二次電池。
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