JP3472453B2 - スキンケア組成物用水中油型エマルション中の不安定レチノイドの安定化 - Google Patents

スキンケア組成物用水中油型エマルション中の不安定レチノイドの安定化

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、水中油型エマルシ
ョン中にレチノール又はその短鎖エステルを含有するス
キンケア組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】天然及び合成ビタミンA誘導体は、種々
の皮膚障害の処置において広く使用され、かつ皮膚の補
修剤又は再生剤として使用されている。レチノイン酸
は、種々の皮膚状態、例えばにきび、しわ、乾癬、年齢
によるしみ及び変色を処置するために使用されている。
例えば、バールクイスト(Vahlquist),A.
等、J.Invest.Dermatol.Vol.9
4、ホーランド(Holland)D.B.及びクンリ
フェ(Cunliffe),W.J.(1990)、4
96〜498ページ;エリス(Ellis),C.N.
等、「ファルマコロジー・オブ・レチノールズ・イン・
スキン(Pharmacology ofRetino
ls in Skin)」、バーゼル(Vasel)、
カルガー(Karger)、Vol.3、(198
9)、249〜252ページ;ロヴェ(Lowe),
N.J.等、「ファルマコロジー・オブ・レチノールズ
・イン・スキン」、Vol.3(1989)、240〜
248ページ;PCT特許出願第(WO)93/197
43号明細書参照。
【0003】レチノール又はレチノールの短鎖エステル
の使用は、レチノイン酸よりも有利であると考えられて
いる。レチノールは、人体内で自然に生じ、通常の上皮
細胞分化に必須である内因性化合物である。レチノール
の短鎖エステルは、生体内で加水分解して、レチノール
を生じる。レチノール及びレチニルエステルは、レチノ
イン酸よりも安全であると考えられる。
【0004】長鎖レチニルエステル、特にレチニルパル
ミテートは、スキンコスメティック組成物において広く
使用されている。このような組成物は、例えば、チェズ
ブラフ−ポンズ(Chesebrough−Pond’
s)により製造されたエージ・デファイング・コンプレ
ックス(Age Defying Complex)R
のような水中油型エマルションであってよい。しかしな
がら、本発明の関与により、レチノール又はレチノール
の短鎖エステルが、レチニルパルミテート(実施例7参
照)のようなレチノールの長鎖エステルよりもより効力
があることが分かった。レチニルパルミテートが生体内
でレチノールに加水分解されず、かつ/又は皮膚に浸透
しないと考えられる。
【0005】残念ながら、レチノール及び短鎖レチニル
エステルは、レチノイン酸又は長鎖レチニルエステルよ
りも不安定である。イドソン(Idson)、「ビタミ
ンズ・アンド・ザ・スキン(Vitamins and
the Skin)」、コスメティックス&トイレタ
リーズ(Cosmetics & Toiletrie
s)、Vol.108、1993年12月、79〜94
ページ、アルアード・パブリッシング・コーポレーショ
ン(Allured PublishingCor
p.)(1993);ホフマン−ラ ロチェ(Hoff
man−La Roche)Inc.、データ・シート
(Data Sheet)「ビタミンA−ザ‘ノルマラ
イザー’(Vitamin A−The‘Normal
izer’)」、ロチェ・ビタミンズ&ファイン・ケミ
カルズ(Roche Vitamins & Fine
Chemicals);ホフマン−ラ ロチェ In
c.プロダクト・データ(Product Data)
「ビタミンA・アルコール・ブレンド(Vitamin
A Alcohol Blend)」参照。特に、こ
れらは、水の存在下で迅速に分解する。
【0006】無水レチノール含有組成物は、この技術に
おいて公知である。例えば、デュラック(Dulak)
等、米国特許(U.S.)第4,888,363号明細
書及びウィルモット(Wilmott)等、米国特許第
4,826,828号明細書参照。しかし、このような
組成物は、一般に、水溶性スキンベネフィット成分を、
特にこのような成分が高い量で包含されるべきである場
合でも包含しない。
【0007】レチノールを油相中に含有する油中水型エ
マルションも公知である。例えば、欧州特許第440,
398号明細書(ジョンソン・アンド・ジョンソン)、
国際特許出願(WO)第93/00085号明細書(ジ
ョンソン&ジョンソン)及び欧州特許出願第631,7
72号明細書(ジョンソン&ジョンソン)参照。無水組
成物及び油中水型エマルションの双方の一連の欠点は、
連続相が油相であるので、水中油型エマルションより油
っぽく、かつ化粧品としてあまり興味がひかれないこと
である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】従って、レチノール又
はレチノールの短鎖エステルを、水中油型エマルション
へと処方することが望まれる。しかしながら、(無水系
又は油中水型エマルションに比較して)このような系に
おいて、レチノイドが水性相に、より著しくさらされる
ことにより、このような系で、不安定なレチノイドを安
定化させることはできなかった。例えば、その1ペー
ジ、34〜37行に、水中油型エマルション中のレチノ
イドが「不安定であり...かつ化学的に分解し、かつ
従って、その申し立てられた使用のための時間にわたっ
て役に立たない(are unstable...an
d chemically degrade and
are,therefore,unavailable
over time fortheir alleg
ed utility)」ことが教義されている前記欧
州特許第440,398号明細書参照。前記国際特許出
願(WO)第930085号明細書は、その8ページ、
2〜7行に、次のように教義している;「はっきりと分
からない理由から、市販製品に関する安定性満足度は、
特定な形のエマルション、すなわち油中水型エマルショ
ンを利用することによってのみ、そのうえ特定な安定化
系を使用することによってのみ、ある特定のレチノイド
に関して達成された(For reasons whi
ch are not clearly unders
tood,stability satisfacto
ry for a commercial produ
ct has beenachievable for
certain specific retinoi
ds only by utilizing a sp
ecific form of emulsion,
i.e.water−in−oil,andthen,
only by employing a speci
fic stabilizing system)」。
【0009】本発明は、一部には、可溶化される不安定
レチノイドを含有する油滴を形成するために特定な油相
を使用しかつ油滴のために特定の寸法の結晶のバリア層
を形成するために固体化合物の選択した組合せを使用す
るといったいくつかの重要なパラメータの組合せによっ
て、不安定なレチノイド、すなわち、レチノール又はそ
の短鎖エステルが水中油型エマルション中で安定化され
うるという発見に基づいている。
【0010】結晶バリア層によって取り巻かれた油滴を
形成するために本発明において使用される固体化合物及
び/又は油状物は、スキンケア組成物中で、例えば皮膚
軟化剤として使用されている。これらの組成物のいくつ
かは、レチノイド、よりしばしばレチノイン酸又はレチ
ニルパルミテートも包含する。例えば、ルーマニア特許
(RO)第92、576号明細書、同第93、807号
明細書、同第84、823号明細書;米国特許第3、9
06、108号明細書(Felty等);米国特許53
80764号明細書(Herzog);米国特許第4、
981、845号明細書(Pereira);米国特許
第5、037、850号明細書(Elliott等);
米国特許第4、333、924号明細書(Bowley
等);米国特許第5、492、894号明細書(Bas
com等)の要約参照。しかしながら、このような組成
物は、本発明とは、少なくとも、それらが、定義された
大きさの結晶のバリアによって取り巻かれた油滴内に不
安定なレチノイド(レチノール又はその短鎖エステル)
を含有していない点で異なっている。該先行技術は、レ
チノール又はその短鎖エステルを含有する安定な水中油
型エマルションを提供しない。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明は、一部には、ス
キンコンディショニング用の水中油型エマルションを包
含し、その際、このエマルションは、 (a)エマルションの0.1〜50重量%の、流状油か
ら構成される油滴、及びエマルションの0.001〜1
0重量%の、レチノール及びレチノールのC2〜C3−エ
ステルからなる群から選択されるレチノイド(ここでレ
チノイドは油中に可溶化される)を包含する油相; (b)エマルションの50〜98重量%の水性相;及び (c)エマルションの1〜20重量%のバリア成分(こ
こでバリア成分は、油滴と水性相との間に結晶バリア層
を提供する)を含有し、その際、バリア層中の結晶の大
きさは、顕微鏡結晶定寸試験(後記)によって測定し
て、1μm〜50μmの範囲であり;かつその際、個々
の油敵対バリア層中の個々の結晶の大きさの比は、5:
1〜100:1の範囲であり;かつその際、流状油及び
バリア成分の混合物の融点は、40℃〜100℃の範囲
である。
【0012】ここで使用した「コンディショニング」な
る用語は、乾燥肌、光損傷肌、しわの外観、年齢による
しみ、老化した肌の予防及び処置、角質層柔軟性の増大
及び一般に血色のよい輝き及び肌の質の増強を意味す
る。この組成物は、皮膚落屑及び表皮分化を改善するた
めに使用してもよい。
【0013】本発明によれば、可溶化される不安定レチ
ノイドを含有しかつ定義した大きさの範囲の結晶のバリ
アによって取り囲まれた油滴を考案することによって、
水中油型エマルション中のレチノイドの安定性が実質的
に改善される。レチノイドを含有しかつ結晶バリアによ
って取り巻かれた油滴の存在は、本発明により、融点、
結晶の大きさ及びより詳しく下記する溶解性要件を満た
す流状油及びバリア成分を選択することによって保証さ
れる。
【0014】発明の詳細な説明 全ての量は、他に記載のない限り、水中油型エマルショ
ンの重量によるものである。
【0015】本発明の組成物中に包含される水中油型エ
マルションは、連続水性相中に油滴を含有する。
【0016】油滴は、第一の必須成分として、レチノー
ル及びレチノールのC2〜C3エステルからなる群から選
択されるレチノイドを含有する。実施例7中に記載した
ように、これらの化合物は、レチニルパルミテートより
効力がある。
【0017】ここで使用される「レチノール」なる用語
は、次のレチノールの異性体を包含する;全−トランス
−レチノール、13−シス−レチノール、11−シス−
レチノール、9−シス−レチノール、3,4−ジデヒド
ロ−レチノール。有利な異性体は、全−トランス−レチ
ノール、13−シス−レチノール、3,4−ジデヒドロ
−レチノール、9−シス−レチノールである。最も有利
なものは、その広い市販での入手性により、全−トラン
ス−レチノールである。
【0018】レチニルエステルは、レチノールのエステ
ルである。「レチノール」なる用語は、前に定義したも
のである。本発明で使用するために適当なレチニルエス
テルは、レチノールのC2及びC3エステルであり、レチ
ニルアセテート及びレチニルプロピオネートとしても知
られている。レチニルアセテートは、最も効力があり、
最も市販で入手可能であり、最も安価であるので、特に
有利なエステルである。同じ理由により、本発明で使用
するための最も有利なレチノイドはレチノールである。
【0019】レチノール又はレチニルエステルを、本発
明の組成物において、エマルションの0.001〜10
重量%の量で、有利には0.01〜0.5重量%の量
で、最も有利には0.05重量%〜0.2重量%の量で
使用する。
【0020】本発明のエマルション中の油相の第二の必
須成分は、流状油である。本発明のエマルション中の油
相は、単一化合物又は化合物の混合物から形成されてい
てよい。本発明による油相は、流状であり、かつ貯蔵温
度(典型的には25℃)で、必要量のレチノール又はそ
のC2〜C3エステルを可溶化することができなくてはな
らない。さらに、油相とバリア成分との混合物は、より
詳しく下記する融点試験を満たさなくてはならない。こ
こで使用した「流状」なる用語は、25℃で、油状物の
少なくとも50%が液体であることを意味する。
【0021】油相を形成するための適当な化合物は、こ
れに限定されないが、前記した融点及び溶解性要件を満
たす限り、脂肪酸又は脂肪アルコールのエステル及び炭
化水素、有利には脂肪酸又は脂肪アルコールのモノエス
テルを包含する。最も有利には、流状油は、イソステア
リルパルミテート、トリデシルサリチレート、C12〜C
15オクタノエート、イソプロピルステアレート、イソプ
ロピルミリステート及びイソプロピルパルミテートから
なる群から選択される。
【0022】レチノイドを含有する油滴は、本発明のエ
マルション中に、エマルションの0.1〜50重量%、
有利には1〜30重量%、最も有利には5〜15重量%
の量で包含されていてよい。
【0023】本発明のエマルションの第3の必須成分
は、バリア成分である。ここで使用される「バリア成
分」なる用語は、少なくとも2種類の化合物の混合物を
意味し:第一の化合物は、結晶の形成のために使用され
る化合物(「結晶形成化合物」)であり;第二のもの
は、結晶の大きさを制御するために必要とされる化合物
(「結晶定寸化合物」)である。本発明の関与により、
結晶形成化合物のみを使用する場合、形成された結晶は
大きすぎ(実施例4参照)かつレチノイドはこのような
組成物中で不安定であることが分かった。又、第二の結
晶定寸化合物は、それ自体で十分な大きさの結晶を形成
することはできないが、結晶の大きさを制御することが
分かった(実施例5参照)。結晶形成化合物及び結晶定
寸化合物の共存が、レチノイドを安定化するために必要
である。
【0024】結晶の大きさは、本発明のエマルションの
安定性を確実にするために重要である。油滴を取り巻く
結晶が大きすぎると、結晶は、油/水界面から移行し、
エマルション中に別個のものとして残留する。結晶が小
さすぎると、油相の水への暴露が増大する。どちらの場
合にも、油相中でのレチノイドの安定性は減退する。本
発明のエマルションにおける個々の結晶の平均の大きさ
は、顕微鏡結晶定寸試験によって測定して、1μm〜5
0μmの範囲、有利には1μm〜20μmの範囲及び最
も有利には5μm〜10μmの範囲である。流状相及び
結晶バリアを組成する成分の特性及び量は、結晶の大き
さを決定する。
【0025】顕微鏡定寸試験(Microscopic
Crystal Sizing Test) 意図された流状油及びバリアを形成する化合物は、最終
エマルションのために意図されたものと同じ割合で共溶
融される。共溶融混合物1滴を、カバースリップを有す
る顕微鏡スライド上に置く。顕微鏡で結晶の大きさ及び
形を観察する。結晶は、小さくかつ比較的平滑であるべ
きである(鋭い針のようではない)。大きさを、顕微鏡
写真を撮り、結晶を定規で測り、倍率を考慮に入れるこ
とにより測定する。いくつかの結晶(すなわち、少なく
とも5個の結晶及び有利には少なくとも10個の結晶)
の寸法を計り、平均を求めて、非定型性の結晶又は結晶
のクラスターを測定する危険を避ける。
【0026】初めに、結晶化パターンを、クロスポラー
ル(crosspolar)条件下で光学顕微鏡を用い
て、質的に観察してもよい。初めの観察結果が、結晶が
適当な大きさであるという場合に、前記したような顕微
鏡定寸試験を行う。
【0027】融点 さらに、バリア成分及び流状油は、混合物の融点が40
℃〜100℃の範囲であるような量で選択しなくてはな
らない。融点は、結晶バリアが貯蔵の間に存在し、さら
に、油相が局所適用の間に放出することを保証するため
に、この範囲内でなくてはならない。有利には、混合物
の融点は、40℃〜75℃の範囲、最も有利には45℃
〜55℃の範囲である。さらに、流状油及びバリア成分
の混合物の融点は、かなりシャープでなくてはならな
ず、すなわち、バリア成分及び流状油中の成分が全て互
いに非常に相溶性でなくてはならない。融点における開
きは25℃より上であってはならず、有利には10℃よ
り上であってはならず、最も有利には、融点は示差走査
熱分析(DSC)により測定して、単独シャープピーク
である。
【0028】バリア成分(すなわちバリア層を形成する
少なくとも2種の化合物の混合物)を、本発明の組成物
において、エマルションの1〜20重量%、有利には約
5〜約15重量%、最も有利には約8〜約12重量%の
量で使用する。
【0029】前記したように、本発明によるバリア層
は、少なくとも2種の化合物:結晶形成化合物及び結晶
定寸化合物の相互作用によって形成される。結晶定寸化
合物は、結晶形成化合物の1〜75重量%、有利には5
〜40重量%、最も有利には10〜20重量%の程度で
添加される。
【0030】本発明のエマルション中で使用するための
適当な結晶形成化合物は、これに限定されないが、脂肪
酸、脂肪酸とその石けんとの混合物、脂肪アルコール及
び脂肪酸又は脂肪アルコールのエトキシル化された誘導
体、ステロール(例えばラノリン又はコレステロール)
及びそれらの混合物を包含する。有利には、結晶形成化
合物は、C12〜C22(有利にはC16〜C22)脂肪酸又は
アルコール又はそのエトキシル化された誘導体及びそれ
らの混合物からなる群から選択される。最も有利には、
結晶形成化合物は、パルミチン酸、ステアリン酸、ステ
アリルアルコール、セチルアルコール、ベヘン酸、ベヘ
ニルアルコール、コレステロール及びソルビタンステア
レート及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0031】結晶定寸化合物は、ヒドロキシル化された
脂肪酸又はアルコール(C12〜C22)及びそれらの
誘導体からなる群から選択される。有利には、ヒドロキ
シル化された脂肪酸又はアルコール又は混合物が使用さ
れる。有利な鎖長は、C16〜C22である。最も有利
には、結晶定寸化合物は、グリセリルモノヒドロキシス
テアレート、ヒドロキシステアリン酸、及びそれらの混
合物からなる群から選択される。
【0032】結晶定寸化合物は、結晶バリア層を形成す
る実際の結晶中に含有されていてもいなくてもよい。結
晶定寸化合物は、結晶の大きさを調節し、したがって、
適当な結晶バリアを形成する際に必須であるが、その位
置は、結晶中でも、又は油滴中でも、又は二つの位置の
組合せでもよい。
【0033】本発明のエマルション中の個々の油滴対個
々の結晶の相対的大きさは、5:1〜100:1の範
囲、有利には5:1〜50:1の範囲、最も有利には
5:1〜20:1の範囲である。結晶の大きさは、前記
したような顕微鏡結晶定寸試験により測定される。油滴
の大きさも、顕微鏡結晶定寸試験又は粒径分析器(例え
ば、マステサイザーR(Mastesizer))を用
いて測定されうる。
【0034】油滴及び油滴を取り巻く結晶から形成され
る粒子の全体的大きさも、本発明によれば重要である。
粒子中のレチノイドの半減期は、粒子の大きさに反比例
する。粒子が大きいほど、レチノイドの拡散はゆっくり
である。またエマルションの物理的安定性は、粒径があ
まりに大きすぎる場合に影響を受ける。従って、粒径
は、レチノイドの化学的安定性を達成し、またエマルシ
ョンの物理的安定性を保つようでなくてはならない。本
発明の関与により、容量平均粒径が5μm〜500μ
m、有利には10μm〜50μmの範囲であるべきであ
ることが分かった。
【0035】この粒径は、粒径分析器(マステサイザー
R等)を用い、かつマステサイザーマニュアルに記載さ
れたようにしてd(5.3)又はd(4.3)平均粒径
を測定することにより測定されうる。
【0036】本発明のエマルションの他の必須成分は、
水性相にある。本発明のエマルションの水性相は、少な
くとも20%の水を包含する。しかしながら、本発明の
エマルションの特に有利な点は、これらが大量の水が組
み込んでいてよいということである。有利なエマルショ
ンは、少なくとも40%の水、有利には40%〜95%
の水、最も有利には60%〜70%の水を含有する。水
性相は、場合により、他の水溶性溶剤又は成分を含有し
ていてよい。水性相中に組み込まれる特に有利な水溶性
成分は、より詳しく下記するようなヒドロキシ酸であ
る。水性相の合計は、有利には、エマルションの少なく
とも65重量%、最も有利には少なくとも70重量%で
ある。
【0037】本発明の組成物は、50℃で少なくとも1
5日、有利には20〜45日、最も有利には35〜45
日の半減期を有する。
【0038】「半減期」は、レチノール又はその短鎖エ
ステルが、与えられた温度で、その当初濃度の半分まで
分解するのにかかる時間として定義される。
【0039】本発明による有利な組成物は、皮膚上での
このようなアルコールの乾燥及び刺激作用を避けるため
に、実質的に、メタノール、エタノール又はプロパノー
ルのような低級鎖単純アルコールを有しない。
【0040】組成物のpHは、2.5〜10の範囲であ
る。有利な本発明の組成物は、約6〜約9、最も有利に
は約6.5〜約7.5のpHを有する。
【0041】本発明のエマルションが、複エマルション
を包含する他のエマルションと一緒に混合されていてよ
いことが分かった。さらに、本発明のエマルションは、
本発明の流状油(液状油状物)又はレチノイドを含有し
ない他の油滴を含有していてよい。油相が前記油滴を約
0.1〜約50%含有する水中油型エマルションを含む
限り、その組成物は本発明の範囲内である。
【0042】任意のスキンベネフィット材料及びコスメ
ティック添加物 種々の種類のスキンベネフィット成分が本発明のコスメ
ティックエマルション中に存在していてよい。この範疇
に限定されないが、一般的な例は、抗しわ化合物及び日
焼け止め剤及びなめし剤を包含する。
【0043】特に有利な任意の成分は、ヒドロキシ酸で
ある。本発明のエマルションの利点の一つは、高い量の
水性相を組み込むことができることである。従って、一
般には高い量の水溶性活性剤及び特にヒドロキシ酸が、
レチノイド活性剤と共存していてよい。
【0044】ヒドロキシ酸は、α−ヒドロキシ酸、β−
ヒドロキシ酸、他のヒドロキシカルボン酸(例えば、ジ
ヒドロキシカルボン酸、ヒドロキシジカルボン酸、ヒド
ロキシトリカルボン酸)及びそれらの混合物又はそれら
の立体異性体(DL、D又はL)の組合せから選択され
うる。
【0045】ヒドロキシ酸は、α−ヒドロキシ酸、β−
ヒドロキシ酸(例えばサリチル酸)、他のヒドロキシカ
ルボン酸(例えば、ジヒドロキシカルボン酸、ヒドロキ
シジカルボン酸、ヒドロキシトリカルボン酸)及びそれ
らの混合物又はそれらの立体異性体(DL、D又はL)
の組合せから選択されうる。
【0046】有利なヒドロキシ酸(ii)は、一般式
(1)
【0047】
【化1】
【0048】[式中、Mは、H又は炭素原子1〜27個
を有する飽和又は不飽和の直鎖又は分枝鎖炭化水素鎖で
ある]を有するα−ヒドロキシ酸から選択される。
【0049】さらに有利には、ヒドロキシ酸は、グリコ
ール酸、乳酸、2−ヒドロキシオクタン酸、ヒドロキシ
ラウリン酸及びそれらの混合物から選択される。立体異
性体が存在する場合、L−異性体が最も有利である。
【0050】有利には、本発明によるエマルション中に
存在するヒドロキシ酸成分の量は、エマルションの0.
01〜20重量%、より有利には0.05〜12重量%
及び最も有利には0.5〜8重量%である。
【0051】日焼け止め剤は、紫外線遮断のために一般
に使用される材料のものを包含する。実例となる化合物
は、PABAの誘導体、シンナメート及びサリチレート
である。例えば、オクチルメトキシシンナメート及び2
−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン(オキシベ
ンゾンとしても知られている)を使用することができ
る。オクチルメトキシシンナメート及び2−ヒドロキシ
−4−メトキシベンゾフェノンは、それぞれ、商標名パ
ルソル(Parsol)MCX及びベンゾフェノン−3
で市販で得られる。エマルション中で使用される日焼け
止め剤の正確な量は、太陽のUV放射からの望まれる保
護の程度に応じて変化しうる。
【0052】本発明のコスメティック組成物中の任意の
添加成分は、粘稠剤である。粘稠剤は、通常、エマルシ
ョンの概して0.1〜20重量%、有利には0.5〜1
0重量%の量で存在する。例としての粘稠剤は、商標名
カルボポール(Carbopol)でB.F.グッドリ
ッヒ・カンパニー(Goodrich Compan
y)から得られる架橋ポリアクリレート材料である。キ
サンタン、カラゲナン、ゼラチン、カラヤ、ペクチン及
びイナゴマメゴムのようなゴムを使用してもよい。一定
の環境下で、粘稠機能は、シリコーン又は皮膚軟化剤と
しても役立つ材料によって完成されてもよい。例えば、
10センチストークスを超えるシリコーンゴム及びグリ
セロールステアレートのようなエステルは、二機能性を
有する。
【0053】粉末が、本発明のコスメティック組成物中
に組み込まれていてよい。これらの粉末は、チョーク、
タルク、フラー土、カオリン、デンプン、スメクタイト
クレー、化学的に変性したケイ酸アルミニウムマグネシ
ウム、有機的に変性したモンモリロナイトクレー、水和
ケイ酸アルミニウム、ヒュームドシリカ、アルミニウム
デンプンオクテニルスクシネート及びそれらの混合物を
包含する。
【0054】他の少量の添加成分も、コスメティック組
成物中に組み込まれていてよい。これらの成分は、着色
剤、不透明剤及び香料を包含する。これらの他の少量添
加材料の量は、ほぼエマルションの0.001重量%〜
20重量%で変化してよい。
【0055】さらに、他の成分が結晶の位置を妨げない
ことを保証することは重要であり、例えば、高いHLB
の乳化剤を使用する場合、結晶は破壊されうる。
【0056】組成物の製造 本発明の組成物を製造する有利な方法は、次の工程を包
含する: (1)水性相を用意し、混合しながら75〜80℃まで
加熱し; (2)流状油及びバリア成分化合物を含有するがレチノ
イドを含有しない油相を用意し、混合しながら75〜8
0℃まで加熱し; (3)油相を水性相へゆっくりと添加し、その際、双方
の相は75〜80℃であり; (4)工程(3)で得られた混合物を75〜80℃で少
なくとも15分間混合し; (5)混合物を50〜55℃まで冷却後に、混合しなが
らレチノイドを添加し; (6)貯蔵容器中に充填する。
【0057】最終組成物がヒドロキシ酸を含有する場
合、ヒドロキシ酸を、有利には、工程(4)の後に、5
0〜60℃で、別に添加する。
【0058】組成物の使用 本発明による組成物は、主として、ヒト皮膚への局所適
用のための製品として、特に皮膚のコンディショニング
及び平滑化、及び乾燥した、しわのある又は老化した肌
の外観を予防又は減少するための薬剤として意図され
る。使用の際に、少量の、例えば1〜100mlの組成
物を、適当な容器又はアプリケータから皮膚の露出面に
適用し、必要に応じて、次いでそれを手又は指又は適当
な装置を用いて皮膚の上に広げかつ/又は擦り込む。
【0059】製品形及びパッケージング 本発明のエマルションを、ローション、液状クリーム、
クリーム又はゲルとして処方することができる。組成物
を、その粘度及び消費者による意図された使用に合わせ
て、適当な容器に充填することができる。例えば、ロー
ション又は液状クリームは、ボトル又はロールボールア
プリケータ又はカプセル又は推進薬駆動エーロゾル装置
又は指での操作に適当なポンプを備える容器中に充填す
ることができる。組成物がクリームである場合、変形不
可能な容器、又はチューブ又は蓋付きジャーのような絞
り出し容器中に簡単に貯蔵することができる。
【0060】本発明は、それ故に、前記したコスメティ
ック上許容性の組成物を含有する密閉容器も提供する。
【0061】
【実施例】次の特定な例で本発明をさらに説明する。
【0062】安定性評価 試験すべき組成物を製造し、ジャー又は高密度ポリエチ
レン(HDPE)チューブ中に充填する。ジャー又はチ
ューブを密封し、貯蔵のために、30℃、41℃又は5
0℃のオーブン中に入れた。50℃で行われた安定性研
究は、促進安定性研究であった。半減期は、50℃:3
0℃:25℃:20℃で1:6:9:18の比で温度に
左右される。例えば、50℃で40日の半減期は、30
℃で8カ月、25℃(標準室温)で1年及び20℃で2
年に相当する。さらに、安定性研究は、下記するような
過剰の酸素の存在下で、不利な条件での試料の貯蔵によ
り促進された。市販試料における最適安定性に関して、
我々は、アルゴン(有利には)又は窒素の不活性雰囲気
中に系を置くことを推奨する。過剰な空気の不在によ
り、レチノール安定性は少なくとも2倍増大する。曝気
条件下で行われる安定性研究のために、チューブ又はジ
ャーに組成物を1/3充填し、2/3ヘッドスペースを
とり、かつそれぞれの時点で曝気した。当初レチノール
の10%より少量が酸化されずに残留されるまで、組成
物を規則的時間間隔で分析する。
【0063】下記の例中の安定性研究を、曝気条件下で
行った。
【0064】我々の研究は、本発明のために評価された
組成物中でのレチノール酸化が、レチノール濃度に関す
る一次動力学(first order kineti
c)に従うことを示した。それゆえに、反応半減期を決
定するために、レチノール濃度(lnC)の自然対数を
貯蔵時間(t)に対してプロットし、かつスロープkを
有する直線を得、その際、kは、時間の逆数単位(re
ciprocal unit)におけるレチノール酸化
速度である。次いで、研究における系中でのレチノール
の半減期(t1/2)を、ln2/k比によって決定す
る。
【0065】HPLCによるレチノールの分析 全ての試料を、高圧液体クロマトグラフィー(ハードウ
エア:ウォーターズ600−MSシステム・コントロー
ラー(Waters 600−MS system c
ontroller)、ウォーターズ 717・オート
サンプラー(Waters 717 autosamp
ler)、ウォーターズ996フォトダイオード・アレ
イ・ディテクター(Waters 966 photo
diode array detector)、ソフト
ウエア:ミレニウム(Millenium)2010)
を用いて、レチノール含量に関して分析した。レチノー
ル分析のために使用したカラムパラメータは次のような
ものであった: カラム: ヌクレオシルC18 5μm(Sigm
a−Aldrich) 250mm×4.6mm カタログ#: Z226181
【0066】 注入容量: 10μl 流量: 1ml/min 運転時間: 10分 検出器: フォトダイオードアレイを用いて325
nmでUV/可視 滞留時間: レチノールに関して約5分。
【0067】標準溶液製造 標準曲線を、レチノール含量に関して試料を分析するた
びに作成した。イソプロパノール中でレチノールブレン
ドを連続的に希釈することによりレチノール標準液を製
造し、最終濃度0、10、20、30、40及び50p
pm(w/w)を有する標準溶液を得た。標準溶液を週
ごとに製造し、−21℃で貯蔵した。
【0068】試料製造 ほとんどの試料はイソプロパノール中での簡単な希釈に
よって製造され、従って、最終レチノール濃度は、標準
曲線の範囲内、有利には約30ppmであった。
【0069】ゴムを含有する濃厚クリームのようなエマ
ルション試料は、製造するのがより困難である。エマル
ションからのレチノールの完全な抽出を保証するため
に、試料を次の方法で処理した:正確に測定した試料約
0.5gを最初に水6〜7gと混合し、かつ渦を生じさ
せ、スラリーを形成した。次いで、イソプロパノール約
10gをスラリーに添加し、次いで第二の渦巻工程を続
けた。次いで、試料をイソプロパノールを用いて最終重
量に至らせた。引き続き、試料を、0.2μm使い捨て
フィルターを備える使い捨てシリンジを用いて濾過し
た。
【0070】全ての試料を、化学天秤を用いて、w/w
ベースで3つ又は5つ製造した。
【0071】HPLCによるレチニルアセテートの分析 レチノールと同様の方法及び同様の移動相を使用する。
レチニルアセテートは、レチノールの約30秒間後に溶
出する。
【0072】実施例1 組成物1、2及び3(全て本発明の範囲内)を製造し
た。
【0073】
【表1】
【0074】組成物を製造するために次の手順を使用し
た: 1.オーバーヘッドミキサー中で混合しながら、水相
(A)を75〜80℃まで加熱する 2.混合しながら、油相(B)を75〜80℃まで加熱
する 3.双方の相が75〜80℃で、油相(B)を水相
(A)へゆっくりと添加する 4.油相の残留物を洗い流すために75〜80℃まで加
熱した(C)からの水を使用する 5.75〜80℃で少なくとも15min.混合する 6.冷却を開始する 7.室温で相(D)を製造し、かつ(ABC)に50〜
60℃で添加する 8.混合しながら、50℃〜55℃でバッチにレチノー
ルブレンド(E)を添加する 9.40℃まで冷却しながら混合する 10.混合しながら40℃で(F)を添加する 11.混合を中断し、かつ貯蔵容器中に充填する。
【0075】観察:組成物1、2及び3は、実質的に、
光学顕微鏡で観察した場合に類似の特性を有した:クロ
スポラール下で観察した場合に、それぞれの液滴の周囲
の明るい複屈折サークルの存在によって決定されるよう
な、結晶バリア層によって取り巻かれた直径約50ミク
ロンの球状油滴。このことは、バルク水性相が個々の結
晶を実質的に含まないという事実によって証明された。
顕微鏡結晶定寸試験を用いて、結晶は、規則的に形づけ
られ、かつ直径約8ミクロンであることが分かった。
【0076】比較例2 比較組成物A、B、C、D、E、F及びG(全て本発明
の範囲外)を製造した:
【0077】
【表2】
【0078】レチノールブレンドはA〜G中に完全に可
溶性又は容易に分散性であった。
【0079】組成物A〜Gはバリア成分を含有しなかっ
た。
【0080】組成物1〜3(実施例1)及び比較組成物
A〜Gの貯蔵安定性を、前記の方法により測定した(曝
気試験を使用した)。得られた結果を、表1、表1A及
び表1Bにまとめる。
【0081】
【表3】
【0082】
【表4】
【0083】
【表5】
【0084】観察:組成物A及びBの貯蔵安定性測定
(表1A)は、レチノールが、油環境において(組成物
A)、水環境におけるよりも(組成物B)より安定性で
あることを示す:Aのt1/2は50℃で34日(30
℃で297日)対Bのt1/2は50℃で2日(30℃
で24日)。意外にも、組成物1〜3は、鉱油中のレチ
ノール(組成物A)と同様のレチノール安定性を示し
た:1、2及び3のt1/2はそれぞれ50℃で20
日、39日及び20日、それぞれ30℃で120日、2
60日、149日である。これらの系が80%w/wの
連続水性相を含有するという事実を考慮すると、組成物
1〜3のレチノール安定化は著しい。レチノールは、本
発明の界面結晶バリアの存在によってエマルション内の
分離した油微環境中に保持されるので、安定である。
【0085】組成物C〜Gは、レチノールが、トゥイー
ン20、ブチレングリコール、グリセリン又はデシルア
ルコールのような極性環境において(t1/2は90℃
でそれぞれ36時間、14時間、19時間及び25時
間)、鉱油のような非極性環境におけるよりも(t1/
2は90℃で77時間)不安定であることを示す。環境
がより極性なほどレチノイドは安定性が低いので、なぜ
レチノール又は短鎖レチノールエステルがレチニルパル
ミテートのような長鎖エステルよりも水性エマルション
系中で低い安定性なのかを理解することができる。レチ
ノール又は短鎖レチノールエステルは、レチニルパルミ
テートのような長鎖エステルよりもより極性であり、よ
り極性である場合、これらは、水のような極性溶剤中
に、長鎖エステルよりも有利に分配される傾向を有す
る。それらが油から極性溶剤中へ分配されればされるほ
どこれらは不安定であり、これは、なぜレチニルパルミ
テートがレチノール又はレチニルアセテートよりもエマ
ルション系中でより安定性であるかを説明している
(B.イドソン(Idson),C&T、Vol 10
8、86ページ:「ビタミンAパルミテート・イズ・ザ
・モースト・スタブル・オブ・アベイレブル・ビタミン
Aエステルズ(vitamin A palmitat
e is the most stable of a
vailable vitamin A ester
s)」、ロチェ(Roche):「レチノール・イズ・
モア・センシティブ・ザン・ファッティー・アシッド・
エステルズ・オブ・ビタミンA(retinol is
more sensitive thanfatty
acid esters of vitamin
A)」参照)。
【0086】比較例3 組成物G1及びH(双方とも本発明の範囲外)を製造し
た。双方の組成物は、レチノールカプセルを含有し、す
なわち、カプセルを形成する硬化したポリアクリル酸/
カラゲナンゲル中に石油ゼリー中のレチノールを分散さ
せ、次いでこれを最終組成物G1又はH中に分散させた
(冷時)。得られる組成物は、本発明の範囲外であっ
た。
【0087】 レチノールカプセルの組成 A スノー・ワセリン 17.1% A レチノールブレンド 3.1% B アキュリン(Aculyn)33溶液(4% pH7まで中和) 45.3% B ゲルカリン(Gelcarin)6P−911(カッパ カラゲナン) 34.5%カプセル製造: レチノール及びスノー・ワセリンを40
〜45℃で混合して、相Aを形成する。予めpH7まで
中和したアキュリン33(ポリアクリル酸)溶液を60
〜70℃まで加熱し、カラゲナンを添加する。BをAに
添加し、低剪断均質化(例えば、デンバー浮選装置)を
用いて650rpmで4分間乳化する。10%KCL及
び0.5%トリトンX−100からなる硬化浴中に一滴
ずつエマルションを注ぐことにより、カプセルを作る。
次いで、カプセルをフィルターペーパ上で乾燥させ、重
量を量り、かつ穏やかな手撹拌により本発明の濃縮エマ
ルションに冷時添加した。表2中に挙げた他の成分を穏
やかな撹拌により冷時添加した。双方の組成物G1及び
H中のレチノール含量は、貯蔵期間の開始時に、0.1
%であると測定された。
【0088】
【表6】
【0089】組成物G1及びHは実施例1の組成物1の
ようなバリア成分を含有するが、それらの成分は、レチ
ノールの回りのバリア層として役立たなかった。それと
いうのも、組成物G1及びHを製造するために、レチノ
ールカプセルが、組成物1に後添加されたからである。
双方の組成物G1及びHは、流状油相中に可溶化される
レチノールを含有したが、この油相は、本発明による結
晶バリア層を形成するバリア成分の組合せにより取り巻
かれていなかった。蛍光顕微鏡写真は、レチノールがカ
プセルのワセリン相内に位置することを示した。光学顕
微鏡法は、均一な界面バリアの存在を示さず、ワセリン
内のランダムに分散された結晶の存在を示した。
【0090】組成物G1及びHの貯蔵安定性を、前記の
方法により測定した(曝気試験を使用した)。得られた
結果を表3にまとめる。
【0091】
【表7】
【0092】表3中の貯蔵安定性結果を、表1中の組成
物1及び2の貯蔵安定性と比較した。組成物G1及びH
との対比により、組成物1及び2は、バリア成分をレチ
ノール液滴の回りに含有した。
【0093】レチノール液滴の回りの本発明のバリア成
分の不在下では、半減期は、50℃で組成物1の20日
から組成物G1の6日に;及び組成物2の39日から組
成物Hの12日に減少した。このことは、本発明の組成
物中でのレチノイドの安定化における、レチノール液滴
の回りのバリア成分の存在の重要な役割の証拠である。
【0094】この例は、本発明の組成物を製造する際に
本発明の方法を使用することの臨界をも明らかにする。
【0095】比較例4 組成物Kを製造した(本発明の範囲外)。この組成物
は、バリア成分中に結晶定寸化合物を含有したが、結晶
形成化合物を含有しなかった。組成物Kは、結晶形成化
合物、すなわちステアリン酸及びステアリルアルコール
が組成物Kに存在しないこと以外、組成物1(pH=
3.6)と同様であった。
【0096】組成物Kの貯蔵安定性を前記の方法により
測定した(曝気試験を使用した)。得られた結果を表4
にまとめる。
【0097】
【表8】
【0098】表4中の貯蔵安定性結果を組成物1及び2
の貯蔵安定性(表1)と比較した。本発明の結晶形成化
合物の不在下で、半減期は、50℃で20日(組成物
1)から4日(組成物K)に減少した。このことは、本
発明の組成物中でのレチノイドの安定化における、結晶
形成化合物の重要な役割の証拠である。組成物Kの顕微
鏡観察は、直径1ミクロンより小さい非常に小さな結晶
の存在を示した(本発明の請求の範囲により記載した範
囲外)。
【0099】比較例5 組成物Lを製造した(本発明の範囲外)。この組成物
は、バリア成分中に結晶形成化合物を含有したが、結晶
定寸化合物を含有しなかった。
【0100】まず、500rpmで45〜55℃で15
分間混合しながら、73℃でBをAへ添加することによ
り、レチノール濃縮物を製造した。次いで、この濃縮物
を、35〜40℃で、相D及びEを含まない実施例1の
組成物1に添加し、約0.1%のレチノール濃度が得ら
れた。アルファヒドロキシ酸を添加して、pH=3.6
を得た。
【0101】 レチノール濃縮物: A 水 DI 59.25% A ケルトロール1000 0.5% A TEA(99%) 0.25% B ベヘン酸 12% B ISP 20% B レチノールブレンド 8% 組成物L: 改変組成物1 74.96% 水 DI 5% グリコール酸(70%) 11.4% アンモニウムヒドロキシド(29%) 2.5% ヒドロキシカプリル酸 0.1% レチノール濃縮物 3.3% 水 DI 2.51% ビスアボロール 0.2% 香料 0.03% 組成物Lの貯蔵安定性を測定した。得られた結果を表5
にまとめる。
【0102】
【表9】
【0103】結晶定寸化合物の不在下で、半減期は、そ
れぞれ50℃で20日(組成物1)から8日(組成物
L)に減少した。このことは、本発明の組成物中でのレ
チノイドの安定化における、結晶定寸化合物の重要な役
割の証拠である。
【0104】結晶定寸化合物の欠乏は、顕微鏡で観察し
た際に、大きな不規則に定寸された結晶(直径約60ミ
クロン)の存在によって明らかになった。
【0105】比較例6 組成物M及びNを製造した(本発明の範囲外)。この組
成物は、レチノールと不相容性の流状油(高分子量シリ
コーン油)を含有した。
【0106】まず、不相容性の油状物(ダウ(Dow)
からの高分子量シリコーン油)中の濃縮レチノール分散
液を製造した。次いで、この濃縮物を50〜55℃で、
相D及びEを除いた組成物1に添加し、約0.05%の
レチノール濃度が得られた。
【0107】 レチノール濃縮物分散液: ダウ200 10000cst流体 79.4% cab−o−sil TS720(シリカ) 9% レチノールブレンド(Roche) 11.6% 組成物M: 改変組成物1 74.96% 水 DI 16.8% レチノール濃縮物分散液 8% ビスアボロール 0.2% 香料 0.03% pH 7.4 組成物N: 改変組成物1 74.96% 水 DI 2.81% グリコール酸(70%) 11.4% アンモニウムヒドロキシド(29%) 2.5% ヒドロキシカプリル酸 0.1% レチノール濃縮物分散液 8% ビスアボロール 0.2% 香料 0.03% pH 3.7 組成物M及びNの貯蔵安定性を測定した。得られた結果
を表6にまとめる。
【0108】
【表10】
【0109】本発明のレチノイド相容性油の不在下で、
半減期は、50℃で20日(組成物1)から4日(組成
物N)及び39日(組成物2)から13日(組成物M)
に減少した。レチノイドは、光学顕微鏡での観察により
明らかになったように不溶性であるシリコーン液滴中へ
レチノイドをトラップするためにシリカを用いることに
より、改変された組成物1の油相中へ拡散されないまま
であった(レチノールは高分子量シリコーン中の別個の
液滴として分散されたがレチノールは可溶化しなかっ
た)。このことは、本発明の組成物中でのレチノイドの
安定化における、流体油の重要な役割の証拠である。
【0110】実施例7 目的 この研究の目的は、次の処方物の効力を評価することで
あった: 1. 8%L−乳酸対8%L−乳酸/0.174%レチ
ニルアセテート(双方ともエマルションベース中) 2. 8%L−乳酸対8%L−乳酸/0.25%レチニ
ルパルミテート(双方ともエマルションベース中) 3. 8%L−乳酸/0.075%レチノール対8%L
−乳酸/0.09%レチニルアセテート(双方ともエマ
ルションベース中) 処置グループ1は、16人の女性被験者(年齢45才以
上)を有し、グループ2及び3はそれぞれ17人の被験
者を有した。
【0111】これらの処方物は、本発明の範囲内ではな
い:この研究は、単にレチノール対レチニルアセテート
対レチニルパルミテートの相対的効力を確認するために
行うのであって、安定性を確認するためではない。
【0112】
【表11】
【0113】それぞれの処置グループ内で、試験製品を
左/右に無作為化した。被験者自身は、家で、一日二回
(朝と晩)12週間、試験製品を適用した。試験は、二
重盲で行った。前腕に中程度のクレピネス(crepi
ness)(しわ外観)を有する50人の女性被験者が
参加した。被験者は、通常の清浄日課を続けたが、ベー
スライン臨検(0週)前の一週間、前腕及び手にモイス
チャライジング製品をなにも塗ってはならないと指示さ
れた。ベースライン、2週、4週、8週及び12週に、
視覚評価(評価は、クレープ状状態及び総合的外観の査
定を包含する)を行った。可能な限り、評価を、一定の
照明の下で、同じ場所で行った。全ての製品は、使用承
諾を確定するためにそれぞれの臨検において計量した。
【0114】査定:臨床評価 次のパラメーターを、養成された査定者によって評価し
た。
【0115】外前腕:クレープ状/しわになった皮膚 −ゆるんだ/表面がたる
んだ/線の入った/しわの寄った皮膚(改善は、よりし
っかりとした、あまり線の入っていない/しわの寄って
いない皮膚を示す)。
【0116】総合的外観(光損傷)−手触り及び総合的
表面特徴に関する領域の状態の全体的査定(改善は、よ
りよい全体的皮膚状態を示す)。
【0117】クレープ状の/しわになった皮膚の0〜9
点評価等級を使用した:軽度1〜3 小さな、環状の細い線 一見して全く観察されない;皮膚をひねるとよりよく見
える 下外前腕/手背の25%より少ない中程度4〜6 明らかな線の入った模様、「膨れた(puffy)」外
観を有する環状の線 25%以上の範囲だが、全ての外前腕/手背ではない高度7〜9 外下前腕/手背の100%範囲まで 非常に明らかな、よく境界づけられた 長い「膨れた」(深さ)縦線 中間−範疇度合いは、完全な範疇増加を保証しない応答
のために割り当てた。
【0118】査定者も研究被験者も、試験した処方物の
正体を知らなかった。
【0119】統計学的分析 未処理データを、ウィルコキソン・サインド−ランク、
プラット・バージョン(Wilcoxon Signe
d−Rank,Pratt version)を行うS
AS−ベース マクロコンピュータープログラム%WS
IGNRNKを用いて分析した。
【0120】統計学的分析を、それぞれの対になった対
製品対照、試験箇所(外前腕、手背)、評価時点及び属
性測定に関して、別々に行った。対になった対照統計的
分析を、それぞれの処置グループに関して行った。差
は、p>95%で統計学的に有意であると判断された。
【0121】処置対照の間の臨床的査定を、次の表7A
〜表7Cにまとめる。
【0122】
【表12】
【0123】
【表13】
【0124】
【表14】
【0125】結果:8%L−乳酸及び0.25%レチニ
ルパルミテートを含有する組成物は、同じベース処方物
中の8%L−乳酸より、クレープ状腕皮膚に明らかな改
善をもたらさなかった。反対に、8%L−乳酸及び0.
17%レチニルアセテートを含有する同じベース処方物
は、同じベース処方物中の8%L−乳酸より(8週でp
>95%)、双方の評点及び強制選択により(後者のも
のの結果はここでは示さない)、クレープ状皮膚に、明
らかに臨床的に確定された改善をもたらした。さらに、
8%L−乳酸及び0.075%レチノールを含有する同
じベース処方物は、同じベース処方物中の8%L−乳酸
及び0.09%レチニルアセテートより(12週でp>
95%)、双方の評点及び強制選択により、クレープ状
皮膚に、明らかに臨床的に確定された改善をもたらし
た。
【0126】結論として、レチニルパルミテートは、ヒ
ドロキシ酸処方物の抗老化効力を増大させなかった一
方、レチニルアセテートは増大させた。この効力はレチ
ニルアセテートの代わりにレチノールを使用した場合に
さらに改善されるので、レチノールが本発明で使用すべ
き最も有利なレチノイドである。
【0127】実施例8 本発明の範囲内である次の付加的組成物を製造した。こ
の組成物は、本発明方法により製造された。これは、コ
スメティック的な使用のために適当である。特に、この
組成物は、その外観及び感触を改善するための、しわの
よった、線の入った、粗い、乾燥した、薄片状の、老化
した及び/又はUV−損傷した肌への適用に、並びにそ
の劣化を妨げ又は遅延するための、健康な肌への適用の
ために適当である。
【0128】
【表15】
【0129】
【表16】
フロントページの続き (72)発明者 アレクサンダー・リツプス イギリス国、ダブリユ・13・0・エイ チ・キユー、ロンドン、イーリング、ア ーガイル・ロード、エドモンズコウト・ 55 (72)発明者 プレム・チヤンダー アメリカ合衆国、ニユー・ジヤージー・ 07624、クロスター、スミス・コート・ 24 (72)発明者 マーク・エドワード・リアーク アメリカ合衆国、ニユー・ジヤージー・ 07076、スコツチ・プレインズ、コンコ ード・ロード・2316 (56)参考文献 特開 平8−193019(JP,A) 特開 昭58−41813(JP,A) 特開 昭58−24325(JP,A) 特開 平7−291847(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A61K 7/00 - 7/48

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 スキンコンディショニング組成物用の安
    定な水中油型エマルションにおいて、エマルションが、 (a)エマルションの0.1〜50重量%の、流状油か
    ら構成される油滴、及びエマルションの0.01〜10
    重量%の、レチノール、レチニルアセテート及びレチニ
    ルプロピオネートからなる群から選択されるレチノイド
    を包含する油相(ここでレチノイドは油中に可溶化され
    る); (b)エマルションの50〜98重量%の水性相;及び (c)エマルションの1〜20重量%の、結晶形成化合
    物及び結晶定寸化合物を含有するバリア成分(ここでバ
    リア成分は、油滴と水性相との間に結晶バリア層を提供
    する)を含有し、 その際、バリア層中の個々の結晶の平均的な大きさは、
    顕微鏡結晶定寸試験によって測定して、1μm〜50μ
    mの範囲であり; かつその際、個々の油滴対バリア層中の個々の結晶の大
    きさの比は、5:1〜100:1の範囲であり; かつその際、流状油及びバリア成分の混合物の融点は、
    40℃〜100℃の範囲であ前記結晶形成化合物は、C12〜C22脂肪酸、C12
    〜C22脂肪酸とその石けんとの混合物、C12〜C2
    2脂肪アルコール、C12〜C22脂肪酸及びC12〜
    C22脂肪アルコールのエトキシル化された誘導体及び
    それらの混合物からなる群から選択され、前記結晶定寸
    化合物は、ヒドロキシル化された脂肪酸、ヒドロキシル
    化された脂肪アルコール、、及びそれらの混合物からな
    る群から選択される、 水中油型エマルション。
  2. 【請求項2】 流状油は、イソステアリルパルミテー
    ト、トリデシルサリチレート、C12〜C15オクタノ
    エート、イソプロピルステアレート、イソプロピルミリ
    ステート及びイソプロピルパルミテートからなる群から
    選択される、請求項1記載のエマルション。
  3. 【請求項3】 レチノイドは、レチノール及びレチニル
    アセテートからなる群から選択される、請求項1又は2
    記載のエマルション。
  4. 【請求項4】 エマルションは、少なくとも40%の水
    を含有する、請求項1からまでのいずれか1項記載の
    エマルション。
  5. 【請求項5】 組成物の水性相がアルファヒドロキシ酸
    を含有する、請求項1からまでのいずれか1項記載の
    エマルション。
  6. 【請求項6】 50℃での組成物中のレチノイドの半減
    期は、少なくとも15日である、請求項1からまでの
    いずれか1項記載のエマルション。
  7. 【請求項7】 請求項1からまでのいずれか1項記載
    の安定な水中油型エマルションの製造方法において、そ
    の方法が、 (1)水性相を用意し、混合しながら75〜80℃の範
    囲の温度で加熱し; (2)流状油及びバリア成分化合物を含有する混合物を
    用意し、混合物を混合しながら75〜80℃の範囲の温
    度まで加熱し; (3)工程(2)の混合物を水性相へゆっくりと添加
    し; (4)工程(3)で得られた混合物を75〜80℃の範
    囲の温度で少なくとも15分間混合し; (5)工程(4)で得られた混合物を50〜55℃の範
    囲の温度まで冷却後に、混合しながらレチノイドを添加
    し; (6)貯蔵容器中に充填する ことを包含する、エマルションの製造方法。
  8. 【請求項8】 さらに、工程(4)の後に、50〜60
    ℃の範囲の温度でヒドロキシ酸を添加することを包含す
    る、請求項記載の方法。
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