JP3468448B2 - コネクタ用ハウジング - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、各種電子機器とワ
イヤーハーネス、或いはワイヤーハーネス間を接続する
際に多用されるコネクタに関し、特に使用環境が厳しく
高い液密性（水密及び油密）が要求される自動車等に好
適なコネクタ用ハウジングに関するものである。

【０００２】

【従来の技術】現在の自動車は各種電子機器を搭載し、
電子機器間の接続にコネクタが用いられている。コネク
タの種類は使用目的に対応して多種にわたるが、以下に
図７および図８を参照して従来のコネクタの一例を説明
する。コネクタ５１は、合成樹脂製のハウジング５２内
に段差状に形成された２段の凹部５３Ａ，５３Ｂ内に複
数の外部接続端子５４Ａ，５４Ｂを２列に配列するとと
もに、外部接続端子５４Ａ，５４Ｂに挟まれるようにし
て、こじり防止リブ５５を設けた構成になっている。こ
じり防止リブ５５の一方の側面には、突出長の短い突起
５６が所定間隔で設けられ、他方の側面には突出長の長
い突起５７が所定間隔で設けられている。突起５６，５
７は、図示を省略した相手方コネクタを凹部５３内に挿
入して接続する際、誤った方向の挿入、すなわち誤接続
を防止するものである。ハウジング５２の外側には、相
手方コネクタの一端に係止して抜け出しを防止する係止
部５８が一体に設けられている。

【０００３】ハウジング５２の内部は、図８に示したよ
うに段差を有する凹部５３Ａ，５３Ｂに形成され、底部
から植立するように外部接続端子５４Ａ，５４Ｂやこじ
り防止リブ５５が設けられている。コネクタ５１の製造
に際しては、図８に示した段階から凹部５３Ｂにシール
剤として作用するエポキシ樹脂等の充填剤を注入（ポッ
ティング）して固化させ、外部接続端子５４Ａ，５４Ｂ
とハウジング５２とを一体化する。この結果、ハウジン
グ５２内のシール性が向上して液密になるとともに、外
部接続端子５４Ａ，５４Ｂの強化も図られる。

【０００４】充填剤を注入する場合、円筒状のノズル５
９を図７にＰで示す四箇所から、図８に示すようにレベ
ルＬのやや下方まで差し込み、図示を省略した充填剤を
矢印でに示すように凹部５３Ｂ内に注入する。そして、
所定量の充填剤を注入した後、ノズル５９を上方に引き
上げる一方、注入した充填剤を固化させる。この結果、
外部接続端子５４Ａ，５４Ｂの基部、換言すれば凹部５
３Ｂ内に介在している部分は、充填剤によりハウジング
５２と一体に固化される。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】前記のように、凹部５
３Ｂへの充填剤を注入し固化することによって、ハウジ
ング５２のシール性が確保されるので、コネクタ５１の
液密性や外部接続端子５４Ａ，５４Ｂの強度向上が図ら
れる。しかし、充填剤の注入に際しては、外部接続端子
５４Ａ，５４Ｂが配列され、こじり防止リブ５５が形成
された狭い凹部５３Ａ内に四本ものノズル５９を挿入す
るので、ノズル５９と外部接続端子５４Ａ，５４Ｂやこ
じり防止部材５５との間に十分な距離を設定できない。
このため、充填剤注入後にノズル５９を引き抜く場合、
充填剤が外部接続端子５４Ａ，５４Ｂの側面や、ハウジ
ング５２の内壁面等に付着し、付着したまま固化されて
しまうことがあった。

【０００６】外部接続端子５４Ａ，５４Ｂには相手方コ
ネクタの接続端子が接続されるのであるから、充填剤が
付着し固化されたままであると接触不良の一因になる。
また、ハウジング５２の内壁面に充填剤が付着し固化さ
れたままであると、凹部５３Ａ内に相手方コネクタを嵌
合しにくくなる。このように、従来のコネクタ５１にあ
っては、製造工程における充填剤の不所望な付着に起因
して、接触不良や嵌合不良等の事故が発生しやすいとい
う問題があった。

【０００７】なお、前記問題点を解消するものとして、
実開昭６２−４９８７７号公報に開示された「コネクタ
用ハウジング」がある。その構成は、相手方コネクタを
嵌合する嵌合口内に電気接続子を収容したハウジングの
側壁に、前記嵌合口と連通して嵌合口の底面側の電気接
続子の基部にシール剤を注入するシール剤注入部を形成
したものである。前記コネクタ用ハウジングによれば、
狭い嵌合口からノズルを挿入したり引き上げたりする必
要はなく、前記問題点を解消することができる。しか
し、前記シール剤注入口は、ハウジングの外側面に突出
して形成されるので、ハウジングが大型になる。現在の
技術的動向の一つに電子部品の小型軽量化があり、前記
構成は実装密度の低下など、新たな問題を発生させる。

【０００８】本発明は前記問題点を解消するものであ
り、その目的はコネクタを大型化させることなく、コネ
クタを構成する部材への充填剤の付着防止やシール性の
向上等図り得るように構成したコネクタ用ハウジングを
提供することにある。

【０００９】

【課題を解決するための手段】本発明に係る前記目的
は、下記（１）〜（２）に記載したコネクタ用ハウジン
グによって達成される。 （１） 相手方コネクタに接続される外部接続端子を設
けた筒状のハウジング内に充填手段を介して充填剤を注
入し、前記充填剤を固化することにより、前記ハウジン
グ内の前記外部接続端子の基部を液密化して構成したコ
ネクタ用ハウジングにおいて、前記充填手段を前記外部
接続端子から離間した位置に案内して位置決めする位置
決め部材が、前記ハウジングと一体に設けられており、
前記位置決め部材は、前記充填手段の挿入部と、前記挿
入部内に注入された前記充填剤を前記ハウジング内に流
入させる排出部とを備えているとともに、前記充填剤の
前記ハウジング内への流動を促進する山型の流動補助機
構を備えていること、を特徴とするコネクタ用ハウジン
グ。

【００１０】（２） 前記位置決め部材は、前記相手方
コネクタとの着脱を行う際のこじりを防止するこじり防
止部材であり、前記こじり防止部材に位置決め部が形成
されていること、を特徴とする前記（１）記載のコネク
タ用ハウジング。

【００１１】前記（１）の構成によれば、前記コネクタ
用ハウジングは、外部接続端子を設けたハウジング内
に、充填剤を注入するための充填手段、例えばノズル等
の位置決め部材を設けたものである。位置決め部材とし
ては、ノズルと外部接続端子、ハウジングの内壁面等と
隔離する構成であればよい。例えば充填剤の排出口を形
成した筒体、ハウジングの内壁面から凹部に突出した筒
体など、種々の構成が可能である。また、前記（１）の
構成によれば、ノズル等の充填手段は、充填時はもとよ
り充填後の引き上げ時においても挿入部により囲われ、
言わば外部接続端子等との間に隔壁が形成されることに
なるので、充填剤の外部接続端子やハウジングの内壁面
への付着を防止することができる。また、前記（１）の
構成によれば、充填剤は排出部から外部接続端子の基部
に確実に流動するので、充填不良を防止できる。排出部
に流動を促進する機能を付加することにより、充填剤の
流れを良好にし、作業効率を向上させることもできる。

【００１２】また、前記（２）の構成によれば、位置決
め手段を新たに設けることなく、前記こじり防止部材を
援用して位置決め部材とすることもできる。これらの位
置決め部材には、ノズルを挿入する挿入部と、該挿入部
とハウジング内の空間とを連通して充填剤を凹部内に流
動させる排出部とが設けられる。

【００１３】

【発明の実施の形態】次に、図１〜図５を参照して本発
明に係るコネクタ用ハウジングの第１実施形態を説明す
る。図１はコネクタの外観構成を示す斜視図、図２は相
手方コネクタの挿入口を示す平面図、図３はハウジング
の要部構造を示す一部拡大斜視図、図４は充填剤の注入
を示す要部の断面図、図５は充填剤の固化状況を示す要
部の断面図である。

【００１４】図１に示すコネクタ１は防水機能を有する
ものであり、合成樹脂により一体成型したハウジング２
には、図示を省略した相手方コネクタを嵌合して通電可
能に接続するための接続部３、相手方コネクタを係止す
るための係止部４等が設けられている。接続部３は、図
２に示すように開口側から見て長方形に形成されたハウ
ジング２Ａ内の中央部に長手方向に沿ってこじり防止リ
ブ１１を形成し、その両側に外部接続端子１２Ａ，１２
Ｂを対向配列した構成になっている。ハウジング２Ａ内
には、図３及び図４に示すように２段の凹部１７Ａ，１
７Ｂが形成され、凹部１７Ａには相手方コネクタが嵌合
され、凹部１７Ｂにはシール剤であるエポキシ樹脂（充
填剤）等が充填される。凹部１７Ａを画成する壁面は、
相手方コネクタが嵌合されたときにシール面として機能
する。そして、凹部１７Ｂに後述する充填剤３１を充填
した後のコネクタ１が完成した状態では、図５に示すよ
う充填剤３１から各外部接続端子１２Ａ，１２Ｂが植立
状に突出するようになる。

【００１５】次に、凹部１７Ｂに充填剤３１を充填する
ための構成と作用を説明する。こじり防止リブ１１の一
方の側面には、突出長の短い突起１３が所定間隔で設け
られ、他方の側面には突出長の長い突起１４が所定間隔
で設けられている。突起１３，１４は、図示を省略した
相手方コネクタを凹部１７Ａ内に挿入して接続する際、
誤った方向の挿入、すなわち誤接続を防止するものであ
る。こじり防止リブ１１には、本発明における充填手段
に相当するディスペンサーノズル２１を挿入するための
挿入孔２２が設けられている。挿入孔２２は平面略円形
であるが、肉薄部分にスリット２３Ａ，２３Ｂが形成さ
れている。挿通孔２２およびスリット２３Ａ，２３Ｂの
深さは、図３および図４に示すようにハウジング２Ａの
底部２Ｂに達している。したがって、挿入孔２２と凹部
１７Ａ，１７Ｂとは、スリット２３Ａ，２３Ｂを介して
連通し、実質的に一つの空間を形成することになり、ス
リット２３Ａ，２３Ｂの下部が本発明でいう排出部に相
当する。

【００１６】凹部１７Ｂに充填剤３１を充填する場合
は、図３に想像線で、また図４に実線で示すように挿入
孔２２内にディスペンサーノズル２１を挿入する。ディ
スペンサーノズル２１の挿入動作は自動的に行われ、挿
入深さは凹部１７Ａ，１７Ｂの境界となる段差１７Ｃの
やや上に設定される。このようにディスペンサーノズル
２１を挿入した後、凹部１７Ｂの容積を勘案して予め設
定された量の充填剤３１を挿入孔２２に充填する。充填
剤３１は、図３および図４に矢印Ｂで示すように挿入孔
２２からスリット２３Ａ，２３Ｂの下部、換言すれば排
出部を抜けて凹部１７Ｂに流入する。一定量の充填剤３
１を充填すると、凹部１７Ｂのほぼ全体、すなわち図４
に点線Ｌで示す位置まで充填剤３１で満たされる。

【００１７】ディスペンサーノズル２１は、一定量の充
填剤３１を流入した後は、自動的に引き上げられ、挿入
孔２２から抜き取られる。そして、凹部１７Ｂ内に充填
された充填剤３１を固化することにより、図５に示すよ
うに凹部１７Ｂ全体が充填剤３１によって埋められ、そ
の表面から外部接続端子１２Ａ，１２Ｂやこじり防止リ
ブ１１が凹部１７Ａ内に突出した形態になり、外部接続
端子１２Ａ，１２Ｂの防水性、ぐらつき防止などが確保
される。

【００１８】前記コネクタ用ハウジングによれば、充填
手段であるディスペンサーノズル２１は、充填後に挿入
部２２に囲まれた状態で引き上げられる。故に、ディス
ペンサーノズル２１の先端に充填剤３１が付着していた
り、或いは完全に切れずに糸引き状に残っていても、外
部接続端子１２Ａ，１２Ｂやハウジング２Ａの内壁面に
付着するようなことはない。また、挿入部２２はガイド
機能を果たすので、ディスペンサーノズル２１のぶれも
防止され、前記付着を完全に防止できるとともに、ディ
スペンサーノズル２１の変形防止機能も有する。したが
って、本実施形態によれば、従来のコネクタの問題点を
一挙に解消し得るできるだけでなく、ディスペンサーノ
ズル２１の保護も行われる。

【００１９】次に、図６を参照して本発明の第２実施形
態を説明する。なお、本実施形態と前記第１実施形態と
の相違点は、排出部に充填剤の流動を促進するための流
動補助機構を設けたことにある。したがって、前記第１
実施形態と同様の作用を行う部材には同一の符号を付す
とともに、図６に要部の構成を拡大して図示する。

【００２０】本実施形態では、挿入口２２の下端に山型
の流動補助機構３２を設けた。この構成によれば、ディ
スペンサーノズル２１から流出する充填剤は、流動補助
機構３２の下り斜面に沿って外側に流れ、両側の斜面の
外側に形成された凹部１７Ｂに流入する。

【００２１】この構成によれば、挿入孔２２の下部に流
出した充填剤が滞留することがなく、充填を効率的に行
うことができる。また、流動補助機構３２の体積に対応
して充填剤を節約することができる。流動補助機構３２
の形状は前記に限定されず、例えば底辺の端部を外部接
続端子１２Ａ，１２Ｂの近傍まで延長してもよい。

【００２２】なお、前記各実施形態では、充填手段の位
置決め部材としてこじり防止リブ１１が援用されている
が、位置決め手段を別に設けてもよい。例えば、ハウジ
ング２Ａの内側面の一部を柱状に突出させて、その内部
に挿入孔を形成するとともに排出部となるスリットを形
成した構成にすることができる。また、ハウジング内の
空きスペースを利用して柱状体を形成し、その内部に挿
入孔を形成するとともに排出部を形成した構成であって
もよい。以上のように、本発明における位置決め部材は
こじり防止リブ１１を援用した構成に限定されず、種々
の構成が可能である。

【００２３】

【発明の効果】以上のように本発明は、相手方コネクタ
に接続される外部接続端子を設けた筒状のハウジング内
に充填手段を介して充填剤を注入し、前記充填剤を固化
することにより、前記ハウジング内の前記外部接続端子
の基部を液密化して構成したコネクタ用ハウジングにお
いて、前記充填手段を前記外部接続端子から離間した位
置に案内して位置決めする位置決め部材が、前記ハウジ
ングと一体に設けられており、前記位置決め部材は、前
記充填手段の挿入部と、前記挿入部内に注入された前記
充填剤を前記ハウジング内に流入させる排出部とを備え
ているとともに、前記充填剤の前記ハウジング内への流
動を促進する山型の流動補助機構を備えているので、充
填手段は位置決め手段により適正な充填位置に位置決め
され、充填剤の注入に続いて充填手段を引き上げる際
に、充填剤が外部接続端子やハウジングの内側面に付着
することがなく、外部接続端子の接続不良やハウジング
内への相手方コネクタの嵌合不良等を未然に防止するこ
とができる。更に、位置決め部材はハウジング内に形成
されるので、ハウジングの大型化、ひいてはコネクタを
大型化することがなく、コネクタを使用する自動車等の
装置、電子機器の実装密度を向上させることができる。
また、前記位置決め部材が、充填手段の挿入部と充填剤
の排出部とを備えていることにより、充填手段は挿入部
によってガイドされながら挿入され、挿入部によってガ
イドされながら引き出され、更に充填剤は外部接続端子
の基部に確実に流動する。また、前記位置決め部材は、
充填剤の流れを促進する流動補助機構を備えていること
により、挿入部から排出部、さらにハウジング内への充
填剤の流動を円滑化することができ、充填作業の効率
化、言い換えれば作業時間の短縮等が可能になる。

【００２４】また、前記位置決め部材がこじり防止部材
と兼用され、こじり防止部材に位置決め部が形成されて
いることにより、ハウジングに新たな部材を付加するこ
となく位置決め部材を構成できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係るコネクタ用ハウジングの第１実施
形態を示す斜視図である。

【図２】コネクタの形状を示す平面図である。

【図３】コネクタの構成を示す要部の拡大斜視図であ
る。

【図４】充填剤の充填作用を示す要部の拡大断面図であ
る。

【図５】充填剤の充填状況を示す要部の拡大断面図であ
る。

【図６】本発明の第２実施形態を示すコネクタの要部の
拡大断面図である。

【図７】従来のコネクタの構成を示す平面図である。

【図８】従来のコネクタの構成を示す要部の断面図であ
る。

【符号の説明】

１ コネクタ ２ ハウジング ２Ａ 接続部のハウジング ３ 接続部 １１ こじり防止リブ １２Ａ，１２Ｂ 外部接続端子 １７Ａ，１７Ｂ 凹部 ２１ ディスペンサーノズル ２２ 挿入孔 ２３Ａ，２３Ｂ スリット ３１ 充填剤 ３２ 流動補助機構 Ｂ 充填剤の流動経路

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) H01R 13/52 301

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 相手方コネクタに接続される外部接続端
   子を設けた筒状のハウジング内に充填手段を介して充填
   剤を注入し、前記充填剤を固化することにより、前記ハ
   ウジング内の前記外部接続端子の基部を液密化して構成
   したコネクタ用ハウジングにおいて、 前記充填手段を前記外部接続端子から離間した位置に案
   内して位置決めする位置決め部材が、前記ハウジングと
   一体に設けられており、 前記位置決め部材は、前記充填手段の挿入部と、前記挿
   入部内に注入された前記充填剤を前記ハウジング内に流
   入させる排出部とを備えているとともに、 前記充填剤の前記ハウジング内への流動を促進する山型
   の流動補助機構を備えている こと、を特徴とするコネク
   タ用ハウジング。
2. 【請求項２】 前記位置決め部材は、前記相手方コネク
   タとの着脱を行う際のこじりを防止するこじり防止部材
   であり、前記こじり防止部材に位置決め部が形成されて
   いること、を特徴とする請求項１記載のコネクタ用ハウ
   ジング。