JP3463871B6 - 電波腕時計の文字盤 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、電波腕時計の文字盤に係り、特に、電波透過性が良好であり、かつムーブメントに対して高精度に取り付けることができ、しかも高級感を付与するのも容易な電波腕時計の文字盤に関する。
【0002】
【従来の技術】
アナログ表示式腕時計の表示精度は、文字盤とムーブメント(時計ユニット)との位置決め精度に大きく依存する。すなわち、ムーブメントが如何に正確に時を刻もうとも、文字盤とムーブメントとの位置決め精度が悪ければ、ムーブメントに結合される指針(例えば、秒針)は文字盤上の目盛りを正確に指し示さないから、結果として表示精度は低下する。
【0003】
文字盤下面の位置決めピンとムーブメント上面の位置決め孔との嵌合による位置決め構造は最も簡単で精度を出し易い位置決め構造として、多くのアナログ表示式腕時計に採用されている。文字盤を構成する薄板片の材質としては黄銅等の金属が使用され、位置決めピンの規格外径は通常0.75mmとされる。位置決めピンは文字盤を構成する金属製薄板片の下面にスポット溶接される。
【0004】
ところで、時計ケースの中に時刻電波受信アンテナを内蔵する所謂アンテナ内蔵型電波腕時計にあっては、内蔵アンテナによる時刻電波の受信を阻害しない配慮から、金属製文字盤を採用することができない。
【0005】
文字盤の材質として、電波透過性の良好なガラス、プラスチック、貴石等を採用すると、スポット溶接による位置決めピンの固定は不可能であるから、文字盤とムーブメントとの位置決めのためには、新たに別の位置決め構造を採用せざるを得ない。
【0006】
別の位置決め構造の一例が図5並びに図6に示されている。それらの図において、1Aは薄板状文字盤本体部、2Aは位置決め用突部、100Aは文字盤、200Aはムーブメント、301は窓ガラス、302は文字盤保持リング(ムーブメントとは、噛み合わせ等により位置決めされている)、303は時計ケース本体、304は時計ケース裏蓋、305は文字盤押えリング、306はソーラパネルである。時計ケース本体303並びに時計ケース裏蓋304の材質としては、ケース内蔵アンテナによる時刻電波の受信を阻害しない配慮から、電波透過性の良好なプラスチックやセラミック等が使用される。
【0007】
同図から明らかなように、この位置決め構造にあっては、薄板状文字盤本体部1Aの外周に形成した位置決め用突部2Aと時計ケース本体303の内周に配置された文字盤保持リング302や文字盤押えリング305との噛み合わせ等により、文字盤100Aとムーブメント200Aとの位置決めを行っている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような非金属文字盤(ガラス、プラスチック、貴石等)に適用される従来の文字盤とムーブメントとの位置決め構造にあっては、両者間に別部品を介在することから、位置決め精度が上がらないこと、文字盤保持リング302や文字盤押えリング305といった多くの位置決め用部品が必要で構造が複雑であること、ケースの形状が変更されるたびに位置決め用部品の金型を製造し直す必要がありその都度大きな初期費用が掛かること、金属製文字盤に比べて高級感に欠けること、といった問題点が指摘されている。
【0009】
この発明は、上述の問題点に着目してなされたものであり、その目的とするところは、ケース内蔵アンテナによる時刻電波の受信を阻害することがなく、文字盤とムーブメントとを正確に位置決めすることができ、位置決めのために別部品が不要であり、しかも外観上の高級感を付与することができる電波腕時計の文字盤を効率よく製造することが可能な電波腕時計用文字盤の製造方法を提供することにある。
【0010】
この発明の他の目的又は作用効果については、以下の明細書の記述を参照することにより、当業者であれば容易に理解されるであろう。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明により製造される電波腕時計の文字盤は、上側プラスチック板と下側プラスチック板とを金属蒸着膜を介して積層接着してなる二層構造を有し、かつ上側プラスチック板は透明又は半透明とされており、それにより、金属蒸着膜の有する金属色が上側プラスチック板を透けてその上面へと露呈し、かつ下側プラスチック板により金属蒸着膜の保護並びに位置決めピンの支持がなされるものである。このように文字盤の表面が淡い金属色を呈すると、特に高級感が得られることが経験的に知られている。
【0012】
ここで、『位置決めピン』の材質としては、黄銅(Bs)、ステンレス、チタン等の比較的に硬質な金属を使用することできる。
【0013】
薄板状文字盤本体と位置決めピンとの結合は接着剤を使用して行われる。接着剤としては、例えば、エポキシ系の接着剤を使用することができる。なお、『時計ケースの形状』とあるのは、円形、楕円形、正方形、長方形等々の時計ケースの様々な形状を考慮したためである。
【0014】
そして、このような構成によれば、薄板状文字盤本体を電波透過性素材であるプラスチックで構成したため、ケース内蔵アンテナによる時刻電波の受信を阻害することがなく、また薄板状文字盤本体の裏面側には丈夫な位置決めピンがしっかりと固定されているため、従前の簡易な位置決め構造をそのまま採用して、文字盤とムーブメントとを正確に位置決めすることができ、しかも位置決めのために別部品(成形部品等)が不要であるため、構造が簡単で部品管理も容易であり、ケースの形状が変更されたとしても、それに合わせて金型を製作し直す必要もなく、格別のコストアップを来さない。
【0015】
加えて、金属蒸着膜の有する金属色が上側プラスチック板を透けてその上面へと露呈し、かつ下側プラスチック板により金属蒸着膜の保護並びに位置決めピンの支持がなされる。そのため、このようにして製作された文字盤は、その表面が淡い金属色を呈することから、ユーザに高級感を与えることができ、一方金属蒸着膜は下側プラスチック板により保護されるため、製作や組み立てに際して、金属蒸着膜が損傷することもなく、しかも位置決めピンは下側プラスチック板により堅固に支持されるため、ムーブメントへの取付に際しても十分な強度を有することとなる。
【0016】
また、上述の二層構造を有する薄板状文字盤本体においては、上側プラスチック板の表面、裏面、又は内部に適宜な地模様を形成しても良い。このような構成によれば、上側プラスチック板の地模様が金属色の背景の中に現出することから、高級感を維持しつつ、味わいのある外観を呈することができる。
【0017】
なお、金属蒸着膜を構成する金属材料としては、目的とする金属色に応じて様々な素材を採用することができる。それらの素材としては、例えば、Al、Au、Pd、Cr、又はNi等を挙げることができる。
【0018】
ところで、以上のプラスチック二層構造による外観上の効果は、位置決め構造の如何に拘わるものでないことは言うまでもない。すなわち、文字盤とムーブメントとの位置決め構造については、位置決めピンと位置決め孔との嵌合によるものに限らず、様々なそれ以外のものも採用することができる。
【0019】
さらに、薄板状文字盤本体の裏面側に位置決めピンを接着固定すると言う基本的な文字盤の構成は、文字盤の素材として透明又は半透明素材を採用せざるをえないソーラ腕時計用の文字盤にもそのまま適用することができる。
【0020】
次に、本発明の電波腕時計用文字盤の製造方法は、透明又は半透明なプラスチック製の第1のシート材から、時計ケースの形状に合わせて上側プラスチック板を打ち抜くステップと、プラスチック製の第2のシート材から、時計ケースの形状に合わせて下側プラスチック板を打ち抜くステップと、上側プラスチック板の下面側に装飾金属による金属蒸着膜を被着させるステップと、上側プラスチック板と下側プラスチック板とを金属蒸着膜を挟んで積層接着するステップと、下側プラスチック板の下面においてムーブメント側の位置決め孔に対応する位置に2剤系接着剤の第1剤を付着させるステップと、金属製位置決めピン側に2剤系接着剤の第2剤を付着させるステップと、下側プラスチック板に位置決めピンを押し当て第1剤と第2剤とを反応させることにより、下側プラスチック板の下面所定位置に位置決めピンを接着固定するステップと、を具備するものである。
【0021】
このような構成によれば、プレス処理、金属蒸着処理、接着処理を用いることによって、この種の二層構造の文字盤を効率よく製造することができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下に、この発明の好適な実施の一形態を添付図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0023】
図1は本発明に係る文字盤本体の構成図、図2は本発明に係る文字盤が適用されるムーブメントの構成図である。なお、それらの図において、1は薄板状文字盤本体、2は位置決めピン、3はムーブメント側の位置決め孔、4は日車(カレンダー用)、5は巻真(リューズ操作用)、1aは薄板状文字盤本体1の裏面、100は文字盤、200はムーブメントである。
【0024】
それらの図から明らかなように、本発明に係る電波腕時計の文字盤100は、時計ケースの形状に合わせて形成された電波透過性素材から成る薄板状文字盤本体1の裏面1a側に、ムーブメント200側の位置決め孔3,3に整合させて、位置決めピン2,2を接着固定して構成されている。ここで、『電波透過性素材』としては、ガラス、トルコ石、貴石等の非金属材料を使用することができる。
【0025】
薄板状文字盤本体1としては、単層構造のものと二層構造のものとを選択的に採用することができる。単層構造を採用する場合、その材質としてはガラス、トルコ石、貴石等の表面平滑性の高い材料板を採用することができる。これらの材質より成る材料板は、表面平滑度の高いものが容易に入手できるため、文字盤として要求される表面光沢性を容易に得ることができる。
【0026】
また、文字、数字、目盛り等の文字盤構成要素については、植字、貼り文字、印刷、埋め込み等の公知の手法を用いることにより、薄板状文字盤本体1の表面側に適宜に形成することができる。
【0027】
薄板状文字盤本体1の裏面側には、文字盤100の中心孔を挟んでほぼ対向する様にして、一対の位置決めピン2,2が接着剤により固定されている。位置決めピン2の規格外径は一般に0.75mmとされており、その長さは1.0〜1.5mm程度とされている。この例では、位置決めピン2の材質としては、十分な強度を持たせるために、黄銅(Bs)、ステンレス、チタン等の比較的に硬質な金属が採用されている。薄板状文字盤本体1と位置決めピン2との接着には例えばエポキシ系の2剤型の接着剤を使用することができる。
【0028】
図1と図2とを比較して明らかなように、文字盤100上における位置決めピン2,2の取付位置と、ムーブメント200上における位置決め孔3,3の取付位置とはぴったりと整合されている。そのため、文字盤100上の位置決めピン2,2をムーブメント200上の位置決め孔3,3に差し込むことにより、文字盤100はムーブメント200上に正確に位置決め固定される。
【0029】
以上述べた文字盤100は、時計ケースの形状に合わせて形成された電波透過性素材から成る薄板状文字盤本体1の裏面1a側に、ムーブメント200側の位置決め孔3,3に整合させて、位置決めピン2,2を接着固定してなるものであるから、ムーブメント200に内蔵されたアンテナによる時刻電波の受信を阻害することがなく、文字盤100とムーブメント200とを正確に位置決めすることができる。しかも、位置決めのために別部品が一切不要であるため、時計ケースの形状が変更された場合にも、文字盤100の形状を変更するだけで済み、従前の文字盤押えリングや文字盤保持リングを使用した従来例のように、その都度、新たな金型を起こす必要が無く、低コストを維持しつつも設計自由度が高いと言う利点を有する。
【0030】
文字盤100の表面の色彩や光沢は、塗装や金属薄膜コーティングと言った公知の手法で様々に設定することができる。もっとも、金属製の文字盤と同様な淡い金属光沢を得るためにはある程度の工夫が必要と思われる。工夫の1つとしては、文字盤100としてプラスチックの二層構造を採用し、それらの層間に金属蒸着膜を介在させることが考えられる。そのような文字盤の製造工程の一例が、図3並びに図4の工程図に示されている。
【0031】
先ず、最初の工程では、図3(a)に示されるように、透明又は半透明なプラスチック製の第1のシート材31から、時計ケースの形状に合わせて上側プラスチック板32をプレスにて打ち抜く。第1のシート材31の材質としては、例えば、ポリカーボネート、ABS樹脂等を使用することができる。また、第1のシート材31の厚さは、0.1mm〜0.4mm程度に設定されている。第1のシート材31の色彩は、有色又は無色の別を問わない。
【0032】
次に、第2の工程では、図3(b)に示されるように、先の工程で円形に打ち抜かれた上側プラスチック板32の表面33に、筋付け加工や放射目加工と言った仕上げ加工を施す。図中符号34で示されるものは、放射目である。
【0033】
次に、第3の工程では、図3(c)に示されるように、先に工程で仕上げ加工が施された上側プラスチック板32の下面側に装飾金属による金属蒸着膜35を被着させる。このとき、装飾金属としては例えばAl、Au、Pd、Cr、又はNi等を採用することができる。また、装飾金属による金属蒸着膜35の膜厚は、0.01μm〜7.0μmの範囲が好ましく、この例では1.0μmに設定されている。膜厚が0.01μmより薄いと損傷されやすい。膜厚が7.0μmよりも厚いと内蔵アンテナによる時刻電波の受信を阻害する。
【0034】
次に、第4の工程では、図3(d)に示されるように、先の工程で裏面側に装飾金属が被着された上側プラスチック板32の表面33に塗装加工や印刷加工等を行う。図中、符号36で示されるものは、時刻数字を表示する貼り文字である。
【0035】
次に、第5の工程では、図4(a)に示されるように、プラスチック製の第2のシート材41から、時計ケースの形状に合わせて下側プラスチック板42を打ち抜く。第2のシート材41の材質としては、ポリカーボネート、ABS樹脂等を採用することができる。また、第2シート材41の厚さは、0.1mm〜0.4mm程度に設定される。
【0036】
次に、第6の工程では、図4(b)に示されるように、上側プラスチック板32と下側プラスチック板42とを金属蒸着膜35を挟んで積層接着する。このとき、接着剤としては例えばエポキシ系、ゴム系等の接着剤を使用することができる。この工程が完了すると、金属蒸着膜35は、上側プラスチック板32と下側プラスチック板42とで挟まれ、破損等から保護される。すなわち、プラスチックに金属被膜を形成するためには、プラスチックが溶融しない低温での被膜形成が可能な真空蒸着法を採用することが好ましく、一方、真空蒸着法で形成される金属蒸着膜は非常に脆く破損されやすい。そこで、この金属蒸着膜35の上に保護層として下側プラスチック板42を重ねることにより、金属蒸着膜35の破損を防止する。
【0037】
次に、第7の工程では、図4(c)に示されるように、下側プラスチック板42の下面において、ムーブメント側の位置決め孔に対応する位置に、2剤系接着剤の第1剤61を付着させると共に、金属製位置決めピン51側に2剤系接着剤の第2剤71を付着させる。このとき、2剤系接着剤としては、例えばエポキシ系の接着剤を使用することができる。
【0038】
次に、最後の工程では、図4(d)に示されるように、下側プラスチック板42に位置決めピン51を押し当て第1剤61と第2剤71とを反応させることにより、下側プラスチック板42の下面所定位置に、位置決めピン51を接着固定し、これにより文字盤100が完成する。
【0039】
なお、下側プラスチック板42への第1剤61の付着、金属製位置決めピン51への第2剤71の付着、及び金属製位置決めピン51を下側プラスチック板42の所定位置へと運ぶ処理等は、すべて数値制御型工作機械(NCマシン)を用いて自動化することができる。
【0040】
なお、図3(a)で示される第1の工程においては、第1のシート材31としてその表面、裏面、又は内部に地模様を有するシート材を使用してもよい。このような地模様としては、シート材31の製造工程において、その表面に微細な凹凸を所定のパターンに形成したもの等を挙げることができる。
【0041】
また、図3(a)に示される第1の工程において、打ち抜きプレスのためのパンチの表面に微細な凹凸を所定パターンに形成しておいて、打ち抜き加工と同時に上側プラスチック板32の表面に地模様を形成しても良い。
【0042】
以上の工程で製造された文字盤100によれば、薄板状文字盤本体が上側プラスチック板32と下側プラスチック板42とを金属蒸着膜35を介して積層接着した二重構造となり、かつ上側プラスチック板32は透明又は半透明となる。
【0043】
そのため、金属蒸着膜35の有する金属色が上側プラスチック板32を透けてその上面へと露呈し、かつ下側プラスチック板42により金属蒸着膜35の保護並びに位置決めピン51の支持がなされる。
【0044】
このようにして得られた文字盤によれば、これをその表面側から見た場合、淡い金属色を呈することとなり、上品な高級感の漂う商品価値の高い製品を得ることができる。
【0045】
また、上側プラスチック板32として、地模様を有するものを採用すれば、上側プラスチック板32の地模様が金属色の背景の中に現出することとなり、一層上品な高級感を醸し出すこととなる。つまり、単に、文字盤の表面に金属被膜形成して金属色を得ようとした場合、表面が平滑すぎることにより鏡面反射を生じて上品な高級感を損ねるのに対して、このように文字盤の下面側より文字盤を透けて金属色を露呈するように構成すれば、文字盤は淡い金属色を呈することとなり、上品な風合いを呈するのである。
【0046】
なお、以上説明した透明な薄板状文字盤本体の表面側に文字や目盛り等の文字盤構成要素を配置すると共に、裏面側には金属又は金属化合物の装飾被膜を被着させ、裏面装飾被膜の色が文字盤本体を透かしてその表面側に露呈するようにした構成は、それ自体で時計の文字盤としては新規なものである。そのため、文字盤とムーブメントとの位置決め構造の如何に拘わらず、広く様々な腕時計に採用が可能である。
【0047】
さらに、文字盤の裏面側に位置決めピンを接着固定する一方、これをムーブメント側の位置決め孔に嵌合させて両者の位置決め並びに固定を行うという構成も、その適用は電波腕時計には限られない。
【0048】
時計ケースの形状に合わせて形成された透明又半透明素材からなる薄板状文字盤本体とソーラパネルを接合し、ソーラパネルの裏面側に、ムーブメント側の位置決め孔に整合させて、位置決めピンを接着固定すると言う構成は、ソーラ腕時計の文字盤として好適なものである。すなわち、ソーラ腕時計においては、ケース内蔵ソーラパネルによる光発電作用を阻害することが無く、文字盤とムーブメントとを正確に位置決めすることができ、しかも位置決めのための別部品が不要なソーラ腕時計の文字盤を実現することができる。
【0049】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明によれば、ケース内蔵アンテナによる時刻電波の受信を阻害することがなく、文字盤とムーブメントとを正確に位置決めすることができ、位置決めのために別部品が不要であり、しかも外観上の高級感を付与することができる電波時計の文字盤を効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る文字盤本体の構成図である。
【図2】本発明に係る文字盤が適用されるムーブメントの構成図である。
【図3】本発明に係る文字盤の製造工程を示す図(その1)である。
【図4】本発明に係る文字盤の製造工程を示す図(その2)である。
【図5】従来の文字盤の構成図である。
【図6】従来の文字盤の位置決め構造を示す図である。
【符号の説明】
1 薄板状文字盤本体
1A 薄板状文字盤本体
2 位置決めピン
2A 位置決め用突片
3 位置決め孔
4 日車
5 巻真
31 第1のシート材
32 上側プラスチック板
33 上側プラスチック板の上面
34 放射目
35 金属蒸着膜
41 第2のシート材
42 下側プラスチック板
51 位置決めピン
61 第1剤
71 第2剤
100 文字盤
100A 文字盤
200 ムーブメント
【発明の属する技術分野】
この発明は、電波腕時計の文字盤に係り、特に、電波透過性が良好であり、かつムーブメントに対して高精度に取り付けることができ、しかも高級感を付与するのも容易な電波腕時計の文字盤に関する。
【0002】
【従来の技術】
アナログ表示式腕時計の表示精度は、文字盤とムーブメント(時計ユニット)との位置決め精度に大きく依存する。すなわち、ムーブメントが如何に正確に時を刻もうとも、文字盤とムーブメントとの位置決め精度が悪ければ、ムーブメントに結合される指針(例えば、秒針)は文字盤上の目盛りを正確に指し示さないから、結果として表示精度は低下する。
【0003】
文字盤下面の位置決めピンとムーブメント上面の位置決め孔との嵌合による位置決め構造は最も簡単で精度を出し易い位置決め構造として、多くのアナログ表示式腕時計に採用されている。文字盤を構成する薄板片の材質としては黄銅等の金属が使用され、位置決めピンの規格外径は通常0.75mmとされる。位置決めピンは文字盤を構成する金属製薄板片の下面にスポット溶接される。
【0004】
ところで、時計ケースの中に時刻電波受信アンテナを内蔵する所謂アンテナ内蔵型電波腕時計にあっては、内蔵アンテナによる時刻電波の受信を阻害しない配慮から、金属製文字盤を採用することができない。
【0005】
文字盤の材質として、電波透過性の良好なガラス、プラスチック、貴石等を採用すると、スポット溶接による位置決めピンの固定は不可能であるから、文字盤とムーブメントとの位置決めのためには、新たに別の位置決め構造を採用せざるを得ない。
【0006】
別の位置決め構造の一例が図5並びに図6に示されている。それらの図において、1Aは薄板状文字盤本体部、2Aは位置決め用突部、100Aは文字盤、200Aはムーブメント、301は窓ガラス、302は文字盤保持リング(ムーブメントとは、噛み合わせ等により位置決めされている)、303は時計ケース本体、304は時計ケース裏蓋、305は文字盤押えリング、306はソーラパネルである。時計ケース本体303並びに時計ケース裏蓋304の材質としては、ケース内蔵アンテナによる時刻電波の受信を阻害しない配慮から、電波透過性の良好なプラスチックやセラミック等が使用される。
【0007】
同図から明らかなように、この位置決め構造にあっては、薄板状文字盤本体部1Aの外周に形成した位置決め用突部2Aと時計ケース本体303の内周に配置された文字盤保持リング302や文字盤押えリング305との噛み合わせ等により、文字盤100Aとムーブメント200Aとの位置決めを行っている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような非金属文字盤(ガラス、プラスチック、貴石等)に適用される従来の文字盤とムーブメントとの位置決め構造にあっては、両者間に別部品を介在することから、位置決め精度が上がらないこと、文字盤保持リング302や文字盤押えリング305といった多くの位置決め用部品が必要で構造が複雑であること、ケースの形状が変更されるたびに位置決め用部品の金型を製造し直す必要がありその都度大きな初期費用が掛かること、金属製文字盤に比べて高級感に欠けること、といった問題点が指摘されている。
【0009】
この発明は、上述の問題点に着目してなされたものであり、その目的とするところは、ケース内蔵アンテナによる時刻電波の受信を阻害することがなく、文字盤とムーブメントとを正確に位置決めすることができ、位置決めのために別部品が不要であり、しかも外観上の高級感を付与することができる電波腕時計の文字盤を効率よく製造することが可能な電波腕時計用文字盤の製造方法を提供することにある。
【0010】
この発明の他の目的又は作用効果については、以下の明細書の記述を参照することにより、当業者であれば容易に理解されるであろう。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明により製造される電波腕時計の文字盤は、上側プラスチック板と下側プラスチック板とを金属蒸着膜を介して積層接着してなる二層構造を有し、かつ上側プラスチック板は透明又は半透明とされており、それにより、金属蒸着膜の有する金属色が上側プラスチック板を透けてその上面へと露呈し、かつ下側プラスチック板により金属蒸着膜の保護並びに位置決めピンの支持がなされるものである。このように文字盤の表面が淡い金属色を呈すると、特に高級感が得られることが経験的に知られている。
【0012】
ここで、『位置決めピン』の材質としては、黄銅(Bs)、ステンレス、チタン等の比較的に硬質な金属を使用することできる。
【0013】
薄板状文字盤本体と位置決めピンとの結合は接着剤を使用して行われる。接着剤としては、例えば、エポキシ系の接着剤を使用することができる。なお、『時計ケースの形状』とあるのは、円形、楕円形、正方形、長方形等々の時計ケースの様々な形状を考慮したためである。
【0014】
そして、このような構成によれば、薄板状文字盤本体を電波透過性素材であるプラスチックで構成したため、ケース内蔵アンテナによる時刻電波の受信を阻害することがなく、また薄板状文字盤本体の裏面側には丈夫な位置決めピンがしっかりと固定されているため、従前の簡易な位置決め構造をそのまま採用して、文字盤とムーブメントとを正確に位置決めすることができ、しかも位置決めのために別部品(成形部品等)が不要であるため、構造が簡単で部品管理も容易であり、ケースの形状が変更されたとしても、それに合わせて金型を製作し直す必要もなく、格別のコストアップを来さない。
【0015】
加えて、金属蒸着膜の有する金属色が上側プラスチック板を透けてその上面へと露呈し、かつ下側プラスチック板により金属蒸着膜の保護並びに位置決めピンの支持がなされる。そのため、このようにして製作された文字盤は、その表面が淡い金属色を呈することから、ユーザに高級感を与えることができ、一方金属蒸着膜は下側プラスチック板により保護されるため、製作や組み立てに際して、金属蒸着膜が損傷することもなく、しかも位置決めピンは下側プラスチック板により堅固に支持されるため、ムーブメントへの取付に際しても十分な強度を有することとなる。
【0016】
また、上述の二層構造を有する薄板状文字盤本体においては、上側プラスチック板の表面、裏面、又は内部に適宜な地模様を形成しても良い。このような構成によれば、上側プラスチック板の地模様が金属色の背景の中に現出することから、高級感を維持しつつ、味わいのある外観を呈することができる。
【0017】
なお、金属蒸着膜を構成する金属材料としては、目的とする金属色に応じて様々な素材を採用することができる。それらの素材としては、例えば、Al、Au、Pd、Cr、又はNi等を挙げることができる。
【0018】
ところで、以上のプラスチック二層構造による外観上の効果は、位置決め構造の如何に拘わるものでないことは言うまでもない。すなわち、文字盤とムーブメントとの位置決め構造については、位置決めピンと位置決め孔との嵌合によるものに限らず、様々なそれ以外のものも採用することができる。
【0019】
さらに、薄板状文字盤本体の裏面側に位置決めピンを接着固定すると言う基本的な文字盤の構成は、文字盤の素材として透明又は半透明素材を採用せざるをえないソーラ腕時計用の文字盤にもそのまま適用することができる。
【0020】
次に、本発明の電波腕時計用文字盤の製造方法は、透明又は半透明なプラスチック製の第1のシート材から、時計ケースの形状に合わせて上側プラスチック板を打ち抜くステップと、プラスチック製の第2のシート材から、時計ケースの形状に合わせて下側プラスチック板を打ち抜くステップと、上側プラスチック板の下面側に装飾金属による金属蒸着膜を被着させるステップと、上側プラスチック板と下側プラスチック板とを金属蒸着膜を挟んで積層接着するステップと、下側プラスチック板の下面においてムーブメント側の位置決め孔に対応する位置に2剤系接着剤の第1剤を付着させるステップと、金属製位置決めピン側に2剤系接着剤の第2剤を付着させるステップと、下側プラスチック板に位置決めピンを押し当て第1剤と第2剤とを反応させることにより、下側プラスチック板の下面所定位置に位置決めピンを接着固定するステップと、を具備するものである。
【0021】
このような構成によれば、プレス処理、金属蒸着処理、接着処理を用いることによって、この種の二層構造の文字盤を効率よく製造することができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下に、この発明の好適な実施の一形態を添付図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0023】
図1は本発明に係る文字盤本体の構成図、図2は本発明に係る文字盤が適用されるムーブメントの構成図である。なお、それらの図において、1は薄板状文字盤本体、2は位置決めピン、3はムーブメント側の位置決め孔、4は日車(カレンダー用)、5は巻真(リューズ操作用)、1aは薄板状文字盤本体1の裏面、100は文字盤、200はムーブメントである。
【0024】
それらの図から明らかなように、本発明に係る電波腕時計の文字盤100は、時計ケースの形状に合わせて形成された電波透過性素材から成る薄板状文字盤本体1の裏面1a側に、ムーブメント200側の位置決め孔3,3に整合させて、位置決めピン2,2を接着固定して構成されている。ここで、『電波透過性素材』としては、ガラス、トルコ石、貴石等の非金属材料を使用することができる。
【0025】
薄板状文字盤本体1としては、単層構造のものと二層構造のものとを選択的に採用することができる。単層構造を採用する場合、その材質としてはガラス、トルコ石、貴石等の表面平滑性の高い材料板を採用することができる。これらの材質より成る材料板は、表面平滑度の高いものが容易に入手できるため、文字盤として要求される表面光沢性を容易に得ることができる。
【0026】
また、文字、数字、目盛り等の文字盤構成要素については、植字、貼り文字、印刷、埋め込み等の公知の手法を用いることにより、薄板状文字盤本体1の表面側に適宜に形成することができる。
【0027】
薄板状文字盤本体1の裏面側には、文字盤100の中心孔を挟んでほぼ対向する様にして、一対の位置決めピン2,2が接着剤により固定されている。位置決めピン2の規格外径は一般に0.75mmとされており、その長さは1.0〜1.5mm程度とされている。この例では、位置決めピン2の材質としては、十分な強度を持たせるために、黄銅(Bs)、ステンレス、チタン等の比較的に硬質な金属が採用されている。薄板状文字盤本体1と位置決めピン2との接着には例えばエポキシ系の2剤型の接着剤を使用することができる。
【0028】
図1と図2とを比較して明らかなように、文字盤100上における位置決めピン2,2の取付位置と、ムーブメント200上における位置決め孔3,3の取付位置とはぴったりと整合されている。そのため、文字盤100上の位置決めピン2,2をムーブメント200上の位置決め孔3,3に差し込むことにより、文字盤100はムーブメント200上に正確に位置決め固定される。
【0029】
以上述べた文字盤100は、時計ケースの形状に合わせて形成された電波透過性素材から成る薄板状文字盤本体1の裏面1a側に、ムーブメント200側の位置決め孔3,3に整合させて、位置決めピン2,2を接着固定してなるものであるから、ムーブメント200に内蔵されたアンテナによる時刻電波の受信を阻害することがなく、文字盤100とムーブメント200とを正確に位置決めすることができる。しかも、位置決めのために別部品が一切不要であるため、時計ケースの形状が変更された場合にも、文字盤100の形状を変更するだけで済み、従前の文字盤押えリングや文字盤保持リングを使用した従来例のように、その都度、新たな金型を起こす必要が無く、低コストを維持しつつも設計自由度が高いと言う利点を有する。
【0030】
文字盤100の表面の色彩や光沢は、塗装や金属薄膜コーティングと言った公知の手法で様々に設定することができる。もっとも、金属製の文字盤と同様な淡い金属光沢を得るためにはある程度の工夫が必要と思われる。工夫の1つとしては、文字盤100としてプラスチックの二層構造を採用し、それらの層間に金属蒸着膜を介在させることが考えられる。そのような文字盤の製造工程の一例が、図3並びに図4の工程図に示されている。
【0031】
先ず、最初の工程では、図3(a)に示されるように、透明又は半透明なプラスチック製の第1のシート材31から、時計ケースの形状に合わせて上側プラスチック板32をプレスにて打ち抜く。第1のシート材31の材質としては、例えば、ポリカーボネート、ABS樹脂等を使用することができる。また、第1のシート材31の厚さは、0.1mm〜0.4mm程度に設定されている。第1のシート材31の色彩は、有色又は無色の別を問わない。
【0032】
次に、第2の工程では、図3(b)に示されるように、先の工程で円形に打ち抜かれた上側プラスチック板32の表面33に、筋付け加工や放射目加工と言った仕上げ加工を施す。図中符号34で示されるものは、放射目である。
【0033】
次に、第3の工程では、図3(c)に示されるように、先に工程で仕上げ加工が施された上側プラスチック板32の下面側に装飾金属による金属蒸着膜35を被着させる。このとき、装飾金属としては例えばAl、Au、Pd、Cr、又はNi等を採用することができる。また、装飾金属による金属蒸着膜35の膜厚は、0.01μm〜7.0μmの範囲が好ましく、この例では1.0μmに設定されている。膜厚が0.01μmより薄いと損傷されやすい。膜厚が7.0μmよりも厚いと内蔵アンテナによる時刻電波の受信を阻害する。
【0034】
次に、第4の工程では、図3(d)に示されるように、先の工程で裏面側に装飾金属が被着された上側プラスチック板32の表面33に塗装加工や印刷加工等を行う。図中、符号36で示されるものは、時刻数字を表示する貼り文字である。
【0035】
次に、第5の工程では、図4(a)に示されるように、プラスチック製の第2のシート材41から、時計ケースの形状に合わせて下側プラスチック板42を打ち抜く。第2のシート材41の材質としては、ポリカーボネート、ABS樹脂等を採用することができる。また、第2シート材41の厚さは、0.1mm〜0.4mm程度に設定される。
【0036】
次に、第6の工程では、図4(b)に示されるように、上側プラスチック板32と下側プラスチック板42とを金属蒸着膜35を挟んで積層接着する。このとき、接着剤としては例えばエポキシ系、ゴム系等の接着剤を使用することができる。この工程が完了すると、金属蒸着膜35は、上側プラスチック板32と下側プラスチック板42とで挟まれ、破損等から保護される。すなわち、プラスチックに金属被膜を形成するためには、プラスチックが溶融しない低温での被膜形成が可能な真空蒸着法を採用することが好ましく、一方、真空蒸着法で形成される金属蒸着膜は非常に脆く破損されやすい。そこで、この金属蒸着膜35の上に保護層として下側プラスチック板42を重ねることにより、金属蒸着膜35の破損を防止する。
【0037】
次に、第7の工程では、図4(c)に示されるように、下側プラスチック板42の下面において、ムーブメント側の位置決め孔に対応する位置に、2剤系接着剤の第1剤61を付着させると共に、金属製位置決めピン51側に2剤系接着剤の第2剤71を付着させる。このとき、2剤系接着剤としては、例えばエポキシ系の接着剤を使用することができる。
【0038】
次に、最後の工程では、図4(d)に示されるように、下側プラスチック板42に位置決めピン51を押し当て第1剤61と第2剤71とを反応させることにより、下側プラスチック板42の下面所定位置に、位置決めピン51を接着固定し、これにより文字盤100が完成する。
【0039】
なお、下側プラスチック板42への第1剤61の付着、金属製位置決めピン51への第2剤71の付着、及び金属製位置決めピン51を下側プラスチック板42の所定位置へと運ぶ処理等は、すべて数値制御型工作機械(NCマシン)を用いて自動化することができる。
【0040】
なお、図3(a)で示される第1の工程においては、第1のシート材31としてその表面、裏面、又は内部に地模様を有するシート材を使用してもよい。このような地模様としては、シート材31の製造工程において、その表面に微細な凹凸を所定のパターンに形成したもの等を挙げることができる。
【0041】
また、図3(a)に示される第1の工程において、打ち抜きプレスのためのパンチの表面に微細な凹凸を所定パターンに形成しておいて、打ち抜き加工と同時に上側プラスチック板32の表面に地模様を形成しても良い。
【0042】
以上の工程で製造された文字盤100によれば、薄板状文字盤本体が上側プラスチック板32と下側プラスチック板42とを金属蒸着膜35を介して積層接着した二重構造となり、かつ上側プラスチック板32は透明又は半透明となる。
【0043】
そのため、金属蒸着膜35の有する金属色が上側プラスチック板32を透けてその上面へと露呈し、かつ下側プラスチック板42により金属蒸着膜35の保護並びに位置決めピン51の支持がなされる。
【0044】
このようにして得られた文字盤によれば、これをその表面側から見た場合、淡い金属色を呈することとなり、上品な高級感の漂う商品価値の高い製品を得ることができる。
【0045】
また、上側プラスチック板32として、地模様を有するものを採用すれば、上側プラスチック板32の地模様が金属色の背景の中に現出することとなり、一層上品な高級感を醸し出すこととなる。つまり、単に、文字盤の表面に金属被膜形成して金属色を得ようとした場合、表面が平滑すぎることにより鏡面反射を生じて上品な高級感を損ねるのに対して、このように文字盤の下面側より文字盤を透けて金属色を露呈するように構成すれば、文字盤は淡い金属色を呈することとなり、上品な風合いを呈するのである。
【0046】
なお、以上説明した透明な薄板状文字盤本体の表面側に文字や目盛り等の文字盤構成要素を配置すると共に、裏面側には金属又は金属化合物の装飾被膜を被着させ、裏面装飾被膜の色が文字盤本体を透かしてその表面側に露呈するようにした構成は、それ自体で時計の文字盤としては新規なものである。そのため、文字盤とムーブメントとの位置決め構造の如何に拘わらず、広く様々な腕時計に採用が可能である。
【0047】
さらに、文字盤の裏面側に位置決めピンを接着固定する一方、これをムーブメント側の位置決め孔に嵌合させて両者の位置決め並びに固定を行うという構成も、その適用は電波腕時計には限られない。
【0048】
時計ケースの形状に合わせて形成された透明又半透明素材からなる薄板状文字盤本体とソーラパネルを接合し、ソーラパネルの裏面側に、ムーブメント側の位置決め孔に整合させて、位置決めピンを接着固定すると言う構成は、ソーラ腕時計の文字盤として好適なものである。すなわち、ソーラ腕時計においては、ケース内蔵ソーラパネルによる光発電作用を阻害することが無く、文字盤とムーブメントとを正確に位置決めすることができ、しかも位置決めのための別部品が不要なソーラ腕時計の文字盤を実現することができる。
【0049】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明によれば、ケース内蔵アンテナによる時刻電波の受信を阻害することがなく、文字盤とムーブメントとを正確に位置決めすることができ、位置決めのために別部品が不要であり、しかも外観上の高級感を付与することができる電波時計の文字盤を効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る文字盤本体の構成図である。
【図2】本発明に係る文字盤が適用されるムーブメントの構成図である。
【図3】本発明に係る文字盤の製造工程を示す図(その1)である。
【図4】本発明に係る文字盤の製造工程を示す図(その2)である。
【図5】従来の文字盤の構成図である。
【図6】従来の文字盤の位置決め構造を示す図である。
【符号の説明】
1 薄板状文字盤本体
1A 薄板状文字盤本体
2 位置決めピン
2A 位置決め用突片
3 位置決め孔
4 日車
5 巻真
31 第1のシート材
32 上側プラスチック板
33 上側プラスチック板の上面
34 放射目
35 金属蒸着膜
41 第2のシート材
42 下側プラスチック板
51 位置決めピン
61 第1剤
71 第2剤
100 文字盤
100A 文字盤
200 ムーブメント
Claims (1)
- 透明又は半透明なプラスチック製の第1のシート材から、時計ケースの形状に合わせて上側プラスチック板を打ち抜くステップと、
プラスチック製の第2のシート材から、時計ケースの形状に合わせて下側プラスチック板を打ち抜くステップと、
上側プラスチック板の下面側に装飾金属による金属蒸着膜を被着させるステップと、
上側プラスチック板と下側プラスチック板とを金属蒸着膜を挟んで積層接着するステップと、
下側プラスチック板の下面においてムーブメント側の位置決め孔に対応する位置に2剤系接着剤の第1剤を付着させるステップと、
金属製位置決めピン側に2剤系接着剤の第2剤を付着させるステップと、
下側プラスチック板に位置決めピンを押し当て第1剤と第2剤とを反応させることにより、下側プラスチック板の下面所定位置に位置決めピンを接着固定するステップと、
を具備する電波腕時計用文字盤の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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Applications Claiming Priority (1)
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JP2000213429A JP3463871B6 (ja) | 2000-07-13 | 電波腕時計の文字盤 |
Publications (3)
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