JP3463182B2 - 乗物用シート - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、衝撃吸収材を使用し
た乗物用シートに関する。

【０００２】

【従来の技術】例えば、自動二輪車に使用されるシート
では、通常、ウレタンフォームからなるクッション体
が、合成皮革のシート表皮で包まれて、硬質の板状部材
からなるボトムプレートの上に取り付けられており、エ
ンジンの振動や路面の凹凸により走行中の車体に発生す
る振動は、クッション体で吸収されることによって、運
転者や同乗者等の着座者にはできるだけ伝わらないよう
な構造となっている。

【０００３】このような自動二輪車のシートにおいて、
単にウレタンフォームからなるクッション体だけでは着
座者に対する衝撃の吸収が不充分であるため、ウレタン
フォームの本体に粘弾性ウレタンエラストマーのような
粘弾性体（超吸収性弾性体）を重層したものをクッショ
ン体として使用することにより、粘弾性体で振動を充分
に吸収することによって着座者が感じる振動をより少な
いものとするということが従来公知となっている（特開
平２−２８６４８１号公報参照）。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】ところで、このような
自動二輪車に限らず、乗用車、トラック、バス、ゴルフ
カー、バギー車、小型雪上車、滑走艇、航空機等の乗物
用シートには、着座者に振動の伝達を極力軽減すると共
に、例えば道路の凹凸、走行地の凹凸、雪原の凹凸、波
浪、着陸あるいはエアポケット等、あるいは急加減速に
より着座者に加わる衝撃力を緩和する機能が要求され
る。従来、粘弾性体（超吸収性弾性体）を重層したもの
をクッション体として使用することにより着座者に振動
を伝達しないようにしているが、特に、着座している
と、その臀部の座骨近傍には、シート下方からの衝撃力
が集中して作用するので、座骨近傍において衝撃力を緩
和する必要がある。

【０００５】また、背もたれ部を有するシートの場合に
は、着座者の骨盤、腰椎近傍には、シート後方から衝撃
力が集中して作用するので、骨盤、腰椎近傍において、
衝撃力を緩和する必要がある。

【０００６】この発明は、上記のような従来の乗物用シ
ートの持つ不都合を解消することを目的としており、よ
り具体的には、着座者に振動が伝達することを軽減する
と共に、道路の凹凸、走行地の凹凸、雪原の凹凸、波
浪、着陸あるいはエアポケット等、あるいは急加減速に
より着座者の座骨近傍に加わる衝撃力を緩和する乗物用
シートを提供することを目的としている。更に、この発
明は、着座者の骨盤、腰椎近傍に加わる衝撃力を緩和す
る乗物用シートを提供することを目的としている。

【０００７】

【課題を解決するための手段】前記課題を解決しかつ目
的を達成するために、請求項１記載の発明は、クッショ
ン本体と粘弾性体の衝撃吸収材からなるクッションを表
皮で覆ってなる乗物用シートにおいて、着座者の着座部
に前記衝撃吸収材を配置し、前記着座部における前記ク
ッションの厚さ、前記衝撃吸収材の厚さ、及びクッショ
ン本体の厚さすなわちクッションの厚さから前記衝撃吸
収材の厚さを差し引いた厚さを、それぞれＨ０、Ｈ１、
Ｈ２とする時、 ２０＜Ｈ０＜９０（ｍｍ） ５＜Ｈ１＜２０（ｍｍ） であり、 ０．１２５＜Ｈ１／Ｈ２＜１ ０．１＜Ｈ１／Ｈ０＜０．５ の関係が成立するように設定し、さらに、前記衝撃吸収
材は、超軟質ウレタンエラストマーをマトリックス樹脂
として、外殻を樹脂とし内部にガスを充填した粒径が１
０〜１００ミクロンの樹脂性マイクロバルーンを１〜５
重量％混入してなる粘弾性体からなり、引張時のバネ定
数に対する圧縮時のバネ定数の比（圧縮時のバネ定数／
引張時のバネ定数）が１．１以上であり、貯蔵弾性率が
０．２２ＭＰａ以下であることを特徴としている。

【０００８】請求項２記載の発明は、前記衝撃吸収材の
座圧の高い部分には、凹部を形成しないで、座圧の低い
部分に凹部を形成したことを特徴としている。

【０００９】請求項３記載の発明は、前記衝撃吸収材に
凹部を形成し、凹部の径を上方から下方にいくに従い変
化させることを特徴としている。

【００１０】請求項４記載の発明は、前記衝撃吸収材に
凹部を形成し、前記凹部の径を変化させることを特徴と
している。

【００１１】請求項５記載の発明は、前記衝撃吸収材の
上部を乗物幅方向から見て凸状曲面に形成したことを特
徴としている。

【００１２】請求項６記載の発明は、前記衝撃吸収材の
上部を乗物幅方向から見て凹状曲面に形成したことを特
徴としている。

【００１３】請求項７記載の発明は、前記衝撃吸収材の
厚みを乗物の前後方向で変化させたことを特徴としてい
る。

【００１４】請求項８記載の発明は、前記衝撃吸収材の
上部に乗物の前方向または後方向の傾斜面を有する凹凸
を形成したことを特徴としている。

【００１５】請求項９記載の発明は、前記衝撃吸収材を
置く部分に凹凸部を設けることを特徴としている。

【００１６】

【００１７】請求項１０記載の発明は、前記クッション
本体に前記衝撃吸収材を置く部分に収納凹部を設け、こ
の収納凹部より前記衝撃吸収材を厚くして締め代を形成
すると共に、逃げ部として前記収納凹部より前記衝撃吸
収材の周辺部を小さくして隙間を形成し、前記クッショ
ン本体とボトムプレートで前記衝撃吸収材を押圧して締
付固定して構成したことを特徴としている。

【００１８】請求項１１記載の発明は、前記クッション
本体に前記衝撃吸収材を埋設して構成したことを特徴と
している。

【００１９】請求項１２記載の発明は、前記衝撃吸収材
を断熱材で包んだことを特徴としている。

【００２０】請求項１３記載の発明は、前記クッション
本体の上部または底部に断熱材を配置したことを特徴と
している。

【００２１】請求項１４記載の発明は、成形型に前記衝
撃吸収材を入れて前記クッション本体を発泡させて、こ
のクッション本体と前記衝撃吸収材を接着させて構成し
たことを特徴としている。

【００２２】

【００２３】

【００２４】

【００２５】請求項１５記載の発明は、前記乗物用シー
トに背もたれ部を配置し、この背もたれ部において、少
なくとも前記着座部より鉛直上方距離８０〜１８０ｍｍ
の範囲に衝撃吸収材を配置し、さらに、前記背もたれ部
に配置される前記衝撃吸収材は、前記着座部に配置され
る前記衝撃吸収材と同様、超軟質ウレタンエラストマー
をマトリックス樹脂として、外殻を樹脂とし内部にガス
を充填した粒径が１０〜１００ミクロンの樹脂性マイク
ロバルーンを１〜５重量％混入してなる粘弾性体からな
り、引張時のバネ定数に対する圧縮時のバネ定数の比
（圧縮時のバネ定数／引張時のバネ定数）が１．１以上
であり、貯蔵弾性率が０．２２ＭＰａ以下であることを
特徴としている。

【００２６】

【作用】請求項１記載の発明では、着座部におけるクッ
ションの厚さと衝撃吸収材の厚さの関係を規定すること
で、着座者に振動が伝達することを軽減すると共に、乗
物の振動等により着座者の座骨近傍に加わる衝撃力を緩
和する。また、衝撃吸収材は、超軟質ウレタンエラスト
マーをマトリックス樹脂として、外殻を樹脂とし内部に
ガスを充填した粒径が１０〜１００ミクロンの樹脂性マ
イクロバルーンを１〜５重量％混入してなる粘弾性体か
らなり、衝撃吸収材の粘着性が低くなって、その取り扱
いが容易となり、衝撃吸収材のシートヘの組み付け作業
がやり易くなる。 衝撃吸収材が、超軟質ウレタンエラス
トマーと樹脂製マイクロバルーンの混合物について、注
型硬化後二層に分離してしまうというようなことがな
く、また、粘度が高くて注型時にエアーが入ってしまう
というようなこともない。 また、衝撃吸収材が、引張時
のバネ定数に対する圧縮時のバネ定数の比（圧縮時のバ
ネ定数／引張時のバネ定数）が１．１以上であり、貯蔵
弾性率が０．２２ＭＰａ以下であり、衝撃吸収材をシー
トに組み付けたときの重量増が少なくなり、着座したと
きのフィット感が良くなってシートの座り心地が向上す
る。

【００２７】請求項２記載の発明では、衝撃吸収材の座
圧の高い部分には、凹部を形成しないで、座圧の低い部
分に凹部を形成し、簡単な構造で衝撃吸収材の硬さの調
整が可能であり、乗物の振動等により着座者の座骨近傍
に加わる衝撃力を緩和すると共に、座り心地が向上す
る。

【００２８】請求項３記載の発明では、衝撃吸収材に凹
部を形成し、凹部の径を上方から下方にいくに従い変化
させ、シート沈み量が変化するに従い弾性が変化し、乗
物の振動等により着座者の座骨近傍に加わる衝撃力を緩
和すると共に、座り心地が向上する。

【００２９】請求項４記載の発明では、衝撃吸収材に凹
部を形成し、例えば座圧分布に応じて凹部の径を変化さ
せることで、着座した場合のずれを防止でき、乗物の振
動等により着座者の座骨近傍に加わる衝撃力を緩和する
と共に、座り心地が向上する。

【００３０】請求項５記載の発明では、衝撃吸収材の上
部を乗物幅方向から見て凸状曲面に形成しており、シー
トの外形の鞍乗形状の凸形に合わせることによりフィッ
ト感が向上する。

【００３１】請求項６記載の発明では、衝撃吸収材の上
部を乗物幅方向から見て凹状曲面に形成しており、乗物
の振動等により乗物幅方向の横ずれが防止される。

【００３２】請求項７記載の発明では、衝撃吸収材の厚
みを乗物の前後方向で変化させており、乗物の振動等に
より乗物の前後方向のずれが防止される。

【００３３】請求項８記載の発明では、衝撃吸収材の上
部に乗物の前方向または後方向の傾斜面を有する凹凸を
形成しており、乗物の振動等により乗物の前後方向のず
れが防止される。

【００３４】請求項９記載の発明では、シートの衝撃吸
収材を置く部分に凹凸部を設け、凹凸部により衝撃吸収
材の撓み量が増し、着座者に振動が伝達することを軽減
すると共に、乗物の振動等により着座者の座骨近傍に加
わる衝撃力を緩和する。

【００３５】

【００３６】請求項１１記載の発明では、シートの収納
凹部に衝撃吸収材を置いて、シートをボトムプレートに
締付固定すると、衝撃吸収材が押されて広がり収納凹部
に隙間なく収納され、衝撃吸収材のずれが防止される。

【００３７】請求項１２記載の発明では、シートに衝撃
吸収材を埋設して、衝撃吸収材が熱の影響を受けにくい
構造になっており、衝撃吸収材の性能が熱の影響で損な
われることを防止している。

【００３８】請求項１３記載の発明では、衝撃吸収材を
断熱材で包み、衝撃吸収材が熱の影響を受けにくい構造
になっており、衝撃吸収材の性能が熱の影響で損なわれ
ることを防止している。

【００３９】請求項１４記載の発明は、シートの上部ま
たは底部に断熱材を配置し、衝撃吸収材が熱の影響を受
けにくい構造になっており、衝撃吸収材の性能が熱の影
響で損なわれることを防止している。

【００４０】請求項１５記載の発明では、シートが、成
形型に衝撃吸収材を入れてクッション材を発泡させて、
このクッション材と衝撃吸収材を接着させており、シー
トにかかる荷重で衝撃吸収材に張力が働き弾性が増し
て、着座者に振動が伝達することを軽減すると共に、乗
物の振動等により着座者の座骨近傍に加わる衝撃力を緩
和する。

【００４１】

【００４２】

【００４３】

【００４４】請求項１５記載の発明では、着座者が着座
可能な背もたれ部を有するシートの着座部に衝撃吸収材
を配置するとともに、背もたれ部において、少なくとも
着座部より鉛直上方距離８０〜１８０ｍｍの範囲に衝撃
吸収材を配置しており、走行中運転者の骨盤の上端と腰
椎を支持し、上半身が安定し、快適である。また、運転
者に振動が伝達されることを軽減すると共に、道路の凹
凸あるいは急加減速により乗車者の座骨や骨盤、腰椎近
傍に加わる衝撃力を緩和する。

【００４５】

【実施例】以下、この発明の乗物用シートの実施例につ
いて図面に基づいて説明する。

【００４６】まず、この発明の乗物用シートとして、自
動二輪車のシートについて説明する。図１乃至図５は請
求項１記載の乗物用シートの実施例を示し、図１は運転
者が乗車した状態の自動二輪車の側面図、図２はシート
の断面図、図３はシートの平面図、図４は図２のIV-IV
線に沿う断面図、図５は座り心地特性を示す図である。

【００４７】自動二輪車の車体フレーム１にはエンジン
２が搭載され、車体フレーム１の前側のヘッドパイプ３
にはフロントフォーク４が設けられている。フロントフ
ォーク４の下部に前輪５が設けられ、上部にハンドル６
が設けられ、ハンドル６は両側にグリップ７を有してい
る。車体フレーム１の後側には、リヤアーム７００が設
けられ、リヤアーム７００の後部に後輪８が設けられて
いる。車体フレーム１の上部には燃料タンク９が配置さ
れ、燃料タンク９の後方にはシート１０が設けられてい
る。シート１０は、運転者Ａが着座する着座部１０ａ
と、同乗者が着座する着座部１０ｂが段状に連続して形
成されているタンデムシートである。運転者Ａがステッ
プ１１に足を乗せてシート１０の着座部１０ａに着座
し、ハンドル６のグリップ７を握って操向し、同乗者は
着座部１０ｂに着座して乗る。

【００４８】シート１０は、金属や硬質合成樹脂等の板
状体からなるボトムプレート１２を有し、このボトムプ
レート１２の下部に取付ステー１３が設けられ、この取
付ステー１３を車体フレーム１に係合して取付られる。
ボトムプレート１２の上方には、ウレタンフォーム製の
クッション本体１４と粘弾性体の衝撃吸収材１５，１６
からなるクッション１７が配置され、ＰＶＣ（ポリ塩化
ビニール）レザーの表地とウーリーナイロンの裏地から
なる合成皮革のシート表皮１８が、クッション１７の表
面を覆って、ボトムプレート１２の周縁に固着されてい
る。

【００４９】シート１０の運転者Ａの着座部１０ａには
衝撃吸収材１５が左右一対配置され、衝撃吸収材１５
は、図３に示すように、車両の前後方向の幅Ｄ１１が例
えば略２４０ｍｍ程度に、また車幅方向の幅Ｄ１２が左
右とも略１００ｍｍ程度に設定されている。また、同乗
者の着座部１０ｂには衝撃吸収材１６が左右一対配置さ
れ、衝撃吸収材１６は、図３に示すように、車両の前後
方向の幅Ｄ２１が例えば略２００ｍｍ程度に、また車幅
方向の幅Ｄ２２が左右とも略１００ｍｍ程度に設定され
ている。

【００５０】シート１０の運転者Ａの着座部１０ａに配
置された衝撃吸収材１５は、図１に示すように、衝撃吸
収材１５の中心点Ｐ１が、グリップ点Ｐ２から後方に水
平距離Ｙ±１００（ｍｍ）の範囲内に設定されている。

【００５１】ただし、Ｙ＝１６４．１＋０．８６９Ｘで
あり、Ｘ＝グリップ点Ｐ２とステップ点Ｐ３の水平方向
距離（ｍｍ）である。

【００５２】このように、シート１０の運転者Ａの着座
部１０ａに衝撃吸収材１５を配置し、この衝撃吸収材１
５の配置位置を特定することで、運転者Ａの臀部に振動
が伝達することを軽減すると共に、道路の凹凸あるいは
急加減速により運転者Ａの骨盤Ａ１の座骨Ａ２近傍にか
かる衝撃力を緩和することができる。

【００５３】また、シート１０は、前側の運転者の着座
部１０ａに衝撃吸収材１５を配置し、後側に同乗者の着
座部に衝撃吸収材１６を左右一対配置し、図１に示すよ
うに、同乗者の着座部に配置した衝撃吸収材１６の中心
点Ｐ４を、運転者Ａの着座部１０ａの衝撃吸収材１５の
中心点Ｐ１より後方に水平距離略３５０（ｍｍ）程度の
位置に設定している。

【００５４】このように、シート１０の同乗者の着座部
１０ｂに衝撃吸収材１６を配置し、この衝撃吸収材１６
の配置位置を特定することで、同乗者の臀部に振動が伝
達することを軽減すると共に、道路の凹凸あるいは急加
減速により同乗者の座骨近傍にかかる衝撃力を緩和する
ことができる。

【００５５】また、左右の衝撃吸収材１５の中心点Ｐ１
の間隔Ｄ３と、左右の衝撃吸収材１６の中心点Ｐ４の間
隔Ｄ４は、それぞれ略１１０〜１４０ｍｍ程度の範囲に
設定され、これにより骨盤Ａ１の左右の座骨Ａ２近傍に
かかる衝撃力を緩和することができる。

【００５６】さらに、図２に示すように、シート１０
は、クッション本体１４と粘弾性体の衝撃吸収材１５か
らなるクッション１７を表皮で覆ってなり、着座部にお
けるクッション１７の厚さＨ０とし、衝撃吸収材１５の
厚さＨ１とし、クッション本体１４の厚さすなわちクッ
ション１７の厚さＨ０から衝撃吸収材１５の厚さＨ１を
差し引いた厚さＨ２とし、 ２０＜Ｈ０＜９０（ｍｍ） ５＜Ｈ１＜２０（ｍｍ） であり、 ０．１２５＜Ｈ１／Ｈ２＜１ ０．１＜Ｈ１／Ｈ０＜０．５ の関係が成立するように設定している。

【００５７】このように、着座部におけるクッション１
７の厚さＨ０を、２０＜Ｈ０＜９０（ｍｍ）とし、衝撃
吸収材１５の厚さＨ１を、５＜Ｈ１＜２０（ｍｍ）とす
れば、着座部におけるクッション１７の厚さＨ０が９０
ｍｍのとき、衝撃吸収材１５の厚さＨ１が１０ｍｍ以上
では、Ｈ１／Ｈ０＝０．１で、Ｈ１／Ｈ２＝０．１２５
となり、また、着座部におけるクッション１７の厚さＨ
０が２０ｍｍのとき、衝撃吸収材１５の厚さＨ１が１０
ｍｍ以下では、Ｈ１／Ｈ０＝０．５で、Ｈ１／Ｈ２＝１
となる。

【００５８】図５（ａ）は、例えば着座部におけるクッ
ション１７の厚さＨ０を９０ｍｍとして、衝撃吸収材１
５の厚さＨ１を変化させて座り心地の特性を示してお
り、衝撃吸収材１５の厚さＨ１が２０ｍｍの場合が座り
心地が最も良い。そして座り心地が良とみるのはＨ１が
１０ｍｍから４０ｍｍの間である。また、図５（ｂ）
は、例えば着座部におけるクッション１７の厚さＨ０を
２０ｍｍとして、衝撃吸収材１５の厚さＨ１を変化させ
て座り心地の特性を示しており、衝撃吸収材１５の厚さ
Ｈ１が５ｍｍの場合が座り心地が良い。

【００５９】以上より、 ０．１＜Ｈ１／Ｈ０＜０．４ ０．１２５＜Ｈ１／Ｈ２＜１ の各式が満たされた時、座り心地良が確保できると言え
る。

【００６０】なお、この実施例では、シート１０の着座
部におけるクッション１７の厚さと衝撃吸収材１５の厚
さについて説明したが、シート１０の着座部におけるク
ッション１７の厚さと衝撃吸収材１６の厚さについても
同様に設定される。

【００６１】図６乃至図８は請求項１記載の乗物用シー
トの他の実施例を示し、図６は運転者が乗車した状態の
スクータ型の自動二輪車の側面図、図７はシートの背も
たれ部の断面図、図８は背もたれ部の衝撃吸収材を示す
図である。

【００６２】スクータ型の自動二輪車は、図示しない車
体フレームが前カバー２０、後カバー２１及びフロアカ
バー２２で覆われている。運転者Ａはフロアカバー２２
に足を乗せてシート２３に着座して運転する。シート２
３には、運転者Ａの着座部２３ａの後方に背もたれ部２
３ｂが設けられている。運転者Ａの着座部２３ａにはボ
トムプレート２４の上方に、ウレタンフォーム製のクッ
ション本体２５と粘弾性体の衝撃吸収材２６からなるク
ッション２８が載置され、ＰＶＣ（ポリ塩化ビニール）
レザーの表地とウーリーナイロンの裏地からなる合成皮
革のシート表皮２９が、クッション２８の表面を覆っ
て、ボトムプレート２４の周縁に固着されている。

【００６３】また、背もたれ部２３ｂには、同様にボト
ムプレート３０の前側に、ウレタンフォーム製のクッシ
ョン本体３１と粘弾性体の衝撃吸収材３２からなるクッ
ション３３が載置され、ＰＶＣ（ポリ塩化ビニール）レ
ザーの表地とウーリーナイロンの裏地からなる合成皮革
のシート表皮３４が、クッション３３の表面を覆って、
ボトムプレート３０の周縁に固着されている。衝撃吸収
材３２は、図８に示すように、車幅方向の幅Ｄ５は、例
えば略２５０ｍｍ程度に設定され、高さ方向の幅Ｄ６
は、例えば略１５０ｍｍ程度に形成されている。

【００６４】背もたれ部２３ｂに配置した衝撃吸収材３
２の中心点Ｐ５は、着座部２３ａが運転者Ａの体重で撓
む量約３０ｍｍ程度を考慮し、運転者Ａの着座部２３ａ
の押圧点Ｐ６より鉛直上方距離Ｚ略８０〜１８０（ｍ
ｍ）程度の位置に設定している。即ち、運転者Ａの骨盤
Ａ１の上端部分Ａ３が中心に当たる位置に衝撃吸収材３
２を配置している。

【００６５】このように、シート２３の運転者Ａの着座
部２３ａに衝撃吸収材２６を配置し、また背もたれ部２
３ｂの着座部に衝撃吸収材３２を配置し、背もたれ部２
３ｂに配置した衝撃吸収材３２の配置位置を特定するこ
とで、走行中運転者Ａの骨盤Ａ１の上端部分Ａ３と腰椎
部分Ａ４の近傍を支持し、上半身が安定し、快適であ
る。また、運転者Ａが着座していると、その臀部の骨盤
Ａ１の上端部分Ａ３と腰椎部分Ａ４の近傍には、シート
後方からの衝撃力が集中して作用するが、衝撃吸収材３
２により骨盤と腰椎近傍において衝撃力を緩和すること
ができる。

【００６６】このシート２３の着座部におけるクッショ
ン２８の厚さＨ０とし、衝撃吸収材２６の厚さＨ１と
し、シート２３の着座部におけるクッション２８の厚さ
Ｈ０から衝撃吸収材２６の厚さＨ１を差し引いた厚さＨ
２とし、シート２３の着座部におけるクッション２８の
厚さＨ０と衝撃吸収材２６の厚さＨ１も前記実施例と同
様に設定されるから説明を省略する。また、背もたれ部
２３ｂにおいても、シート２３のクッション３３の厚さ
Ｈ０と衝撃吸収材３２の厚さＨ１も同様に設定されるか
ら説明を省略する。

【００６７】図９は請求項２記載の乗物用シートの実施
例を示す平面図である。この実施例のシート５０は、衝
撃吸収材５１の座圧の高い部分５１ａに、凹部５２を形
成しないで、座圧の低い部分５１ｂに凹部５２を形成し
ている。衝撃吸収材５１は、運転者Ａの着座範囲に設け
られており、凹部５２は衝撃吸収材５１に穴を開けて形
成されている。この実施例では、衝撃吸収材５１の前側
の特に敏感な大腿部が当たる部分に凹部５２が形成さ
れ、衝撃吸収材５１を柔らかくしている。

【００６８】このように、衝撃吸収材５１の座圧の高い
部分５１ａには、凹部５２を形成しないで、座圧の低い
部分５１ｂに凹部５２を形成することで、簡単な構造で
衝撃吸収材５１の硬さの調整が可能である。

【００６９】図１０は請求項３記載の乗物用シートの実
施例を示し、図１０（ａ）はシートの平面図、図１０
（ｂ）は衝撃吸収材の断面図である。この実施例のシー
ト６０は、衝撃吸収材６１に、凹部６２を形成してい
る。凹部６２は、図１０（ｂ）に示すように、衝撃吸収
材６１に穴を開けて形成され、凹部６２の径を上方から
下方にいくに従い変化させている。

【００７０】このように、衝撃吸収材６１に凹部６２を
形成し、凹部６２の径を上方から下方にいくに従い変化
させることで、シート沈み量が変化するに従い弾性が変
化し、着座者の座り心地が向上する。

【００７１】図１１は請求項４記載の乗物用シートの自
動二輪車のシートの他の実施例を示し、図１１（ａ）は
シートの平面図、図１１（ｂ）はシートの断面図であ
る。この実施例のシート６５は、衝撃吸収材６６の前側
部６６ａに密度または径が小さい凹部を形成し、後側部
６６ｂに密度または径が大きい凹部を形成し、前側部６
６ａが硬く、後側部６６ｂが柔らかくなっている。この
ため、運転者Ａが着座した時の撓みが前側部６６ａが小
さく、後側部６６ｂが大きくなり、運転者Ａの臀部の前
ずれが防止される。

【００７２】このように、衝撃吸収材６６に、例えば座
圧分布に応じて凹部の密度または径を変化させること
で、着座者が着座した場合のずれを防止でき、座り心地
が向上する。

【００７３】図１２乃至図１５は請求項４乃至請求項７
記載の乗物用シートの実施例を示している。図１２の実
施例は、シート６５に配置した衝撃吸収材６７の上部を
車幅方向から見て凸状曲面６７ａに形成し、シートの外
形の鞍乗形状の凸形に合わせることによりフィット感が
向上する。

【００７４】図１３の実施例は、シート６５に配置した
衝撃吸収材６８の上部を車幅方向から見て凹状曲面６８
ａに形成し、車両の振動や道路の凹凸あるいは急加減速
により車幅方向の横ずれが防止される。

【００７５】図１４の実施例は、シート６５に配置した
衝撃吸収材６９の前側部６９ａを厚く、後側部６９ｂを
薄くして厚みを車両の前後方向で変化させている。な
お、衝撃吸収材６９の前側部６９ａを薄く、後側部６９
ｂを厚くして厚みを車両の前後方向で変化させることも
できる。このように、衝撃吸収材６９の厚みを車両の前
後方向で変化させており、車両の振動や道路の凹凸ある
いは急加減速により車両の前後方向のずれが防止され
る。

【００７６】図１５の実施例は、シート６５に配置した
衝撃吸収材７０の上部に車両の前方向の傾斜面を有する
凹凸７０ａを形成している。なお、衝撃吸収材７０の上
部に車両の後方向の傾斜面を有する凹凸を形成すること
もできる。このように、衝撃吸収材７０の上部に車両の
前方向または後方向の傾斜面を有する凹凸７０ａを形成
しており、車両の振動や道路の凹凸あるいは急加減速に
より車両の前後方向のずれが防止される。

【００７７】図１６乃至図１８は請求項８乃至請求項１
０記載の乗物用シートの実施例を示している。図１６の
実施例では、図１６（ａ）に示すように、シート７１の
ボトムプレート７２に衝撃吸収材７３が置かれ、さらに
衝撃吸収材７３の上にクッション本体７４が置かれてい
るが、図１６（ｂ）の拡大図に示すように、ボトムプレ
ート７２の内側にリブ７２ａにより凹凸部７２ｂが形成
され、この凹凸部７２ｂ上に衝撃吸収材７３が配置され
ている。このように、シート７１の衝撃吸収材７３を置
く部分に凹凸部７２ｂを設け、衝撃吸収材７３が圧力を
受けると、凹凸部７２ｂのリブ７２ａの間に衝撃吸収材
７３が侵入し、これにより衝撃吸収材７３の撓み量が増
し、着座者に振動が伝達されることを軽減すると共に、
道路の凹凸あるいは急加減速により着座者の臀部に加わ
る衝撃力を緩和することができる。

【００７８】図１７はシートの拡大図であり、この実施
例では、ボトムプレート７２に薄い部分７２ｃを形成
し、この薄い部分７２ｃ上に衝撃吸収材７３を配置して
いる。このように、シート７１の衝撃吸収材７３を置く
薄い部分７２ｃに弾性を与えることで、着座者に振動が
伝達されることを軽減すると共に、道路の凹凸あるいは
急加減速により着座者の臀部に加わる衝撃力を緩和する
ことができる。

【００７９】図１８はシートの拡大図であり、この実施
例では、ボトムプレート７２に開口部７２ｄを形成し、
この開口部７２ｄを内側から覆うようにバネ材７４を設
け、バネ材７４上に衝撃吸収材７３を配置している。こ
のように、シート７１の衝撃吸収材７３を置く部分にバ
ネ材７４により弾性を与えることで、着座者に振動が伝
達されることを軽減すると共に、道路の凹凸あるいは急
加減速により着座者の臀部に加わる衝撃力を緩和するこ
とができる。

【００８０】図１９は請求項１１記載の乗物用シートの
実施例を示している。図１９（ａ）は、クッション本体
の断面図、図１９（ｂ）はクッション本体の底面図であ
り、クッション本体７６には、衝撃吸収材７７を置く部
分に収納凹部７６ａが設けられている。収納凹部７６ａ
の角部７６ｂにはアールを設けてクッション本体７６の
亀裂を防止している。図１９（ｃ）及び図１９（ｄ）
は、衝撃吸収材の組付状態を示し、クッション本体７６
の収納凹部７６ａより衝撃吸収材７７を厚くして締め代
Ｊを形成すると共に、逃げ部として収納凹部７６ａより
衝撃吸収材７７の周辺部を小さくして隙間Ｋを形成し、
クッション本体７６とボトムプレート７８で衝撃吸収材
７７を押圧して締付固定し、シート表皮７９がクッショ
ン本体７６の表面を覆って、ボトムプレート７８の周縁
に固着して、シート８０が形成される。

【００８１】このように、クッション本体７６の収納凹
部７６ａに衝撃吸収材７７を置いて、クッション本体７
６をボトムプレート７８に締付固定すると、衝撃吸収材
７７が押されて広がり収納凹部７６ａに隙間なく収納さ
れ、衝撃吸収材７７のずれが防止される。

【００８２】図２０乃至図２３は請求項１２乃至請求項
１４記載の乗物用シートの実施例を示している。図２０
の実施例のシート８１は、クッション本体８２の中央部
に衝撃吸収材８３を埋設している。このように、シート
８１に衝撃吸収材８３を埋設することで、衝撃吸収材８
３が太陽熱やエンジンの熱、さらには冬期の低温の外気
温度の影響を受けにくい構造になっており、衝撃吸収材
８３の性能が熱の影響で損なわれることを防止してい
る。

【００８３】図２１の実施例のシート８１は、ボトムプ
レート８４の内側に配置した衝撃吸収材８３を断熱材８
５で包んている。このように、衝撃吸収材８３を断熱材
８５で包むことで、衝撃吸収材８３が太陽熱やエンジン
の熱、さらには冬期の低温の外気温度の影響を受けにく
い構造になっており、衝撃吸収材８３の性能が熱の影響
で損なわれることを防止している。

【００８４】図２２の実施例のシート８１は、シート表
皮８６の下側に断熱材８７を入れ、シート８１の上部に
断熱材８７を配置し、図２３の実施例のシート８１は、
ボトムプレート８４の下側に断熱材８８を設け、シート
８１の底部に断熱材８８を配置している。このように、
シート８１の上部または底部に断熱材８７，８８を配置
し、衝撃吸収材８３が太陽熱やエンジンの熱、さらには
冬期の低温の外気温度の影響を受けにくい構造になって
おり、衝撃吸収材８３の性能が熱の影響で損なわれるこ
とを防止している。

【００８５】図２４は請求項１５記載の乗物用シートの
実施例を示している。図２４（ａ）は、シートを製造す
る状態を示す断面図、図２４（ｂ）はシートの断面図で
ある。図２４（ａ）に示すように、シート９０が、成形
型９１，９２に衝撃吸収材９３を入れてクッション材９
４を発泡させて、このクッション材９４と衝撃吸収材９
３を接着させて製造する。

【００８６】このように、シート９０が、成形型９１，
９２に衝撃吸収材９３を入れてクッション材９４を発泡
させて、このクッション材９４と衝撃吸収材９３を接着
させており、図２４（ｂ）に示すようにシート９０にか
かる荷重で衝撃吸収材９３に張力が働き弾性が増し、着
座者に振動が伝達されることを軽減すると共に、道路の
凹凸あるいは急加減速により着座者の臀部に加わる衝撃
力を緩和することができる。

【００８７】この発明の乗物用シートに用いられる衝撃
吸収材は、超軟質ウレタンエラストマーをマトリックス
樹脂として、その中に樹脂製マイクロバルーンを１〜５
％（重量％）混入した粘弾性体である。

【００８８】衝撃吸収材においてマトリックス樹脂とし
て使用される超軟質ウレタンエラストマーは、例えば、
ポリエーテル系ポリオール，ポリエステル系ポリオー
ル，トリアリルイソシアネート，ＭＤＩ（ジフェニルメ
タンジイソシアネート）／ＴＤＩ（トリレンジイソシア
ネート）プレポリマー，錫系触媒，フタル酸系可塑剤等
が混合されたもの、特公平３−１７８４８号公報に記載
されている新規なウレタン樹脂（出願人 イイダ産業株
式会社）、特開平３−３７２１７号公報に記載されてい
る超軟質エラストマー組成物（出願人 株式会社日本オ
ートメーション他）等であって、高分子計器株式会社製
の軟質材の硬度を測定するデュロメーターであるアスカ
ーＣ硬度計の硬度１５以下のウレタンエラストマーであ
る。

【００８９】衝撃吸収材においてマトリックス樹脂に混
入される樹脂製マイクロバルーンは、塩化ビニリデン系
樹脂（塩化ビニリデンアクリロニトリルコポリマー）の
外殻（平均粒度４０〜６０ミクロン、粒径範囲１０〜１
００ミクロン）の中にブテンガスが内包されているもの
で、エクスパンセルＤＥという商品名（スエーデンエク
スパンセル社製）で、低比重の充填材として従来から一
般的に市販されているものである。

【００９０】なお、超軟質ウレタンエラストマーに樹脂
製マイクロバルーンを混合する場合（この実施例では、
超軟質ウレタンエラストマーとしてイイダ産業株式会社
製の商品名オロテックスＵ１００３を使用し、これに樹
脂製マイクロバルーンとしてスエーデンエクスパンセル
社製の商品名エクスパンセルＤＥを混入）、ウレタンエ
ラストマーに対する樹脂製マイクロバルーンの混合量
（重量％）が１％以下では、注型硬化後に二層に分離し
てしまい、混合量（重量％）が５％以上では、混合後の
粘度が高くて注型時にエアーが入ってしまうこととな
る。

【００９１】上記のように超軟質ウレタンエラストマー
に樹脂製マイクロバルーンを混合した衝撃吸収材では、
図２８に示すように、樹脂製マイクロバルーンの混入量
に応じてその損失係数が高くなっており、超軟質ウレタ
ンエラストマー自体よりも粘着性が低くなっていて、ま
た、従来の自動二輪車のシートに使用されている他の粘
弾性体の衝撃吸収材と比較して、軽く（比重０．６
２）、反発弾性が小さく（反発弾性率８％）、温度変化
による硬さの変化が少なく、フィット感のあるものとな
っている。

【００９２】衝撃吸収材のフィット感については、従来
から搭乗者の感覚による官能評価が行われているだけ
で、客観的な数値で示すことが困難とされていたが、こ
の発明者は、腎部全体では撓みが少なくしっかりと受け
とめ、座った際に凸となる座骨部にはソフトに当たるこ
とがフィット感の良さにつながると考え、次のようなテ
スト方法によってフィット感を評価した。

【００９３】すなわち、図２５に示すような、島津製作
所製ＡＧＳ５００Ａオートグラフ（引張・圧縮試験機）
をテスト装置として使用し、径が１００ｍｍで厚さが２
０ｍｍの各サンプルを、図２６（Ａ）に示すような、円
柱部２１０の径が３０ｍｍで先端部２２０が半球状の押
しジグＡ、および、図２６（Ｂ）に示すような、径が１
００ｍｍの円板部２３０が押圧面となる押しジグＢによ
って、それぞれオートグラフにセットし、（１）押しジ
グＡでサンプルに荷重をかけ、撓み量が１０ｍｍになっ
たときの荷重（Ｘ値）を測定し、（２）押しジグＢでサ
ンプルに荷重をかけ、撓み量が１０ｍｍになったときの
荷重（Ｙ値）を測定して、（３）フィット感の台上評価
値Ｆを、Ｆ＝Ｙ／Ｘとして算出する。一方、同じく図２
５に示した、島津製作所製ＡＧＳ５００Ａオートグラフ
（引張・圧縮試験機）をテスト装置として使用し、径が
３０ｍｍで厚さが２０ｍｍ．の各サンプルを、図２７に
示すように、径が３０ｍｍの円板部２４０，２５０を有
するジグＣとジグＤの間に挟み込んで接着した状態でオ
ートグラフにセットし、（１）サンプルを２ｍｍ圧縮し
てその時のバネ定数（ｘ１）を測定し、（２）サンプル
を２ｍｍ引っ張ってその時のバネ定数（ｘ２）を測定
し、（３）圧縮時のバネ定数と引張時のバネ定数の比ｐ
を、ｐ＝ｘ１／ｘ２として算出する。

【００９４】各サンプルについて、上記のようなテスト
により測定したフィット感の台上評価値Ｆ値とバネ定数
比ｐ値、および、別途ＪＩＳＫ６３９４に基づくテスト
により測定した貯蔵弾性率の測定結果は下記の表１に示
す通りである。

【００９５】各サンプルは以下のようなものである。 Ａ 本実施例（商品名オロテックスに対して商品名エク
スパンセルＤＥを３．０重量％混入したもの） Ｂ 従来のウレタンフオーム Ｃ 低反発ウレタンフォーム１（ズレン１） Ｄ 低反発ウレタンフォーム２（ズレン２） Ｅ 低反発ウレタンフォーム３（ズレン３） Ｆ 衝撃吸収ウレタンフォーム（ポロン） Ｇ 衝撃吸収ウレタンフォーム（オロテックスＵ１００
３） Ｈ 衝撃吸収ウレタンフォーム（ソルボセイン）

【００９６】

【表１】 ＊貯蔵弾性率については、 ＪＩＳＫ６３９４に基づくテストによって測定 各サンプルは径が１００ｍｍで厚さが２０ｍｍ 平均歪１０％ 歪振幅１％ なお、表中のＭＰａ（メガパスカル）は、０．１０１９
７２ｋｇｆ／ｍｍに等しい値である さらに、各サンプルについて、それぞれを衝撃吸収材と
してシートに使用したときの官能評価は、下記の表２に
示す通りである。

【００９７】

【表２】 ＊１非常に悪い ２悪い ３普通 ４良い ５非常に良い 図２９は、フィット感の台上評価値Ｆを縦軸としバネ定
数比ｐを横軸とした座標上において、上記の表１に測定
結果が示された各サンプルの分布状態を表すものである
が、これと上記の表２の官能評価結果を合わせて見る
と、圧縮時のバネ定数と引張時のバネ定数の比ｐの値が
１．１以上の材質を選択すれば、フィット感の良いもの
になると考えられる。

【００９８】また、図３０は、上記表１の貯蔵弾性率と
上記表２の腎部への衝撃感との関係を表すものである
が、これから見ると、貯蔵弾性率が０．２２ＭＰａ以下
であれば、腎部ヘの衝撃感は少ないものと考えられる。

【００９９】すなわち、上記のような各テストの結果か
ら見ると、サンプルＡとして測定したこの実施例の衝撃
吸収材は、ｐ値が１．３０で貯蔵弾性率が０．１０２Ｍ
Ｐａであって、数値の上からも、フィット感が良く、腎
部への衝撃感は少ないものであることがわかる。

【０１００】前記のような自動二輪車に限らず、この発
明の乗物用シートは、図３１乃至図３５に示すような乗
物に同様に適用される。図３１のジェット推進機１００
を備える滑走艇１０１では、操縦者Ｂが着座可能なシー
ト１０２に、操縦者Ｂの着座部１０２ａに衝撃吸収材１
０３を配置しており、波浪あるいは急加減速により操縦
者Ｂの座骨近傍に加わる衝撃力を緩和する。

【０１０１】図３２の船外機２００を備える小型船舶２
０１では、操縦者Ｂが着座可能なシート２０２に、操縦
者Ｂの着座部２０２ａに衝撃吸収材２０３を配置し、同
様に同乗者Ｃが着座可能なシート２０４に、同乗者Ｃの
着座部２０４ａに衝撃吸収材２０５を配置し、波浪ある
いは急加減速により操縦者Ｂの座骨近傍に加わる衝撃力
を緩和する。

【０１０２】図３３のエンジン３００を備えるゴルフカ
ー３０１では、操縦者Ｄが着座可能なシート３０２に、
操縦者Ｄの着座部３０２ａに衝撃吸収材３０３を配置し
ており、走行地の凹凸により操縦者Ｄの座骨近傍に加わ
る衝撃力を緩和する。

【０１０３】図３４の小型雪上車４００では、操縦者Ｅ
が着座可能なシート４０１に、操縦者Ｅの着座部４０１
ａに衝撃吸収材４０２を配置しており、雪原の凹凸によ
り操縦者Ｅの座骨近傍に加わる衝撃力を緩和する。

【０１０４】図３５の乗用車５００では、操縦者Ｆが着
座可能なシート５０１に、操縦者Ｆの着座部５０１ａと
背もたれの着座部５０１ｂに衝撃吸収材５０２，５０３
を配置しており、道路の凹凸あるいは急加減速により操
縦者Ｆの座骨近傍、または骨盤や腰椎近傍に加わる衝撃
力を緩和する。

【０１０５】さらに、この発明の乗物用シートは、トラ
ック、バス、航空機等の乗物用シートにも同様に適用さ
れる。

【０１０６】

【発明の効果】前記したように、請求項１記載の発明
は、着座部におけるクッションの厚さと衝撃吸収材の厚
さの関係を規定したから、着座者に振動が伝達すること
を軽減すると共に、着座者の座骨近傍に加わる衝撃力を
緩和することができる。また、衝撃吸収材は、超軟質ウ
レタンエラストマーをマトリックス樹脂として、外殻を
樹脂とし内部にガスを充填した粒径が１０〜１００ミク
ロンの樹脂性マイクロバルーンを１〜５重量％混入して
なる粘弾性体からなり、衝撃吸収材の粘着性が低くなっ
て、その取り扱いが容易となり、衝撃吸収材のシートヘ
の組み付け作業がやり易くなる。 衝撃吸収材が、超軟質
ウレタンエラストマーと樹脂製マイクロバルーンの混合
物について、注型硬化後二層に分離してしまうというよ
うなことがなく、また、粘度が高くて注型時にエアーが
入ってしまうというようなこともない。 また、衝撃吸収
材が、引張時のバネ定数に対する圧縮時のバネ定数の比
（圧縮時のバネ定数／引張時のバネ定数）が１．１以上
であり、貯蔵弾性率が０．２２ＭＰａ以下であり、衝撃
吸収材をシートに組み付けたときの重量増が少なくな
り、着座したときのフィット感が良くなってシートの座
り心地が向上する。

【０１０７】請求項２記載の発明は、衝撃吸収材の座圧
の高い部分には、凹部を形成しないで、座圧の低い部分
に凹部を形成したから、簡単な構造で衝撃吸収材の硬さ
の調整が可能である。

【０１０８】請求項３記載の発明は、衝撃吸収材に凹部
を形成し、凹部の径を上方から下方にいくに従い変化さ
せたから、シート沈み量が変化するに従い弾性が変化
し、座り心地が向上する。

【０１０９】請求項４記載の発明は、衝撃吸収材に凹部
を形成し、例えば座圧分布に応じて凹部の径を変化させ
ることで、着座した場合のずれを防止でき、座り心地が
向上する。

【０１１０】請求項５記載の発明は、衝撃吸収材の上部
を乗物幅方向から見て凸状曲面に形成したから、シート
の外形の鞍乗形状の凸形に合わせることによりフィット
感が向上する。

【０１１１】請求項６記載の発明は、衝撃吸収材の上部
を乗物幅方向から見て凹状曲面に形成したから、乗物の
振動等により乗物幅方向の横ずれが防止される。

【０１１２】請求項７記載の発明は、衝撃吸収材の厚み
を乗物の前後方向で変化させたから、乗物の振動等によ
り乗物の前後方向のずれが防止される。

【０１１３】請求項８記載の発明は、衝撃吸収材の上部
に乗物の前方向または後方向の傾斜面を有する凹凸を形
成したから、乗物の振動等により乗物の前後方向のずれ
が防止される。

【０１１４】請求項９記載の発明は、シートの衝撃吸収
材を置く部分に凹凸部を設けたから、凹凸部により衝撃
吸収材の撓み量が増し、着座者に振動が伝達することを
軽減すると共に、乗物の振動等により着座者の座骨近傍
に加わる衝撃力を緩和することができる。

【０１１５】

【０１１６】請求項１１記載の発明は、シートの収納凹
部に衝撃吸収材を置いて、シートをボトムプレートに締
付固定したから、衝撃吸収材が押されて広がり収納凹部
に隙間なく収納され、衝撃吸収材のずれが防止される。

【０１１７】請求項１２記載の発明は、シートに衝撃吸
収材を埋設して、衝撃吸収材が熱の影響を受けにくい構
造にしたから、衝撃吸収材の性能が熱の影響で損なわれ
ることを防止することができる。

【０１１８】請求項１３記載の発明は、衝撃吸収材を断
熱材で包み、衝撃吸収材が熱の影響を受けにくい構造に
したから、衝撃吸収材の性能が熱の影響で損なわれるこ
とを防止することができる。

【０１１９】請求項１４記載の発明は、シートの上部ま
たは底部に断熱材を配置し、衝撃吸収材が熱の影響を受
けにくい構造にしたか、衝撃吸収材の性能が熱の影響で
損なわれることを防止することができる。

【０１２０】請求項１５記載の発明は、シートが、成形
型に衝撃吸収材を入れてクッション材を発泡させて、こ
のクッション材と衝撃吸収材を接着させたから、シート
にかかる荷重で衝撃吸収材に張力が働き弾性が増して、
着座者に振動が伝達することを軽減すると共に、乗物の
振動等により着座者の座骨近傍に加わる衝撃力を緩和す
ることができる。

【０１２１】

【０１２２】

【０１２３】

【０１２４】請求項１５記載の発明では、背もたれ部へ
の衝撃吸収材の配置を規定したから、急加減速により着
座者の骨盤、腰椎近傍に加わる衝撃力を緩和することが
できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】運転者が乗車した状態の自動二輪車の側面図で
ある。

【図２】請求項１記載の乗物用シートの実施例を示す断
面図である。

【図３】図２のシートの平面図である。

【図４】図２のIV-IV線に沿う断面図である。

【図５】座り心地特性を示す図である。

【図６】運転者が乗車した状態のスクータ型の自動二輪
車の側面図である。

【図７】シートの背もたれ部の断面図である。

【図８】背もたれ部の衝撃吸収材を示す図である。

【図９】請求項２記載の乗物用シートの実施例を示す断
面図である。

【図１０】請求項３記載の乗物用シートを示す図であ
る。

【図１１】請求項４記載の乗物用シートの実施例を示す
図である。

【図１２】請求項５記載の乗物用シートの実施例を示す
断面図である。

【図１３】請求項６記載の乗物用シートの実施例を示す
断面図である。

【図１４】請求項７記載の乗物用シートの実施例を示す
断面図である。

【図１５】請求項７記載の乗物用シートの実施例を示す
断面図である。

【図１６】請求項８記載の乗物用シートの実施例を示す
図である。

【図１７】請求項９記載の乗物用シートの実施例を示す
衝撃吸収材の部分の断面図である。

【図１８】請求項１０記載の乗物用シートの実施例を示
す衝撃吸収材の部分の断面図である。

【図１９】請求項１１記載の乗物用シートの実施例を示
す図である。

【図２０】請求項１２記載の乗物用シートの実施例を示
す断面図である。

【図２１】請求項１３記載の乗物用シートの実施例を示
す断面図である。

【図２２】請求項１４記載の乗物用シートの実施例を示
す断面図である。

【図２３】請求項１４記載の乗物用シートの実施例を示
す断面図である。

【図２４】請求項１５記載の乗物用シートの実施例を示
す図である。

【図２５】衝撃吸収材のサンプルをテストするための装
置を示す概略図である。

【図２６】図２５に示したテスト装置でサンプルの撓み
量を測定するために使用する（Ａ）押しジグＡ，（Ｂ）
押しジグＢをそれぞれ示す側面図である。

【図２７】図２５に示したテスト装置でサンプルの圧縮
時と引張時のバネ定数を測定するために使用するジグ
Ｃ，ジグＤおよびそれらのジグに接着されたサンプルを
示す側面図である。

【図２８】衝撃吸収材における樹脂製マイクロバルーン
の配合量と損失係数の関係を示す説明図である。

【図２９】フィット感の台上評価値Ｆを縦軸としバネ定
数比ｐを横軸とした座標上における各衝撃吸収材サンプ
ルの分布状態を示す説明図である。

【図３０】臀部への衝撃感を縦軸とし貯蔵弾性率を横軸
とした座標上における各衝撃吸収材サンプルの分布状態
を示す説明図である。

【図３１】乗物用シートを備える滑走艇の側面図であ
る。

【図３２】乗物用シートを備える小型船舶の側面図であ
る。

【図３３】乗物用シートを備えるゴルフカーの側面図で
ある。

【図３４】乗物用シートを備える小型雪上車の側面図で
ある。

【図３５】乗物用シートを備える乗用車の側面図であ
る。

【符号の説明】

１０ シート １０ａ 着座部 １５ 衝撃吸収材 Ａ 運転者

フロントページの続き (56)参考文献 特開 平２−185837（ＪＰ，Ａ) 特開 昭57−170203（ＪＰ，Ａ) 特開 平３−37010（ＪＰ，Ａ) 特開 平１−113083（ＪＰ，Ａ) 特開 平２−9609（ＪＰ，Ａ) 特開 昭59−195478（ＪＰ，Ａ) 特開 平２−283737（ＪＰ，Ａ) 特開 平１−280413（ＪＰ，Ａ) 実開 昭59−11081（ＪＰ，Ｕ) 実開 昭59−55053（ＪＰ，Ｕ) 実開 平２−42543（ＪＰ，Ｕ) 実開 昭51−138307（ＪＰ，Ｕ) 実開 昭54−24854（ＪＰ，Ｕ) 実開 昭58−60438（ＪＰ，Ｕ) 実開 昭59−16444（ＪＰ，Ｕ) 実開 昭60−188073（ＪＰ，Ｕ) 実公 昭48−32108（ＪＰ，Ｙ１) 特表 平３−502530（ＪＰ，Ａ) (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) B60N 2/42 B62J 1/12 A47C 7/18 A47C 27/15

Claims (15)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】クッション本体と粘弾性体の衝撃吸収材か
   らなるクッションを表皮で覆ってなる乗物用シートにお
   いて、 着座者の着座部に前記衝撃吸収材を配置し、前記着座部
   における前記クッションの厚さ、前記衝撃吸収材の厚
   さ、及びクッション本体の厚さすなわちクッションの厚
   さから前記衝撃吸収材の厚さを差し引いた厚さを、それ
   ぞれＨ０、Ｈ１、Ｈ２とする時、 ２０＜Ｈ０＜９０（ｍｍ） ５＜Ｈ１＜２０（ｍｍ） であり、 ０．１２５＜Ｈ１／Ｈ２＜１ ０．１＜Ｈ１／Ｈ０＜０．５ の関係が成立するように設定し、さらに、前記衝撃吸収材は、超軟質ウレタンエラストマ
   ーをマトリックス樹脂として、外殻を樹脂とし内部にガ
   スを充填した粒径が１０〜１００ミクロンの樹脂性マイ
   クロバルーンを１〜５重量％混入してなる粘弾性体から
   なり、引張時のバネ定数に対する圧縮時のバネ定数の比
   （圧縮時のバネ定数／引張時のバネ定数）が１．１以上
   であり、貯蔵弾性率が０．２２ＭＰａ以下である ことを
   特徴とする乗物用シート。
2. 【請求項２】前記衝撃吸収材の座圧の高い部分には、凹
   部を形成しないで、座圧の低い部分に凹部を形成したこ
   とを特徴とする請求項１に記載の乗物用シート。
3. 【請求項３】前記衝撃吸収材に凹部を形成し、凹部の径
   を上方から下方にいくに従い変化させることを特徴とす
   る請求項１に記載の乗物用シート。
4. 【請求項４】前記衝撃吸収材に凹部を形成し、前記凹部
   の径を変化させることを特徴とする請求項１に記載の乗
   物用シート。
5. 【請求項５】前記衝撃吸収材の上部を乗物幅方向から見
   て凸状曲面に形成したことを特徴とする請求項１に記載
   の乗物用シート。
6. 【請求項６】前記衝撃吸収材の上部を乗物幅方向から見
   て凹状曲面に形成したことを特徴とする請求項１に記載
   の乗物用シート。
7. 【請求項７】前記衝撃吸収材の厚みを乗物の前後方向で
   変化させたことを特徴とする請求項１に記載の乗物用シ
   ート。
8. 【請求項８】前記衝撃吸収材の上部に乗物の前方向また
   は後方向の傾斜面を有する凹凸を形成したことを特徴と
   する請求項１に記載の乗物用シート。
9. 【請求項９】前記衝撃吸収材を置く部分に凹凸部を設け
   ることを特徴とする請求項１に記載の乗物用シート。
10. 【請求項１０】前記クッション本体に前記衝撃吸収材を
    置く部分に収納凹部を設け、この収納凹部より前記衝撃
    吸収材を厚くして締め代を形成すると共に、逃げ部とし
    て前記収納凹部より前記衝撃吸収材の周辺部を小さくし
    て隙間を形成し、前記クッション本体とボトムプレート
    で前記衝撃吸収材を押圧して締付固定して構成したこと
    を特徴とする請求項１に記載の乗物用シート。
11. 【請求項１１】前記クッション本体に前記衝撃吸収材を
    埋設して構成したことを特徴とする請求項１に記載の乗
    物用シート。
12. 【請求項１２】前記衝撃吸収材を断熱材で包んだことを
    特徴とする請求項１に記載の乗物用シート。
13. 【請求項１３】前記クッション本体の上部または底部に
    断熱材を配置したことを特徴とする乗物用シート。
14. 【請求項１４】成形型に前記衝撃吸収材を入れて前記ク
    ッション本体を発泡させて、このクッション本体と前記
    衝撃吸収材を接着させて構成したことを特徴とする請求
    項１に記載の乗物用シート。
15. 【請求項１５】前記乗物用シートに背もたれ部を配置
    し、この背もたれ部において、少なくとも前記着座部よ
    り鉛直上方距離８０〜１８０ｍｍの範囲に衝撃吸収材を
    配置し、さらに、前記背もたれ部に配置される前記衝撃吸収材
    は、前記着座部に配置される前記衝撃吸収材と同様、超
    軟質ウレタンエラストマーをマトリックス樹脂として、
    外殻を樹脂とし内部にガスを充填した粒径が１０〜１０
    ０ミクロンの樹脂性マイクロバルーンを１〜５重量％混
    入してなる粘弾性体からなり、引張時のバネ定数に対す
    る圧縮時のバネ定数の比（圧縮時のバネ定数／引張時の
    バネ定数） が１．１以上であり、貯蔵弾性率が０．２２
    ＭＰａ以下である ことを特徴とする請求項１に記載の乗
    物用シート。