JP3460602B2 - 反射音生成装置 - Google Patents

反射音生成装置

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、FIR(Finite
Impulse Response )フィルタを用いて音声信号の反射
音を生成する反射音生成装置に関し、少ないパラメータ
数で多数の反射音を生成することができ、かつルームサ
イズやライブネス等の残響特性の設定、変更等を容易に
したものである。
【0002】
【従来の技術】FIRフィルタを用いた反射音生成装置
は、反射音パラメータ(遅延時間とゲインで規定される
反射音群のパラメータ)を用いて音声信号を畳み込み演
算して反射音や残響音を生成する装置で、特定空間(例
えば狭い部屋)で任意の音場空間(例えばホール)を再
現したり、音響帰還系統中に配設して部屋(例えば音楽
室)やホール等の残響特性を調整したり残響時間を延長
する等の各種用途に用いられる。
【0003】従来のFIRフィルタを用いた反射音生成
装置として最も基本的な構成を図2に示す。これは、1
個のFIRフィルタ10を用いて反射音を生成するもの
である。FIRフィルタ10には例えば図3(a)に示
すような適宜の時間間隔で発生し徐々に減衰する複数本
の反射音を生成する反射音パラメータが設定されてい
る。FIRフィルタ10は入力される音声信号を反射音
パラメータで畳み込み演算して対応する反射音信号を生
成する。FIRフィルタ10の時間間隔を全体的に伸長
または短縮することによりルームサイズを変更する効果
が得られ、例えば図3(b)のように全体的に伸長する
ことによりルームサイズが広がった感じが得られる。ま
た、反射音パラメータの時間間隔はそのままで遅延時間
に応じてゲインを変えることによりライブネスを変更す
る効果が得られ、例えば図3(c)のように遅延時間に
応じてゲインを上昇させることによりライブな音場にす
ることができる。
【0004】図2の構成の反射音生成装置によれば、F
IRフィルタ10には、生成しようとする反射音の本数
分のパラメータ数(タップ数)が必要となる問題があっ
た。そこでこの問題を解決するものとして、図4に示す
反射音生成装置が提案されていた。これは、複数のFI
Rフィルタ12,14,16を縦列に接続し、各FIR
フィルタ12,14,16の出力を加算器17で加算し
て出力するようにしたものである。FIRフィルタ1
2,14,16の反射音パラメータを図5(a),
(b),(c)にそれぞれ示す。FIRフィルタ12で
初期反射音部分を生成し、この初期反射音部分を基にF
IRフィルタ14で初期反射音部分に続く残響音部分を
生成し、この残響音部分を基にFIRフィルタ16でこ
の残響音部分に続く残響音部分を生成する。これによれ
ば、前の段の反射音を基に次の段の反射音を生成するの
で、図5(d)に示すように、反射音密度が徐々に増大
する効果が得られ、少ない数のパラメータ数で多数の反
射音を生成することができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】図5の反射音パラメー
タを有する図4の構成の反射音生成装置によれば、ルー
ムサイズやライブネス等の残響特性を設定あるいは変更
する場合、各FIRフィルタ12,14,16ごとにパ
ラメータを調整する必要があり、残響特性等の各種パラ
メータの設定、変更が容易でなかった。
【0006】この発明は、前記従来の技術における問題
点を解決して、少ないパラメータ数で多数の反射音を生
成することができ、かつルームサイズやライブネス等の
残響特性の設定、変更等を容易にした反射音生成装置を
提供しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】この発明は、初期反射音
および後期残響音の時間領域にわたり比較的まばらでか
つ不均一の時間間隔で発生し遅延時間の経過とともに減
衰する反射音群に相当する第1の反射音パラメータが設
定され、入力される音声信号のサンプリングデータを該
第1の反射音パラメータで畳み込み演算して第1の反射
音データを生成する第1のFIRフィルタと、前記第1
の反射音パラメータの反射音よりも密集しかつ不均一の
時間間隔で発生する反射音群に相当する第2の反射音パ
ラメータが設定され、該第2の反射音パラメータ全体の
時間軸方向の長さが前記第1の反射音パラメータの反射
音の発生間隔よりも長くかつ該第1の反射音パラメータ
全体の時間軸方向の長さよりも短く設定され、前記第1
のFIRフィルタで生成された第1の反射音データを該
第2の反射音パラメータで畳み込み演算して該第1のF
IRフィルタによる反射音の発生間隔を埋める第2の反
射音データを生成する第2のFIRフィルタとを具備し
てなるものである。
【0008】この発明によれば、第1のFIRフィルタ
で発生される反射音を基にその発生間隔を埋める反射音
が第2のFIRフィルタで発生されるので、少ないパラ
メータ数で多数の反射音を生成することかできる。ま
た、第1の反射音パラメータは初期反射音および後期残
響音の時間領域にわたり反射音を発生するので、残響全
体の減衰特性を主に第1のFIRフィルタの設定で決め
ることができる。したがって、第1のFIRフィルタで
ルームサイズやライブネス等の残響特性を設定、変更す
ることができ、残響特性の設定、変更を容易に行うこと
ができる。
【0009】なお、第2の反射音パラメータの反射音群
を遅延時間の経過とともに減衰するように設定したり、
第1の反射音パラメータの反射音の発生間隔を遅延時間
の経過とともに徐々に短くなるように設定することによ
り、より自然に近い残響が得られる。また、第1の反射
音パラメータまたは第1および第2の反射音パラメータ
の各反射音の遅延時間を個別の周期で時間とともに変動
させる(ゆらぎをもたせる)ことにより、カラレーショ
ンの発生を抑えることができる。
【0010】また、直接音は第1、第2のFIRフィル
タを迂回して出力することもできるが、第1、第2のF
IRフィルタを通して出力する場合は、第1のFIRフ
ィルタについては第1の反射音パラメータの前に入力音
声信号を時間遅れなしでそのまま出力する直接音のパラ
メータを配置し、第2のFIRフィルタについては第2
の反射音パラメータの前に第1のFIRフィルタの出力
データを時間遅れなしでそのまま出力するパラメータを
配置し、かつ該パラメータの後に第1のFIRフィルタ
の直接音のパラメータと第1の反射音パラメータの先頭
のパラメータとの時間間隔とほぼ同じ時間間隔を隔てて
第2の反射音パラメータを配置する。
【0011】
【発明の実施の形態】この発明の実施の形態を図1に示
す。この反射音生成装置はFIRフィルタ18,20を
縦列に接続して構成される。入力される音声信号はFI
Rフィルタ18で反射音(第1の反射音データ)が生成
され、さらにFIR2で反射音の反射音(第2の反射音
データ)が生成されて出力される。
【0012】FIRフィルタ18に設定されたフィルタ
特性の一例を図6(a)に示す。このフィルタ特性は、
先頭(1本目のタップ)に直接音パラメータP10が配
されている。直接音パラメータ22は、遅延時間が0、
ゲインが0dB(減衰なし)に設定されている。
【0013】直接音パラメータP10に続いて、反射音
パラメータP11,P12,……,P1n(第1の反射
音パラメータ)が配されている。直接音パラメータP1
0と先頭の反射音パラメータP10との時間間隔はΔt
1は、想定する(再現しようとする)部屋やホール等に
おける平均自由行路に相当する値に設定されている。こ
れに続く反射音パラメータP11,P12の時間間隔は
Δt1とほぼ同じかまたはΔt1よりもやや短くされて
おり、さらにP13,P14,……,P1nと行くに従
い時間間隔は徐々に短くされている。時間間隔を徐々に
短くすることにより反射音密度が徐々に増大するととも
に、くし形フィルタ特性を抑えることができる。
【0014】パラメータP10,P11,……,P1n
の全体の長さT1は、初期反射音および後期残響音に亘
る比較的長い時間(再現しようとする音場の残響時間の
例えば1/2程度の長さ)であり、その時間内にパラメ
ータP10,P11,……,P1nが比較的まばらに
(全体で例えば30本以上)配置されている。パラメー
タP10,P11,……,P1nは所定の減衰カーブに
従って遅延時間の経過とともに徐々に減衰する。最終の
パラメータP1nのゲインは直接音パラメータP10に
対し−30dB以下に設定されている。反射音パラメー
タP11,P12,……,P1nの遅延時間は、図6
(a)に二点鎖線で示すように、個別の周期で時間とと
もに所定幅で変動する。これによりカラレーションが抑
えられている。
【0015】パラメータP10,P11,……,P1n
の時間間隔は図6(b)に示すように、相互の時間間隔
の比率を保持して全体的に伸縮可能とされており、ルー
ムサイズを変更することができる。また、パラメータP
10,P11,……,P1nは図6(c)に示すよう
に、時間間隔をそのままにして、ゲインを遅延時間に応
じて増減する(遅延時間が長いものほど増減の比率を大
きくする)ことにより、ライブネスを変更することがで
きる。
【0016】FIRフィルタ20に設定されたフィルタ
特性の一例を図7に示す。このフィルタ特性は、先頭
(1本目のタップ)にFIRフィルタ18の出力をその
まま通すパラメータP20が配されている。このパラメ
ータP20は、遅延時間が0、ゲインが0dB(減衰な
し)に設定されている。パラメータP20に続いて反射
音パラメータP21,P22,……,P2r(第2の反
射音パラメータ)が配されている。パラメータP20と
最初の反射音パラメータP21との間の時間間隔は、F
IRフィルタ18で生成された直接音パラメータP10
と先頭の反射音パラメータP11との間に別の反射音が
入り込まないように、FIRフィルタ18の直接音パラ
メータP10と先頭の反射音パラメータP11との時間
間隔Δt1とほぼ等しく(あるいはΔt1よりもやや長
く)設定されている。反射音パラメータP21,P2
2,……,P2rの時間間隔はランダム(不定)でかつ
Δt1よりも十分短く設定する。パラメータP20,P
21,……,P2r全体の時間軸方向の長さT2は、F
IRフィルタ18のパラメータP10,P11,……,
P1nの個々の時間間隔よりも長く、かつパラメータP
10,P11,……,P1nの全体の時間T1よりも短
く設定されている。パラメータP20,P21,……,
P2rの本数(タップ数)は例えば30本以上に設定さ
れている。
【0017】パラメータP20およびこれに続く反射音
のパラメータP21,P22,……,P2rは所定の減
衰カーブに従って徐々に減衰する。反射音のパラメータ
P21,P22,……,P2rのゲインは、最大のもの
でも0dB(ゲイン1)程度が望ましい。最終のパラメ
ータP2rのゲインはパラメータP20に対して例えば
−20dB以下に設定されている。なお、必要に応じて
このパラメータP20,P21,……,P2rの遅延時
間をFIRフィルタ18のパラメータP10,P11,
……,P1nと同様に個別の周期で時間とともに変動さ
せることができる。
【0018】FIRフィルタ20に設定されたフィルタ
特性の別の例を図8に示す。このフィルタ特性は、先頭
(1本目のタップ)にFIRフィルタ18の出力をその
まま通すパラメータP30が配されている。このパラメ
ータP30は、遅延時間が0、ゲインが0dB(減衰な
し)に設定されている。パラメータP30に続いて反射
音パラメータP31,P32,……,P3sが配されて
いる。パラメータP30と最初の反射音パラメータP3
1との間の時間間隔は、FIRフィルタ18の直接音パ
ラメータP10と最初の反射音パラメータP11との時
間間隔Δt1とほぼ等しく設定する。反射音パラメータ
P31,P32,……,P3sの時間間隔はランダム
(不定)でかつΔt1よりも十分短く設定されている。
パラメータP30,P31,……,P3s全体の時間軸
方向の長さT3は、FIRフィルタ18のパラメータP
10,P11,……,P1nの個々の時間間隔よりも長
く、かつパラメータP10,P11,……,P1nの全
体の時間T1よりも短く設定されている。パラメータP
30〜P3sの本数(タップ数)は例えば30本以上に
設定されている。
【0019】パラメータP30およびこれに続く反射音
のパラメータP31,P32,……,P3sは所定の減
衰カーブに従って徐々に減衰する。ここでは、−40d
Bを中心に上下に振動しながら収束する減衰特性を用い
ている。反射音のパラメータP31,P32,……,P
3sのゲインは、最大のものでも0dB(ゲイン1)程
度が望ましい。なお、必要に応じてこのパラメータP3
0,P31,……,P3sの遅延時間をFIRフィルタ
18のパラメータP10,P11,……,P1nと同様
に個別の周期で時間とともに変動させることができる。
【0020】なお、ルームサイズを変更する場合は、F
IRフィルタ18の遅延時間の変更に連動してFIRフ
ィルタ20の遅延時間も変更するのが望ましい。例え
ば、図6(b)のようにパラメータP10,P11間の
時間を2Δt1に変更する場合は、図7のパラメータP
20,P21間、図8のパラメータP30,P31間の
時間もそれぞれ2Δt1に変更する。さらには、パラメ
ータP20,P21間、パラメータP30,P31間だ
けでなく、パラメータP21,P31以降の各時間間隔
についても変更する(図6(b)の場合は、パラメータ
P21,P31以降の各時間間隔をそれぞれ2倍に延長
する)ことができる。また、ライブネスを変更する場合
は、FIRフィルタ18のゲインの変更に連動して、F
IRフィルタ20のゲインを変更する(すなわち、各反
射音パラメータのゲインをその遅延時間に応じて増減す
る(遅延時間が長いものほど増減の比率を大きくす
る))こともできる。
【0021】以上の構成によれば、FIRフィルタ18
で発生される反射音データを基にその発生間隔を埋める
反射音データが第2のFIRフィルタで発生されるの
で、少ないパラメータ数(タップ数)で多数の反射音を
生成することかできる。しかも、第1の反射音パラメー
タの反射音の発生間隔は徐々に短くなるので、徐々に密
度が増大する反射音、残響音が得られ、自然に近い残響
が得られる。また、残響全体の減衰特性は主に第1のF
IRフィルタ18の設定で決まるので、第1のFIRフ
ィルタ18でルームサイズやライブネス等の残響特性を
設定、変更することができ、残響特性の設定、変更を容
易に行うことができる。
【0022】図1の構成による実際のシミュレーション
例を図9に示す。(a)はFIRフィルタ18のパラメ
ータ、(b)はFIRフィルタ20のパラメータ、
(c)は図9の回路全体のパラメータである。(c)に
よれば、反射音の密度が時間とともに増大し、かつ減衰
特性はほぼFIRフィルタ18の減衰特性に従っている
ことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態を示すブロック図であ
る。
【図2】 従来装置を示すブロック図である。
【図3】 図2のFIRフィルタのパラメータ図であ
る。
【図4】 別の従来装置を示すブロック図である。
【図5】 図4のFIRフィルタのパラメータ図であ
る。
【図6】 図1のFIRフィルタ18のパラメータ図で
ある。
【図7】 図1のFIRフィルタ20のパラメータ図で
ある。
【図8】 図1のFIRフィルタ20の別のパラメータ
図である。
【図9】 図1の構成のシミュレーション図である。
【符号の説明】
18…第1のFIRフィルタ、20…第1のFIRフィ
ルタ。
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G10K 15/12 H03H 17/00 601 H03H 17/02 615

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】第1FIRフィルタと、第2FIRフィル
    タとを備える反射音生成装置であって、 第1FIRフィルタは、第1反射音パラメータが設定さ
    れ、入力される音声サンプリングデータを該第1反射音
    パラメータで畳み込み演算して第1反射音データを生成
    し、 第1反射音パラメータは、第1遅延時間で発生する初期
    反射音に続き、時間間隔を不均一とする反射音群を生成
    するものであり、 第2のFIRフィルタは、第2反射音パラメータが設定
    され、入力される第1反射音を該第2反射音パラメータ
    で畳み込み演算して第2反射音データを生成し、 第2反射音パラメータは、遅延時間無しで発生する最初
    の反射音、前記第1遅延時間とほぼ同じか、やや長い第
    2遅延時間で発生する2番目の反射音に続き、時間間隔
    を不均一とする反射音群を生成するものであり、 その全体の時間軸方向の長さは、前記第1反射音パラメ
    ータの反射音の発生間隔よりも長くかつ該第1反射音パ
    ラメータ全体の時間軸方向の長さよりも短い 反射音生成
    装置。
  2. 【請求項2】前記第2反射音パラメータの反射音群が遅
    延時間の経過とともに減衰するように設定されている請
    求項1記載の反射音生成装置。
  3. 【請求項3】前記第1反射音パラメータの反射音の発生
    間隔が遅延時間の経過とともに徐々に短くなるように設
    定されている請求項1または2記載の反射音生成装置。
  4. 【請求項4】前記第1反射音パラメータの各反射音の時
    間間隔を、相互の比率を保持して全体的に伸縮して、該
    パラメータの減衰の勾配が変更可能にされている請求項
    1から3のいずれかに記載の反射音生成装置。
  5. 【請求項5】前記第1反射音パラメータの各反射音の時
    間間隔をそのままにして、該各反射音のゲインをその遅
    延時間に応じて増減して、該パラメータの減衰の勾配が
    変更可能にされている請求項1から4のいずれかに記載
    の反射音生成装置。
  6. 【請求項6】前記第1反射音パラメータの各反射音の遅
    延時間が個別の周期で時間の経過とともに変動する請求
    項1から5のいずれかに記載の反射音生成装置。
  7. 【請求項7】前記第2反射音パラメータの各反射音の遅
    延時間が個別の周期で時間の経過とともに変動する請求
    項6記載の反射音生成装置。
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