JP4019753B2 - 残響付与装置、残響付与方法、プログラムおよび記録媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、音響信号に対し音響空間の残響効果を付与するための技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
ホールや教会などの音響空間におけるインパルス応答波形を記録しておき、このインパルス応答波形のサンプリングデータを音響信号に畳み込むことにより、当該音響空間における初期反射音やその後の残響音の効果を付与する装置(以下、残響付与装置という)がある。
音響空間におけるインパルス応答波形のサンプリングデータは、当該音響空間内に設置された音源から発せられたインパルス音やTSP(Time Stretched Pulse)等の音響測定信号をマイクロホン等により集音し、その後、電気信号に変換した音のアナログ信号波形をサンプリングし必要に応じた処理をすることにより得ることができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、残響時間が長い音響空間では、インパルス音の発生からしばらく経過した後であってもインパルス音の反射音、残響音が集音されるため、正確な残響空間を再現するためにはインパルス応答波形の時間は長いものとなる。そして、このような残響空間を再現するためには、大量のサンプリングデータを畳み込みこむ必要があり、膨大なハードウェアリソースが必要となってしまう。このため、従来は、以下に示すように比較的簡易なハード構成による方法を採っていた。
【0004】
(方法1)
インパルス応答波形のサンプリングデータのうち初期部分のみを使用する方法。
この方法によれば、インパルス音の発生から所定期間内に含まれるデータを使用して畳み込み演算を行い初期反射音の信号を生成する。後続する残響音の信号は、インパルス応答とは無関係に巡回型のフィルタを用いて人工的に生成する。
そして、初期反射音の信号に後続する残響音の信号を合成する、という方法である。
しかしながら、本方法では、後続する残響音の信号はインパルス応答とは無関係に生成されるため、初期反射音に後続残響音の信号をつなげたときにそのつながりが聴感上不自然になるという問題があった。信号のつながりを自然にするためには、フィルタ係数の微調整などの煩雑な作業が必要となっていた。
【0005】
(方法2)
インパルス応答波形のサンプリングデータのうち主要なデータのみを使用する方法。
たとえば、インパルス応答波形を所定サンプリング周波数でサンプリングしたデータの値のうち、一定のレベル以上にあるデータを抽出して主要データとして扱い、この主要データのみを使用して畳み込み演算処理を行う、というものである。
しかしながら、本方法では、インパルス応答波形のサンプリングデータのうち主要データしか使用しない。すなわち、主要データ以外のデータは間引かれてしまうため、空間の音響特性がかなり抜け落ちてしまい、十分な音響空間の再現ができない問題があった。
【0006】
本発明は、以上の点を考慮して行われたものであり、簡易な構成により十分な音場効果を表現することができる残響付与装置、残響付与方法、プログラムおよび記録媒体を提供することを目的とする。
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明に係る残響付与装置は、インパルス応答波形を一律のサンプリング周波数でサンプリングしたサンプリングデータであって、前記サンプリングデータにおいてインパルス音発生時からの第1の所定時間に対応する初期音響用データと、前記サンプリングデータにおいて前記初期音響用データに連続する第2の所定時間に対応する後部音響用データとを生成し、前記初期音響用データおよび前記後部音響用データのみを残響データとして記憶する記憶部と、処理対象となる音響信号に対し、畳み込み演算における遅延時間を前記サンプリングデータのサンプリング時間に対応して前記初期音響用データを畳み込むことにより初期音響信号を生成する第1の畳み込み演算部と、前記音響信号に対し、畳み込み演算における遅延時間を前記サンプリングデータのサンプリング時間に対応して前記後部音響用データを畳み込むことにより後部音響信号を生成する第2の畳み込み演算部と、設定された値より高い周波数の成分を減少させるフィルタと、設定された割合で信号のレベルを減少させる増幅器とを有し、前記第2の畳み込み演算部により生成された後部音響信号を上記フィルタおよび前記増幅器によって所定周期で繰り返し処理することにより得られる連続信号を生成する複数の残響部分信号生成部と、
前記複数の残響部分信号生成部が生成した複数の連続信号を加算して残響信号を生成する残響信号生成部と、前記初期音響信号、前記初期音響用データの時間長に相当する遅延を加えた前記後部音響信号および前記初期音響用データの時間長より大きい遅延を加えた前記残響信号を加算して出力する出力部とを具備することを特徴とする。
【0008】
このような構成をとる残響付与装置によれば、インパルス応答波形のサンプリングデータのうち、インパルス音発生時から第1の所定時間経過後までの初期期間に対応するサンプリングデータを畳み込むことにより初期音響信号(主に初期反射音に係る信号)を生成することができる(第1の畳み込み演算部)。また、インパルス応答波形のサンプリングデータのうち、初期期間が経過してから第2の所定期間に対応するサンプリングデータを畳み込むことにより、後部音響信号(初期反射音に後続する信号)を生成することができる(第2の畳み込み演算部)。よって、音響空間を特徴付ける比較的初期段階に係るデータについてはインパルス応答を忠実に再現させることができる。また、第2の畳み込み演算部により畳み込んで得られる信号を減衰させて繰り返すなどの処理により残響信号(残響音に係る信号)を生成することができる(残響信号生成部)。よって、インパルス応答波形のすべてのサンプリングデータを畳み込む必要がないため、膨大なハードウェアリソースが必要となることもなく簡易な構成をとることができる。そして、初期音響信号、後部音響信号および残響信号はいずれも同一のインパルス応答波形に基づき生成されるため、初期音響信号、後部音響信号および残響信号を加算した場合であっても(出力部)、信号のつながりが不自然になることもない。すなわち、簡易な構成により十分な音場効果を表現することが可能となる。
【0009】
また、本発明に係る残響付与装置は、インパルス応答波形を一律のサンプリング周波数でサンプリングしたサンプリングデータであって、前記サンプリングデータにおいてインパルス音発生時からの第1の所定時間に対応する初期音響用データと、前記サンプリングデータにおいて前記初期音響用データに連続する第2の所定時間に対応する後部音響用データとを生成し、前記初期音響用データおよび前記後部音響用データのみを残響データとして記憶する記憶部と、処理対象となる音響信号に対し、畳み込み演算における遅延時間を前記サンプリングデータのサンプリング時間に対応して前記初期音響用データを畳み込むことにより初期音響信号を生成する第1の畳み込み演算部と、前記音響信号に対し、畳み込み演算における遅延時間を前記サンプリングデータのサンプリング時間に対応して前記後部音響用データを畳み込むことにより後部音響信号を生成する第2の畳み込み演算部と、設定された値より高い周波数の成分を減少させるフィルタと、設定された割合で信号のレベルを減少させる増幅器とを有し、前記第2の畳み込み演算部により生成された後部音響信号を上記フィルタおよび前記増幅器によって所定周期で繰り返し処理することにより得られる連続信号を生成する複数の残響部分信号生成部と、前記複数の残響部分信号生成部が生成した複数の連続信号を加算して残響信号を生成する残響信号生成部と、前記残響信号の密度、位相の少なくとも1つを調整して拡散残響信号を生成する拡散部と、前記初期音響信号、前記初期音響用データの時間長に相当する遅延を加えた前記後部音響信号および前記初期音響用データの時間長より大きい遅延を加えた前記拡散残響信号を加算して出力する出力部とを具備することを特徴とする。
【0011】
本発明に係る残響付与方法は、インパルス応答波形を一律のサンプリング周波数でサンプリングしたサンプリングデータであって、前記サンプリングデータにおいてインパルス音発生時からの第1の所定時間に対応する初期音響用データと、前記サンプリングデータにおいて前記初期音響用データに連続する第2の所定時間に対応する後部音響用データとを生成し、前記初期音響用データおよび前記後部音響用データのみを残響データとして記憶装置に記憶する記憶段階と、処理対象となる音響信号に対し、畳み込み演算における遅延時間を前記サンプリングデータのサンプリング時間に対応して前記初期音響用データを畳み込むことにより初期音響信号を生成する第1の畳み込み演算段階と、前記音響信号に対し、畳み込み演算における遅延時間を前記サンプリングデータのサンプリング時間に対応して前記後部音響用データを畳み込むことにより後部音響信号を生成する第2の畳み込み演算段階と、前記第2の畳み込み演算段階において生成された後部音響信号を、設定された値より高い周波数の成分を減少させるフィルタと、設定された割合で信号のレベルを減少させる増幅器とによって所定周期で繰り返し処理することにより得られる連続信号を生成する処理を複数系統行う残響部分信号生成段階と、前記残響部分信号生成段階において生成された複数の連続信号を加算して残響信号を生成する残響信号生成段階と、前記初期音響信号、前記初期音響用データの時間長に相当する遅延を加えた前記後部音響信号および前記初期音響用データの時間長より大きい遅延を加えた前記残響信号を加算して出力する出力段階とを具備することを特徴とする。
【0012】
本発明に係る残響付与方法は、インパルス応答波形を一律のサンプリング周波数でサンプリングしたサンプリングデータであって、前記サンプリングデータにおいてインパルス音発生時からの第1の所定時間に対応する初期音響用データと、前記サンプリングデータにおいて前記初期音響用データに連続する第2の所定時間に対応する後部音響用データとを生成し、前記初期音響用データおよび前記後部音響用データのみを残響データとして記憶装置に記憶する記憶段階と、処理対象となる音響信号に対し、畳み込み演算における遅延時間を前記サンプリングデータのサンプリング時間に対応して前記初期音響用データを畳み込むことにより初期音響信号を生成する第1の畳み込み演算段階と、前記音響信号に対し、畳み込み演算における遅延時間を前記サンプリングデータのサンプリング時間に対応して前記後部音響用データを畳み込むことにより後部音響信号を生成する第2の畳み込み演算段階と、前記第2の畳み込み演算段階において生成された後部音響信号を、設定された値より高い周波数の成分を減少させるフィルタと、設定された割合で信号のレベルを減少させる増幅器とによって所定周期で繰り返し処理することにより得られる連続信号を生成する処理を複数系統行う残響部分信号生成段階と、前記残響部分信号生成段階において生成された複数の連続信号を加算して残響信号を生成する残響信号生成段階と、前記残響信号の密度、位相の少なくとも1つを調整して拡散残響信号を生成する拡散段階と、前記初期音響信号、前記初期音響用データの時間長に相当する遅延を加えた前記後部音響信号および前記初期音響用データの時間長より大きい遅延を加えた前記拡散残響信号を加算して出力する出力段階とを具備することを特徴とする。
【0013】
本発明に係るプログラムは、コンピュータを、インパルス応答波形を一律のサンプリング周波数でサンプリングしたサンプリングデータであって、前記サンプリングデータにおいてインパルス音発生時からの第1の所定時間に対応する初期音響用データと、前記サンプリングデータにおいて前記初期音響用データに連続する第2の所定時間に対応する後部音響用データとを生成し、前記初期音響用データおよび前記後部音響用データのみを残響データとして記憶装置に記憶させる記憶部と、処理対象となる音響信号に対し、畳み込み演算における遅延時間を前記サンプリングデータのサンプリング時間に対応して前記初期音響用データを畳み込むことにより初期音響信号を生成する第1の畳み込み演算部と、前記音響信号に対し、畳み込み演算における遅延時間を前記サンプリングデータのサンプリング時間に対応して前記後部音響用データを畳み込むことにより後部音響信号を生成する第2の畳み込み演算部と、設定された値より高い周波数の成分を減少させるフィルタと、設定された割合で信号のレベルを減少させる増幅器とを有し、前記第2の畳み込み演算部により生成された後部音響信号を上記フィルタおよび前記増幅器によって所定周期で繰り返し処理することにより得られる連続信号を生成する複数の残響部分信号生成部と、前記複数の残響部分信号生成部が生成した複数の連続信号を加算して残響信号を生成する残響信号生成部と、前記初期音響信号、前記初期音響用データの時間長に相当する遅延を加えた前記後部音響信号および前記初期音響用データの時間長より大きい遅延を加えた前記残響信号を加算して出力する出力部として機能させることを特徴とする。
【0014】
本発明に係るプログラムは、コンピュータを、インパルス応答波形を一律のサンプリング周波数でサンプリングしたサンプリングデータであって、前記サンプリングデータにおいてインパルス音発生時からの第1の所定時間に対応する初期音響用データと、前記サンプリングデータにおいて前記初期音響用データに連続する第2の所定時間に対応する後部音響用データとを生成し、前記初期音響用データおよび前記後部音響用データのみを残響データとして記憶装置に記憶させる記憶部と、処理対象となる音響信号に対し、畳み込み演算における遅延時間を前記サンプリングデータのサンプリング時間に対応して前記初期音響用データを畳み込むことにより初期音響信号を生成する第1の畳み込み演算部と、前記音響信号に対し、畳み込み演算における遅延時間を前記サンプリングデータのサンプリング時間に対応して前記後部音響用データを畳み込むことにより後部音響信号を生成する第2の畳み込み演算部と、設定された値より高い周波数の成分を減少させるフィルタと、設定された割合で信号のレベルを減少させる増幅器とを有し、前記第2の畳み込み演算部により生成された後部音響信号を上記フィルタおよび前記増幅器によって所定周期で繰り返し処理することにより得られる連続信号を生成する複数の残響部分信号生成部と、前記複数の残響部分信号生成部が生成した複数の連続信号を加算して残響信号を生成する残響信号生成部と、前記残響信号の密度、位相の少なくとも1つを調整して拡散残響信号を生成する拡散部と、前記初期音響信号、前記初期音響用データの時間長に相当する遅延を加えた前記後部音響信号および前記初期音響用データの時間長より大きい遅延を加えた前記拡散残響信号を加算して出力する出力部として機能させることを特徴としてもよい。
【0015】
なお、上述したプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録しておけば、取引等を行う上で便宜を図ることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
次に本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。
A:実施形態の構成・動作
図1は、この発明の一実施形態であるエフェクタ100の構成を例示するブロック図である。
エフェクタ100は、ホールや教会などの音響空間において測定されたインパルス応答波形やシミュレーションで得られたインパルス応答波形のサンプリングデータを記憶しており、当該サンプリングデータを音響信号と畳み込み演算処理することにより、その音響空間の初期反射音や後部残響音といった残響効果を付与した信号を生成するという残響付与装置としての機能を有している。
【0017】
エフェクタ100は、図1に示すように、操作部101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103、A/D(Analog / Digital)変換回路104、CPU(Central Processing Unit)105、表示部106、残響データメモリ107およびD/A(Digital / Analog)変換回路108、残響付与部120を有し、各部はバス109を介して互いに接続されている。
またA/D変換回路104には、マイクロホン10が接続されており、D/A変換回路108には、アンプ30を介してスピーカ40が接続されている。
【0018】
操作部101は、ユーザによって操作パネルのキー操作が行われると、その操作に応じた操作信号をCPU105に出力する。
ROM102には、エフェクタ100の各部を制御するための各種プログラムが予め格納されている。RAM103は、ワーキングエリアとして用いられ、残響付与などの処理を行う際に必要なデータが一時的に格納される。
【0019】
A/D変換回路104は、所定周波数のサンプリングクロックが与えられる毎に、入力信号をサンプリングして出力する。
CPU105は、ROM102に格納されているプログラムを実行することにより、バス109を介して接続される装置各部を制御する。
表示部106は、液晶表示パネルと、この液晶表示パネルの表示制御を行う駆動回路とから構成される。
【0020】
残響データメモリ107には、インパルス応答波形のサンプリングデータが格納されている。
本発明に係るエフェクタ100の残響データメモリ107は、インパルス応答波形の全サンプリングデータの一部のみを格納することとしている。図2は、インパルス応答波形のサンプリングデータを模式的に示したものである。図2において、横軸は時間、縦軸は信号レベルである。また、サンプリング時間はTsである。
このようなインパルス応答波形のサンプリングデータのうち、インパルス音発生時から所定期間T1(例えばインパルス音発生時から0.3秒の期間)に含まれるデータD1が「初期反射音用データ」として残響データメモリ107に格納される。また、所定期間T1に後続する所定期間T2(例えばインパルス音発生時を基準として0.3〜0.5秒の期間)に含まれるデータD2が「後部残響音用データ」として残響データメモリ107に格納される。ここで、期間T1と期間T2は時間的に連続したものとなっている。なお、「初期反射音用データ」の前部にデータ値がほぼ0である区間があれば、かかる区間のデータは残響データメモリ107に格納しないようにしてもよい。これにより、残響データメモリ107の使用メモリ量を削減することができる。
【0021】
残響データメモリ107には、図3に示すように、該当する期間のサンプリングデータのデータ値がサンプリング時間Ts毎の時系列データとして格納される。データ値の情報としては、インパルス応答波形のサンプリングデータ値そのものを格納してもよく、インパルス応答波形のサンプリングデータのあるレベルで規格化した値を格納してもよい。また、各サンプルデータの時間情報をデータ値と対応付けて格納するようにしてもよい。
【0022】
残響付与部120は、入力信号である音響信号等のサンプリングデータに対して残響効果を付与したデータを生成する機能を有する。
図4は、残響付与部120の内部ブロック図であり、残響付与部120は、畳み込み演算部121、畳み込み演算部122、加算器123、遅延器124、フィルタ125、遅延器127、加算器128を備えている。
【0023】
畳み込み演算部121は、音響信号のサンプリングデータに対し、残響データメモリ107に格納される初期反射音用データD1を畳み込む演算処理を行い、演算結果を加算器128に出力する。
図5に示すように、畳み込み演算部121は、遅延器121D−1、121D−2、…、121D−(m−1)、乗算器121A−0、121A−1、121A−2、…、121A−(m−1)、加算器121K−1、121K−2、…、121K−(m−1)から構成されており、m段の畳み込み演算処理を行う。
遅延器121D−1、121D−2、…、121D−(m−1)の遅延時間T121は、インパルス応答波形のサンプリング時間Tsに対応している。また、乗算器121A−0、121A−1、121A−2、…、121A−(m−1)の各乗算係数として、残響データメモリ107内の初期反射音用データD1(La1、La2、…、Lam)を設定する。具体的には、乗算器121A−0の乗算係数として初期反射音データLa1、乗算器121A−1の乗算係数として初期反射音データLa2、…、乗算器121A−(m−1)の乗算係数として初期反射音データLamを設定する。
【0024】
畳み込み演算部122は、音響信号のサンプリングデータに対し、残響データメモリ107に格納される後部残響音用データD2を畳み込む演算処理を行い、演算結果を遅延器124および遅延器127に出力する。
図6に示すように、畳み込み演算部122は、遅延器122D−1、122D−2、…、122D−(n−1)、乗算器122A−0、122A−1、122A−2、…、122A−(n−1)、加算器122K−1、122K−2、…、122K−(n−1)から構成されており、n段の畳み込み演算処理を行う。
遅延器122D−1、122D−2、…、122D−(n−1)の遅延時間T122は、インパルス応答波形のサンプリング時間Tsに対応している。また、乗算器122A−0、122A−1、122A−2、…、122A−(n−1)の各乗算係数として、残響データメモリ107内の後部残響音用データD2(Lb1、Lb2、…、Lbn)を設定する。具体的には、乗算器122A−0の乗算係数として後部残響音データLb1、乗算器122A−1の乗算係数として後部残響音データLb2、…、乗算器122A−(n−1)の乗算係数として後部残響音データLanを設定する。
【0025】
遅延器127は、所定期間T127だけデータを遅延させる。所定期間T127の値は、畳み込み演算部121において畳み込む初期反射音データの時間長(本実施形態では期間T1を想定している)に相当する値に調整されている。
遅延器124は、所定期間T124だけデータを遅延させる。所定期間T124の値は、畳み込み演算部121において畳み込む初期反射音データの時間長、すなわちT1の値よりも大きくなるように(期間T127の値<期間T124の値)調整されている。
【0026】
フィルタ125は、フィードバックループを有するフィルタであり、本実施形態では図4に示すような櫛型フィルタ(Combフィルタ)を採用する。
より詳細に説明すると、フィルタ125は、図4に示すように、遅延器125D、125ID、ローパスフィルタ125L、増幅器125A、125GA、加算器125Kから構成されるフィルタを125F−1、125F−2、…、125F−pとP個並列に接続させたものである。ここで、遅延器125IDは、フィルタ125F−1の入力信号に対して所定遅延を与えるイニシャルディレイとしての役割を担っている。また、増幅器125GAは、フィルタ125F−1の出力信号全体のレベル調整を行う。
なお、ローパスフィルタは、高域を減衰させるものであればよく、シェルビングフィルタを用いてもよい。
【0027】
ここで図7は、フィルタ125F−1にパルス信号が供給されたときの出力信号を示した図である。図7に示したように、フィルタ125F−1の出力信号は、遅延器125Dによる遅延時間T125ごとにデータを後続させたものとなる。増幅器125Aの増幅係数を1未満の数に調整することにより、図7に示すように自然な減衰特性を有する信号をフィルタ125F−1から出力させることができる。
【0028】
ここで、フィルタ125F−1を構成するローパスフィルタ125Lは、所定の周波数以上の高周波信号成分を除去することができる。よって、各段のフィルタ125F−1、125F−2、…、125F−pを構成するローパスフィルタのフィルタ係数を調整、また、各段のフィルタの出力信号を増幅するための増幅器125GAの増幅係数を調整することにより、たとえば高周波の信号ほど残響時間が短くなるという実際の音響空間での音響特性を再現させることができる。
【0029】
図8は、畳み込み演算部122の出力信号S1、各フィルタ125F−1、125F−2、…、125F−pのそれぞれの出力信号S1−1、S1−2、…、S1−pおよびフィルタ125の出力信号S2の関係を模式的に示したものである。
畳み込み演算部122の演算結果から得られる信号S1は、各フィルタ125F−1、125F−2、…、125F−pに供給される。次いで、各フィルタからは、当該フィルタのフィルタ係数に応じた信号成分が繰り返し減衰しながら出力される。そして、各フィルタの出力信号S1−1、S1−2、…、S1−pの合成信号S2がフィルタ125から出力されることになる。
すなわち、図8に示すように、畳み込み演算部122の演算結果から得られる信号S1の期間Tcに比較し、期間Tfが長い(Tf>Tc)減衰信号S2をフィルタ125において生成、出力させることができるのである。
【0030】
なお、便宜上図8では、各フィルタ125F−1、125F−2、…、125F−pの出力信号S1−1、S1−2、…、S1−pについて同様の信号形としている。しかし、実際には各フィルタ125F−1、125F−2、…、125F−pのフィルタ係数の値により、出力信号S1−1、S1−2、…、S1−pの信号形(周波数特性や減衰特性)は異なるものとなる。
【0031】
加算器128、加算器123は、供給される2つの信号を合成(加算)したものを出力する。
加算器128は、畳み込み演算部121から得られる信号と遅延器127から得られる信号を合成した信号を出力する。加算器123は、加算器128から得られる信号とフィルタ125の出力信号を合成した信号を出力する。すなわち、加算器123からは、畳み込み演算部121から得られる信号、遅延器127から得られる信号およびフィルタ125の出力信号を合成した信号が出力されることになる。
【0032】
図9は、加算器123の出力信号を模式的に示す図である。上述したように本実施形態においては、遅延器127の遅延期間T127の値は、畳み込み演算部121において畳み込む初期反射音データの時間長(T1)対応するものとなっている。
このため、残響付与部120のインパルス応答において、加算器123は、はじめに畳み込み演算部121から得られる信号(初期音響信号)を出力した後、続けて、畳み込み演算部122から得られる信号(後部音響信号)を出力することになる。
ここで、畳み込み演算部121、122で用いる乗算係数は、いずれも同一のインパルス応答のインパルス応答波形に基づくデータを使用している。このため、畳み込み演算部121から得られる信号(初期音響信号)と畳み込み演算部122から得られる信号(後部音響信号)のつながりは自然なものとなる。データのつながりが聴感上不自然になるといった不具合は生じない。
【0033】
また、遅延器124の遅延時間T124は、遅延器127の遅延期間T127の値よりも大きいものに調整されているため、残響付与部120のインパルス応答において、加算器123は、畳み込み演算部122から得られる信号(後部音響信号)を出力した後、フィルタ125から出力される信号(残響信号)を出力することになる。
ここで、フィルタ125は、畳み込み演算部122から得られる信号を減衰させながら繰り返し出力することにより残響信号を生成している。このため、畳み込み演算部122から得られる信号(後部音響信号)とフィルタ125から出力される信号(残響信号)のつながりは自然なものとなる。データのつながりが聴感上不自然になるといった不具合は生じない。
【0034】
以上のように、残響付与部120のインパルス応答において、加算器123は、畳み込み演算部121から得られる信号(初期音響信号)、畳み込み演算部122から得られる信号(後部音響信号)およびフィルタ125から出力される信号(残響信号)を合成した信号を出力する。そして、図9に模式的に示すように、加算器123の出力信号はデータとしてつながりのよい、聴感上自然な信号となっている。
【0035】
その後、加算器123の出力信号(ディジタル信号)は、CPU105の制御下で、D/A変換回路108に供給される。D/A変換回路108でアナログ信号に変換された信号は、アンプ30を介してスピーカ40から残響効果が付与された音として出力される。
【0036】
このように本発明に係るエフェクタ100では、インパルス応答波形のサンプリングデータのうち、インパルス音発生時から所定時間経過後までの初期期間(たとえばインパルス音発生時を基準として0秒〜0.3秒の期間)に対応するサンプリングデータを畳み込み演算部121において畳み込むことにより初期反射音に係る信号(初期音響信号)を生成する。
また、インパルス応答波形のサンプリングデータのうち、初期期間の後の第2の所定期間(たとえば0.3秒〜0.5秒)に対応するサンプリングデータを畳み込み演算部122において畳み込むことにより後続する反射音に係る信号(後部音響信号)を生成する。
【0037】
ここで、本実施形態に係る残響付与部120は、畳み込み演算部122の演算結果を、遅延器127および遅延器124のいずれにも出力させる構成としている(前掲図4参照)。このような構成をとることにより、畳み込み演算部122の演算結果は、加算器123から残響付与結果としてそのまま出力される一方、フィルタ125において減衰特性が付与されることになる。すなわち、畳み込み演算部122の演算結果である後部音響信号は、初期音響信号に後続する信号として使用する一方、残響信号を生成するためのデータとしても使用される。
このため、音響空間を特徴付ける初期段階の音響空間については、インパルス応答波形のデータ内容を忠実に再現した畳み込み演算部121および畳み込み演算部122の畳み込み演算処理結果をそのまま用いることにより、十分な音響特性を表現することができる。
また、その後の音響空間については、フィルタ125により畳み込み演算部122の畳み込み演算処理結果を減衰処理させた信号を残響信号として用いることにより、音響特性を表現する。このため、インパルス応答波形のサンプリングデータをすべて畳み込む必要がないため、膨大なハードウェアリソースを必要とせずに、十分な音響特性を表現することができる。
また、残響信号の生成は、音響空間の特徴は表れているものの反射音間隔が比較的大きな初期反射音期間のサンプリングデータに基づくのではなく、それより後部で反射音間隔がより緻密になる後部残響音期間のサンプリングデータに基づいている。このため、インパルス応答波系の音響特性をより忠実に再現した残響音を生成することができる。
さらに、初期反射音に係る信号、後部残響音に係る信号、残響音に係る信号はいずれも、同一のインパルス応答波形のサンプリングデータに基づき生成されるため、双方の信号を加算器123により合成したとき、信号のつながりが不自然になってしまう問題も生じない。すなわち、入力信号に対し、原残響空間の特性を付与した信号を生成することができる。
また、フィルタ125において付加する残響特性の内容を適宜制御することにより、インパルス応答波形のデータ内容を保ったまま、言い換えると、音響空間の特性を保ったまま、残響時間を任意に制御することができる。
【0038】
B:変形例
以上、本発明の実施形態について説明したが、この実施形態はあくまでも例示であり、本発明の趣旨の範囲内で変形することができる。変形例としては、たとえば以下のようなものが考えられる。
【0039】
(変形例1)
上記実施形態に係るエフェクタ100は、インパルス応答波形のサンプリングデータのうち、インパルス音の発生(0秒)から所定期間(0秒〜0.3秒)に含まれるデータを初期反射音用データとし、その後の所定期間(0.3〜0.5秒)に含まれるデータを後部残響音用データとし、それぞれ記憶することとしているが、この構成は任意に変更可能である。例えば、0〜0.2秒に含まれるデータを初期反射音用データとし、0.2〜0.5秒に含まれるデータを後部残響音用データとしてもよい。すなわち、インパルス応答波形のサンプリングデータにおいて、初期反射音用データと後部残響音用データとが連続したものになっていれば、データのつながりが聴感上不自然になるといった問題は生じない。
【0040】
(変形例2)
図10に示すように、フィルタ125の後段にさらに密度調整フィルタ126を入れる構成としてもよい。密度調整フィルタとは、時間軸方向のデータの密度(パルスの密度)、およびデータの位相(パルスの位相)を調整(拡散)させるためのフィルタである。
ここで、時間軸方向のデータの密度を拡散させる目的は、一般のインパルス応答波形のサンプリングデータは、インパルス音が発せられてから時間が十分に経過するといわゆる拡散領域に入り、データ(パルス信号)の発生する時間的間隔が短くなっていくことを考慮したものである。
また、データの位相を拡散する目的は、インパルス応答波形のデータの位相を人間の左右の聴覚のバランスとして考えた場合、十分に時間が経過したときに位相の区別がなくなる音響特性を再現するためである。
このように、データの密度、データの位相を拡散することにより、音響空間におけるインパルス応答の後部領域(拡散領域)を模擬することが可能となる。
【0041】
以下に、密度調整フィルタ126の具体的な構成例をいくつか列挙する。
▲1▼ オールパスフィルタ(APF)を直接または並列に接続する構成。
図11は、z個のオールパスフィルタを、12APF−1、12APF−2、…、12APF−zと直列に接続させた構成である。
図12は、オールパスフィルタ12APFの入力波形と出力波形を例示したものである。図12に示したようにオールパスフィルタ12APF−1は、最初の信号の位相を反転する機能を有するフィルタである。そして、オールパスフィルタを12APF−1、2、…、zと直列に接続させることにより、順次位相を拡散した信号を生成、出力することができる。
また、図13に示すように、z個のオールパスフィルタ14APFと乗算器14Aを並列に接続させた構成をとってもよい。この場合も、入力信号に対して位相を拡散した信号を生成することができる。
【0042】
▲2▼ オールパスフィルタ(APF)を使いフィードバックループを形成した構成。
図14は、オールパスフィルタ15APFの出力を、ローパスフィルタ15L、遅延器15Dおよび増幅器15Aを介してフィードバックさせた構成である。
図15は、オールパスフィルタ15APFの入力波形と出力波形を例示したものである。オールパスフィルタ15APFにより入力信号の位相を拡散することができる。さらに、フィードバックによる信号を加算することにより、データの時間密度も順次増加させることができる。
ここで、データの時間密度が順次増加するとは、時間軸方向においてデータ(パルス信号)が存在する間隔が順次短くなることをいう。このようにデータの時間密度を順次増加させると、人間の聴覚で判断したときに個々の反射音に相当するパルスを区別することができなくなる効果を奏することができる。そして残響空間におけるいわゆる拡散領域を再現させることが可能になる。
【0043】
▲3▼ マルチタップディレイを使った構成(図16)。
図17は、マルチタップディレイ17MTDの入力波形と出力波形を例示したものである。マルチタップディレイ17MTDを構成する遅延器17D−1、2、…、qの遅延時間を異なるように調整すれば、データの時間密度を順次増加させることができる。
さらに、乗算器17A−0、17A−1、…、17A−qの乗算係数を−1〜1の範囲で設定することにより、データの位相を拡散させることも可能である。
また、フィードバックループを形成する構成(図18)としても、同様にデータの時間密度の増加、データの位相の拡散を行うことができる。
【0044】
以上、密度調整フィルタ126の具体的な構成例を示したが、これらのうちのいずれか1つを選択してもよく、複数を組み合わせて密度調整フィルタ126を構成してもよい。
【0045】
(変形例3)
上述した実施形態においては、インパルス応答波形のサンプリングデータを実測することとしているが、予め音場シミュレーションプログラムをROM102に格納しておき、ユーザが任意の音響空間のインパルス応答波形をシミュレーションしたものを畳み込みを行うサンプリングデータとして用いるようにしてもよい。
【0046】
(変形例4)
また、ユーザが、インパルス応答波形のサンプリングデータのうち、「初期反射音用データ」として使用するデータ、「後部残響音用データ」として使用するデータの領域範囲を指定できるような構成にしてもよい。このような構成によることにより、音響空間の残響特性をより特徴付けるデータを選択することができる。
【0047】
(変形例5)
残響データメモリ107に複数のインパルス応答波形データを格納する構成としてもよい。この場合は、図19に示すように、各々のインパルス応答に対応するホールや教会といった音響空間の名前も対応付けて、残響データメモリ107内に格納される。そして、ユーザが操作部101の操作を行うことにより、所望の音響空間を選択できる構成にしてもよい。
【0048】
(変形例6)
上記実施形態においては残響付与機能を搭載したエフェクタ100により説明しているが、この他、残響付与機能を搭載したミキサ、リバーブといった装置であっても本発明の適用は当然可能である。
【0049】
(変形例7)
本発明に係るプログラムを記録する記録媒体も任意であり、例えば、半導体メモリ、CD−ROM(Compact Disc- Read Only Memory)、CD−R(Compact Disc-Recordable)等の光ディスク、MO(Magneto Optical Disc)、MD(Mini Disc)等の光磁気ディスク、フロッピーディスク、ハードディスク等の磁気ディスク等があげられる。
また、かかるプログラムのインストール方法も任意であり、上述した記録媒体を使ってエフェクタ100にインストールすることとしてもよく、本発明に係るプログラムが格納されるサーバからインターネット等のネットワークを介してエフェクタ100にインストールする、いわゆるネット配信を用いる方法を使ってもよい。
【0050】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、音響空間の特性を保ったまま残響時間を任意に制御することができるため、簡易な構成により十分な音場効果を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態に係るエフェクタ100の構成図である。
【図2】 インパルス応答波形のサンプリングデータを模式的に示す図である。
【図3】 本発明の実施形態に係るエフェクタ100の残響データメモリ107のデータ内容を模式的に示す図である。
【図4】 同エフェクタ100の残響付与部120の構成図である。
【図5】 同エフェクタ100の畳み込み演算部121の構成図である。
【図6】 同エフェクタ100の畳み込み演算部122の構成図である。
【図7】 同エフェクタ100のフィルタ125の信号処理内容を説明するための図である。
【図8】 同エフェクタ100のフィルタ125の信号処理内容を説明するための図である。
【図9】 同エフェクタ100の残響付与部120の信号処理内容を説明するための図である。
【図10】 本発明の第2変形例に係るエフェクタの構成図である。
【図11】 本発明の第2変形例に係るエフェクタの密度調整フィルタ126の構成例である。
【図12】 同密度調整フィルタ126の信号処理内容を説明するための図である。
【図13】 同密度調整フィルタ126の別の構成例である。
【図14】 同密度調整フィルタ126の別の構成例である。
【図15】 同密度調整フィルタ126の信号処理内容を説明するための図である。
【図16】 同密度調整フィルタ126の別の構成例である。
【図17】 同密度調整フィルタ126の信号処理内容を説明するための図である。
【図18】 同密度調整フィルタ126の別の構成例である。
【図19】 本発明の第5変形例を説明するための図である。
【符号の説明】
100……エフェクタ、
101……操作部、
102……ROM(Read Only Memory)、
103……RAM(Random Access Memory)、
104……A/D(Analog / Digital)変換回路、
105……CPU(Central Processing Unit)、
106……表示部、
107……残響データメモリ、
108……D/A(Digital / Analog)変換回路、
109……バス、
120……残響付与部、
10……マイクロホン、
30……アンプ、
40……スピーカ。
Claims (7)
- インパルス応答波形を一律のサンプリング周波数でサンプリングしたサンプリングデータであって、前記サンプリングデータにおいてインパルス音発生時からの第1の所定時間に対応する初期音響用データと、前記サンプリングデータにおいて前記初期音響用データに連続する第2の所定時間に対応する後部音響用データとを生成し、前記初期音響用データおよび前記後部音響用データのみを残響データとして記憶する記憶部と、
処理対象となる音響信号に対し、畳み込み演算における遅延時間を前記サンプリングデータのサンプリング時間に対応して前記初期音響用データを畳み込むことにより初期音響信号を生成する第1の畳み込み演算部と、
前記音響信号に対し、畳み込み演算における遅延時間を前記サンプリングデータのサンプリング時間に対応して前記後部音響用データを畳み込むことにより後部音響信号を生成する第2の畳み込み演算部と、
設定された値より高い周波数の成分を減少させるフィルタと、設定された割合で信号のレベルを減少させる増幅器とを有し、前記第2の畳み込み演算部により生成された後部音響信号を上記フィルタおよび前記増幅器によって所定周期で繰り返し処理することにより得られる連続信号を生成する複数の残響部分信号生成部と、
前記複数の残響部分信号生成部が生成した複数の連続信号を加算して残響信号を生成する残響信号生成部と、
前記初期音響信号、前記初期音響用データの時間長に相当する遅延を加えた前記後部音響信号および前記初期音響用データの時間長より大きい遅延を加えた前記残響信号を加算して出力する出力部と
を具備することを特徴とする残響付与装置。 - インパルス応答波形を一律のサンプリング周波数でサンプリングしたサンプリングデータであって、前記サンプリングデータにおいてインパルス音発生時からの第1の所定時間に対応する初期音響用データと、前記サンプリングデータにおいて前記初期音響用データに連続する第2の所定時間に対応する後部音響用データとを生成し、前記初期音響用データおよび前記後部音響用データのみを残響データとして記憶する記憶部と、
処理対象となる音響信号に対し、畳み込み演算における遅延時間を前記サンプリングデータのサンプリング時間に対応して前記初期音響用データを畳み込むことにより初期音響信号を生成する第1の畳み込み演算部と、
前記音響信号に対し、畳み込み演算における遅延時間を前記サンプリングデータのサンプリング時間に対応して前記後部音響用データを畳み込むことにより後部音響信号を生成する第2の畳み込み演算部と、
設定された値より高い周波数の成分を減少させるフィルタと、設定された割合で信号のレベルを減少させる増幅器とを有し、前記第2の畳み込み演算部により生成された後部音響信号を上記フィルタおよび前記増幅器によって所定周期で繰り返し処理することにより得られる連続信号を生成する複数の残響部分信号生成部と、
前記複数の残響部分信号生成部が生成した複数の連続信号を加算して残響信号を生成する残響信号生成部と、
前記残響信号の密度、位相の少なくとも1つを調整して拡散残響信号を生成する拡散部と、
前記初期音響信号、前記初期音響用データの時間長に相当する遅延を加えた前記後部音響信号および前記初期音響用データの時間長より大きい遅延を加えた前記拡散残響信号を加算して出力する出力部と
を具備することを特徴とする残響付与装置。 - インパルス応答波形を一律のサンプリング周波数でサンプリングしたサンプリングデータであって、前記サンプリングデータにおいてインパルス音発生時からの第1の所定時間に対応する初期音響用データと、前記サンプリングデータにおいて前記初期音響用データに連続する第2の所定時間に対応する後部音響用データとを生成し、前記初期音響用データおよび前記後部音響用データのみを残響データとして記憶装置に記憶する記憶段階と、
処理対象となる音響信号に対し、畳み込み演算における遅延時間を前記サンプリングデータのサンプリング時間に対応して前記初期音響用データを畳み込むことにより初期音響信号を生成する第1の畳み込み演算段階と、
前記音響信号に対し、畳み込み演算における遅延時間を前記サンプリングデータのサンプリング時間に対応して前記後部音響用データを畳み込むことにより後部音響信号を生成する第2の畳み込み演算段階と、
前記第2の畳み込み演算段階において生成された後部音響信号を、設定された値より高い周波数の成分を減少させるフィルタと、設定された割合で信号のレベルを減少させる増幅器とによって所定周期で繰り返し処理することにより得られる連続信号を生成する処理を複数系統行う残響部分信号生成段階と、
前記残響部分信号生成段階において生成された複数の連続信号を加算して残響信号を生成する残響信号生成段階と、
前記初期音響信号、前記初期音響用データの時間長に相当する遅延を加えた前記後部音響信号および前記初期音響用データの時間長より大きい遅延を加えた前記残響信号を加算して出力する出力段階と
を具備することを特徴とする残響付与方法。 - インパルス応答波形を一律のサンプリング周波数でサンプリングしたサンプリングデータであって、前記サンプリングデータにおいてインパルス音発生時からの第1の所定時間に対応する初期音響用データと、前記サンプリングデータにおいて前記初期音響用データに連続する第2の所定時間に対応する後部音響用データとを生成し、前記初期音響用データおよび前記後部音響用データのみを残響データとして記憶装置に記憶する記憶段階と、
処理対象となる音響信号に対し、畳み込み演算における遅延時間を前記サンプリングデータのサンプリング時間に対応して前記初期音響用データを畳み込むことにより初期音響信号を生成する第1の畳み込み演算段階と、
前記音響信号に対し、畳み込み演算における遅延時間を前記サンプリングデータのサンプリング時間に対応して前記後部音響用データを畳み込むことにより後部音響信号を生成する第2の畳み込み演算段階と、
前記第2の畳み込み演算段階において生成された後部音響信号を、設定された値より高い周波数の成分を減少させるフィルタと、設定された割合で信号のレベルを減少させる増幅器とによって所定周期で繰り返し処理することにより得られる連続信号を生成する処理を複数系統行う残響部分信号生成段階と、
前記残響部分信号生成段階において生成された複数の連続信号を加算して残響信号を生成する残響信号生成段階と、
前記残響信号の密度、位相の少なくとも1つを調整して拡散残響信号を生成する拡散段階と、
前記初期音響信号、前記初期音響用データの時間長に相当する遅延を加えた前記後部音響信号および前記初期音響用データの時間長より大きい遅延を加えた前記拡散残響信号を加算して出力する出力段階と
を具備することを特徴とする残響付与方法。 - コンピュータを、
インパルス応答波形を一律のサンプリング周波数でサンプリングしたサンプリングデータであって、前記サンプリングデータにおいてインパルス音発生時からの第1の所定時間に対応する初期音響用データと、前記サンプリングデータにおいて前記初期音響用データに連続する第2の所定時間に対応する後部音響用データとを生成し、前記初期音響用データおよび前記後部音響用データのみを残響データとして記憶装置に記憶させる記憶部と、
処理対象となる音響信号に対し、畳み込み演算における遅延時間を前記サンプリングデ ータのサンプリング時間に対応して前記初期音響用データを畳み込むことにより初期音響信号を生成する第1の畳み込み演算部と、
前記音響信号に対し、畳み込み演算における遅延時間を前記サンプリングデータのサンプリング時間に対応して前記後部音響用データを畳み込むことにより後部音響信号を生成する第2の畳み込み演算部と、
設定された値より高い周波数の成分を減少させるフィルタと、設定された割合で信号のレベルを減少させる増幅器とを有し、前記第2の畳み込み演算部により生成された後部音響信号を上記フィルタおよび前記増幅器によって所定周期で繰り返し処理することにより得られる連続信号を生成する複数の残響部分信号生成部と、
前記複数の残響部分信号生成部が生成した複数の連続信号を加算して残響信号を生成する残響信号生成部と、
前記初期音響信号、前記初期音響用データの時間長に相当する遅延を加えた前記後部音響信号および前記初期音響用データの時間長より大きい遅延を加えた前記残響信号を加算して出力する出力部
として機能させるためのプログラム。 - コンピュータを、
インパルス応答波形を一律のサンプリング周波数でサンプリングしたサンプリングデータであって、前記サンプリングデータにおいてインパルス音発生時からの第1の所定時間に対応する初期音響用データと、前記サンプリングデータにおいて前記初期音響用データに連続する第2の所定時間に対応する後部音響用データとを生成し、前記初期音響用データおよび前記後部音響用データのみを残響データとして記憶装置に記憶させる記憶部と、
処理対象となる音響信号に対し、畳み込み演算における遅延時間を前記サンプリングデータのサンプリング時間に対応して前記初期音響用データを畳み込むことにより初期音響信号を生成する第1の畳み込み演算部と、
前記音響信号に対し、畳み込み演算における遅延時間を前記サンプリングデータのサンプリング時間に対応して前記後部音響用データを畳み込むことにより後部音響信号を生成する第2の畳み込み演算部と、
設定された値より高い周波数の成分を減少させるフィルタと、設定された割合で信号のレベルを減少させる増幅器とを有し、前記第2の畳み込み演算部により生成された後部音響信号を上記フィルタおよび前記増幅器によって所定周期で繰り返し処理することにより得られる連続信号を生成する複数の残響部分信号生成部と、
前記複数の残響部分信号生成部が生成した複数の連続信号を加算して残響信号を生成する残響信号生成部と、
前記残響信号の密度、位相の少なくとも1つを調整して拡散残響信号を生成する拡散部と、
前記初期音響信号、前記初期音響用データの時間長に相当する遅延を加えた前記後部音響信号および前記初期音響用データの時間長より大きい遅延を加えた前記拡散残響信号を加算して出力する出力部
として機能させるためのプログラム。 - 請求項5または請求項6のいずれかに記載のプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
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