JP3459006B2 - 有機エレクトロルミネセント装置 - Google Patents

有機エレクトロルミネセント装置

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は有機発光ダイオード
に関し、より詳細には、有機発光ダイオード(OLE
D)中で発光層または電荷輸送層として使われる、熱的
に安定な名目上アモルファス状の膜に関する。本発明の
膜は、イオン性の塩類似体をもたらすように改変された
色素から調製される。
【0002】
【従来の技術】有機発光ダイオード(OLED)は、デ
ィスプレイ技術で使用できる潜在的可能性があるため広
い注目を引いてきた。少数のプロトタイプのディスプレ
イが試作されてきたが、動作安定性および耐久性に関連
する問題があったため、広範囲に使用されることはなか
った。
【0003】OLED装置の劣化は、有機層の酸化など
の化学的変化や結晶化などの物理的変化によるものとさ
れてきた。多くの潜在的に有用な発光材料または電荷輸
送材料は、物理的蒸着により付着させたときに多結晶膜
を形成する。そのような膜は、蛍光消光部位として作用
しうる結晶粒界を含む。そのような問題を避けるために
は、アモルファス(ガラス状態)の薄い膜を付着させる
ことが装置製作のための1つの良い代替手法であると思
われる。しかし、ほとんどの高分子でない有機色素ガラ
スは熱的に不安定であり、装置中で駆動電圧をかけたと
き結晶化して装置の破損を引き起こす。
【0004】従来のOLED装置では、発光有機色素分
子(D)は一般に中性分子であり、弱いファンデルワー
ルス相互作用を通して相互作用している。これらの相互
作用が弱い性質のものであるために、最初はアモルファ
スであった膜を加熱させると(例えばその装置が駆動し
ているときのジュール熱、あるいは付着中の加熱)、簡
単に分子の再配列が起こり、結晶化および粒子の成長を
もたらす。
【0005】膜の結晶化の問題は、OLED装置分野の
多くの研究者によって認識されてきた。アモルファス状
の色素を合成する努力は、主に熱的に安定なアモルファ
ス状のポリマー中に色素を溶解することに焦点が絞られ
てきた。第2の手法は、より耐熱性が高くなる大きく対
称で剛性で密な分子の合成を狙いとするものである(ナ
イトー(Naito)等、J. Physical Chemistry、Vol 10
1、p.2350(1997)参照)。別の手法は、定義された低
分子量の構造へのスピロ中心の導入に基づくものである
(ザルベック(Salbeck)等、Synthetic Metals、vol.9
1、p.209(1997)参照)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、動作
安定性および耐久性に優れた有機発光ダイオードを提供
することであり、そのための熱的に安定なアモルファス
状膜を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、イオン性の塩
の誘導体を形成するように色素を改変する。このような
誘導体は、有機発光ダイオード(OLED)中の発光層
または電荷輸送層として使用される。この改変には、最
初の合成時にイオン化可能な置換基を結合させること、
およびそれに続いてイオン性の塩を形成させることが必
要である。そのようなイオン性の色素塩を使用した結
果、OLEDの耐久性およびパフォーマンスの改善が得
られる。というのは、蒸着した膜が名目上アモルファス
状で、熱的に安定であり、それ以上の結晶化に耐えられ
るからである。試験化合物を使って作成した試作装置は
優れた効率を示す。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明は、色素をイオン性の塩に
変換し、その塩をOLED装置中の発光層または電荷輸
送層として使用するものである。4量体チオフェンのオ
リゴマーに基づくオリゴチオフェン色素が、2つのエチ
ルアミノ末端基(イオン化可能な置換基)を含むように
改変された。[5,5'''−ビス(アミノエチル)−
2,2':5',2'':5'',2'''−4量体チオフェン
(AEQT)]分子の概略図を図1に示す。AEQTを
塩酸(HCl)と反応させることにより、中性のアミノ
基(−NH2)が正に帯電(−NH3 +)する。電荷を釣
り合わせるために、2つの塩素アニオン(Cl-)が対
応するアンモニウム・カチオン(−NH3 +)とイオン結
合を形成する。その結果得られる塩酸塩C202242
Cl2またはAEQT・2HCl(図2)が、OLED
装置中の発光層として使用される化合物である。
【0009】材料を薄い膜として付着することは、スピ
ン・コーティングなど種々の安価な低温法または熱蒸着
によって実現される。この場合、単一源熱アブレーショ
ン技術(本出願と同じ譲受人に譲渡された、同時係属の
コンドルディス(Chondroudis)他の米国特許出願第0
9/192130号に開示)を、名目上アモルファス状
の薄い膜を付着するために使用した。付着した膜の粉末
X線回折パターン(図3の1に示す)は、ほとんど特徴
がなく、アモルファス状または非常に小さな微粒子の膜
であることを示した。90℃および135℃で熱アニー
リングした後にも同じパターンが得られた。おそらくこ
れは、塩中の分子がファンデルワールス力だけでなく、
強いイオン性相互作用によって相互作用しているためで
ある。
【0010】このより強い結合により、薄い膜の付着中
または付着後の色素分子の再配列が妨害されると予想さ
れる。比較として、AEQT色素を塩に変換せずに蒸着
した。図3の2に示すように、この膜はアニーリングな
しでも結晶性で良く整列している。実際、そのような膜
を使ってOLEDを作成しようという試みは失敗に終わ
った。これは、これらの結晶性の膜が粒状の性質をも
ち、上部金属電極で適切に覆われず、そのため不均質な
場および電気的に短絡した装置が生じるからであった。
【0011】アモルファス膜を提供する本発明の方法の
可能性をさらに確立するために、走査電子顕微鏡(SE
M)を使ってこれらの膜の形態上の特性を研究した。図
4に示すように、AEQT・2HClの膜は、非常に均
質で微粒子(<約50nm)構造を有し、装置に理想的
である。他方では、AEQTの膜は大きな粒子サイズ
(約500nm)を有し非常に不規則な表面をもち、そ
のため装置の製作に不適当である(図5)。
【0012】本発明に従って調製された色素塩を使った
典型的なOLED装置の構造を図6および図7に示す。
基板として、光学的に平滑な石英基板1を使用した。透
明な陽極は、基板の上面に蒸着させた厚さ1500オン
グストロームのインジウム鉛酸化物(ITO)の層2を
含む。次いで、ITO層2の上面に4つのデバイス領域
4を画定するためにコンタクト・マスクを介して、厚さ
1200オングストロームの二酸化ケイ素層3を蒸着さ
せた(図7に示す)。次に、C202242Cl2塩か
らなる発光層5を、単一源熱アブレーション技術を使っ
て付着させた(2400オングストローム)。それに続
いて、試料を90℃で15分間、さらに135℃で2分
間熱アニーリングした。
【0013】次に、電子輸送剤(OXD7)6の薄い層
を熱的に付着させ(300オングストローム)、最後に
陰極を熱的に付着させることによって装置を完成させ
た。後者は、低い仕事関数の陰極をもたらすマグネシウ
ム−銀合金(25:1)7からなり、空気酸化を防止す
るため1200オングストロームの純銀8をかぶせた。
OXD7と陰極の付着は、真空システム内で熱蒸着によ
って行った。
【0014】デバイスの両端間に電圧9を印加すると、
通常の光条件下で室温で緑色のエレクトロルミネセンス
が容易に観察される。この装置の装置特性データを図8
ないし図10に示す。最適化されていないにもかかわら
ず、この装置は低いターン・オン電圧(9V未満)と
0.25lm/Wという高い効率を示す。
【0015】ノダ(Noda)等によるオリゴチオフェンの
薄い半導体の膜に関する以前の研究では、そのような膜
が良く整列し結晶性であったために、劣った効率(10
-4から10-8lm/W)を有する装置がもたらされた。
結晶性を低下させるためにトリフェニルアミノ置換され
た4量体チオフェンを使うことによって、0.03lm
/Wというより高い効率が得られた(ノダ(Noda)等、
Adv.Materials、Vol.9、p720(1997))。しかしこれら
の報告された効率は、本発明に従って作製されたデバイ
スが示す効率より低い。
【0016】前述のデバイスの説明は本発明を例示する
ものにすぎない。この技術は、前記発光層中に見出され
る分子と類似の有機分子を含み、やはり結晶化しやすい
OLED装置の正孔および電子輸送層に拡張することが
できる。典型的なOLED装置では、どちらか一方の電
荷輸送層(電子輸送層または正孔輸送層)が使用され、
あるいは有機発光層中への電荷注入を増強するために両
方の輸送層を使用することができる。
【0017】要約すると、中性の色素分子(D)を使用
する代わりに、本発明では、イオン化可能な置換基
(A)を含むように合成の段階で色素を改変して、(D
−A)を与える。次いで、電荷を釣り合わせるイオン
(X)を含む適当な反応体を加えることによって、色素
のイオン性の塩(DA+-またはDA-+)を合成す
る。膜の形で付着させるとき、中性の色素が結晶性の膜
になるのとは違って、イオン性の塩は通常アモルファス
状になる。それに加えて、イオン性の塩の膜は、より高
い温度に加熱したときでもアモルファス状のままである
(熱安定性を示す)。これらのイオン性の塩は、OLE
D装置中の発光層として使用され、対応する中性色素の
装置より効率的で丈夫である。
【0018】(DA+-)色素塩の諸成分を変更するこ
とによって種々の代替物を考案することができる。最も
重要な変更は、装置の発光特性(色、強度)を規定する
種々の色素(D)を適切に選択することである。例え
ば、潜在的な候補としてトラン、チオキサントン、クマ
リン、ローダミン、およびペリレン類の誘導体が含ま
れ、本発明はそのような代替物をすべて包含するもので
ある。これにより、様々な色を有する装置が作製でき、
フルカラー・ディスプレイの実現が可能になる。
【0019】変更できる他のファクタには、様々な異な
るイオン性置換基(A)および電荷を釣り合わせるイオ
ン(X)の使用が含まれる。電荷を釣り合わせるイオン
は、有機のものでも無機のものでもよい。分子に結合す
るイオン性置換基(A)の数もまた、結果として得られ
る膜のガラス質形成特性において重要である。塩中に存
在するイオン性の力が結晶性の欠如の原因であると考え
られるので、多数のイオン性置換基(A)を使用するほ
ど、より熱的に安定な膜が形成できる。一例を図11に
示すが、この図ではペリレン誘導体が4個の置換基を含
むように改変されて、(D−A+ 4)X- 4塩を形成する。
【0020】まとめとして、本発明の構成に関して以下
の事項を開示する。
【0021】(1)陽極と、陰極と、前記陽極と前記陰
極との間に配置された発光層とを含むエレクトロルミネ
セント装置であって、前記発光層が、イオン化可能な置
換基を含む有機色素と有機色素の電荷を釣り合わせるた
めの対イオンとを含む有機色素塩材料を含むエレクトロ
ルミネセント装置。 (2)前記有機色素塩材料が可視域で蛍光を発する上記
(1)に記載の装置。 (3)前記有機色素が、トラン、チオキサントン、クマ
リン、ペリレン、ピレン、オキサジアゾール、ポリエン
類、オリゴチオフェン類、オリゴフェニレン類、フェニ
レンビニレン類、チオフェンビニレン類の誘導体、およ
びそれらの混合物からなる群から選択される上記(1)
に記載の装置。 (4)前記有機色素が4量体チオフェンである上記
(1)に記載の装置。 (5)前記イオン化可能な置換基が、アミノ基、水酸
基、オキソ基、ニトロ基、スルホ基、カルボキシル基、
ホスホ基からなる群から選択される上記(1)に記載の
装置。 (6)前記イオン化可能な置換基がアルキルアミンであ
る上記(1)に記載の装置。 (7)前記イオン化可能な置換基がエチルアミンである
上記(1)に記載の装置。 (8)前記対イオンが、ハロゲン化物、アルカリ金属カ
チオン、アルカリ土類カチオンからなる群から選択され
る上記(1)に記載の装置。 (9)前記対イオンが、イオン化した形の、アミノ基、
水酸基、オキソ基、ニトロ基、スルホ基、カルボキシル
基、ホスホ基のうちの1種または複数の官能基を含む有
機イオンである上記(1)に記載の装置。 (10)陽極と、陰極と、発光層と、前記発光層に隣接
し前記陽極と前記陰極との間に配置された少なくとも1
つの電荷輸送層とを含むエレクトロルミネセント装置で
あって、前記電荷輸送層が、イオン化可能な置換基を含
む有機色素と有機色素の電荷を釣り合わせるための対イ
オンとを含む有機色素塩材料を含む装置。 (11)前記電荷輸送層が、トラン、チオキサントン、
クマリン、ペリレン、ピレン、オキサジアゾール、ポリ
エン類、オリゴチオフェン類、オリゴフェニレン類、フ
ェニレンビニレン類、チオフェンビニレン類の誘導体、
およびそれらの混合物からなる群から選択される分子を
含む上記(10)に記載の装置。 (12)前記イオン化可能な置換基が、アミノ基、水酸
基、オキソ基、ニトロ基、スルホ基、カルボキシル基、
ホスホ基からなる群から選択される上記(10)に記載
の装置。 (13)前記イオン化可能な置換基がアルキルアミンで
ある上記(10)に記載の装置。 (14)前記イオン化可能な置換基がエチルアミンであ
る上記(10)に記載の装置。 (15)前記対イオンが、ハロゲン化物、アルカリ金属
カチオン、アルカリ土類カチオンからなる群から選択さ
れる上記(10)に記載の装置。 (16)前記対イオンが、イオン化した形の、アミノ
基、水酸基、オキソ基、ニトロ基、スルホ基、カルボキ
シル基、ホスホ基のうちの1種または複数の官能基を含
む有機イオンである上記(10)に記載の装置。
【図面の簡単な説明】
【図1】単一の中性AEQT分子を示す図である。
【図2】イオン化されたAEQT分子の塩酸塩AEQT
・2HClを示す図である。
【図3】AEQT・2HClの膜1およびAEQTの膜
2の粉末X線回折パターンを示す図である。
【図4】AEQT・2HClの膜の走査電子顕微鏡(S
EM)写真である。
【図5】AEQTの膜の走査電子顕微鏡(SEM)写真
である。
【図6】発光層としてAEQT・2HCl色素塩を組み
込んだOLED装置の概略断面図である。
【図7】4つのデバイス領域を示す基板の概略底面図で
ある。
【図8】図6に示すOLED装置においてエレクトロル
ミネセンスを駆動電圧に対してプロットしたグラフであ
る。
【図9】図6に示すOLED装置において電流を駆動電
圧に対してプロットしたグラフである。
【図10】図6に示すOLED装置のエレクトロルミネ
センスのスペクトルを示す図である。
【図11】4個の置換基を含むように改変されたペリレ
ン誘導体を示す図である。
【符号の説明】
1 石英基板 2 インジウム鉛酸化物(ITO)層 3 二酸化ケイ素層 4 デバイス領域 5 発光層 6 電子輸送剤 OXD7 7 マグネシウム−銀合金(25:1) 8 純銀 9 電圧
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 デービッド・ビー・ミツィ アメリカ合衆国19514 ニューヨーク州 チャパクア スプリング・レーン58 (56)参考文献 特開 平7−86634(JP,A) 特開 平8−231536(JP,A) 特開 平11−149982(JP,A) 特開 平4−320484(JP,A) 特表 平11−514142(JP,A) 国際公開98/003042(WO,A1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H05B 33/00 - 33/28 CA(STN) REGISTRY(STN)

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】陽極と、陰極と、前記陽極と前記陰極との
    間に配置された発光層とを含むエレクトロルミネセント
    装置であって、前記発光層が、イオン化可能な置換基を
    含む有機色素と有機色素の電荷を釣り合わせるための対
    イオンとを含む有機色素塩材料を含み、 前記有機色素が4量体チオフェンであり、 前記イオン化可能な置換基がエチルアミンであり、 前記対イオンがCl - である エレクトロルミネセント装
    置。
  2. 【請求項2】陽極と、陰極と、前記陽極と前記陰極との
    間に配置された発光層とを含むエレクトロルミネセント
    装置であって、前記発光層が、イオン化可能な置換基を
    含む有機色素と有機色素の電荷を釣り合わせるための対
    イオンとを含む有機色素塩材料を含み、 前記有機色素塩材料が、下記に示される分子を含む装
    置。
  3. 【請求項3】前記有機色素塩材料が可視域で蛍光を発す
    る請求項1または請求項2に記載の装置。
  4. 【請求項4】陽極と、陰極と、発光層と、前記発光層に
    隣接し前記陽極と前記陰極との間に配置された少なくと
    も1つの電荷輸送層とを含むエレクトロルミネセント装
    置であって、前記電荷輸送層が、イオン化可能な置換基
    を含む有機色素と有機色素の電荷を釣り合わせるための
    対イオンとを含む有機色素塩材料を含み、 前記有機色素が4量体チオフェンであり、 前記イオン化可能な置換基がエチルアミンであり、 前記対イオンがCl - である エレクトロルミネセント装
    置。
  5. 【請求項5】陽極と、陰極と、発光層と、前記発光層に
    隣接し前記陽極と前記陰極との間に配置された少なくと
    も1つの電荷輸送層とを含むエレクトロルミネセント装
    置であって、前記電荷輸送層が、イオン化可能な置換基
    を含む有機色素と有機色素の電荷を釣り合わせるための
    対イオンとを含む有機色素塩材料を含み、 前記電荷輸送層が下記に示される分子を含む装置。
JP2000279995A 1999-09-15 2000-09-14 有機エレクトロルミネセント装置 Expired - Fee Related JP3459006B2 (ja)

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