JP5891055B2 - アリールアミン化合物および有機エレクトロルミネッセンス素子 - Google Patents

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Description

本発明は、各種の表示装置に好適な自発光素子である有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子に適した化合物と素子に関するものであり、詳しくは分子量1500以上6000以下のアリールアミン化合物と、該化合物を用いた有機EL素子に関するものである。
有機EL素子は自己発光性素子であるため、液晶素子にくらべて明るく視認性に優れ、鮮明な表示が可能であるため、活発な研究がなされてきた。
1987年にイーストマン・コダック社のC.W.Tangらは二層型の積層構造素子を開発することにより有機材料を用いた有機EL素子を実用的なものにした。彼らは電子を輸送する蛍光体と正孔を輸送する有機物とを積層し、両方の電荷を蛍光体の層の中に注入して発光させることにより、10V以下の電圧で1000cd/m以上の高輝度が得られるようになった(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
有機EL素子は、素子作製のプロセスと材料の特性の相違から、蒸着型の低分子系材料を用いた素子と塗布型の主として高分子系材料を用いた素子に分けられる。
蒸着型の素子は成膜のために真空蒸着装置を必要とするが、塗布型の素子は、塗布液を基板に塗布し、次いで塗布液中の溶媒を除去することによって容易に成膜をおこなえるので、製造工程が簡単となり、低コストで製造できる。インクジェット法やスプレーコート法、印刷法で簡便に塗布できるため、生産に高価な設備を必要としない。
塗布型の素子の作製に用いられる一般的な材料は、ポリ(1,4−フェニレンビニレン)(以後、PPVと略称する)などの高分子系の材料であった(例えば、非特許文献1参照)。
また二層の役割をさらに細分化して、発光層とは別に、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層を設けた有機EL素子が検討されている。正孔注入層や正孔輸送層を塗布によって作製するための正孔注入或いは輸送材料として、ポリ(エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルフォナート)(以後、PEDOT/PSSと略称する)が広範に用いられている(例えば、非特許文献2参照)。
しかし、PEDOT/PSSの塗布液は、PEDOTの分子鎖がイオン的な相互作用を及ぼしているPSSによって水和された水性のゲル分散液であるため、酸性の水溶液である。このため、塗布液がインクジェットの吐出ヘッドなどの塗布、印刷装置を腐食させるなど、使用上の難点がある。
また塗膜中のPSSが陽極に悪影響を与えることや、塗布液に使用した水が素子内に残存することが駆動中の劣化に繋がると指摘されている。さらに、PEDOTのチオフェン環が電子の流入によって還元されると言われている。これらの難点を有するがゆえに、PEDOT/PSSは十分な正孔注入・輸送材料であるとは言えず、とくに耐久性において、満足な素子特性が得られていなかった。
他方、蒸着型の素子における正孔注入・輸送材料としては、銅フタロシアニンや、下記式で表されるMTDATA:
やその誘導体(例えば、特許文献3参照)が提案されているが、これらは塗布によって安定な薄膜を形成させることができない。
また、有機EL素子の耐久性を高めるためには薄膜安定性の良い化合物を用いると良いとされている。薄膜安定性はアモルファス性の高い化合物ほど高く、アモルファス性の指標としてガラス転移点(Tg)が用いられている(例えば、非特許文献3参照)。
ガラス転移点(Tg)は高いほど良いとされているが、MTDATAのガラス転移点は76℃で、アモルファス性が高いとは言えない。そのため、有機EL素子の耐熱性などの耐久性において、また、正孔注入・輸送の特性に起因する発光効率においても、満足な素子特性が得られていなかった。
特開平8−48656号公報 特許第3194657号公報 特開平4−308688号公報
Applied Physics Letters 71−1 34ページ(1997) Optical Materials 9(1998)125 M&BE研究会Vol.11 No.1 32〜41頁発行年:2000(社)応用物理学会発行
本発明の目的は、高効率、高耐久性の有機EL素子用の材料として、優れた正孔注入・輸送性を有し、かつアモルファス性に優れた、均質な化合物を提供することにある。
本発明の他の目的は、上記化合物を用いて、高効率、高耐久性の有機EL素子を提供することにある。
本発明に適した化合物の物理的な特性としては、(1)アモルファス性が高く塗布による成膜に適していること、(2)正孔注入能力に優れること、(3)正孔輸送能力を有すること、(4)150℃以上のガラス転移点を有しており薄膜状態が安定なことをあげることができる。また、本発明に適した素子の物理的な特性としては、(1)塗布によって成膜できること、(2)発光効率が高いこと、(3)最大発光輝度が高いこと、(4)塗布によって積層素子を作製できることをあげることができる。
そこで本発明者らは、上記の目的を達成するために、分子量1500以上6000以下のアリールアミン化合物およびその誘導体である新規な化合物を設計して化学合成し、該化合物を用いて種々の有機EL素子を試作し、素子の特性評価を鋭意行なった結果、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明の上記目的は、一般式(1)で表される分子量1500以上6000以下のアリールアミン化合物、及び、一対の電極とその間に挟まれた少なくとも一層の有機層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、該化合物を、少なくとも1つの有機層の構成材料として含有する有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することにより達成された。
(式中、Xは単結合、CHあるいはCH、または、NあるいはNHを表し、Ar、Ar、Arはフェニル基、ビフェニル基またはターフェニル基を表し、R、R、R、R、R、Rはそれぞれ独立にアリール基を表し、このアリール基はさらにトリフェニルアミン部分構造を形成するようにしてジアリールアミノ基で置換されていてもよく、さらに末端のアリール基は繰り返してトリフェニルアミン様の部分構造を形成するようにしてジアリールアミノ構造含有基で置換されていてもよい。nは0または1を表す。)
本発明の一般式(1)で表される分子量1500以上6000以下のアリールアミン化合物の中で好ましいのは、分子内に窒素原子を9個または10個有しているもの、特に好ましくは10個有しているものである。また、一般式(1)で表される分子量1500以上6000以下のアリールアミン化合物の中で好ましいのは、分子内にトリフェニルアミン様の部分構造を7〜9個有しているものである。
一般式(1)中における基R〜Rの具体例としては、置換もしくは無置換のフェニル基、置換もしくは無置換のビフェニル基、置換もしくは無置換のナフチル基、置換もしくは無置換のターフェニル基があげられる。
本発明の一般式(1)で表される分子量1500以上6000以下のアリールアミン化合物は、優れた正孔注入・輸送特性を有するばかりでなく、塗布によって安定な薄膜を容易に形成することができる。この結果、高効率、高耐久性の有機EL素子を実現できることが明らかになった。
本発明の有機EL素子は、優れた正孔注入・輸送特性を有し、かつ安定な薄膜を形成する分子量1500以上6000以下のアリールアミン化合物を用いたため、高効率、高耐久性を実現することができる。
本発明は、有機EL素子の正孔注入層、あるいは正孔輸送層の薄膜の材料として有用な、分子量1500以上6000以下のアリールアミン化合物であり、該化合物を用いて作製した有機EL素子である。本発明により、従来の塗布型有機EL素子の発光効率と耐久性を格段に向上させることができる。
TOF−MSのチャート図である。 TOF−MSの拡大したチャート図である。 実施例8のEL素子構成を示した図である。 実施例9のEL素子構成を示した図である。 実施例10のEL素子構成を示した図である。 実施例11のEL素子構成を示した図である。 実施例8と比較例1と2の電圧/電流密度特性を比較したグラフである。 実施例8と比較例1と2の電圧/輝度特性を比較したグラフである。 実施例8と比較例1と2の電流密度/輝度特性を比較したグラフである。 実施例8と比較例1と2の電流密度/電流効率を比較したグラフである。
本発明のアリールアミン化合物およびその誘導体の分子量は、分子量1500以上6000以下が好ましい。このように本発明で分子量の下限を定める理由は、分子量が1500より小さい場合には塗布によって安定な薄膜を形成することができなかったり、作製した有機EL素子の駆動時に結晶化などの欠陥を引き起こすからである。一方、分子量を6000以下とする理由は、化学合成時に異なる分子量の化合物が副生して分離することが難しいからである。
本発明の、分子量1500以上6000以下のアリールアミン化合物は、アリールアミンとアリールハライドをウルマン反応などによって縮合することによって合成することができる。
一般式(1)で表されるアリールアミン化合物の中で、好ましい化合物の具体例を以下に示すが、本発明は、これらの化合物に限定されるものではない。
尚、「ジアリールアミノ構造含有基」としては、上記例示化合物に示されているように、4−(ジアリールアミノ)フェニル基や、4−(ジアリールアミノ)フェニル基を構成する一部のフェニル基あるいはフェニレン基に置換基を有するものが挙げられる。また、本明細書において「トリフェニルアミン様の部分構造」とは、無置換のトリフェニルアミン構造の他に、置換基を有するトリフェニルアミン構造および上記式(4)や(6)の化合物が有する末端構造を包含するものである。
本発明の化合物の精製はカラムクロマトグラフによる精製、溶媒による再結晶や晶析法などによって行った。カラム精製などにより単一分子種にまで精製することができた。化合物の構造は元素分析などによって同定した。本発明の化合物が有する特徴の一つは、分子量が大きいにもかかわらず、高分子材料のような多種の分子種の混合物ではなく、単一の分子種で構成されていることである。
本発明者らは、単一分子種であることを実証する手段として、化合物をイオン化して電位差空間をドリフトさせて検出する、飛行時間型質量分析装置(以後、TOF−MSと略称する)を用いた。TOF−MSを用いた分析結果は、本発明に用いた化合物の均質性を実証している。高純度の単一分子種であるために、有機EL素子の耐久劣化の要因である不純物によるキャリアトラップが少なく、有機EL素子を構成する有機層として好適である。
化合物の物性値として、DSC測定(Tg)と融点の測定を行った。融点は蒸着性の指標となり、ガラス転移点(Tg)は薄膜状態の安定性の指標となる。融点とガラス転移点は、粉体を用いて、マックサイエンス製の示差走査熱量測定装置を用いて測定した。
また仕事関数は、ITO基板の上に100nmの薄膜を作成して、理研計器製の大気中光電子分光装置AC2を用いて測定した。仕事関数は正孔注入能力の指標となるものである。
本発明の化合物は、塗布液を作製し、塗布によって薄膜を成膜して有機EL素子を作製することができる。塗布液を作製するために用いる溶媒にはシクロヘキサンやTHF、トリクロロエタンやo−ジクロロベンゼンなどの溶媒が適している。塗付液には発光材料や電子輸送材料などの機能性の化合物を混合することができる。
塗布液を用いた成膜方法として、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビア法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法などの塗布方法を用いることができる。
塗膜の厚さは、有機EL素子の駆動電圧と耐久性が最適となるように選択できる。少なくてもピンホールが発生しないような厚さが必要であり、あまり厚いと有機EL素子の駆動電圧が高くなって好ましくない。従って、塗膜の膜厚は、例えば1nmから1μmであり、好ましくは10〜200nmである。
本発明の有機EL素子の構造としては、基板上に順次に、陽極、正孔注入層、正孔輸送層、発光層兼電子輸送層、正孔阻止層、陰極からなるもの、また、陽極、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層、陰極からなるものがあげられる。これらの多層構造においては、例えば、陽極、正孔注入層兼正孔輸送層兼発光層兼電子輸送層、正孔阻止層、陰極からなるものように、何層かの有機層の機能を兼用することによって、有機層の数を少なくすることができる。また、本発明の有機EL素子は、上記以外の新たな機能層を有してもよい。
本発明の陽極としては、ITO、NESA、酸化スズのような仕事関数の大きな電極材料が用いられる。正孔注入層としては、本発明のアリールアミン化合物や高分子材料の塗膜を用いる。この塗膜の上に低分子材料を蒸着したり、高分子材料を重ねて塗布することによって、正孔輸送層や発光層などを積層することができる。高分子材料の例としては、PEDOT/PSSや、正孔輸送性の芳香族アミンを側鎖または主鎖に有する重合性の高分子などがあげられる。
また、銅フタロシアニン(以後、CuPcと略称する)やスターバースト型のトリフェニルアミン誘導体、ナフタレンアミン化合物などの材料を蒸着して用いることができる。
正孔輸送層としては、本発明のアリールアミン化合物のほか、ベンジジン誘導体であるN,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(m−トリル)ベンジジン(以後、TPDと略称する)やN,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(α−ナフチル)ベンジジン(以後、NPDと略称する)、種々のトリフェニルアミンの2量体や3量体、4量体を用いることができる。
本発明の発光層、あるいは電子輸送層としては、本発明のアリールアミン化合物に発光材料や電子輸送材料を混合したものや、高分子材料に電子輸送材料を混合したものを用いることができる。高分子材料の例としては、ポリジアルキルフルオレン誘導体、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(以後、PVKと略称する)、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリシロキサンなどがあげられる。また、各種の発光材料や、カルバゾール誘導体、キノリンのアルミ錯体、オキサゾール誘導体などの電子輸送材料を用いることができる。
また、発光層に例えば、キナクリドン、クマリン6、ルブレンなどの蛍光色素、あるいはフェニルピリジンのイリジウム錯体などの燐光発光材料など、ドーパントと称されている発光材料を添加することや、オキサゾール誘導体、トリアゾール誘導体などの電子輸送材料を添加することによって、本発明の有機EL素子の性能を高めることができる。
本発明の有機EL素子は正孔阻止層や電子注入層を有していても良い。正孔阻止層としてはバソクプロインやオキサゾール誘導体などを用いることができる。電子注入層としてはフッ化リチウムなどを用いることができる。本発明の陰極としては、マグネシウム、カルシウム、アルミニウムなどの金属、およびそれらのうち1つ以上と銀やインジウムなどとの合金のような仕事関数の小さな電極材料が用いられる。
以下、本発明の実施の形態について、実施例により具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕
(4,4’,4”−トリス[N,N−ビス(4’−ジフェニルアミノビフェニル−4−イル)]トリフェニルアミン(以後、TPA−9と略称する)(2)の合成)
窒素雰囲気下に、アセトアミド12.4g、4−ヨード−4’−ジフェニルアミノビフェニル45.0g、炭酸カリウム20.9g、銅粉2.0g、亜硫酸水素ナトリウム1.1g、ジフェニルエーテル15mlを撹拌しながら210℃で10時間反応させた。反応終了後トルエン400mlを加えて1時間撹拌した後、熱ろ過し、ろ液を濃縮してアセチル体の粗晶を得た。粗晶にイソプロピルアルコール220mlと炭酸カリウム11.8gを加えて7時間還流した。反応液を濃縮して脱アセチル体の粗製物を得た。乾燥させた粗製物をカラムクロマトグラフによって精製し、N,N−ビス−(4’−ジフェニルアミノフェニル−4−イル)アミンの白色粉体11.6gを得た。
脱水トルエン7mlに、N,N−ビス(4’−ジフェニルアミノフェニル−4−イル)アミン1.00g、トリス(4−ブロモフェニル)アミン0.23g、ナトリウムターシャリーブトキシド0.26g、酢酸パラジウム(II)0.02g、亜硫酸水素ナトリウム0.003gを加えて加熱し、還流下で、トリターシャリーブチルフォスフィンを脱水トルエン3mlに溶解した溶液を加えて4時間反応させた。
反応終了後、トルエン60mlを加えて1時間撹拌した後、熱ろ過した。放冷後、ろ液中の沈殿物を再度ろ過して粗製物を得た。乾燥させた粗製物をカラムクロマトグラフ(担体:シリカゲル、溶離液:クロロホルム/ヘキサン=5/3)によって精製し、TPA−9を0.33g(収率31%)得た。
精製した後、得られた白色粉体について元素分析によって化学構造を同定した。元素分析の結果は以下の通りであった。
理論値(炭素88.17%)(水素5.94%)(窒素6.35%)
実測値(炭素87.85%)(水素5.98%)(窒素6.17%)
同定した化合物を質量分析装置であるMALDI−TOF−MS(Perspective Biosystem Inc.,信州大学繊維学部機能高分子学科)を用いて分析した。TOF−MSの測定結果を第1図に、拡大図を第2図に示した。
TOF−MSの結果よりTPA−9が、2206、2207、2205、2208、2210などの分子量を有する、単一な化学構造の同位体群であることを確認した。以上の結果から本発明の化合物が、1500以上という高い分子量を有するにもかかわらず、高純度かつ均質であることは明白である。
実施例2
(4,4’,4”−トリス[N,N−ビス(4’−ジフェニルアミノ−3,3’−ジメチルビフェニル−4−イル)アミノ]トリフェニルアミン(以後、DM−TPA−9と略称する)(3)の合成)
脱水トルエン150mlに、N,N−ビス(4’−ジフェニルアミノ−3,3’−ジメチルビフェニル−4−イル)アミン10g、トリス(4−ブロモフェニル)アミン2.18g、ターシャリーブトキシナトリウム2.6g、酢酸パラジウム(II)0.015gを加え、60℃に加熱した後、トリターシャリーブチルフォスフィン0.055gを加えて95℃で11時間反応させた。
反応終了後、トルエン100mlを加えて1時間撹拌した後、45℃まで放冷し、熱ろ過した。ろ液を濃縮して粗製物19gを得た。乾燥させた粗製物をカラムクロマトグラフ(担体:シリカゲル、溶離液:トルエン/ヘキサン=1/1)によって精製し、DM−TPA−9を3.53g(収率32%、融点220.0−222.5℃)得た。
実施例3
(4,4’,4”−トリス{N,N−ビス[4’−(カルバゾール−9−イル)ビフェニル−4−イル]アミノ}トリフェニルアミン(以後、CZ−TPA−9と略称する)(4)の合成)
脱水トルエン200mlに、N,N−ビス[4’−(カルバゾール−9−イル)ビフェニル−4−イル]アミン10g、トリス(4−ブロモフェニル)アミン2.4g、ターシャリーブトキシナトリウム2.85g、酢酸パラジウム(II)0.017gを加え、60℃に加熱した後、トリターシャリーブチルフォスフィン0.06gを加えて95℃で12時間反応させた。
反応終了後、トルエン100mlを加えて1時間撹拌した後、45℃まで放冷し、熱ろ過した。ろ液を濃縮して粗製物33gを得た。乾燥させた粗製物をトルエン200mlに入れ、1時間還流攪拌した後、ろ過を行った。残留物をTHF200mlに溶解させ、不溶分をろ過により取り除いた後、このろ液をメタノール300ml中に滴下することによって結晶を析出させ、CZ−TPA−9を2.55g(収率24%、融点249.5−252.0℃)得た。
実施例4
(1’,(1’)’,(1’)”−トリス[N,N−ビス(4’−ジフェニルアミノビフェニル−4−イル)アミノ]−トリス−4、4’−ビフェニルアミン(以後、BP−TPA−9と略称する)(5)の合成)
脱水トルエン50mlに、N,N−ビス(4’−ジフェニルアミノビフェニル−4−イル)−4−ブロモアニリン3.6g、トリフェニルアミン−4,4’,4”−ボロン酸0.5g、2M炭酸ナトリウム2.6mlを加えた後、窒素気流下でテトラキス(トリフェニルフォスフィン)パラジウム(0)0.023gを加えて85℃で96時間反応させた。
反応終了後、トルエン100mlを加えて80℃で1時間撹拌した後、45℃まで放冷し、反応液を分液ロートに移した。トルエン層を水洗した後、ナスフラスコに移し、溶媒を30ml濃縮し結晶を析出させた。結晶をろ過し、粗製物をTHF30mlに溶解させ、室温でトルエン60mlに滴下することによって結晶を析出させ、BP−TPA−9を0.42g(収率12.7%、融点222.0−225.0℃)得た。
晶析をさらに二回繰り返して精製した白色粉体について元素分析によって化学構造を同定した。元素分析の結果は以下の通りであった。
理論値(炭素88.78%)(水素5.46%)(窒素5.75%)
実測値(炭素89.09%)(水素5.74%)(窒素5.68%)
実施例5
本発明の化合物とMTDATAについて、示差走査熱量測定装置(マックサイエンス製)によってガラス転移点を求めた。測定結果は以下の通りであり、本発明の化合物が顕著に高いガラス転移点を有することが確認された。
TPA−9 ガラス転移点:188℃
DM−TPA−9 ガラス転移点:173℃
CZ−TPA−9 ガラス転移点:221℃
BP−TPA−9 ガラス転移点:204℃
MTDATA ガラス転移点: 76℃
実施例6
本発明のTPA−9(2)をITO基板上に1,1,2−トリクロロエタンに2質量%の濃度で溶解させた後、塗布液をスピンコート法によって塗膜し、真空オーブン中100℃で乾燥させて約20nmの正孔注入層を成膜した。偏光顕微鏡観察によって、本発明の合成例の化合物では均一でかつ欠陥のない薄膜であることが観察された。
実施例7
塗布によって作製した本発明の化合物の薄膜について、大気中光電子分光装置(理研計器製、AC2)で仕事関数を測定した。測定結果を次に示す。
TPA−9 仕事関数:5.06eV
DM−TPA−9 仕事関数:5.07eV
CZ−TPA−9 仕事関数:5.26eV
BP−TPA−9 仕事関数:5.21eV
以上の結果から本発明の有機EL素子に用いた化合物を用いて作製した薄膜は、正孔注入・輸送層として適性なエネルギー準位を有しているといえる。
実施例8
有機EL素子は、第3図に示すように、ガラス基板1上に透明陽極2としてITO電極をあらかじめ形成したものの上に、正孔注入層3、正孔輸送層4、発光層兼電子輸送層5、陰極(アルミニウムマグネシウム電極)7の順に積層して作製した。
膜厚150nmのITOを成膜したガラス基板1を有機溶媒洗浄後に、酸素プラズマ処理を行って表面を洗浄した。
ITO基板の上に、1,1,2−トリクロロエタンに溶解させたTPA−9(2)の塗布液をスピンコート法によって塗膜し、真空オーブン中100℃で乾燥させて約20nmの正孔注入層3を成膜した。これを、真空蒸着機内に取り付け0.001Pa以下まで減圧した。
続いて、正孔輸送層4として、TPDを蒸着速度0.6Å/sで約30nm形成した。次に、発光層兼電子輸送層5としてAlqを蒸着速度0.6Å/sで約50nm形成した。ここまでの蒸着をいずれも真空を破らずに連続して行なった。最後に、陰極蒸着用のマスクを挿入して、MgAgの合金を10:1の比率で約200nm蒸着して陰極7を形成した。作製した素子は、真空デシケーター中に保存し、大気中、常温で特性測定を行なった。
このように形成された本発明の有機EL素子の特性を400mA/cmの電流密度を負荷した場合の発光輝度、発光輝度/電圧で定義される発光効率と、さらに電流密度負荷を増大させたときの破過前の最大輝度で評価した。この方法によって測定された最大輝度は素子の電気的な安定性を反映しているため、有機EL素子の耐久性の指標となる。
有機EL素子に400mA/cmの電流密度を負荷すると、25000cd/mの安定な緑色発光が得られた。この輝度での発光効率は5.10cd/Aと高効率であった。この時の素子電圧は14.0Vであった。さらに負荷を増大させると最大輝度21000cd/mを示して素子は劣化した。
比較例1
比較のために、正孔注入層3の材料をMTDATAに代えてその特性を調べた。MTDATAでは塗布によって均一で欠陥のない薄膜を作製することができないため、蒸着によって薄膜を作製した。すなわち、ITO基板を真空蒸着機内に取り付け0.001Pa以下まで減圧し、正孔注入層3としてMTDATAを蒸着速度0.6Å/sで約20nm形成した。続いて実施例5と同様に、正孔輸送層、発光層兼電子輸送層、陰極をすべて蒸着によって形成した。これらの蒸着はいずれも真空を破らずに連続して行なった。
MTDATAを用いた有機EL素子に400mA/cmの電流密度を負荷すると、15300cd/mの緑色発光が得られた。この輝度での発光効率は3.90cd/Aであった。この時の素子電圧は14.8Vであった。さらに負荷を増大させると最大輝度16000cd/mを示して素子は劣化した。
比較例2
さらに比較のために、正孔注入層3の材料を銅フタロシアニンに代えて、その特性を調べた。比較例1のMTDATAに代えて、精製した銅フタロシアニンを、蒸着速度4nm/minで約20nm形成した。続いて比較例1と同様にして素子を作製した。
銅フタロシアニンを用いたEL素子400mA/cmの電流密度を負荷すると、16200cd/mの緑色発光が得られた。この輝度での発光効率は4.12cd/Aであった。この時の素子電圧は12.4Vであった。さらに負荷を増大させると最大輝度18000cd/mを示して素子は劣化した。
以上の結果から本発明の有機EL素子の発光効率と耐久性が、従来の有機EL素子より優れていることが明白である。
実施例9
有機EL素子は、第4図に示すように、ガラス基板1上に透明陽極2としてITO電極をあらかじめ形成したものの上に、正孔注入層兼正孔輸送層3および4、発光層兼電子輸送層5、陰極(アルミニウムマグネシウム電極)7の順に積層して作製した。膜厚150nmのITOを成膜したガラス基板1を有機溶媒洗浄後に、酸素プラズマ処理をして表面を洗浄した。
実施例8と同様に、ITO基板の上にTPA−9(2)をスピンコート法によって塗膜し、真空オーブン中で乾燥させて約50nmの正孔注入層兼正孔輸送層3および4を成膜した。これを、真空蒸着機内に取り付け0.001Pa以下まで減圧した。次に、発光層兼電子輸送層5としてAlqを蒸着速度0.6Å/sで約50nm形成した。最後に、陰極蒸着用のマスクを挿入して、MgAgの合金を蒸着して陰極7を形成した。
有機EL素子に400mA/cmの電流密度を負荷すると、8100cd/mの安定な緑色発光が得られた。
実施例10
第5図に示すような、発光層兼電子輸送層5と陰極(アルミニウムマグネシウム電極)7間に正孔阻止層を積層した素子を作製した。有機EL素子を、正孔注入層兼正孔輸送層3および4と、発光層兼電子輸送層5をそれぞれに塗布膜として積層し、その上に正孔阻止層6と陰極を蒸着で積層することによって作製した。すなわち実施例8と同様に、ITO基板の上にTPA−9(2)をスピンコート法によって塗膜し、真空オーブン中で乾燥させて約20nmの正孔注入層兼正孔輸送層3および4を成膜した。
続いて、PVKの塗布液〔PVKと2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(以後、PBDと略称する)、クマリン6を10:3:0.2の割合でo−ジクロロベンゼンに溶解したもの〕をスピンコート法によって塗膜し、真空オーブン中100℃で乾燥させて約70nmの発光層兼電子輸送層5を成膜した。次に、バソクプロイン(以後、BCPと略称する)を蒸着して正孔阻止層6とした。最後に、陰極蒸着用のマスクを挿入して、MgAgの合金を蒸着して陰極7を形成した。
このようにして作成した有機EL素子に300mA/cmの電流密度を負荷すると、2800cd/mの安定な緑色発光が得られた。
実施例11
有機EL素子は、第6図に示すように、ガラス基板1上に透明陽極2としてITO電極をあらかじめ形成したものの上に、正孔注入層兼正孔輸送層兼発光層兼電子輸送層3、4および5を塗付膜で作成し、正孔阻止層6と陰極(アルミニウムマグネシウム電極)7を蒸着で積層して作製した。
ITO基板の上にTPA−9(2)の塗布液(PVKとPBD、クマリン6を10:3:0.2の割合で1,1,2−トリクロロエタンに溶解させたもの)をスピンコート法によって塗膜し、真空オーブン中100℃で乾燥させて約70nmの正孔注入層兼正孔輸送層兼発光層兼電子輸送層3、4および5を成膜した。次に、BCPを蒸着して正孔阻止層6とした。最後に、陰極蒸着用のマスクを挿入して、MgAgの合金を蒸着して陰極7を形成した。
有機EL素子に6.3Vの電圧を負荷すると、400cd/mの安定な緑色発光が得られた。
以上の結果から、本発明のアリールアミン化合物を用いて作成した有機EL素子の発光特性と耐久性が、従来の有機EL素子より優れていることが明白である。
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
本出願は、2004年3月25日出願の日本特許出願(特願2004−089836)、2004年3月25日出願の日本特許出願(特願2004−090334)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
本発明の分子量1500以上6000以下のアリールアミン化合物は、アモルファス性が高く塗布によって薄膜を形成することができ、薄膜状態が安定であるため、有機EL素子用の化合物として優れている。本発明のアリールアミン化合物を塗布した薄膜を正孔注入層、あるいは正孔輸送層として用いて有機EL素子を作製することにより、従来の塗布型の有機EL素子の発光効率と耐久性を格段に改良することができる。例えば、家庭電化製品や照明の用途への展開が可能となった。
1 ガラス基板
2 透明陽極
3 正孔注入層
4 正孔輸送層
5 発光層兼電子輸送層
6 正孔阻止層
7 陰極

Claims (2)

  1. 一対の電極とその間に挟まれた少なくとも一層の有機層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子において、下記化合物(3)〜()のいずれかから選ばれるアリールアミン化合物を、少なくとも1つの有機層の構成材料として含有する、有機エレクトロルミネッセンス素子。
  2. 下記化合物(3)〜()のいずれかから選ばれるアリールアミン化合物。
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