JP3457848B2 - 光導波路の製造方法 - Google Patents

光導波路の製造方法

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JP3457848B2 JP16283197A JP16283197A JP3457848B2 JP 3457848 B2 JP3457848 B2 JP 3457848B2 JP 16283197 A JP16283197 A JP 16283197A JP 16283197 A JP16283197 A JP 16283197A JP 3457848 B2 JP3457848 B2 JP 3457848B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は光導波路の製造方法
に関し、詳しくは結晶質シリコンを基板とし、屈折率の
異なるガラス質材料を用いた平面型光導波路の新規な製
造方法を提供するものである。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】高度
情報通信社会のマルチメディア時代を迎えて光情報通信
機器の社会的な需要は益々増加しており、光情報通信機
器の根幹要素である光導波路の経済的で安価な製法が求
められている。このような要請に対し、光導波路の機能
開発は既に数多く検討されているが、工程が簡単で大量
生産が可能な製造方法は未だ実現されておらず、結果と
して安価な機器の提供に至っていないのが現状である。
【0003】以下、従来の技術と本発明が解決しようと
する課題を述べる。各種光導波路のうち最も薄い膜厚で
構成されるシングルモードの光を伝送する埋め込み型導
波路でも、図6に示すように、厚さt1 が20μm程度
の下部クラッド層11、厚さが10μmに近いコア層1
0、厚さが20μm程度の上部クラッド層12が基板1
上に形成される。これは相対的に屈折率の大きいコア層
10を伝わる光が屈折率の小さいクラッド層11、12
により効率よく閉じ込められなければならないという物
理的要請と、コア層10とクラッド層11、12との間
の屈折率の相違から定められる条件である。これらの層
全体の膜厚t2 は50μm程度になり、謂ゆる半導体集
積回路技術の概念からは極めて「厚い膜」 である。
【0004】しかるに、現状の光導波路の製造技術の多
くは、半導体集積回路製造技術に基づいた方法を用いて
製造されている。すなわち、成膜の基礎技術としては、
スパッタリング法、化学的気相堆積(CVD)法などが
主に用いられている。これらの方法は、成膜速度が遅く
て製造に長時間を要するため、製造コストの低減が課題
である。
【0005】これを改善した「厚い膜」 の高速堆積技術
として、火炎堆積(FHD)法が提案されている。この
方法は酸水素炎の還元雰囲気下でテトラクロロシラン
(SiCl4 )などの金属塩化物から二酸化シリコン
(SiO2 )の粉末を基板上に堆積するものである。こ
の方法は、粉末堆積であるために特殊なノウハウを要す
ること、また粉末を緻密化するために1200〜130
0℃の高温熱処理を必要とするなどの問題点が指摘され
ている。このような特殊なノウハウ、高温処理、さらに
は複雑な製造工程が安価な製品への障害となっている。
【0006】さらに、従来法による製品は基板とクラッ
ド層やコア層を構成する二酸化シリコンなどから成る層
間に大きな内部ストレスを包含している。つまり、基板
上のガラス質を高温で軟化して緻密化することは、その
高温状態で基板上のクラッド層やコア層をとなる厚いガ
ラス質層に流動性を与えて緻密化することであり、高温
状態では基板とガラス質層間の歪を開放し得る。
【0007】しかし、基板温度を常温まで降下させる
と、両者(シリコン基板と厚いガラス質層)の熱膨張係
数の相違により大きな内部ストレスを内包することにな
る。したがって、基板はかなり大きく湾曲し、大規模且
つ大面積の光集積回路を形成する上での障害となってい
る。すなわち、光回路を形成するチップは通常数mm×
数十mmと大型であり、この大型チップを安価に大量に
生産するには大型シリコン基板を用いれば有利となる
が、内部ストレスによる基板曲がりのために大型基板の
使用が困難となり、3″程度の小型のシリコン基板が用
いられているのが現状である。
【0008】さらに、厚さ10μmに近い「厚い」コア
層をエッチングしてリッジ型コア層10を形成するため
にも、数μm程度の「厚い」 エッチングマスク層を必要
とする。そのマスク層にエッチング形状を決定するため
のマスク層の選択除去にも多数の製造工程と長時間を必
要とする。したがって、光導波路装置の製造コストの低
減が図れない。
【0009】このような問題を回避する製造方法とし
て、シリコン基板を弗酸(HF)溶液中で陽極化成する
ことにより多孔質領域を形成し、この多孔質領域を酸化
することにより光導波路を形成する方法が複数提案され
ている。
【0010】その一つは、British Telecom 社より出願
された国際特許WO91/10931号公報に開示された技術であ
る。この公報記載の方法には、シリコン基板上に線状の
ドープ領域を形成する第1のドーピング工程、ドープ領
域を多孔質化する第1の陽極化成工程、前記多孔質領域
を窒化または酸窒化する第1の熱処理工程、シリコン基
板全面にドーピングする第2のドーピング工程、第2の
ドーピング工程でドーピングした領域を多孔質化する第
2の陽極化成工程、第2の陽極化成工程で作成された多
孔質化した領域を酸化し、その後緻密化のために115
0℃×10分の第2の熱処理を行なう工程を有する製作
法が開示されている。本公報記載の方法は、単結晶シリ
コンヘの二度のドーピング、二度の陽極化成、酸窒化と
酸化工程をあわせた二度の熱処理工程など複雑で長い工
程を必要とする。
【0011】また、学術文献としてV.P.Bondarenkoなど
による2編の論文Tech.Phys.Lett.,Vol.19,463(1993).
およびMicroelectronic Engineering,Vol.28,447(199
5). がある。これらの論文に開示されている方法は、高
濃度にホウ素(B)をドープしたp+ 型単結晶シリコン
基板上に窒化シリコン膜(SiNX )を形成し、部分的
にエッチングした窒化シリコン膜をマスクとしてシリコ
ンを陽極化成により多孔質化する。その後、この多孔質
化した領域を酸化して二酸化シリコンとし、さらにこの
酸化温度より高温の1150℃で25分間の緻密化処理
を行うものである。この方法は簡単ではあるが、光伝搬
の更なる低損失化に下記2点の課題を残している。第1
はコア層とクラッド層とを構成するそれぞれの酸化膜の
光学的性質と膜厚を自由に選べないことであり、第2は
シリコン基板と光導波路のコア層との間に介在すべきク
ラッド層の光学的特性と膜厚を任意に選択できないこと
である。このクラッド層の実効膜厚を十分に厚くできな
い場合、コア層を伝搬する光エネルギーはシリコン基板
に漏れだし、伝搬損失を低減できないという問題が発生
する。
【0012】また、V.P.Bondarenko等の上記後者の論文
と同著者等の他の論文J.Appl.Phys.Vol.77,2679(1995)
には、多孔質領域中に不純物としてErをドープし、こ
れを酸化した場合の導波路の特性について言及してい
る。しかしこれらの例ではErは多孔質領域の特定部分
に選択的に導入されてはいない。
【0013】他に、多孔質領域を酸化した膜をクラッド
層として用い、結晶質シリコン自体をコア層として用い
る光導波路の製造法に関わる2件の特許が開示されてい
る。その第1は米国特許公報第4,927,781 号公報であ
り、第2は前記公報のCIP出願による同第5,057,022
号公報である。これらの公報記載の方法では、低濃度ド
ープシリコン基板上に、第1の高濃度ドープ層、第2の
低濃度ドープ層をエピタキシャル成長させ、その後、第
2の低濃度ドープ層をエッチングにより部分的に残存さ
せた後、第1の高濃度ドープ層を陽極化成により多孔質
化し、さらにこの多孔質化層を酸化する工程を有してい
る。この方法も複雑な工程を必要とする。さらにこの方
法では、屈折率が3.5と大きい結晶質シリコン自体を
コア層とすることから、今後主流となるシングルモード
の光導波路の形成に対してはコア層の断面寸法を極めて
小さくしなければならず、光伝送路となる外部の光ファ
イバーとの接続に際しては大きなモード変換損失が発生
する可能性が大きい。
【0014】多孔質領域は弗酸溶液中でシリコン(S
i)を陽極として陽極酸化(以下化成という)すること
により形成されるが、この際の重要なパラメータは、シ
リコン基板の比抵抗(電導型と伝導度)、化成液の弗酸
濃度、化成電流密度である。この3つの化成パラメータ
の組合せにより、多孔質領域の多孔度を制御できること
が知られている。
【0015】上記3つの化成パラメータの組み合わせと
多孔度との関係について述べている論文として、R.Heri
no等によるJ.Electrochem.Soc.,Vol.134,1994(1987).が
ある。本論文ではシリコン基板として、p型、高濃度ド
ープp+ 型、高濃度ドープn+ 型が用いられている。ま
た化成液の弗酸濃度と電流密度への多孔度の依存性が調
べられている。さらに幾つかの化成条件の組み合わせに
より作成された多孔質領域の細孔径が調べられている。
この論文中の高濃度ドープp+ 型基板に関する記述とF
ig.3からFig.7で述べられている化成条件(化
成液の弗酸濃度と化成電流密度)と多孔質領域の多孔度
との関係を図7および図8に示す。図7は、多孔度の化
成電流密度依存性を、化成液の弗酸濃度をパラメータと
して示したものである。図7中、黒四角の点線は弗酸濃
度が15%の場合、黒三角の点線は弗酸濃度が20%の
場合、黒丸の実線は弗酸濃度が25%の場合、黒四角の
実線は弗酸濃度が35%の場合である。この図7から、
化成液の弗酸濃度を一定とし、化成電流密度を大きくす
れば多孔度は増加し、逆に電流密度を小さくすると多孔
度は減少することがわかる。図8は、多孔度の弗酸濃度
依存性を、化成電流密度をパラメータとして示したもの
である。図8中、黒丸の実線は電流密度が10mA/c
2 の場合、黒四角の実線は電流密度が80mA/cm
2 の場合、黒四角の点線は電流密度が240mA/cm
2 の場合である。この図8から、同一化成電流密度のも
とでは、化成液の弗酸濃度を減少すると多孔度は上が
り、弗酸濃度を増加させると多孔度は減少することが分
かる。
【0016】シリコン基板上に適切なマスク層を形成す
ることにより多孔質領域を選択形成することが可能であ
ることは良く知られている。このマスク層に関してはP.
Steiner 等による論文Thin Solid Films,Vol.255,52(19
95) に詳しく述べられている。即ち、使用するシリコン
基板の特性に応じてマスク層として絶縁膜、金属膜、半
導体膜を使用することができる。マスク層材料に何を選
ぶかは、基板とマスク層、化成用電解液との接触におい
て、マスク開口部に如何に選択的に化成電流を流すかの
技術的選択の問題である。
【0017】本発明者等は、このような従来技術をもと
に種々実験を行うとともに、鋭意研究を重ねた結果、化
成液の弗酸濃度と化成電流密度のパラメータを変化させ
てシリコン基板を連続的に化成すると、シリコン基板内
に細孔径が異なる複数の領域を隣接して設けることがで
きるとともに、必要な不純物を特定の細孔径を有する多
孔質領域のみに選択的に導入できることを知見した。
【0018】したがって、本発明はこのような知見にも
とづいて為されたものであり、基本的には受動デバイス
であるが、さらに工夫次第では能動的光デバイスともな
り、光集積回路や光伝送システムの根幹要素である光導
波路を単純な工程で安価に再現性良く製造できる方法を
提供することを目的とするものである。
【0019】上記目的を達成するために、本発明に係る
光導波路の製造方法では、結晶質シリコン基板の一主面
上にマスク層を形成し、該マスク層の一部を選択除去す
る工程、該マスク層が除去された部分を起点として前記
結晶質シリコン基板内に選択的に第一の多孔質領域を形
成する工程、この第一の多孔質領域の外側にこの第一の
多孔質領域の細孔よりも相対的に小さい細孔で構成され
る第二の多孔質領域を形成する工程、前記第一の多孔質
領域に前記第二の多孔質領域の細孔よりも大きく、且つ
その元素の酸化物の屈折率が二酸化シリコン膜の屈折率
よりも大きいか、二酸化シリコン膜に溶融して屈折率を
増加させる不純物元素またはその化合物を導入する工
程、前記第一の多孔質領域と第二の多孔質領域を酸化す
る工程を有するものである。
【0020】
【発明の実施の形態】以下、本発明を添付図面に基づい
て詳細に説明する。図1は本発明に係る光導波路の製造
方法の一実施形態を示す工程図である。まず、シリコン
基板1の一主面20上にマスク層2を堆積し、その一部
を除去したマスクを形成する(図1(a))。この基板
1としては、ホウ素(B)等が高濃度にドープされた比
抵抗約0.1Ωcm以下のp+ 型シリコン基板が用いら
れる。この基板1が前記したp+ 型以外の場合は、多孔
質領域を形成する際に多孔度と細孔径を精密に制御しに
くくなって不適である。また、シリコン基板の比抵抗が
0.1Ωcm以上の場合は、化成処理時の電流密度が局
所的になって、均一な領域を多孔質化することが困難と
なって不適である。
【0021】マスク層2としては、プラズマCVD法な
どで作成された0.3μm程度の窒化シリコン(SiN
X )等の絶縁膜を用いることができる。この絶縁膜2に
は所定幅の開口部3が通常のフォトエッチングにより形
成される(図1(a))。
【0022】次に、結晶質シリコン基板1の一主面を陽
極として弗酸(HF)溶液により陽極化成し、シリコン
基板1内にマスクの開口部3を中心として第一の多孔質
領域4を形成する。その後、化成電流密度、および/ま
たは化成液中の弗酸濃度を変化させて第二の多孔質領域
5を形成する(図1(b))。本発明で形成される第一
の多孔質領域4と第二の多孔質領域5は、文字通り「多
孔質」であり、ナノメータ(nm)サイズのシリコン結
晶よりなる細線部と、同程度のサイズの直径を有する細
孔部(シリコン原子が除去された部分)から構成され
る。第一の多孔質領域4と第二の多孔質領域5は「多孔
度」と「細孔径」により特徴付けられる。「多孔度」は
多孔質領域の体積中に占める空孔部の体積率を%で示
す。また、「細孔径」とはナノメータサイズの細孔の直
径を意味する。第一の多孔質領域4および第二の多孔質
領域5ともに多孔度は例えば55%となるように、また
細孔径は例えば20〜55Åの範囲内で第一の多孔質領
域4で大きく、且つ第二の多孔質領域5で相対的に小さ
くなるように、化成電流密度と化成液の弗酸濃度を制御
して形成される。本発明では、使用する弗酸濃度の上限
は特に限定されないが、通常工業的に供給される上限濃
度(現状では約50%)までは当然利用できる範囲とな
る。また、化成電流密度は、従来の報告では約240m
A/cm2 程度までである。しかし、高濃度弗酸を用
い、且つ多孔度を55%という高い値に制御する必要性
から、従来程度の低電流密度領域(数十mA/cm2
から従来の上限を遙かに超える高化成電流密度領域(数
十A/cm2 )まで制御の対象とする。
【0023】図2に、従来例をもとに本発明者等が知見
した化成電流密度と化成液の弗酸濃度とをパラメータと
した場合の細孔径と多孔度との関係を示す。図2中、左
側の黒菱印、黒四角印、黒丸印は、弗酸濃度が25%で
化成電流密度が10mAの場合の細孔径分布の半値幅の
下方値、平均値、半値幅の上方値をそれぞれ示す。略中
央部の黒菱印、黒四角印、黒丸印は、化成液の弗酸濃度
が25%で化成電流密度が80mAの場合を示し、右側
の黒菱印、黒四角印、黒丸印は、化成液の弗酸濃度が2
5%で化成電流密度が240mAの場合を示す。それぞ
れの電流密度における黒菱印と黒丸印との間が細孔径の
半値幅の分布域である。化成液の弗酸濃度が10%で化
成電流密度が10mAの場合は、多孔度は約67%とな
り、細孔径の分布の幅は52〜75Åとなる。さらに、
中央部下よりの黒楕円は化成液の弗酸濃度が35%で化
成電流密度が240mAの場合を示し、細孔径の分布の
幅は1Å程度である。この図2から明らかなように、化
成電流密度が一定の場合、化成液の弗酸濃度が減少する
と細孔径は大きくなり、逆に弗酸濃度を増加させると細
孔径は小さくなる。化成液の弗酸濃度が同一のときは、
電流密度を増加させると細孔径は大きくなり、電流密度
を減少させると細孔径は小さくなる。また、極めて特徴
的なこととして、低濃度弗酸の化成液を用いる場合、細
孔径は広い幅にわたって分布しているが、弗酸濃度を増
加させるに従って分布の幅は小さくなる。つまり、図2
に示すように、弗酸濃度を10%から25%に増加させ
ると細孔径の分布の幅は明らかに小さくなっている。さ
らに、35%濃度の弗酸化成液を用いて240mA/c
2 の電流密度で化成された例(中央部下よりの黒楕円
印)では、細孔径は約34Åであり、その分布の幅は約
1Å程度の狭い領域に集中している。したがって、弗酸
濃度を10%、25%、35%と増加させるにつれて同
一化成電流密度のもとでは多孔度、細孔径ともに減少
し、さらに顕著なこととして細孔径の分布の幅が大きく
減少することがわかる。細孔径の分布の幅が小さいとい
うことは多孔度、細孔径ともに極めて均一な多孔質領域
が形成されることになる。多孔度と細孔径の化成条件
(化成電流密度と化成液の弗酸濃度)依存性についての
定性的傾向は、化成液の弗酸濃度を増加させると細孔径
はより小さくなり、その分布の幅もまたより小さくなる
こと、すなわち高濃度弗酸化成液を用いるほど多孔度と
細孔径とをより均質に形成できることである。上記のよ
うに、弗酸濃度と化成電流密度との組み合わせにより均
一な細孔径を、期待する任意の値に制御することができ
る。
【0024】細孔径の絶対値は、ドーピングを行う対象
である不純物材料の分子状態、イオン状態、原子状態等
による物理的大きさにより定まる適切な値に制御する。
第1の多孔質領域4の細孔径は後述するように各種の状
態にある不純物材料より大きく、第2の多孔質領域5の
細孔径はこの不純物材料より小さくなるように制御すれ
ばよい。
【0025】次に、図1(b)に示すように、第一の多
孔質領域4の細孔内に所望の不純物元素を含んだ不純物
物質を選択的に導入する。(不純物の選択導入部を図1
(c)中に6で示す)。このような第一の多孔質領域4
の細孔中に不純物を導入する場合、不純物濃度は第一の
多孔質領域4の細孔径に大きく依存することを本発明者
らは見出した。不純物導入手段として、導入すべき不純
物元素を構成原子とする金属有機物分子を用いる場合、
下記実施例で示すように細孔径がある一定値以下であれ
ば不純物は導入されず、細孔径がある値以上であれば不
純物を導入できる。これを利用して多孔質領域の特定の
領域のみに選択的に不純物を導入する。このことは多孔
質領域に不純物を導入する際に、細孔自体が分子フルイ
的に作用していることを示唆している。細孔の分子フル
イ的作用を効果的に活用するには細孔径を均一に制御す
ることが非常に重要となる。この不純物元素の導入法と
しては良く知られたスピンオングラス法、スピンオング
ラス法に用いられる液中への基板の浸漬法、CVD法、
蒸着法、スパッタリング法、所望の金属イオンを含有す
る電解液中への浸漬法などを利用できる。
【0026】導入可能な不純物元素としては、その元素
の酸化物が純粋な二酸化シリコン膜の屈折率に比べて大
きいものか、二酸化シリコン膜に溶融して屈折率を増加
させるものであればよい。このような元素として、以下
の元素物質の酸化物の単独または複合導入が可能であ
る。すなわち、二酸化シリコン膜の屈折率を増加するた
めの金属元素として、アルミニウム(Al)、バリウム
(Ba)、ビスマス(Bi)、カルシウム(Ca)、カ
ドミウム(Cd)、セリウム(Ce)、セシウム(C
s)、ジスプロシウム(Dy)、エルビウム(Er)、
ユウロピウム(Eu)、ゲルマニウム(Ge)、ハフニ
ウム(弗酸)、インジウム(In)、ランタン(L
a)、ルテチウム(Lu)、マグネシウム(Mg)、ニ
オブ(Nb)、隣(P)、ルビジウム(Rb)、アンチ
モン(Sb)、サマリウム(Sm)、錫(Sn)、スト
ロンチウム(Sr)、タンタル(Ta)、チタン(T
i)、タリウム(Tl)、イットリウム(Y)、イッテ
ルビウム(Yb)、タングステン(W)、亜鉛(Z
n)、ジルコニウム(Zr)の群の一種または複数の元
素の複合導入が可能である。
【0027】また、二酸化シリコン膜の屈折率を小さく
する不純物を第一の多孔質領域4と第二の多孔質領域5
の全域に導入し、さらに屈折率を増加させる不純物を第
一の多孔質領域4のみに導入することもできる。屈折率
を減少させる不純物としては、ホウ素(B)やフッ素
(F)などが有効である。
【0028】したがって、多孔質領域を酸化して光導波
路を形成する場合、図2に例示するように多孔度を55
%近傍に制御し、且つ例えば20〜55Åの範囲内で細
孔径が大きい第1の多孔質領域4と相対的に小さい第2
の多孔質領域5を形成する。屈折率増加用の不純物のみ
を用いる場合は、第1の多孔質領域4に選択的に不純物
のドープを行い、第1の多孔質領域4をコア領域とし、
第2の多孔質領域5をクラッド領域とすればよい。他
方、コア部、クラッド部ともに屈折率を制御する場合に
は、第2の多孔質領域の細孔をも通過できる不純物元素
の状態、例えば電解液中のイオンによるメッキ法、を用
いて多孔質の領域4,5とも第1の不純物をドープし、
その後第2の多孔質領域に第2の不純物を選択ドープす
ることができる。
【0029】その後、酸素を含有する雰囲気中で熱処理
を施し、第一の多孔質領域4と第二の多孔質領域5を酸
化して二酸化シリコンの領域10、11に変換する(図
1(d))。多孔質領域の酸化は、その厚さに拘らず比
較的低温且つ短時間で完了する。例えば100μm程度
の厚みの多孔質領域でも水蒸気を含む酸素雰囲気中では
1000℃×1時間程度で完了する。不純物が予め導入
された領域10は、当該不純物の酸化物の屈折率と不純
物濃度に依存して屈折率が増加する。この屈折率が増加
した領域10が光導波路のコア部となり、不純物が導入
されていないか、または導入程度が小さい傾域11が光
導波路のクラッド部となる。第二の多孔質領域5の外周
部は単結晶シリコン1であり、上記熱処理工程でも多孔
質領域ほど大きな化学的および物理的影響を受けない。
【0030】シリコンを酸化して二酸化シリコン(Si
2 )とすると、体積が約1.88倍に増加する。した
がって、多孔質領域の多孔度を55%とすると、酸化後
の体積変動はなくなる。多孔度が55%より小さいと、
酸化により体積が膨張し酸化膜には圧縮応力が基板には
引張応力が働く。逆に多孔度が55%より大きいと、酸
化・溶融後のSiO2 の体積は収縮する。下記実施例で
示すような選択化成の場合、多孔質シリコン酸化溶融後
の酸化膜と基板との間の応力による基板曲がりとの関係
から、実用上の多孔度は50〜65%の範囲で制御する
ことが望ましい。さらに厳密には多孔度を54〜62%
の範囲で制御すれば基板1の曲がりを殆どゼロとするこ
とができる。
【0031】続いてマスク層2を除去する(図1
(e))。その後、必要に応じて上部クラッド層12を
形成すれば光導波路が完成する(図1(f))。上部ク
ラッド層12は必ずしも必要ではなく、無くて良い場合
もある。
【0032】図1(a)〜(f)の工程図が示すよう
に、コア部10とクラッド部11の上面は結晶質シリコ
ン基板1の一主面20と同一面にある。主面20上には
絶縁膜2が一旦形成されるが、図1(e)では除去され
ている。すなわち、主面20は重大な加工を受けること
なく最初の状態を保持する。その主面20にコア部10
と下部クラッド部11の上面が接している。このことは
光集積回路実装時、精密な位置合わせを要する光ファイ
バー(不図示)との接続に於いて、主面20をそのまま
基準面として活用できるという有利性を持つことにな
る。
【0033】このことは図1(f)に示す本発明品と図
6に示す従来の光導波路の構成を詳細に比較すれば明ら
かになる。本発明の導波路では、最初のシリコン基板面
20と同一面にコア部10と下部クラッド部11の上面
が接している。一方、従来の導波路では、最初のシリコ
ン基板面20より約20μmもの厚さがある厚い下部ク
ラッド層11の上にコア層10が位置する。コア層10
の位置を最初の基板面20の位置からサブμmの位置精
度で精密に規定するために、下部クラッド層11を形成
した後に精密研磨を行い下部クラッド層11を規定の厚
みに形成した後、コア層10を形成しなければならな
い。一方、本発明の方法ではコア部10とクラッド層1
1の上面が最初の基板面20に接している。このことに
より、光ファイバー(不図示)とのサブμmの精密接続
における本発明品の有利さがわかる。
【0034】
【実施例】
−実施例1一 図1を参照しながら第1の実施例を説明する。ホウ素
(B)がドープされた比抵抗0.01Ωcmのp+ 型シ
リコン基板1の(100)面20上にプラズマCVD法
により窒化シリコン膜2を0.3μm堆積してフォトエ
ッチングにより6μm幅の開口部3を直線状に形成した
(図1(a))。次に、エタノールを添加した弗酸濃度
25%の電解液を用いて156mA/cm2 の電流密度
で暗中で陽極化成して第一の多孔質領域4を形成した
(図1(b))。続いて弗酸濃度35%の電解液を用い
電流密度350mA/cm2 で第二の多孔質領域5を形
成した。ここに電流密度とは図1の化成先端部における
電流密度である。図1のような構成では化成先端部の面
積は化成進行とともに増大するため、化成電流そのもの
は化成先端部の面積に比例するように時間とともに増大
させた。
【0035】上記のように制御することにより、多孔度
は第1の多孔質領域4と第2の多孔質領域5ともに約5
5%と等しく、細孔径は第1の多孔質領域4で大きく
(約43Å)、第2の多孔質領域5では小さく(約35
Å)することができた。
【0036】前記第1の多孔質領域4と第2の多孔質領
域5が選択的に形成された結晶質シリコン基板1を乾燥
酸素雰囲気により300℃で約1時間熱処理した後、T
i金属元素のアルコラートを原料とした有機金属材料の
液に基板1を浸漬した。基板1を取り出した後、基板1
表面に付着した液を溶解除去した。その後、通常の熱処
理工程により有機金属材料中の有機物成分を分解除去し
た。このような簡単な工程で第一の多孔質領域4の細孔
内に不純物元素であるTiを選択的に導入できた。Ti
が選択的に導入された領域を図1(c)に6で示す。続
いて、前記試料を酸化炉に挿入し、ウエットO2 雰囲気
中900℃で1時間酸化した。続いて同様のウエットO
2 雰囲気で1150℃に昇温し、2時間の熱処理により
酸化領域を溶融すると、図1(c)の多孔質領域6、5
は、それぞれ図1(d)の二酸化シリコン領域10、1
1に変換された。
【0037】次に、CF4 とO2 を混合したガスを用い
たプラズマエッチングにより表面に残存するSiNX
マスクをエッチング除去した。(図1(e)) 上記のように作成した試料(図1(e)の状態)を導波
路方向に平行に長さ40mmに切断した。両端面を研磨
後、1.55μmの赤外レーザー光を透過させ、そのN
FP(Near Field Pattern)を測定した。その結果を図
3に示す。
【0038】図3(a)は基板1の主面に平行な方向の
透過光強度分布であり、図3(b)は基板1の主面に垂
直な方向の同強度分布であり、図3(c)は導波光の等
強度パターンである。図3は、光が明らかにシングルモ
ードで透過していることを示している。さらに再確認の
ために入射側のファイバーの位置を導波路に対して僅か
に上下左右にずらしたが、NFP形状には基本的な変化
は無く、光はシングルモードで伝送していることが確認
できた。図3(c)の透過光の強度パターンにおいて、
光の強度分布の基板1の内部側への広がりと基板1の表
面側への広がりに差が見られる。これは本透過実験に用
いた試料には上部クラッド層が設けられていないため
に、コア領域の表面側で大きな屈折率差が有ることに起
因するものである。表面に上部クラッド層を設ければ等
強度分布はほぼ同心円状になることが容易に予想され
る。
【0039】−実施例2− 開口幅を1.0μmから6.0μmまで0.5μm間隔
で変化させたマスクパターン2を形成し、実施例1とほ
ぼ同一条件で第一の多孔質領域4と第二の多孔質領域5
を形成し、その他の条件は総て実施例1と同一の処理を
行った試料を作成し、実施例1と同様にNFPを測定し
た。
【0040】導波光のスポット径として、ピーク強度の
1/e2に相当する強度での幅と定義し、この幅のマス
ク開口幅依存性を図4に示す。図4中、点線は水平方向
のスポット径の1/e2値の幅を示し、実線は垂直方向
のスポット径の1/e2値の幅を示す。開口幅を5μm
以上で形成した導波路にはシングルモード光が伝搬し、
スポット径はほぼ一定であった。開口幅を4μm以下で
形成した導波路では光閉じこめが充分でなく、透過光に
は導波光成分と放射光成分が含まれていた。また、開口
幅を4μm以下で形成した光導波路では、光スポットの
幅は開口幅の減少とともに増大し、放射光成分の存在を
示していた。
【0041】−実施例3− 実施例1と同一条件で第一の多孔質領域4と第二の多孔
質領域5を形成後、Tiの有機金属濃度を実施例1、実
施例2で用いた濃度より1/3に希釈した液に浸漬し
た。その後の酸化・溶融条件は実施例1と同様とした試
料を作成した。導波路方向に平行に長さ20mmに切断
後、両端面を研磨した。
【0042】実施例1と同様の方法でNFPを測定し
た。透過光は導波光と放射光の両成分を有するマルチモ
ードで構成されることが確認された。
【0043】このことはコア部に導入されたTi濃度が
少ないため、コアとなるべき領域とクラッド部となるべ
き領域との間で十分な屈折率差が無く、光閉じこめ効果
が充分えられなかったものと解釈できる。
【0044】−比較例1− 多孔度を58%とする条件で陽極化成を行い、化成領域
の大きさは実施例1と同一とした。この試料にはTiの
有機金属を添加せずに酸化、溶融を行って、透過光を測
定したところ、光は導波路のほぼ全面に拡散して透過し
ていた。
【0045】本比較例では、屈折率増加用不純物である
Tiを全く添加しなかった。不純物を添加していない点
で、構成的には従来技術で述べたV.P.Bondarenko等の論
文Tech,Phys.Lett.Vol.19(1993)46 と殆ど同一のもので
ある。
【0046】−基板の撓みと導波路断面形状の観測− SiO2 から成る図1(d)のクラッド部11を有する
約50μm幅の導波路が1mmピッチで形成された試料
(上部クラッドを形成せず)の撓みを観察した。初期の
多孔度が50%未満のものでは導波路を形成した方向に
基板の撓みが認められた。初期の多孔度が50%以上の
ものでは、大きな基板の撓みは観察されなかった。一
方、初期の多孔度が65%以上のものでは、基板1の撓
みは観察されないが、図1(d)のSiO2 部の体積収
縮が激しく、充分な光導波路形成は不可能であった。以
上より、酸化後の体積収縮と膨張を考慮すると、多孔度
は50%以上65%未満が望ましい。さらに厳密には多
孔度は54%以上62%未満に制御することが好適であ
る。
【0047】−実施例4− 以上の実施例と比較例では、シリコン基板1の一主面に
マスク2を形成し、基板1の一主面の一部を選択化成す
ることにより、断面が半円状の導波路を形成した例を述
べた。
【0048】以下では、基板1の一主面全面を層状に化
成した場合の化成条件とドーピング濃度分布との関係を
基礎的に検討した結果を述べる。
【0049】表1に化成条件を総括して示す。最左欄よ
り、基板番号、基板比抵抗ρ(mΩcm)、使用化成液
の弗酸(FH)濃度(%)、化成電流密度(mA/cm
2 )、化成時間(秒)、化成に用いた総電荷(Asec
/cm2 )を示す。
【0050】
【表1】
【0051】試料番号a、b、cでは化成液の弗酸濃度
を25%で一定とし、化成電流密度を変えている。試料
番号c、d、e、f、gでは化成電流密度を240mA
/cm2 で一定とし、化成液の弗酸濃度を変えている。
また、試料番号h、i、jでは化成条件を変えて連続し
た二層の多孔質層を形成した。最初の多孔質層(上層
側)の化成条件は試料番号h、i、jの3試料とも、弗
酸濃度25%、化成電流密度156mA/cm2 で一定
とした。二番目の多孔質層(下層側)の化成には、弗酸
濃度を30%、35%、40%とそれぞれ変更し、電流
密度は240mA/cm2 で一定とした。
【0052】表1の条件で多孔質層が形成されたこれら
の試料を、乾燥酸素雰囲気中300℃で一時間の熱処理
を行った。その後、総ての試料につき、実施例1で述べ
たTiの有機化合物を同一条件でスピンコートした。そ
の後熱処理をして有機物成分を分解除去した。
【0053】前記した一連の試料につきX線マイクロ分
析により、表面から内部に向かってTiの濃度分布を測
定した。その結果を図5(a)、(b)、(c)に示
す。図5中の濃度分布曲線番号a〜iは表1の基板の試
料番号と同じ番号を用いている。縦軸はTi特性X線の
計数量を示し、Ti濃度に比例した量である。横軸は試
料表面からの距離で、左端が試料表面、右側が試料内部
への距離を表す。図5(a)、(b)の横軸上の矢印
は、多孔質層と基板1との界面を示す。同図(c)の横
軸上の左側矢印は上層側の多孔質層と下層側の多孔質層
との界面(表面より約9.8μm)を、横軸上の右側矢
印は下層側の多孔質層と基板との界面(表面より約37
μm)をそれぞれ示す。
【0054】図5(a)より、化成液の弗酸濃度を同一
とした場合、化成電流密度が大きいとき、Tiは試料深
く導入されている(試料:c)が、化成電流密度を小さ
くすると、Tiの内部への導入量が減少している(試
料:a)。
【0055】また、図5(b)には化成電流密度を一定
とし、弗酸濃度を変化させた場合のTiの分布を示す。
相対的に低濃度弗酸液を用いた試料(試料:c)ではT
iは内部深く導入されているが、化成液の弗酸濃度を高
くするほどTiの内部への導入が阻止されている。すな
わち、化成液の弗酸濃度を25%、30%、35%、4
0%、46%と増加させるにつれ多孔質層内部へのTi
の導入深さ、導入量共に減少する。46%の弗酸化成液
を用いて作成された試料番号gではTiは表面のみに存
在し多孔質層内部には全く導入されていない。
【0056】さらに、図5(c)に示すように、上層側
の多孔質層を同一条件で形成した場合、下層側多孔質層
の形成を高濃度弗酸を用いて行う程、上層側多孔質層へ
のTiドーピングの選択性が優れてくることがわかる。
【0057】図5と図2、図7、図8を比較すると、化
成条件と多孔度との関係、さらには不純物であるTi有
機物分子を多孔質層内にドーピングする際の細孔径制御
の重要さがわかる。図5は、多孔質層中への不純物の選
択ドーピングが細孔径の制御により可能になることを初
めて指摘したものである。 本発明の基本思想の第一
は、細孔径を二つの多孔質領域で異ならせることによ
り、一方の多孔質領域に選択的に不純物を導入すること
である。多孔質領域を酸化せずにそのまま使用するよう
な用途には、細孔径と導入する不純物分子の大きさを比
較すればよく、多孔度に特に注目する必要はない。第二
の場合として、本発明目的のように多孔質領域を酸化し
て用いる場合には、酸化前後の体積変動も重要課題とな
る。酸化前後の体積変化を最小とするためには多孔度を
55%近傍に制御し、かつ不純物の選択ドーピングのた
めに細孔径を異ならせる必要がある。本発明はこの両条
件を同時に満たす方法をも初めて指摘したものである。
【0058】このように、本発明では、多孔質領域を酸
化して光導波路を形成する場合、多孔度を55%近傍に
制御し、且つ細孔径が特定範囲の第一の多孔質領域4と
細孔径が相対的に小さい第二の多孔質領域5を形成し、
第一の多孔質領域4に選択的に不純物のドープを行い、
第一の多孔質領域4をコア形成領域とし、第二の多孔質
領域5をクラッド形成領域とするものである。細孔径の
絶対値はドーピングを行う対象である不純物材料の分子
状態、イオン状態、原子状態等による物理的大きさによ
り定まる適切な値に制御する。第一の多孔質領域の細孔
径は前記した各種の状態にある不純物材料より大きく、
第二の多孔質領域の細孔径は不純物材料より小さく制御
すればよい。したがって、本発明によれば、極めて簡単
な製造工程により光導波路を形成できる。実施例1によ
り本発明の方法で作成した光導波路でシングルモード光
の透過を確認できた。
【0059】実施例1、2、3では限られた条件の下で
の第一の多孔質領域4と第二の多孔質領域5の形成条
件、さらには不純物の選択ドーピングと開口幅の関係を
述べた。また、実施例4では、複数の多孔質領域に於い
て、細孔径の差を利用した簡単な不純物の選択ドーピン
グ方法と多孔度をある一定値に制御し、且つ細孔径を異
ならせる複層の多孔質領域の形成方法、および選択ドー
ピング方法等が開示された。化成電流密度、化成液の弗
酸濃度を化成進行と共に必要に応じて連続的に変化させ
ることも本発明の思想の範囲である。本発明は、上述し
た実施例の範囲にとどまらず、基本的考え方を同一とす
る用途には普遍的に適用されるものである。
【0060】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、結晶質
シリコン基板の一主面上にマスク層を形成し、該マスク
層の一部を選択除去する工程、該マスク層が除去された
部分を起点として前記結晶質シリコン基板内に選択的に
第一の多孔質領域を形成する工程、この第一の多孔質領
域の外側にこの第一の多孔質領域の細孔よりも相対的に
小さい細孔で構成される第二の多孔質領域を形成する工
程、前記第一の多孔質領域に前記第二の多孔質領域の細
孔よりも大きく、且つその元素の酸化物の屈折率が二酸
化シリコン膜の屈折率よりも大きいか、二酸化シリコン
膜に溶融して屈折率を増加させる不純物元素またはその
化合物を導入する工程、前記第一の多孔質領域と第二の
多孔質領域を酸化する工程を有することから、極めて簡
単に光導波路を製造することができる。
【0061】従って、本発明は従来法に比べて以下の効
果を有する。第1に工程が単純で短い。第2に基本工程
がウエット工程であり、必要設備がビーカースケールで
設備コストが安い。第3に真に必要な部分のみを直接加
工し、他の部分を加工しないことから、コア層の表面は
基板の最初の表面にあり、光集積回路、シリコンプラッ
トフオームとして、ファイバーとの接続を考えたとき、
接続基準面をシリコン基板の最初の表面に規定できる有
利さを持つ。第4に基板のソリ、曲りが小さいため大型
のシリコン基板を使用できる。第1〜第4の特長により
光集積回路を安価且つ大量に供給できる。また、第4の
特長は簡易に高精度の光ファイバ網との接続法を提供
し、光通信綱確立に資するところ大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る光導波路の製造方法の一実施形態
を示す工程図である。
【図2】本発明の光導波路の形成方法における細孔径と
多孔度の化成条件依存性を示す図である。
【図3】本発明の実施例1に係る光導波路から射出する
光の強度分布を示す図である。
【図4】本発明の実施例2に係る光導波路から射出する
光強度分布の幅を示す図である。
【図5】本発明の実施例3に関わるTi濃度分布を示す
図である。
【図6】従来の光導波路を示す図である。
【図7】多孔度の弗酸濃度依存性を示す図である。
【図8】多孔度の化成電流密度依存性を示す図である。
【符号の説明】
1:シリコン基板、2:マスク層、3:マスク開口部、
4:第一の多孔質領域、5:第二の多孔質領域、6:不
純物が選択ドープされた多孔質領域、10:不純物が選
択ドープされたSiO2 領域(コア領域)、11:不純
物ドープ濃度の少ないSiO2 領域、12:上部クラッ
ド領域、20:シリコン基板の最初の表面層
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平5−2118(JP,A) 特開 平5−273426(JP,A) 特開 昭60−251142(JP,A) 特開 平8−106022(JP,A) 特開 平8−225338(JP,A) 特開 平5−254729(JP,A) 特開 平9−292540(JP,A) 特開 平10−206666(JP,A) 特開 平10−133047(JP,A) 特開 昭60−262108(JP,A) 国際公開91/010931(WO,A1) A.Loni et.al.,IEE Colloquium on Mic roengineering Appl ications in Optoel ectronics,1996年 2月27 日,pp.8/1−8/5 R.Herino et.al.,J ournal of the Elec trohemical Societ y,Vol.134 No.8A (Au gust 1987),pp.1994−2000 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G02B 6/12 - 6/14 C03B 37/00 - 37/16

Claims (9)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 結晶質シリコン基板の一主面上にマスク
    層を形成し、該マスク層の一部を選択除去する工程、該
    マスク層が除去された部分を起点として前記結晶質シリ
    コン基板内に選択的に第一の多孔質領域を形成する工
    程、この第一の多孔質領域の外側にこの第一の多孔質領
    域の細孔よりも相対的に小さい細孔で構成される第二の
    多孔質領域を形成する工程、前記第一の多孔質領域に前
    記第二の多孔質領域の細孔よりも大きく、且つその元素
    の酸化物の屈折率が二酸化シリコン膜の屈折率よりも大
    きいか、二酸化シリコン膜に溶融して屈折率を増加させ
    不純物元素またはその化合物を導入する工程、前記第
    一の多孔質領域と第二の多孔質領域を酸化する工程を有
    することを特徴とする光導波路の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記第一の多孔質領域の不純物元素の濃
    度が前記第二の多孔質領域の不純物元素の濃度よりも高
    いことを特徴とする請求項1に記載の光導波路の製造方
    法。
  3. 【請求項3】 前記結晶質シリコン基板の所定領域を陽
    極化成して前記第一の多孔質領域と第二の多孔質領域を
    形成すると共に、この陽極化成時の電流密度を変化させ
    ることによって、前記第一の多孔質領域と第二の多孔質
    領域の細孔径を変化させることを特徴とする請求項1又
    は請求項2に記載の光導波路の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記結晶質シリコン基板の所定領域を陽
    極化成して前記第一の多孔質領域と第二の多孔質領域を
    形成すると共に、この陽極化成時の化成液の組成を変化
    させることによって、前記第一の多孔質領域と第二の多
    孔質領域の細孔径を変化させることを特徴とする請求項
    1、請求項2、又は請求項3に記載の光導波路の製造方
    法。
  5. 【請求項5】 前記結晶質シリコン基板の所定領域を陽
    極化成して前記第一の多孔質領域と第二の多孔質領域を
    形成すると共に、この陽極化成時の電流密度と化成液の
    組成を変化させることによって、前記第一の多孔質領域
    と第二の多孔質領域の細孔径を変化させることを特徴と
    する請求項1又は請求項2に記載の光導波路の製造方
    法。
  6. 【請求項6】 前記第一の多孔質領域と第二の多孔質領
    域の多孔度が50〜65%であることを特徴とする請求
    項1、請求項2、請求項3、請求項4、又は請求項5に
    記載の光導波路の製造方法。
  7. 【請求項7】 前記不純物元素が金属のアルコラートま
    たは金属のアルコラートを原料とした有機金属材料とし
    て導入されることを特徴をする請求項1又は請求項2に
    記載の光導波路の製造方法。
  8. 【請求項8】 前記第一の多孔質領域に導入される不純
    物元素が、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、バリ
    ウム(Ba)、ビスマス(Bi)、カルシウム(C
    a)、カドミウム(Cd)、セリウム(Ce)、セシウ
    ム(Cs)、ジスプロシウム(Dy)、エルビウム(E
    r)、ユウロピウム(Eu)、ゲルマニウム(Ge)、
    ハフニウム(Hf)、インジウム(In)、ランタン
    (La)、ルテチウム(Lu)、マグネシウム(M
    g)、ニオブ(Nb)、隣(P)、ルビジウム(R
    b)、アンチモン(Sb)、サマリウム(Sm)、錫
    (Sn)、ストロンチウム(Sr)、タンタル(T
    a)、チタン(Ti)、タリウム(Tl)、イットリウ
    ム(Y)、イッテルビウム(Yb)、タングステン
    (W)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)の群の一
    種または複数であることを特徴とする請求項1又は請求
    項2に記載の光導波路の製造方法。
  9. 【請求項9】 前記結晶質シリコン基板が比抵抗0.1
    Ωcm以下のp型伝導性を示すことを特徴とする請求項
    1に記載の光導波路の製造方法。
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