JP3245367B2 - 光導波路の形成方法 - Google Patents

光導波路の形成方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は光導波路の形成方法
に関し、特に光通信システムや光情報処理システムの光
集積回路などで使用される光導波路の形成方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】従来から、光集積回路では基板上に発光
素子もしくは受光素子を固定して設けるとともに、この
発光素子もしくは受光素子と光ファイバーを光学的に接
続するために、石英系の光導波路が使われていた。各種
光導波路のうち、最も薄い膜厚で構成されるシングルモ
ードの光を伝送する平面型光導波路は、基板上に厚さ2
0μm程度の下部クラッド層とコア層上に、厚さが20
μm程度の上部クラッド層を形成して構成される。この
ような条件は、相対的に屈折率の小さい上下クラッド層
全体の膜厚を合わせると、数十μm程度になり、いわゆ
る半導体集積回路技術の概念からすると、極めて厚い膜
で構成されることになる。
【0003】現状の光導波路の厚膜製造技術の多くは、
半導体集積回路製造技術に基づいた方法を用いて製造さ
れている。すなわち、コア層や上下クラッド層などは、
スパッタリング法や化学気相堆積(CVD)法などで形
成される。これらの方法は、成膜速度が遅く、製造に長
時間を要するため製造コストが高くなり、その低減が課
題となる。
【0004】これを改善した厚膜の高速堆積技術とし
て、火炎堆積(FHD)法が提案されている。この火炎
堆積法は、酸水素炎の還元雰囲気で、シラン(Si
4 )などの金属水素化合物から酸化シリコン(SiO
2 )の粉末を基板上に堆積するものである。ところが、
この火炎堆積法は、粉末堆積であるが故に、製造が困難
であり、また粉末を緻密化するために、1200〜13
00℃の高温熱処理を必要とするという問題があった。
酸化シリコン粉末の緻密化に高温を要することは、コア
層の屈折率を大きくするために、高濃度に不純物をドー
プしても、光伝送の損失が相対的に小さいという長所を
持つが、一方で蒸気圧が高い酸化ゲルマニウム(GeO
2 )のような材料を高濃度にドープすることを難しくし
ている。また、基板上に堆積した酸化シリコン粉末を高
温で軟化して緻密化することは、その高温状態で堆積膜
に流動性を与えて緻密化することであり、高温状態で
は、基板と堆積膜間の歪みは開放し得るが、基板温度を
常温まで下げると、基板と堆積膜との熱膨張係数の相違
によって大きな内部ストレスを内包することになる。こ
の内部ストレスによって、基板が大きく湾曲し、大規模
・大面積の光集積回路を形成する上での障害となってい
る。すなわち、光集積回路を形成するチップは、通常数
mm×数十mmの大型であり、この大型のチップを安価
に大量に生産するには、大型シリコン基板を用いれば有
利となるが、上記のような内部ストレスによる基板曲が
りのために、大型基板の使用が困難になる。特に光回路
で要求される酸化シリコンの膜厚は、上記のように数十
μmに達することから、酸化シリコン膜を形成する工程
の温度と常温との温度差に基づく膨張係数の差は基板の
反りに大きく影響する。
【0005】さらに、厚さ10μm程度のコア層をエッ
チングしてリッジ型コア部を形成するには、数μm程度
の厚いエッチングマスク層を必要とすることと、そのマ
スク層自体のパターニングにも多数の製造工程と時間を
必要とするという問題がある。
【0006】このような問題を回避するために、例えば
WO91/10931号(PCT/GB91/0004
4)公報では、シリコン基板をフッ酸(HF)溶液中
で、陽極化成処理して多孔質シリコンを作製し、この多
孔質シリコンを窒化または酸窒化して光導波路を形成す
ることが提案されている。すなわち、シリコン基板上に
線状のドープ領域を形成し、このドープ領域を陽極化成
処理して多孔質シリコン化し、次いでこの多孔質シリコ
ン領域を窒化又は酸窒化してシリコン基板全面に不純物
をドーピングし、このドーピングした領域を多孔質化す
るために2回目の陽極酸化を行い、作製された多孔質層
を酸化して最後に緻密化のために1150℃、10分間
の熱処理を行うものである。ところが、この方法では、
二度のドーピング、陽極化成、酸窒化工程があり、複雑
で長い工程が必要であるという問題があった。
【0007】また、V.B.Bondarenkoらは、Tech.Phys.Le
tt.19(1993)468. 及びMicroelectronic Engineering 28
(1995)447.において、多孔質シリコンを酸化して光導波
路を形成する方法を開示している。この方法は、高濃度
にボロン(B)をドープした単結晶シリコン基板上に窒
化シリコン(SiNx )を形成して、この窒化シリコン
膜を部分的に除去し、この部分的に除去した窒化シリコ
ン膜をマスクとして単結晶シリコンを直接陽極化成によ
り多孔質シリコン化し、その後、この多孔質シリコンを
酸化し、さらに酸化温度よりも高温の1150℃で25
分間の緻密化処理を行うものである。この方法は簡単で
あるが、光伝搬の更なる低損失化という点において、次
の2点の課題を残している。第1は、コア部とクラッド
部それぞれの酸化膜の光学的性質と膜厚を自由に選べな
いこと。第2は、シリコン基板とコア部との間に介在す
べきクラッド部の光学的特性と膜厚を任意に選択できな
いことである。このクラッド部の実効膜厚を充分に厚く
できない場合、コア部を伝搬する光エネルギーはシリコ
ン基板に漏れだし、伝搬損失が大きくなるという問題を
誘発する。
【0008】さらに、米国特許第4,927,781 号公報およ
び同第5,057,022 号公報には、多孔質シリコン層をクラ
ッド部として用いるとともに、結晶質シリコン自体をコ
ア部として用いる光導波路の作製方法が開示されてい
る。すなわち、シリコン基板上に、高濃度ドープ層をエ
ピタキシャル成長させるとともに、この高濃度ドープ層
上に低濃度ドープ層をさらにエピタキシャル成長させ、
この低濃度ドープ層のコアとなる部分のみを残して、他
の低濃度ドープ層部分を選択除去した後に、高濃度ドー
プ層を多孔質化し、この多孔質化した部分を緻密化する
ことによって、酸化シリコンを下部クラッド層にすると
共に、低濃度ドープ層の残存部分をコアとするものであ
る。この方法は、二度のエピタキシャル成長とコアとな
る「厚い」半導体層の選択エッチングなど形成工程が複
雑である。また、コアである結晶性シリコンは、波長
1.3μmの光に対する屈折率が3.5と非常に大きい
ため、この導波路から外部のファイバーなどに光を取り
出す際の導波路とファイバー間の光結合損失が大きくな
り、結合損失の低減が課題となる。
【0009】本発明は、このような従来技術に鑑みて発
明されたものであり、製造工程や構造が複雑化すること
を解消するとともに、装置としての再現性が悪いことを
解消し、さらに装置が高価になることを解消した光導波
路の製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、請求項1に係る光導波路の製造方法では、シリコン
基板内にコア部とクラッド部から成る光導波路を形成す
る光導波路の形成方法において、前記シリコン基板内の
コア部となる第一の領域を多孔質化する工程と、この第
一の領域に不純物をドープする工程と、この第一の領域
周辺部のクラッド部となる第二の領域を多孔質化する工
程と、前記シリコン基板を熱処理して前記第一の領域と
第二の領域を酸化する工程を含んで成る。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明を添付図面に基づき
詳細に説明する。図1は、本発明に係る光導波路の製造
方法の工程の一例を示す図である。まず、同図(a)に
示すように、シリコン基板1上に、光導波路のコア部と
なる第一の領域3部分のみが開口したマスク層2を設け
る。このマスク層2は、陽極化成処理で高濃度のフッ酸
溶液を用いるため、耐フッ酸性が必要である。耐フッ酸
性のマスク層としては、Au、Pt、a−Si、SiN
x 、レジスト膜などがある。また、これらの膜を多層構
造にして、耐フッ酸性を増すことも可能である。シリコ
ン基板1としては、p型或いはn型のいずれでも可能で
ある。
【0012】次に、同図(b)に示すように、陽極化成
処理により、コア部となる第一の領域3部分を多孔質化
する。この陽極化成処理を行うための装置を図2に示
す。図2において、1はシリコン基板、7は化成チャン
バー、8は陽極白金電極、9は陰極白金電極、10はフ
ッ酸溶液、11は直流電源である。化成チャンバー7は
フッ素樹脂などから成る。この装置では、陽極白金電極
8側と陰極白金電極9側のフッ酸溶液10はシリコン基
板1を介して分離されている。陰極白金電極9が入った
フッ酸溶液10がシリコン基板1の表面から多孔質化す
る。陽極化成処理で用いるフッ酸溶液10は、フッ化水
素酸とエタノールと水の混合液で、フッ化水素酸濃度は
15〜50%である。陽極化成処理時の電流密度は、1
0〜250mA/cm2 である。シリコン基板1として
n型基板を用いる場合は、陽極化成中にタングステンラ
ンプなどにより、光を照射する必要があるが、p型基板
を用いる場合は、光照射の必要はない。
【0013】図3は、陽極化成時間と多孔質シリコンの
厚みとの関係を示す図である。図3に示すように、陽極
化成時間と多孔質シリコンの厚みにはほぼ比例関係があ
る。シリコン基板1が6〜10μmの深さまで多孔質化
すれば、一回目の陽極化成処理を終える。この厚みがコ
ア部の径となるので、導波する光がシングルモードとな
るように、不純物のドープ量と多孔質化する第一の領域
3の径を調整する必要がある。多孔質シリコンの酸化に
よる体積膨張を考慮して、この第一の領域3の多孔度を
45〜60%に調整する。
【0014】次に、図1(c)に示すように、不純物の
ドーピングを行う。不純物としては、Be、Mg、A
l、Cd、Y、Zr、Pb、Ti、La、Nb、S、
B、Sr、Geやそれらの酸化物、或いはそれらを含む
化合物などがあり、シリコン基板1上に蒸着、スピンコ
ート、電着などの方法で成膜する。ドーピング量は、ド
ープ材料によって異なる。通常は、コア部とクラッド部
(SiO2 )の比屈折率差(Δn(%))が0.25〜
2.0程度になるように、不純物のドーピングを行う。
酸化チタンは、屈折率が2.71と石英の屈折率1.4
8に対して非常に高く、微量であってもコア部の屈折率
をあげることができると共に、二回目の陽極化成工程で
フッ酸溶液中に溶出しないという利点がある。このた
め、ドーピング材料として酸化チタンを用いた場合は塗
布した材料のほぼ全量がシリコン基板1内にドーピング
され、コア部の屈折率調整を精度良く行うことができ
る。
【0015】次に、同図(d)に示すように、下部クラ
ッド部となる第二の領域5部分のみが開口したマスク2
を設ける。上記ドーピング材料が二回目の陽極化成処理
の条件によってフッ酸溶液に溶出する場合には、必要部
分にドーピング材料を残すためのマスク4を別途設けれ
ばよい。
【0016】次に、同図(e)に示すように、二回目の
陽極化成を行う。陽極化成条件は、一回目の陽極化成条
件と同一である。
【0017】次に、同図(f)に示すように、熱酸化処
理を行い、第一の領域3と第二の領域5の多孔質シリコ
ンを石英にする。酸化温度は通常950〜1050℃で
あり、酸素又は水蒸気雰囲気中で0.5〜2時間程度行
う。
【0018】最後に、同図(g)に示すように、上部ク
ラッド層6を設ける必要がある場合は、スピンオングラ
ス法、CVD法、FHD法等で形成することができる。
【0019】
【実施例】抵抗0.01Ω・cm以下のp+ 型シリコン
基板を用いて光導波路を作製した。シリコン基板の面方
位は<100>である。このシリコン基板表面にn型の
a−Siをスパッタリング法で厚み2000Åに成膜し
た。n型の膜を用いるのは、a−Siから成るマスク層
が陽極化成処理で化成されないようにするためである。
次いで、コア部となる第一の領域部分のみa−Siマス
クをフォトリソグラフィ技術を用いて開口した。コア部
の目標断面形状は、幅×深さ=10×10(μm)であ
る。マスク開口部の幅を2μmに設定し、目標断面形状
よりも細かくした。これは、シリコン基板内部の下方向
のみならず、横方向にも多孔質化が進むためである。a
−Siから成るマスク層のエッチングマスクとしてレジ
スト材料を所定パターンに形成した。エッチングは、フ
ッ硝酸溶液(フッ酸:硝酸:水=1:20:5)を用い
て行った。
【0020】a−Siのエッチング後、レジストマスク
をa−Si上に残したままで陽極化成処理を行った。こ
の陽極化成は図2に示す装置を用いて行った。陽極化成
溶液としては、フッ酸30%(フッ酸:エタノール:水
=6:7:7)溶液を用いた。陽極化成処理の条件は、
電流密度が30mA・cmで、5分間である。シリコン
基板表面部の多孔質化は約9μmの深さまで進み、a−
Siマスク開口部における幅は10μmとなった。
【0021】次に、ドーピング材料として単金属酸化物
薄膜用塗布材料をスピンコート法で基板表面に塗布し
た。このドーピング材料は焼成後に溶剤等が蒸発して酸
化チタン(TiO2 )膜がシリコン基板上に残るもので
ある。ドーピング材料を塗布した後に、120℃のクリ
ンオーブンで10分間仮焼成した。
【0022】レジストマスクをアセトンで除去して、レ
ジストマスク上の不要なドーピング材料を同時に除去
し、多孔質部分のドーピング材料のみを残した。また、
フォトリソグラフィ技術により、下部クラッドー層とな
る部分のa−Siをエッチングにより除去した。
【0023】次に、二回目の陽極化成処理を行った。陽
極化成条件は、電流密度が30mA・cmで、処理時間
は20分である。一回目の陽極化成処理を行った多孔質
シリコン上には酸化チタンの膜が付いており、この部分
からは多孔質化は進まず、コア部を取り囲むように多孔
質化が進んだ。
【0024】酸化処理を図5に示す温度プロファイルで
行った。すなわち、酸素雰囲気中300℃でまず1時
間、水蒸気雰囲気中900℃で1時間、水蒸気雰囲気中
1050℃で1時間行った。この後室温まで自然冷却し
た。
【0025】次に、上部クラッド層をスピンオングラス
法で形成した。
【0026】最後に、シリコン基板をへき開して導波路
端面を研磨した。その後、1.3μmレーザ光を導波路
端面から入射してもう一方の導波路端面から出射される
導波光をCCDカメラで観察した。導波路は良好な特性
を示し、シングルモードで導波していることが確認でき
た。観察されたNFP(Near Field Pattern)から、水
平、垂直断面の光強度のプロファイルを測定した。図5
に示すように、導波路は良好な特性を示し、シングルモ
ードで導波していることが確認できた。
【0027】
【発明の効果】以上のように、本発明に係る液晶表示装
置の製造方法によれば、シリコン基板内のコア部となる
第一の領域を多孔質化する工程と、この第一の領域に不
純物をドープする工程と、この第一の領域周辺部のクラ
ッド部となる第二の領域を多孔質化する工程と、前記シ
リコン基板を熱処理して前記第一の領域と第二の領域を
酸化する工程を含んで成ることから、工程が簡略化され
ると共に、不純物を選択してドープすることにより、コ
ア部とクラッド部の光学的性質を比較的自由に選ぶこと
ができる。また、陽極化成処理時のマスクの開口部を最
適値に設定することで、コア部とクラッド部の厚みも変
化させることができ、光の伝搬損失の低減を図ることが
できる。さらに、コア部の屈折率は1.68以下に抑え
ることができ、この導波路から外部のファイバーなどに
光を取り出す際の導波路とファイバー間の光結合損失が
低減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る光導波路の形成方法を示す工程図
である。
【図2】陽極化成処理を行うための装置を示す図であ
る。
【図3】陽極化成処理時間と多孔質シリコン層の厚みと
の関係を示す図である。
【図4】熱処理時の温度プロファイルを示す図である。
【図5】本発明に係る形成方法により形成した光導波路
における導波路のニアフィールドパターンから求められ
る光強度のプロファイルを示す図である。
【符号の説明】
1・・・シリコン基板、2・・・陽極化成マスク、3・
・・第一の領域、4・・・不純物、5・・・第二の領
域、6・・・上部クラッド部、7・・・化成チャンバ
ー、8・・・陽極白金電極、9・・・陰極白金電極、1
0・・・フッ酸溶液
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平10−101321(JP,A) 特開 平8−335713(JP,A) 特開 平7−104328(JP,A) 特開 平7−199243(JP,A) 特開 平6−72729(JP,A) 特開 昭57−211103(JP,A) 特表 平6−501570(JP,A) 国際公開91/10931(WO,A1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G02B 6/10 - 6/14

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 シリコン基板内にコア部とクラッド部か
    ら成る光導波路を形成する光導波路の形成方法におい
    て、前記シリコン基板内のコア部となる第一の領域を多
    孔質化する工程と、この第一の領域に不純物をドープす
    る工程と、この第一の領域周辺部のクラッド部となる第
    二の領域を多孔質化する工程と、前記シリコン基板を熱
    処理して前記第一の領域と第二の領域を酸化する工程を
    含んで成ることを特徴とする光導波路の形成方法。
  2. 【請求項2】 前記第一の領域を45〜60%の多孔度
    に多孔質化することを特徴とする請求項1に記載の光導
    波路の形成方法。
  3. 【請求項3】 前記不純物がチタンもしくはチタン酸化
    物であることを特徴とする請求項1に記載の光導波路の
    形成方法。
  4. 【請求項4】 前記熱処理を酸素雰囲気中で行った後、
    水蒸気雰囲気中で行うことを特徴とする請求項1に記載
    の光導波路の形成方法。
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