JP3447597B2 - 液晶表示素子の製造方法 - Google Patents

液晶表示素子の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、薄型かつ軽量で、
さらに、低消費電力であることがもとめられる、例えば
ワードプロセッサー、パーソナルコンピューター、およ
び携帯情報機器等の表示装置として用いられる液晶表示
素子の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、液晶表示素子は、ガラス等から
なり、互いに対向した一対の透明基板を有し、該透明基
板の対向面間にはITO膜からなる透明電極膜、配向膜
等が順次形成されている。また、これら一対の透明基板
は、対向面の周辺部に設けられたシール材層にて張り合
わされる。さらに、一対の透明基板間には、基板間隔を
所定の寸法に保持するための複数のセルギャップ保持材
(スペーサ)が介装されている。シール材層には、液晶
注入口としての開口部が設置されており、セルギャップ
保持材を介して一対の透明基板間に保持された隙間に、
該液晶注入口より液晶が注入される。
【0003】一対の透明基板間に液晶を注入する方法と
して、具体的には以下に示す方法が提案されている。例
えば、特開昭49−79543号公報に開示された液晶
表示装置の液晶注入方法は、図9に示すように、ポンプ
120を備えた耐圧容器130内に、液晶注入口111
を有するセル110を配置し、さらに、セル110の下
方に液晶140が入った液晶だめ容器150を配置した
液晶注入装置を用いるものである。
【0004】具体的には、ポンプ120を用いて、密閉
された耐圧容器130内の大気を排気することにより該
耐圧容器130内部を減圧し、続いて、セル110の液
晶注入口111を液晶140に浸漬する。次に、耐圧容
器130内に大気を導入して、該耐圧容器130内部を
常圧に戻し、セル110の内部と外部との圧力差を利用
して、セル110内に液晶140を注入する。
【0005】上記の方法によれば、単純な構造の液晶注
入装置で、複数のセル110…内への液晶140の注入
を容易に行うことが可能であるため、液晶表示装置の生
産性を向上させることができる。
【0006】しかしながら、上記の方法は、a)大型の
セルに液晶を注入する場合に、セル厚の制御が困難とな
ること、b)セル内部の残留ガスにより、液晶注入口の
反対側隅にしきい値電圧のムラが発生すること、c)液
晶注入により、液晶の流れ跡が発生し、しきい値電圧の
ムラが発生すること、等の問題を有する。
【0007】また、実開昭62−113323号公報に
は、液晶注入口を広く形成し、該液晶注入口に不連続線
状のバッファを少なくとも2列に、かつ、千鳥状に配設
し、該液晶注入口より液晶が封入されてなる液晶表示装
置が開示されている。
【0008】上記構造を有する液晶注入口から、基板間
に液晶を注入する方法によれば、液晶の注入時間の短縮
を図ることが可能である。しかし、液晶注入により、特
に、不連続線状のバッファの後段に液晶の流れ跡が発生
し、しきい値電圧のムラが発生する等の問題を有する。
【0009】一方、特開平8−262462号公報に開
示された液晶充填方法は、セルに設けられた少なくとも
一つの液晶注入口と、少なくとも一つの排気口とのそれ
ぞれにコネクタを接続し、排気口からセル内の大気を排
気することにより該セル内部を減圧し、同時に、液晶注
入口から液晶を加圧注入する手法に関するものである。
【0010】上記の方法、すなわち、排気口からセル内
部の減圧制御を行い、そして、液晶注入口より液晶を加
圧注入する方法は、セルの内部と外部との圧力差、およ
び、セルの内部への液晶注入完了から液晶注入口封止ま
での放置時間にてセル厚を制御する方法と比較して、セ
ル厚の制御が容易である。したがって、上記の方法によ
れば、大型のセルに液晶を注入する場合でもセル厚の制
御を容易に行うことができ、所望のセル厚を得ることが
できる。また、液晶注入時に液晶注入口の反対側隅に寄
せられる汚れやガスを、排気口から取り除くことができ
る。特に、セル内部のガスが残留しないため、液晶注入
口の反対側隅にしきい値電圧のムラが発生することがな
い。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特開平
8−262462号公報に開示された上記従来の液晶充
填方法において、液晶が充填されるべきセルの液晶注入
口は補強をなされておらず、該液晶注入口を広く確保す
ることが困難である。よって、セルへの液晶注入時に、
液晶注入口付近に液晶のよどみが生じ、一様に流れな
い。その結果、液晶注入口付近に液晶の流れ跡が残存
し、しきい値電圧のムラが発生してしまう。
【0012】本発明は、上記問題点を解決するためにな
されたものであって、その目的は、例えば、液晶注入口
付近の液晶の流れ跡に発生するしきい値電圧のムラを有
せず良好な表示品質を持つ液晶表示素子を、効率的に製
造することができる液晶表示素子の製造方法を提供する
ことにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明の請求項1記載の
液晶表示素子の製造方法は、上記の課題を解決するため
に、互いに対向する一対の基板と、基板間に位置し、該
基板の周囲に枠状に設けられたシール材層とを備え、上
記シール材層の一部に、少なくとも一つの排気口と、近
傍に第一の緩衝体を有する、少なくとも1つの液晶注入
口とが設けられ、シール材層に囲まれた基板間を上記排
気口側から排気減圧すると共に、上記液晶注入口側から
該基板間に、加圧した液晶を注入する液晶表示素子の製
造方法において、上記第一の緩衝体間に注入するための
溝部を有し、液晶供給管の内周が第一の緩衝体間領域に
収まっている注入コネクタを介して、上記加圧した液晶
を注入ることを特徴としている。
【0014】上記の方法によれば、液晶注入口側から注
入された液晶は、第一の緩衝体間領域を通って、対向す
る一対の基板間全体へと拡散する。液晶は、第一の緩衝
体に正面から衝突することがなく、さらに、排気口側か
らの排気減圧と同調して、一定の速度で基板間側へ供給
されるので、液晶の流れが液晶注入口近傍でよどむこと
がない。したがって、第一の緩衝体の後段を含む液晶注
入口近傍に、液晶の流れ跡が発生することを抑制するこ
とができる。すなわち、液晶注入口付近の液晶の流れ跡
に発生するしきい値電圧のムラを有せず、良好な表示品
質を持つ液晶表示素子を製造することができる。
【0015】また、上記の方法において、第一の緩衝体
は、液晶注入口の補強シールとして機能し、例えば、一
対の基板を貼り合わせる際にかかる圧力や、封止剤の硬
化の際にかかる圧力、また、液晶注入の際にかかる圧力
などによって液晶注入口付近にセルギャップムラが生じ
ることを防止することができる。
【0016】したがって、例えば、液晶の注入作業の効
率化、特に液晶注入時間の短縮のために液晶注入口を大
きくしても液晶注入口付近にセルギャップムラが生じる
ことを防止することができる。特に、大型の表示部を持
つ液晶表示素子を製造する場合、その製造効率を向上さ
せることができる。すなわち、しきい値電圧のムラを有
せず、良好な表示品質を持つ液晶表示素子を、効率的に
製造することができる液晶表示素子の製造方法を提供す
ることができる。
【0017】本発明の請求項2記載の液晶表示素子の製
造方法は、上記の課題を解決するために、請求項1記載
の方法において、基板への接地面積が第一の緩衝体より
も小さな円柱状の第二の緩衝体が、少なくとも、液晶が
注入される第一の緩衝体間領域内に複数個配置されてお
り、さらに、第二の緩衝体の配置が、基板の長さ方向に
2列以上の千鳥状となっていることを特徴としている。
【0018】上記の方法によれば、液晶注入口から注入
された液晶は、長さ方向に、少なくとも2列以上の千鳥
状に配設された、基板への接地面積が第一の緩衝体より
も小さな第二の緩衝体に衝突することにより、その流動
速度を段階的に十分に低減されて、対向する一対の基板
間全体に拡散する。したがって、対向する一対の基板間
に封入されたセルギャップ保持材が、液晶注入時に移動
することがない。
【0019】すなわち、セルギャップ保持材の移動によ
る配向膜等の損傷を防ぐことができるとともに、表示部
におけるセル厚(セルギャップ)を一定に保つことがで
きるため、表示ムラ等のない液晶表示素子を製造するこ
とができる。
【0020】本発明の請求項3記載の液晶表示素子の製
造方法は、上記の課題を解決するために、請求項2記載
の方法において、第二の緩衝体の直径が0.3mm以上
で、かつ、上記注入領域の幅寸法の2倍未満であること
を特徴としている。
【0021】上記の方法によれば、第二の緩衝体の後段
に液晶の流れ跡が発生することを確実になくすることが
でき、さらに、基板間への液晶の流れをより整流とする
ことができるため、表示ムラ等のない液晶表示素子を製
造することができる。
【0022】本発明の請求項4記載の液晶表示素子の製
造方法は、上記の課題を解決するために、請求項1ない
し3のいずれか一項に記載の方法において、隣接する第
一の緩衝体同士が、該第一の緩衝体の幅寸法の3倍以下
の中心間距離で配置されていることを特徴としている。
【0023】上記の方法によれば、第一の緩衝体は、液
晶注入口の補強シールとして確実に機能し、例えば、一
対の基板を貼り合わせる際にかかる圧力や、封止剤の硬
化の際にかかる圧力、また、液晶注入の際にかかる圧力
などによって液晶注入口付近にセルギャップムラが生じ
ることを防止することができる。
【0024】本発明の請求項5記載の液晶表示素子の製
造方法は、上記の課題を解決するために、請求項1ない
し4のいずれか一項に記載の方法において、液晶注入口
近傍における緩衝体占有率が、20%以上80%以下で
あることを特徴としている。
【0025】上記の方法によれば、液晶注入口近傍の補
強強度が十分に確保される。また、液晶の流入経路を十
分に確保することができるので、表示ムラ等のない液晶
表示素子を効率的に製造することができる。
【0026】本発明の請求項6記載の液晶表示素子の製
造方法は、上記の課題を解決するために、請求項1ない
し5のいずれか一項に記載の方法において、液晶の注入
圧力が、0kgf/cm2 を超え、2kgf/cm2
下であることを特徴としている。
【0027】上記の方法によれば、基板間への液晶の注
入作業を通して一定のセルギャップを保持することが容
易となる。また、液晶の注入時間を短縮することもでき
るので、表示ムラ等のない液晶表示素子を効率的に製造
することができる。
【0028】本発明の請求項7記載の液晶表示素子の製
造方法は、上記の課題を解決するために、請求項1ない
し6のいずれか一項に記載の方法において、緩衝体およ
びシール材層の配置が、液晶注入口の中心を通って、基
板の長さ方向にのびる直線に対し略線対称となってお
り、上記直線に対し略線対称な注入領域から、同一の注
入圧力で、液晶の注入が行われることを特徴としてい
る。
【0029】上記の方法によれば、液晶は、液晶注入口
の中心を通って、基板の長さ方向にのびる直線に対し略
線対称な注入領域から、同一の注入圧力で基板間へ注入
される。
【0030】さらに、シール材層の配置も該直線に対し
略線対称となっているため、対向する一対の基板間全体
への液晶の流れを全体で一様な整流とすることが可能と
なる。つまり、液晶は、その流れに部分的なよどみを生
じることなく対向する一対の基板間に拡散する。また、
第二の緩衝体が配設される場合には、液晶は、その流動
速度を十分に低減された状態で、対向する一対の基板間
全体に拡散する。したがって、液晶注入時におけるセル
ギャップ保持材の移動や、液晶の配向ムラ、また、液晶
の流れ跡が発生することがない。
【0031】すなわち、セルギャップ保持材の移動によ
る配向膜等の損傷を防ぐことができるとともに、表示部
におけるセル厚(セルギャップ)を一定に保つことがで
き、さらには、液晶の配向ムラや、液晶の流れ跡に発生
するしきい値電圧のムラをなくすことができる。よっ
て、表示ムラ等のない液晶表示素子を製造することがで
きる。また、液晶の注入領域として、該直線に略線対称
な、複数の注入領域を使用した場合、液晶の注入作業を
効率化することができる。
【0032】
【発明の実施の形態】〔実施の形態1〕本発明の実施の
一形態について図1ないし図6に基づいて説明すれば、
以下の通りである。尚、これによって、本発明が限定さ
れるものではない。本実施の形態に係る液晶表示素子の
製造方法に用いられる液晶注入装置は、例えば、図1に
示すように、液晶セル11内部(すなわち、基板間)を
排気減圧するための機構として、液晶セル11のシール
材層23(図4および図5に示す)に設けられた排気口
22aに接続される吸引コネクタ12a、排気口22b
に接続される吸引コネクタ12b、液晶セル11内部を
排気減圧するための真空ポンプ15、および、吸引コネ
クタ12a・12bと真空ポンプ15とをつなぐ排気管
13を備えている。また、排気管13には、液晶セル1
1内部の排気減圧の実行・停止を切り換えるための開閉
バルブ14が設けられている。
【0033】さらに、上記液晶注入装置は、液晶セル1
1内部に液晶を注入するための機構として、液晶セル1
1のシール材層23に設けられた液晶注入口26aに接
続される注入コネクタ16、液晶供給装置19、およ
び、注入コネクタ16と液晶供給装置19とをつなぐ液
晶供給管17を備えている。また、液晶供給管17に
は、注入コネクタ16と液晶供給装置19との間に、液
晶セル11内部への液晶供給の実行・停止を切り換える
ための開閉バルブ18が設けられている。
【0034】次に、注入コネクタ16、および、吸引コ
ネクタ12a・12bの構成について説明する。注入コ
ネクタ16は、液晶セル11のシール材層23に設けら
れた液晶注入口26aに接続されるものであり、図2お
よび図3に示すように、その両側面に所定の深さに設け
られた一対の溝部16a・16aと、ゴム等の弾性材料
からなる円柱状のシール部16bとを備えている。
【0035】溝部16a・16aの溝幅は、液晶セル1
1の厚さを超え、かつ、液晶セル11の厚さと略等しく
設定されている。また、溝部16a・16aの深さは、
該溝部16a・16aに液晶セル11が完全に挿入され
た時点で、後述する液晶供給管17と液晶注入口26a
とが当接するべく設定されていれば、特に限定されるも
のではない。
【0036】シール部16bには、溝部16a・16a
の形状にあわせて、凹部16cが設けられている。凹部
16cの溝幅は、その底面側(すなわち、円柱状のシー
ル部16bの中心側)では液晶セル11の厚さよりもや
や小さく設定されており、シール部16bの外周面側に
向かうにしたがって広がるように設定されている。そし
て、凹部16cの開放部における溝幅は、溝部16a・
16aの溝幅とほぼ同等か、やや広くなっている。さら
に、シール部16bの、凹部16cと反対側の外周面に
は、凹部16cと平行に設けられ、かつ、凹部16cの
底面に到達する断面矩形の孔が形成されている。そし
て、断面矩形の液晶供給管17は、該孔を通して、凹部
16cの底面と略同等の高さで開口している。尚、本実
施の形態では、縦1.0mm、横15mmの矩形の外周
を持ち、さらに、直径0.5mmの貫通穴17bを有す
る液晶供給管17を用いているが、液晶供給管の断面形
状、および、断面サイズは特に限定されるものではな
い。また、該液晶供給管の内周(本実施の形態1の貫通
穴17bに相当)の断面形状、および、断面サイズは、
該内周と液晶注入口26aとが重なりあってなる領域
(特許請求の範囲に記載の注入領域)が以下に説明する
第一の緩衝体間領域内におさまるものであれば特に限定
されるものではない。さらに、必要に応じて、液晶注入
口26aと当接する液晶供給管17の断面に、液晶をな
じませるための浅い溝を設けるようにしてもよい。
【0037】液晶を注入されるべき液晶セル11は、溝
部16a・16aに対して、液晶注入口26aと液晶供
給管17とが互いに対向するように挿入されることによ
り、注入コネクタ16に取り付けられる。溝部16a・
16aと重なって形成された凹部16cの溝幅は、その
底面側では液晶セル11の厚さよりもやや小さく設定さ
れているので、液晶セル11と注入コネクタ16とを密
接して取り付けることが可能である。さらにまた、溝部
16a・16aの底面、および、凹部16cの底面が同
じ高さに設定されているため、液晶セル11が、凹部1
6cの底面側に過剰に圧接されることがない。
【0038】吸引コネクタ12a・12bは、互いに同
じ構成を有し、それぞれ、液晶セル11のシール材層2
3に設けられた排気口22a・22bに接続される。
【0039】上記説明の注入コネクタ16と、吸引コネ
クタ12a・12bとは、挿入される管の種類(注入コ
ネクタ16では、液晶供給管17、また、吸引コネクタ
12a・12bでは、排気管13)の違いを除けば、ほ
ぼ類似した構造をもつものであるため、吸引コネクタ1
2a・12bの詳細な説明は省略する。尚、排気管の断
面形状、および、断面サイズ等は、特に限定されるもの
ではない。
【0040】また、注入コネクタ、および、吸引コネク
タの数は、特に限定されるものではなく、取り扱う液晶
セルに設けられた液晶注入口、および、排気口の数に応
じて決定すればよい。
【0041】尚、液晶注入装置に設けられる、液晶セル
11内部を排気減圧するための機構、および、液晶セル
11内部に液晶を注入するための機構は、上記例示のも
のに特に限られるものではない。
【0042】次に、液晶セル11について、図4、図5
および図6に基づいて説明する。尚、液晶セル11の説
明において、幅方向とは、液晶注入口26aと平行な方
向をさし、長さ方向とは、ガラス基板10a・10bと
平行で、かつ、液晶注入口26aと垂直な方向をさすも
のとする。
【0043】液晶セル11は、図4および図5に示すよ
うに、それぞれが長さ280mm、幅212mm、厚さ
1.4mmの大きさを持つ一対のガラス基板(基板)1
0a・10b、ガラス基板10a・10bの周辺部に設
けられ、該ガラス基板10a・10bを貼り合わせると
ともに、周辺付近をシールするためのシール材層23を
備えている。さらに、シール材層23には、幅方向に2
0mmの長さを有する液晶注入口26aと、それぞれが
幅方向に2.0mmの長さを有する2つの排気口22a
・22bとが形成されている。尚、シール材層23に
は、シール内スペーサが含まれている。
【0044】また、図5に示すように、ガラス基板10
a・10bの間にはセルギャップ保持材25が封入され
ている。尚、図示はしないが、対向する2枚のガラス基
板10a・10bの対向面側には、液晶表示のための透
明電極膜などが形成され、さらに、透明電極基板等を覆
う形状で配向膜が形成されている。
【0045】液晶セル11内部、すなわち、シール材層
23により囲まれた側は、液晶注入口26a側から内方
向側にかけて、順に、長さ方向に2mmの幅を有する液
晶注入部26、および、表示部24の2領域からなる。
【0046】シール材層23は、液晶注入部26を構成
する領域を除いては、略矩形状に形成され、シール材層
23により略矩形状に囲まれた長さ273mm、幅20
9mm、厚さ7μmの領域は上記表示部24として機能
する。一方、液晶注入部26の幅方向両端をなすシール
材層23は、表示部24側より液晶注入口26aにかけ
て液晶注入部26の幅寸法を狭めるように曲線状に形成
されている。
【0047】排気口22a・22bと、液晶注入口26
aとは、ガラス基板10a・10bの、幅方向に延びる
対向辺に形成されている。また、排気口22aと排気口
22bとは、液晶注入口26aの中点を通って、長さ方
向に延びる直線に対して略線対称となるように配置され
ている。尚、排気口22a・22bには、後述する封止
剤による封止の際の衝撃をやわらげ、さらに、表示部2
4への封止剤の侵入を防ぐための補強シールを設けても
よい尚、ガラス基板10a・10bの大きさ、液晶注入
口26aの幅寸法、排気口22a・22bの幅寸法、液
晶注入部26の形状・寸法、表示部24の形状・寸法、
セルギャップ保持材25の大きさ、電極等の配置は特に
限定されるものではない。
【0048】液晶注入口26aの近傍、すなわち、液晶
注入部26には、図6に示すように、第一の緩衝体とし
ての大バッファ36a…、および、基板への接地面積が
大バッファ36aよりも小さな第二の緩衝体としての小
バッファ36b…とが設けられている。大バッファ36
aは、2.5mmの直径を持つ円柱状であり、小バッフ
ァ36bは、0.5mmの直径を持つ円柱状である。
尚、大バッファ36a…、および、小バッファ36b…
は、シール内スペーサを含むシール材でできている。
【0049】大バッファの形状は、特に円柱状に限定さ
れるものではなく、例えば具体的には、断面が、楕円形
状等の流線形状のものや、棒状のものであってもよい。
該断面を、長さ方向に細長い形状(例えば、長楕円形、
棒状等)とすれば、後述する液晶注入後の液晶の流れを
乱すことなく液晶注入口付近のセルギャップムラの発生
を有効に防止することができる。また、大バッファの基
板への接地面積は、特に限定されるものではなく、小バ
ッファ(第二の緩衝体)の基板への接地面積よりも大き
ければよい。
【0050】小バッファの直径は特に限定されるもので
はないが、約0.3mm以上で、かつ、注入領域の幅寸
法の2倍未満であれば特に好適である。すなわち、本実
施の形態のように、貫通穴17bの直径が0.5mmで
ある時には、小バッファの直径は、約0.3mm以上
1.0mm未満に設定すればよい。
【0051】小バッファを印刷する際のスクリーン加工
において、これより小さな直径を有する小バッファを印
刷すれば、該小バッファの断面は精密な円形とはなら
ず、以下に述べる液晶注入後の液晶の流れを整流とする
ことが困難となる。また、場合によっては、小バッファ
として、直径の異なる複数のものを同一の液晶注入部に
配置してもよい。
【0052】次に、液晶注入部26における大バッファ
36a…および小バッファ36b…の配設パターンにつ
いて具体的に説明する。尚、以下、特にことわりのない
かぎり、緩衝体とは、第一の緩衝体、および、第二の緩
衝体の両方を含むものとする。図6に示すように、3つ
の大バッファ36a…のそれぞれの中心は、液晶注入口
26aを幅方向に4等分する点を通って、ガラス基板1
0a・10bと平行で、かつ、液晶注入口26aと垂直
にのびる直線上に設けられている。また、大バッファ3
6a…のそれぞれの中心は、幅方向に一直線上に並んで
いる。すなわち、大バッファ36a…は、幅方向に、互
いに5mmの中心間距離をおいて一列に並べられてい
る。
【0053】一方、小バッファ36b…は、第一の緩衝
体間領域に配置されている。第一の緩衝体間領域とは、
液晶注入口および液晶注入部を、液晶注入口側正面から
見たときに、第一の緩衝体と重なり合わない空間領域の
ことを指し、図6においては、大バッファ36a…それ
ぞれの、長さ方向にのびる2枚の接面により囲まれる3
つの空間領域を除く、4つの空間領域を指すものとす
る。
【0054】それぞれの第一の緩衝体間領域には、5個
の小バッファ36b…が配置されている。また、それぞ
れの第一の緩衝体間領域において、隣接する任意の2つ
の小バッファ36b・36bの中心間の間隔は、1.5
mmとなっている。また、大バッファ36aと、該大バ
ッファ36aに隣接する小バッファ36b…との中心間
の間隔は、1.5mmとなっている。
【0055】また、上記20個の小バッファ36b…
は、液晶注入口26a側幅方向に、8個一列に並べら
れ、さらに、表示部24側幅方向に、12個一列に並べ
られている。そして、液晶注入口26a側幅方向に配置
された小バッファ36bの中心はいずれも、表示部24
側幅方向に配置された隣接する2つの小バッファ36b
・36bの中間点を通り、長さ方向に延びる直線上に位
置するように配置されている。すなわち、小バッファ3
6b…は、大バッファ36a…の間に、長さ方向2列に
規則正しくジグザグに配設されている。つまり、長さ方
向に2列の千鳥状に配設されている。また、シール材層
23に近接する小バッファ36b…は、該シール材層2
3側面に沿うように配設されている。
【0056】上記の小バッファ36b…、大バッファ3
6a…、および、シール材層23はそれぞれ、液晶注入
口26aの中点を通って、長さ方向に延びる直線に対し
て略線対称となるように配設されている。
【0057】隣接する大バッファ間の間隔(中心間距
離)は、特に限定されるものではないが、液晶注入口2
6aの補強強度を十分に確保するためには、第一の緩衝
体の最大幅寸法の3倍以下であればよい。尚、シール材
層23と、シール材層23に隣接する大バッファ36a
の中心との間隔(幅方向の最短距離)も、隣接する大バ
ッファ間の間隔のひとつとする。
【0058】大バッファ、および、小バッファの配設パ
ターンは、特に上記のものに限定されるものではなく、
例えば具体的には、1)大バッファを配設し、さらに、
大バッファの前段側および/または後段側の領域の幅方
向全体にわたり、長さ方向に2列以上の千鳥状に小バッ
ファを配設する配設パターン、2)大バッファのみ配設
し、小バッファは省略する配設パターン、等を挙げるこ
とができる。
【0059】また、小バッファを配置する場合には、上
記説明の注入領域を含む第一の緩衝体間領域上に少なく
とも配置し、かつ、長さ方向に2列以上の千鳥状に配設
されていればよい。すなわち、場合によっては、小バッ
ファが全く配置されない第一の緩衝体間領域が存在して
もよい。さらに、大バッファ、および、小バッファを、
液晶注入口の中点を通り、長さ方向に延びる直線に対し
て略線対称となるように配設することが好ましい。
【0060】液晶注入部における緩衝体占有率〔(第一
の緩衝体、および、第二の緩衝体の液晶注入部への接地
面積の合計/液晶注入部の面積)×100(%)〕は、
特に限定されるものではないが、20%以上、80%以
下とすることが好ましい。緩衝体占有率が20%未満と
なると、液晶注入口付近の補強強度が不足して、セルギ
ャップムラが生じ、液晶表示素子の表示ムラ(色ムラ)
の原因となる。一方、緩衝体占有率が80%を超える
と、液晶の流入経路が小さくなるために、注入時間が長
くなりすぎる。尚、小バッファ(第二の緩衝体)を配置
しない場合には、第二の緩衝体の液晶注入部への接地面
積を0として、緩衝体占有率を計算する。
【0061】液晶注入部における各緩衝体の、配置数、
配置列数、配置間隔、および、最大幅寸法、等は、上記
説明のものに限られるものではなく、液晶注入口の幅寸
法、液晶注入部のサイズや形状、表示部のサイズや形
状、注入される液晶の種類、注入される液晶の量、液晶
の注入圧、液晶の注入領域等に応じて決めることができ
る。
【0062】図6に示すように、液晶セル11内部への
液晶の注入は、液晶注入口26aにおける第一の緩衝体
間領域に相当する、液晶注入位置〜のいずれかひと
つ、または、液晶注入位置〜の複数から行われる。
尚、液晶注入位置〜とは、液晶注入を行うことが可
能な領域をさすものであり、実際の液晶の注入領域〔す
なわち、液晶供給管17の内周(貫通穴17b)と液晶
注入口26aとが重なりあってなる領域〕は、液晶注入
位置〜のいずれかひとつに完全に含まれていればよ
い。以下、液晶セル11内部への液晶の注入が、例えば
液晶注入位置から行われる場合について具体的に説明
する。
【0063】液晶セル11内部への液晶の注入は、図1
に示す、上記説明の液晶注入装置により行った。
【0064】液晶注入装置の開閉バルブ14・18を閉
じた状態で、注入コネクタ16を液晶セル11の液晶注
入口26aに接続し、吸引コネクタ12a・12bを液
晶セル11の排気口22a・22bにそれぞれ接続し
た。すなわち、液晶セル11内部が、外部に対して完全
に気密を保持した状態とした。注入コネクタ16と液晶
注入口26aとの接続は、貫通穴17bと液晶注入口2
6aとが重なりあってなる領域(注入領域)が、図6に
示す液晶注入位置内に完全におさまるように行った。
尚、本実施の形態においては、貫通穴17bはその一部
が基板10a・10bと重なりあっているため、該注入
領域は、一対の曲線状の短辺と一対の直線状の長辺とで
囲まれた略矩形の形状となっている。尚、場合によって
は、貫通穴17bが、液晶注入位置内に完全におさま
るようにすることも可能である。
【0065】続いて、開閉バルブ14を開き、液晶セル
11内部を真空ポンプ15により排気減圧した。液晶セ
ル11内部が所定の真空度に達したとき、開閉バルブ1
8を開く。これにより、例えば、乾燥した窒素等の不活
性ガスにより加圧された図示しない液晶が、液晶供給装
置19から、液晶供給管17、液晶注入位置を含む第
一の緩衝体間領域を通じて液晶セル11内部に、0.5
kgf/cm2 の加圧(注入圧力)値で注入される。そ
して、液晶セル11内部に注入された液晶が、排気口2
2a・22bに到達した時点で、開閉バルブ18、開閉
バルブ14を順に閉め、液晶セル11内部への液晶の注
入が完了する。尚、液晶注入口26aから注入される液
晶の種類は、特に限定されるものではない。
【0066】液晶の注入圧力は、特に限定されるもので
はないが、液晶の注入時間の短縮という点、および、液
晶の注入作業を通して一定のセルギャップを保持するこ
とが容易であるという点で、0kgf/cm2 を超え、
2kgf/cm2 以下であることが好ましい。また、場
合によっては、注入圧力を加えなくてもよい。
【0067】上記説明のように、液晶セル11内部の減
圧排気と、液晶セル11内部への液晶の注入は、互いに
調和をとりながら、一定の速度で行われる。また、液晶
注入口26aの液晶注入位置内から注入された液晶
は、後段に液晶の流れよどみが生じやすい大バッファ3
6a…に衝突することなく、長さ方向に2列の千鳥状に
配設された5つの小バッファ36b…に衝突して初期の
流動速度を段階的に低減される。さらに、上記小バッフ
ァ36b…は、規則正しく配設されているため、表示部
24への液晶の流れを整流とすることが可能となる。
【0068】つまり、液晶は、その流れに部分的なよど
みを生じることなく、かつ、その流動速度を十分に調節
・低減された状態で、表示部24に流入する。したがっ
て、本実施の形態にかかる液晶表示素子の製造方法にお
いては、液晶注入時における液晶の流れ跡が発生するこ
とがなく、さらには、セルギャップ保持材25の移動
や、液晶の配向ムラの発生をも防止することができる。
また、大バッファ36a…は、液晶注入口26aの補強
シールとして機能し、例えば、ガラス基板10a・10
bを貼り合わせる際にかかる圧力や、UV硬化性樹脂等
の封止剤の硬化の際にかかる圧力、また、液晶注入の際
にかかる圧力などによって液晶注入口26a付近にセル
ギャップムラが生じることを防止することができる。
【0069】すなわち、上記の方法によれば、セルギャ
ップ保持材25の移動による配向膜等の損傷を防ぐこと
ができるとともに、表示部24におけるセル厚を一定に
保つことができ、さらには、液晶の配向ムラや、液晶の
流れ跡に発生するしきい値電圧のムラをなくすことがで
きる。また、同時に、液晶注入口26a付近にかかる圧
力などによって液晶注入口26a付近にセルギャップム
ラが生じることを防止することもできる。
【0070】したがって、液晶表示素子の表示ムラ等を
防止することができ、また、液晶の注入作業の効率化、
特に、液晶注入時間の短縮のために液晶注入口26aを
大きくすることもできる。とりわけ、13.0型以上の
表示部を持つ液晶表示素子を製造する場合、その製造効
率を向上させる効果が顕著である。
【0071】液晶注入口26aにおける液晶の注入領域
は特に上記のものに限定されるものではないが、シール
材層23、液晶注入口26a、および、排気口22a・
22bが、液晶注入口26aの中点を通り、長さ方向に
延びる直線に対して略線対称に配置されている場合に
は、該直線に対して略線対称となる位置を液晶の注入領
域とし、該注入領域からそれぞれ等しい条件で注入され
るものであってもよい。これは、表示部24への液晶の
流れを、より整流とするためである。
【0072】具体的には例えば、図6において、液晶注
入位置・、または、液晶注入位置・から、それ
ぞれ等しい注入圧力で液晶を注入することも可能であ
る。さらにまた、液晶注入位置〜すべてから、それ
ぞれ等しい注入圧力で液晶を注入することも可能であ
る。尚、この場合には、液晶注入装置に、選択した液晶
注入位置数に応じた液晶供給管を具備させる必要があ
る。
【0073】液晶セル11内部への液晶注入完了後、排
気口22a・22b、および、液晶注入口26aを、例
えばUV硬化性樹脂等の封止剤で封止する。その後、ガ
ラス基板10a・10bそれぞれの外面に、図示しない
偏光板等を貼着することにより液晶表示素子が完成す
る。尚、上記大バッファ36a…、および、小バッファ
36b…は、表示部24への封止剤の入り込みを防止す
る役割も有する。
【0074】〔実施の形態2〕本発明の他の実施の形態
について、図7に基づいて説明すれば、以下の通りであ
る。尚、説明の便宜上、前記実施の形態にて示した各部
材と同一の機能を有する部材には、同一の符号を付記
し、その説明を省略する。
【0075】本実施の形態に係る液晶表示素子の製造方
法に用いられる液晶セルは、図7に示すように、液晶注
入部26に大バッファ36a…のみを配設したことを除
けば、前記実施の形態1で用いられた液晶セル11と同
一の構成である。
【0076】上記液晶セルに、前記実施の形態1で使用
したものと同様の液晶注入装置を用いて、同一の条件
で、液晶の注入を行った。
【0077】液晶セル内部への液晶の注入は、図7に示
す液晶注入位置〜のいずれかひとつ、または、液晶
注入位置〜の複数から行うことが可能であるが、本
実施の形態では、液晶注入位置〜のいずれかひとつ
から行った。尚、図7に示す液晶注入位置〜は、図
6に示す液晶注入位置〜と同様のものである。
【0078】本実施の形態に係る液晶表示素子の製造方
法においても、液晶は、その流れに部分的なよどみを生
じることなく、かつ、その流動速度を十分に調節された
状態で、図示しない表示部に流入する。したがって、本
実施の形態にかかる液晶表示素子の製造方法において
は、液晶注入時における液晶の流れ跡が発生することが
なかった。さらには、表示部、および、液晶注入口26
aにおけるセル厚を一定に保つことができるとともに、
表示部への封止剤の入り込みを防止することができた。
【0079】〔比較例〕前記実施の形態1で用いたもの
と同様の液晶注入装置を用いて、図8に示す液晶セル1
1の異なる液晶注入位置・・のいずれかひとつか
ら、液晶セル11への液晶の注入を行った。上記液晶注
入位置・・はそれぞれ、大バッファ36a…と対
向した位置である。
【0080】上記の液晶注入の方法では、大バッファ3
6a…の近傍で、液晶の流れのよどみが生じた。特に、
大バッファ36a…の後段には、液晶の流れ跡が発生し
た。したがって、上記の方法で液晶が注入されてなる液
晶表示素子は、液晶の流れ跡にしきい値電圧のムラが発
生し、良好な表示品質が得られなかった。
【0081】
【発明の効果】本発明の請求項1記載の液晶表示素子の
製造方法は、以上のように、互いに対向する一対の基板
と、基板間に位置し、該基板の周囲に枠状に設けられた
シール材層とを備え、上記シール材層の一部に、少なく
とも一つの排気口と、近傍に第一の緩衝体を有する、少
なくとも1つの液晶注入口とが設けられ、シール材層に
囲まれた基板間を上記排気口側から排気減圧すると共
に、上記液晶注入口側から該基板間に、加圧した液晶を
注入する液晶表示素子の製造方法において、上記第一の
緩衝体間に注入するための溝部を有し、液晶供給管の内
周が第一の緩衝体間領域に収まっている注入コネクタを
介して、上記加圧した液晶を注入る方法である。
【0082】上記の方法によれば、第一の緩衝体の後段
を含む液晶注入口近傍に、液晶の流れ跡が発生すること
を抑制することができる。すなわち、液晶注入口付近の
液晶の流れ跡に発生するしきい値電圧のムラを有せず、
良好な表示品質を持つ液晶表示素子を製造することがで
きる。
【0083】また、上記の方法において、第一の緩衝体
は、液晶注入口の補強シールとして機能し、例えば、一
対の基板を貼り合わせる際にかかる圧力や、封止剤の硬
化の際にかかる圧力、また、液晶注入の際にかかる圧力
などによって液晶注入口付近にセルギャップムラが生じ
ることを防止することができる。
【0084】したがって、例えば、液晶の注入作業の効
率化、特に液晶注入時間の短縮のために液晶注入口を大
きくしても液晶注入口付近にセルギャップムラが生じる
ことを防止することができる。特に、大型の表示部を持
つ液晶表示素子を製造する場合、その製造効率を向上さ
せることができる。すなわち、しきい値電圧のムラを有
せず、良好な表示品質を持つ液晶表示素子を、効率的に
製造することができる液晶表示素子の製造方法を提供す
ることができるという効果を奏する。
【0085】本発明の請求項2記載の液晶表示素子の製
造方法は、以上のように、請求項1記載の方法におい
て、基板への接地面積が第一の緩衝体よりも小さな円柱
状の第二の緩衝体が、少なくとも、液晶が注入される第
一の緩衝体間領域内に複数個配置されており、さらに、
第二の緩衝体の配置が、基板の長さ方向に2列以上の千
鳥状となっている方法である。
【0086】上記の方法によれば、液晶注入口から注入
された液晶は、長さ方向に、少なくとも2列以上の千鳥
状に配設された、基板への接地面積が第一の緩衝体より
も小さな第二の緩衝体に衝突することにより、その流動
速度を段階的に十分に低減されて、対向する一対の基板
間全体に拡散する。したがって、対向する一対の基板間
に封入されたセルギャップ保持材が、液晶注入時に移動
することがない。
【0087】すなわち、セルギャップ保持材の移動によ
る配向膜等の損傷を防ぐことができるとともに、表示部
におけるセル厚(セルギャップ)を一定に保つことがで
きるため、表示ムラ等のない液晶表示素子を製造するこ
とができるという効果を、請求項1の方法による効果に
加えて奏する。
【0088】本発明の請求項3記載の液晶表示素子の製
造方法は、以上のように、請求項2記載の方法におい
て、第二の緩衝体の直径が0.3mm以上で、かつ、上
記注入領域の幅寸法の2倍未満である方法である。
【0089】上記の方法によれば、第二の緩衝体の後段
に液晶の流れ跡が発生することを確実になくすることが
でき、さらに、基板間への液晶の流れをより整流とする
ことができるため、表示ムラ等のない液晶表示素子を製
造することができるという効果を、請求項2の方法によ
る効果に加えて奏する。
【0090】本発明の請求項4記載の液晶表示素子の製
造方法は、以上のように、請求項1ないし3のいずれか
一項に記載の方法において、隣接する第一の緩衝体同士
が、該第一の緩衝体の幅寸法の3倍以下の中心間距離で
配置されている方法である。
【0091】上記の方法によれば、第一の緩衝体は、液
晶注入口の補強シールとして確実に機能し、例えば、一
対の基板を貼り合わせる際にかかる圧力や、封止剤の硬
化の際にかかる圧力、また、液晶注入の際にかかる圧力
などによって液晶注入口付近にセルギャップムラが生じ
ることを防止することができるという効果を、請求項1
ないし3のいずれか一項に記載の方法による効果に加え
て奏する。
【0092】本発明の請求項5記載の液晶表示素子の製
造方法は、以上のように、請求項1ないし4のいずれか
一項に記載の方法において、液晶注入口近傍における緩
衝体占有率が、20%以上80%以下である方法であ
る。
【0093】上記の方法によれば、液晶注入口近傍の補
強強度が十分に確保される。また、液晶の流入経路を十
分に確保することができるので、表示ムラ等のない液晶
表示素子を効率的に製造することができるという効果
を、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の方法によ
る効果に加えて奏する。
【0094】本発明の請求項6記載の液晶表示素子の製
造方法は、以上のように、請求項1ないし5のいずれか
一項に記載の方法において、液晶の注入圧力が、0kg
f/cm2 を超え、2kgf/cm2 以下である方法で
ある。
【0095】上記の方法によれば、基板間への液晶の注
入作業を通して一定のセルギャップを保持することが容
易となる。また、液晶の注入時間を短縮することもでき
るので、表示ムラ等のない液晶表示素子を効率的に製造
することができるという効果を、請求項1ないし5のい
ずれか一項に記載の方法による効果に加えて奏する。
【0096】本発明の請求項7記載の液晶表示素子の製
造方法は、以上のように、請求項1ないし6のいずれか
一項に記載の方法において、緩衝体およびシール材層の
配置が、液晶注入口の中心を通って、基板の長さ方向に
のびる直線に対し略線対称となっており、上記直線に対
し略線対称な注入領域から、同一の注入圧力で、液晶の
注入が行われる方法である。
【0097】上記の方法によれば、液晶は、その流れに
部分的なよどみを生じることなく対向する一対の基板間
に拡散する。また、第二の緩衝体が配設される場合に
は、液晶は、その流動速度を十分に低減された状態で、
対向する一対の基板間全体に拡散する。したがって、液
晶注入時におけるセルギャップ保持材の移動や、液晶の
配向ムラ、また、液晶の流れ跡が発生することがない。
【0098】すなわち、セルギャップ保持材の移動によ
る配向膜等の損傷を防ぐことができるとともに、表示部
におけるセル厚(セルギャップ)を一定に保つことがで
き、さらには、液晶の配向ムラや、液晶の流れ跡に発生
するしきい値電圧のムラをなくすことができる。よっ
て、表示ムラ等のない液晶表示素子を製造することがで
きる。また、液晶の注入領域として、該直線に略線対称
な、複数の注入領域を使用した場合、液晶の注入作業を
効率化することができるという効果を、請求項1ないし
6のいずれか一項に記載の方法による効果に加えて奏す
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態にかかる液晶表示素子の
製造方法において用いられる、液晶注入装置の構成を示
す概略の斜視図である。
【図2】図1に示す液晶注入装置に備えられた注入コネ
クタの斜視図である。
【図3】図1に示す液晶注入装置に備えられた注入コネ
クタの側面図である。
【図4】本発明の実施の一形態にかかる液晶表示素子の
製造方法において液晶が注入される液晶セルの概略の平
面図である。
【図5】図4に示す液晶セルの表示部の幅方向の概略の
断面図である。
【図6】本発明の実施の一形態にかかる液晶表示素子の
製造方法における、液晶注入位置を示す概略の平面図で
ある。
【図7】本発明の他の実施の形態にかかる液晶表示素子
の製造方法における、液晶注入位置を示す概略の平面図
である。
【図8】本発明の比較例における液晶注入位置を示す概
略の平面図である。
【図9】従来の液晶注入装置の構成を示す概略図であ
る。
【符号の説明】
10a ガラス基板(基板) 10b ガラス基板(基板) 22a 排気口 22b 排気口 23 シール材層 26a 液晶注入口 36a 大バッファ(緩衝体) 36b 小バッファ(緩衝体)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平8−262462(JP,A) 特開 平1−254920(JP,A) 特開 平5−53126(JP,A) 特開 平9−146106(JP,A) 特開 平8−29795(JP,A) 特開 平10−197884(JP,A) 特開 平10−197886(JP,A) 特開 平10−282512(JP,A) 特開 平1−265230(JP,A) 実開 昭62−113323(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G02F 1/1341

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】互いに対向する一対の基板と、基板間に位
    置し、該基板の周囲に枠状に設けられたシール材層とを
    備え、 上記シール材層の一部に、少なくとも一つの排気口と、
    近傍に第一の緩衝体を有する、少なくとも1つの液晶注
    入口とが設けられ、 シール材層に囲まれた基板間を上記排気口側から排気減
    圧すると共に、上記液晶注入口側から該基板間に、加圧
    した液晶を注入する液晶表示素子の製造方法において、 上記第一の緩衝体間に注入するための溝部を有し、液晶
    供給管の内周が第一の緩衝体間領域に収まっている注入
    コネクタを介して、上記加圧した液晶を注入ることを
    特徴とする液晶表示素子の製造方法。
  2. 【請求項2】基板への接地面積が第一の緩衝体よりも小
    さな円柱状の第二の緩衝体が、少なくとも、液晶が注入
    される第一の緩衝体間領域内に複数個配置されており、 さらに、第二の緩衝体の配置が、基板の長さ方向に2列
    以上の千鳥状となっていることを特徴とする請求項1記
    載の液晶表示素子の製造方法。
  3. 【請求項3】第二の緩衝体の直径が0.3mm以上で、
    かつ、上記注入領域の幅寸法の2倍未満であることを特
    徴とする請求項2記載の液晶表示素子の製造方法。
  4. 【請求項4】隣接する第一の緩衝体同士が、該第一の緩
    衝体の幅寸法の3倍以下の中心間距離で配置されている
    ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記
    載の液晶表示素子の製造方法。
  5. 【請求項5】液晶注入口近傍における、緩衝体占有率
    が、20%以上80%以下であることを特徴とする請求
    項1ないし4のいずれか一項に記載の液晶表示素子の製
    造方法。
  6. 【請求項6】液晶の注入圧力が、0kgf/cm2を超
    え、2kgf/cm2以下であることを特徴とする請求
    項1ないし5のいずれか一項に記載の液晶表示素子の製
    造方法。
  7. 【請求項7】緩衝体およびシール材層の配置が、液晶注
    入口の中心を通って、基板の長さ方向にのびる直線に対
    し略線対称となっており、 上記直線に対し略線対称な注入領域から、同一の注入圧
    力で、液晶の注入が行われることを特徴とする請求項1
    ないし6のいずれか一項に記載の液晶表示素子の製造方
    法。
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