JP3438281B2 - 複合体 - Google Patents

複合体

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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はクロロスルホン化ポリオ
レフィン組成物と、レゾルシン・ホルムアルデヒド・ク
ロロプレンゴムラテックス液によって表面処理された繊
維とを、強固に接着してなる複合体に関するものであ
る。さらに詳しくは、特定の配合剤を配合したクロロス
ルホン化ポリオレフィン組成物と、特定のゴムラテック
スにより表面処理を施された繊維との両者が強固に加硫
接着された複合体に関するものである。
【0002】この種の複合体を用いた製品としては、ベ
ルト,ホース,ベローズ,ダイヤフラム,チューブ,シ
ートなどが挙げられ、これらの製品は使用条件下におい
て厳しい屈曲疲労性を求められるため、ゴムと繊維間が
非常に強固に接着されていることが求められる。
【0003】
【従来の技術】一般に、ゴムは他素材との複合体で使用
される場合が多い。例えばタイヤ,ベルト,ホース,ダ
イヤフラム,ベローズなどの自動車用ゴム部品あるいは
工業用ゴム部品はゴムと繊維が組み合わされた複合体と
なっており、製品の品質を左右するのはゴムと繊維との
接着性の良否とも言える。製品には、使用条件下におい
て厳しい耐屈曲疲労性が求められるため、ゴムと繊維間
が非常に強固に接着されていなければならない。
【0004】SBRやNRの様なジエン系ゴムと繊維と
の複合体からなる製品では、SBR,NRの持つ分子中
の二重結合のため耐熱性,耐オゾン性,耐候性に乏し
く、製品の耐久性に劣る等の性能の不足から使用条件に
制限を受ける問題を抱えている。かかる問題を鑑み機械
的強度,耐熱性,耐オゾン性,耐候性,難燃性に優れる
クロロスルホン化ポリオレフィンは、製品の品質向上を
図る素材として十分な魅力を持つと見られてきたが、繊
維との加硫接着に簡便な方法を持たなかったため実用が
困難とされてきた。
【0005】ゴムと繊維との加硫接着においては、繊維
をレゾルシン・ホルムアルデヒド・ゴムラテックス液に
よって表面処理したのち加硫接着する方法があり、その
ゴムラテックスには通常被着ゴムと同じ材質のゴムが使
用される場合が多い。たとえば、天然ゴム(NR),ス
チレン・ブタジエンゴム(SBR)には天然ゴムラテッ
クス液、SBR−ビニルピリジンラテックス液が使用さ
れ、クロロプレンゴム(CR)にはクロロプレンゴムラ
テックス液が使用され、既にこれらのゴムにおいてはそ
の接着力に十分なものが得られている。
【0006】ところが、前述のクロロスルホン化ポリオ
レフィンはクロロスルホン化ポリオレフィンゴムラテッ
クス液を使用しても十分な接着力は困難であった。特公
平4−43094では、NBRゴムラテックスとクロロ
スルホン化ポリエチレンの加硫接着処理法について述べ
られているが、さらに耐熱性に優れたゴムラテックスの
出現により、クロロスルホン化ポリオレフィンの特性を
生かすことが強く望まれていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明が目的とすると
ころはクロロスルホン化ポリオレフィン組成物と、レゾ
ルシン・ホルムアルデヒドゴムラテックス液によって表
面処理された繊維との加硫接着において、ハイドロタル
サイト類と無機系ケイ素元素含有化合物を配合したクロ
ロスルホン化ポリオレフィン組成物が、レゾルシン・ホ
ルムアルデヒド・クロロプレンゴムラテックス液によっ
て表面処理された繊維との間に強固な加硫接着性を示
し、このことから優れた複合体を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、クロロスルホ
ン化ポリオレフィン組成物と、レゾルシン・ホルムアル
デヒド・クロロプレンゴムラテックス液によって表面処
理された繊維との加硫接着性について鋭意検討を行った
結果、クロロスルホン化ポリオレフィン100重量部に
対し、3〜30重量部のハイドロタルサイト類化合物お
よび5〜50重量部の無機系ケイ素元素含有化合物を配
合したクロロプレンゴムラテックス液によって表面処理
された繊維との加硫接着性に非常に優れていることを見
出し本発明をなすに至った。以下にその詳細を説明す
る。
【0009】本発明に使用されるクロロスルホン化ポリ
オレフィンとは、ポリオレフィンを塩素化およびクロロ
スルホン化することによって得られるものであり、分子
構造中に、一般に塩素量10〜60重量%、およびイオ
ウ量0.3〜3.0重量%を含むものを言う。最も代表
的なものは、ポリオレフィンをポリエチレンとし、この
ポリエチレンを塩素化、およびクロロスルホン化して得
られるクロロスルホン化ポリエチレンである。商品とし
ては、TOSO−CSM,ハイパロンがあり、そのグレ
ードにはTS−430,TS−530,TS−930,
ハイパロン40S,ハイパロン40,ハイパロン610
等が挙げられる。ポリオレフィンとしてさらに、エチレ
ン・ブテン−1共重合物,エチレン・プロピレン共重合
物,エチレン・酢酸ビニル共重合物のような共重合物を
用いて塩素化およびクロロスルホン化して得られるクロ
ロスルホン化エチレン・ブテン−1共重合物,クロロス
ルホン化エチレン・プロピレン共重合物,クロロスルホ
ン化エチレン・酢酸ビニル共重合物等を含むものとす
る。
【0010】本発明で言うクロロスルホン化ポリオレフ
ィン組成物は、配合中にハイドロタルサイト類化合物、
および無機系ケイ素元素含有化合物を必須成分とする
が、必要に応じてさらに他の補強剤、充填剤、加硫促進
剤、可塑剤、軟化剤、加工助剤、安定剤、着色剤等の配
合剤を併用することが出来る。
【0011】本発明で言うハイドロタルサイト類化合物
とは、化学名『塩基性マグネシウム・アルミニウム・ハ
イドロオキシ・カーボネート・ハイドレート』と呼ばれ
るもので、また一般式、Mg1-xAlx(OH)2(C
3x/2・mH2O(式中、xは0<x≦0.5,mは
0〜5で示される数を指す。)で示される化合物であ
る。商品としては、ハイドロタルサイトDHT−4A,
DHT−4A−2,キョウワードKW−2000,キョ
ウワードKW−2100などが挙げられる。ハイドロタ
ルサイト類化合物の配合量は、クロロスルホン化ポリオ
レフィン100重量部に対し3〜30重量部、好ましく
は8〜20重量部である。3重量部未満では、受酸剤と
して十分量とは言えず、適正な機械的強度を有する加硫
物とはならない。また30重量部を越えるとコンパウン
ド粘度が非常に大きくなり加工性,流動性が悪く、成型
困難を招く。
【0012】本発明で言う無機系ケイ素元素含有化合物
とは、化合物中にケイ素をもつ化合物を指し、湿式法ホ
ワイトカーボン、乾式法ホワイトカーボン、合成ケイ素
塩系ホワイトカーボン、コロイダルシリカ、煙霧状シリ
カ、含水ケイ酸アルミニウム、カオリンクレー、焼成ク
レー、タルク、ウオラストナイト、ゼオライト、ケイ
砂、軽石粉などが挙げられる。無機系ケイ素元素含有化
合物の配合量は、クロロスルホン化ポリオレフィン10
0重量部に対し5〜50重量部、好ましくは10〜30
重量部である。5重量部未満では、繊維とクロロスルホ
ン化ポリオレフィン組成物との強固な加硫接着を得るに
十分でなく、また50重量部を越えるとクロロスルホン
化ポリオレフィン組成物の未加硫コンパウンドが固くな
り過ぎ、可塑性を欠く結果となる。
【0013】本発明で言う繊維としては、代表的には
綿,レーヨン,ポリアミド繊維,ポリビニルアルコール
繊維,等を挙げる事ができる。
【0014】本発明で言うレゾルシン・ホルムアルデヒ
ド・クロロプレンゴムラテックス液は、レゾルシンとホ
ルムアルデヒドの縮合反応物と、クロロプレンゴムラッ
クスとの混合液である。レゾルシン・ホルムアルデヒド
縮合反応物は、レゾルシンの様なフェノール類とホルム
アルデヒドの様なメチレンドナーを適当な公知の方法
で、たとえばアルカリ金属水酸化物の存在下で縮合反応
させたもので、フェノール類1モルに対しホルムアルデ
ヒド0.5〜4モルを用いて反応され、その水溶液の樹
脂濃度は一般に5〜40重量%に調製されたものであ
る。本発明ではゴムラテックスをクロロプレンゴムラテ
ックスとすることを限定しており、これ以外のゴムラテ
ックスでは本発明の用をなさない。
【0015】クロロスルホン化ポリオレフィン組成物の
被着体となる繊維は、このレゾルシン・ホルムアルデヒ
ド・クロロプレンゴムラテックス液に浸漬後、次に乾燥
およびベーキング処理(140〜230℃)されたもの
を使用する。
【0016】これにより、クロロスルホン化ポリオレフ
ィンと繊維が加硫接着により非常に強固に接着される。
【0017】
【実施例】本発明を以下の実施例によって更に詳しく説
明するが、これは本発明の理解を助けるための例であ
り、本発明はこれらの実施例により何等の制限を受ける
ものではない。
【0018】なおこれらの実施例は、以下の条件にした
がって求められた。加硫ゴム引張物性試験のための試料
は、定められた配合によって混練されたコンパウンドを
オープンロールで、厚さ約2mmの未加硫シートに分出
しを行い、160℃×20分間プレス加硫により試料を
作製した。物性測定はJIS・K・6301に準拠し
た。
【0019】加硫接着性試験のための試料は、オープン
ロールで厚さ約2mmに分出された未加硫シートとレゾ
ルシン・ホルムアルデヒド・クロロプレンゴムラテック
ス液で表面処理を施したナイロン繊維(帆布)を重ね合
わせ、160℃×30分間プレス加硫したものを使用し
た。接着強度測定は、試料を加硫後一日室温放置したの
ち、180度剥離試験(剥離速度,50mm/分)によ
り強度測定した。
【0020】*クロロプレンゴムラテックス(CRゴム
ラテックス)の調製 圧力計,温度調節計,冷却器,攪拌機を備えた内容積1
0リットルの反応器に、クロロプレンモノマー2.5k
g,連鎖移動剤としてn−ドデシルメルカプタン7.0
gを仕込んだ。次に水2.8kgへ乳化剤として不均化
ロジン石鹸90g,ナフタリンスルホン酸ソーダ/ホル
ムアルデヒドの縮合物12g,20%可性ソーダ32g
を混合,乳化させ、これに重合触媒である過硫酸カリウ
ム10gを混合、温度40〜50℃で5時間で反応さ
せ、クロロプレンゴムラテックスを得た。
【0021】*レゾルシン・ホルムアルデヒド液の調製 可性ソーダ0.8gを水240gに溶解させた水溶液
に、レゾルシン11gと37%ホルマリン16.5gを
混合溶解し、23℃で5時間放置,熟成させた。 *レゾルシン・ホルムアルデヒド・クロロプレンゴムラ
テックス液の調製 次に、クロロプレンゴムラテックス265g(固形分:
40%),水83gとレゾルシン・ホルムアルデヒド液
268.3gを混合し23℃で5時間放置、熟成させ
た。
【0022】(実施例1〜4)クロロスルホン化ポリオ
レフィンをクロロスルホン化ポリエチレンとし、表1に
示す配合に沿ってそれぞれ8インチ・オープンロールで
混練を行い、未加硫コンパウンドを作製した。各々のコ
ンパウンドと、レゾルシン・ホルムアルデヒド・クロロ
プレンゴムラテックス液で表面処理されたナイロン繊維
(帆布)をそれぞれ接合し加硫接着を行った。各々の加
硫接着物は、本発明で定めた条件をいずれも満足してお
り十分な加硫接着強度を有していることが分かる。
【0023】(比較例1〜2)表1に示す配合に沿って
8インチ・オープンロールで混練した未加硫コンパウン
ドを用意し、そのほかの条件は上記の実施例と同様とし
た。比較例1は実施例1,比較例2は実施例3と同一配
合のコンパウンドによるものであるが、ナイロン繊維表
面処理用のレゾルシン・ホルムアルデヒド・ゴムラテッ
クス液のゴムラテックスを構成する成分がクロロプレン
ゴムではなく、SBR/ビニルピリジンラテックスとな
っており、したがって本発明で定めた条件を満足してい
ないため十分な接着強度を有していない。
【0024】(比較例3〜4) 表2に示す配合に沿って8インチ・オープンロールで混
練した未加硫コンパウンドを用意し、その他の条件は上
記の実施例と同様とした。レゾルシン・ホルムアルデヒ
ド・ゴムラテックス液のゴムラテックスの構成成分はク
ロロプレンゴムであるが、配合において比較例3ではハ
イドロタルサイトが無く、比較例4では無機系ケイ素元
素含有化合物が存在していない。したがって本発明で定
めた条件を満足していないため十分な接着強度を有して
いない。
【0025】(比較例5) 表2に示す配合に沿って8インチ・オープンロールで混
練した未加硫コンパウンドを用意し、そのほかの条件は
上記の実施例と同様とした。レゾルシン・ホルムアルデ
ヒド・ゴムラテックス液のゴムラテックスの構成成分は
クロロプレンゴムであり、配合中にハイドロタルサイト
および無機系ケイ素元素含有化合物が存在しているが、
無機系ケイ素元素含有化合物が十分な量配合されておら
ず、したがって本発明で定めた条件を満足していないた
め十分な接着強度を有していない。
【0026】また表1,2より、実施例は比較例に比
べ、ゴムと繊維との強固な接着性を示しており、さらに
加硫ゴムの機械的強度も十分有していることが分かる。
【0027】
【表1】
【0028】
【表2】
【0029】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明
の述べるクロロスルホン化ポリオレフィン100重量部
に対し、3〜30重量部のハイドロタルサイト類化合
物、および5〜50重量部の無機系ケイ素元素含有化合
物を配合したクロロスルホン化ポリオレフィン組成物
と、レゾルシン・ホルムアルデヒド・クロロプレンゴム
ラテックスで表面処理された繊維との複合体は、加硫接
着強度に優れているとともに、機械的強度においても優
れていることが分かる。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】クロロスルホン化ポリオレフィン100重
    量部に対し、3〜30重量部のハイドロタルサイト類化
    合物、および5〜50重量部の湿式法ホワイトカーボ
    ン、乾式法ホワイトカーボン、合成ケイ酸塩系ホワイト
    カーボン、コロイダルシリカ、煙霧状シリカ、含水ケイ
    酸アルミニウム、カオリンクレー、焼成クレー、タル
    ク、ウオラストナイト、ゼオライト、ケイ砂、軽石粉な
    どから選ばれる少なくとも一種の無機系ケイ素元素含有
    化合物を配合したクロロスルホン化ポリオレフィン組成
    物と、レゾルシン・ホルムアルデヒド・クロロプレンゴ
    ムラテックス液によって表面処理された繊維とを加硫接
    着してなる複合体。
  2. 【請求項2】ハイドロタルサイト類化合物が一般式 Mg1-xAlx(OH)2(CO3x/2・mH2O (式中、xは0<x≦0.5,mは0〜5で示される数
    を指す)で示される、請求項1記載の複合体。
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