JP3426392B2 - ウエビング巻取装置 - Google Patents

ウエビング巻取装置

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JP3426392B2
JP3426392B2 JP07899195A JP7899195A JP3426392B2 JP 3426392 B2 JP3426392 B2 JP 3426392B2 JP 07899195 A JP07899195 A JP 07899195A JP 7899195 A JP7899195 A JP 7899195A JP 3426392 B2 JP3426392 B2 JP 3426392B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、車両のシートベルト装
置に用いられるウエビング巻取装置に関する。
【0002】
【従来の技術】シートベルト装置のウエビング巻取装置
では、通常は、ウエビングの引き出し巻き取りを自由と
しているが、車両急減速時には、ウエビングの引き出し
を阻止して乗員の拘束を図る。
【0003】このために、次の構造が採用される。ウエ
ビングが巻き掛けられて回転自在なスプールに、Vギヤ
が相対回転自在に設けられ、通常はVギヤが、スプール
の回転に追随可能に付勢されている。
【0004】Vギヤは外歯を備えて外歯に対向しては、
加速度センサが設けられる。加速度センサでは、ボール
が慣性移動することによりVパウルがVギヤの外歯と係
合され、Vギヤのウエビング引出方向回転が阻止され
る。Vギヤとスプールとの間にはロックプレートが設け
られ、ロックプレートはロック爪を備えてロック爪に対
向してはロック歯が設けられる。Vギヤとスプールとが
一体に回転するときは、ロックプレートのロック爪はロ
ック歯と離脱されているが、Vギヤのウエビング引出方
向回転が阻止された状態でスプールがウエビング引出方
向へVギヤと相対回転すると、ロックプレートがVギヤ
の軸方向と直角の方向へ移動し、ロック爪がロック歯と
係合され、スプールのウエビング引出方向回転が阻止さ
れる。
【0005】これは、いわゆるVSIRと称される車体
感応式のウエビング巻取装置としての機能を果たす。
【0006】一方、VギヤにWパウルを設けたものがあ
る。すなわち、Wパウルは慣性質量体で構成され、ウエ
ビングが急速に引っ張られると、その加速度によってW
パウルがVギヤと相対的に慣性移動を行う。これによ
り、Wパウルが、これに対向して設けられて内歯とされ
たW歯と係合されて、Vギヤのウエビング引出方向回転
が阻止される。Vギヤのウエビング引出方向回転が阻止
されると、上述したように、ロック爪がロック歯と係合
されてスプールのウエビング引出方向回転が阻止され
る。
【0007】これは、いわゆるWSIRと称されるウエ
ビング感応式のウエビング巻取装置としての機能を果た
す。
【0008】上記VSIRとWSIRとの両機能を果た
すものは、いわゆるDSIRと称される。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】ところで、スプールは
ウエビング巻取方向に付勢されていて、その付勢力に抗
してウエビングを引き出してウエビングの装着がなされ
る。ウエビングの装着が解かれて、ウエビングがスプー
ルに急速に巻き込まれて、全格納状態(ウエビングをそ
れ以上巻き込むことができない状態)に達すると、巻き
込みが急速であるために巻き込み停止によリ生ずる振動
等に起因して加速度センサが作動し、VパウルがVギヤ
と係合してしまいその噛合が解除できず、そのために、
ロックプレートのロック爪がロック歯と係合されてウエ
ビングの引き出しができない、いわゆる、エンドロック
状態が生ずる場合がある。
【0010】Vギヤの歯形状は、Vパウルとの係合にあ
たってウエビング引出方向にVパウルを掬い込み易くさ
れる。VパウルとVギヤとの係合を解除するにはVギヤ
をウエビング巻取方向へ回転させる必要がある。全格納
状態にある場合、Vギヤはウエビング巻取方向へ回転で
きない。
【0011】そこで、全格納状態でVパウルとVギヤと
が係合してしまったときには、ウエビングを引っ張って
巻き絞った後にそれを巻き戻し、これにより、ウエビン
グ巻取方向へスプールに追随して回転するVギヤを、ウ
エビングを引っ張る以前の位置よりウエビング巻取方向
側へ回転させ、エンドロック状態を解消することが行わ
れる。
【0012】しかし、そのエンドロック状態を解消する
操作は面倒である。VパウルがVギヤと係合して生ずる
エンドロック状態について説明したが、それと同様に、
WパウルがW歯と係合してエンドロック状態が起きる場
合があり、この場合もその解消操作は面倒である。
【0013】一方、車体の振動等でVパウルとVギヤと
の係合、その係合の解除が繰り返される場合がある。こ
の場合、VパウルとVギヤとの係合、その係合解除の度
に、Vギヤがスプールと共にウエビング巻取方向へ回転
してウエビングが次第に巻き取られる巻き締まりが生ず
る恐れがある。
【0014】この巻き締まりを防止するために、例え
ば、ラチェット機構をVギヤとスプールとの間に設け、
Vギヤがウエビング巻取方向へ回転しても、スプールは
同方向へ回転しなくてもよい構造が採られる。しかし、
その分、部品点数が増大し、構造も複雑となる。
【0015】本発明は上記事実を考慮し、エンドロック
状態を容易に解消するとともに巻き締まりも合わせて防
止し、それを、部品点数を増やすことなく、簡単な構造
で達成するウエビング巻取装置を提供することを目的と
する。
【0016】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、請求項1に係る本発明のウエビング巻取装置は、回
転可能とされてウエビングを引き出し巻き取り自在とす
るスプールと、このスプールをウエビング巻取方向へ付
勢する巻取付勢手段と、前記スプールと同軸で第1相対
回転位置と第2相対回転位置との間で相対回転自在とさ
れるとともに、軸方向に沿って第1軸方向位置と第2軸
方向位置との間で移動自在とされ、周部には係合歯を有
するVギヤと、前記スプールとVギヤとの間で、スプー
ルがVギヤよりウエビング引出方向へ先行する第2相対
回転位置から第1相対回転位置へ付勢し、通常はVギヤ
をスプールに追随回転させる追随付勢手段と、前記Vギ
ヤの第1軸方向位置で係合歯と対向し、車両急減速に伴
う加速度の作用によって係合歯と係合してVギヤのウエ
ビング引出方向の回転を阻止するとともに、係合歯との
係合がVギヤの第2軸方向位置で解除されるVパウル
と、前記Vギヤのウエビング引出方向の回転が阻止され
た状態でスプールがウエビング引出方向ヘ回転して第2
相対回転位置に達するとスプールのウエビング引出方向
の回転を阻止すべくロック作動するロック手段と、この
ロック手段のロック作動によりVギヤを第2軸方向位置
へ移動させる移動手段と、を備えたことを特徴とするウ
エビング巻取装置。
【0017】請求項2に係る本発明のウエビング巻取装
置は、請求項1の構成において、前記移動手段は、前記
Vギヤとスプールとの間に設けられ、Vギヤを第1軸方
向位置へ当接規制する第1規制部と、Vギヤを第2軸方
向位置へ当接規制する第2規制部とを有し、スプールが
第2相対回転位置に達すると第2規制部でVギヤを当接
規制する規制手段と、前記Vギヤを第1軸方向位置から
第2軸方向位置へ付勢する軸方向付勢手段と、を備えて
なる、ことを特徴とする。
【0018】請求項3に係る本発明のウエビング巻取装
置は、請求項1又は2の構成において、前記スプールと
同軸な周上に設けられるW歯と、前記Vギヤと軸方向へ
共に移動し、通常はVギヤと共に回転してVギヤの第1
軸方向位置でW歯と対向し、ウエビングの引き出し加速
度の作用によってW歯の軸方向と直角の方向にVギヤと
は相対的に慣性移動してW歯と係合することによりVギ
ヤのウエビング引出方向の回転を阻止するとともに、W
歯との係合がVギヤの第2軸方向位置で解除されるWパ
ウルと、を備えてなる、ことを特徴とする。
【0019】
【作用】上記構成によれば、通常は、Vギヤが第1相対
回転位置で、かつ、第1軸方向位置にあり、Vパウルが
Vギヤの係合歯と対向して離脱位置し、Vギヤはスプー
ルと共に回転し、ウエビングは引き出し巻き取りが自由
である。
【0020】車両急減速時には、加速度の作用によって
VパウルがVギヤの係合歯と係合され、Vギヤのウエビ
ング引出方向の回転が阻止される。この状態でウエビン
グが引っ張られるとスプールがウエビング引出方向へV
ギヤと相対的に回転する。スプールが第2相対回転位置
に達すると、ロック手段がロック作動し、スプールのウ
エビング引出方向の回転が阻止される。これにより、ウ
エビングの引き出しが阻止されて乗員の拘束がなされ
る。
【0021】ロック作動によってはVギヤが第2軸方向
位置に移動し、これにより、VパウルのVギヤの係合歯
との係合が解除される。
【0022】スプールがウエビング巻取方向へ回転する
ことにより、ロック作動解除が可能となり、Vギヤが第
1相対回転位置へ移動復帰するとともに、第1軸方向位
置へ移動復帰する。
【0023】移動手段としては、請求項2の構成が具体
的に挙げられ、それによれば、第1相対回転位置でVギ
ヤが第1規制部で第1軸方向位置に当接規制され、スプ
ールが第2相対回転位置へ達すると、Vギヤが第2規制
部で第2軸方向位置に当接規制される。更に、具体的に
は、ロック手段として、Vギヤとスプールとの間にロッ
ク部材を設ける構成が可能である。すなわち、第1相対
回転位置でロック部材がスプールとVギヤとの両者と共
に回転し、ロック部材のロック爪がロック歯と離脱され
ている。第1相対回転位置から第2相対回転位置への相
対回転に伴いロック部材がスプールとVギヤとのいずれ
とも相対的に係合移動され、第2相対回転位置ではロッ
ク部材のロック爪がロック歯と係合されてスプールのウ
エビング引出方向の回転が阻止される。第1相対回転位
置から第2相対回転位置に到る前は、ロック部材はVギ
ヤと、第1規制部で係合されて、Vギヤは第1軸方向位
置に当接規制される。第2相対回転位置へ達すると、ロ
ック部材はVギヤと、第2規制部で係合されて、Vギヤ
は第2軸方向位置へ移動し、その第2軸方向位置に当接
規制される。
【0024】スプールはウエビング巻取方向に付勢され
ていて、その付勢力に抗してウエビングを引き出してウ
エビングの装着がなされる。ウエビングの装着が解かれ
て、ウエビングがスプールに急速に巻き込まれ、全格納
状態(ウエビングをそれ以上巻き込むことができない状
態)に達すると、巻き込みが急速であるために巻き込み
停止によリ生ずる振動等に起因して、VパウルがVギヤ
の係合歯と係合してしまう場合がある。
【0025】本発明によれば、VパウルがVギヤの係合
歯と係合してしまっても、ウエビングを引き出してスプ
ールをウエビング引出方向へ回転させ、ロック手段をロ
ック作動させれば、Vギヤが第2軸方向位置へ移動して
VパウルのVギヤの係合歯との係合が解除される。これ
により、エンドロック状態が解消される。
【0026】また、車体の振動等でVパウルがVギヤの
係合歯と係合、その係合の解除を繰り返す場合がある。
【0027】本発明では、VパウルのVギヤの係合歯と
の解除がVギヤの軸方向の移動によって可能であり、V
ギヤのウエビング巻取方向への移動を不要とし、ウエビ
ングの巻き締まりが防止される。従来のように、ラチェ
ット機構等を有する構造を採用する必要がない。
【0028】ウエビング引出方向にVパウルを掬い込み
易い形状に係合歯を形成するのがよいが、このような場
合に、VパウルのVギヤの係合歯との係合解除が、Vギ
ヤをウエビング巻取方向へ回転させることなくVギヤを
軸方向へ移動させることによって可能となる本発明は、
エンドロック状態の解消上、ウエビングの巻き締まりの
防止上、効果的である。
【0029】VパウルがVギヤの係合歯と係合されてロ
ック手段が作動してウエビングの引き出しが阻止される
ものは、いわゆるVSIRと称される車体感応式のウエ
ビング巻取装置としての機能を果たす。
【0030】これに対して、請求項3では、上記VSI
Rの機能に加え、Wパウルを設けることにより、いわゆ
るWSIRと称されるウエビング感応式のウエビング巻
取装置としての機能も果たし、いわゆるDSIRと称さ
れるものとなる。
【0031】Wパウルを設けたものでは、車両急減速時
に、ウエビングが引っ張られてそれに伴う加速度の作用
によってWパウルがVギヤと相対的に慣性移動し、Wパ
ウルはW歯と係合される。この係合によって、Vギヤの
ウエビング引出方向の回転が阻止される。この状態で
は、上述の場合と同様に、スプールが第2相対回転位置
へVギヤと相対回転して、ロック手段がロック作動す
る。
【0032】ウエビングがスプールに急速に巻き込まれ
て、全格納状態に達したときには、VパウルがVギヤと
係合してしまう場合があるのと同様に、WパウルがW歯
と係合してしまう場合がある。WパウルがW歯と係合し
てしまっても、ウエビングを引き出してスプールをウエ
ビング引出方向へ回転させ、ロック手段をロック作動さ
せれば、Vギヤが第2軸方向位置へ移動するのに伴いW
パウルがVギヤと共に軸方向へ移動して、WパウルのW
歯との係合が解除される。これにより、エンドロック状
態が解消される。
【0033】このように、エンドロック状態を容易に解
消するとともに巻き締まりも合わせて防止し、それを、
部品点数を増やすことなく、簡単な構造で達成すること
ができる。
【0034】
【実施例】本発明の一実施例に係るウエビング巻取装置
を図1乃至図12に基づき説明する。図中、車両前方を
矢印FRで、車両幅方向を矢印Wで、車両上方を矢印U
Pでそれぞれ示す。
【0035】図1に示すように、フレーム12が一対の
対向する脚片14、16を備えてコ字型に屈曲形成さ
れ、脚片14、16間にスプール18が掛け渡される。
スプール18は、脚片14、16の対向方向が軸方向と
され、両端に支軸20、22をそれぞれ備える。一方の
支軸20はこの先端側に小径部21を備えて、脚片14
外面に取り付けられるセンサカバー24に軸支され、他
方の支軸22は脚片16外面に取り付けられるゼンマイ
ばねカバー(図示を省略)に軸支される。これにより、
スプール18は、支軸20、22を中心として回転自在
とされる。スプール18には、ウエビング24の一端が
係止されて巻き掛けられ、スプール18の回転に伴いウ
エビング24の引き出し巻き取りが自在となる(ウエビ
ング引出方向を矢印Aで図示する)。ゼンマイばねカバ
ー内には、支軸22に嵌合した巻取付勢手段としてのゼ
ンマイばね(図示を省略)が収容されて、ゼンマイばね
は、スプール18をウエビング巻取方向(矢印Aと反対
の向き)へ回転付勢する。すなわち、ウエビング24
は、巻き取り側へ付勢されている。
【0036】センサカバー24の内部には、Vギヤ26
が収容され、Vギヤ26は、支軸20の基端側の大径部
28の外周面と嵌合して、スプール18と同軸上で第1
相対回転位置(図5に2点鎖線で示す位置)と第2相対
回転位置(図6に2点鎖線で示す位置)との間で相対回
転可能とされるとともに軸方向に沿って第1軸方向位置
(図9の位置)と第2軸方向位置(図10の位置)との
間で相対移動可能とされる。Vギヤ26の外周には、ス
プール18側に外歯(係合歯)30が形成され、スプー
ル18と反対側に、外歯30の外径と同一高さ面とされ
た円周面(歯無部32)が形成される。センサカバー2
4内にはまた、Vギヤ26の外周に対応して加速度セン
サ34が設けられ、加速度センサ34は、車両急減速に
より加速度を受けて車両前方へ慣性移動するボール36
を備えるとともに、ボール36の慣性移動に伴い上方へ
向けて回動するVパウル40を備える。Vパウル40は
Vギヤ26の第1軸方向位置でVギヤ26の係合歯30
と対向し(図9に示す)、Vパウル40の上方への回動
(Vギヤ26の軸方向と直角の方向への移動)により係
合歯30と係合される(図6に示す)。Vパウル40と
Vギヤ26の係合歯30との係合により、Vギヤ26の
ウエビング引出方向の回転が阻止される。第1軸方向位
置で係合したVパウル40と係合歯30とは、Vギヤ2
6がスプール18側へ移動して第2軸方向位置を得るこ
とにより、Vパウル40が係合歯30から離脱して歯無
部32へ到る(図10に一点鎖線で示す)。そのとき、
ボール36への慣性力の作用が消失されておればVパウ
ル40は下方へ回動して歯無部32から離れる(図10
に実線で示す)。Vパウル40は歯無部32側の縁が面
取り41されており(図9を参照)、Vギヤ26がスプ
ール18側へ移動してVパウル40が係合歯30から離
脱すべく歯無部32へ乗り上げる際に、その離脱が容易
化されている。
【0037】図3に示すように、Vギヤ26のスプール
18と反対側には、追随付勢手段としての捩じりばね4
2が設けられ、捩じりばね42の中央部44は支軸20
の回りに円弧状に湾曲され、捩じりばね42の一端部4
6は、Vギヤ26の端面に向けて屈曲され、Vギヤ26
の端面に形成された係止孔48内に係止されるととも
に、捩じりばね42の他端部50は、Vギヤ26の端面
に向けて屈曲され、Vギヤ26の端面に形成された貫通
孔52内を貫通し、そして、スプール18の端面に形成
された係止穴54内に係止される。捩じりばね42は、
通常は、Vギヤ26とスプール18とを第1相対回転位
置に位置させ、Vギヤ26をスプール18に追随回転さ
せる。Vギヤ26のウエビング引出方向の回転が阻止さ
れた状態でスプール18がウエビング引出方向へ回転す
ると、捩じりばね42の他端部50が貫通孔52内を捩
じりばね42の縮径方向側へ周方向に移動し(図5に3
点鎖線で示す位置から、図6に3点鎖線で示す位置へ移
動し)、スプール18は捩じりばね42の付勢力に抗し
てウエビング引出方向へ先行して(すなわち、Vギヤ2
6は遅れる)第2相対回転位置を得る。
【0038】図2に示すように、Vギヤ26とスプール
18との間には、ロック部材としてのロックプレート5
5が設けられる。ロックプレート55は、外周の一部に
フォーク状とされて形成された凹部56を備え、凹部5
6に対応してスプール18の端面には円柱状の凸部58
が突出形成されて、凹部56内に凸部58が係合され
る。また、ロックプレート54は、凹部56と反対側
に、Vギヤ26の支軸20を通過させる凹部60を備
え、凹部60の左右両側には、一対の案内ピン62をV
ギヤ26の端面に向けて突出させている。図3及び図1
1に示すように、案内ピン62に対応してVギヤ26の
端面には案内凹部64が凹設され、案内ピン62が案内
凹部64内に係合される。ロックプレート55の外周に
はまた、複数のロック爪66が形成され、ロック爪66
に対応しては、脚片14に、スプール18と同軸な周上
に内歯で構成されるロック歯68が形成される。ロック
歯68は上記ロックプレート54と共にロック手段を構
成する。
【0039】案内凹部64は、Vギヤ26の軸方向と直
角の方向へ長く形成され、図11に示すように、長手方
向一端部は底が浅い底浅部70とされ、長手方向他端部
は底が深い底深部72とされる。スプール18とVギヤ
26とが第1相対回転位置にあって一体的に回転すると
きは、図5に示すように、案内ピン62が案内凹部64
の底浅部70に位置し、ロックプレート55はスプール
18及びVギヤ26と共に回転し、そして、ロック爪6
6はロック歯68と離間されている。Vギヤ26のウエ
ビング引出方向の回転が阻止された状態でスプール18
がウエビング引出方向へ先行して第1相対回転位置から
第2相対回転位置へ向けてVギヤ26と相対的に回転す
ると、ロックプレート55がスプール18及びVギヤ2
6のいずれとも相対的に移動する。すなわち、ロックプ
レート55の凹部56がスプール18の凸部58に押さ
れて移動するとともに、案内ピン62が案内凹部64内
を底深部72へ向けて移動する。スプール18とVギヤ
26とが第2相対回転位置へ達すると、図6に示すよう
に、ロックプレート55のロック爪66がロック歯68
と係合される。この係合によって、スプール18のウエ
ビング引出方向の回転が阻止され、ウエビング24の引
き出しが止められて、乗員の拘束がなされる。
【0040】ロック爪66のロック歯68との係合にあ
たっては、ロック爪66がロック歯68と当接して係合
を始めると、その後は、ウエビング24が引っ張られて
スプール18にウエビング引出方向の回転力が作用する
ことにより、図8に示すように、ロック爪66がロック
歯68との係合を完了すべく、Vギヤ26が第2相対回
転位置から第1相対回転位置へ向けて少し回転してロッ
クプレート55が移動する。このロックプレート55の
移動に伴い、案内ピン62が案内凹部64の底深部72
と係合する(図12に示す)。
【0041】図9に示すように、スプール18の支軸2
0を貫通させるVギヤ26のボス74とセンサカバー2
4との間には、軸方向付勢手段としてのコイルばね76
が介在され、コイルばね76はVギヤ26を第1軸方向
位置から第2軸方向位置へ付勢する。スプール18とV
ギヤ26とが第1相対回転位置にあるときは、案内ピン
62の先端面を案内凹部64の底浅部70の底と当接さ
せてVギヤ26第1相対回転位置に保持すべく規制し
(図11に示す)、スプール18とVギヤ26とが第2
相対回転位置に達したときは案内ピン62を案内凹部6
4の底深部72に係合させてVギヤ26を軸方向へ移動
させ、底深部72において、案内ピン62の先端面を底
深部72と当接させてVギヤを第2相対回転位置に保持
すべく規制する(図12に示す)。
【0042】ロック爪66とロック歯68との係合の解
除は、スプール18がウエビング巻取方向へ回転するこ
とを要する。すなわち、Vパウル40とVギヤ26の係
合歯30との係合が解除されても、スプール18がウエ
ビング巻取方向へ回転しない限り、ロック爪66とロッ
ク歯68との係合が維持され、スプール18がウエビン
グ巻取方向へ回転することによってスプール18とVギ
ヤ26とが第1相対回転位置へ復帰することが可能とな
ってロック爪66とロック歯68との係合が解除され
る。その際に、Vギヤ26は、第1軸方向位置へ復帰す
る。案内凹部64において、底浅部70と底深部72と
の間は傾斜面71で形成され、Vギヤ26の第1軸方向
位置への復帰にあたって、案内ピン62が底深部72か
ら底浅部70へ円滑に移動できるようになっている。
【0043】一方、Vギヤ26とセンサカバー24との
間には、慣性プレート(慣性質量体)78が設けられ、
慣性プレート78は、スプール18の支軸20を通過さ
せる通過孔80を有した環状とされ、支軸20の軸中心
と偏心した偏心軸線上で、Vギヤ26の端面に突出され
たピン軸82が、慣性プレート78に形成されたピン孔
84内に嵌合されてVギヤ26に支持され、ピン軸82
回りに回動自在とされるとともに、Vギヤ26と軸方向
へ共に移動できるようにされる。
【0044】慣性プレート78とVギヤ26との間に
は、W追随付勢手段としてのコイルばね86が設けら
れ、コイルばね86の一端部が慣性プレート78に形成
された係止突起88に係止され、他端部がVギヤ26の
端面に形成された係止突起90に係止される。また、慣
性プレート78の外周の一部が切り欠かれ、その切り欠
き93に対応して、Vギヤ26の端面にはストッパ94
が突設され、図4に示すように、コイルばね86の付勢
力によってストッパ94が切り欠き93と当接すべく付
勢されることにより、通常は、慣性プレート78がVギ
ヤ26と一体に回転可能とされる。
【0045】慣性プレート78の外周にはWパウル92
が形成され、図9に示すように、Vギヤ26の第1軸方
向位置で慣性プレート78の外周と対向すべく、センサ
カバー24は、スプール18の同軸な周上に内歯とされ
るW歯94を備える。ウエビング24が急速に引き出さ
れて加速度が作用すると、慣性プレート78がVギヤ2
6の回転に対して遅れ、ピン軸82回りにVギヤ26に
対して相対的に回動し、Wパウル92がW歯94と離脱
された位置から外方へ突出してW歯94と係合され(図
7に示す)、これにより、Vギヤ26のウエビング引出
方向の回転が阻止される。Vギヤ26のウエビング引出
方向の回転が阻止されることにより、上述と同様に、ス
プール18とVギヤ26との第1相対回転位置から第2
相対回転位置への相対移動に伴いロックプレート55が
スプール18とVギヤ26との両者と相対的に移動して
ロック爪66がロック歯68と係合される。
【0046】Vギヤ26の第1軸方向位置で係合したW
爪92とW歯94とは、Vギヤ26の第2軸方向位置
(図10に示すように)では係合が解除される。
【0047】なお、Vパウル40がVギヤ26のいずれ
の係合歯30と係合しても、ロック爪66がロック歯6
8と適切に係合すべく(歯飛び等を起こすことなく)、
係合歯30、ロック爪66、ロック歯68が形成配置さ
れている。また、W爪92がいずれのW歯94と係合し
ても、ロック爪66がロック歯68と適切に係合すべ
く、W爪92、W歯94、ロック爪66、ロック歯68
が形成配置されている。
【0048】上記構成によれば、通常は、Vギヤ26が
第1相対回転位置で、かつ、第1軸方向位置にあり、V
パウル40がVギヤ26の係合歯30と対向して離脱位
置し、Vギヤ26はスプール18と共に回転し、ウエビ
ング24は引き出し巻き取りが自由である。
【0049】車両急減速時には、加速度の作用によって
Vパウル40がVギヤ26の係合歯30と係合され、V
ギヤ26のウエビング引出方向の回転が阻止される。こ
の状態でウエビング24が引っ張られるとスプール18
がウエビング引出方向へVギヤ26と相対的に回転す
る。スプール18が第2相対回転位置に達すると、ロッ
ク手段がロック作動し、スプール18のウエビング引出
方向の回転が阻止される。
【0050】すなわち、第1相対回転位置でロックプレ
ート55がスプール18とVギヤ26との両者と共に回
転し、ロックプレート55のロック爪66がロック歯6
8と離脱されている。第1相対回転位置から第2相対回
転位置への相対回転に伴いロックプレート55がスプー
ル18とVギヤ26とのいずれとも相対的に係合移動さ
れ、第2相対回転位置ではロックプレート55のロック
爪66がロック歯68と係合されてスプール18のウエ
ビング引出方向の回転が阻止される。第1相対回転位置
から第2相対回転位置に到る前は、ロックプレート55
はVギヤ26と、底浅部70で係合されて、Vギヤ26
は第1軸方向位置に当接規制される。第2相対回転位置
へ達すると、ロックプレート55はVギヤ26と、底深
部72で係合されて、Vギヤ26は第2軸方向位置へ移
動し、その第2軸方向位置に当接規制される。
【0051】これにより、ウエビング24の引き出しが
阻止されて乗員の拘束がなされる。ロック作動によって
はVギヤ26が第2軸方向位置に移動し、これにより、
Vパウル40のVギヤ26の係合歯30との係合が解除
される。
【0052】スプール18がウエビング巻取方向へ回転
することにより、ロック作動解除が可能となり、Vギヤ
26が第1相対回転位置へ移動復帰するとともに、第1
軸方向位置へ移動復帰する。
【0053】スプール18はゼンマイばねによりウエビ
ング巻取方向に付勢されていて、その付勢力に抗してウ
エビング24を引き出してウエビング24の装着がなさ
れる。ウエビング24の装着が解かれて、ウエビング2
4がスプール18に急速に巻き込まれ、全格納状態(ウ
エビング24をそれ以上巻き込むことができない状態)
に達すると、巻き込みが急速であるために巻き込み停止
によリ生ずる振動等に起因して、Vパウル40がVギヤ
26の係合歯30と係合してしまう場合がある。
【0054】本実施例によれば、Vパウル40がVギヤ
26の係合歯30と係合してしまっても、ウエビング2
4を引き出してスプール18をウエビング引出方向へ回
転させ、ロック手段をロック作動させれば、Vギヤ26
が第2軸方向位置へ移動してVパウル40のVギヤ26
の係合歯30との係合が解除される。これにより、エン
ドロック状態が解消される。
【0055】また、車体の振動等でVパウル40がVギ
ヤ26の係合歯30と係合、その係合の解除を繰り返す
場合がある。
【0056】本実施例では、Vパウル40のVギヤ26
の係合歯30との解除がVギヤ26の軸方向の移動によ
って可能であり、Vギヤ26のウエビング巻取方向への
移動を不要とし、ウエビング24の巻き締まりが防止さ
れる。従来のように、ラチェット機構等を有する構造を
採用する必要がない。
【0057】ウエビング引出方向にVパウル40を掬い
込み易い形状に係合歯30を形成するのがよいが、この
ような場合に、Vパウル40のVギヤ26の係合歯30
との係合解除が、Vギヤ26をウエビング巻取方向へ回
転させることなくVギヤ26を軸方向へ移動させること
によって可能となる本実施例は、エンドロック状態の解
消上、ウエビング24の巻き締まりの防止上、効果的で
ある。
【0058】上記実施例は、Vパウル40がVギヤ26
の係合歯30と係合されてロック手段が作動してウエビ
ング24の引き出しが阻止されて、いわゆるVSIRと
称される車体感応式のウエビング巻取装置としての機能
を果たすとともに、Wパウル92を設けることにより、
いわゆるWSIRと称されるウエビング感応式のウエビ
ング巻取装置としての機能も果たす。いわゆるDSIR
と称されるものとなる。
【0059】Wパウル92によれば、車両急減速時に、
ウエビング24が引っ張られてそれに伴う加速度の作用
によって慣性プレート78がVギヤ26と相対的に慣性
移動し、慣性プレート78のWパウル92はW歯94と
係合される。この係合によって、Vギヤ26のウエビン
グ引出方向の回転が阻止される。この状態では、上述の
場合と同様に、スプール18が第2相対回転位置へVギ
ヤ26と相対回転して、ロック手段がロック作動する。
【0060】ウエビング24がスプール18に急速に巻
き込まれて、全格納状態に達したときには、Vパウル4
0がVギヤ26と係合してしまう場合があるのと同様
に、Wパウル92がW歯94と係合してしまう場合があ
る。Wパウル92がW歯94と係合してしまっても、ウ
エビング24を引き出してスプール18をウエビング引
出方向へ回転させ、ロック手段をロック作動させれば、
Vギヤ26が第2軸方向位置へ移動するのに伴いWパウ
ル92がVギヤ26と共に軸方向へ移動して、Wパウル
92のW歯94との係合が解除される。これにより、エ
ンドロック状態が解消される。
【0061】このように、エンドロック状態を容易に解
消するとともに巻き締まりも合わせて防止し、それを、
部品点数を増やすことなく、簡単な構造で達成すること
ができる。
【0062】
【発明の効果】本発明のウエビング巻取装置によれば、
エンドロック状態を容易に解消するとともに巻き締まり
も合わせて防止し、それを、部品点数を増やすことな
く、簡単な構造で達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のウエビング巻取装置の一実施例を示す
分解斜視図である。
【図2】スプールとロックプレートとの関係を示し、ス
プールの軸方向から見た図である。
【図3】Vギヤとロックプレートとスプールとの関係を
示し、スプールの軸方向から見た図である。
【図4】WパウルとW歯との関係を示し、スプールの軸
方向から見た図である。
【図5】第1相対回転位置の主要部の位置関係を示し、
スプールの軸方向から見た図である。
【図6】Vパウルの作動により第2相対回転位置に達し
た状態を示す図5に対応する図である。
【図7】Wパウルの作動により第2相対回転位置に達し
た状態を示す図5に対応する図である。
【図8】第2軸方向位置の図5に対応する図である。
【図9】第1軸方向位置をVパウルとの関係で示し、ス
プールの軸方向から見た図である。
【図10】第2軸方向位置をVパウルとの関係で示す図
9に対応する図である。
【図11】第1軸方向位置を案内ピンと案内凹部との関
係で示し、スプールの軸方向に沿って見た図である。
【図12】第2軸方向位置を案内ピンと案内凹部との関
係で示す図11に対応する図である。
【符号の説明】
18 スプール 24 ウエビング 26 Vギヤ 30 係合歯 40 Vパウル 42 捩じりばね(追随付勢手段) 55 ロックプレート(ロック部材(ロック手段) 66 ロック爪 68 ロック歯(ロック手段) 70 底浅部(第1規制部(規制手段(移動手段))) 72 底深部(第2規制部(規制手段(移動手段))) 76 コイルばね(軸方向付勢手段(移動手段)) 92 Wパウル 94 W歯
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B60R 22/36 - 22/40

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 回転可能とされてウエビングを引き出し
    巻き取り自在とするスプールと、 このスプールをウエビング巻取方向へ付勢する巻取付勢
    手段と、 前記スプールと同軸で第1相対回転位置と第2相対回転
    位置との間で相対回転自在とされるとともに、軸方向に
    沿って第1軸方向位置と第2軸方向位置との間で移動自
    在とされ、周部には係合歯を有するVギヤと、 前記スプールとVギヤとの間で、スプールがVギヤより
    ウエビング引出方向へ先行する第2相対回転位置から第
    1相対回転位置へ付勢し、通常はVギヤをスプールに追
    随回転させる追随付勢手段と、 前記Vギヤの第1軸方向位置で係合歯と対向し、車両急
    減速に伴う加速度の作用によって係合歯と係合してVギ
    ヤのウエビング引出方向の回転を阻止するとともに、係
    合歯との係合がVギヤの第2軸方向位置で解除されるV
    パウルと、 前記Vギヤのウエビング引出方向の回転が阻止された状
    態でスプールがウエビング引出方向ヘ回転して第2相対
    回転位置に達するとスプールのウエビング引出方向の回
    転を阻止すべくロック作動するロック手段と、 このロック手段のロック作動によりVギヤを第2軸方向
    位置へ移動させる移動手段と、 を備えたことを特徴とするウエビング巻取装置。
  2. 【請求項2】 前記移動手段は、 前記Vギヤとスプールとの間に設けられ、Vギヤを第1
    軸方向位置へ当接規制する第1規制部と、Vギヤを第2
    軸方向位置へ当接規制する第2規制部とを有し、スプー
    ルが第2相対回転位置に達すると第2規制部でVギヤを
    当接規制する規制手段と、 前記Vギヤを第1軸方向位置から第2軸方向位置へ向け
    て付勢する軸方向付勢手段と、 を備えてなる、 請求項1に記載のウエビング巻取装置。
  3. 【請求項3】 前記スプールと同軸な周上に設けられる
    W歯と、 前記Vギヤと軸方向へ共に移動し、通常はVギヤと共に
    回転してVギヤの第1軸方向位置でW歯と対向し、ウエ
    ビングの引き出し加速度の作用によってW歯の軸方向と
    直角の方向にVギヤとは相対的に慣性移動してW歯と係
    合することによりVギヤのウエビング引出方向の回転を
    阻止するとともに、W歯との係合がVギヤの第2軸方向
    位置で解除されるWパウルと、 を備えてなる、 請求項1又は2に記載のウエビング巻取装置。
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