JP3422680B2 - 車両用タイヤ - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、方向性トレッドパ
ターンを有する車両用タイヤに関する。

【０００２】

【従来の技術】周方向溝を有する従来の空気入りタイヤ
は、周波数が９００から１１００Ｈｚの気柱共鳴による
騒音いわゆるオルガンパイプノイズを引き起こすという
問題がある。この騒音は、昨今車両が発生する他の騒音
が減少されつつあることを考えれば、かなり目立つ望ま
しくないものである。しかし一方で、このオルガンパイ
プノイズを引き起こしやすい周方向溝は、タイヤのハイ
ドロプレーニング現象の防止には効果がある。即ち、オ
ルガンパイプノイズの減少とハイドロプレーニング現象
の防止とは、互いに相反するものである。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の課題
は、耐ハイドロプレーニング性能を悪化させることなく
９００から１１００Ｈｚの周波数帯域にある耳障りな騒
音の発生が極力抑えられた車両用タイヤを提供すること
にある。

【０００４】

【課題を解決するための手段】請求項１に係る発明は、
トレッド部の中央に配する周方向リブ（１）の各側に該
周方向リブ（１）に比して幅狭の内側の周方向溝（２）
と、その各外側の周方向溝（５）とを配することによっ
て、トレッド部を該内側の周方向溝（２）と外側の周方
向溝（５）との間のトレッド中間領域（３）と外側の周
方向溝（５）のタイヤ軸方向外側のショルダー領域
（４）とに区画し、該トレッド中間領域（３）に、タイ
ヤ軸方向内側に向かって凸の溝形状を呈する斜め溝
（６）を設け、かつこの斜め溝（６）は、一端が前記外
側の周方向溝（５）に開口しかつ他端が周方向に隣りあ
う斜め溝（６）と交差し、しかも斜め溝（６）は交差点
から周方向溝（５）までの間で前記溝形状を呈するとと
もに、 斜め溝（６）の軸方向最も内側の点と、該中間領
域（３）の軸方向内縁との間の距離をトレッド幅ＴＷの
１／２の５％以上、かつタイヤ赤道ＣＬから、内側の周
方向溝（２）の外縁である中間領域（３）の軸方向内縁
までの距離を、トレッド幅ＴＷの１／２の約２５％以
下、 しかもトレッド中間領域（３）の幅は、トレッド幅
ＴＷの１／２の約１／３以上としたことを特徴とする。

【０００５】

【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の一形態を図
面に基づき説明する。図において、本発明の車両用タイ
ヤは、トレッド部に方向性トレッドパターンが形成され
ており、トレッド部には、タイヤ赤道に沿ってタイヤ周
方向に延びる一本の周方向リブ１が配されている。

【０００６】この周方向リブ１の各側には、該周方向リ
ブ１より狭い幅を有する１本の内側の周方向溝２が配さ
れている。また更に、そのタイヤ軸方向外側には、内側
の周方向溝２より狭い幅を有する外側の周方向溝５が配
されている。これによって、トレッド部は、２本の内側
の周方向溝２の間のトレッド中央部と、内側の周方向溝
２と外側の周方向溝５との間のトレッド中間領域３と、
外側の周方向溝５のタイヤ軸方向外側のショルダー領域
４とに区画されている。

【０００７】内側の周方向溝２は、タイヤ周方向に一定
幅で直線状に連続的に延びている。また外側の周方向溝
５は、タイヤの幅方向に変位した複数の溝部分からなる
ことによって、直線状周方向溝としての特性はかなり失
っている。

【０００８】各トレッド中間領域３には、複数の斜め溝
６が配されている。各斜め溝６は、略周方向に延びるそ
の軸方向内側の部分からショルダー領域４の方向に向か
って弓状にカーブして延び、その軸方向外側部分は周方
向溝５に一端が合流している。また前記略周方向に延び
る軸方向内側の部分は、タイヤ周方向に隣りあう斜め溝
６と他端が交差し、溝端部９へと連続している。この溝
端部９は、前記交差部分から溝端に向かって溝深さが０
になるまで徐々に減少している。従ってこの溝端部９
は、タイヤ特性に対して、実質的に何ら影響を及ぼさな
い部分と言える。

【０００９】各斜め溝６は、隣接する斜め溝６と交差す
る付近では、大略周方向に延びているが、緩やかなカー
ブを描き、交差点を実質的に変曲点として、溝端部９で
はタイヤ軸方向外側に向かって凸、その他の部分即ち交
差点から周方向溝５までの間ではタイヤ軸方向内側に向
かって凸の溝形状を呈し弓状に湾曲している。

【００１０】またさらに、周方向に隣接する斜め溝６の
間には、斜め溝６と同様のカーブを描いて弓状に延びる
中間溝７が１本配されている。この中間溝７は、周方向
溝５から前記略周方向に延びる斜め溝６の内側の部分ま
で延び、その略中間部分やや軸方向内側寄りを該斜め溝
６に交差する隣接の斜め溝６の溝端部９が横切ってい
る。

【００１１】前記斜め溝６と中間溝７は、外側の周方向
溝５の変位点すなわち互いに少しずつ変位した部分が接
続する接続点に一致して、この周方向溝５に合流してい
る。そして合流した後、斜め溝６と中間溝７がショルダ
ー領域４へ連続して延びるが如く、ショルダー領域４に
はショルダー溝８が設けられている。

【００１２】各ショルダー溝８は、周方向溝５からトレ
ッドエッジに向かってタイヤ赤道ＣＬに対して約７０°
〜９０°の角度範囲で曲線を描いて延び、トレッド接地
端すなわち接地領域１０の軸方向最外端を越えた後、そ
の軸方向外端部は、比較的急なカーブで曲がって、前記
溝端部９と同様の方向に延び、さらに溝深さも同様に溝
端で０となるように減少している。従って外端部は、走
行方向を示す働きを有するのみである。

【００１３】また、前記周方向リブ１には、その両側縁
からタイヤ赤道に向かって延びる複数の袋溝１１が周方
向に互い違いに配されており、一方の側縁に配された袋
溝１１は、もう一方の側縁に配された袋溝１１に対し
て、周方向に１／２ピッチずれている。そしてまたさら
に、各袋溝１１は、タイヤ赤道のやや手前でタイヤ周方
向に向く如く前記溝端部９と同方向にカーブしかつ先細
りとなって途切れている。これによって、周方向リブ１
は、タイヤ周方向の連続性を維持しつつ適度な柔軟性が
与えられる。

【００１４】このように袋溝１１が、内側の周方向溝２
から軸方向内方へ延びているが、周方向溝２から軸方向
外側へ延びる溝は設けられていない。そして、周方向溝
２をトレッドエッジから十分遠いトレッド中央付近に配
したことにより、たとえ周方向溝２で気柱共鳴が生じる
ことがあってもトレッド中央に封じ込められ、騒音レベ
ルの上昇は効果的に抑えられる。その為には、タイヤ赤
道ＣＬから内側の周方向溝２の外縁までの距離、即ちタ
イヤ赤道ＣＬからトレッド中間領域３の軸方向内縁まで
の距離を、トレッド幅ＴＷの１／２の約２５％以下にす
る。これによって内側の周方向溝２の幅は、トレッド幅
ＴＷの１／２の約５〜１５％、本例では約１０％とする
ことができる。

【００１５】外側の周方向溝５の幅は、トレッド幅ＴＷ
の１／２の約３〜５％、本例では内側の周方向溝２の幅
の約３５〜４５％（４０％）に設定されている。このよ
うに溝幅を比較的狭くすることによって、タイヤ幅方向
の前記変位と相俟って、気柱共鳴の発生を抑えることが
できる。

【００１６】トレッド中間領域３の幅は、トレッド幅Ｔ
Ｗの１／２の約１／３ 以上とする。タイヤ赤道ＣＬか
ら斜め溝６の軸方向で最も内側の点までの距離は、トレ
ッド幅ＴＷの１／２の約２５％から３０％であり、また
タイヤ赤道ＣＬからトレッド中間領域３の軸方向内縁ま
での距離以上である。そして、その最も内側の点と軸方
向内縁との間の軸方向距離はトレッド幅ＴＷの１／２の
５％以上とする。

【００１７】斜め溝６と７の幅は、内側の周方向溝２の
幅の約４０％から６０％とする。またショルダー溝８の
幅は、少なくとも外側の周方向溝５の近傍、より正確に
は周方向溝５から接地端までの間では、内側の周方向溝
２の幅の約６０％から８０％とする。これによって、良
好な排水性を得ることができる。

【００１８】

【実施例】図２は実施例を示し、前述の各種溝、周方向
リブ、トレッド幅ＴＷの寸法関係、位置関係を示してい
る。なお図に記入された値は望ましい値であるが、±１
０％程度の変動は十分許容し得る。

【００１９】図２に、ａ、ｂ１、ｂ２、ｃ、ｄ、ｅ、
ｃ、ｄ、ｅで示された溝または溝の部分についての軸方
向範囲すなわち軸方向の広がり、赤道からの距離、溝の
幅（以上、単位は ×ＴＷ／２）及びタイヤ周方向に対
する溝の角度（単位は度）は、以下の通りである。

【００２０】 溝 範囲 距離 溝幅 角度 ａ 0.10 0.11 0.10 0 ｂ１ 0.32 0.27 0.04〜0.06 0 〜70 ｂ２ 0.32 0.27 0.06 30〜70 ｃ 0.06 0.6 0.04 0 (ズレ３度) ｄ 0.34 0.66 0.06〜0.08 70〜90 ｅ 0.07 0.04 0.01〜0.05 10〜40

【００２１】

【発明の効果】如上のごとく構成された本発明の車両用
タイヤは、走行中のタイヤの接地領域に独立した溝が形
成されることがなく、接地領域内の溝は全て排水に寄与
し、また斜め溝はショルダー領域への排水を良好ならし
め、これらによって接地領域の排水性を良好なものとで
き、ハイドロプレーニング現象の発生を効果的に抑制で
きる。さらに内側の周方向溝はトレッド中央に限定さ
れ、外側の周方向溝を具え、また斜め溝はタイヤの回転
中接地領域で常にさまざまな溝角度を呈しているので、
オルガンパイプノイズを発生することはなく、従って騒
音発生を最小限に抑えることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例を示す平面図である。

【図２】図１に示された実施例における各種溝、周方向
リブ、トレッド幅等の寸法関係、位置関係を示す図であ
り、上半分にはトレッド部のプロファイルが示されてい
る。

【符号の説明】

１ 周方向リブ ２ 内側の周方向溝 ３ トレッド中間領域 ４ ショルダー領域 ５ 外側の周方向溝 ６ 斜め溝 ７ 中間溝 ８ ショルダー溝 ９ 溝端部

フロントページの続き (72)発明者 ディーター グロッバッハ ドイツ連邦共和国、マインタル、6377、 ウインゲルシュトラッセ 82 (72)発明者 ヨーアヒム リーゲル ドイツ連邦共和国、リンゼンゲリヒト、 63589、ボルンヴェク 34 (56)参考文献 特開 平３−295707（ＪＰ，Ａ) 特開 平６−270609（ＪＰ，Ａ) 実開 昭61−52505（ＪＰ，Ｕ) (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) B60C 11/00 - 11/24

Claims (4)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】トレッド部の中央に配する周方向リブ
   （１）の各側に該周方向リブ（１）に比して幅狭の内側
   の周方向溝（２）と、その各外側の周方向溝（５）とを
   配することによって、トレッド部を該内側の周方向溝
   （２）と外側の周方向溝（５）との間のトレッド中間領
   域（３）と外側の周方向溝（５）のタイヤ軸方向外側の
   ショルダー領域（４）とに区画し、該トレッド中間領域（３）に、タイヤ 軸方向内側に向か
   って凸の溝形状を呈する斜め溝（６）を設け、 かつこの斜め溝（６）は、一端が前記外側の周方向溝
   （５）に開口しかつ他端が周方向に隣りあう斜め溝
   （６）と交差し、しかも斜め溝（６）は交差点から周方
   向溝（５）までの間で前記溝形状を呈するとともに、 斜め溝（６）の軸方向最も内側の点と、該中間領域
   （３）の軸方向内縁との間の距離をトレッド幅ＴＷの１
   ／２の５％以上 、かつタイヤ赤道ＣＬから、内側の周方向溝（２）の外縁
   である中間領域（３）の軸方向内縁までの距離を、トレ
   ッド幅ＴＷの１／２の約２５％以下、 しかもトレッド中間領域（３）の幅は、トレッド幅ＴＷ
   の１／２の約１／３以上としたことを 特徴とする車両用
   タイヤ。
2. 【請求項２】方向性トレッドパターンを有し、かつ外側
   の周方向溝（５）は内側の周方向溝（２）に比して幅狭
   とするとともに、前記斜め溝（６）は、隣接する斜め溝
   （６）と交差する付近では、大略周方向に延びる緩やか
   な弓状に湾曲するカーブを描くことを特徴とする請求項
   １記載の車両用タイヤ。
3. 【請求項３】周方向に隣りあう斜め溝（６）間には、斜
   め溝（６）と同様のカーブを描きながら外側の周方向溝
   （５）とその軸方向内側に位置する斜め溝の部分との間
   を延びる弓状の中間溝（７）が配されていることを特徴
   とする請求項１又は２記載の車両用タイヤ。
4. 【請求項４】前記トレッド中間領域（３）の各斜め溝
   （６）は、周方向に隣接する斜め溝（６）に合流した後
   略周方向に突出する溝端部（９）を形成し、該溝端部
   （９）は溝端に向かって溝深さが０まで減少することを
   特徴とする請求項１、２、又は３記載の車両用タイヤ。