JP3420854B2 - ニッケル系ステンレス鋼帯の酸洗方法 - Google Patents

ニッケル系ステンレス鋼帯の酸洗方法

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Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、ニッケル系ステンレス
鋼の鋼板(ホットコイル)のスケール除去のための酸洗
方法に関する。 【0002】 【従来の技術】Cr系ステンレス鋼板の熱間圧延後の表
面酸化スケールを除去する方法として、特開昭64−2
88号公報に開示されているように、硫酸酸洗を行うこ
とが一般的である。 【0003】ところが、Ni系ステンレスの脱スケール
に硫酸による酸洗いを適用した場合には、硫酸スケール
と直接反応しないので、生地と硫酸酸洗い液との反応が
起こり難く、酸洗いのための時間が長い、そのため、表
面粗度が粗くなるという問題がある。 【0004】そこで、Ni系ステンレス鋼板の熱間圧延
後の表面酸化スケールを除去する方法として、特開昭6
1−245912号公報、特開昭61−49706号公
報等に記載されているとおり、熱延鋼板にショットブラ
スト等のメカニカルデスケーリングと適正温度に予熱さ
れた硝弗酸水溶液による酸洗や、中性塩電解による方式
との併用が行われている。 【0005】しかしながら、このような特殊な方法によ
るNi系ステンレス鋼のスケール除去は、高耐酸性、電
解設備のため、高価な初期設備が必要で、また、その処
理のためのランニングコストが高くなる。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、Ni
系ステンレス鋼板の硫酸による酸洗いに際しての長時間
を要する、得られた表面粗度が粗いという問題を解消す
ることにある。 【0007】 【課題を解決するための手段】本発明は、熱間圧延した
Ni系ステンレス鋼帯のスケールを機械的手段により全
表面の30%以上除去し、ついで硫酸溶液中に浸漬する
ことを特徴とする。 【0008】硫酸溶液による酸洗いに際して、その素地
を急速に溶出することが必要であり、そのためには、そ
の濃度は100g/l以上、またその温度は70℃以上
とする。 【0009】 【作用】図1と図2は本発明における作用を説明する図
であって、Ni系ステンレス鋼帯における機械的な脱ス
ケール量の大小による酸洗いによる表面状態の変化を模
図的に示す。 【0010】図1は、機械的な脱スケールの程度が少な
い場合の脱スケール後の状態(A)と、硫酸による素地
の酸洗い時の溶解状態(B)と、酸洗い後の表面状態
(C)を示す。この場合には、素地aとスケールbとの
接触面積が大きく、そのため、硫酸と地金部分との直接
接触部分の面積割合は小さく、スケール除去のための硫
酸との接触時間を長くする必要がある。そのため、硫酸
との反応性が悪いスケール被膜形成部分の溶出量は少な
く、硫酸と直接接する地金部分の溶出量は大きくなっ
て、酸洗い後の表面cの凹凸の程度は大きくなり表面粗
度は大きくなる。 【0011】図2は、機械的な脱スケール量が多い場合
の例を示すもので、その表面除去率は、従来の通常の機
械的な脱スケールと酸洗いとの組合せの場合が高さ15
%程度であるのに対して、本発明の場合は30%を超
え、好ましくは40%以上である。この場合には、素地
aとスケールbとの直接接触部分の面積割合は大きく、
スケール除去のための硫酸との接触時間は比較的短くて
よい。硫酸との反応性が悪いスケール被膜部分は比較的
容易に除去され、また、酸洗い液の条件が短時間の溶出
に適した条件となっており、そのため、硫酸と直接接す
る地金部分の溶出量は少なく、酸洗い後の表面cの凹凸
の程度は小さく表面状態に優れたものとなる。 【0012】 【実施例】 実施例1 図3は、本発明を適用したNi系ステンレスのホットコ
イルの酸洗いシステムを示す。同図に示すように、SU
S304で板厚3mmのホットコイル1から送り出され
るNi系ステンレス鋼板2をショットブラスト3と重研
ブラシ4による機械的な脱スケールを施したのち、硫酸
酸洗い槽5によって酸洗いしたのち、白色化槽6と洗浄
槽7を経て酸洗いコイル8に巻き込んだ。 【0013】それぞれの処理工程における条件は、表1
に示すとおりであり、ショットブラスト3と重研ブラシ
4による機械的な脱スケール後のスケールの表面除去率
は、40%であった。この脱スケールした鋼板を表1に
示す硫酸溶液中に150sec浸漬することによって、
粗度Rmax が18.3μmの優れた表面光沢度を有する
表面状態を得ることができた。 【0014】なお、白色化槽6は、仕上がり表面の黒色
化を防止して、白色化を達成するもので、その処理液自
体は、本願出願人が特願平6−169824号出願にお
いて開示したもので、塩酸0.5〜20重量%、硝酸3
〜20重量%濃度の白色化酸洗液を用い、その後洗浄処
理を行う。 【0015】 【表1】 実施例2 実施例1の場合と同様の設備を使用して、同様の鋼板を
表2に示す条件で処理した。ショットブラスト3と重研
ブラシ4による機械的な脱スケール後のスケールの表面
除去率は、65%であった。この脱スケールした鋼板を
表2に示す硫酸溶液中に130sec浸漬することによ
って、粗度Rmax が16.2μmの表面状態を得ること
ができた。 【0016】 【表2】実施例3 実施例1の場合と同様の設備を使用して、実施例1と実
施例2における条件を変化させて、優れた表面状態を得
るための処理条件を調べた。 【0017】図4は、前述のとおり機械的な脱スケール
によるスケール除去率と、完全な脱スケール状態を得る
ための上記実施例1に示す硫酸溶液による浸漬時間を示
す。この浸漬時間が短い程、地金の溶出の程度は少なく
なり、黒色化の現象もなくなる。同図において、完全脱
スケール領域として示す限界が、この優れた表面状態を
得るためのスケール除去率と浸漬時間の限界を示す。同
図に示すように、機械的な脱スケール率が略30%に浸
漬時間の臨界があることが判る。 【0018】図5は、スケールの表面比による除去率と
酸洗い後の表面粗度Rmax の関係を示すもので、脱スケ
ール率が略30%に浸漬時間の臨界があることが判る。 【0019】図6は、酸洗い処理後の表面粗度と製品光
沢度の関係を示すもので、表面光沢度がBとCとの中間
点にあるとすると、酸洗い処理後の表面粗度はRmax が
20を超えると光沢不良状態が発生することを示すもの
で、上記実施例1と2の何れの場合も、優れた表面光沢
度のものが得られたことを示す。 【0020】さらに、図7は上記実施例における硫酸の
濃度と温度と、素地溶解の関係を示す。同図に示すよう
に、SUS系地金の溶解速度は、硫酸の濃度と温度と直
接的な関係があり、硫酸濃度が100g/l以上で、温
度が70℃以上で、その溶解度は急速に増大し、短時間
内に酸洗いが達成できる。 【0021】 【発明の効果】本発明に係るニッケル系ステンレス鋼帯
の酸洗方法によって以下の効果を奏する。 【0022】(1)従来のように特殊酸を使用したり、
電解処理を行う必要がないので、設備、ランニングのた
めに格別の費用を要することなく、ニッケル系ステンレ
ス鋼の脱スケールが可能となり、優れた表面状態が得ら
れる。 【0023】(2)酸液自体が安価であり、廃酸の回収
処理も容易である。 【0024】(3)酸処理ラインとしてCr系ステンレ
ス鋼、普通鋼等の他品種との共通化が可能となり、設備
の効率化が達成される。
【図面の簡単な説明】 【図1】 本発明の作用を説明する図であり、脱スケー
ル量が少ない場合の表面状態の変化を模図的に示す。 【図2】 本発明の作用を説明する図であり、脱スケー
ル量が多い場合の表面状態の変化を模図的に示す。 【図3】 本発明を適用したNi系ステンレスのホット
コイルの酸洗いシステムを示す。 【図4】 機械的な脱スケールによるスケール除去率
と、完全な脱スケール状態を得るための硫酸溶液による
浸漬時間を示す。 【図5】 スケール除去率と酸洗い後の表面粗度との関
係を示す。 【図6】 酸洗い処理後の表面粗度と製品光沢度の関係
を示す。 【図7】 硫酸の濃度と温度と、地金溶解の関係を示
す。 【符号の説明】 1 ホットコイル 2 Ni系ステンレス鋼
板 3 ショットブラスト 4 重研ブラシ 5 硫酸酸洗い槽 6 白色化槽 7 洗浄槽 8 酸洗いコイル
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 兼安 孝幸 北九州市戸畑区飛幡町1−1 新日本製 鐵株式会社八幡製鐵所内 (72)発明者 西村 基 北九州市戸畑区飛幡町1−1 新日本製 鐵株式会社八幡製鐵所内 (56)参考文献 特開 平2−205692(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23G 1/08 B21B 45/06 C22C 38/00 302 C22C 38/08

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 熱間圧延したNi系ステンレス鋼帯のス
    ケールを機械的手段により全表面の30%以上除去し、
    ついで硫酸溶液中に浸漬することを特徴とするニッケル
    系ステンレス鋼帯の酸洗方法。
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