JP2991829B2 - 鋼質金属の高速酸洗方法 - Google Patents

鋼質金属の高速酸洗方法

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  • Cleaning And De-Greasing Of Metallic Materials By Chemical Methods (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は普通鋼、Cr,Ni,N
bなど強質化元素を少量含有した低合金鋼あるいはC
r,Niなどを多量に含有する特殊鋼など鋼質金属表面
に生成した酸化物(スケール)の高速酸洗方法に関する
ものである。
【0002】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】一般に普
通鋼、低合金鋼や特殊鋼など鋼質金属鋼帯の製造に際し
ては、熱間圧延ままあるいは熱間圧延後焼鈍処理を施し
た後、該鋼帯表面に生成したスケールを必要によっては
ショットブラストのようなメカニカルデスケール処理を
施した後、酸洗処理を施し、完全にデスケールして冷間
圧延を行っている。
【0003】従来から酸洗処理に使用される各種の酸洗
水溶液は、酸洗液特性特に溶削能力から、それぞれが鋼
種によって使い分けされている。例えば、硫酸溶液はN
iが増えると溶解速度が著しく小さくなり、Niを含む
オーステナイト系ステンレス鋼で必要な溶削量をとろう
とすると長時間が必要となる。また硝ふっ酸混合水溶液
の酸洗能力は鋼中Cr含有量の増加に伴い低下するた
め、焼鈍を省略しあるいは簡略化して製造された粒界C
r欠乏を有する低合金鋼やフェライト系ステンレス鋼な
どの特殊鋼で粒界腐食を生じる問題があった。従って、
低合金鋼やフェライト系ステンレス鋼に対しては、塩酸
水溶液あるいは硫酸水溶液を使用した酸洗処理が一般に
行われている。このように、成分組成が異なる鋼を同一
の酸洗水溶液でしかも工業的に要求される短い作業時間
において、満足に酸洗処理することが困難とされてい
る。
【0004】かかる問題から効率的な酸洗方法として開
示された文献が多くある。例えば、特開昭59−837
83号公報は、鋼帯を硫酸水溶液中に浸漬してスケール
を溶削除去し、鋼表面に付着した汚れ(スマット)を硝
酸水溶液中で除去しかつ表面を不動態化する二工程から
なる酸洗方法を開示している。この方法もスケールの溶
削に長時間要し、特に前記したような粒界Cr欠乏を有
する鋼質金属には硝酸水溶液中で粒界腐食を発生する問
題があった。また特開昭64−288号公報には、硫酸
と硝酸を混合した硫硝酸水溶液中に鋼を浸漬する酸洗方
法が開示されている。この酸洗方法は、硫酸水溶液に比
し1〜5倍の酸洗能力を保有するためスケールを短時間
に除去し、さらに粒界Cr欠乏を有する鋼質金属に対し
ても粒界腐食を生じることもない利点も有している。し
かしながら、このような硫硝酸溶液を実操業に使用した
場合、鋼質金属から該溶液中に溶出するFeイオン、C
rイオンなどの金属イオンが増加して溶液の組成および
性質が変化し、酸洗能力を著しく劣化する問題があっ
た。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、このような問
題から鋼質金属表面に生成したスケールの酸洗溶削効率
を向上しかつ鋼質金属製品の表面性状を平滑化する酸洗
水溶液を探索することを目的に多くの実験と検討を試み
て得られた結果で、その要旨は、濃度が100〜450
g/lの塩酸に43.8g/l以上300g/l以下の
NO3 - イオンを含有して温度が50〜110℃に加熱
保温された塩酸水溶液中に、粒界Cr欠乏を有する鋼質
金属を浸漬または電解処理する鋼質金属の高速酸洗方法
である。
【0006】以下、本発明について詳細に説明する。本
発明において酸洗水溶液に濃度が100〜450g/l
の塩酸を使用する。塩酸は、硫酸に比べて地鉄の溶削能
力に優れ、鋼質金属の酸洗時間を短縮する利点から基本
成分とした。このような塩酸の作用効果は、NO3 -
オンを含有する水溶液において如何なる濃度でも得られ
ると言うものではない。図1は温度80℃の塩酸水溶液
さらにNO3 - イオンを含有する塩酸水溶液において、
粒界Cr欠乏をもつ鋭敏化の高いSUS430のスケー
ル付熱延鋼帯に砂鉄粒子を混入した高圧水を吹き付ける
メカニカルデスケーリングを施した後60秒間浸漬した
時の表面平滑性、粒界腐食および孔食の発生状況につい
て調査した結果を示す。さらに図2は、図1に対応する
各酸洗水溶液での地鉄溶削量を示したものであり、この
値が大きいとデスケーリング速度が速いという指標であ
る。
【0007】すなわち、塩酸が100g/l未満の薄い
濃度では、地鉄の溶削能力が不足し酸洗に長時間要する
問題がある。また450g/lを越える濃度は溶削能力
が過飽和域に達する問題がある。従って、本発明におい
ては塩酸の濃度を100〜450g/lに限定した。さ
らに地鉄の溶削能力を増大せしめるには、塩酸水溶液中
にNO3 - イオンを添加する必要がある。また、濃度が
100〜450g/lの酸洗水溶液に添加されるNO3
-イオン含有量の増加に地鉄の溶解能力が高められる。
しかし、NO3 - イオンの300g/l以上を越える過
剰な含有は、図1で示したように、粒界腐食を著しく高
める問題がある。従って、本発明においてNO3 - イオ
ンの含有は、粒界腐食を発生させずスケールの溶削量を
大ならしめる範囲から、300g/l以下に限定した。
【0008】上記のように高い溶削能力をもつ本発明に
おける組成の塩酸水溶液は、温度50〜110℃に加熱
保温し、普通鋼や低合金鋼さらにはCr,Ni,Moを
多量に含有する特殊鋼など鋼質金属を浸漬または電解処
理して、該鋼質金属の表面に生成したスケールと地鉄を
溶解し除去する。この時の塩酸水溶液の加熱は地鉄を効
率的に溶削するために行うものであり、その時の溶削能
力は低温になるほど小さく高温になるほど大きくなる
が、工業的に望まれる浸漬時間と設備保全上の問題を考
慮して50〜110℃とした。
【0009】また電解処理については鋼質金属を陽極と
し該陽極に対向して設けた陰極との間に、あるいは鋼質
金属に対向して陽極、陰極の1対または2対以上の電極
板を配置した両極間に直流電流を通電しながら、鋼質金
属表面に生成したスケールと地鉄を溶解し除去する。こ
の時の電流密度については特に限定するものではない
が、効率的でしかも安定して長時間溶削し得る利点から
5〜200A/Dm2 の範囲が好ましい。特に200A/
Dm2 を越える過剰な電流密度では溶液抵抗から液温が急
上昇し、塩酸水溶液の劣化が激しくまた鋼質金属の過酸
洗を引き起こす懸念がある。
【0010】
【実施例】(実施例1) 鉄、炭素とともにCrを7%含有する低Cr鋼、Crを
約17%含有するクロム系ステンレス鋼のSUS430
およびCrを18%、Niを8%含有するオーステナイ
ト系ステンレス鋼のSUS304について焼鈍を省略ま
たは短時間焼鈍した鋭敏化の著しいホットコイルを高圧
水中に砂鉄粒を混入させて吹付けるメカニカルデスケー
リングを施した1m幅の10tコイルを用いて試験を行
った結果を比較法とともに表1に示す。本発明法によれ
ばいずれの鋼種とも高い溶削速度を示しデスケール酸洗
能力の向上ができるとともに酸洗表面を平滑化すること
ができる。
【0011】こうして得られた酸洗鋼帯を比較材ととも
に大径ロール(200〜600mm径のワークロール)を
有する圧延機列によるタンデム冷間圧延および小径ワー
クロール(100mm以下の径のワークロール)を有する
ゼンジミアーミルによる冷間圧延の組合わせによる冷間
圧延工程ならびにゼンジミアーミルのみによる冷間圧延
(3t→0.4t)の後、光輝焼鈍を施した。このよう
にして得られた製品板のゴールドダストをテストした結
果ゴールドダストは全く発生せず表面光沢も良好であっ
た。一方、粒界腐食のある比較材はゴールドダストが発
生した。
【0012】
【表1】
【0013】(実施例2)鉄、炭素とともにCrを7%
含有する低Cr鋼、Crを約16.5%含有するクロム
系ステンレス鋼のSUS430およびCrを18%、N
iを8%含有するオーステナイト系ステンレス鋼のSU
S304について焼鈍を省略または短時間焼鈍した鋭敏
化の著しいホットコイルを高圧水中に砂鉄粒を混入させ
て吹付けるメカニカルデスケーリングを施した1m幅の
12tコイルを用いてコイルを陽極とし該陽極に対向し
て設けられた陰極との間に電流密度80A/Dm2 で電流
を通電して陽極溶解酸洗を行った場合および同一条件の
液中に、鋼質金属の被酸洗金属面に対向し陰極、陽極を
鋼帯の片面に2対づつ計8ヶの電極板(幅1200mm、
長さ400mm)を用いて、極性は上下対称に設置し、極
間距離は30〜100mmとし、極間に直流電流を通電す
る間接通電方式の場合の溶削深さと表面の粒界腐食の有
無を評価する実験を行った結果を表2に示す。本発明法
によればいずれの鋼種とも高い溶削速度を示しデスケー
ル酸洗能率の向上ができるとともに酸洗表面を平滑化す
ることができる。
【0014】こうして得られた酸洗鋼帯を大径ロール
(200〜600mm径のワークロール)を有する圧延機
列によるタンデム冷間圧延および小径ワークロール(1
00mm以下の径のワークロール)を有するゼンジミアー
ミルによる冷間圧延の組合わせによる冷間圧延工程なら
びにゼンジミアーミルのみによる冷間圧延(4t→0.
3t)した後、光輝焼鈍を施した。このようにして得ら
れた製品板のゴールドダストをテストした結果ゴールド
ダストは全く発生せず表面光沢も良好であった。
【0015】
【表2】
【0016】
【発明の効果】本発明によれば、鉄、炭素、Crを含有
する低合金鋼あるいは特殊鋼などの熱延鋼帯の焼鈍を省
略したり焼鈍を簡略化した粒界Cr欠乏を有する鋼質金
属表面の平滑酸洗および高速酸洗を可能にする技術を確
立したので酸洗スピードをアップしフェライト系ステン
レス鋼とオーステナイト系ステンレス鋼が同一の酸洗液
で酸洗可能であり、その工業的効果は甚大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】焼鈍を省略して粒界Cr欠乏をもつ鋭敏化の著
しいSUS430の熱延鋼帯を高圧水中に砂鉄粒を混入
させて吹付けるメカニカルデスケーリングを施した材料
を用いた80℃,60秒の塩硝酸酸洗後の表面性状を示
す。
【図2】図1で供試した材料の、塩酸濃度と硝酸濃度の
溶削能力を示す。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 濃度が100〜450g/lの塩酸に
    3.8g/l以上300g/l以下のNO3 - イオンを
    含有して温度が50〜110℃に加熱保温された塩酸水
    溶液中に、粒界Cr欠乏を有する鋼質金属を浸漬または
    電解処理することを特徴とする鋼質金属の高速酸洗方
    法。
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