JP3416981B2 - 核酸合成法 - Google Patents

核酸合成法

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【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、核酸合成法、特にポリ
メラーゼ連鎖反応法による核酸合成法に関する。 【0002】 【従来の技術・発明が解決しようとする課題】遺伝子を
増幅する技術の一つにポリメラーゼ連鎖反応法(Polyme
rase Chain Reaction;以下、PCRと略す)が行われて
いる。PCR法は目的とするDNA領域をはさんで、プ
ライマーを結合させ、DNAポリメラーゼ反応でDNA
合成反応を繰り返すことによって、目的のDNA(鋳型
DNA)断片を数十万倍にも増幅できる方法である。P
CR法は、通常検体中のごく少量の例えば1個のウィル
ス、細菌、細胞等のDNAの解析に使用される。また最
近、PCR後の生産物の量より、検体中に存在していた
鋳型DNAの量を推定する等の定量的な解析も試みられ
ている。 【0003】しかしながら、生体由来の試料(たとえ
ば、動物由来の組織、血液、髄液、唾液、乳、尿、糞便
等または植物由来の根、茎、葉、花、実等)、環境試料
(たとえば、土壌、水等)または食品(例えば肉、牛
乳、卵等)等に含まれるウイルス、細菌または細胞等の
DNAの解析を行うためには、まず試料中の夾雑物を除
去し、目的のDNAのみを分離、精製する必要がある。
その方法として、現在、一般的に酵素や界面活性剤によ
る試料の処理後、フェノール・クロロホルムによる抽出
が行われている。又、最近では、イオン交換樹脂、ガラ
スビーズ、蛋白凝集剤等による蛋白等の除去法を用いる
DNAの精製も行われている。しかし、いずれの方法を
用いても、夾雑物を充分に除去することは困難であり、
このことが、しばしばPCR法等による核酸合成法にお
いて遺伝子増幅の抑制の原因となっている。本発明者ら
は、PCR法等の核酸合成法を用いた遺伝子増幅を行な
う際にポリアミンを添加することにより、これらの夾雑
物による核酸合成の抑制が軽減されるのではないかと想
定し、従来の文献などを検討したが、核酸合成法におけ
るポリアミンの添加と夾雑物による核酸合成の抑制との
関係について記述している文献は見当たらなかった。従
って、本発明の目的は核酸合成を抑制する可能性のある
物質を含むサンプル、即ち生体または環境等に由来する
試料より抽出したサンプルにおける核酸合成法を提供す
ることにある。 【0004】 【課題を解決するための手段】本発明者らは前記課題を
解決する目的で、核酸合成法におけるポリアミンの添加
と夾雑物による核酸合成の抑制との関係について検討を
行い、ヒトの糞便等を試料としてフェノール・クロロホ
ルムにより抽出した所望のDNAを含むサンプルに種々
のポリアミンを種々の濃度で添加した後、PCR法で核
酸合成を行なった。その結果、各種ポリアミンをある一
定の範囲で添加することにより、サンプル中に混入する
夾雑物による核酸合成の抑制が軽減されることを見いだ
し、本発明を完成するに至った。 【0005】即ち、本発明の要旨は試料から目的の遺伝
子を増幅する核酸合成法において、反応系内にポリアミ
ンを添加して行なうことを特徴とする核酸合成法に関す
る。 【0006】本発明における試料とは、たとえば、生体
由来の試料としては動物由来の組織、血液、髄液、唾
液、乳、尿、糞便等または植物由来の根、茎、葉、花、
実等がが挙げられ、また、環境試料としてはたとえば、
土壌、水等が挙げられ、さらに食品としてはたとえば
肉、牛乳、卵等が挙げられるが特に制限されるものでは
ない。 【0007】本発明におけるポリアミンとは、第一級も
しくは第二級アミノ基を二つ以上もつ炭化水素の総称で
ある。ある種のポリアミンは、生体内に存在しており、
タンパク質や核酸合成の盛んな組織に多く含まれてお
り、多様な生理的作用を有しているが、本発明における
ポリアミンの作用にはかかる作用が必ずしも要求される
わけではなく、第一級もしくは第二級アミノ基を二つ以
上一分子内に有する炭化水素であれば特に限定される物
ではない。具体的には、例えばエチレンジアミン、トリ
メチレンジアミン、スペルミン、スペルミジン、ジエチ
レントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチ
レンペンタミンおよびペンタエチレンヘキサミン等が挙
げられる。 【0008】また、本発明における核酸合成法とは、通
常の核酸の合成方法を指すもので特に制限されるもので
はないが、例えばPCR法等が挙げられる。以下、PC
R法を例にして本発明の方法を説明する。尚、本発明の
記述において各種プライマー、dNTP等を含有するP
CRを行なうための反応液をPCR反応液と表現し、試
料溶液、PCR反応液およびポリアミン等の混合液をP
CR反応溶液と表現する。本発明においてポリアミン
は、反応系内に添加されるが、ここで反応系内への添加
とは、PCR反応がポリアミンの存在下で行なわれるよ
うな態様であれば特に限定されるものではなく、例えば
PCRの直前に試料溶液(例えば、糞便抽出液)ととも
にPCR反応液に添加してもよく、また試料溶液または
PCR反応液の調製時にあらかじめ添加しておいてもよ
いが、試料溶液調製時に予め添加しておいた方が効果が
高くあらわれる。また、ポリアミンの添加量(濃度)
は、ポリアミンの種類や試料溶液の種類、濃度等により
異なるが、通常PCR反応溶液中10〜0.01mM程
度、好ましくは4〜1mM程度の濃度が、夾雑物による
核酸合成の抑制を軽減するという観点から好ましい。 【0009】本発明の核酸合成法の手順は、反応系内に
ポリアミンを添加する以外、通常の方法と何ら変わらな
い。即ち、まず、増幅しようとする目的の2本鎖DNA
断片を熱変性により、1本鎖のDNAにする(ディナチ
ュレーション工程)。次に増幅させたい領域を挟む約2
0塩基のプライマーをハイブリダイズさせる(アニーリ
ング工程)。次に4種類のデオキシリボヌクレオチド三
リン酸(dNTP)の共存下にDNAポリメラーゼを作
用させ、プライマーの伸長反応を行う(ポリメライゼー
ション工程)。上記の一連の反応サイクルを繰り返すこ
とによって、目的とするDNA領域が理論上2n (但
し、nはサイクル数)と指数関数的に増幅される。プラ
イマーの伸長反応は通常、公知の耐熱性DNAポリメラ
ーゼが用いられる。鎖長反応生成物の鋳型からの分離操
作は種々の公知の方法により行なわれるが、熱変性によ
り行なうのが好ましい。 【0010】PCRに用いる検体中の標的DNA量は、
ngオーダ〜最大限1μgであり、プライマーの濃度は
それに応じて適宜決められる。PCRの条件はプライマ
ーの配列により異なるが、ディナチュレーション工程は
通常90〜95℃で0.5〜1分、アニーリング工程は
通常37〜72℃で1〜3分、ポリメライゼーション工
程が通常60〜72℃で1〜3分の条件である。これら
の工程を1サイクルとしたPCRの至適サイクル数は、
サンプル中に存在する標的DNAの初期濃度により異な
るが、通常25〜45サイクル行なう。 【0011】増幅されたDNA断片の検出法は、種々の
公知の方法が知られており、例えばアガロースゲル担体
中でDNA断片を泳動させ、その後臭化エチジウムでD
NAを染色する方法や標識プローブを用いたハイブリダ
イゼーションにより検出する方法などが挙げられる。 【0012】 【実施例】以下、実施例により本発明をさらに詳しく説
明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定さ
れるものではない。 実施例1 試料には100mgのヒト糞便を用いた。試料の溶解
は、0.1MのEDTA、0.1%のSDSで行い、試
料の抽出には、フェノール・クロロホルムを用いた。フ
ェノール・クロロホルム処理後、エタノールによる沈
澱、70%エタノールによる脱塩、乾燥した後、1ml
のTE(10mMのトリス−HCl、1mMのEDT
A、pH8.0)に溶解した。得られた糞便抽出液にア
グロバクテリウム リゾゲネス(Agrobacter
ium rhizogenes)A4株(以下、単にA
4株と省略する)のDNA(100コピー)、各種のポ
リアミンおよびPCR反応液を添加した後、PCRを行
った。 【0013】本実施例において増幅を行なうDNAとし
ては、A4株よりフェノール・クロロホルム法により抽
出した精製DNAを使用した。PCRのプライマーは、
A4株の毛状根誘導遺伝子領域内に位置するプラス鎖の
塩基配列を持つオリゴヌクレオチド(P1 、配列番号:
1)、およびマイナス鎖の塩基配列を持つオリゴヌクレ
オチド(P2 、配列番号:2)であり、その間に202
bpの塩基配列を挟んでいるものを使用した。 P1 :5’GTTAGGCGTGCAAAGGCCAA
G 3’ P2 :5’GCGTATTAATCCCGTAGGTC
3’ 【0014】PCR反応液は、各プライマーを1μM、
4種のdNTPを200μM含む反応液(10mMのト
リス−HCl、pH8.3、50mM KCl、1.5
mMのMgCl2 、0.01%(w/v)ゼラチン、
0.75単位の耐熱性DNAポリメラーゼ〔Ampli
Taq,Perkin Elmer Cetus社
製〕)を用いた。PCR反応液の全体量は21μlと
し、糞便抽出液、A4株のDNAおよびポリアミンは、
それぞれ3μlずつ添加した。 【0015】PCRは、94℃1分30秒間の熱変性の
後、94℃1分間の熱変性、55℃1分間のアニーリン
グ、そして72℃1分間のDNA鎖伸長反応を1サイク
ルとして40サイクルの反応を行い、最後に72℃、7
分間のDNA鎖伸長反応を行うことにより、2種類のプ
ライマーの結合点の間に位置するDNA断片の増幅を行
った。PCR終了後、反応液5μlを用いて3%アガロ
ースを含むTAE(40mMのトリス−酢酸塩,1mM
のEDTA,pH8.0)液中で電気泳動を行い、臭化
エチジウムによるDNAの染色と検出を行った。 【0016】以下に、本実施例の結果を示す。図1およ
び図2は100mgのヒト糞便よりフェノール・クロロ
ホルム法により精製し、1mlのTEに溶解して得られ
た糞便抽出液3μl、100コピーのA4株精製DNA
3μl、各種のポリアミン3μlを混合した後、PCR
反応液21μlを加え、PCRを行った場合の結果であ
る。各図中、レーン1〜5はポリアミンの添加量がそれ
ぞれ異なり、レーン1は10mM、レーン2は3.2m
M、レーン3は1mM、レーン4は0.32mM、レー
ン5は0.1mM、レーン6は0.032mM、レーン
7は0.01mMの濃度に最終的になるようにポリアミ
ンを添加した。レーンSCは上記反応液中のポリアミン
のかわりに蒸留水(3μl)を加えたサンプルコントロ
ールであり、レーンPCは反応液中に糞便抽出液とポリ
アミンのかわりに、それぞれTEと蒸留水を加えた陽性
コントロールであり、レーンNCは反応液中に糞便抽出
液、A4株精製DNAとポリアミンのかわりにTEと蒸
留水を加えた陰性コントロールである。なおレーンM
は、分子量マーカーであり、制限酵素HicIIで切断し
た250ngのφ×174−RF DNAを用いた。 【0017】図中のA〜Eは、本実施例において添加し
た各種ポリアミンの種類を示している。 図1;A エチレンジアミン、B トリメチレンジアミ
ン、C スペルミジン、D トリエチレンテトラミン、
E スペルミン 図2;A スペルミジン、B ジエチレントリアミン、
C トリエチレンテトラミン、D テトラエチレンペン
タミン、E ペンタエチレンヘキサミン 図1および図2の結果から明らかなように、各図におい
てSCのレーン、すなわちA4株精製DNAに糞便抽出
液を加えた場合、PCRが抑制され、PCR産物が検出
されていない。しかし、各図において上記各種ポリアミ
ンを加えると、いずれのポリアミンを加えた場合も糞便
由来の不純物によるPCR抑制が解除され、PCR産物
が検出されるようになった事を示している。 【0018】 【発明の効果】本発明により、サンプル中に混入する夾
雑物による核酸合成の抑制が軽減され、生体または環境
由来の試料から目的の遺伝子を効率よく合成することが
可能となった。 【0019】 【配列表】 配列番号:1 配列の長さ:21 配列の型:核酸 鎖の数:1本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 合成DNA アンチセンス:No 配列 GTT AGG CGT GCA AAG GCC AAG 21 【0020】配列番号:2 配列の長さ:20 配列の型:核酸 鎖の数:1本鎖 トポロジー:直鎖状 配列の種類:他の核酸 合成DNA アンチセンス:No 配列 GCG TAT TAA TCC CGT AGG TC 20
【図面の簡単な説明】 【図1】図1は各種ポリアミン(A〜E)を各種濃度
(10mM,3.2mM,1mM,0.32mM,0.
1mM)で添加した後にPCR反応を行った場合の電気
泳動図である。なお、図中のMレーンは分子量マーカー
を、SCレーンはサンプルコントロールを、PCレーン
は陽性コントロールを、NCレーンは陰性コントロール
を示す。 【図2】図2は各種ポリアミン(A〜E)を各種濃度
(10mM,3.2mM,1mM,0.32mM,0.
1mM,0.032mM,0.01mM)で添加した後
にPCR反応を行った場合の電気泳動図である。なお、
図中のMレーンは分子量マーカーを、SCレーンはサン
プルコントロールを、PCレーンは陽性コントロール
を、NCレーンは陰性コントロールを示す。

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 試料から目的の遺伝子を増幅する核酸合
    成法において、反応系内にポリアミンを添加して行なう
    ことを特徴とする核酸合成法。
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