JP2015213439A - エンテロトキシンb、c、d又はe遺伝子を有する黄色ブドウ球菌又は該遺伝子の検出のためのlamp用プライマー及びこれを用いたエンテロトキシンb、c、d又はe遺伝子を有する黄色ブドウ球菌又は該遺伝子の検出法 - Google Patents
エンテロトキシンb、c、d又はe遺伝子を有する黄色ブドウ球菌又は該遺伝子の検出のためのlamp用プライマー及びこれを用いたエンテロトキシンb、c、d又はe遺伝子を有する黄色ブドウ球菌又は該遺伝子の検出法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】黄色ブドウ球菌エンテロトキシンB、C、D又はE遺伝子を有する黄色ブドウ球菌又は該遺伝子を環状型等温増幅反応(LAMP)法で検出する方法及び当該方法に使用されるプライマーセット並びにキットを提供する。
【解決手段】黄色ブドウ球菌エンテロトキシンB、C、D又はE遺伝子を有する黄色ブドウ球菌をLAMP法で検出するための、特定の配列を有するオリゴヌクレオチドセットからなるプライマーセット、該プライマーセットを含む、エンテロトキシンB、C、D又はE遺伝子を有する黄色ブドウ球菌又は該遺伝子の検出用キット、及びエンテロトキシンB、C、D又はE遺伝子を有する黄色ブドウ球菌又は該遺伝子を検出する方法。
【選択図】図9
【解決手段】黄色ブドウ球菌エンテロトキシンB、C、D又はE遺伝子を有する黄色ブドウ球菌をLAMP法で検出するための、特定の配列を有するオリゴヌクレオチドセットからなるプライマーセット、該プライマーセットを含む、エンテロトキシンB、C、D又はE遺伝子を有する黄色ブドウ球菌又は該遺伝子の検出用キット、及びエンテロトキシンB、C、D又はE遺伝子を有する黄色ブドウ球菌又は該遺伝子を検出する方法。
【選択図】図9
Description
本発明は、エンテロトキシンB、C、D又はE遺伝子を有する黄色ブドウ球菌を、環状型等温増幅反応(Loop-Mediated Isothermal Amplication:以下「LAMP」という。)法で検出する方法や、当該方法に用いるためのプライマーセット等に関する。
黄色ブドウ球菌による食中毒は、代表的な毒素型食中毒で、黄色ブドウ球菌が食品中で増殖する時に産生するエンテロトキシン(腸管毒)を食品と共に接種することによって起こる。ブドウ球菌が産生するエンテロトキシンは熱に強く100℃30分間の加熱でも失活しない。また、胃液やトリプシンなどの消化酵素によっても分解されない。したがって、食品中で菌が増殖しエンテロトキシンが産生されると、調理で菌が死滅しても毒素の分解は困難であり、嘔吐、腹痛、下痢等の中毒を発症させる。
ブドウ球菌が産生するエンテロトキシンには抗原性の異なる型があり、抗原型が確認された順にSEA(エンテロトキシンA)、SEB(エンテロトキシンB)、SEC(エンテロトキシンC)、〜とアルファベット順に命令されている。
食中毒の事例には、SEA単独あるいはSEAを含むいくつかのエンテロトキシン複合型によるものが全体の80〜85%を占めるが、SEB、SEC、SED及びSEEを含めると90%を超える食中毒事例を占めることが明らかにされている(非特許文献1)。
食中毒の事例には、SEA単独あるいはSEAを含むいくつかのエンテロトキシン複合型によるものが全体の80〜85%を占めるが、SEB、SEC、SED及びSEEを含めると90%を超える食中毒事例を占めることが明らかにされている(非特許文献1)。
黄色ブドウ球菌は、人をとりまく環境や各種動物に広く分布しており、健康人の鼻空、咽頭(のど)、腸管、皮膚(手指)、毛髪などに常在している。黄色ブドウ球菌による食中毒は、この菌が常在細菌であり、手指を介して食品を汚染することから、気温の低い冬季でも発生するのが特徴である。
黄色ブドウ球菌は2000年夏に発生した低脂肪乳などによる大規模な食中毒事件のように、衛生管理を怠ると思わぬ被害を招くことになり、黄色ブドウ球菌は依然として食品衛生上重要な原因菌と考えられている。
従来食品は、培養法による微生物検査が行われている。黄色ブドウ球菌についても、培養法によって検査されているが、検出までに24時間〜48時間の時間を要し、同定を行う場合はさらに時間が必要となる。また、黄色ブドウ球菌のエンテロトキシンの検出は、酵素免疫法のELISA法が行われている。これらの検査法は時間と多くの労力を必要とすることから、簡易で迅速な微生物検査法が開発されてきている。特に、迅速性、検出感度に優れている遺伝子増幅法による検査法が注目されて来ている。
現在報告されている遺伝子増幅法にPCR法がある。PCR法は、相補的な2本鎖の核酸を1本鎖の核酸に変性し、次に1本鎖核酸にプライマーを相補的に結合させ、耐熱性DNAポリメレース(合成酵素)により結合したプライマーからDNAを伸張させて、増幅したい遺伝子配列の特定領域を2倍に増幅する。この一連の工程を繰返し行うことにより遺伝子配列の特定領域を指数関数的に増幅することができる。
しかし、PCR法は各段階で反応温度が異なる為、反応の段階に応じて温度を制御する必要があり、また、増幅産物をアガロース電気泳動にかけて、細菌の持つ遺伝子配列を検出しなければならない。
すなわち、PCRを用いた細菌の検出法は、反応を行うために特別な大型機器を必要とし、最終判定にはPCR産物を確認するために電気泳動の特殊な方法や、紫外線照射装置などが必要となる。また、このPCR法による検査は、開始から判定まで4〜5時間を要し、生産現場や食品工場で用いるためには更に簡便で迅速な方法が求められている。
PCR法に替わる遺伝子増幅法として、ループ媒介等温増幅法(Loop-mediated isothermal AMPlification:LAMP法)が開発された。LAMP法は鋳型となるヌクレオチドに自身の3´末端が常に試料に由来する領域に対してアニールするために、塩基配列の相補的結合によるチェック機構が繰り返し機能し、その結果、特異性の高い遺伝子増幅反応が可能となっている(特許文献1、非特許文献2、非特許文献3)。
LAMP法は、標的DNAの6つの領域の配列に基づいて4つのプライマー(一般にForward Inner Primer(FIP)、Backward Inner Primer(BIP)、F3およびB3と称する)を用いる遺伝子増幅技術であり、耐熱性DNAポリメレースではなく、鎖置換型DNAポリメレースを用い、65℃付近の一定温度で、増幅から検出までを1ステップで行うことができる。増幅効率が高く、また、極めて高い特異性を持つため、目的とするDNA配列は、増幅産物を電気泳動することなく濁度あるいは蛍光だけで判定することができる。そのため、LAMP法は、反応を行うために特別な大型機器を必要とせず、反応時間も短く簡便であり、迅速な結果が得られると考えられる(非特許文献3)。
これまでに、黄色ブドウ球菌エンテロトキシンAに関しては、該配列SEA上の特異的塩基配列に基づいて設計された新規プライマーと該プライマーを用いたLAMP法によるエンテロトキシンA産生黄色ブドウ球菌の遺伝子検出法に関する発明がなされている(特許文献2、非特許文献4)。
しかしながら、これまで、黄色ブドウ球菌エンテロトキシンB、C、D又はE遺伝子を特異的にLAMP法で検出するための標的配列及びプライマーは見出されていなかった。
食品衛生研究 31巻、第3号、37−45、1981年発行
Notomi, T. et al., Nucleic Acids research, 2000, 28(12), e63
牛久保宏「LAMP法の原理−遺伝子の簡易・迅速な増幅法−」ウイルス第54巻第1号, p. 107-112, 2004
北海道農業センター 「LAMP法を用いた生乳中のエンテロトキシンA産生黄色ブドウ球菌検出技術」、新しい研究成果 2007年度、84-89, 2007
Uchiyama T., Imanishi K., Miyoshi‐Akiyama T., Kato H. Staphylococcal superantigens and the diseases they cause. In: Alouf J.E., Popoof M.R., eds. Comprehensive Sourcebook of Bacterial Protein Toxins, 3rd edn. Burlington Academic Press pp. 830-843, 2006.
本発明は、エンテロトキシンB、C、D又はE遺伝子を有する黄色ブドウ球菌又は該遺伝子をLAMP法で検出する方法及び当該方法に使用されるプライマーセット並びにキット等を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するために研究を重ねた結果、エンテロトキシンB、C、D又はE遺伝子を有する黄色ブドウ球菌を特異的に検出するのに最適な該遺伝子上の領域を特定し、当該領域をLAMP法により増幅できるプライマーを設計し、これを合成して実際に当該領域を特異的に増幅できることを確認して本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は以下の各態様に係る。
[態様1]
以下の(1)〜(4)のいずれかのオリゴヌクレオチドのセットから成る、黄色ブドウ球菌エンテロトキシンB、C、D又はE遺伝子を有する黄色ブドウ球菌又は該遺伝子を検出するためのLAMP用プライマーセット:
オリゴヌクレオチドセット(1):
(1a)配列番号:2〜5で表される塩基配列からなる4つのオリゴヌクレオチドのセット;
(1b)(1a)に記載のオリゴヌクレオチドの少なくとも一つのオリゴヌクレオチドに代えて、該オリゴヌクレオチドの相補鎖とストリンジェントな条件でハイブリダイズし、且つLAMP法用プライマーセットとして機能するオリゴヌクレオチドを含む4つのオリゴヌクレオチドのセット;若しくは、
(1c)(1a)又は(1b)に記載のオリゴヌクレオチドの少なくとも一つのオリゴヌクレオチドに代えて、該オリゴヌクレオチドにおいて1から数個の塩基が欠失、付加又は置換され、且つLAMP法用プライマーセットとして機能するオリゴヌクレオチドを含む4つのオリゴヌクレオチドのセット;
オリゴヌクレオチドセット(2):
(2a)配列番号:7〜10で表される塩基配列からなる4つのオリゴヌクレオチドのセット;
(2b)(2a)に記載の相補鎖とオリゴヌクレオチドの少なくとも一つのオリゴヌクレオチドに代えて、該オリゴヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、且つLAMP法用プライマーセットとして機能するオリゴヌクレオチドを含む4つのオリゴヌクレオチドのセット;若しくは、
(2c)(2a)若しくは(2b)に記載のオリゴヌクレオチドの少なくとも一つのオリゴヌクレオチドに代えて、該オリゴヌクレオチドにおいて1から数個の塩基が欠失、付加又は置換され、且つLAMP法用プライマーセットとして機能するオリゴヌクレオチドを含む4つのオリゴヌクレオチドのセット;
オリゴヌクレオチドセット(3):
(3a)配列番号:12〜15で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドのセット;
(3b)(3a)に記載のオリゴヌクレオチドの少なくとも一つのオリゴヌクレオチドに代えて、該オリゴヌクレオチドの相補鎖とストリンジェントな条件でハイブリダイズし、且つLAMP法用プライマーセットとして機能するオリゴヌクレオチドを含む4つのオリゴヌクレオチドのセット;若しくは、
(3c)(3a)若しくは(3b)に記載のオリゴヌクレオチドの少なくとも一つのオリゴヌクレオチドに代えて、該オリゴヌクレオチドにおいて1から数個の塩基が欠失、付加又は置換され、且つLAMP法用プライマーセットとして機能するオリゴヌクレオチドを含む4つのオリゴヌクレオチドのセット;又は、
オリゴヌクレオチドセット(4):
(4a)配列番号:17〜20で表される塩基配列からなる4つのオリゴヌクレオチドのセット;
(4b)(4a)に記載のオリゴヌクレオチドの少なくとも一つのオリゴヌクレオチドに代えて、該オリゴヌクレオチドの相補鎖とストリンジェントな条件でハイブリダイズし、且つLAMP法用プライマーセットとして機能するオリゴヌクレオチドを含む4つのオリゴヌクレオチドのセット;若しくは、
(4c)(4a)若しくは(4b)に記載のオリゴヌクレオチドの少なくとも一つのオリゴヌクレオチドに代えて、該オリゴヌクレオチドにおいて1から数個の塩基が欠失、付加又は置換され、且つLAMP法用プライマーセットとして機能するオリゴヌクレオチドを含む4つのオリゴヌクレオチドのセット;
[態様2]
態様1記載のプライマーセットを含む、エンテロトキシンB、C、D又はE遺伝子を有する黄色ブドウ球菌又は該遺伝子の検出用キット。
[態様3]
エンテロトキシンB、C、D又はE遺伝子を有する黄色ブドウ球菌又は該遺伝子を検出する方法であって、
試料中の核酸を抽出する工程と、
LAMP法により、以下の塩基配列のいずれかに含まれる領域:
(1)配列番号1における758〜917位の塩基配列;
(2)配列番号6における171〜215位の塩基配列;
(3)配列番号11における400〜560位の塩基配列;又は
(4)配列番号16における384〜437位の塩基配列;
を検出する工程と、
を含む前記方法。
[態様4]
前記LAMP法において態様1記載のプライマーセットを使用する、態様3に記載の方法。
[態様5]
プライマーを用いる反応を63℃で行なう、請求項3又は4に記載の方法。
即ち、本発明は以下の各態様に係る。
[態様1]
以下の(1)〜(4)のいずれかのオリゴヌクレオチドのセットから成る、黄色ブドウ球菌エンテロトキシンB、C、D又はE遺伝子を有する黄色ブドウ球菌又は該遺伝子を検出するためのLAMP用プライマーセット:
オリゴヌクレオチドセット(1):
(1a)配列番号:2〜5で表される塩基配列からなる4つのオリゴヌクレオチドのセット;
(1b)(1a)に記載のオリゴヌクレオチドの少なくとも一つのオリゴヌクレオチドに代えて、該オリゴヌクレオチドの相補鎖とストリンジェントな条件でハイブリダイズし、且つLAMP法用プライマーセットとして機能するオリゴヌクレオチドを含む4つのオリゴヌクレオチドのセット;若しくは、
(1c)(1a)又は(1b)に記載のオリゴヌクレオチドの少なくとも一つのオリゴヌクレオチドに代えて、該オリゴヌクレオチドにおいて1から数個の塩基が欠失、付加又は置換され、且つLAMP法用プライマーセットとして機能するオリゴヌクレオチドを含む4つのオリゴヌクレオチドのセット;
オリゴヌクレオチドセット(2):
(2a)配列番号:7〜10で表される塩基配列からなる4つのオリゴヌクレオチドのセット;
(2b)(2a)に記載の相補鎖とオリゴヌクレオチドの少なくとも一つのオリゴヌクレオチドに代えて、該オリゴヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、且つLAMP法用プライマーセットとして機能するオリゴヌクレオチドを含む4つのオリゴヌクレオチドのセット;若しくは、
(2c)(2a)若しくは(2b)に記載のオリゴヌクレオチドの少なくとも一つのオリゴヌクレオチドに代えて、該オリゴヌクレオチドにおいて1から数個の塩基が欠失、付加又は置換され、且つLAMP法用プライマーセットとして機能するオリゴヌクレオチドを含む4つのオリゴヌクレオチドのセット;
オリゴヌクレオチドセット(3):
(3a)配列番号:12〜15で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドのセット;
(3b)(3a)に記載のオリゴヌクレオチドの少なくとも一つのオリゴヌクレオチドに代えて、該オリゴヌクレオチドの相補鎖とストリンジェントな条件でハイブリダイズし、且つLAMP法用プライマーセットとして機能するオリゴヌクレオチドを含む4つのオリゴヌクレオチドのセット;若しくは、
(3c)(3a)若しくは(3b)に記載のオリゴヌクレオチドの少なくとも一つのオリゴヌクレオチドに代えて、該オリゴヌクレオチドにおいて1から数個の塩基が欠失、付加又は置換され、且つLAMP法用プライマーセットとして機能するオリゴヌクレオチドを含む4つのオリゴヌクレオチドのセット;又は、
オリゴヌクレオチドセット(4):
(4a)配列番号:17〜20で表される塩基配列からなる4つのオリゴヌクレオチドのセット;
(4b)(4a)に記載のオリゴヌクレオチドの少なくとも一つのオリゴヌクレオチドに代えて、該オリゴヌクレオチドの相補鎖とストリンジェントな条件でハイブリダイズし、且つLAMP法用プライマーセットとして機能するオリゴヌクレオチドを含む4つのオリゴヌクレオチドのセット;若しくは、
(4c)(4a)若しくは(4b)に記載のオリゴヌクレオチドの少なくとも一つのオリゴヌクレオチドに代えて、該オリゴヌクレオチドにおいて1から数個の塩基が欠失、付加又は置換され、且つLAMP法用プライマーセットとして機能するオリゴヌクレオチドを含む4つのオリゴヌクレオチドのセット;
[態様2]
態様1記載のプライマーセットを含む、エンテロトキシンB、C、D又はE遺伝子を有する黄色ブドウ球菌又は該遺伝子の検出用キット。
[態様3]
エンテロトキシンB、C、D又はE遺伝子を有する黄色ブドウ球菌又は該遺伝子を検出する方法であって、
試料中の核酸を抽出する工程と、
LAMP法により、以下の塩基配列のいずれかに含まれる領域:
(1)配列番号1における758〜917位の塩基配列;
(2)配列番号6における171〜215位の塩基配列;
(3)配列番号11における400〜560位の塩基配列;又は
(4)配列番号16における384〜437位の塩基配列;
を検出する工程と、
を含む前記方法。
[態様4]
前記LAMP法において態様1記載のプライマーセットを使用する、態様3に記載の方法。
[態様5]
プライマーを用いる反応を63℃で行なう、請求項3又は4に記載の方法。
本発明によれば、LAMP法を利用して、試料中の黄色ブドウ球菌エンテロトキシンB、C、D又はE遺伝子を有する黄色ブドウ球菌又は該遺伝子の存在を、特異的に、即ち、他の細菌や他の抗原性を有するエンテロトキシン産生黄色ブドウ球菌と区別して、簡便且つ迅速に検出することができる。
本発明に係るプライマーセットは、黄色ブドウ球菌エンテロトキシンB、C、D又はE遺伝子を有する黄色ブドウ球菌をLAMP法で検出するためのセットである。
上記のとおり、LAMP法は、標的DNAの6つの領域の配列に基づいて4つのプライマー(一般にForward Inner Primer(FIP)、Backward Inner Primer(BIP)、F3およびB3と称する)を用意し、鎖置換反応を利用して等温で核酸を増幅する手法である。因みに、LAMP法開発の最初の論文として、参照論文:Notomi T, Okayama H, Masubuchi H, Yonekawa T, Watanabe K, Amino N, Hase T. Loop-mediated isothermal amplification of DNA. Nucleic Acids Res. 15;28(12):E63, 2000 を挙げることができる。以下、LAMP法をより詳細に説明する。
まず、標的DNAについて、3'末端側からF3c、F2c、F1cという3つの領域を、標的DNAの5'末端側に向かってB1、B2、B3という領域をそれぞれ規定し、この6領域に対し、4種類のプライマー、すなわちFIP、F3、BIPおよびB3を設計する。ここで、F3c、F2c、F1cの各領域に相補的な領域はそれぞれF3、F2、F1と呼び、 またB1、B2、B3の各領域に相補的な領域はそれぞれB1c、B2c、B3cと呼ぶ。
FIPは、標的DNAのF2c領域と相補的なF2領域を3’末端側にもち、5’末端側に標的DNAのF1c領域と同じ配列をもつように設計されたプライマーである。
F3は、標的DNAのF3c領域と相補的なF3領域をもつように設計されたプライマーである。
BIPは、標的DNAのB2c領域と相補的なB2領域を3’末端側にもち、5’末端側に標的遺伝子のB1c領域と同じ配列をもつように設計されたプライマーである。
B3は、標的DNAのB3c領域と相補的なB3領域をもつように設計されたプライマーである。
F3は、標的DNAのF3c領域と相補的なF3領域をもつように設計されたプライマーである。
BIPは、標的DNAのB2c領域と相補的なB2領域を3’末端側にもち、5’末端側に標的遺伝子のB1c領域と同じ配列をもつように設計されたプライマーである。
B3は、標的DNAのB3c領域と相補的なB3領域をもつように設計されたプライマーである。
標的DNAを、4つのプライマー、鎖置換型DNAポリメラーゼ、及び基質(dNTPs)と反応バッファー中で反応させることにより、等温(約60〜65℃)で、極めて高い増幅効率及び極めて高い特異性をもって増幅される。鎖置換型DNAポリメラーゼは、PCR法で用いられる耐熱性DNAポリメラーゼに比較して安価である。また、鎖置換型DNAポリメラーゼは、鋳型DNAの二本鎖をほどきながらDNA合成を行うので、LAMP法ではPCR法のように熱変性によって二本鎖DNAを一本鎖DNAにする必要がない。
更に、B1領域とB2領域の間、又はF1領域とF2領域の間に相補的な配列をもつループプライマー(それぞれLBプライマー、LFプライマーと称する。)を用いることにより、DNA合成の起点を増やして増幅効率を上昇させることができる。
FIPおよびBIPに制限酵素部位を導入すると、反応後に増幅産物を制限酵素で処理することによって、電気泳動後に1つのバンドとして観察することができる。なお、標的DNAに制限酵素部位があれば、プライマーに人為的に制限酵素部位を導入しなくても同様の効果が得られる。
或いは、増幅反応の副産物としてピロリン酸マグネシウムが生成されるので、反応バッファーの白濁を目視で確認することにより、標的遺伝子の有無を判定することもできる。
以上は、標的がDNAである場合について記載したが、標的がRNAである場合は、反応バッファーに逆転写酵素を加えることでDNAと同様に増幅反応を行うことができる。
ここで、LAMP法が成功するか否かは、プライマーの設計による。プライマー設計においては、プライマー間距離、各プライマー領域のTm値、各プライマー領域の末端安定性、GC含量、二次構造等が重要であり、これを設計するための設計支援ソフトも存在するものの、ソフトで設計したプライマーが高効率且つ高特異的に標的核酸を増幅するとは限らない。特に、LAMP法を微生物の検出等に用いる場合には、まず最適な標的配列を特定し、その配列を特異的に増幅できるプライマーを作製しなければならない。
黄色ブドウ球菌エンテロトキシンB、C、D又はEには、夫々、遺伝子及びタンパク質上で部分的に異なる20種類以上の亜型が存在することが知られている。これら亜型には共通な部位にはわずかな塩基置換があることも知られている(非特許文献5)。
そこで、本発明者は、本発明におけるLAMP法に用いるプライマー設計に際して、これまでに報告されている各亜型の遺伝子を有する黄色ブドウ球菌から、各エンテロトキシンについて各々10〜60の塩基配列を比較し、黄色ブドウ球菌エンテロトキシンB、C、D又はEのそれぞれにおいて、各エンテロトキシンB、C、D又はEのおけるこれら亜型において共通する配列を最も多く含む塩基配列を選択した。
このようにして選択された黄色ブドウ球菌エンテロトキシンB、C、D又はE遺伝子の塩基配列(夫々、配列番号1、6、11及び16)を図1〜図4に示す。尚、各塩基配列は以下の文献に記載されている。
エンテロトキシンB遺伝子配列(配列番号1):Jones,C.L. and Khan,S.A. Nucleotide sequence of the enterotoxin B gene from Staphylococcus aureus. J. Bacteriol. 166 (1), 29-33, 1986.
エンテロトキシンC遺伝子配列(配列番号6):Bohach,G.A. and Schlievert,P.M. Nucleotide sequence of the staphylococcal enterotoxin C1 gene and relatedness to other pyrogenic toxins. Mol. Gen. Genet. 209 (1), 15-20, 1987.
エンテロトキシンD遺伝子配列(配列番号11):Bayles,K.W. and Iandolo,J.J. Genetic and molecular analyses of the gene encoding staphylococcal enterotoxin D. J. Bacteriol. 171 (9), 4799-4806, 1989.
エンテロトキシンE遺伝子配列(配列番号16):Couch,J.L., Soltis,M.T. and Betley,M.J. Cloning and nucleotide sequence of the type E staphylococcal enterotoxin gene. J. Bacteriol. 170 (7), 2954-2960, 1988.
エンテロトキシンB遺伝子配列(配列番号1):Jones,C.L. and Khan,S.A. Nucleotide sequence of the enterotoxin B gene from Staphylococcus aureus. J. Bacteriol. 166 (1), 29-33, 1986.
エンテロトキシンC遺伝子配列(配列番号6):Bohach,G.A. and Schlievert,P.M. Nucleotide sequence of the staphylococcal enterotoxin C1 gene and relatedness to other pyrogenic toxins. Mol. Gen. Genet. 209 (1), 15-20, 1987.
エンテロトキシンD遺伝子配列(配列番号11):Bayles,K.W. and Iandolo,J.J. Genetic and molecular analyses of the gene encoding staphylococcal enterotoxin D. J. Bacteriol. 171 (9), 4799-4806, 1989.
エンテロトキシンE遺伝子配列(配列番号16):Couch,J.L., Soltis,M.T. and Betley,M.J. Cloning and nucleotide sequence of the type E staphylococcal enterotoxin gene. J. Bacteriol. 170 (7), 2954-2960, 1988.
本発明者は、上記核配列番号に示された塩基配列に基づいて、本発明の各プライマーセットに含まれるプライマーの設計を行った。
より具体的には、プライマーの設計にあたっては上記塩基配列を標的に、各領域のTm値が約58〜65℃になる部分を選択し、またF2〜B2領域間が10〜120bp程度になるようにした。LAMPプライマーの設計の上でポイントとなるこれら幾つかの条件を満たす領域を絞り込み黄色ブドウ球菌エンテロトキシンB、C、D又はE遺伝子検出用プライマーを設定した。
即ち、本発明のプライマーセットの第一の態様は、以下の通りである。
オリゴヌクレオチドセット(1a)(黄色ブドウ球菌エンテロトキシンB遺伝子を有する黄色ブドウ球菌又は該遺伝子の検出用のLAMP用プライマーセット)
オリゴヌクレオチドセット(2a)(黄色ブドウ球菌エンテロトキシンC遺伝子を有する黄色ブドウ球菌又は該遺伝子の検出用のLAMP用プライマーセット)
オリゴヌクレオチドセット(3a)(黄色ブドウ球菌エンテロトキシンD遺伝子を有する黄色ブドウ球菌又は該遺伝子の検出用のLAMP用プライマーセット)
オリゴヌクレオチドセット(4a)(黄色ブドウ球菌エンテロトキシンD遺伝子を有する黄色ブドウ球菌又は該遺伝子の検出用のLAMP用プライマーセット)
本発明のプライマーセットは、上述した第一の態様における各オリゴヌクレオチドセットにおいて、それらに含まれる少なくとも一つのオリゴヌクレオチドに代えて、(b)該オリゴヌクレオチドの相補鎖とストリンジェントな条件でハイブリダイズし、且つLAMP法用プライマーセットとして機能オリゴヌクレオチド、又は、(c)(a)若しくは(b)に記載の少なくとも一つのオリゴヌクレオチドに代えて、該オリゴヌクレオチドにおいて1から数個の塩基が欠失、付加又は置換され、且つLAMP法用プライマーセットとして機能するオリゴヌクレオチドを含むことが出来る。
上記の通り、LAMP法は、FIP、BIP、F3、B3の4つのプライマーで実施することができるが、ループプライマーを用いることにより、DNA合成の起点を増やして増幅効率を上昇させることも可能である。ループプライマーとは、LAMP法において、ダンベル構造の5'末端側のループの1本鎖部分であるB1領域とB2領域の間に相補的な配列を有するプライマー(LBプライマー)、または、ダンベル構造の5'末端側のループの1本鎖部分であるF1領域とF2領域の間に相補的な配列を有するプライマー(LFプライマー)である。
更に、ループプライマーとして、上記のいずれかのループプライマーの相補鎖とストリンジェントな条件でハイブリダイズし、且つLAMP法用プライマーとして機能するオリゴヌクレオチド;若しくは、これらのオリゴヌクレオチドにおいて1から数個の塩基が欠失、付加又は置換され、且つLAMP法用プライマーとして機能するオリゴヌクレオチドを用いることが出来る。
ここで、ストリンジェントな条件とは、例えば、5%Denhardt's Solution(0.1%Ficoll(Pharmacia社)、0.1%ポリビニルピロリドン、0.1%ウシ血清アルブミンを含む)と、0.5%SDSと、100μg/mlサケ精子DNAを含む6×SSC溶液(1×SSCは0.15M NaCl、15mM クエン酸ナトリウム)中において65℃で洗浄する条件をいう。ストリンジェンシーは塩濃度(イオン強度)、温度等によって制御することができ、ストリンジェンシーがより高い条件、即ち塩濃度がより低く、温度がより高い条件では、同一性が十分に高い(例えば、約85%以上、好ましくは約90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上)DNAのみがハイブリダイズする。従って、かかる条件下で、上記第一の態様におけるプライマーセットに含まれる各オリゴヌクレオチドと、それぞれストリンジェントな条件でハイブリダイズするオリゴヌクレオチドは、第一の態様におけるオリゴヌクレオチドと同様に、LAMP法のプライマーとして機能する。当業者であれば、温度や塩濃度を調整することによって、ストリンジェントな条件を適宜選択することができる。
上記オリゴヌクレオチドにおいて、「1から数個」とは、例えば、1個、2個、3個、4個、又は5個から選択することができ、欠失、付加又は置換される部位は、オリゴヌクレオチドの5'末端又は5'末端でもよいし、末端以外の部分であってもよい。
各プライマーに、例えば、制限酵素部位を導入してもよい。制限酵素部位を導入すると、LAMP法の反応後に増幅産物を制限酵素で処理することによって、電気泳動後に一つのバンドとして検出することができる。
(キット)
本明細書において、エンテロトキシンB、C、D又はE遺伝子を有する黄色ブドウ球菌又は該遺伝子の検出用キットは、本発明に係るプライマーセットを含む。かかるキットは、例えば、プライマーセットのほか、反応溶液、鎖置換型DNAポリメラーゼ、蒸留水、陽性コントロール、陰性コンロトール、取扱説明書等を含んでいてもよい。さらに、試料から核酸を抽出するための試薬や器具、各種反応用チューブ、チップ等を備えていてもよい。適当な市販品、例えば、栄研化学社から市販されているLoopamp DNA増幅試薬キット(但し、プライマーセットを除く)を利用することが出来る。
本明細書において、エンテロトキシンB、C、D又はE遺伝子を有する黄色ブドウ球菌又は該遺伝子の検出用キットは、本発明に係るプライマーセットを含む。かかるキットは、例えば、プライマーセットのほか、反応溶液、鎖置換型DNAポリメラーゼ、蒸留水、陽性コントロール、陰性コンロトール、取扱説明書等を含んでいてもよい。さらに、試料から核酸を抽出するための試薬や器具、各種反応用チューブ、チップ等を備えていてもよい。適当な市販品、例えば、栄研化学社から市販されているLoopamp DNA増幅試薬キット(但し、プライマーセットを除く)を利用することが出来る。
また、例えば、食品中の黄色ブドウ球菌を培養して測定する場合には、増菌用培地を備えていてもよい。
かかるキットを用いれば、例えば、反応チューブに試料を添加して、LAMP用のリアルタイム濁度測定装置にセットすることにより、増幅及び増幅産物の検出を効率よく行うことができる。
かかるキットを用いれば、例えば、反応チューブに試料を添加して、LAMP用のリアルタイム濁度測定装置にセットすることにより、増幅及び増幅産物の検出を効率よく行うことができる。
(検出方法)
更に、本発明は、エンテロトキシンB、C、D又はE遺伝子を有する黄色ブドウ球菌又は該遺伝子を検出する方法であって、
試料中の核酸を抽出する工程と、
LAMP法により、以下の塩基配列のいずれかに含まれる領域(「F1c」と「B1」に挟まれた領域):
(1)配列番号1における758〜917位の塩基配列;
(2)配列番号6における171〜215位の塩基配列;
(3)配列番号11における400〜560位の塩基配列;又は
(4)配列番号16における384〜437位の塩基配列;を検出する工程と、
を含む方法に係る。
更に、本発明は、エンテロトキシンB、C、D又はE遺伝子を有する黄色ブドウ球菌又は該遺伝子を検出する方法であって、
試料中の核酸を抽出する工程と、
LAMP法により、以下の塩基配列のいずれかに含まれる領域(「F1c」と「B1」に挟まれた領域):
(1)配列番号1における758〜917位の塩基配列;
(2)配列番号6における171〜215位の塩基配列;
(3)配列番号11における400〜560位の塩基配列;又は
(4)配列番号16における384〜437位の塩基配列;を検出する工程と、
を含む方法に係る。
尚、上記の各塩基配列に含まれる領域とは、夫々の塩基配列に含まれる任意の領域を意味するが、例えば、連続した180塩基以上の領域や、連続した200塩基以上の領域等を選択することができる。
試料は、例えば、食肉、野菜、果物、乳製品、魚介類等の各種食品検体、土壌、河川・湖沼の水等の環境検体、ヒト、ウシ、ウマ等の動物由来の組織、糞便等の検体とすることができる。
これらの試料から核酸を抽出する工程は、公知の方法又はそれに準ずる方法で行うことができるが、例えば、DNAをアルカリ熱抽出する方法で行うことができる。この場合、例えば、試料をアルカリ溶液中で加熱し、遠心処理を行った後、上清をLAMP法に使用する。LAMP法に供する前に核酸の濃縮を行ってもよい。
核酸の抽出は、LysozymeやProteinase Kなどによって菌体を処理してから加熱する方法で行ってもよい。さらに、フェノール/クロロホルム処理、エタノール沈殿や遠心処理によりさらなる精製を行ってもよい。
また、核酸抽出に先立って、増菌培養、菌の濃縮、分離等を行ってもよい。具体的には寒天培地上で増菌培養し、形成されたコロニーからDNAを抽出する。菌の濃縮、分離は、ろ過、遠心分離などを用いた公知の方法に従って行うことができる。
また、核酸抽出に先立って、増菌培養、菌の濃縮、分離等を行ってもよい。具体的には寒天培地上で増菌培養し、形成されたコロニーからDNAを抽出する。菌の濃縮、分離は、ろ過、遠心分離などを用いた公知の方法に従って行うことができる。
LAMP法により、上記塩基配列に含まれる領域で示される領域を検出する工程は、上記上清と、プライマーセット、鎖置換型DNAポリメラーゼ、基質(dNTPs)、反応バッファーを混合し、反応させることによって行うことができる。核酸がRNAの場合は、さらに逆転写酵素を加えることにより、反応をone potで行うことができる。
LAMP法の反応後に増幅産物を制限酵素で処理することによって、アガロースゲル電気泳動法などを利用してDNA断片の有無を検出することにより、エンテロトキシンB、C、D又はE遺伝子を有する黄色ブドウ球菌又は該遺伝子の検出が可能である。
或いは、試料中に標的配列があれば、即ち、エンテロトキシンB、C、D又はE遺伝子を有する黄色ブドウ球菌が含まれていれば、増幅反応の副産物として、ピロリン酸マグネシウムにより白濁を生じる。従って、反応液の濁度の上昇を確認することにより、試料中に該黄色ブドウ球菌が含まれていたかどうかを確認することができる。濁度の上昇は、目視により確認してもよいし、専用の濁度測定装置を使用して測定してもよい。或いは、陽性コントロール及び/又は陰性コントロールを使用し、コントロールの濁度の変化と、試料の濁度の変化とを比較することにより、反応が適切に進行したかどうかを確認し、検査の精度を上げることができる。
LAMP反応における具体的な各種条件は、使用する検査キットの使用プロトコールに準じて、及び試料の種類等を考慮し、例えば、該検査キットの使用プロトコールに準じて、当業者が適宜、設定することができる。以下の実施例に示されるように、各プライマーとの反応温度は、例えば、約60〜65℃の範囲、好ましくは、約63℃の範囲、反応時間は約25〜40分の範囲とすることが出来る。
上記検出方法には、本発明のプライマーセットを用いることが好ましい。本発明のプライマーセットによれば、エンテロトキシンB、C、D又はE遺伝子を特異的に検出し、該遺伝子を有する黄色ブドウ球菌の有無を精度よく確認することができる。
本明細書において引用されるすべての特許文献及び非特許文献の開示は、全体として本明細書に参照により組み込まれる。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は何らこれに限定されるものではない。当業者は、本発明の意義を逸脱することなく様々な態様に本発明を変更することができ、かかる変更も本発明の範囲に含まれる。尚、特に記載がない場合に、実験方法・条件等は当業者に公知の通常のものを使用した。
1)プライマー
以下に示す、本発明の第一の態様のプライマーセットを使用した。
黄色ブドウ球菌エンテロトキシンD遺伝子を有する黄色ブドウ球菌又は該遺伝子を検出するための用のLAMP用プライマーセット:オリゴヌクレオチドセット(1a);
黄色ブドウ球菌エンテロトキシンD遺伝子を有する黄色ブドウ球菌又は該遺伝子を検出するための用のLAMP用プライマーセット:オリゴヌクレオチドセット(2a);
黄色ブドウ球菌エンテロトキシンD遺伝子を有する黄色ブドウ球菌又は該遺伝子を検出するための用のLAMP用プライマーセット:オリゴヌクレオチドセット(3a);及び
黄色ブドウ球菌エンテロトキシンD遺伝子を有する黄色ブドウ球菌又は該遺伝子を検出するための用のLAMP用プライマーセット:オリゴヌクレオチドセット(4a);
以下に示す、本発明の第一の態様のプライマーセットを使用した。
黄色ブドウ球菌エンテロトキシンD遺伝子を有する黄色ブドウ球菌又は該遺伝子を検出するための用のLAMP用プライマーセット:オリゴヌクレオチドセット(1a);
黄色ブドウ球菌エンテロトキシンD遺伝子を有する黄色ブドウ球菌又は該遺伝子を検出するための用のLAMP用プライマーセット:オリゴヌクレオチドセット(2a);
黄色ブドウ球菌エンテロトキシンD遺伝子を有する黄色ブドウ球菌又は該遺伝子を検出するための用のLAMP用プライマーセット:オリゴヌクレオチドセット(3a);及び
黄色ブドウ球菌エンテロトキシンD遺伝子を有する黄色ブドウ球菌又は該遺伝子を検出するための用のLAMP用プライマーセット:オリゴヌクレオチドセット(4a);
2)試料の調整
以下の菌株を用いて、LAMP法を実施した。
以下の菌株を用いて、LAMP法を実施した。
上記菌株を培養し、得られたコロニーをInsta Gene(BioRad社)で処理した溶液を試料とした。陰性対象としては滅菌水、あるいはLoopampDNA増幅試薬キット(栄研化学社製)に含まれるDistilled Water(DW)を使用した。
尚、Insta Gene(BioRad社)及びLoopampDNA増幅試薬キットに関しては、以下に示す各社のHPのURLを詳しい情報が記載されている。
Insta Gene :http://www.bio-rad.com/ja-jp/product/instagene-matrix
LoopampDNA増幅試薬キット:http://www.loopamp.eiken.co.jp/products/dna/index.html
Insta Gene :http://www.bio-rad.com/ja-jp/product/instagene-matrix
LoopampDNA増幅試薬キット:http://www.loopamp.eiken.co.jp/products/dna/index.html
LAMP反応には栄研化学社製のLoopampDNA増幅試薬キットを使用した。該キットに含まれる試薬濃度等は以下の通りである。尚、LAMP反応条件は、63℃で1時間〜2時間保持した後、80℃で2分間保持して酵素変性処理を行った。
3)各プライマー動作確認
夫々、本発明のプライマーセット(1a)〜(4a)に該当する、SEB、SEC、SED、SEEの各プライマーセット各々に関して、エンテロトキシンB、C、D又はE遺伝子を含むDNAのみに反応するか確認を行った。
確認方法は、各試料に対して各プライマーで60分間反応を行い、電気泳動でラダーバンドの検出確認を行った(図5〜図8)。これらの各図において、各レーンは、左から右に向かって、1レーンが分子量マーカー(1Kb DNA Ladder, invitrogen cat. no. 15615-024)、それ以降の2レーン〜8レーンが表5に示した菌株リスト1番〜7番を用いた。
夫々、本発明のプライマーセット(1a)〜(4a)に該当する、SEB、SEC、SED、SEEの各プライマーセット各々に関して、エンテロトキシンB、C、D又はE遺伝子を含むDNAのみに反応するか確認を行った。
確認方法は、各試料に対して各プライマーで60分間反応を行い、電気泳動でラダーバンドの検出確認を行った(図5〜図8)。これらの各図において、各レーンは、左から右に向かって、1レーンが分子量マーカー(1Kb DNA Ladder, invitrogen cat. no. 15615-024)、それ以降の2レーン〜8レーンが表5に示した菌株リスト1番〜7番を用いた。
得られた結果を以下の表7に示す。電気泳動でラダーバンド(増幅)が確認できたものには「+」、そうでないものには「−」を記した。この結果から、含有遺伝子配列と合致し、他遺伝子との交差反応はないことが確認された。
4)各プライマー至適温度確認
次に、上記反応実験と同時に至適温度の確認を行った。PCR(Bio-Rad MyCycler(商標)thermal cycler)のグラジェント機能を利用し、60℃、63℃、65℃での反応を確認した(表8)。使用した遺伝子は各温度帯で同じ濃度のものを使用した。
次に、上記反応実験と同時に至適温度の確認を行った。PCR(Bio-Rad MyCycler(商標)thermal cycler)のグラジェント機能を利用し、60℃、63℃、65℃での反応を確認した(表8)。使用した遺伝子は各温度帯で同じ濃度のものを使用した。
5)各プライマー至適温度確認
更に、同じ菌株を用いてLAMPで至適温度確認を行った(表9)。使用した遺伝子は各温度帯で同じ濃度のものを使用した。その結果、63℃での反応が全てのプライマーにおいて最も適していた。尚、これらの結果は、図9〜図12にも示す。
更に、同じ菌株を用いてLAMPで至適温度確認を行った(表9)。使用した遺伝子は各温度帯で同じ濃度のものを使用した。その結果、63℃での反応が全てのプライマーにおいて最も適していた。尚、これらの結果は、図9〜図12にも示す。
6)検出限界
SEB〜SEEプライマーを使用して、検出するに当たり最小での検出を試みた。
SEB〜SEEプライマーを使用して、検出するに当たり最小での検出を試みた。
その結果として、菌株に依存して検出限界が決まることが判明した。LAMP検出には101〜104の菌量が必要な為、念の為に短時間の前培養が必要である。
本発明は、各種食品検体、環境検体、臨床検体などにおける黄色ブドウ球菌による汚染の検出又はエンテロトキシンの抗原性の特定に有用である。
Claims (5)
- 以下の(1)〜(4)のいずれかのオリゴヌクレオチドのセットから成る、黄色ブドウ球菌エンテロトキシンB、C、D又はE遺伝子を有する黄色ブドウ球菌又は該遺伝子を検出するためのLAMP用プライマーセット:
オリゴヌクレオチドセット(1):
(1a)配列番号:2〜5で表される塩基配列からなる4つのオリゴヌクレオチドのセット;
(1b)(1a)に記載のオリゴヌクレオチドの少なくとも一つのオリゴヌクレオチドに代えて、該オリゴヌクレオチドの相補鎖とストリンジェントな条件でハイブリダイズし、且つLAMP法用プライマーセットとして機能するオリゴヌクレオチドを含む4つのオリゴヌクレオチドのセット;若しくは、
(1c)(1a)又は(1b)に記載のオリゴヌクレオチドの少なくとも一つのオリゴヌクレオチドに代えて、該オリゴヌクレオチドにおいて1から数個の塩基が欠失、付加又は置換され、且つLAMP法用プライマーセットとして機能するオリゴヌクレオチドを含む4つのオリゴヌクレオチドのセット;
オリゴヌクレオチドセット(2):
(2a)配列番号:7〜10で表される塩基配列からなる4つのオリゴヌクレオチドのセット;
(2b)(2a)に記載の相補鎖とオリゴヌクレオチドの少なくとも一つのオリゴヌクレオチドに代えて、該オリゴヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、且つLAMP法用プライマーセットとして機能するオリゴヌクレオチドを含む4つのオリゴヌクレオチドのセット;若しくは、
(2c)(2a)若しくは(2b)に記載のオリゴヌクレオチドの少なくとも一つのオリゴヌクレオチドに代えて、該オリゴヌクレオチドにおいて1から数個の塩基が欠失、付加又は置換され、且つLAMP法用プライマーセットとして機能するオリゴヌクレオチドを含む4つのオリゴヌクレオチドのセット;
オリゴヌクレオチドセット(3):
(3a)配列番号:12〜15で表される塩基配列からなるオリゴヌクレオチドのセット;
(3b)(3a)に記載のオリゴヌクレオチドの少なくとも一つのオリゴヌクレオチドに代えて、該オリゴヌクレオチドの相補鎖とストリンジェントな条件でハイブリダイズし、且つLAMP法用プライマーセットとして機能するオリゴヌクレオチドを含む4つのオリゴヌクレオチドのセット;若しくは、
(3c)(3a)若しくは(3b)に記載のオリゴヌクレオチドの少なくとも一つのオリゴヌクレオチドに代えて、該オリゴヌクレオチドにおいて1から数個の塩基が欠失、付加又は置換され、且つLAMP法用プライマーセットとして機能するオリゴヌクレオチドを含む4つのオリゴヌクレオチドのセット;又は、
オリゴヌクレオチドセット(4):
(4a)配列番号:17〜20で表される塩基配列からなる4つのオリゴヌクレオチドのセット;
(4b)(4a)に記載のオリゴヌクレオチドの少なくとも一つのオリゴヌクレオチドに代えて、該オリゴヌクレオチドの相補鎖とストリンジェントな条件でハイブリダイズし、且つLAMP法用プライマーセットとして機能するオリゴヌクレオチドを含む4つのオリゴヌクレオチドのセット;若しくは、
(4c)(4a)若しくは(4b)に記載のオリゴヌクレオチドの少なくとも一つのオリゴヌクレオチドに代えて、該オリゴヌクレオチドにおいて1から数個の塩基が欠失、付加又は置換され、且つLAMP法用プライマーセットとして機能するオリゴヌクレオチドを含む4つのオリゴヌクレオチドのセット; - 請求項1記載のプライマーセットを含む、エンテロトキシンB、C、D又はE遺伝子を有する黄色ブドウ球菌又は該遺伝子の検出用キット。
- エンテロトキシンB、C、D又はE遺伝子を有する黄色ブドウ球菌又は該遺伝子を検出する方法であって、
試料中の核酸を抽出する工程と、
LAMP法により、以下の塩基配列のいずれかに含まれる領域:
(1)配列番号1における758〜917位の塩基配列;
(2)配列番号6における171〜215位の塩基配列;
(3)配列番号11における400〜560位の塩基配列;又は
(4)配列番号16における384〜437位の塩基配列;
を検出する工程と、
を含む前記方法。 - 前記LAMP法において請求項1記載のプライマーセットを使用する、請求項3に記載の方法。
- プライマーを用いる反応を63℃で行なう、請求項3又は4に記載の方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2014096512A JP2015213439A (ja) | 2014-05-08 | 2014-05-08 | エンテロトキシンb、c、d又はe遺伝子を有する黄色ブドウ球菌又は該遺伝子の検出のためのlamp用プライマー及びこれを用いたエンテロトキシンb、c、d又はe遺伝子を有する黄色ブドウ球菌又は該遺伝子の検出法 |
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Cited By (3)
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KR101938559B1 (ko) | 2017-06-16 | 2019-01-15 | 대한민국 | Lamp를 이용한 포도상구균 검출용 프라이머 및 그 용도 |
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-
2014
- 2014-05-08 JP JP2014096512A patent/JP2015213439A/ja active Pending
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