JP3413497B2 - ビスフェノールaの製造方法 - Google Patents

ビスフェノールaの製造方法

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JP3413497B2
JP3413497B2 JP31635292A JP31635292A JP3413497B2 JP 3413497 B2 JP3413497 B2 JP 3413497B2 JP 31635292 A JP31635292 A JP 31635292A JP 31635292 A JP31635292 A JP 31635292A JP 3413497 B2 JP3413497 B2 JP 3413497B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ビスフェノールAの製
造方法に関するものである。
【0002】
【従来技術及びその問題点】ビスフェノールA〔2,2
−ビス(4′−ヒドロキシフェニル)プロパン〕を製造
するために、酸触媒の存在下、過剰のフェノールにアセ
トンを反応させることは知られている。また、この反応
生成物から高純度ビスフェノールAを分離回収するため
に、反応生成物を晶析してビスフェノールAとフェノー
ルとの結晶アダクト(以下、単に結晶アダクトとも言
う)を析出させ、得られた結晶アダクトからフェノール
を除去することも知られている(特公昭36−2333
5号、特公昭52−42790号)。さらに、前記晶析
工程で得られた結晶アダクトを分離した後の母液(フェ
ノール溶液)を反応工程へ循環使用することも知られて
いる。
【0003】ところで、ビスフェノールAを含むフェノ
ール溶液の晶析生成物から分離された母液には、多量の
フェノール及びビスフェノールAの他、少量のビスフェ
ノールAの異性体である2−(2′−ヒドロキシフェニ
ル)−2−(4′−ヒドロキシフェニル)−プロパン
(以下、単に2,4′−ビスフェノールAと言う)等の
ビスフェノール化合物、トリスフェノール、高分子量の
ポリフェノール化合物、クロマン化合物等の副生物を含
み、さらに、極く少量の着色不純物や着色性不純物が含
まれている。そして、この母液は、その着色した不純物
や着色しやすい不純物を含むため、加熱により高い着色
濃度を与える着色した液体となっている。このような母
液は、ビスフェノールAの反応原料となるフェノールや
目的物であるビスフェノールAを含むことから反応系に
循環して再使用されるが、そのまま循環すると、前記副
生物や、着色不純物及び着色性不純物の蓄積が起ること
から、それらの副生物や不純物の除去を行うことが必要
となる。このため、母液を反応系に循環使用するに際
し、母液の少なくとも一部を酸型陽イオン交換樹脂から
なる吸着剤と接触させて着色物を吸着除去し、その後反
応系に循環する方法(特公昭55−34779号)が知
られている。しかし、この方法では、母液中の不純物の
一部が吸着除去されるだけであるので、循環母液中には
依然として相当量の副生物や不純物が残存し、その蓄積
を防止することはできない。
【0004】特開平1−230538号公報によれば、
フェノールとアセトンを反応させて得られる反応生成物
を第1晶析し、得られた第1晶析生成物から第1結晶ア
ダクトと第1母液を得、第1結晶アダクトからフェノー
ルを除去してビスフェノールAを得る一連の主工程と、
前記第1母液にイソプロペニルフェノールとフェノール
を混合し、酸触媒の存在下で反応させて得られる反応生
成物を第2晶析し、得られた第2晶析生成物から第2結
晶アダクトと第2母液を得、第2結晶アダクトはこれを
前記第1晶析工程へ循環し、一方、第2母液は、これを
塩基性触媒の存在下で反応処理してイソプロペニルフェ
ノールとフェノールを含む反応生成物となした後、前記
イソプロペニルフェノール及びフェノールとして循環使
用する一連の副工程とからなるビスフェノールAの製造
方法が提案されている。この方法は、副工程を用い、フ
ェノールとアセトンとの反応生成物を晶析して得られる
母液をフェノールとアセトンとの反応系に循環しないた
め、反応系に副生物や不純物の蓄積が起こらないという
利点はあるが、副工程においては、ポリフェノール以外
の副生物や不純物の蓄積が起るため、副工程で得られる
第2結晶アダクトの純度が悪いものとなる。また、第2
結晶アダクトの純度を高めようとすると、副工程からの
第2母液の一部を系外へ排出させる必要があるが、この
場合には、その母液には、ビスフェノールAや、フェノ
ール、ポリフェノールが含まれているため、それら有用
成分の損失が起こるという問題がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、有機的に結
合された一連の工程により、反応系における副生物や不
純物の蓄積を効果的に防止し、高純度のビスフェノール
Aを取得するビスフェノールAの製造方法を提供するこ
とをその課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記課題
を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成する
に至った。即ち、本発明によれば、アセトンと過剰量の
フェノールとを酸触媒の存在下で反応させてビスフェノ
ールAを生成させる反応工程、該反応工程から得られた
反応生成物を、アセトンと、水と、フェノールと、ビス
フェノールAを含むフェノール溶液とに分離する分離工
程、該ビスフェノールAを含むフェノール溶液からビス
フェノールAとフェノールとの結晶アダクトを析出させ
る晶析工程、該晶析工程で得られた晶析生成物から結晶
アダクトと母液を分離する晶析生成物分離工程、該晶析
生成物分離工程で得られた結晶アダクトを液化する結晶
アダクト液化工程、該結晶アダクト液化工程で得られた
ビスフェノールAを含むフェノール溶液からフェノール
を除去する脱フェノール工程及び該脱フェノール工程か
ら得られたビスフェノールAを造粒するビスフェノール
Aの造粒工程を備え、さらに、前記分離工程から分離さ
れたアセトンを反応工程に循環させるアセトン循環工
程、該分離工程で得られたフェノールの少なくとも一部
を晶析生成物分離工程に結晶アダクト洗浄液として循環
させるフェノール循環工程、該晶析生成物で分離工程で
得られた母液を反応工程に循環させる母液循環工程及び
該循環母液の一部を精製する母液精製工程及び該母液精
製工程で得られた精製母液を反応工程に循環させる精製
母液工程を含み、該母液精製工程が、 (i)該母液を蒸留塔に導入し、該蒸留塔に導入した母
液の50〜90重量%を留出させてフェノールを含む留
出液を得る蒸留工程、 (ii)該蒸留工程(i)で得られた蒸留塔の塔底液を、
塩基性触媒の存在下で200〜350℃に加熱する加熱
工程、 (iii)該加熱工程(ii)で得られた生成物を減圧蒸発し
て、フェノール及びイソプロペニルフェノールを含む留
出蒸気を得る減圧回収工程、 (iv)該減圧回収工程(iii)で得られた留出蒸気を、蒸
留工程(i)で得られた留出液と接触させて急冷する急
冷工程、 からなる ことを特徴とするビスフェノールAの製造方法
が提供される。
【0007】次に本発明を図面を参照しながら説明す
る。図1は、本発明によりビスフェノールAを製造する
ための工程図である。図1において、1は反応工程、2
は分離工程、3は晶析工程、4は晶析生成物分離工程、
5は液化工程、6は脱フェノール工程、7は造粒工程、
8は蒸留工程、9は加熱工程、10は減圧回収工程を各
示す。
【0008】反応工程1においては、酸触媒の存在下で
アセトンと過剰量のフェノールとの反応が行われ、これ
によりビスフェノールAが生成される。酸触媒として
は、塩酸や硫酸等の鉱酸や、スルホン酸基を有する強酸
型イオン交換樹脂が用いられるが、強酸型イオン交換樹
脂の使用が好ましい。フェノールの使用量は、アセトン
1モルに対して8〜20モル、好ましくは10〜18モ
ルの割合である。反応温度は、50〜90℃である。こ
の反応工程1で得られた反応生成物は、目的物であるビ
スフェノールAの他、ビスフェノールAの異性体である
2,4′−ビスフェノールA等のビスフェノール化合
物、トリスフェノール化合物、高分子量のポリフエノー
ル化合物、クロマン化合物及び水等の副生物を含み、さ
らに着色不純物や着色性不純物を含む。この反応生成物
の代表的組成を示すと、未反応フェノール:60〜90
wt%、好ましくは70〜80wt%、未反応アセト
ン:0.1〜2wt%、好ましくは0.5〜1.5wt
%、ビスフェノールA:15〜30wt%、好ましくは
18〜25wt%、水:0.1〜2wt%、好ましくは
0.5〜1.5wt%、副生ポリフェノール化合物:2
〜15wt%、好ましくは5〜10wt%である。この
反応生成物は、ライン11を通って分離工程2へ導入さ
れる。
【0009】分離工程2は、反応工程1で得られた反応
生成物を分離処理して、主に、アセトン、水、フェノー
ル及びビスフェノールAを含むフェノール溶液にそれぞ
れ分離する工程である。この分離工程2で分離されたア
セトンはライン12を通って反応工程1に循環され、水
はライン13を通って排出され、フェノールはライン1
4を通って洗浄用フェノールとして晶析生成物分離工程
4に導入され、ビスフェノールAを含むフェノール溶液
はライン15を通って晶析工程3に導入される。分離工
程2は、通常、複数の蒸留塔を含む蒸留処理工程から構
成され、反応生成物を前記した特定成分に分離し得るよ
うに構成されたものであれば任意の分離工程を採用する
ことができる。図2に、本発明の分離工程2として好ま
しく採用される反応生成物の蒸留処理系統図を示す。図
2において、31は第1蒸留塔、32は第2蒸留塔、3
3は第3蒸留塔、34は第4蒸留塔、35は強酸型イオ
ン交換樹脂処理装置、36,37は静置槽を示す。
【0010】フェノールとアセトンとの反応を行う反応
工程1で得られた反応生成物は、ライン38を通して、
第1蒸留処理工程を構成する第1蒸留塔31に導入さ
れ、この第1蒸留塔31において、未反応フェノール、
ビスフェノールA及び副生物を含む塔底物(I)と、未反
応フェノール、未反応アセトン及び水を含む塔頂物(I)
とに分離される。
【0011】第1蒸留塔からの塔頂物(I)の成分組成を
示すと、フェノール:60〜90wt%、好ましくは8
0〜90wt%、アセトン:2〜20wt%、好ましく
は5〜10wt%、水:5〜20wt%、好ましくは5
〜10wt%である。一方、第1蒸留塔からの塔底物
(I)の成分組成を示すと、フェノール:50〜80wt
%、好ましくは65〜75wt%、ビスフェノールA:
18〜30wt%、好ましくは20〜25wt%、副生
物:5〜20wt%、好ましくは5〜10wt%であ
る。
【0012】前記第1蒸留塔で得られた塔頂物(I)は
ライン40を通って第2蒸留処理工程を構成する第2蒸
留塔32に導入され、一方、前記第1蒸留塔31で得ら
れた塔底物(I)(ビスフェノールAを含むフェノール溶
液)は、ライン39を通って抜出され、晶析用原料とし
て、図1のライン15を通って晶析工程3に送られる。
【0013】第2蒸留塔32においては、油性共沸剤の
存在下で蒸留処理が行われ、アセトン、水及び共沸剤か
らなる塔頂物(II)が得られる。この塔頂物(II)の成
分組成は、アセトン:2〜20wt%、好ましくは5〜
20wt%、水:10〜30wt%、好ましくは15〜
25wt%であり、共沸剤:40〜80wt%、好まし
くは50〜70wt%である。塔底からは、塔底物(II)
としてフェノールが得られる。第2蒸留塔32の塔底物
(II)中のアセトンの含有量は5wt%以下、好ましく
はゼロ%である。共沸剤は、第2蒸留塔の運転条件を調
節して、第2蒸留塔の塔底物中に少量、特に5重量%以
下、好ましくは1重量%以下の割合で存在させるのが好
ましい。これにより、塔頂物へのフェノール混入量を低
減させることができる。
【0014】第2蒸留塔32の塔頂からの塔頂物(II)
は、ライン42を通って静置工程を構成する静置槽36
に導入され、ここでアセトンと共沸剤からなる油性成分
と、アセトンと水からなる水性成分とに分離される。こ
の静置槽36で分離された油性成分はライン44を通っ
て及び水性成分はライン45を通ってそれぞれ第3蒸留
塔33に導入される。第2蒸留塔32の塔頂物(II)を
静置槽36により油性成分と水性成分とに分離すること
により、その塔頂物(II)を第3蒸留工程へ安定的に供
給できる。しかし、この静置槽36の設置は必ずしも必
要とされず、塔頂物(II)は、ライン42を通して直接第
3蒸留塔へ供給することも可能である。一方、第2蒸留
塔32からのフェノールからなる塔底物(II)は、ライ
ン41を通って、必要に応じ、強酸型イオン交換樹脂処
理装置35を介して第4蒸留処理工程を構成する第4蒸
留塔34に導入される。
【0015】油性共沸剤としては、沸点範囲が80〜1
40℃、好ましくは100〜140℃の炭化水素油が用
いられる。共沸剤の具体例としては、トルエン、エチル
ベンゼン、キシレン等が挙げられる。この共沸剤は、前
記したように、第2蒸留塔32運転開始に際しては、ラ
イン43より第2蒸留塔32と第3蒸留塔33を循環す
るための必要量を系外より塔内に供給され、運転開始後
においては、静置槽37で分離された後、ライン43を
通って第2蒸留塔32に返還される。
【0016】第3蒸留処理工程を構成する第3蒸留塔3
3においては、塔頂物(III)としてアセトンが得ら
れ、このものはライン46を通って抜出され、図1に示
したライン12を通って反応工程1に循環される。この
循環アセトン中の水含有量は5wt%以下、好ましくは
3wt%以下である。一方、第3蒸留塔33の塔底から
は、水と共沸剤からなる塔底物(III)が得られるが、
このものは、ライン47を通って静置工程を構成する静
置槽37に導入され、ここで共沸剤と水とに分離され
る。共沸剤はライン43を通って第2蒸留塔32に循環
される。一方、水はライン48を通って排出される。こ
の排水中に含まれるアセトン含有量は5wt%以下、好
ましくはゼロ%である。
【0017】強酸型イオン交換樹脂処理装置35におい
ては、その強酸型イオン交換樹脂が触媒となって、塔底
物(II)(フェノール)中に含まれる着色不純物や、着色不
純物前駆体等の縮合性不純物が縮合反応して、タール状
高沸点物に変換される。この場合、縮合性不純物として
は、ベンゾフラン等が挙げられる。強酸型イオン交換樹
脂としては、スルホン基を有するゲル型のものが用いら
れ、このような強酸型イオン交換樹脂は、従来良く知ら
れているものである。例えば、ロームアンドハース社か
ら入手し得るアンバーライト及びアンバーリストや、三
菱化成社から入手し得るダイヤイオン等を好ましく用い
ることができる。この強酸型イオン交換樹脂を用いる塔
底物(II)の処理は、塔底物(II)を強酸型イオン交換樹脂
を含む充填塔に流通させる方法や、強酸型イオン交換樹
脂を入れた撹拌槽に塔底物(II)を入れて撹拌する方法等
により実施することができる。処理温度は45〜15
0、好ましくは50〜100℃である。強酸型イオン交
換樹脂と塔底物(II)との接触時間は、5〜200分、好
ましくは15〜60分程度である。この強酸型イオン交
換樹脂を用いて塔底物(II)の処理を行う場合、塔底物
(II)中に水分が混入すると、強酸型イオン交換樹脂によ
る不純物除去効果が低下する。この蒸留処理法において
は、前記のように、第2蒸留塔32においては、水が塔
頂物成分としてほぼ完全に分離され、塔底物として得ら
れるフェノール中には水は実質上含まれてこないことか
ら、その塔底物(II)の強酸型イオン交換樹脂処理は円滑
に実施される。
【0018】強酸型イオン交換樹脂処理装置35には、
必要に応じ、未精製フェノールをライン49を通して、
ライン41を通る塔底物(II)と混合して導入することが
できる。未精製フェノールには、工業用フェノールや、
晶析工程で得られた母液フェノール及び洗浄廃液フェノ
ール等が挙げられる。
【0019】強酸型イオン交換樹脂処理装置35で得ら
れる処理生成物はライン50を通って第4蒸留塔34に
導入され、ここでフェノールからなる塔頂物(IV)と、
タール状高沸点物質からなる塔底物(IV)に分離され
る。この蒸留塔の運転条件はフェノールと高沸点物質と
が完全に分離できる条件であることが必要であり、フェ
ノール中に高沸点物質が混入しない条件で行う必要があ
る。この場合の留意すべきポイントは、蒸留処理温度を
190℃以下にすることである。190℃以下の温度で
あれば運転圧力は任意に設定されるが、通常50Tor
r〜760Torrの減圧ないし常圧が採用される。運
転温度が190℃をこえると高沸点物質等の分解が著し
くなり、留出フェノールの品質を低下させるので好まし
くない。この第4蒸留塔34においては、導入されるフ
ェノールの95重量%以上、好ましくは99重量%以上
が留出される。第4蒸留塔34の塔頂から得られるフェ
ノールは色相の良好なもので、その色相APHAは、1
0以下である。この精製フェノールは、ライン52を通
して抜出され、少なくともその一部は、図1に示したラ
イン14を通して晶析生成物分離工程4に導入され、高
純度ビスフェノールAを得るための結晶アダクトの洗浄
液として使用される。また、この精製フェノールは、必
要に応じ反応工程1に循環使用することもできる。第4
蒸留塔34の底部からライン51を通って抜出される塔
底物(IV)は、通常、フェノール:10〜90重量%
と、高沸点物質:10〜60重量%を含む混合物からな
る。この塔底物(IV)の量は少量であるため、そのまま
系外へ排出させることができる。
【0020】図2に示した反応生成物の分離工程によれ
ば、第2蒸留塔32における蒸留は、共沸剤の存在下で
行われていることから、水及びアセトンの実質的全量を
塔頂物(II)として分離することができる。そしてこの
塔頂物(II)は第3蒸留塔33で水とアセトンとにほぼ
完全に分離させることができる。即ち、第3蒸留塔33
に供給されるアセトンの実質的全量を第3蒸留塔の塔頂
物(III)として分離することができ、第3蒸留塔33
の塔底物(III)には、実質上アセトンの混入はない。
この結果、静置槽37から抜出される排水にはアセトン
の混入がなく、その排水からアセトンを除去するような
面倒な廃水処理の問題は解消される。また、第3蒸留塔
33から塔頂物(III)として分離されるアセトン中に
も水は殆ど混入されないことから、アセトンの再利用も
容易である。
【0021】図3に、本発明の分離工程2として採用す
ることのできる他の蒸留処理系統図を示す。図3におい
て、31は第1蒸留塔、32は第2蒸留塔、33は第3
蒸留塔、34は第4蒸留塔、35は強酸型イオン交換樹
脂処理装置を示す。
【0022】フェノールとアセトンとの反応を行う反応
工程1で得られた生成物は、ライン38を通して、第1
蒸留処理工程を構成する第1蒸留塔31に導入され、こ
こで未反応フェノール、ビスフェノールA及び副生物を
含む塔底物(I)と、未反応フェノール、未反応アセト
ン及び水を含む塔頂物(I)とに分離される。第1蒸留
塔31は、その塔頂物(I)中のフェノール含有量が40
wt%以下、好ましくは30wt%以下の範囲になるよ
うに操作される。これにより、第2蒸留塔32から得ら
れる塔項物(II)中の水含有量を5wt%以下、特に2
wt%以下に抑制することができる。第1蒸留塔31の
塔頂物(I)の成分組成を示すと、フェノール:40w
t%以下、好ましくは30wt%以下、アセトン:20
〜45wt%、好ましくは30〜40wt%、水:20
〜45wt%、好ましくは30〜40wt%である。一
方、第1蒸留塔31の塔底物(I)の成分組成を示す
と、フェノール:55〜80wt%、好ましくは65〜
75wt%、ビスフェノールA:18〜30wt%、好
ましくは20〜25wt%、副生物:5〜15wt%、
好ましくは6〜10wt%である。前記第1蒸留塔31
で得られた塔頂物(I)はライン40を通って第2蒸留
処理工程を構成する第2蒸留塔32に導入され、一方、
前記第1蒸留塔31で得られた塔底物(I)はライン3
9を通って第4蒸留塔34に導入される。
【0023】第2蒸留塔32においては、アセトンが塔
頂物(II)として得られ、このものは、ライン46を通
して抜出され、図1に示すライン12を通って反応工程
1に循環される。この循環アセトン中の水含有量は、1
0wt%以下、好ましくは5wt%以下である。一方、
第2蒸留塔32の塔底からは、フェノールと水との混合
物からなる塔底物(II)が得られ、このものは、ライン4
7を通って第3蒸留塔33に導入される。第2蒸留塔3
2の塔底物(II)の成分組成は、フェノール:40〜60
wt%、好ましくは40〜50wt%、水:40〜60
wt%、好ましくは50〜60wt%であり、アセトン
の含有量は1wt%以下である。
【0024】第3蒸留処理工程を構成する第3蒸留塔3
3においては、塔頂物(III)として水が得られ、このも
のはライン48を通って排出される。一方、第3蒸留塔
33の塔底からは、フェノールからなる塔底物(III)が
得られるが、このものはライン41を通って強酸型イオ
ン交換樹脂処理装置35で処理された後、第4蒸留処理
工程を構成する第4蒸留塔34に導入される。また、こ
の第3蒸留塔33の塔底物(III)には、必要に応じ、未
精製フェノールをライン49を介して添加し、強酸型イ
オン交換樹脂処理装置35に導入することができる。こ
の場合、未精製フェノールとしては、工業用フェノール
や、晶析工程で得られる母液フェノール、洗浄廃液フェ
ノール等が挙げられる。
【0025】強酸型イオン交換樹脂処理装置35におい
ては、その強酸型イオン交換樹脂が触媒となって、フェ
ノール中に含まれる着色不純物や着色不純物前駆体等の
縮合性不純物が縮合反応して、タール状高沸点物に変換
される。強酸型イオン交換樹脂処理装置35で得られる
処理生成物はライン50を通って第4蒸留処理工程を構
成する第4蒸留塔34に導入され、ここでフェノールが
塔頂物(IV)として取得される。また、この第4蒸留塔
34には、第1蒸留塔31の塔底物(I)(ビスフェノ
ールAを含むフェノール溶液)がライン39を通して導
入される。この第4蒸留塔34においては、その塔頂か
らフェノールが留出されるが、このフェノールは色相の
良好なもので、その色相APHAは、10以下である。
この精製フェノールは、図1に示すようにその少なくと
も一部は、ライン14を通して晶析生成物分離工程4に
循環され、高純度ビスフェノールAを得るための結晶ア
ダクトの洗浄液として使用される。また、この精製フェ
ノールは、必要に応じ反応工程1に循環使用することが
できる。第4蒸留塔34の底部からライン51を通って
抜出される塔底物(IV)は、通常、ビスフェノールを1
5〜30wt%、好ましくは、20〜25wt%を含
み、フェノールを50〜80重量%、好ましくは65〜
75重量%含み、さらに副生物を5〜15重量%、好ま
しくは6〜10重量%の割合で含むもので、図1に示す
ように、ライン15を通して晶析用原料として晶析工程
3へ導入される。なお、第1蒸留塔31の塔底物(I)
は、第4蒸留塔34に導入せずに、そのまま晶析工程3
へ導入することもできる。
【0026】図3に示した反応生成物の分離工程によれ
ば、第1蒸留塔31から得られる塔頂物(I)中のフェ
ノール含有量を40重量%以下に保持することにより、
第2蒸留塔32に供給されるアセトンの実質的全量を第
2蒸留塔の塔頂物(II)として分離することができ、第
2蒸留塔2の塔底物(II)には、実質上アセトンの混入
はない。この結果、第3蒸留塔33において、その塔頂
物(III)として分離される水にはアセトンの混入がな
く、その分離水からアセトンを除去するような面倒な廃
水処理の問題は解消される。また、この分離工程によれ
ば、第3蒸留塔内には、アセトンが存在しないため、効
率よくその蒸留操作を行うことができる。
【0027】晶析工程3は、前記のようにして分離工程
2で得られたビスフェノールAを含む溶液を冷却して、
ビスフェノールAとフェノールとの結晶アダクトを析出
させる工程である。この場合、晶析温度は35〜80
℃、好ましくは45〜70℃である。この晶析工程で得
られた晶析生成物(結晶アダクトスラリー)は、図1に
おいてライン16を通して晶析生成物分離工程4に導入
される。晶析工程3は、1つ又は複数の晶析段階からな
ることができるが、その晶析工程の1つの例についての
晶析系統図を図4に示す。図4において、55は外筒、
56は内筒、57は微結晶アダクト溶解タンク、58は
冷却器、59は加熱器、60、61はポンプ、Aは晶析
塔を示す。晶析塔Aは、密閉構造の外筒55内に上部に
開口部を有する内筒56を挿入した2重筒構造を有す
る。本明細書でいう密閉構造とは、晶析塔が大気開放状
態にあるのではなく、イナートガスにてシールされてい
る状態をいう。晶析塔Aが大気開放であると、晶析塔内
のスラリーに大気中の酸素の一部が吸収され、アダクト
の色相を悪化させるとともに、更には、後段の処理にお
いて悪影響を与えて、高品質のアダクトひいては高品質
のビスフェノールAを得ることができなくなる。従っ
て、晶析塔Aにおいては、酸素の混入を防止する為に、
イナートガスにてシールする必要が生じる。この場合、
酸素の混入を防止することができれば、必ずしも、高圧
に耐えうる密閉耐圧容器である必要はない。また、晶析
塔Aにおいては、外筒部に直接抜出孔を設けるのではな
く、内部のスラリーの旋回流の中心軸上に内筒を設け、
その上部までスラリーの旋回流を上昇させ、内筒上部の
開口部よりスラリーを溢流させ、内筒内部を下降させた
後、内筒底部より抜出す方法をとるのがよい。これによ
り、導入された循環スラリーに対し均一な混合と、アダ
クト粒子に対して充分な滞留時間を確保することができ
る。
【0028】図4に示した晶析系統図に従って晶析工程
を実施するには、先ず、分離工程2から図1のライン1
5を通して抜出された被処理原料であるビスフェノール
Aを含むフェノール溶液の一部を、ライン62及びライ
ン63を通って晶析塔A内に充填するとともに、内筒5
6の底部からライン64を通ってフェノール溶液を抜出
し、これをライン65、ポンプ60、ライン66、冷却
器58、ライン67及びライン63を通して晶析塔A下
部の外筒内に連続的に循環させる。この操作によって、
晶析塔A内のフェノール溶液は冷却され、結晶アダクト
が晶析し、結晶アダクトを含むスラリーが生成される。
このスラリーは内筒56の底部から抜出され、前記のよ
うにして冷却器58で冷却された後、晶析塔A下部の外
筒55内に循環されるようになる。また、内筒56の底
部からスラリーの一部をライン64、ライン68、ポン
プ61、ライン69、加熱器59、タンク57及びライ
ン70、71を通って晶析塔A下部の外筒55内に連続
的に循環させる。この操作によって、内筒56の底部か
ら抜出されたスラリー中の微結晶アダクト粒子がタンク
57で溶解され、微結晶アダクト粒子含有率の低いスラ
リーが晶析塔A内に循環される。その結果、晶析塔A内
の微結晶アダクト粒子の含有率が減少されるようにな
る。
【0029】次に、このような状態において、分離工程
2からライン15を通して抜出されたビスフェノールA
を含むフェノール溶液をライン62、及びライン63を
通して晶析塔A下部の外筒55内に導入するとともに、
内筒56の底部から製品スラリーをライン73を通って
抜出す。この場合、次の晶析生成物分離工程へこのスラ
リーをグラビティーフローで流せる場合は、このように
ライン73を使って抜き出すが、そうでない場合は、ポ
ンプ61の吐出ライン74より、その一部を抜き出すこ
ともできる。また、微結晶含有率の少ないスラリーの一
部を、ライン72より回収し、これを製品結晶アダクト
スラリーとすることもできる。これらの結晶アダクトス
ラリーは、必要に応じ、さらに前記と同様の晶析処理を
施すことができる。
【0030】ライン63を通る温度降下したスラリー及
びライン70、71を通る温度上昇したスラリーは、外
筒55内に導入させるに際し、外筒下部より外筒内に、
同一の向きの旋回流を生じるように導入するのがよい。
この場合、好ましくは、外筒内周面に対し接線方向にな
るように導入し、かつその導入位置が異なるように行
う。導入位置が近すぎると、局部的な流れの乱れを生
じ、スムーズな旋回流を得ることができなくなり、また
晶析塔の構造及び強度の面から好ましくない。よって、
これら2つのスラリーの導入位置は、外筒の中心点から
角度で表わして好ましくは90〜180度離れた位置に
おいて行うのがよい。更に、同一の向きの旋回流が生じ
るためであれば、2つのスラリーの導入位置は必ずしも
同一水平面上にある必要はなく、少くとも外筒下部に
て、多少の高低の差はあってもさしつかえない。前記の
ようにして、ライン63及びライン70、71を通る各
スラリーを、外筒内に同一の向きの旋回流を生じるよう
に導入すると、この旋回流は外筒55内を内筒56の上
端部まで上昇し、そして内筒56の上部開口から内筒5
6内を下降し、その内筒の底部からライン64を通って
抜出される。外筒55内にこのような旋回流を生じさせ
ることにより、次のような効果を得ることができる。 (1)異なる温度の2つの液流を効果的に均一に混合す
ることができる。 (2)スラリーの偏流を防止し、外筒内のスラリー濃度
が均一になることから、結晶アダクト粒子の外筒内での
滞留時間のムラをなくすことができる。 (3)結晶アダクト粒子の外筒内での沈降堆積を防止す
るに足る充分な線速を得ることができる。
【0031】また、前記のように、内筒56底部から抜
出されたスラリーの一部を、ライン64、ライン68、
ポンプ61、加熱器59、タンク57及びライン70、
71を通して晶析塔Aに循環させる時には、スラリー中
の微結晶アダクトがタンク57内で溶解消失されること
から、一定大きさの粗大結晶アダクトを含むスラリーが
ライン70、71を通って晶析塔Aに循環され、これに
よって晶析塔A内に含まれる結晶アダクトの粒径が揃え
られ、晶析塔A内には、微結晶アダクト粒子含有率が低
く、粗大結晶アダクト粒子含有率の高い結晶アダクトが
生成される。晶析塔A内における微結晶アダクトは、そ
の比表面積が大きいことから、着色原因物質に対して高
い吸着性を示す。従って、晶析塔Aで得られる結晶アダ
クト中の微結晶アダクト粒子含有率を可及的に減少させ
ることにより、色相のよい結晶アダクトを得ることがで
きる。結晶アダクト中の粒径100μm以下の微結晶ア
ダクト粒子含有率を30重量%以下、好ましくは20重
量%以下に保持することにより、色相の良い高純度結晶
アダクトを製造することができる。
【0032】ライン62から供給されるビスフェノール
Aを含むフェノール溶液の温度は、結晶アダクトの飽和
温度より、1〜20℃程度高い温度であり、晶析塔Aの
温度は45〜70℃である。ライン65、ポンプ60、
冷却器58及びライン63を通って循環されるスラリー
は、冷却器58において、その温度を10℃程度以下、
好ましくは5℃以下程度降下される。晶析塔Aにおける
フェノール溶液の滞留時間は0.5〜10時間、好まし
くは0.5〜5時間である。一方、ライン68、ポンプ
61、ライン69、加熱器59を通って微結晶アダクト
溶解タンク57に導入されるスラリーは、その加熱器5
9において、その温度を0.5〜5℃程度上昇され、微
結晶溶解タンク57に保持される。このタンク57にお
けるフェノール溶液の滞留時間は3〜15分程度であ
る。
【0033】微結晶溶解タンク57内においては、粒径
100μm以下の結晶アダクトが溶解される。ライン7
0を通るスラリー中の結晶アダクト中の粒径100μm
以下の結晶アダクト粒子含有率は、30重量%以下、好
ましくは20重量%以下である。
【0034】前記晶析法によれば、微結晶アダクト粒子
含有率の低い、色相の良好な結晶アダクトを効率よく生
成させることができる。この結晶アダクトは、これから
フェノールを分離除去することにより、色相の良いビス
フェノールAを与える。
【0035】前記晶析工程3で得られた結晶アダクトス
ラリー(晶析生成物)は、晶析生成物分離工程4に送ら
れる。この晶析生成物分離工程4においては、結晶アダ
クトスラリーは、結晶アダクトと母液とに分離され、結
晶アダクトは、分離工程2からライン14を通って抜出
された精製フェノールを洗浄液として用いて洗浄処理さ
れる。そして、分離された母液は、必要に応じ、洗浄済
みのフェノールとともに、ライン17を通して晶析生成
物分離工程4から抜出され、反応工程1に循環される。
この場合、循環母液の少なくとも一部、通常、1〜20
重量%は、これを後記する母液精製工程に導入して処理
する。そして、精製処理された母液は、これを再び反応
工程1に循環させる。
【0036】晶析生成物分離工程4において、結晶アダ
クトスラリーを濾過処理して結晶アダクトを母液から分
離する場合、そのスラリー中に含まれる結晶アダクトの
うち、粒径100μm以下の微結晶アダクト成分の少な
くとも一部を濾液(母液)側に移行させ、粒径100μ
m以下の微結晶アダクト成分の割合が20重量%以下、
好ましくは15重量%以下の粗大結晶アダクトを得るの
が好ましい。この場合、微結晶アダクト成分を濾液側に
移行させるためには、フィルター(濾材)の選定や、濾
過操作条件の選定によって行うことができる。フィルタ
ーとしては、一般的に、その目開が100〜300μ
m、好ましくは150〜250μmのものが使用され
る。また、濾過操作条件による微結晶アダクト成分を濾
液側に移行させる場合、その微結晶アダクト成分の移行
量は、その濾過処理により得られる結晶アダクトケーク
の厚みやそのケークを逆洗する頻度によって調整するこ
とができる。
【0037】前記のようにして得られた結晶アダクト
は、それ自体で不純物含有量の低い高品位のものである
が、さらにこの結晶アダクトを、分離工程2からライン
14を通って抜出された精製フェノールで洗浄すること
によってその品位をさらに向上させることができる。精
製フェノールによる結晶アダクトの洗浄は、結晶アダク
トと精製フェノールとの接触を充分に達し得る方法であ
ればよい。この洗浄処理は、例えば、結晶アダクトを分
離するための濾過機や遠心分離機等の固液分離装置の中
で、母液を結晶アダクトから除去した後、精製フェノー
ルをその固液分離装置内に導入して洗浄する方法や、固
液分離装置から排出される少量の母液が付着する結晶ア
ダクトを、別の撹拌槽において精製フェノールにより洗
浄することもできる。結晶アダクトに対する精製フェノ
ールの使用割合は、結晶アダクト100重量部に対し
て、50重量部以上、好ましくは100重量部以上であ
る。
【0038】精製フェノールにより洗浄処理された結晶
アダクトは、ビスフェノールAとフェノールの等モル組
成からなる結晶であるが、このものは、結晶アダクトの
液化工程5に送り、ここで液化させてビスフェノールA
を含むフェノール溶液となした後、脱フェノール工程6
に送り、ここでフェノールを除去し、高純度の製品ビス
フェノールAとすることができる。また、このビスフェ
ノールAは、さらに造粒工程7に送り、ここでビスフェ
ノールAの造粒物とすることができる。
【0039】前記した結晶アダクトスラリーの濾過と結
晶アダクトの洗浄処理によれば、結晶アダクト表面に付
着する着色物質や着色性物質等の吸着性の高い不純物を
効率よく除去することができ、これにより、色相にすぐ
れ、かつ着色を生じにくい熱安定性の良い結晶アダクト
を容易に得ることができる。また、この結晶アダクトか
らフェノールを除去して得られるビスフェノールAも色
相にすぐれ、かつ着色を生じにくい高品位のものであ
る。
【0040】前記のようにして晶析生成物分離工程4か
ら得られた母液は、図1に示したライン17及びライン
19を通して反応工程1へ循環使用されるが、その循環
母液の少なくとも一部はライン17から抜出され、ライ
ン18を通って(i)蒸留工程8、(ii)加熱工程9及
び(iii)減圧回収工程10及び強酸型イオン交換樹脂工
程Rによって精製処理される。加熱工程9と減圧回収工
程10は、それぞれ独立して実施することができるが、
反応塔を用いて同時に実施するのが好ましい。
【0041】図5に、図1のライン17,18を通して
抜出された母液の精製処理方法の1つの例についての処
理系統図を示す。図5において、8はフェノール蒸留
塔、Dは反応槽6と減圧蒸発塔7を有する反応塔、Rは
強酸型イオン交換樹脂塔を示す。原料母液は、ライン1
8を通ってフェノール蒸留塔8に導入される。この場合
原料母液としては、晶析生成物分離工程4で得られた母
液の少なくとも一部を用いることができる。ビスフェノ
ールAを含むフェノール溶液の晶析処理においては、通
常、複数段の晶析工程と晶析生成物の固液分離工程が採
用され、それに応じて複数種の母液(フェノール溶液)
が得られるが、本発明ではこれらの母液の任意のものを
原料母液として用いることができる。本発明で用いる好
ましい原料母液は、第1段目の晶析工程で得られた第1
晶析生成物から分離された母液である。この第1晶析生
成物から分離された母液は、通常、フェール:85重量
%、ビスフェノールA:5〜10重量%、2,4−ビス
フェノールAを含むその他のポリフェノール:1〜5重
量%、クロマン化合物等の着色性不純物:2重量%以下
アルデヒドやキノン等の加熱により着色物質に変換する
着色性不純物:微量を含有する。
【0042】フェノール蒸留塔8は、温度:100〜2
00℃、好ましくは120〜185℃、圧力:50トー
ル〜常圧条件で運転される。このフェノール蒸留塔5で
は、ライン18から導入される原料母液の50〜90重
量%好ましくは65〜85重量%が留出される。留出量
がこの範囲より多くなると、高粘度となり塔底物固化、
ライン閉塞等の問題が生じ、一方、この範囲より少ない
と、フェノールの濃度が高くなり、加熱工程や減圧回収
工程における処理効率や熱効率が低下する等の問題が生
じる。フェノール蒸留塔8からの留出蒸気は、この蒸留
塔に付設された凝縮器85で凝縮されたのち、その一部
は還流液としてライン86を通って蒸留塔8に返還さ
れ、残部の凝縮液(留出液)はライン87を通って反応
塔Dに付設された減圧凝縮器90に導入される。このラ
イン87を通る留出液は、ほぼフェノール100%から
なる。一方、フェノール蒸留塔8の底部からライン81
を通ってその塔底液が抜出され、この塔底液は、ライン
83を通って供給される塩基性触媒とともに、ライン8
4を通って反応塔Dの底部の反応槽9に導入され、ここ
で、それに含まれる反応性成分の反応と同時に、この反
応により生成した生成物を含む濃縮母液の蒸発回収処理
が行われる。なお、塩基性触媒の供給は反応塔Dの反応
槽9に対して直接行うこともできる。フェノール蒸留塔
8の底部からライン81を通って抜出される塔底液は、
通常、フェノール:10〜50重量%、好ましくは15
〜30重量%で、残りはビスフェノールA、2,4′−
ビスフェノールA、その他のポリフェノール、その他の
不純物からなる。
【0043】反応塔Dにおいては、その反応槽9内にお
いて、濃縮母液中に含まれるビスフェノール、トリスフ
ェノール等のポリフェノールが塩基性触媒の作用により
熱分解され、イソプロペニルフェノールとフェノールに
転換されるとともに、クロマン化合物等の不純物の重縮
合反応が起り、不純物は高沸点物に変換される。塩基性
触媒としては、ナトリウムやカリウム等のアルカリ金属
の水酸化物、酸化物、炭酸塩、各種フェノール塩、カル
シウムやマグネシウム等のアルカリ土類金属の水酸化
物、酸化物、炭酸塩、各種フェノール塩等が挙げられ
る。この塩基性触媒の使用割合は、ライン81を通って
抜出される濃縮母液中のビスフェノールAを含む全ポリ
フェノールに対し0.005〜0.8重量%、好ましく
は0.01〜0.5重量%である。
【0044】反応塔Dは、底部に反応槽9を有し、その
反応槽上に減圧蒸発塔10を立設した構造を有する。こ
の反応塔Dは、塔底(反応槽)温度:200〜350
℃、好ましくは220〜300℃、塔内圧力:5トール
〜常圧、好ましくは10〜150トールの条件で運転さ
れる。反応塔Dの頂部からライン89を通って抜出され
たフェノール及びイソプロペニルフェノールを含む留出
蒸気は、反応塔Dに付設された減圧凝縮器90に導入さ
れ、ここでフェノール蒸留塔8からライン87を取って
導入された留出液と混合接触して急冷された後、ライン
91を通って強酸型イオン交換樹脂塔Rに導入される。
フェノール蒸留塔8からライン87を通って減圧凝縮器
90に送られる留出液の温度は、45〜150℃、好ま
しくは50〜110℃である。また、ライン87を通る
留出液の量は、ライン89を通る留出蒸気に対する重量
比で1〜20、好ましくは2〜15である。ライン89
を通って反応塔Dから抜出される留出蒸気の成分は、フ
ェノール、イソプロペニルフェノール、ビスフェノール
A、その他の不純物である。ライン88を通って反応塔
Dから抜出される塔底液(反応液)は、反応塔Dにライ
ン84を通して供給される液に対して重量比で0.05
〜0.5好ましくは0.05〜0.4であり、この塔底
液には高沸点物(ビスフェノールAよりも高い沸点をも
つ)が濃縮されるとともに着色性の物質が濃縮される。
減圧凝縮器90内の混合液は、ライン91を通って強酸
型イオン交換樹脂塔Rに導入される。この強酸型イオン
交換樹脂塔Rにおいては、混合液中に含まれるイソプロ
ペニルフェノールとフェノールとの反応によりビスフェ
ノールAが生成される。このビスフェノールAを含む生
成物はライン92を通って排出され、図1に示した循環
母液ライン19又は反応工程1に、ライン25を通して
導入される。
【0045】強酸型イオン交換樹脂としては、スルホン
基を有するゲル型のものが用いられ、このような強酸型
イオン交換樹脂は、従来良く知られているものである。
例えば、ロームアンドハース社から入手しえるアンバー
ライト及びアンバーリストや、三菱化成社から入手し得
るダイヤイオン等を好ましく用いることができる。この
強酸型イオン交換樹脂を用いる混合液の反応において、
その反応温度は45〜130℃、好ましくは50〜10
0℃であり、接触時間は5〜200分、好ましくは15
〜120分である。この強酸型イオン交換樹脂を用いる
混合液の反応を行う場合、混合液中の水分は、0.5重
量%以下、好ましくは0.1重量%以下にする。強酸型
イオン交換樹脂塔Rからライン92を通って抜出される
反応生成物の成分は、フェノール:85〜95重量%、
ビスフェノールA:5〜15重量%、好ましくは5〜1
0重量%、その他の不純物:微量であり、着色性の低い
ものである。このものは、図1に示したように、ライン
25を通して反応工程1に循環使用される。また必要に
応じて、その一部を濃縮晶析してビスフェノールA・フ
ェノール結晶アダクトとすることができる。なお、強酸
型イオン交換樹脂塔Rは、必ずしも必要とされず、反応
蒸留Dの塔頂物は、直接反応工程1に循環させることが
できる。
【0046】反応塔Dは、図6に示すように、加熱処理
装置Aと滞留槽Bを付設して用いるのが好ましい。この
ような反応塔Dの運転においては、反応塔Dの底部の反
応槽9からライン96を通って、その塔底物の一部が抜
出され、その抜出された塔底物の一部は、第1循環液と
してライン97を通って加熱処理装置Aに導入され、こ
こで加熱処理をうけた後、ライン94及びライン95を
通って反応塔Dの反応槽9に循環される。加熱処理装置
Aにおいて、第1循環液は、塩基性触媒の存在下200
〜350℃、好ましくは230〜300℃の温度に加熱
される。この加熱によって、第1循環液に含まれるポリ
フェノールは、前記した熱分解反応を受ける。加熱処理
装置A内における第1循環液の滞留時間は、1〜30
分、好ましくは1〜20分である。一方、反応蒸留塔D
の底部から抜出された塔底物の一部は、第2循環液とし
て、ライン98、ライン99、滞留槽B及びライン10
0を通って反応塔Dの反応槽9に循環される。滞留槽B
においては、第2循環液は、200〜300℃、好まし
くは220〜280℃の温度において、5〜120分好
ましくは10〜100分間保持される。この滞留処理に
よって、母液中に含まれるポリフェノールの解重合が不
十分な場合に、更にその解重合が進行するとともに、着
色原因物質、たとえばクロマン化合物の重質化が不十分
な場合には、更にその重質化が進行し分離の容易な高沸
点タール状物に変換される等の効果が得られる。第1循
環液の循環量は、ライン100を通って反応塔Dに供給
される濃縮母液100重量部に対して50〜5000重
量部であり、一方、第2循環液の循環量は、同じく10
〜10000重量部、好ましくは50〜5000重量部
である。
【0047】前記した母液の処理方法においては、母液
中に含まれる不純物は、反応塔Dの塔底又は反応槽9に
連結するライン23(図1)又はライン88(図5、図
6)を通して、濃縮不純物として排出される。この濃縮
不純物にはビスフェノールAよりも高沸点の副生物や、
縮合性不純物の縮合物が含まれ、さらに、反応工程1に
おいて触媒として高沸点の強酸性物質、例えば、スルホ
ン酸基を有するイオン交換樹脂を用いた場合には、その
触媒から遊離したスルホン化物が含まれる。従って、前
記した母液の処理方法によれば、その母液に含まれてい
るポリフェノール化合物、着色不純物、着色性不純物、
さらには反応工程1で用いた触媒由来の高沸点物(スル
ホン化物等)は、いずれも濃縮された状態で母液から分
離除去される。そして、このようにして副生物及び不純
物の除去された母液を、再び反応工程1に循環すること
によって、母液中に含まれる有用成分の損失を抑え、反
応系における副生物及び不純物の蓄積を防止することが
でき、その結果、高純度でかつ着色の防止されたビスフ
ェノールAを得ることができる。
【0048】結晶アダクト液化工程5は、結晶アダクト
を加熱溶融して液化する工程である。結晶アダクトの溶
融装置としては、外壁面に加熱ジャケットを備えた外部
加熱方式の密閉型容器や、内部に加熱コイルを備えた内
部加熱方式の密閉型容器等が用いられる。この溶融装置
は、結晶アダクトの溶融液化に先立ち、内壁面を構成す
る材質の表面に付着する酸素除去処理を施して用いるの
が好ましい。このことにより、結晶アダクトの溶融に際
しての加熱に起因する着色原因物質の生成量を著しく抑
制させることができ、色相の良好な高純度ビスフェノー
ルAを得ることができる。溶融装置の内壁面は、金属材
質、通常、ステンレススチール、例えば、SUS30
4、SUS316、316L等で形成され、その表面に
は、通常、1m2当り30〜60ミリモル程度の酸素が
付着結合している。この酸素量は種々の方法によって測
定することができる。たとえば試験片によって洗浄条件
と、表面エッチングによって深さが測定された表面付着
結合酸素量との相関をもとめて推定する方法もあるが、
表面付着結合酸素量と洗浄フェノールの着色の関係から
も測定できる。また他の洗浄液の場合にもその着色と表
面付着結合酸素量の相関を予め求めておいてそれを測定
方法とすることができる。たとえば、フェノールの着色
は酸素百万分の1重量部に対して6APHAとなり、こ
の測定の相関として用いることができる。溶融装置は、
あらかじめその内壁表面に付着する酸素を除去して使用
することにより、結晶アダクトの溶融時における加熱に
より生じる着色原因物質の生成を著しく抑制することが
でき、色相の良好な製品ビスフェノールを得ることがで
きる。
【0049】溶融装置の内壁面からの酸素除去は、内壁
面を有機溶剤を用いて洗浄処理することによって行うこ
とができる。有機溶剤としては、フェノール又はビスフ
ェノールA、フェノールとビスフェノールAの混合物等
を用いることができる。洗浄処理温度は、100〜20
0℃、好ましくは120〜185℃である。洗浄に際し
ての雰囲気としては、窒素ガスや窒素ガスやアルゴンガ
ス、脱ガススチーム等の非酸化性ガス雰囲気や、減圧雰
囲気が用いられ、その雰囲気中酸素濃度は0.01vo
l%以下、好ましくは0.005vol%以下、更に好
ましくは0.001vol%以下である。有機溶剤によ
る内壁面の洗浄は、内壁面に対し、スプレーノズルを介
して有機溶剤を噴射させることによって行うことができ
る。有機溶剤による洗浄後には、溶融装置の底部に滞留
する有機溶剤を排出し、必要に応じ、内部を乾燥処理す
る。なお、気相の酸素濃度の測定には通常のガスクロマ
トグラフィー法あるいは電気化学法による微量酸素分析
計などを利用することができる。
【0050】前記内壁面からの酸素除去処理において
は、その内壁面に付着する酸素量が、内壁面1m2
り、10ミリモル以下、好ましくは5ミリモル以下にな
るように行うのが良い。溶融装置の操作条件としては、
温度:115〜180℃、好ましくは120〜150
℃、圧力:常圧、酸素濃度:0.01vol%以下、好
ましくは0.005vol%以下、更に好ましくは0.
001vol%以下の条件が採用される。結晶アダクト
の溶融に際しては、結晶アダクトをそのまま溶液液化さ
せる方法を採用し得るが、結晶アダクトを短時間で溶融
させるために、その結晶アダクトを精製フェノールのよ
うな着色の殆どない熱フェノールを用いて希釈して溶融
する方法や、結晶アダクトの溶融済みの液中で溶融させ
る方法等を採用することもできる。
【0051】溶融装置で液化させる原料としての結晶ア
ダクトとしては、実質的に中性条件下にあるものの使用
が好ましい。アセトンとフェノールの反応に際しては、
触媒として強酸性物質を使用することから、その反応生
成物中に存在する強酸性物質は、これを反応後、中和点
を超えないように中和するか、反応系から除去すること
が必要であり、また、強酸性物質の中和に用いたアルカ
リが残存するときには、このアルカリも除去することが
必要である。また、反応生成物中に存在する強酸性物質
あるいはアルカリの除去は、反応工程より後の晶析工程
や晶析生成物分離工程等において除去することができ
る。前記した実質的に中性条件下にある結晶アダクトと
は、前記のような強酸性物質やアルカリ性物質の影響の
除去された結晶アダクトを意味するものである。このよ
うな結晶アダクトは、pH5.0を示すように酸度を調
整したメタノール水溶液に添加溶解し、フェノールの実
質的非電離条件下におけるpH測定方法において、pH
4.90〜5.50、好ましくはpH4.95〜5.2
0を示すものである。結晶アダクトとしては、前記した
ように、実質的に中性条件下にあるものを用いるが、こ
の場合、結晶アダクトの溶融色APHAを15以下に保
持するのが好ましい。溶融色APHAが15以下の結晶
アダクトは、晶析工程における晶析段数を増加させるこ
とによって得ることができ、また、結晶アダクトを精製
フェノールで洗浄することによって得ることができる。
【0052】また、実質的に中性条件下にある結晶アダ
クトの溶融液化に際しては、脂肪族カルボン酸を添加す
るのが好ましい。この場合に用いる脂肪族カルボン酸
は、溶融状態にあるビスフェノールAを空気と長時間接
触させたり、高温に保持した際のビスフェノールAの着
色を防止する作用を示すものである。実質的に中性条件
下にある結晶アダクトに対して脂肪族カルボン酸を添加
し、結晶アダクトを溶融し、さらに脱フェノールさせる
ことにより、色相にすぐれかつ着色のないビスフェノー
ルAを得ることができる。脂肪族カルボン酸としては、
ビスフェノールAに対して着色防止効果を示すものであ
ればどのようなものでもよく、従来公知のものが用いら
れる。このようなものとしては、例えば、ギ酸、シュウ
酸、クエン酸、酒石酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ
酸、グリセリン酸等を挙げることができる。これらのも
のは、反応中、160℃以上の温度で分解あるいは異性
化を起して、ビスフェノールAに対する着色防止剤とし
てすぐれた作用を示す。脂肪族カルボン酸の添加量は、
結晶アダクトに対し、1〜100重量ppm、好ましく
は5〜50重量ppmである。また、結晶アダクトをシ
ュウ酸又はクエン酸の存在下で加熱溶融する場合、その
溶融温度は115〜180℃、好ましくは120〜15
0℃であり、溶融圧力は、1〜5atm、好ましくは
1.0〜1.9atmである。溶融雰囲気は、できるだ
け酸素濃度の低い雰囲気が好ましく、通常、酸素濃度
0.005vol%以下、好ましくは0.001vol
%以下の雰囲気の使用が有利である。脂肪族カルボン酸
は、結晶アダクトに添加し得る他、結晶アダクトを分離
する以前の結晶アダクトスラリーに添加してもよく、ま
た、結晶アダクトを溶融して得たビスフェノールAを含
むフェノール溶液に添加してもよく、その添加時期は特
に制約されない。
【0053】脱フェノール工程6は、結晶アダクトの液
化により得られたビスフェノールAを含むフェノール溶
液からフェノールを蒸発除去してビスフェノールAを得
る工程である。この工程で分離されたフェノールはライ
ン29を通って放出され、また、フェノールの除去され
たビスフェノールAはライン28を通って造粒工程7に
送られる。蒸発装置としては、蒸留塔やストリッピング
装置、充填塔、薄膜蒸発器等が用いられる。この蒸発装
置も、前記溶融装置の場合と同様に、その使用に先立
ち、その内壁面を構成する材質の表面に付着する酸素除
去処理を施して用いるのが好ましい。この場合、その内
壁面に付着する酸素量を、内壁面1m2当り、10ミル
モル以下、好ましくは5ミリモル以下になるように除去
するのが好ましい。また、蒸発装置内に蒸発表面積を向
上せしめる部材、例えば、ラッシッヒリング、ボールリ
ング、板体、多孔体等の充填材や棚段が配設されている
場合には、それらの部材に対しても、その表面から酸素
を除去する処理を施すのが好ましい。蒸発装置は、1段
又は多段で用いることができるが、その操作条件として
は、1段で用いる場合にはその1段の蒸発装置及び多段
で用いる場合にはその最終段の蒸発装置の操作条件とし
て、温度:180〜200℃、好ましくは170〜18
5℃、圧力:1〜100トール、好ましくは5〜40ト
ール、雰囲気中酸素濃度:0.005vol%以下、好
ましくは0.001vol%以下の条件が採用される。
【0054】脱フェノール工程を実施する場合の1つの
好ましい態様は、スチームを用いない蒸発工程と、スチ
ームを用いる蒸発工程とを組合せて結晶アダクト溶融液
を蒸発処理する方法である。この蒸発処理方法において
は、結晶アダクト溶融装置からの溶融液は、これを第1
の蒸発塔に導入し、ここでスチームの非存在下、減圧下
において蒸発処理し、その溶融液中のフェノールの一部
を蒸発除去する。この第1蒸発塔の塔頂からは、フェノ
ールを含む蒸気が分離回収され、その底部からは、フェ
ノールの一部が蒸発除去された溶融液が分離回収され
る。この第1蒸発塔からの塔底物は、これを第2蒸発塔
に導入し、ここでスチームの存在下、減圧下において蒸
発処理して、溶融液中の残部フェノールを蒸発除去す
る。この第2蒸発塔からは、その塔頂物として、フェノ
ール、スチーム及び少量のビスフェノールAを含む混合
蒸気が排出され、その塔底物として、高純度ビスフェノ
ールAが分離回収される。スチームを用いない第1蒸発
塔の操作条件としては、温度:125〜200℃、好ま
しくは130〜185℃、圧力:100トール以下、好
ましくは5〜40トールが採用される。蒸発塔内の蒸気
雰囲気中の酸素濃度は、0.005vol%以下、好ま
しくは0.001vol%以下に保持される。この第1
蒸発塔において、結晶アダクト溶融液中に存在するフェ
ノールの95〜99.8重量%、好ましくは98〜9
9.7重量%が蒸発除去される。前記スチームを用いる
第2蒸発塔の操作条件としては、温度:130〜200
℃、好ましくは160〜185℃、圧力:100トール
以下、好ましくは5〜40トール、ビスフェノールA溶
融液1kg当りのスチーム供給量:0.02〜0.2k
g、好ましくは0.04〜0.1kgの条件が採用され
る。蒸発塔内の蒸気雰囲気中の酸素濃度は、0.005
vol%以下、好ましくは0.001vol%以下に保
持される。この第2蒸発塔においては、第1蒸発塔から
得られる結晶アダクト溶融液中のフェノールの実質的全
量が蒸発除去され、塔底物として、フェノール含有率2
00wtppm以下、好ましくは50wtppm以下の
ビスフェノールAが得られる。
【0055】前記のスチームを用いる第2蒸発塔から
は、スチーム、フェノール及び少量のビスフェノールA
を含む混合蒸気が得られるが、この混合蒸気からはフェ
ノール及びビスフェノールAを分離回収する。この混合
蒸気からのフェノール及びビスフェノールAの分離回収
は、従来公知の各種の方法で行うことができるが、本発
明においては、特に、2段階の冷却工程を用いて行うの
が好ましい。次に、この2段階の冷却工程を用いる混合
蒸気からのフェノールの分離回収について詳述する。こ
の方法においては、前記第2蒸発塔から得られフェノー
ル、スチーム及び少量のビスフェノールAを含む混合蒸
気は、これを、その減圧状態のまま第1冷却工程へ供給
し、ここでフェノール又はビスフェノールAを含むフェ
ノールからなる第1冷却媒体と向流接触させて冷却す
る。この第1冷却工程は、混合蒸気中のビスフェノール
Aの実質的全量を冷却媒体中に溶解するように実施す
る。混合蒸気中のスチームは、この第1冷却工程では実
質上凝縮されず、次の第2冷却工程へ送られる。混合蒸
気中のフェノールは、その一部がこの第1冷却工程で凝
縮され、残りの未凝縮のものはスチームとともに次の第
2冷却工程へ送られる。第1冷却工程で混合蒸気から分
離回収されたビスフェノールAとフェノールの混合液
は、その一部を冷却媒体として用いることができる。第
1冷却媒体の温度は、フェノールの凝固点より1〜50
℃程度高い温度である。この第1冷却工程における混合
蒸気からのフェノールの回収率は、この第1冷却工程に
対する全供給フェノールに対し、70重量%以上、好ま
しくは85重量%以上である。
【0056】第1冷却工程で用いる冷却媒体は、混合蒸
気を所望温度に冷却し得るに充分な量であればよく、通
常、混合蒸気に対する重量比で、5〜10、好ましくは
6〜9である。また、第1冷却工程で得られる混合蒸気
中のビスフェノールAとフェノールを溶解した冷却媒体
中に含まれるビスフェノールAの合計ビスフェノールA
のフェノールに対する重量比は、0.05〜0.20、
好ましくは0.08〜0.14である。この第1冷却工
程においては、ビスフェノールAに対し過剰のフェノー
ルが存在することから、ビスフェノールAの凝固点以下
の冷却温度であっても、ビスフェノールAとフェノール
とのアダクトが晶出するようなことはない。
【0057】第1冷却工程の圧力は、100トール以
下、好ましくは5〜40トールであり、前記第2充填塔
における圧力に対応する。また、第1冷却工程における
温度は、前記圧力条件下においてスチームが気体を保持
し、フェノールの一部が液体を保持する温度である。好
ましい冷却温度(ビスフェノールAを凝縮させる温度)
は、42〜90℃、好ましくは45〜55℃である。
【0058】第2冷却工程へ送られたスチームとフェノ
ールの混合蒸気は、ここでフェノールの水溶液からなる
第2冷却媒体と向流接触させて冷却する。この第2冷却
工程は、この工程へ送られたスチームとフェノールの実
質的全量が凝縮液化するように実施し、この工程からは
フェノールの水溶液が回収される。この第2冷却工程で
得られるフェノールの水溶液は、その一部を第2冷却媒
体として用いることができる。水溶液中のフェノール濃
度は、混合蒸気の組成及び第1冷却工程の条件で決まる
が、通常、55〜75重量%である。また、この第2冷
却媒体の温度は、スチームの凝縮温度より1〜10℃程
度低い温度である。
【0059】第2冷却工程で用いる第2冷却媒体は、混
合蒸気の全量を凝縮させるに充分な量であればよく、通
常、第1冷却工程から送られたスチームとフェノールと
の混合蒸気に対する重量比で、100〜300、好まし
くは190〜250である。この第2冷却工程の圧力
は、100トール以下、好ましくは5〜40トールであ
り、第1冷却工程の圧力に対応する。第2冷却工程にお
ける冷却温度(スチーム凝縮温度)は、前記圧力条件下
においてスチームとフェノールの混合蒸気の全量が凝縮
液化する温度であればよい。
【0060】第1冷却工程及び第2冷却工程において用
いる冷却器は、気液接触型の装置であればよく、任意の
ものが用いられる。このような冷却器としては、例え
ば、充填塔や、スプレー塔等を用いることができる。充
填塔を用いる場合、その充填物としては、圧力損失を抑
えるように、ラッシッヒリングや、ポールリング、多孔
金属板等を用いるのがよい。また、第1冷却工程と第2
冷却工程で用いる冷却器は、それぞれ別個に設置するこ
ともできるが、2つの冷却器を含む一塔型の装置であっ
てもよい。
【0061】次に、前記混合蒸気の凝縮処理方法の1つ
の実施態様について、図面を参照して説明する。図7に
おいて、101は第1冷却器、102は第2冷却器を示
す。ライン103は、スチームを用いる前記第2蒸発塔
に接続する混合蒸気ラインを示す。ライン104は排気
ポンプ(図示されず)及び冷却器に接続する真空ライン
であり、前記した結晶アダクト溶融液からフェノールを
蒸発除去する第1蒸発塔(図示されず)、第2蒸発塔
(図示されず)、第1冷却器1及び第2冷却器2を含む
全装置系は減圧条件に保持される。第2蒸発塔からの混
合蒸気は、ライン103を通って第1冷却器101の下
部に供給され、ここで、ライン105を通って第1冷却
器の上部から導入される第1冷却媒体(フェノール又は
ビスフェノールAを含むフェノール)と向流接触する。
この第1冷却器で凝縮したビスフェノールAとフェノー
ルを溶解した冷却媒体は、抜出しポンプ107を含むラ
イン106を通って第1冷却器の底部から抜出される。
このライン106を通って抜出される冷却媒体は、必要
に応じ、その一部を所要温度に冷却した後、冷却媒体と
してライン105にリサイクルすることもできる。
【0062】第1冷却器1の頂部からライン108を通
って抜出されるスチームとフェノールの混合ガスは、第
2冷却器102の下部に導入され、ここで、ライン10
9を通って第2冷却器の上部から導入される第2冷却媒
体(フェノールの水溶液)と向流接触する。この第2冷
却器でスチームとフェノールの混合蒸気は凝縮液化し、
この凝縮液は冷却媒体とともに第2冷却器102の底部
から抜出しポンプ111を含むライン110を通って抜
出され、その一部はライン113を通り、冷却媒体用の
冷却器114を通って冷却された後、ライン109を通
り、第2冷却器にリサイクルされる。ライン111を通
って抜出された凝縮スチームとフェノールを含む冷却媒
体の残部はライン112を通って系外へ抜出される。
【0063】次に、前記混合蒸気の凝縮処理法におい
て、第1冷却器と第2冷却器を含む一塔型の冷却装置を
用いた場合の系統図を図8に示す。図8において、13
0はその内部に第1冷却器101と第102冷却器2を
備えた一塔型の冷却装置である。この冷却装置は、第1
冷却器1と第2冷却器2との中間に中央部に開口を有す
る仕切板125を配設し、その開口に筒体123を立設
した構造を有する。この装置において、筒体123の外
周面と冷却装置130の内壁との間に形成される環状中
空室は、液体を貯留するためのものである。122は、
第2冷却器102を流下する液体を前記環状中空室に案
内するための案内板である。筒状空間124はガス通路
を示す。なお、図8における符号において、図7に示し
たものと同じ符号は同じ意味を示す。また、図8におい
ては、図7に示した流量コントロール系は図示されてい
ない。
【0064】前記のような混合蒸気の凝縮処理によれ
ば、スチームを用いる第2蒸発塔から得られる、スチー
ム、フェノール及びビスフェノールAを含む混合蒸気
を、昇圧することなく、100トール以下の減圧状態の
ままで冷却凝縮させることができる。しかも、この場
合、100トール以下という低い圧力条件と、それに応
じた低いスチーム凝縮温度条件を採用したにもかかわら
ず、ビスフェノールAやフェノールの結晶は何ら析出し
ない。従って、このような凝縮処理法においては、固体
析出による冷却器の効率低下や、冷却器の閉塞トラブル
は何ら生じない。しかも、混合蒸気を構成するスチー
ム、フェノール及びビスフェノールAの全てが凝縮さ
れ、真空排気系にはそれらの蒸気は実質的に流入されな
い。従って、真空排気ポンプは、装置系を所定の減圧条
件に保持するだけであるので、排気容量の小さなもので
済み、設備コスト及びエネルギーコスト的に非常に有利
である。さらに、このような混合蒸気の凝縮処理を採用
するときには、混合蒸気の冷却凝縮処理を100トール
以下の極めて低い圧力で実施し得ることから、その前段
の第1蒸発塔及び第2蒸発塔を低圧で行うことができ
る。従って、第2蒸発塔からは、フェノール含有率が極
めて低い高純度のビスフェノールA、例えば、フェノー
ル含有率が200ppm以下、特に50ppm以下とい
う極めて低い高純度ビスフェノールAを得ることができ
る。
【0065】脱フェノール工程を実施する場合の他の好
ましい方法は、結晶アダクト溶融液を複数の薄膜蒸発器
を用いて蒸発処理する方法である。この蒸発処理を図面
を参照して以下に説明する。図9において、201,2
02及び203は薄膜蒸発器を示す。このものは、その
内周壁に形成した薄膜を外部からの加熱により蒸発させ
る構造のものである。この薄膜蒸発器においては、内部
に回転翼を有し、その回転翼の回転によってその内周壁
面に液膜を形成するようにした遠心薄膜蒸発器の使用が
好ましい。また、図9において、204は、各薄膜蒸発
器に付設された外部ヒータである。このものは、通常、
加熱媒体が流通するジャケットとして構成される。
【0066】原料として用いる結晶アダクト溶融液とし
ては、実質的に中性条件下にあり、溶融色が15APH
A以下のビスフェノールA・フェノール結晶アダクトを
加熱によって溶融するか又は精製フェノールで希釈溶解
させて、ビスフェノールAを含むフェノール溶液とした
ものが好ましく用いられる。結晶アダクト溶液は、ビス
フェノールAを50〜80重量%、好ましくは60〜7
5重量%を含有するフェノール溶液からなる。この原料
フェノール溶液は、ライン210から第1薄膜蒸発器
(以下、単に蒸発器とも言う)201に導入され、フェ
ノール溶液は、この蒸発器の内周壁を液膜として流下す
るとともに、その間に外部ヒータ204により加熱さ
れ、フェノール及びビスフェノールAを含む蒸気がライ
ン211を通って排出される。この蒸気は、これを凝縮
処理して、フェノール及びビスフェノールAを回収す
る。ライン210を通るフェノール溶液の温度は120
〜150℃、第1蒸発器201の温度は、160〜18
5℃、その圧力は15〜60トール、好ましくは15〜
30トールである。また、第1蒸発器内は実質的に無酸
素条件下に保持される。第1蒸発器201において、原
料フェノール溶液を蒸発処理して得られた残液(ビスフ
ェノールA)は、ライン212を通って抜出され、第2
蒸発器202に導入される。ライン212を通るフェノ
ール溶液の蒸発残液の温度は、170〜185℃であ
る。また、この残液を構成するビスフェノールA中のフ
ェノール濃度は、1〜5重量%である。第2蒸発器20
2においては、ビスフェノールAは、第3蒸発器203
から抜出されるスチーム、フェノール及びビスフェノー
ルAからなるストリッピングガスと向流接触しながら、
外部ヒータ204により加熱され、フェノール、ビスフ
ェノールA及びスチームを含むストリッピングガスがラ
イン213を通って排出される。第2蒸発器2における
温度は170〜185℃、圧力は15トール以下、通
常、10〜15トールである。また、第2蒸発器内は実
質的に無酸素下に保持される。
【0067】第2蒸発器2で得られる蒸発残液は、ライ
ン214を通って第3蒸発器203に導入される。この
残液の温度は170〜185℃、残液を構成するビスフ
ェノールA中のフェノール濃度は0.05〜0.10重
量%、好ましくは0.05〜0.07重量%である。第
3蒸発器203においては、第2蒸発器202からのビ
スフェノールAは、ライン215を通って導入されるス
チームと向流接触しながら、外部ヒータ204によって
加熱され、ストリッピングガスがライン217を通って
抜出され、このストリッピングガスは、第2蒸発器20
2にそのストリッピング用ガスとして導入される。第3
蒸発器における温度は170〜185℃、圧力は15ト
ール以下、通常10〜15トールである。また、第3蒸
発器内は実質的に無酸素下に保持される。ライン215
から第3蒸発器203に導入されるスチーム量は、ライ
ン214を通って第3蒸発器203に導入されるビスフ
ェノールAに対して、重量比で、3重量%以上、好まし
くは4〜6重量%である。ライン217を通るストリッ
ピングガスの組成は、フェノール:0.8〜1.2重量
%、好ましくは1重量%以下、ビスフェノールA:5〜
7重量%、残部:スチームである。第3蒸発器203に
おいて得られた高純度ビスフェノールAは、ライン21
6を通って抜出される。このビスフェノールAは、フェ
ノール含有率が0.005重量%のもので、その色相A
PHAが20以下の高品位のものである。
【0068】第2蒸発器202からライン213を通っ
て抜出されるストリッピングガスは、凝縮処理に付さ
れ、そのガスに含まれるフェノール及びビスフェノール
Aが分離回収される。このストリッピングガスの凝縮処
理は、図7及び図8に示した系統図に従って好ましく行
われる。
【0069】前記した薄膜蒸発器を用いる方法において
は、フェノールA・フェノール結晶アダクトから誘導さ
れたビスフェノールAを含むフェノール溶液を雰囲気中
の酸素濃度0.005vol%以下の条件で、先ず第1薄
膜蒸発器を用いて蒸発処理し、フェノール含有率が1〜
5重量%のビスフェノールAを得るが、この場合、その
第1薄膜蒸発器の温度を160〜185℃、圧力を15
〜60トールの条件に保持したことから、フェノールの
急速な蒸発による冷却が生じても、ビスフェノールAが
析出するようなことなく、円滑にその蒸発処理を実施す
ることができる。また、前記方法においては、前記のよ
うにして第1蒸発器から得られたビスフェノールAを、
それに含まれるフェノールを蒸発除去するために、薄膜
蒸発器を用いてスチームストリッピング処理するが、こ
の場合、そのビスフェノールA中のフェノール含有量が
1〜5重量%と低く、かつ2つの薄膜蒸発器を直列に結
合して用いたことから、それらの蒸発器の温度を170
〜180℃に保持し、かつ15トール以下の高真空に保
持して、そのビスフェノールA中のフェノールを蒸発除
去することが可能になり、色相にすぐれるとともに、フ
ェノール含有率が0.005重量%以下の高純度ビスフ
ェノールAを得ることができる。
【0070】色相にすぐれたビフェノールAを得るに
は、その製造原料であるビスフェノールAを含むフェノ
ール溶液及びその溶液を蒸発処理する場合の温度を、1
90℃以下、特に、185℃以下に保持し、インプロペ
ニルフェノール等の着色不純物の生成の抑制することが
必要であるが、前記方法の場合は、その蒸発処理温度
を、185℃以下に保持しかつ蒸発器内を実質的に無酸
素下に保持してフェノールを実質的に完全に蒸発除去す
るので、得られるビスフェノールAは、APHA20以
下の色相のすぐれた高純度のものである。さらに、前記
方法においては、第3薄膜蒸発器で生成したフェノー
ル、ビスフェノールAを含むスチームからなるストリッ
ピングガスを、第2薄膜蒸発器に対するストリッピング
用スチームガスとして用いることから、第2薄膜蒸発器
におけるフェノールストリッピング効果が高くなるとい
う利点もある。さらにまた、前記した蒸発処理によれ
ば、全体的に極めて短かい滞留時間(通常、60〜12
0秒)で蒸発処理を行うことができるので、その処理効
率は非常に高いものとなる。特に、第1薄膜蒸発器、第
2薄膜蒸発器及び第3薄膜蒸発器は、それらを上方から
その順に結合し、液体の流れを重力により上方から下方
に流下させることが望ましく、これによって酸素リーフ
の防止を効果的に行えるとともに、装置系内における液
体の滞留時間を短かく保持することができる。
【0071】造粒工程7は、前記脱フェノール工程で得
たビスフェノールAを粒状物に成形する工程である。こ
の造粒工程としては、ビスフェノールAを造粒し得る方
法であれば任意の工程が採用できる。一般的には、ビス
フェノールAの溶融液を、冷却用不活性雰囲気中におい
て、液滴状で落下させるとともに、その間に冷却固形化
させる方法が採用される。ビスフェノールA粒状物の粒
径は、通常、0.5〜5mm程度である。また、ビスフ
ェノールAの造粒に際しては、必要に応じ、ビスフェノ
ールAのの溶融液滴の結晶固形化を促進させる結晶核剤
を微量添加させることもできる。
【0072】
【実施例】次に本発明を実施例によってさらに詳細に説
明する。
【0073】(I)反応工程1 従来公知の方法に従って、スルホン酸基を有するイオン
交換樹脂の存在下、アセトンとフェノールとの反応を行
った。この場合、アセトン1モル当りフェノール14モ
ルを用いた。反応は60℃で行った。このようにして得
られた反応生成物の組成は以下の通りであった。アセトン : 0.8wt% 水 : 1.0wt% フェノール :73.6wt% ビスフェノールA:18.8wt% その他 : 5.8wt%
【0074】(II−1)分離工程(図2) 図2に示す系統図に従って、前記反応工程1で得られた
フェノールとアセトン反応生成物を蒸留処理した。この
際に用いた主要な操作条件を図2に示したライン又は装
置との関係で以下に示す。 (1)ライン40を通る塔頂物(I) (i)成分組成 アセトン : 5.8wt% フェノール : 7.2wt% 水 : 86.1wt% その他 : 0.9wt% (2)ライン42を通る塔頂物(II) (i)成分組成 アセトン : 18.5wt% 水 : 22.5wt% 共沸剤 : 55.6wt% その他 : 3.4wt% (3)ライン41を通る塔底物(II) (i)成分組成 フェノール : 99.0wt% 共沸剤 : 0.5wt% その他 : 0.5wt% (4)ライン46を通る塔頂物(III) (i)成分組成 アセトン : 85.1wt% 水 : 1.0wt% その他 : 13.9wt% (5)ライン48を通る排水 (i)成分組成 水 : 99.95wt% フェノール : 0.05wt%
【0075】(II−2)分離工程2(図3) 図3に示す装置系統図に従って、前記反応工程1で得ら
れたフェノールとアセトンとの反応生成物を処理した。
この際に用いた主要な操作条件を図3に示したライン又
は装置との関係で以下に示す。 (1)ライン40を通る塔頂物(I) (i)成分組成 アセトン : 29.0 wt% 水 : 38.8 wt% フェノール : 29.9 wt% その他 : 2.3 wt% (2)ライン46を通る塔頂物(II) (i)成分組成 アセトン : 89.7 wt% 水 : 2.1 wt% その他 : 8.2 wt% (3)ライン47を通る塔底物(II) (i)成分組成 水 : 55.5 wt% フェノール : 44.2 wt% その他 : 0.3 wt% (4)ライン48を通る塔頂物(III) (i)成分組成 水 : 99.7 wt% フェノール : 0.2 wt% その他 : 0.1 wt% (5)ライン41を通る塔底物(III) (i)成分組成 フェノール : 99.0 wt% その他 : 1.0 wt%
【0076】(III)晶析工程3(図4) 図4に示した装置系統図に従って、ビスフェノールAを
含むフェノール溶液を晶析処理して、結晶アダクトを含
むスラリー(晶析生成物)を得た。この場合の主要操作
条件を、図4において符号で示したライン又は装置との
関係で以下に示す。 (1)ライン62における供給原料の成分組成 ビスフェノールA:22重量% フェノール:74重量% その他:4重量% (2)晶析塔A (i)温度:50℃ (ii)滞留時間:120分 (3)晶析塔Aに付設した微結晶アダクト溶解タンク5
7 (i)温度:51℃ (ii)滞留時間:6分 前記実験において、ライン73を通って得られるスラリ
ーから分離された結晶アダクト中の粒径100μm以下
の微粒子の割合は、20重量%であった。
【0077】(IV)晶析生成物分離工程4 ビスフェノールAを含むフェノール溶液を晶析処理して
得られた結晶アダクトスラリーを、106μmの目開き
を有する濾布をセットした濾過機により、スラリー温度
を50℃に保持しながら減圧濾過した後、得られた結晶
アダクトケークを、前記(II−1)の分離工程2から
得られた精製フェノールにより洗浄した。この洗浄結晶
アダクト中の100μm以下の微結晶アダクト成分の割
合は5重量%であった。この結晶アダクトの溶融色は1
0APHAで、着色不純物の濃度は著しく低いものであ
った。また、この結晶アダクトに含まれるクロマン化合
物(着色性不純物)の濃度は100wtppmであっ
た。
【0078】(V)晶析生成物から分離された母液の精
製処理(図5) 図5に示した装置系統図に従って、ビスフェノールAを
含むフェノール溶液の晶析生成物から分離した母液を処
理した。この際に用いた主要な操作条件を、図5に示し
たライン又は装置との関連で以下に示す。 (1)ライン18を通る母液 (i)成分組成 フェノール:86.3重量% ビスフェノールA:7.7重量% 2,4′−ビスフェノールA:2.4重量% その他トリスフェノール、ポリフェノール、 着色不純物及び着色性不純物など:3.6重量% (ii)色相APHA:500以上 (2)フェノール蒸留塔(5) (i)塔底温度:170℃ (ii)圧力 :170トール (3)ライン11を通る留出液 (i)成分組成 フェノール:99.8重量%以上 (ii)色相APHA:10 (4)ライン81を通る塔底物(濃縮母液) (i)成分組成 フェノール:14.8重量% ビスフェノールA:48.5重量% 2,4′−ビスフェノールA:14.8重量% その他トリスフェノール、ポリフェノール、 着色不純物及び着色性不純物など:21.9重量% (ii)色相APHA:500以上 (5)ライン83における塩基性触媒(NaOH)の添
加量:ライン81を通る濃縮母液に対して0.05重量
% (6)反応条蒸留塔(D) (i)塔底温度:250℃ (ii)圧力 :40トール (7)ライン89を通る留出蒸気 (i)成分組成 フェノール:92.6重量% イソプロペニルフェノールおよびその他:7.4重量% (ii)色相APHA:200 (8)ライン88を通る塔底液 (i)成分組成 フェノール:0.5重量% ビスフェノールA:5.5重量% その他のポリフェノール高沸点物など:90重量%以上 (ii)抜出量:ライン81を通る濃縮母液に対して1
7.0重量% (9)強酸型イオン交換樹脂塔(R) (i)温度:53℃ (ii)圧力:760トール (10)ライン92を通る生成物 フェノール:89.5重量% ビスフェノールA:8.0重量% その他、不純物:2.5重量% (ii)色相APHA:70以下
【0079】(VI-1)結晶アダクト液化工程6及び結晶
アダクト溶融液の脱フェノール工程7 結晶アダクト溶融装置として、SUS304製の外部加
熱式密閉容器を用い、蒸発装置として、SUS304製
のストリッピング装置を用いた。溶融装置の上部に結晶
アダクト供給管を付設し、また、その底部には溶融液配
管を付設し、この溶融液配管をストリッピング装置の中
間部に連結した。また、このストリッピング装置の上部
にはフェノール蒸気排出用の配管を付設し、またその底
部にはビスフェノールAの溶融液排出用の配管を付設し
た。なお、前記した配管はいずれもSUS304製であ
った。次に、前記のようにして構成された装置系におい
て、その溶融装置の内壁面、ストリッピング装置の内壁
面、溶融装置とストリッピング装置との間の配管、スト
リッピング装置に付設したビスフェノールA溶融の液の
排出用配管に対して、以下のようにしてその内壁面を洗
浄した。 (1)溶融装置内壁面の洗浄 スプレーノズルを介して、常圧下、130℃のフェノー
ル液を内壁面に噴射させて、内壁面を充分に洗浄した
後、150℃のフェノール/ビスフェノールA混合液
(混合重量比:65/35)を噴射させて内壁面を充分
に洗浄した。 (2)ストリッピング装置内壁面の洗浄 常圧下、130℃のフェノールを、その装置上部に付設
されたスプレーノズルから流させて装置内中心部の洗浄
を行った後、130℃のフェノール次いで150℃のフ
ェノール/ビスフェノールA混合物(混合重量比=65
/35)により装置壁面が充分濡れるように流通させ
た。次いで、180℃、10トールの条件でフェノール
/ビスフェノールA混合物(混合重量比=65/35)
を流通させた。 (3)配管内壁面の洗浄 130℃のフェノールを配管内を流通させて洗浄した。
その際、管内壁面に気相が存在しないように注意した。
なお、前記の洗浄により、各装置及び配管の内壁面に付
着する酸素量は、内壁面1m2当り5ミリモル以下であ
ることが確認された。
【0080】次に、前記のようにして、結晶アダクトの
溶融液及びビスフェノールAの溶融液が接触する装置及
び配管の内壁面があらかじめ酸素除去された装置系を用
いて精製結晶アダクト(溶融色APHA:5)からフェ
ノールを蒸発除去して、ビスフェノールAを分離した
(実験A)。また、前記における溶融装置及びストリッ
ピング装置の操作条件は以下の通りである。 (溶融装置) 温度:130℃ 圧力:常圧 雰囲気酸素濃度:0.0005vol% (ストリッピング装置) 温度:175℃ 圧力:10トール 雰囲気酸素濃度分圧:0.0015vol%
【0081】また、参考のために、溶融装置、ストリッ
ピング装置及び配管の各内壁を洗浄処理しない以外は同
様にして実験を行った(実験B)。次に、前記実験A及
び実験Bで得たビスフェノールAの175℃における溶
融色を次表にまとめて示す。
【0082】
【表1】
【0083】(VI-2)結晶アダクト液化工程6及び結晶
アダクト溶融液の脱フェノール工程7 結晶アダクト溶解装置として、SUS316製の外部加
熱式密閉容器を用い、結晶アダクト溶融液の蒸発処理装
置として、内部にSUS316製の充填材を充填したS
US304製の2つの充填塔を用いた。溶融装置には、
その上部に結晶アダクト供給管を付設し、その底部に溶
融液配管を付設し、この配管を第1充填塔の中間部に連
結した。この第1充填塔には、その塔頂部にフェノール
蒸気排出用配管を付設し、その底部にビスフェノールA
とフェノールを含む溶融液配管を付設し、この配管を第
2充填塔の中間部に連結した。この第2充填塔の塔頂部
はフェノール、スチーム及び少量のビスフェノールAを
含む混合蒸気排出用配管を付設し、この配管は、これを
図1に示した冷却凝縮装置に連結させた。また、この第
2充填塔の塔底部には、ビスフェノールA排出配管と、
スチーム供給配管を付設した。なお、前記した第1充填
塔及び第2充填塔の各底部には、加熱スチームを流通さ
せる加熱コイルを配設した。また、前記した各配管はい
ずれもSUS316製のものであった。
【0084】次に、前記のようにして構成された装置系
において、その溶融装置の内壁面、第1充填塔及び第2
充填塔の内壁面及びその充填材表面、溶融装置と第1充
填塔との間の配管、第1充填塔と第2充填塔との間の配
管及び第2充填塔の底部に配設したビスフェノールA排
出配管に対して、以下のようにして付着酸素除去用の洗
浄処理を施した。 (1)溶融装置内壁面の洗浄 スプレーノズルを介して常圧下、130℃のフェノール
液を内壁面に噴射させて、内壁面を充分に洗浄した後、
150℃のフェノール/ビスフェノールA混合液(混合
重量比=65/35)を噴射させて内壁面を充分に洗浄
した。 (2)充填塔内壁面及び充填材表面の洗浄 常圧下、130℃のフェノールを、その装置の上部に付
設されたスプレーノズルから流入させて装置内の洗浄を
行った後、130℃のフェノール次いで150℃のフェ
ノール/ビスフェノールA混合物(混合重量比=65/
35)により装置壁面および充填材表面が充分濡れるよ
うに流通させた。次いで180℃、10トールの条件で
フェノール/ビスフェノールA混合物(混合重量比=6
5/35)を流通させた。 (3)配管内壁面の洗浄 130℃のフェノールを配管内を流通させて洗浄した。
その際、管内壁面に気相が存在しないように注意した。
なお、前記の洗浄により、溶融装置内壁面、充填塔内壁
面とその充填材表面及び配管の内壁面に付着する酸素量
は、表面積1m2当り5ミリモル以下であることが確認
された。
【0085】次に、結晶アダクトの溶融液及びビスフェ
ノールAの溶融液が接触する溶融装置、充填塔、充填材
及び配管の表面があらかじめ酸素除去された前記装置系
を用いて、精製結晶アダクト(溶融色APHA:5)から
フェノールを蒸発除去して、ビスフェノールAを分離回
収するとともに、第2充填塔の塔頂から得られる混合蒸
気の冷却凝縮処理を行った。また、前記における溶融装
置、第1充填塔、第2充填塔及び冷却凝縮装置系のの操
作条件は以下の通りである。 (溶融装置) 温度:130℃ 圧力:常圧 雰囲気酸素濃度:0.0005vol% (第1充填塔) 温度:170℃ 圧力:10トール 蒸気雰囲気中酸素濃度:0.0015vol% (第2充填塔) 温度:180℃ 圧力:10トール スチーム供給量:溶融液1kg当り0.08kg 蒸気雰囲気中酸素濃度:0.0002vol% (図7の第1冷却器の操作条件) (1)ライン103から第101冷却器1に導入される
ストリッピングガス 圧力:10トール 温度:180℃ 組成:ビスフェノールA25wt%、フェノール25w
t%、スチーム50wt% (2)ライン105から導入される第1冷却媒体(フェ
ノール) 温度:50℃ 冷却媒体/ストリッピングガス重量比:6 (3)冷却器101におけるストリッピングガスからの
ビスフェノールAの回収率:100%
【0086】(図7の第2冷却器の操作条件) (1)ライン108から第2冷却器に導入される未凝縮
ガス 圧力:10トール 温度:51℃ 組成:フェノール65wt%、スチーム35wt% (2)ライン109から第2冷却器102に導入される
第2冷却媒体(フェノール水溶液) 温度:9℃ 冷却媒体/未凝縮ガス重量比:190 (3)冷却器102における未凝縮ガスからのフェノー
ル及びスチームの各回収率 フェノール回収率:100% スチーム回収率:100%
【0087】(VII)結晶アダクト溶融液の脱フェノール
工程 (実験I)実質的に中性条件下(pH5.05)にあ
り、溶融色がAPHA5であるビスフェノールA・フェ
ノール結晶アダクトを、精製フェノールで部分希釈し、
130℃に加熱してビスフェノールA30重量%を含む
フェノール溶液とした。このフェノール溶液を原料液と
して用い図9に示す蒸発装置系を用いて処理した。次
に、図9に示した装置系の主要な運転条件及び主要ライ
ンを通る液体の成分組成について以下に示す。 (1)第1蒸発器201 (i) 外部ヒータ温度:170℃ (ii) 内部圧力 :20トール (iii) 雰囲気中酸素濃度:0.0010vol% (2)第2蒸発器202 (i) 外部ヒータ温度:180℃ (ii) 内部圧力 :10トール (iii) 雰囲気中酸素濃度:0.0030vol% (3)第3蒸発器203 (i) 外部ヒータ温度:180℃ (ii) 内部圧力 :10トール (iii) 雰囲気中酸素濃度:0.0030vol% (4)ライン216を通るビスフェノールA (i)フェノール含有率:29wtppm (ii) 溶融色:APHA15 (5)ライン215を通るスチーム供給量:ライン21
4を通るビスフェノールA1重量部当り0.04重量部
【0088】(実験II)実験Aにおいて、原料としての
ビスフェノールAを含むフェノール溶液に、表2に示す
添加剤を20wtppm添加した以外は同様にして実験
を行った。この実験により、ライン16を通して高純度
ビスフェノールA(APHA:10、フェノール含有
率:27wtppm)を得た。次に、このビスフェノー
ルAを、空気雰囲気下で175℃で0時間又は2時間加
熱保持する熱安定性試験(試験A)及び空気を175℃
で2.0時間吹込む加速熱安定性試験(試験B)に付し
て、その際の色相を評価した。その結果を表2に示す。
【0089】
【表2】
【0090】
【発明の効果】本発明によれば、分離工程でビスフェノ
ールAを含むフェノール溶液及びフェノールを分離する
とともに、アセトンを分離させ、そのアセトンを反応工
程に循環するアセトン循環工程を含むことから、アセト
ンを有効に利用することができる。また、本発明では、
晶析生成物から分離された母液を精製処理して反応系に
循環させる工程を含むことから、反応系での副生物や不
純物の蓄積を防止し、高純度で色相の良いビスフェノー
ルAを得ることができる。さらに、本発明では、特定の
工程を有機的に結合させた一連の工程からなることか
ら、高品質のビスフェノールAを効率よくかつ経済的に
製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によりビスフェノールAを製造するため
の工程図を示す。
【図2】アセトンとフェノールとの反応生成物を特定成
分に分離するための1つの例についての蒸留処理系統図
を示す。
【図3】アセトンとフェノールとの反応生成物を特定成
分に分離するための他の例についての蒸留処理系統図を
示す。
【図4】ビスフェノールAを含むフェノール溶液の晶析
工程の1つの例についての晶析系統図を示す。
【図5】晶析生成物から分離された母液の処理方法の1
つの例についての処理系統図を示す。
【図6】反応蒸留塔に加熱処理装置と滞留槽を付設した
説明図を示す。
【図7】スチームとフェノールの混合蒸気の凝縮処理方
法の系統図を示す。
【図8】スチームとフェノールの混合蒸気の凝縮処理法
において、第1冷却器と第2冷却器を含む一塔型の冷却
装置を用いた場合の系統図を示す。
【図9】薄膜蒸発器を用いて脱フェノール工程を実施す
る方法についての系統図を示す。
【符号の説明】
1 反応工程 2 分離工程 3 晶析工程 4 晶析生成物分離工程 5 液化工程 6 脱フェノール工程 7 造粒工程 8 蒸留工程 9 加熱工程(反応槽) 10 減圧回収工程(減圧蒸発塔) 31,32,33,34 蒸留塔 35 強酸型イオン交換樹脂処理装置 36,37 静置槽 55 外筒 56 内筒 57 微結晶アダクト溶解タンク 101,102 冷却器 R 強酸型イオン交換樹脂塔
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 須田 信幸 神奈川県横浜市鶴見区鶴見中央二丁目12 番1号 千代 田化工建設株式会社内 (72)発明者 野村 誠 神奈川県横浜市鶴見区鶴見中央二丁目12 番1号 千代 田化工建設株式会社 (56)参考文献 特開 平3−284641(JP,A) 特開 平3−95135(JP,A) 特開 平2−28026(JP,A) 特公 昭55−34779(JP,B1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C07C 39/00 C07C 37/00

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アセトンと過剰量のフェノールとを酸触
    媒の存在下で反応させてビスフェノールAを生成させる
    反応工程、該反応工程から得られた反応生成物を、アセ
    トンと、水と、フェノールと、ビスフェノールAを含む
    フェノール溶液とに分離する分離工程、該ビスフェノー
    ルAを含むフェノール溶液からビスフェノールAとフェ
    ノールとの結晶アダクトを析出させる晶析工程、該晶析
    工程で得られた晶析生成物から結晶アダクトと母液を分
    離する晶析生成物分離工程、該晶析生成物分離工程で得
    られた結晶アダクトを液化する結晶アダクト液化工程及
    び該結晶アダクト液化工程で得られたビスフェノールA
    を含むフェノール溶液からフェノールを除去する脱フェ
    ノール工程を備え、さらに、前記分離工程から分離され
    たアセトンを反応工程に循環させるアセトン循環工程、
    該分離工程で得られたフェノールの少なくとも一部を晶
    析生成物分離工程に結晶アダクト洗浄液として循環させ
    るフェノール循環工程、該晶析生成物分離工程で得られ
    た母液を反応工程に循環させる母液循環工程及び該循環
    母液の一部を精製する母液精製工程及び該母液精製工程
    で得られた精製母液を反応工程に循環させる精製母液循
    環工程を含み、該母液精製工程が、 (i)該母液を蒸留塔に導入し、該蒸留塔に導入した母
    液の50〜90重量%を留出させてフェノールを含む留
    出液を得る蒸留工程、 (ii)該蒸留工程(i)で得られた蒸留塔の塔底液を、
    塩基性触媒の存在下で200〜350℃に加熱する加熱
    工程、 (iii)該加熱工程(ii)で得られた生成物を減圧蒸発し
    て、フェノール及びイソプロペニルフェノールを含む留
    出蒸気を得る減圧回収工程、 (iv)該減圧回収工程(iii)で得られた留出蒸気を、蒸
    留工程(i)で得られた留出液と接触させて急冷する急
    冷工程、 からなる ことを特徴とするビスフェノールAの製造方
    法。
  2. 【請求項2】 該脱フェノール工程においてビスフェノ
    ールAを含むフェノール溶液からフェノールを除去する
    に際し、ビスフェノールAを含むフェノール溶液を、薄
    膜蒸発器を用い、雰囲気中の酸素濃度0.005vol%以
    下の条件で160〜185℃の温度及び15〜60トー
    ルの圧力下で蒸発処理して、フェノール含有率が1〜5
    重量%のビスフェノールAを得るフェノール蒸発工程
    と、該フェノール蒸発工程で得られたフェノールを含む
    ビスフェノールAを、170〜185℃の温度及び15
    トール以下の圧力下でストリッピング用ガスと向流接触
    させてストリッピング処理する第1ストリッピング工程
    と、該第1ストリッピング工程で得られたフェノールを
    含むビスフェノールAを、170〜185℃の温度及び
    15トール以下の圧力下でストリッピング用ガスと向流
    接触させてストリッピング処理する第2ストリッピング
    工程とからなり、該第2ストリッピング工程におけるス
    トリッピング用ガスとしてスチームを用い、該第1スト
    リッピング工程におけるストリッピング用ガスとして、
    第2ストリッピング工程で得られたフェノール及びビス
    フェノールAを含むスチームからなるストリッピングガ
    スを用いることを、特徴とする請求項1の方法。
  3. 【請求項3】 ビスフェノールAを含むフェノール溶液
    に、脂肪族カルボン酸を添加混合する請求項2の方法。
  4. 【請求項4】 加熱工程(ii)と減圧回収工程(iii)
    を、反応塔を用いて同時に行う請求項1〜3のいずれか
    の方法。
  5. 【請求項5】 反応塔からその塔底液の一部を抜出し、
    塩基性触媒の存在下で200〜350℃の温度で加熱処
    理した後、反応塔に循環する請求項の方法。
  6. 【請求項6】 急冷工程(v)で得られた急冷物を、反
    応工程に循環するに際し、該急冷物を強酸型イオン交換
    樹脂と接触させた後、反応工程に循環する請求項1〜5
    のいずれかの方法。
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