JP3399149B2 - フタロシアニン顔料の製造方法 - Google Patents

フタロシアニン顔料の製造方法

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    • C09B67/0023Wet grinding of pigments of phthalocyanines

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、有機顔料の中でも耐候
性、耐熱性、耐薬品性等の諸性質が非常に優れており、
色調鮮明で、着色力が大きいこと等から工業分野におい
て多量に使用されているフタロシアニン顔料の製造方法
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】フタロシアニン顔料の中でも銅フタロシ
アニン顔料が最も代表的であるため、以下銅フタロシア
ニン顔料を例として述べる。銅フタロシアニン顔料は有
機顔料の中でも耐候性、耐熱性、耐薬品性等の諸性質が
非常に優れており、また色調鮮明で着色力が大きいこと
などから色材工業の分野において多量に、しかも広範に
使用されている。
【0003】通常、銅フタロシアニンクルードは無水フ
タル酸またはその誘導体に、尿素またはその誘導体、銅
またはその化合物と触媒の存在下もしくは不存在下、ア
ルキルベンゼン、トリクロロベンゼンあるいはニトロベ
ンゼン等の有機溶媒中、150〜250℃、好ましくは
170〜220℃で、2〜15時間、好ましくは3〜7
時間、常圧または加圧下で反応させることにより、製造
される。しかしながら、合成されたフタロシアニン分子
はその合成溶媒中で次々に結晶成長を起こし、その長径
が10〜20μm程度の粗大に針状化した結晶径でしか
得られず、インキ、塗料、プラスチック等の着色用顔料
としてはその価値は非常に低いか、全くない。
【0004】したがって、その銅フタロシアニンクルー
ドは色彩上利用価値の高い粒子、すなわち0.01〜
0.05μm程度まで微細化すること(以後その操作を
顔料化と称す)が必要となる。この顔料化手段として従
来から種々の方法が提案されているが、濃硫酸などの酸
類に溶解もしくは湿潤させた後、多量の水の中に注入し
て再沈澱させ顔料化する化学的方法(アシッド・ペース
ト法またはアシッドスラリー法)とボールミルやニーダ
ー等を用いる機械的磨砕により顔料化する物理的方法が
ある。
【0005】しかしながら、銅フタロシアニンクルード
を合成し、次いで顔料化を行う方法は以下の種々の問題
を有する。
【0006】1)工程が長く、設備が多大になり不経済
である。 2)化学的処理による顔料化工程では、硫酸処理による
装置の腐食や大量に発生する廃酸の処理、環境の面でも
大きな問題である。 3)物理的処理による顔料化工程では、機械的磨砕に多
大な動力を必要とすること、処理時間が長く生産性が低
いこと、食塩等の多量の磨砕助剤の回収費用が多大であ
ること、高COD廃水の処理等が大きな問題である。 4)銅フタロシアニンクルードを合成する際には親油性
溶剤を用いるのに対し、顔料化工程では水や親水性溶剤
を用いる為、溶剤の除去・回収工程が重複し不経済であ
る。 5)通常、顔料化は合成した銅フタロシアニンクルード
のスラリーから溶剤を除去、精製、乾燥工程を経た粉体
状の銅フタロシアニンクルードで行う為、顔料化後に精
製・乾燥する工程が重複し不経済である。
【0007】以上の様な問題を解決するため、これまで
合成と顔料化を同時に行う一段合成法に関する様々な研
究がなされている。例をあげると、強力な摩砕力の存
在下で反応を行わせる方法(特公昭45−7662、特
開昭48−38332号公報)、結晶成長阻害物質の
存在下で反応を行わせる方法(特公昭52−1921
6、特開昭61−203175、特開昭63−2078
58号公報)、芳香族系高沸点溶媒とパラフィン系あ
るいはナフテン系炭化水素溶媒の混合溶媒中での銅又
は、その化合物の後添加反応方法(特開昭50−419
26号公報)、等が知られている。
【0008】しかしながら、以上の方法は合成と顔料化
を同一の装置内で行うため、では強力な摩砕力に耐え
うる反応容器内で行わなければならず材質に問題がある
こと、やの方法では合成工程と顔料化工程を分けて
行う通常の2段工程法に比べ顔料品位が不十分であるこ
とが問題であった。
【発明が解決しようとする課題】
【0009】本発明は、粉砕媒介物を使用した湿式粉砕
をすることにより、フタロシアニン合成スラリーから合
成時に使用した溶剤を除去しなくても非常に色調鮮明で
着色力の高いフタロシアニン顔料を得ることのできるフ
タロシアニン顔料の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】すなわち、本発明は、 (a) 無水フタル酸またはその誘導体、尿素またはその誘
導体および必要に応じて中心核を形成し得る金属または
その化合物を触媒の存在下または不存在下に有機溶剤中
で反応させてフタロシアニンクルードを合成する工程、 (b) 得られたフタロシアニンクルードスラリーを合成
時の有機溶剤を除去することなく有機溶剤を追加して
たは追加することなく粉砕媒介物の存在下でかつ下記一
般式 (1) 、(2)または(3)で表される少なくとも
1種のフタロシアニン誘導体の存在下で湿式粉砕する工
程、および、 (c) 得られた粉砕スラリーから溶剤を除去し、精製、乾
燥する工程からなるフタロシアニン顔料の製造方法であ
る。
【0011】 MePc−(SO3 - + NR1234 )n (1) (但し、式中、MePcはハロゲン原子で置換されてい
てもよい無金属または金属フタロシアニン残基を表し、
1 、R2 、R3 、R4 は、それぞれ独立に、置換基を
有していてもよいアルキル基またはアリール基またはポ
リオキシアルキレン基を表し、nは1〜4の数を表
す。) MePc−〔X−Y−Z−N(R5 )R6 〕k (2) (但し、式中、MePcは上記と同じ意味を表し、Xは
直接結合するか、または−SO2 −、−CO−、−CH
2 −、−O−、−COO−、−NH−またはこれらの組
み合わせからからなる2価の結合基を表し、Yは直接結
合するか、または−N(R7 )−(但し、R7 はHまた
は炭素数1〜18のアルキル基またはZ−N(R5 )R
6 を表す。)または−O−を表し、Zは炭素数1〜6の
アルキレン基を表し、R5 、R6はそれぞれ独立に、置
換されていてもよい炭素数1〜18のアルキル基または
5 、R6 とでN、OまたはSを含んでもよい置換され
ていてもよい複素環を表し、kは1〜3の整数を表
す。)
【化2】 (但し、式中、MePcは上記と同じ意味を表し、Aは
ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、スルホン基、カル
ボキシル基またはアルキル基を表し、pは0〜4の整
数、mは1〜4の整数を表す。)
【0012】本発明の方法に使用する無水フタル酸また
はその誘導体としては、種々の文献で広く知られてお
り、例えばフタル酸およびその塩またはそのエステル、
無水フタル酸、フタルイミド、フタルアミド酸及びその
塩またはそのエステル、フタロニトリル等があり、ま
た、これらの化合物のベンゼン核上に置換基として、た
とえば塩素原子、臭素原子、アルキル基、フェニル基、
スルホン基またはカルボキシル基を含んでもよい。
【0013】また本発明に使用する尿素またはその誘導
体としては、ビウレット、アンモニア等がある。その使
用量は無水フタル酸又はその誘導体4モルあたり0〜4
0モル程度である。
【0014】本発明において使用する中心核を形成し得
る金属またはその化合物としては、銅、チタン、バナジ
ウム、クロム、マンガン、コバルト、鉄、ニッケル、亜
鉛等の金属、あるいはこれらの金属のハロゲン化物、水
酸化物、酸化物、シアン化物、リン酸塩、硫化物、硝酸
塩、硫酸塩、酢酸塩、炭酸塩等が使用できる。中心核を
形成し得る金属またはその化合物等の使用量は無水フタ
ル酸またはその誘導体4モルあたり0.8〜1.3モル
程度である。上記に述べたように、中心核を形成し得る
金属またはその化合物種々あるが、銅を中心核にした銅
フタロシアニンが最も色調鮮明で、工業的にも最も使用
されている。
【0015】本発明において使用する触媒としては、例
えばモリブデン酸アンモニウム、酸化モリブデン、リン
モリブデン酸などのモリブデン化合物、四塩化チタン、
チタン酸エステル等のチタン化合物、塩化ジルコニウ
ム、炭酸ジルコニウム等のジルコニウム化合物、酸化ア
ンチモン、酸化ヒ素、ホウ酸等がある。
【0016】本発明に使用する有機溶剤は、アルキルシ
クロヘキサン、デカリン、アルキルデカリン等の脂環式
炭化水素;デカン、ドデカン等の脂肪族炭化水素;ニト
ロベンゼン、o−ニトロトルエン、トリフロロベンゼ
ン、ジクロロベンゼン、クロロナフタレン、メチルナフ
タレン、ジフェニルエーテル、スルホラン、ジメチルス
ルホキシド、メチルスルホラン、ジメチルスルホラン、
N−メチルピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン、ジ
メチルホルムアミド、トリクロロベンゼン等があるが、
アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、テトラリン等
の芳香族炭化水素を用いた方がフタロシアニンの合成溶
媒として好ましい結果が得られる。工程(a)で使用す
る有機溶剤量は、合成すべきフタロシアニン量の0.5
〜2重量倍が好ましい。また、工程 (a)で使用する有機
溶剤に加えて、工程(b) の湿式粉砕の際、必要に応じて
有機溶剤を添加しても良い。この際の有機溶剤は同一で
ある方が溶剤除去および回収の点で工業的に有利になる
ため好ましい。
【0017】本発明においてフタロシアニンクルードを
合成する温度条件は150〜250℃が好ましい。又、
フタロシアニンクルードを合成する圧力条件は特に制約
はないが、熱分解の抑制による尿素及びその誘導体の制
約および副反応の抑制による品質の向上を考慮すれば、
加圧条件下での反応が好ましい。
【0018】本発明において、工程(a)のフタロシアニ
ンクル−ドの合成時または、工程(b)の湿式粉砕時に、
一般式(1)〜(3)で示されるフタロシアニン誘導体
を添加した方が未添加の場合に比べ色調鮮明で着色力の
高いフタロシアニン顔料が得られるため好ましい。これ
は、フタロシアニン誘導体を添加することにより、合成
時または湿式粉砕時の粒子成長を抑えるとともに、粒子
制御の効果を与えるためと推測される。
【0019】本発明に添加する一般式(1)で示される
化合物を製造するためにフタロシアニンスルホン酸と反
応することができるアミン成分は特に限定されるもので
はなく、1級、2級、3級、4級のいずれのアミンでも
使用でき、例えば特公昭39−28884号公報、特公
昭40−4143号公報、特開昭52−33922号公
報、特開昭57−12067号公報、特開平3−331
66号公報に記載されているようなアミンを考えること
ができるが、具体的にいくつかの例を示せば、1級アミ
ンとしては、側鎖を有していてもよいヘキシルアミン、
ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシ
ルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデ
シルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミ
ン、ヘキサデシルアミン、ヘプタデシルアミン、オクタ
デシルアミン、ノナデシルアミン、エイコシルアミン等
のアミン、もしくはそれぞれの炭素数に対応する不飽和
アミンが挙げられる。2級、3級および4級アミンとし
ては、前記のような1級アミンを構成するアルキル基ま
たはアリール基およびメチル基、エチル基、プロピル
基、ブチル基、ペンチル基の組み合わせによって構成さ
れるアミンが挙げられる。
【0020】2級アミン、3級アミンおよび4級アンモ
ニウム塩の1例を示せば、ジオレイルアミン、ジステア
リルアミン、ジメチルオクチルアミン、ジメチルデシル
アミン、ジメチルラウリルアミン、ジメチルステアリル
アミン、ジラウリルモノメチルアミン、トリオクチルア
ミン、ジメチルジドデシルアンモニウムクロリド、ジメ
チルジオレイルアンモニウムクロリド、ジメチルジデシ
ルアンモニウムクロリド、ジメチルジオクチルアンモニ
ウムクロリド、トリメチルステアリルアンモニウムクロ
リド、ジメチルジステアリルアンモニウムクロリド、ト
リメチルドデシルアンモニウムクロリド、トリメチルヘ
キサデシルアンモニウムクロリド、トリメチルオクタデ
シルアンモニウムクロリド、ジメチルドデシルテトラデ
シルアンモニウムクロリド、ジメチルヘキサデシルオク
タデシルアンモニウムクロリド等が挙げられる。
【0021】また、一般式(1)において、R1
2 、R2 、R4 のいずれかまたはいくつかが置換基を
有していてもよいアルキル基またはアリール基を表す場
合には、一般式(1)で示される化合物を形成するため
にフタロシアニンスルホン酸と反応することができるア
ミン成分はヘテロ原子を含む置換基を有してもよく、こ
のような置換基としては、1級アミノ基、2級アミノ
基、3級アミノ基、ハロゲン、水酸基、カルボニル基、
カルボキシル基、エーテル基、エステル基、アシル基等
が挙げられる。一般式(1)で示される化合物を製造す
るためにフタロシアニンスルホン酸と反応することがで
きるアミン成分が、特にアミノ基を置換基として有して
いる例として、アミン成分はジアミン、トリアミン、テ
トラミン、ペンタミン、ヘキサミン等がある。
【0022】また、一般式(1)におけるR1 、R2
3 、R4 のいずれか、またはいくつかがポリオキシア
ルキレン基を表す場合、その例としてはポリオキシエチ
レン基、ポリオキシプロピレン基等が挙げられる。本発
明に関わる一般式(1)で示される化合物を製造する方
法は特に限定されるものではないが、フタロシアニン顔
料を常法によりスルホン化した後、水または有機溶剤を
溶媒とするかもしくは溶媒なしでアミンと反応させる方
法等が一般的である。一般式(1)で表されるフタロシ
アニン誘導体の具体例を下記に示す。
【0023】
【表1】
【0024】本発明に添加する一般式(2)におけるX
は直接結合またはS、C、N、O、Hから選ばれる2〜
15個の原子で構成される化学的に合理的な組み合わせ
からなる2価の結合基であり、例えば、−SO2 −、−
CO−、−CH2 −、−O−、−COO−、−NH−又
はこれらの組み合わせであり、好ましくは−SO2 −、
−CO−、−CH2 −、−CH2 NHCOCH2 −等が
ある。また、一般式(2)におけるR5 、R6 がアルキ
ル基の場合、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル
基等の低級アルキル基が好ましい。これらのアルキル基
は最大で炭素数18までの範囲で分岐していてもよく、
置換されていてもよい。さらに場合によってはR5 、R
6 が連結してさらにN、OまたはSを含む5員または6
員の複素環を形成していてもよい。一般式(2)で表さ
れるフタロシアニン誘導体の具体例を下記に示す。
【0025】
【表2】
【0026】本発明に添加する一般式(3)で示される
化合物あるいはフタルイミドメチル基のベンゼン環の任
意の位置がハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、スルホ
基、カルボキシル基またはアルキル基等で置換された化
合物であってもよい。一般式(2)で表されるフタロシ
アニン誘導体の具体例を下記に示す。
【0027】
【表3】
【0028】本発明に添加する一般式(1)、(2)、
(3)で示されるフタロシアニン誘導体は乾燥した粉末
状で、銅フタロシアニンクルードの合成時に使用しても
よいし、湿式粉砕時に使用してもよい。有機溶媒に溶解
あるいは分散したものを使用する場合は、顔料の溶剤の
スラリーに添加し顔料の表面に吸着させるか、あるいは
湿式粉砕時に顔料分散剤の粉末あるいは溶液あるいは分
散液を添加し顔料の表面に吸着させ濾過後必要に応じて
乾燥する方法によって得られる顔料組成物として使用し
てもよい。フタロシアニン誘導体の添加量はフタロシア
ニン100重量部に対して0.1〜10重量部が好まし
い。本発明の粉砕媒介物の下で湿式粉砕する装置として
は振動ミル、アトライタ−、横型サンドミル、縦型サン
ドミル等ある。
【0029】本発明に使用する粉砕媒介物としては、金
属ビーズ、ガラスビーズ、セラミックビーズであるが、
耐磨耗性、耐クラッシュ性の点から、好ましくはジルコ
ニアビーズである。
【0030】本発明において、粉砕媒介物の直径は小さ
ければ小さい程、破砕力および粉砕力は増すが、湿式粉
砕後のスラリーから媒介物を分離するのに不利になるた
め媒介物の直径は1mm以下、好ましくは0.2mm〜0.
6mmの直径の微細な粉砕媒介物を使用するのが好まし
い。
【0031】また、本発明における湿式粉砕は、有機溶
剤の存在下、微細ビーズ同志の衝突による粉砕力および
破砕力を利用するものである。湿式粉砕の際の有機溶剤
は、フタロシアニンの重量の2〜20倍量、特に5〜1
0倍量が良好な顔料品位が得るために好ましい。有機溶
剤量が上記上限より多いとスラリー粘度が下がり過ぎ
て、また上記下限より少ないとスラリー粘度が上昇し
て、粉砕効率が低下するので好ましくない。
【0032】さらに、湿式粉砕の際、初めから媒介物の
直径が1mm以下、好ましくは0.2mm〜0.6mmの直径
の微細な粉砕媒介物を用いて湿式粉砕を行うと、一部粗
大なフタロシアニンクルードが残ることがあるため、初
めは媒介物の直径が1mm以上、好ましくは1mm〜3mmの
直径の媒介物により、予め粗大なフタロシアニンクルー
ドを粗粉砕してから、次いで媒介物の直径が1mm以下、
好ましくは0.2mm〜0.6mmの直径の微細な粉砕媒介
物で湿式粉砕した方が好ましい。この際の粗粉砕に要す
る時間は全粉砕工程の10〜50%が好ましい。
【0033】本発明における、湿式粉砕時の温度は重要
で、高すぎるとフタロシアニン顔料粒子が結晶成長を起
こし、逆に低すぎると結晶転移してしまうため、好まし
くは50℃〜90℃であるのが好ましい。
【0034】本発明の湿式粉砕後、有機溶剤を除去・回
収する際、簡便にメタノール等の親水性溶剤で有機溶剤
を置換した後、水洗および精製する方法があるが、工業
的には多量の親水性溶剤を使わなければ置換できず、不
利なため経済的な方法ではない。しかし、スプレー型乾
燥機により有機溶剤を除去・回収することで、簡便に親
水性溶剤で有機溶剤を置換させて得られる顔料と同等の
品位の顔料を得ることができる。これは、スプレー型乾
燥機が微細な核を作って乾燥させる方法であること、溶
剤を除去する際にかかる熱が瞬間的であるためと推測さ
れる。さらに前述のフタロシアニン誘導体を併用するこ
とで、さらに結晶成長を抑えることができる。
【0035】本発明により得られた微細な銅フタロシア
ニン顔料は、樹脂、ワニス、プラスチック等目的に応じ
た媒体中へ分散させることにより、塗料、インキ、プラ
スチック着色剤等を製造することができる。
【0036】
【実施例】以下に実施例、比較例を挙げて示すが、本発
明は以下の実施例、比較例により限定されるものではな
い。なお、後記の実施例において、記載した物質の部お
よび%はそれぞれ重量部および重量%である。実施例中
の化合物の記号は表1〜3に示した記号と同じである。
【0037】実施例1(参考例) 無水フタル酸100部、尿素145部、モリブデン酸ア
ンモニウム0.5部、塩化銅(I)17部、ハイゾール
P(日本石油化学株式会社製アルキルベンゼン)200
部を1リットルのオートクレーブに入れ、1.5〜3.
0Kg/cm2Gの加圧下で200℃まで加熱し、反応さ
せた後、冷却し、銅フタロシアニンクルードを合成し
た。得られた銅フタロシアニンクルードスラリー17部
を、そのまま0.5mmの直径のジルコニアビーズ400
部で満たされている縦型サンドミルに仕込み、追加のハ
イゾールPを32部添加し、80℃で2時間粉砕した。
得られた粉砕物と粉砕媒介物をメタノールで洗浄しなが
ら分離、濾過した。得られたケーキを1%苛性ソ−ダ3
00部中に加え、80℃30分間加熱攪拌した後、濾液
のpHが中性になるまで温湯で十分洗浄し、さらに2%
硫酸300部中に加え、80℃で30分間加熱攪拌した
後、濾液のpHが中性になるまで温湯で十分洗浄した後
乾燥してβ型銅フタロシアニン顔料を得た。比表面積、
着色力、色調を測定及び評価し、結果を以下の実施例、
比較例とともに表4に示した。なお、この銅フタロシア
ニン顔料の着色力を100として以下の実施例、比較例
の着色力を測定した。
【0038】着色力の測定方法としては、銅フタロシア
ニン顔料2部、ロジン変性樹脂8部、白ワニス250部
をマーラーにてオイルインキに調製し、測色する方法を
用いた。
【0039】比較例1 実施例1において得られた銅フタロシアニンクルードを
湿式粉砕せず、そのままメタノールでハイゾールPを除
去し、濾過した。得られたケーキを1%苛性ソーダ30
0部中に加え、80℃30分間加熱攪拌した後、濾液の
pHが中性になるまで温湯で十分洗浄し、さらに2%硫
酸300部中に加え、80℃で30分間加熱攪拌した
後、濾液のpHが中性になるまで温湯で十分洗浄した後
乾燥した。
【0040】実施例2(参考例) 実施例1において粉砕装置を横型サンドミルに代えて、
他は実施例1と同様な処理を行ったところ、得られた銅
フタロシアニン顔料は高い着色力を有していた。
【0041】実施例3(参考例) 実施例1において湿式粉砕を、最初1.2mmの直径のジ
ルコニアビーズで30分粗粉砕した後、次に0.3mmの
直径のジルコニアビーズで1時間30分粉砕したとこ
ろ、得られた銅フタロシアニン顔料は実施例1で得られ
たものよりさらに、色調鮮明なものが得られた。
【0042】実施例4 無水フタル酸100部、尿素145部、モリブデン酸ア
ンモニウム0.5部、塩化銅(I)17部、ハイゾール
P170部を1リットルのオートクレーブに入れ、1.
5〜3.0Kg/cm2Gの加圧下で200℃まで加熱
し、反応させた後、冷却し、銅フタロシアニンクルード
を合成した。得られた銅フタロシアニンクルードスラリ
ー17部に化合物Aを4%添加し、0.5mmの直径のジ
ルコニアビーズ400部で満たされている縦型サンドミ
ルに仕込んだ。さらに、追加のハイゾールPを32部添
加し、80℃で2時間粉砕した。得られた粉砕物と粉砕
媒介物をメタノールで洗浄しながら分離、濾過した。得
られたケーキを1%苛性ソーダ300部中に加え、80
℃30分間加熱攪拌した後、濾液のpHが中性になるま
で温湯で十分洗浄し、さらに2%硫酸300部中に加
え、80℃で30分間加熱攪拌した後、濾液のpHが中
性になるまで温湯で十分洗浄した後乾燥して銅フタロシ
アニン顔料を得た。得られた顔料は実施例1よりさらに
色調鮮明で着色力の高いものだった。
【0043】実施例5 実施例4における化合物をBに代え、他は実施例4と同
様の処理を行って得られた銅フタロシアニン顔料は色相
鮮明で高着色力のものだった。
【0044】実施例6 実施例4における化合物をCに代え、他は実施例4と同
様の処理を行って得られた銅フタロシアニン顔料は色相
鮮明で高着色力のものだった。
【0045】実施例7(参考例) 無水フタル酸100部、尿素145部、モリブデン酸ア
ンモニウム0.5部、塩化銅(I)17部、ハイゾール
P170部を1リットルのオートクレーブに入れ、1.
5〜3.0Kg/cm2Gの加圧下で200℃まで加熱
し、反応させた後、冷却し、銅フタロシアニンクルード
を合成した。得られた銅フタロシアニンクルードスラリ
ー17部を、そのまま0.5mmの直径のジルコニアビー
ズ400部で満たされている縦型サンドミルに仕込み、
追加のハイゾールPを32部添加し、80℃で2時間粉
砕した。得られた粉砕物のスラリーをスプレー型乾燥機
により溶剤を除去後、得られた顔料を1%苛性ソーダ3
00部中に加え、80℃30分間加熱攪拌した後、濾液
のpHが中性になるまで温湯で十分洗浄し、さらに2%
硫酸300部中に加え、80℃で30分間加熱攪拌した
後、濾液のpHが中性になるまで温湯で十分洗浄した後
乾燥してβ型銅フタロシアニン顔料を得た。得られた銅
フタロシアニン顔料は色調鮮明で高着色力のものだっ
た。
【0046】実施例8 実施例7において、合成後、得られた銅フタロシアニン
クルードスラリー17部に化合物Dを4%添加し、他は
実施例6と同様の処理を行って得られた銅フタロシアニ
ン顔料は色調鮮明で高着色力のものだった。
【0047】実施例9 実施例7において、合成後、得られた銅フタロシアニン
クルードスラリー17部に化合物Eを4%添加し、他は
実施例6と同様の処理を行って得られた銅フタロシアニ
ン顔料は色調鮮明で高着色力のものだった。
【0048】実施例10 実施例7において、合成後、得られた銅フタロシアニン
クルードスラリー17部に化合物Fを3%添加し、他は
実施例6と同様の処理を行って得られた銅フタロシアニ
ン顔料は色調鮮明で高着色力のものだった。
【0049】実施例11(参考例) 無水フタル酸100部、尿素145部、モリブデン酸ア
ンモニウム0.5部、塩化ニッケル22部、ハイゾール
P200部を1リットルのオートクレ−ブに入れ、1.
5〜3.0Kg/cm2Gの加圧下で200℃まで加熱
し、反応させた後、冷却し、ニッケルフタロシアニンク
ルードを合成した。得られたニッケルフタロシアニンク
ルードスラリー17部を、そのまま0.5mmの直径のジ
ルコニアビーズ400部で満たされている縦型サンドミ
ルに仕込み、追加のハイゾールPを32部添加し、80
℃で2時間粉砕した。得られた粉砕物と粉砕媒介物をメ
タノールで洗浄しながら分離、濾過した。得られたケー
キを1%苛性ソーダ300部中に加え、80℃30分間
加熱攪拌した後、濾液のpHが中性になるまで温湯で十
分洗浄し、さらに2%硫酸300部中に加え、80℃で
30分間加熱攪拌した後、濾液のpHが中性になるまで
温湯で十分洗浄した後、乾燥してニッケルフタロシアニ
ン顔料を得た。比表面積、着色力、色調を測定及び評価
し、結果を以下の実施例、比較例とともに表5に示し
た。なお、このニッケルフタロシアニン顔料の着色力を
100として以下の実施例、比較例の着色力を測定し
た。
【0050】比較例2 実施例11において得られたニッケルフタロシアニンク
ルードを湿式粉砕せず、そのままメタノールでハイゾー
ルPを除去し、濾過した。得られたケーキを1%苛性ソ
ーダ300部中に加え、80℃30分間加熱攪拌した
後、濾液のpHが中性になるまで温湯で十分洗浄し、さ
らに2%硫酸300部中に加え、80℃で30分間加熱
攪拌した後、濾液のpHが中性になるまで温湯で十分洗
浄した後乾燥した。
【0051】実施例12 無水フタル酸100部、尿素145部、モリブデン酸ア
ンモニウム0.5部、塩化ニッケル17部、ハイゾール
P170部を1リットルのオートクレーブに入れ、1.
5〜3.0Kg/cm2Gの加圧下で200℃まで加熱
し、反応させた後、冷却し、ニッケルフタロシアニンク
ルードを合成した。得られたニッケルフタロシアニンク
ルードスラリー17部に化合物Gを4%添加し、0.5
mmの直径のジルコニアビーズ400部で満たされている
縦型サンドミルに仕込んだ。さらに、追加のハイゾール
Pを32部添加し、80℃で2時間粉砕した。得られた
粉砕物と粉砕媒介物をメタノ−ルで洗浄しながら分離、
濾過した。得られたケーキを1%苛性ソ−ダ300部中
に加え、80℃30分間加熱攪拌した後、濾液のpHが
中性になるまで温湯で十分洗浄し、さらに2%硫酸30
0部中に加え、80℃で30分間加熱攪拌した後、濾液
のpHが中性になるまで温湯で十分洗浄した後乾燥して
銅フタロシアニン顔料を得た。得られた顔料は実施例1
1よりさらに色調鮮明で着色力の高いものだった。
【0052】
【表4】
【発明の効果】本発明によれば、顔料に匹敵する色相、
比表面積を有する微細なフタロシアニン顔料が、合成し
たクルードスラリーから溶剤を除去することなく、その
まま顔料化後、スプレー型乾燥機により溶剤回収するこ
とで得られるため、従来のフタロシアニンクルードを合
成し、ついで複雑な工程を経て長時間多大な動力を費や
し顔料化を行う製造方法に比べ、非常に簡素化された効
率的、経済的プロセスであるといえる。本発明により下
記に示す様な従来からの問題点を解決することができ
た。 (1)フタロシアニンクルードを合成する有機溶剤を顔
料化工程でも用いるため、溶剤除去・回収工程が一回で
済む。 (2)顔料化を合成後のフタロシアニンスラリーを用い
て行うため、従来フタロシアニンクルードの合成後と顔
料化後に各々行っていた精製、乾燥工程が一回で済む。 (3)(1)および(2)で述べた大幅な工程の短縮に
より、合成から顔料を得るまでの時間の短縮による生産
性向上ができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平5−125289(JP,A) 特開 昭48−38332(JP,A) 特開 昭49−97820(JP,A) 特開 平7−53889(JP,A) 特開 平6−80898(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C09B 67/20 - 67/22 C09B 67/04 - 67/06 C09B 47/00 - 47/32 CA(STN) REGISTRY(STN)

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (a) 無水フタル酸またはその誘導体、尿
    素またはその誘導体および必要に応じて中心核を形成し
    得る金属またはその化合物を触媒の存在下または不存在
    下に有機溶剤中で反応させてフタロシアニンクルードを
    合成する工程、 (b) 得られたフタロシアニンクルードのスラリーを合成
    時の有機溶剤を除去することなく有機溶剤を追加してま
    たは追加することなく粉砕媒介物の存在下でかつ下記一
    般式 (1) 、(2)または(3)で表される少なくとも
    1種のフタロシアニン誘導体の存在下で湿式粉砕する工
    程、 および、 (c) 得られた粉砕スラリーから溶剤を除去し、精製、乾
    燥する工程からなるフタロシアニン顔料の製造方法。 MePc−(SO3 - + NR1234 )n (1) (但し、式中、MePcはハロゲン原子で置換されてい
    てもよい無金属または金属フタロシアニン残基を表し、
    1 、R2 、R3 、R4 は、それぞれ独立に、置換基を
    有していてもよいアルキル基またはアリール基またはポ
    リオキシアルキレン基を表し、nは1〜4の数を表
    す。) MePc−〔X−Y−Z−N(R5 )R6 〕k (2) (但し、式中、MePcは上記と同じ意味を表し、Xは
    直接結合するか、または−SO2 −、−CO−、−CH
    2 −、−O−、−COO−、−NH−またはこれらの組
    み合わせからからなる2価の結合基を表し、Yは直接結
    合するか、または−N(R7 )−(但し、R7 はHまた
    は炭素数1〜18のアルキル基またはZ−N(R5 )R
    6 を表す。)または−O−を表し、Zは炭素数1〜6の
    アルキレン基を表し、R5 、R6はそれぞれ独立に、置
    換されていてもよい炭素数1〜18のアルキル基または
    5 、R6 とでN、OまたはSを含んでもよい置換され
    ていてもよい複素環を表し、kは1〜3の整数を表
    す。) 【化1】 (但し、式中、MePcは上記と同じ意味を表し、Aは
    ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、スルホン基、カル
    ボキシル基またはアルキル基を表し、pは0〜4の整
    数、mは1〜4の整数を表す。)
  2. 【請求項2】 湿式粉砕が振動ミル、アトライターまた
    サンドミルから選ばれる湿式粉砕装置を使用する請求
    項1記載のフタロシアニン顔料の製造方法。
  3. 【請求項3】 湿式粉砕を直径が1mm以上の球形の粉砕
    媒介物粗粉砕を行った後、直径が0.2mm〜0.6mm
    の微細な粉砕媒介物で粉砕する請求項1または2記載の
    フタロシアニン顔料の製造方法。
  4. 【請求項4】 湿式粉砕の温度が50〜90℃である請
    求項1ないし3いずれか記載のフタロシアニン顔料の製
    造方法。
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