JP3398515B2 - 低鉄損方向性電磁鋼板 - Google Patents

低鉄損方向性電磁鋼板

Info

Publication number
JP3398515B2
JP3398515B2 JP8298895A JP8298895A JP3398515B2 JP 3398515 B2 JP3398515 B2 JP 3398515B2 JP 8298895 A JP8298895 A JP 8298895A JP 8298895 A JP8298895 A JP 8298895A JP 3398515 B2 JP3398515 B2 JP 3398515B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
steel sheet
electrical steel
oriented electrical
film
coating
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP8298895A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH08279409A (ja
Inventor
昌章 杉山
麻紀 世古口
隆雄 金井
修一 山崎
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Steel Corp filed Critical Nippon Steel Corp
Priority to JP8298895A priority Critical patent/JP3398515B2/ja
Publication of JPH08279409A publication Critical patent/JPH08279409A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3398515B2 publication Critical patent/JP3398515B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Chemical Treatment Of Metals (AREA)
  • Soft Magnetic Materials (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】この発明は、主として変圧器用と
して使用され、特に優れた低鉄損特性を有する方向性電
磁鋼板に関するものであり、今後の社会が抱えるエネル
ギー問題に対して大きな貢献を果たすものである。 【0002】 【従来の技術】方向性電磁鋼板はよく知られているよう
に、板面を(110)面に平行となるように近づけ、ま
た容易磁化方向である〔001〕方向を圧延方向にでき
るだけ近づけるように結晶粒を配向させた磁束密度の高
い電磁鋼板であり、この二次再結晶を利用した工程はこ
れまでも非常によく研究されている。また鋼板の圧延方
向に張力を加えると、著しくその磁気特性が向上するこ
とが知られており、工業的にはこの張力は表面被膜によ
って加えられている。 【0003】また張力付与型の被膜研究以外に、特開昭
53−137016号公報に開示されているように、仕
上げ焼鈍後の鋼板表面に対して小球或いは円盤等を一定
の圧力で転がすことによって微小歪を導入して、低鉄損
化を図る技術がある。またレーザービームを照射してこ
れにより磁区を細分化して鉄損を低下させる方法が、例
えば特開昭58−26405号公報に開示されている。 【0004】方向性電磁鋼板の製造プロセスを考えた場
合、鋼板表面にMgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布
してから最終仕上げ焼鈍を施した場合、鋼板表面にはフ
ォルステライト質の下地酸化被膜が形成されている。従
来は、この鋼板表面に燐酸−クロム酸塩系の被膜を形成
する技術が主流で、例えば特公昭53−28375号公
報記載の方法では、コロイド状シリカと燐酸アルミニウ
ム、無水クロム酸およびクロム酸塩のうちの1種または
2種以上を添加したコーティング液を塗布し、焼き付
け、その後約800〜900℃温度で熱処理して張力
付与型の絶縁被膜を形成させている。これにより鉄損お
よび磁気歪を改善する効果が認められる。 【0005】さらに絶縁被膜の状態を改良し、特開平1
−147074号公報に記載されているように、燐酸塩
とコロイダルシリカとを主成分とする絶縁被膜がフォル
ステライト被膜上に被成され、該絶縁被膜が局所的に生
地よりも結晶化度が大きい領域を備えることを特徴とす
る方向性電磁鋼板がある。これは絶縁被膜に対して、真
空中でエレクトロンビーム照射等により局部加熱処理を
施し、さらにその後の焼鈍による絶縁被膜の結晶化過程
で、特定の結晶を優先的に発達させることによって異張
力領域を局所的に形成させて、結果的に鉄損を下げよう
とする試みである。 【0006】このような真空中での局部加熱処理という
試みは、従来の特公昭63−42705号公報や、特公
昭61−10963号公報に記載されているように、ガ
ラス質被膜中に結晶質部分を含有させることでその張力
付与効果が増大するという知見に基づいていると考えら
れる。このガラスの結晶化を制御調整する技術はガラス
セラミックス製造技術として良く知られ、例えば、「セ
ラミックス材料科学入門」(Prof.Kingery
著,小松和蔵他訳,内田老鶴圃出版)の基礎編356〜
363頁に詳細が記載されている。 【0007】これによればLi2 O−Al2 3 −Si
2 系に代表される酸化物を溶融後急冷して、その後の
熱処理時間を制御して95%以上の体積分率を持つ結晶
相からなるガラスセラミックスとし、その時の粒径を
0.1〜1μmに制御できることが可能であると記載さ
れている。しかしこの時小さな結晶が材料中に大きな体
積割合を占めているようにするためには、おびただしい
多くの核を派生させなけらばならず、そのために核生成
剤としてTiO2 やZrO2 の使用が必須となってい
る。 【0008】 【発明が解決しようとする課題】従来の技術の進歩にも
かかわらず、低鉄損化を始めとする磁気特性に対するよ
り一層の特性向上要求は依然として強い。またかかる経
済的事情により、レーザービーム照射や真空中でのエレ
クトロンビームの照射といったコスト高となるプロセス
を使用することはできず、生産性に優れた単純な焼き付
けプロセスで絶縁被膜を形成しなければならない。 【0009】このような状況において、発明者らもまた
張力付与効果の大きい結晶化ガラス質を利用した絶縁被
膜が優位であると判断したが、単純に、特公昭63−4
2705号公報記載のように低融点ガラス粉末と低熱膨
張のセラミック粉末とを混合した懸濁液を鋼板面に塗布
して焼き付けたのでは、造膜後にセラミック粉末がその
まま残るために被膜構造の均一性にかけ、密着性の悪い
部分や表面粗度が大きくなる部分が生じ十分に被膜の結
晶化度を上げることができない。 【0010】一方、特公昭61−10963号公報に記
載されている方法では、ガラスフリットを出発成分とし
造膜中に起きる結晶質の晶出を利用して結晶化度を高め
た絶縁被膜を有する電磁鋼板を開発している。またここ
ではTiO2 やZrO2 の添加効果が指摘されていて、
ガラスセラミックスの技術と同じ流れである。しかし電
磁鋼板上に造膜した場合にはその表面粗度が大きくなる
ために、結晶化度を70%以上に上げることができてい
ない。 【0011】即ち、結晶化による低熱膨張化に伴う鋼板
への張力付与量の増大効果が判っていながら、表面粗さ
を劣化させないためには析出結晶相に限界量があること
が指摘されていて、結晶化被膜の研究は技術的壁にぶ
つかっていたのである。 【0012】一方、特開平6−287764号公報に記
載したように、本発明者らは被膜厚みが通常2μm程度
ということを考慮して研究を進め、平均結晶粒1μm以
下の結晶粒子から構成される絶縁被膜に関わる技術を開
示したが、密着性を損なうことなく被膜をほぼ完全に結
晶化させて大きな張力付与を鋼板に与えるという観点で
はまだ不十分であった。本発明は、ほぼ完全に被膜を結
晶化させても表面粗度を大きくすることなく、結果とし
て占積率の低下を引き起こさず、鋼板に大きな張力を付
与して方向性電磁鋼板のより低鉄損化を達成することが
目的である。 【0013】 【課題を解決するための手段】表面粗度を大きくするこ
となく絶縁被膜の結晶化度を高める方法として、被膜構
造を徹底的に研究した。表面を平滑にするために多結晶
被膜構造が優れていると考え鋭意検討したが、完全に結
晶化させると鋼板を曲げたときの十分な密着性が得られ
ず、粒界構造を検討することから以下のような全く新し
い構造を持った絶縁被膜の発明に到った。これは以下の
構成で記述される。 【0014】非晶質酸化物ゾルの複合体を用いて、50
0℃/分以上の昇温速度で800℃以上の温度に加熱
し、そこで30秒以上保持して鋼板に焼き付けることで
造膜される結晶質酸化物からなる絶縁被膜を有する方向
性電磁鋼板であって、該絶縁被膜は熱膨張係数が9×1
-6/℃以下の結晶粒からなりその粒径は80nm
以下であり、かつ結晶化せずに非晶質のままで残ってい
る粒界層の厚みがd/10〜d/5の範囲に入ることを
特徴とする低鉄損方向性電磁鋼板。 【0015】 【作用】次に本発明を詳細に説明する。まず結晶質酸化
物であるが、電磁鋼板の熱膨張係数が約12×10-6
℃であるので、冷却中に生じる両者の収縮率の違いによ
り鋼板に対して十分な引張応力を加えるためには、9×
10-6/℃以下の結晶であることが必要である。さらに
大きな引張応力を加えるためには、6×10-6/℃以下
の結晶であることが望ましい。 【0016】このように小さな熱膨張係数を持った結晶
粒が被膜の大部分を構成することにより、大きな張力を
鋼板に与えることができる。また張力付与だけでなく絶
縁被膜として電気的絶縁性を維持するために、酸化物で
ある必要がある。絶縁性という意味では窒化物等も可能
ではあるが、生産性の高い焼き付けプロセスを考慮する
と酸化物がふさわしい。 【0017】次に結晶粒径であるが、表面粗度を大きく
しないために80nm以下とした。従来のガラスセラミッ
クスや結晶化ガラスの概念では、100nmの小さな粒径
を得ることは困難である。表面粗度に要求されるものは
中心線粗さで0.2μm以下にすることであり、これに
より占積率の低下を防ぐことができる。ここで占積率で
あるが、方向性電磁鋼板の絶縁被膜は厚い方が鋼板に大
きな張力を付与することができそうであるが、この被膜
部分は磁気特性に寄与しないために厚くすればそれだけ
占積率を下げることになる。 【0018】そこで一般的には被膜自体の張力付与効果
能を高め、1〜2μmと薄く絶縁被膜を造膜する場合が
多い。このような状況では、特公昭61−10963号
公報で記載されているように、通常のガラスフリットか
ら結晶化した粒径2〜3μmの結晶粒では、膜厚方向に
対して、ある部分ではただ一つの結晶粒が存在し、別の
場所ではガラス状態のままであるというような被膜構造
となり、鋼板全体を上から眺めた時の被膜構造は非常に
不均一なものとなる。 【0019】この点から本発明者らは従来の結晶化とは
異なる発想で結晶粒径について検討し、特開平6−28
7764号公報に記載したように、平均結晶粒1μm以
下の結晶粒子からなる被膜構成を検討し、本発明では特
に膜厚を考慮して、0.5μm以下の結晶粒サイズに注
目したのである。 【0020】検討方法であるが、結晶粒径が20nmから
120nmまでの種々の大きさに結晶化させた絶縁被膜を
用意し、この被膜に対して原子間力顕微鏡を用いてその
表面の凹凸を詳細に調べた。結晶粒径については、被膜
を剥がして高分解能電子顕微鏡法で観察することにより
正確に決定できる。まず凹凸の測定方法について説明す
る。 【0021】原子間力顕微鏡というものは、被膜表面に
存在する原子と検知針との間に働く原子間力(多くの場
合ファンデルワールス力)を一定に保つように相対的に
針を2次元的に移動して、被膜表面の微細な凹凸を測定
するものである。まさに原子レベルでの凹凸を調べるこ
とから、通常の接触式で調べる表面粗度計とは全く違っ
た情報を得ることができる。 【0022】接触式では原子レベルと比較すれば平均的
な凹凸を調べていることになり、結晶粒径に依存した表
面粗度を論じることはできないが、原子間力顕微鏡では
それが可能である。次に、高分解能電子顕微鏡観察法に
よる粒径測定法について説明する。通常微細な結晶とな
ると電子顕微鏡像でもそれが結晶なのか非晶質なのか判
断するのが難しい。それは電子線回折像もリングパター
ンとなり、明瞭な結晶構造に対応する回折点を示さなく
なるからである。もちろん電子顕微鏡観察以外に、通常
用いられているレーザーを利用した沈降速度測定法や円
心分離器型の粒度分布測定装置では、粒径が小さすぎて
測定不可能である。 【0023】高分解能電子顕微鏡観察法では、電子線回
折波を互いに干渉させてその干渉効果で結晶格子面を縞
模様として表わす手法なので、リングパターンからも結
晶格子に関する情報を得ることが可能であり、その縞模
様の見える領域の大きさから結晶粒サイズを決定するこ
とができる。図1に、結晶粒径を測定した高分解能電子
顕微鏡写真のスケッチの一例を示す。 【0024】幾つかの方向を向いた平行な縞模様群が観
察されるが、この各々の平行な縞が各結晶格子面に対応
していて、その間隔はこの場合0.5nmである。同じ結
晶格子面が電子線に対して同時にブラッグ回折を起こ
し、その回折波が干渉を起こして縞模様を形成している
ので、この縞模様が見えているところが結晶格子のある
ところ、すなわち一つの結晶粒(単結晶)ということに
なる。図に示した中央の結晶粒径は20nm程度である。 【0025】次に原子間力顕微鏡で同じ試料の表面凹凸
を測定した結果を図2に示す。横軸は測定した距離で1
00nm、縦軸は実際の凹凸の平均値を0として示した。
実際は3次元の原子間力顕微鏡像として撮影した後、代
表的な2点間を選んでそこでの凹凸を図のように示した
のである。これによりその表面起伏が30〜40nm間隔
で凹凸となっていて、その変化量はおよそ20nmとなっ
ていることが判る。このような方法で調べた表面の凹凸
の変化量に対して、結晶粒径を横軸にとって整理したも
のを図3に示す。 【0026】結晶粒径が80nmより小さい場合は、およ
そその粒径と同程度の表面凹凸を持つが、結晶粒径が8
0nmより大きくなるとあまり相関が見られなくなること
を見いだした。電子顕微鏡観察の結果から、粒径が80
nmより大きくなるように結晶化させた場合、例えば10
0nmの場合、結晶粒同士が密着した部分があり、またあ
るところでは極端に非晶質の部分が多くなった領域が存
在していて、被膜構造が結晶性という点で非常に不均一
になっていることが判った。この不均一さが相関が得ら
れなくなった原因であり、かつ原子レベルでの凹凸の大
きくなった原因と考えている。 【0027】原子レベルでの凹凸が結晶粒サイズより大
きいということは非晶質部分が増えていることを示し、
鋼板に与える張力も小さくなってくるので、これより結
晶粒径の上限を80nmとすることにより、非常に微細な
結晶粒を主構造として表面粗度が大きくなることを防
ぎ、かつ大きな張力を付与することができる結晶化被膜
を得ることができる。原子間力顕微鏡で調べた表面凹凸
の範囲が80nmという試験材を一般の接触式の粗度計で
測定すれば、中心線粗さ0.2μm以下に十分入ってい
る。 【0028】次に粒界層の構造を規定したり理由につい
て説明する。確かに微細な結晶粒からなる被膜を有する
とその結晶化による大きな張力付与効果を最大限に得る
ことが期待できそうであるが、完全に結晶化した被膜を
絶縁被膜として有した電磁鋼板の場合、40mmφ曲げ試
験においても被膜が剥がれるという事態に陥った。微結
晶といえども酸化物結晶であるために靭性が弱く、また
鋼板との強い密着力も確保できていなかったといえる。 【0029】そこで、焼き付け条件や添加物を利用して
結晶化度を制御して、その曲げ試験を行った。結晶化度
については、本研究でかなり結晶性の良い被膜構造を検
討したので、特公昭61−10963号公報に記載され
ているような粉末X線回折法を用いた方法、即ち、結晶
性の回折ピークのない特定2θ位置での非結晶性散乱強
度の減少の度合いから結晶化度を評価すると、常に結晶
化度は80%以上となっていた。発明の発想が違い、本
発明がかなり結晶化度が高いことが判る。 【0030】また特開平6−287764号で本発明者
らが開示したように、SiのX線回折ピークとの線幅の
比較から結晶粒径を求めようと試みたが、この方法では
結晶粒が単結晶であるのか多結晶であるのかを吟味する
ことはできず、また80nm以下の結晶粒サイズによる結
晶化度を調べるには不十分であることが判った。このよ
うな種々の検討の中で、直接電子顕微鏡でその被膜構造
を調べたときに、結晶化せずに非晶質のままで残ってい
る粒界層の厚みをその結晶粒径の関数として記述するこ
とで結晶化度の評価ができることが判った。 【0031】粒径をdとして、粒界層の厚みを種々の粒
径dに対してd/20〜d/5まで平均的に変化してい
る材料を作り、それらの密着性を評価した結果を代表値
を用いて図4に示す。密着性は、20mmφ,30mmφ,
40mmφの棒にそって折り曲げたときの剥がれ具合から
評価した。全く剥がれなかった場合が○、一部剥がれた
場合が△、大部分剥がれた場合が×で表記した。 【0032】実験より20mmφ曲げにおいても十分な特
性を持たせるためには、粒径の1/10以上の厚さの非
晶質粒界層が必要であることが判った。また逆に非晶質
層の厚みが結晶粒径に比べて厚くなると、被膜を構成す
る非晶質の割合が結晶質に比べて増えてしまい、本発明
の主旨からはずれ十分な結晶化による低鉄損化を達成で
きなかったので、粒界非晶質層の厚みの上限を結晶粒径
の1/5と規定した。 【0033】次に本発明における絶縁被膜の造膜方法で
あるが、従来から知られるガラスセラミックスの製造技
術を基本としたものは、特公昭61−10963号公報
にも記載されているように絶縁被膜としては結晶化度を
上げることができないので適用できない。造膜方法は一
通りに限定されるものではないが、コロイドプロセスを
基本的に適用することでTiO2 やZrO2 のような核
生成剤を添加せずに本発明の構成の被膜を造膜すること
ができる。例えば、非晶質酸化物ゾルの複合体を用い
て、500℃/分以上の昇温速度で800℃以上の温度
に加熱し、そこで30秒以上保持して鋼板に焼き付ける
ことで造膜できる。 【0034】焼き付け雰囲気は中性、或いは還元雰囲気
であれば問題なく、仕上げ焼鈍された電磁鋼板の上に一
回の焼き付け工程により目的の絶縁被膜を有する電磁鋼
板を製造することができる。仕上げ焼鈍後の鋼板の種類
としては、焼鈍分離材にMgOを使い、すでにフォルス
テライトやガラス質が一次被膜として存在している場合
が多い。 【0035】また近年の焼鈍分離材にAl2 3 等を用
いる技術により、できる限り、酸化物を被膜として形成
させずに鏡面に近い鋼板表面を維持した仕上げ焼鈍鋼板
に対しても、同様に塗布、焼き付けすることができる。 【0036】最後に本発明による被膜組成であるが、目
的とする構成の被膜が形成されれば特に限定されるもの
ではないが、無定形ゾルの得易い好適な成分系をあげれ
ば、Al2 3 −B2 3 −SiO2 系である。形態が
繊維状である非晶質のアルミナゾルとリボン状のシリカ
ゾルを混合すると、複雑に絡み合った複合ゾルができ上
がり、これにほう酸を加えることでネットワーク構造を
持つ安定した非晶質の複合ゾルを得ることができる。 【0037】この複合ゾルを鋼板に塗布し、焼き付ける
ことで得られる結晶質の構造の一例はAl4 2 9
あり、熱膨張係数は4×10-6/℃で、本発明で記述さ
れた微細な結晶化が起こる。この場合粒界に形成される
非晶質層は、硼素とシリカを主成分としている。また、
アルミナゾルの代わりにマグネシアゾルを用いた場合
は、MgB2 4 で表される微細な結晶粒を得ることが
できる。図5に絶縁被膜の高分解能電子顕微鏡写真を示
す。 【0038】 【実施例】焼鈍分離剤としてMgOを用いて、最終仕上
げ焼鈍工程を経た表面にフォルステライト層を有する厚
さ0.3mmの方向性電磁鋼板を用意し、相隣接する位置
から60mm×300mmの試験片をそれぞれ切り出し、本
発明の絶縁被膜を造膜する試験を行った。市販の無定形
のアルミナゾルとほう酸を用いて複合酸化物ゾルを作製
した後、これをロールコーターを用いて上記鋼板上に最
終厚みが1.5μmになるように塗布した。これを窒素
中で種々の熱処理条件で焼き付け、その特性を評価し表
1に結果をまとめた。 【0039】なお鉄損を測定するに当たり、磁束密度の
値は何れもB10で1.91〜1.93Tであった。また
結晶粒径を変化させるために、FeOOHゾルを少量添
加した例もある。試験材の番号において、*記号の付い
ているものは、本発明の構成からはずれるものであり、
低鉄損化が不十分である。また比較例は特公昭61−1
0963号公報によるもので、ZnO−B2 3 −Si
2 系のガラスフリットを用いて結晶化ガラス質の被膜
を得た場合である。 【0040】 【表1】 【0041】 【発明の効果】本発明は、80nm以下の粒径を持つ微細
に結晶化させた絶縁被膜を有する電磁鋼板を提供するこ
とで、結晶化に伴う占積率の低下という欠点を克服し、
非常に低鉄損な方向性電磁鋼板を完成させたものであ
る。製法は従来の焼き付け工程を利用できるものであ
り、非常に生産性が高くその工業的効果は甚大である。
【図面の簡単な説明】 【図1】高分解能電子顕微鏡写真のスケッチ例。 【図2】原子間力顕微鏡で測定した表面凹凸変化図表。 【図3】絶縁被膜の平均結晶粒径と原子間力顕微鏡で調
べた表面凹凸の関係の図表。 【図4】代表的な粒界層厚みの試料に対して曲げ試験を
した時の剥離特性評価結果を示す図表。 【図5】絶縁被膜の高分解能電子顕微鏡写真。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 山崎 修一 富津市新富20−1 新日本製鐵株式会社 技術開発本部内 (56)参考文献 特開 平6−65754(JP,A) 特開 平6−287764(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01F 1/12 - 1/375

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 非晶質酸化物ゾルの複合体を用いて、5
    00℃/分以上の昇温速度で800℃以上の温度に加熱
    し、そこで30秒以上保持して鋼板に焼き付けることで
    造膜される結晶質酸化物からなる絶縁被膜を有する方向
    性電磁鋼板であって、該絶縁被膜は熱膨張係数が9×1
    -6/℃以下の結晶粒からなりその粒径は80nm
    以下であり、かつ結晶化せずに非晶質のままで残ってい
    る粒界層の厚みがd/10〜d/5の範囲に入ることを
    特徴とする低鉄損方向性電磁鋼板。
JP8298895A 1995-04-07 1995-04-07 低鉄損方向性電磁鋼板 Expired - Fee Related JP3398515B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP8298895A JP3398515B2 (ja) 1995-04-07 1995-04-07 低鉄損方向性電磁鋼板

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP8298895A JP3398515B2 (ja) 1995-04-07 1995-04-07 低鉄損方向性電磁鋼板

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH08279409A JPH08279409A (ja) 1996-10-22
JP3398515B2 true JP3398515B2 (ja) 2003-04-21

Family

ID=13789607

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP8298895A Expired - Fee Related JP3398515B2 (ja) 1995-04-07 1995-04-07 低鉄損方向性電磁鋼板

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3398515B2 (ja)

Families Citing this family (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6280862B1 (en) * 1997-04-03 2001-08-28 Kawasaki Steel Corporation Ultra-low iron loss grain-oriented silicon steel sheet
JP4593841B2 (ja) * 2001-07-27 2010-12-08 京セラ株式会社 配線基板
KR102459498B1 (ko) * 2016-12-28 2022-10-26 제이에프이 스틸 가부시키가이샤 방향성 전기 강판, 변압기의 철심 및 변압기 그리고 변압기의 소음의 저감 방법
JP6822501B2 (ja) * 2018-02-28 2021-01-27 Jfeスチール株式会社 絶縁被膜付き方向性電磁鋼板の製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JPH08279409A (ja) 1996-10-22

Similar Documents

Publication Publication Date Title
EP1397527B1 (de) Kornorientiertes elektroblech mit einer elektrisch isolierenden beschichtung
JP6394837B1 (ja) 方向性電磁鋼板および方向性電磁鋼板の製造方法
JP3482374B2 (ja) 被膜特性に優れた方向性電磁鋼板およびその製造方法
JP4288022B2 (ja) 一方向性珪素鋼板とその製造方法
JP2002322566A (ja) 張力付与性絶縁皮膜の皮膜密着性に優れる一方向性珪素鋼板とその製造方法
JP3398515B2 (ja) 低鉄損方向性電磁鋼板
KR102230629B1 (ko) 방향성 전기 강판 및 방향성 전기 강판의 제조 방법
JP6410002B1 (ja) 方向性電磁鋼板および方向性電磁鋼板の製造方法
JP2003171773A (ja) 張力皮膜を有する一方向性珪素鋼板
JP3209850B2 (ja) 方向性電磁鋼板の絶縁被覆剤、絶縁被膜形成方法及び方向性電磁鋼板
JP2698549B2 (ja) 酸化マグネシウム−酸化アルミニウム系複合被膜を有する低鉄損一方向性珪素鋼板およびその製造方法
JP6981510B2 (ja) 絶縁被膜付き方向性電磁鋼板
JP6645632B1 (ja) 絶縁被膜付き電磁鋼板およびその製造方法、前記電磁鋼板を用いてなる変圧器の鉄心、変圧器ならびに変圧器の誘電損失の低減方法
JP4044781B2 (ja) 張力付与性絶縁皮膜密着性に優れる一方向性珪素鋼板とその製造方法
JP6579260B2 (ja) 方向性電磁鋼板および方向性電磁鋼板の製造方法
JP2664326B2 (ja) 低鉄損一方向性珪素鋼板
JP2667098B2 (ja) 低鉄損方向性電磁鋼板の製造方法
JP6863534B1 (ja) 絶縁被膜付き電磁鋼板
JP2020111816A (ja) 方向性電磁鋼板及びその製造方法
JP6904499B1 (ja) 被膜形成方法および絶縁被膜付き電磁鋼板の製造方法
WO2021084793A1 (ja) 絶縁被膜付き電磁鋼板
JPS6326329A (ja) 化学気相蒸着処理方法
JP3300117B2 (ja) 方向性珪素鋼板の絶縁被膜形成方法
JP2000124020A (ja) 磁気特性の優れた一方向性珪素鋼板およびその製造方法
JP3527008B2 (ja) 低鉄損一方向性電磁鋼板およびその製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20030121

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20080214

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090214

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090214

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100214

Year of fee payment: 7

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100214

Year of fee payment: 7

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110214

Year of fee payment: 8

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110214

Year of fee payment: 8

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120214

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120214

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130214

Year of fee payment: 10

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130214

Year of fee payment: 10

S531 Written request for registration of change of domicile

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130214

Year of fee payment: 10

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130214

Year of fee payment: 10

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130214

Year of fee payment: 10

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140214

Year of fee payment: 11

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees