JP3396336B2 - 鋼材の窒化方法 - Google Patents

鋼材の窒化方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、鋼材の表面に窒化層
を形成して耐磨耗性等を向上させる鋼材の窒化方法に関
するものである。
【0002】
【従来の技術】耐摩耗性、耐食性、疲労強度等の機械的
性質を向上させる目的で、鋼材の表面に窒化物の層を形
成する窒化法あるいは、浸炭窒化法として従来採用され
てきた方法は次のようなものである。 (イ) NaCN、KCNO等のシアン系溶融塩による
方法(タフトライド法) (ロ) グロー放電による窒化(イオン窒化) (ハ) アンモニアまたはアンモニアと炭素源を有する
ガス(例えばRXガス) との混合ガスによる窒化(ガス窒化、ガス軟窒化)
【0003】これらのうち、(イ)の方法は、有害な溶
融塩を用いるので作業環境、廃棄物処理等の点で将来的
に好ましくない。また、(ロ)の方法は、低真空のN2
+H 2 雰囲気中でグロー放電により窒化するもので、ス
パッタリングに伴う表面清浄化作用により酸化皮膜の影
響は少なくなるが、局部的な温度差による窒化ムラが発
生しやすい。また、この方法は、処理物の形状,寸法に
制約が大きく、コスト高になるという問題点がある。さ
らに、上記(ハ)の方法は、窒化ムラが生じやすく、処
理の安定性に問題があり、しかも、深い窒化層を得るた
めには長時間を要するという問題点もある。
【0004】一般に、鋼材は、500℃以上の温度で窒
化されるが、鋼材表面層に窒素を吸着,拡散させるため
には、金属表面の活性度が高いことが必要で、有機,無
機系の汚れは勿論、酸化皮膜やO2 等の吸着皮膜が存在
しないことが望ましい。また、上記酸化皮膜等の存在
は、窒化ガスであるアンモニア(NH3 )の解離度を助
長する点でも好ましくない。しかしながら、実際にはガ
ス窒化法において酸化皮膜の形成を防止することは不可
能であり、例えば、クロムを多量に含まない肌焼鋼や構
造用鋼の場合でも400℃〜500℃の温度では、NH
3 やNH3 +RXガス雰囲気下にあっても薄い酸化皮膜
が形成される。クロム等酸素との親和力の大きい元素を
多量に含む鋼種ではこの傾向が更に強くなる。
【0005】このような酸化皮膜の形成は、同一部品で
も表面状態や加工条件等によって変化し、結果的に不均
一な窒化層が形成されていた。典型的な例として、たと
えばオーステナイト系ステンレス鋼の冷間加工品等の場
合には、熱処理炉に装入する前にフッ硝酸により洗浄し
て表面の不働態皮膜を完全に除去したとしても、満足な
窒化層を形成するのはほとんど不可能である。なお、窒
化ムラについてはガス軟窒化のみでなく、窒化鋼やステ
ンレス鋼に対するNH3 のみによる窒化(ガス窒化)に
おいても同様に発生する。また、通常の構造用鋼の場合
でも歯車のように形状の複雑な部品の場合窒化ムラが発
生し易いという基本的な問題がある。
【0006】上記のようなガス窒化、ガス軟窒化の本質
的な問題点を改良する手段として、塩化ビニル樹脂を処
理物(ワーク)とともに炉に装入する方法や、CH3
l等をふりかけて200〜300℃に加熱し、HClを
発生させて酸化皮膜の発生を防止するとともにその除去
をはかる方法、あるいは予め表面にメッキを施して酸化
皮膜を抑制する方法等が過去に提唱されたことがある
が、ほとんど実用化されていないのが現状である。例え
ば、HClによって鋼材表面にFeCl2 、FeCl3
等の塩化物を析出させる場合には、これらの塩化物は、
窒化温度以下の温度で極めて脆く、しかも昇華、蒸発し
やすいため、窒化温度において塩化物膜が形成されず、
若干の酸化皮膜抑制効果はあるものの取扱いの煩雑さや
炉材の損傷が著しいことと相まって実用的には有効とは
いえない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】このように、従来の方
法は、前洗浄後の無機,有機異物の残存や、被処理物の
酸化被膜により窒化ムラ等が発生するという問題を有し
ているのであり、このような問題を効果的に解消する目
的で、本発明者らは、窒化に先立って、鋼材をフッ素化
合物もしくは、フッ素を含むガス(以下「フッ素系ガ
ス」と称する)からなる雰囲気中に加熱保持して鋼材の
表面層にフッ化物膜を生成させることが有効であること
を見いだし、すでに特許出願〔特願平1−177660
号(特開平3−44457号)〕している。このよう
に、フッ素系ガスでフッ化処理すると、活性化したフッ
素原子により鋼材表面に付着していた無機,有機物の汚
染物質が破壊除去されて表面が浄化されるとともに、こ
のフッ素原子が酸化被膜と反応しフッ化物膜に変化して
鋼材表面がフッ化物膜で被覆保護された状態となる。こ
のフッ化物膜は、次工程の窒化処理により分解消失する
ため、鋼材表面が活性化された状態となる。そして、こ
の活性化された鋼材表面に、窒素原子が迅速に浸透,拡
散して、均一な窒化層が形成されるようになる。
【0008】ところが、上記の処理方法では、窒化温度
が500〜580℃であるのに対し、フッ化処理の温度
は、300〜450℃であり、窒化温度よりかなり低
く、処理のたびに炉内温度を昇降させる必要があるため
に生産性が悪く、炉寿命の面でも問題がある。生産性等
を考慮すると、フッ化処理と窒化処理を同じ温度で行う
ことが望ましいが、フッ化処理の温度を窒化温度まで高
くした場合には、鋼材や炉内壁,治具等の金属表面が酸
化されて過酸化状態となることから、フッ素系ガスの消
費量が増大したり、窒化ムラが生じたりするという問題
が生じる。すなわち、上記金属表面は、通常、昇温時の
アウトガスや微量酸素によって酸化され、薄いFeO膜
が形成されているが、フッ化処理温度を高くすると、鋼
材装入時に炉内に侵入した空気により、上記FeO膜が
さらに酸化され、Fe2 3 ,Fe 3 4 等の過酸化物
が生成する。このような過酸化物がフッ化処理前に生成
すると、フッ化処理の際、上記過酸化物との反応に多量
のフッ素系ガスが消費され、高価なフッ素系ガスの使用
量が増大するとともに排ガス処理装置への負荷も増大
し、窒化処理自体のコストが高くなる。さらに、鋼材の
形状や治具への取り付け状態の具合により、鋼材同士あ
るいは鋼材と治具との接触面部が多くなった場合には、
フッ化処理の際、上記接触面部にはフッ素系ガスが侵入
し難いことから酸化皮膜が残りやすいため、窒化ムラが
生じやすくなる。そのうえ、フッ化処理前に鋼材表面に
過酸化物が生成すると、窒化処理終了後の鋼材表面に過
酸化物の跡が汚れとなって残り、外観が悪くなるという
問題も生じる。
【0009】この発明は、このような事情に鑑みなされ
たもので、フッ化処理と窒化処理とを同じ温度で行うこ
とにより生産性を向上させ、しかも、高価なフッ素系ガ
スを節約し、さらに、均一な窒化層が得られる鋼材の窒
化方法の提供をその目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、この発明の鋼材の窒化方法は、鋼材をフッ素系ガス
雰囲気中に加熱保持して鋼材の表面にフッ化膜を形成さ
せるフッ化処理をしたのち、上記鋼材の表面に窒素を反
応させて硬質の窒化層を形成させる鋼材の窒化方法であ
って、上記フッ化処理に先立ち、予め水素を含む還元性
ガスを炉内に導入し、鋼材を上記還元性ガス雰囲気中で
加熱保持するという構成をとる。
【0011】
【作用】すなわち、本発明者らは、先の提案法の改善を
目的に、一連の研究を重ねた。その結果、フッ化処理に
先立ち、予め水素を含む還元性ガスを炉内に導入し、鋼
材を上記還元性ガス雰囲気中で加熱保持することによ
り、昇温時に鋼材や炉内壁,治具等の表面に生成した過
酸化物(Fe2 3 ,Fe3 4 等)が、水素の強力な
還元作用によって還元され、薄いFeO膜だけとなって
残ることを突き止めた。そして、このようにすると、フ
ッ化処理の際、フッ素系ガスは上記薄いFeO膜と反応
するだけでフッ化膜を形成するため、従来と比べてフッ
素系ガスの消費量が著しく減少し、しかも、フッ化処理
前に過酸化物が還元されることから、鋼材同士等の接触
面部にも酸化皮膜が残らず、窒化ムラを生じることがな
く、さらに、窒化処理終了後の鋼材表面にも汚れが残ら
ないことを見いだし、この発明に到達した。
【0012】つぎに本発明を詳しく説明する。
【0013】この発明は、上述のように、鋼材をフッ化
処理したのち窒化処理する窒化方法において、上記フッ
化処理の前段階において、予備処理として、炉内に水素
を含む還元性雰囲気ガスを導入し、鋼材を上記還元性雰
囲気ガス中に加熱保持するものである。
【0014】上記予備処理に使用される水素を含む還元
性雰囲気ガスとしては、炭化水素に空気を混合して変成
した発熱型ガス,上記発熱型ガスからCO2 ,H2 Oを
吸着除去した窒素型ガス,炭化水素と空気を混合して触
媒中で燃焼させて変成した吸熱型ガス,メタノール等を
分解してCO,H2 としたアルコール型ガス等があげら
れる。通常は、CO等を含まず浸炭反応等が生じないN
3 +H2 +N2 の混合ガスもしくはH2 +N2 の混合
ガスが用いられる。これらの混合ガスは、工場生産のH
2 ガスとN2 ガスおよびNH3 ガスを混合希釈して生成
したものを用いてもよいが、窒化源ガスでもあるNH3
ガスを加熱状態の炉内に導入し、その一部をH2 とN2
に分解させることにより、炉内をNH3 +H2 +N2
混合ガス雰囲気にすることが、経済的に最も効率が良
い。この場合、NH3 +H2 +N2の混合ガスにおい
て、H2 ,N2 は、下記の式に示すように分解生成さ
れ、その容量比は、H2 :N2 =3:1程度となる。ま
た、上記NH3 +H2 +N2 の混合ガス中のNH3 濃度
は、炉内の状況や温度等によっても異なるが、通常は、
10〜70容量%の範囲に設定される。また、工場生産
のH2 ガス,N2 ガスおよびNH3 ガスを混合希釈する
場合には、上記H2 :N2 比は、3:1に限定されるこ
とはない。
【0015】
【化1】2NH3 → 3H2 +N2
【0016】上記予備処理における加熱保持時間は、鋼
材(以下「ワーク」と称する)の形状,寸法,鋼種,加
熱温度,雰囲気等に応じて適当な時間を選べばよく、通
常は十数分〜数十分に設定される。
【0017】この発明で使用されるフッ素系ガス(フッ
素化合物ガスまたはフッ素ガスを含有するガス)として
は、フッ素化合物、例えばNF3 ,BF3 ,CF4 ,S
6等のフッ素化合物ガスやF2 ガスからなる主成分ガ
スを含むガスがあげられる。通常は、この主成分ガスと
それを希釈する希釈ガス(N2 ガス等)でフッ素系ガス
が構成される。これらフッ素系ガスに用いられる主成分
ガスのうち、反応性、取扱い性等の面でNF3 が最も優
れており、実用的である。上記フッ素系ガス雰囲気下で
鋼材の被加工物を、例えばNF3 の場合、250〜60
0℃の温度に加熱保持し、被加工物を表面処理した後、
公知の窒化用ガス、例えばアンモニアを用いて窒化処理
(または浸炭窒化処理)が行われる。通常、上記NF3
等は、先に述べたように、窒素ガスで希釈されて用いら
れる。このとき、フッ素系ガス雰囲気のフッ素化合物ま
たはフッ素の濃度は、1000〜100000ppmで
ある。
【0018】この発明の方法をより具体的に説明する
と、鋼製のワークを脱脂洗浄し、例えば、図1に示すよ
うな熱処理炉で処理を行う。この熱処理炉は、ステンレ
ス製の外殻2の中央が、上下にスライドして開閉する中
間扉9で仕切られたオールケース型の半連続炉である。
前半部分(図示の右側)がフッ化処理および窒化処理が
行われる処理室12であり、後半部分(図示の左側)が
窒化処理後のワークが冷却される冷却室15である。上
記処理室12は、ワークが装入されるワーク装入扉16
を備えており、雰囲気ガス導入管5と排気管6が挿入さ
れている。上記雰囲気ガス導入管5にはボンベから流量
計17,バルブ18等を経由して所定のガスが供給され
る。内部の雰囲気ガスはモーター7で回転するファン8
によって攪拌される。一方、冷却室15は、ワークが排
出されるワーク排出扉19を備えており、冷却用のガス
を導入する冷却ガス導入管21が挿入されている。そし
て、ワーク10は、金網製のコンテナ11に詰められて
ワーク装入扉16より処理室12内に装入され、フッ化
処理および窒化処理が終了した後、中間扉9が開けら
れ、ローラーコンベア20上を移動して処理室12から
冷却室15へ移送される(図示の鎖線の位置)。この移
送と同時に、つぎのワーク10がワーク装入扉16より
処理室12内に装入され、引き続きフッ化処理および窒
化処理が開始される。このように、この炉では、ワーク
10を半連続的に処理できるようになっている。図にお
いて、22はヒーター、13は真空ポンプ、14は除害
装置である。
【0019】上記構成において、鋼材の窒化処理はつぎ
のようにして行われる。すなわち、まず、処理室12内
を窒化温度と同じ温度(500〜580℃)に加熱した
のち、上記処理室12内に鋼材を装入する。ついで、上
記ボンベから水素を含む還元性ガス、例えば、NH3
2 +N2 の混合ガスを導入し、所定時間保持し、予備
処理が行われる。鋼材の装入時に炉内に侵入した空気に
より上記鋼材や炉内壁,治具等が酸化され、その表面に
過酸化物(Fe2 3 ,Fe3 4 等)が生成するが、
この予備処理により、雰囲気中の水素の強力な還元作用
で、例えば、下記の式に示すように還元され、薄いFe
O膜だけとなって残る。
【0020】
【化2】Fe2 3 +H2 → 2FeO+H2 O Fe3 4 +H2 → 3FeO+H2
【0021】つぎに、フッ化処理が行われる。すなわ
ち、まず、予備処理後の処理室12内に純N2 ガス等を
導入して雰囲気ガスをパージし、ついで、上記処理室1
2中にボンベからフッ素原子源を含む反応ガス、例えば
NF3 とN2 の混合ガスを導入する。NF3 は250〜
600℃の温度で活性基のFを発生し、このFが表面に
残存している有機,無機の異物を除去すると共に、ワー
ク表面のFeO膜やFe素地あるいは鋼中の添加元素の
酸化物(Cr2 3 等)と迅速に反応して、例えば下記
の式に示すように、表面にFeF2 ,FeF3 ,CrF
2 ,CrF4 等の化合物を含むごく薄いフッ化膜が形成
される。
【0022】
【化3】FeO+NF3 → FeF3 +NO Cr2 3 +2NF3 → 2CrF3 +2NO+1/
2O2
【0023】これらの反応により、ワーク表面のFeO
膜等はフッ化膜に変換される。このとき、上記予備処理
によりFe2 3 ,Fe3 4 等の過酸化物が予め還元
されているため、フッ素系ガスは、薄いFeO膜と反応
するだけで均一なフッ化膜が生成される。また、上記過
酸化物の還元により、ワーク同士等の接触面部にも酸化
皮膜が残らないため、ワーク表面全体に均一なフッ化膜
が生成されるようになる。
【0024】さらに、上記フッ化処理されたワークにつ
いて、窒化処理が行われる。すなわち、処理室12内を
引続き同じ温度に保った状態で、NH3 あるいはNH3
と炭素源を有するガス(例えばRXガス)との混合ガス
を導入すると、上記フッ化膜は、雰囲気中のH2 または
微量の水分によって例えば下記の式に示すように還元あ
るいは破壊され、活性な金属素地が形成されると推測さ
れる。
【0025】
【化4】CrF3 +3/2H2 → Cr+3HF 2FeF3 +3H2 → 2Fe+6HF
【0026】このように、活性な金属素地が形成される
のと同時に、活性基のNが吸着されてワーク内に侵入、
拡散してゆき、その結果、表面にCrN,Fe2 N,F
3N,Fe4 N等の窒化物を含有する化合物層が形成
される。このような化合物層が形成されるのは、従来の
処理法でも同様であるが、従来法では、ワークが常温か
ら窒化温度まで昇温する時に生成する過酸化物等によっ
て表面の活性度が低下しているので、Nの表面吸着の度
合いが低く、不均一である。また、このような不均一性
は、ワーク同士等の接触面部において、特に顕著であ
る。
【0027】上記のように、この発明では、フッ化処理
と窒化処理を同じ温度で行うことができるため、生産性
が向上する。また、処理のたびに炉内温度を昇降させる
必要がないため、特に、図1に示すような連続式の炉を
用いるような場合に有効である。しかも、予備処理によ
ってワーク表面の過酸化物を強制的に還元してからフッ
化処理することにより、薄いFeO膜と反応するだけの
必要最小限のフッ素系ガス量でフッ化処理が完了するた
め、高価なフッ素系ガスを節約できるようになる。さら
に、ワーク同士等の接触面部にも酸化皮膜を残さず、ワ
ーク表面全体に均一なフッ化膜を生成させてから窒化処
理を行うため、窒化ムラが発生せず、均一で厚い窒化層
を得ることができるようになる。
【0028】つぎに、実施例について比較例と併せて説
明する。
【0029】
【実施例1および比較例1】図1に示す半連続処理炉に
より、ワークとしてマルテンサイト系ステンレスである
SUS440Cで形成されたシャフト(外径10φ×長
さ100mm)を用い、この発明の方法により窒化処理
を行った。まず、上記シャフトを治具に取り付けたのち
コンテナ11に詰め、窒化温度である580℃まで昇温
させた処理室12内に装入した。ついで、処理室12内
に、時間当たりにして処理室12の容積の6倍に相当す
る流量でNH3 ガスを導入した。この時の炉内雰囲気
は、56%NH3 +18%H2 +6%N2 であり、この
状態で30分間予備処理を行った。つぎに、純N2 ガス
で処理室12内を20分間パージしたのち、NF3 を2
0000ppm含有するN2 ガス雰囲気に保持し、15
分間フッ化処理を行った。そののち、50%NH3 +5
0%N2 混合ガスを導入して2時間窒化処理を行い、窒
化処理終了後冷却室15に移送して冷却し、炉外へ取り
出した。
【0030】これに対し、比較例1として上記と同一の
シャフトを用い、上記実施例1と同一の炉で窒化処理を
行った。この際、予備処理を行うことなく、上記実施例
1と同条件でフッ化処理および窒化処理を行った。
【0031】得られたワークの窒化層の厚みを測定した
ところ、比較例1では、ワークと治具との接触面部の窒
化層が、厚み約30μ〜50μの薄く不均一なものであ
ったのに対し、実施例1では、厚み約70μの均一で厚
い窒化層が得られた。
【0032】
【実施例2および比較例2】図2に示すような、外殻2
3内に設けたヒータ3の内側にステンレス製内容器4を
入れたピット炉により、ワークとしてマルテンサイト系
耐熱鋼より形成されたエンジンバルブを用い、この発明
の方法により窒化処理を行った。まず、上記エンジンバ
ルブをコンテナ11に詰めて炉内に装入し、N2 ガス雰
囲気中で580℃まで昇温した。ついで、NH3 +N2
の混合ガスを導入し、40分間予備処理を行った。この
時の炉内雰囲気は、25%NH3 +15%H2 +60%
2 であった。つぎに、純N2 ガスで10分間パージを
行ったのち、NF3 を50000ppm含有するN2
ス雰囲気に保持し、20分間フッ化処理を行った。その
のち、50%NH3 +50%N2 の混合ガスを導入し、
1時間窒化処理を行い。窒化処理終了後、炉外へ取り出
した。
【0033】比較例2として、上記と同一のエンジンバ
ルブを、上記実施例2と同一の炉で窒化処理を行った。
この際、予備処理を行うことなく、上記実施例2と同条
件でフッ化処理および窒化処理を行った。
【0034】得られたワークを比較すると、窒化層の組
織,厚み,均一性等については、両者に有意差はなかっ
たが、実施例2のワークでは、表面が銀白色を呈し、良
好な表面外観であったのに対し、比較例2では、全体に
黒っぽく着色され、汚れが残っていた。
【0035】
【発明の効果】以上のようにこの発明の鋼材の窒化方法
によれば、フッ化処理を、窒化処理と同じ温度で行うこ
とができるようになるため、生産性が向上し、炉寿命の
面でも有利になる。また、昇温時に鋼材や治具等の表面
に生成する過酸化物を、予備処理によって強制的に還元
してからフッ化処理を行うため、高価なフッ素系ガスを
節約できるとともに、排ガス処理装置への負荷も少なく
なり、窒化処理自体のコストが安くなる。さらに、鋼材
同士等の接触面部が多くても、均一なフッ化膜が形成さ
れて窒化ムラが生じないため、鋼材の形状に制約がな
く、治具への取り付け作業も容易になる。そのうえ、窒
化処理後の鋼材表面に汚れが残らず、外観が良くなるた
め、処理後に汚れを除去する必要もない。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明で用いる熱処理炉の一例を示す説明図
である。
【図2】この発明で用いる熱処理炉の他の一例を示す説
明図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平6−256927(JP,A) 特開 平6−299317(JP,A) 特開 平3−193861(JP,A) 特開 平5−5187(JP,A) 特開 平2−118059(JP,A) 特開 昭55−164019(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23C 8/00 - 8/80

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鋼材をフッ素系ガス雰囲気中に加熱保持
    して鋼材の表面にフッ化膜を形成させるフッ化処理をし
    たのち、上記鋼材の表面に窒素を反応させて硬質の窒化
    層を形成させる鋼材の窒化方法であって、上記フッ化処
    理に先立ち、予め水素を含む還元性ガスを炉内に導入
    し、鋼材を上記還元性ガス雰囲気中で加熱保持すること
    を特徴とする鋼材の窒化方法。
  2. 【請求項2】 水素を含む還元性ガスが、NH3 +H2
    +N2 の混合ガスもしくはH2 +N2 の混合ガスである
    請求項1記載の鋼材の窒化方法。
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