JP3174422B2 - ステンレス窒化品 - Google Patents
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- C23C—COATING METALLIC MATERIAL; COATING MATERIAL WITH METALLIC MATERIAL; SURFACE TREATMENT OF METALLIC MATERIAL BY DIFFUSION INTO THE SURFACE, BY CHEMICAL CONVERSION OR SUBSTITUTION; COATING BY VACUUM EVAPORATION, BY SPUTTERING, BY ION IMPLANTATION OR BY CHEMICAL VAPOUR DEPOSITION, IN GENERAL
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Description
表面硬度の双方を備えたステンレス窒化品に関するもの
である。
ンレス製品は、高度の耐食性の他、靱性,加工性,耐熱
性,非磁性等のすぐれた性質を持っており、各種の用途
に用いられている。しかしながら、オーステナイト系ス
テンレス製品は上記のように優れた耐食性を備えてお
り、錆びないという特性を有しているものの、焼入硬化
性を備えていないため、高い表面剛性を要求される用途
には不向きとなっている。
ステナイト系ステンレス材だけでなく、クロムを13〜
18重量%(以下%と略す)含有するマルテンサイト系
ステンレス材も利用されている。このマルテンサイト系
ステンレス材は、焼入硬化は可能であるが、その耐食性
はオーステナイト系ステンレス材に比べて大きく劣って
いる。したがって、耐食性を重視する用途には使用する
ことができない。他方上記オーステナイト系ステンレス
材は、表面剛性に欠けることから、その欠点を補うた
め、硬質クロムメッキ等を施すことが試みられている
が、上記メッキ法では、メッキ皮膜の密着性が低いこと
から、実用上問題がある。
材に対する耐食性について注目されており、この耐食性
を生かし、しかもその表面硬度を向上させて欲しいとい
う要望も増えている。このため、本発明者らは、耐食性
に富んだオーステナイト系ステンレス材(クロム含量が
18%,ニッケル含量が8%の、18−8系のものが汎
用されている)に対して、窒化処理を施し、表面に窒化
硬化層を形成することによって、表面硬度を高めること
を試みた。
窒化,イオン窒化およびガス窒化等の各種の方法がある
が、これらの窒化方法では、窒化温度は通常550〜5
70℃程度に設定され、低温でも480℃程度に設定さ
れている。本発明者らは、このような窒化方法によっ
て、オーステナイト系ステンレスねじを窒化処理した結
果、いずれも、表面硬度は向上するものの、ステンレス
材の特性である、耐食性が損なわれ、発錆し易くなると
いう欠点が生じた。
たもので、高い耐食性と高い表面硬度の双方を備えたス
テンレス窒化品の提供をその目的とする。
め、この発明のステンレス窒化品は、母材が、オーステ
ナイト系ステンレスからなり、表層部の少なくとも一部
が、下記の(A),(B)を備えた窒化硬化層で構成さ
れているという構成をとる。 (A) 結晶質のクロム窒化物を実質的に含有していな
い。 (B) 母相であるオーステナイト相に1.5重量%以
上12.5重量%未満(以下「%」と略す)のN原子が
含有されている。
食性の劣化が生ずる原因を突き止めるため一連の研究を
行った。その結果、上記耐食性の劣化は、形成された窒
化層中に結晶クロム窒化物(CrN)が析出生成するこ
とにより、母相(オーステナイト相)中の固溶クロム
(Cr)濃度が大幅に低下し、ステンレス本来の耐食性
保持機能を果たすべき不働態皮膜の形成に必要不可欠な
活性Crが殆ど無くなってしまうことに起因することを
突き止めた。そして、さらに研究を重ねた結果、上記オ
ーステナイト系ステンレス材に対する窒化処理をかなり
の低温(前記従来の窒化法の窒化温度である480〜5
80℃の温度領域より100〜200℃下げた温度領
域)で行うと、結晶クロム窒化物(CrN)や、鉄窒化
物を析出生成させることなく、窒素原子がオーステナイ
ト系ステンレスの母相(γ相)中に浸透し、その浸透量
(含有量)を1.5%以上12.5%未満の範囲内に規
制すると、耐食性の劣化も生じず、しかも上記窒素原子
の浸透によって、表面硬度の高い窒化硬化層が形成され
ることを見出し、この発明に到達した。この場合、上記
窒素原子は、γ相中に単に浸透するだけの状態であり、
それによって格子歪は形成するが、結晶クロム窒化物等
の析出生成までには至らないものと考えられる。そし
て、上記窒素原子の含有量が上限を越えると、浸透窒素
原子とクロムとによって、結晶クロム窒化物が生成して
しまい、耐食性の低下が生起する。また、上記範囲を下
回ると、表面硬度の高い窒化硬化層の生成が不充分とな
る。
が、結晶質のクロム窒化物を実質的に含有していないこ
とは、X線回折法によって確認することができ、また、
オーステナイト相中に含有されている窒素原子の量は、
エスカ(ElectronSpectroscopy
for Chemical Analysis)または
EPMA(Electron Probe Micro
Analyzer)によって確認することができる。
ここで、結晶質のクロム窒化物を実質的に含有していな
いとは、結晶質のクロム窒化物の含有量が微量(数%)
以下であることをいう。
ナイト系ステンレス材を原料とし、そのまま窒化処理す
るか、もしくはそれを所定の形状に成形した後、その成
形品に対して窒化処理することによって得られる。上記
オーステナイト系ステンレス材としては、先に述べたよ
うな18−8系オーステナイト系ステンレス材を基本と
し、耐食性,加工硬化性,耐熱性,切削性,非磁性等の
要求特性に応じ、元素,成分量を適宜変更させたオース
テナイト系ステンレス材があげられる。また、クロムを
22%以上含有するCr−Ni−Mo系オーステナイト
系ステンレス材も対象となる。さらに、クロムが22%
未満でも、モリブデン(Mo)を1.5%以上含有する
オーステナイト系ステンレス材もこの発明の対象とな
る。
材ないし、その成形品(これらを「ステンレス品」とい
う)に対して施す窒化処理は、つぎのようにして行われ
る。すなわち、上記ステンレス品に対し、窒化処理に先
立って、窒化の際のN原子の浸透の容易化を図るため、
フッ化処理をする。このフッ化処理に用いるフッ素系ガ
スとしては、NF3 ,BF3 ,CF4 ,HF,SF6 ,
C2 F6 , WF6 ,CHF3 ,SiF4 等からなるフッ
素化合物ガスがあげられ、単独でもしくは併せて使用さ
れる。また、これら以外に分子内にフッ素を含む他のフ
ッ素化合物ガスもフッ素系ガスとして用いることができ
る。このようなフッ素系ガスは、それのみで用いること
もできるが、通常は、N2 ガス等の不活性ガスで希釈さ
れて使用される。このような希釈されたガスにおけるフ
ッ素系ガスの濃度は、例えば10000〜100000
ppmであり、好ましくは20000〜70000pp
m、より好ましくは、30000〜50000ppmで
ある。この種のフッ素系ガスとして最も実用性を備えて
いるのはNF3 である。NF3 は常温でガス状であり化
学的安定性が高く取り扱い性が容易である。
囲気を作り、この雰囲気下に、上記ステンレス品を入れ
加熱状態で保持することにより行う。この場合の加熱
は、上記ステンレス品自体を300〜550℃の温度に
昇温させることによって行われる。このようなフッ素系
ガス雰囲気中でのステンレス品の保持時間は、その形状
寸法等によって適当な時間が選択される。通常は、十数
分〜数十分の範囲内に設定される。このフッ化処理によ
り、N原子がステンレス品の表面層に浸透しやすくな
る。この理由については、現段階では充分に明らかでは
ないが、およそつぎのように考えられる。すなわち、上
記ステンレス品の表面には、窒化作用を奏するN原子の
浸透拡散を阻害する不働態皮膜が形成されている。この
ため、従来は不働態皮膜(酸化皮膜)の存在により、窒
化処理の際の温度をかなり高くしないと窒素原子が浸透
しなかったのであり、その結果、表面硬化層中に結晶ク
ロム窒化物が析出生成することとなった。ところが、こ
の発明では、窒化処理に先立って、フッ素系ガス雰囲気
下でフッ化処理をする。このように表面に不働態皮膜が
形成されたステンレス品を上記のようなフッ素系ガス雰
囲気下において加熱状態で保持すると、上記不働態皮膜
がフッ化膜に変換する。このフッ化膜は不働態皮膜に比
べてN原子の浸透が容易であることから、上記ステンレ
ス品の表面は、フッ化処理によってN原子の浸透の容易
な表面状態に形成される。したがって、このようなN原
子の浸透の容易な表面状態となっているステンレス品
を、つぎに示すように窒化雰囲気下において加熱状態で
保持すると、窒化ガス中の「N」原子がステンレス品の
表面層に一定の深さで均一に浸透するため、深く均一な
窒化硬化層が形成されると考えられる。
よりN原子の浸透し易い状態となっているステンレス品
を窒化雰囲気下において加熱状態で保持して窒化処理す
ることにより行われる。この場合、窒化雰囲気下をつく
る窒化ガスとしては、NH3のみからなる単体ガス、ま
たは炭素源を有するガス(例えばRXガス)とNH3と
の混合ガス(例えばNH3 とCOとCO2 との混合ガ
ス)が用いられる。通常は、上記単体ガスまたは混合ガ
スにN2 等の不活性ガスを混合して使用される。場合に
よっては、これらのガスにH2 ガスを混合して使用する
ことも行われる。このような窒化雰囲気下において、フ
ッ化処理のなされたステンレス品が加熱状態で保持され
る。この場合、加熱温度は、従来の窒化処理のそれより
も大幅に低い温度の450℃以下の温度に設定される。
特に好ましいのは380〜420℃の範囲内である。す
なわち、上記温度が450℃を超えると、結晶CrNが
窒化硬化層中に生成して母相中の活性Cr濃度が低下
し、ステンレス自体の有する耐食性が損なわれるからで
ある。特に、420℃以下の温度で窒化処理することに
より、母材となるオーステナイト系ステンレス自身の有
する耐食性と同程度の耐食性を保持でき、しかも硬度の
大きな窒化硬化層がステンレス品の表面に形成されるこ
ととなるため、このような温度域に設定することが好ま
しい。なお、370℃以下の窒化処理温度では、24時
間窒化処理しても窒化硬化層が深さ10μm以下に生成
するに過ぎず、工業的価値に乏しいことから余り実用的
ではない。そして、上記窒化処理時間は、通常10〜2
0時間に設定される。
ス品の表面層が緻密で均一な、厚み20〜40μm程度
の窒化硬化層(全体が一層からなる)に形成される。上
記窒化処理によれば、オーステナイト系ステンレス品
に、窒化処理後の寸法変形や面荒れがほとんど生じな
い。すなわち、従来の窒化処理では、結晶クロム窒化物
が析出生成すること等によって、ステンレス品の外形が
膨張して、寸法変化が生じたり、また、面粗度が悪くな
るという欠点が生じ、最終加工仕上げに多大のコストを
有するうえ、その技術を精密機械に応用することが困難
である。これに対し、この発明の窒化硬化層は、結晶ク
ロム窒化物を実質的に含有していず、緻密な組織からな
っていることから、寸法変化や面粗度の悪化が生じず、
最終仕上げ加工をする必要がなくなる。
含有されていず、かつ、母相であるオーステナイト相
(γ相)に1.5%以上12.5%未満の「N」原子が
含有されている。このため、窒化処理済のステンレス品
(ステンレス窒化品)は、窒化硬化前のオーステナイト
系ステンレス材とほぼ同程度の耐食性を備え、しかも、
上記窒化硬化層の存在により、表面硬度が大幅に向上し
ている。このような窒化処理済のステンレス品の耐食性
は、ステンレス品の加工硬度が低い程、もしくは、窒化
前の表面状態が精密研磨状態であるほど高い。また、材
質的には、SUS310(クロム25%,ニッケル20
%)のようにクロム含有量が高いほど耐食性が良い。ま
た、18−8系オーステナイト系ステンレス材について
は、モリブデンを含むほど良好となる。そして、上記の
ようにして得られたステンレス窒化品は、窒化前のオー
ステナイト系ステンレス材と同程度の優れた耐食性を有
しているうえ、表面硬度も大幅に向上しており、しか
も、非磁性になっている。すなわち、従来の窒化処理に
よれば、結晶クロム窒化物が析出生成することによっ
て、オーステナイト系ステンレス材自体の有する非磁性
性が損なわれ、窒化硬化層が磁性を帯びるようになるの
であるが、この発明のステンレス窒化品では、窒化硬化
層に結晶質のクロム窒化物を実質的に含有していないこ
とから、非磁性を保ったままになる。したがって、非磁
性が要求される用途、例えばコンピュータ関連製品用途
に最適となる。
に対し、HNO3 を含む強混酸処理を施してもよい。こ
の処理によって、窒化を終えたステンレス品の表面に付
着している酸化スケールが除去されると同時に、硝酸の
作用によって、場合によって、ステンレス窒化品の表面
に、固溶クロムに起因する不働態皮膜(酸化皮膜)が早
期に厚めに形成されるようになり、酸化皮膜の強化が可
能となる。より詳しく述べると、前記窒化処理によっ
て、場合によって、ステンレス窒化品の表面部分に酸化
スケールが生ずることがあり、この酸化スケールは発錆
の原因となりやすいため、窒化硬化層の耐食性は、酸化
スケールの存在によって低下する。したがって、上記の
ような強混酸処理を施すことによって酸化スケールが除
去でき、耐食性の低下が防止される。また、オーステナ
イト系ステンレス材の耐食性は、母相中の固溶クロムに
基づく不働態皮膜(酸化皮膜)の生成に起因するもので
あるが、上記のような強混酸処理によって不働態皮膜の
早期生成および強化が行われ、耐食性の向上がみられる
ようになる。このような強混酸としては、HNO3 −H
Fからなる混酸,HNO3 −HClからなる混酸等のH
NO3 を含む混酸が用いられる。これら強混酸における
HNO3 の濃度は、10〜20%、HFの濃度は、1〜
10%、HClの濃度は、5〜25%の範囲に設定され
る。強混酸の残部は水となる。そして、上記処理は、強
混酸の液温を、20〜50℃に制御し、20〜60分
間、上記強混酸液にステンレス窒化品を浸漬することに
よって行われる。このような強混酸処理を行うと、全窒
化硬化層の20〜30%をしめる最表面層が除去される
こととなるが、残された部分の表面硬度は依然として高
いことから、充分な剛性が維持される。この場合、残存
する窒化硬化層は、最表面層の上記除去により完全な非
磁性となる。すなわち、窒化硬化層の最表面層は、場合
によって、多少磁性を帯びることもあるが、そのような
場合でも、上記強混酸処理によって磁性を帯びた最表面
層が除去されるようになることから、強混酸処理済のス
テンレス窒化品は、オーステナイト系ステンレス材(母
材)と同等の透磁率を示すようになる。また、上記最表
面層部分には、窒素原子の浸透量が多く、この窒素原子
の浸透量の多さに基づき、上記最表面層部分は、他の部
分より多少錆びやすくなっているのであるが、最表面層
部分の除去により、その下側の、比較的窒素原子の浸透
量の少ない層(N原子2〜5%)が表面層を形成するよ
うになる。この層は、上記最表面層部分よりは、硬度が
多少低いもののなお充分な硬度を有しており、しかも、
より錆びにくいという特性を有する。したがって、充分
な表面硬度を有し、かつ完全防錆性を要求される用途に
最適となる。
化品は、表面層を構成する窒化硬化層に、結晶クロム窒
化物を実質的に含有していないため、窒化硬化層に結晶
クロム窒化物を含むステンレス窒化品にくらべ、オース
テナイト相(母相)中の固溶クロムが結晶クロム窒化物
の析出生成によって消費されていない。したがって、母
相の結晶クロムの作用によって生ずる不働態皮膜(酸化
皮膜)が充分に生成し、それによって上記母相と同等の
優れた耐食性を有するようになる。また、窒化硬化層に
粗大な結晶クロム窒化物が析出生成していないことか
ら、上記結晶クロム窒化物の析出生成に基づく、ステン
レス窒化品の寸法変化や面粗度の悪化が生じない。その
結果、窒化処理後に、最終仕上げ加工を行う必要がな
い。そして、この発明のステンレス窒化品は、表面層の
母相中に1.5%以上12.5%未満のN原子が浸透含
有されていることによって、表面硬度が高くなり、結晶
クロム窒化物からなる窒化硬化層によって形成されるも
のとほぼ同等の高い表面硬度を備えるようになる。
明する。
ル8%)と、SUS316板片(クロム18%,ニッケ
ル12%,モリブデン2%,芯部硬度Hv=310)
と、SUS310板片(クロム25%,ニッケル20
%,芯部硬度Hv=370)の3種類の試験品(研磨仕
上品)を準備した。ついで、これらをマッフル炉に入れ
て炉内を充分に真空パージした後、410℃に昇温させ
た。そして、その状態でフッ素系ガス(NF3 10vo
l%+N2 90vol%)を入れて炉内を大気圧の状態
にし、その状態で15分間保持しフッ化処理した。つぎ
に、上記フッ素系ガスを炉から排出した後、窒化ガス
(NH3 25vol%+N2 60vol%+CO5vo
l%+CO2 5vol%)を導入し、炉内を410℃に
保ったまま24時間保持し窒化処理して取り出した。
験品(SUS304板片,SUS316板片,SUS3
10板片)について表面硬度を測定したところ、SUS
304板片でHv=880,SUS316板片でHv=
1050,SUS310板片でHv=1120であっ
た。また、硬化層深さはそれぞれ、SUS304板片で
18μm,SUS316板片で20μm,SUS310
板片で18μmであった。
0℃に変えるとともに、処理時間を12時間に変更し
た。それ以外は実施例1と同様に行った。得られた窒化
品について、同様の測定を行ったところ、表面硬度は3
者ともHv=1100以上で窒化硬化層の厚みはそれぞ
れ、SUS304板片が23μm、SUS316板片が
25μm、SUS310板片が20μmであった。
0℃に変えるとともに、処理時間を15時間に変更し
た。それ以外は実施例1と同様に行った。得られた窒化
品について、同様の測定を行ったところ、表面硬度は3
者ともHv=950以上で窒化硬化層の厚みはそれぞ
れ、SUS304板片が15μm、SUS316板片が
15μm、SUS310板片が12μmであった。
いずれも400℃でフッ化処理をしたのち、実施例1で
用いたと同様の窒化ガスを用い、実施例1で用いたと同
様の炉に入れ、550℃で5時間窒化処理して取り出し
た。表面硬度はそれぞれ、順に、Hv=1280,Hv
=1280,Hv=1300であり、硬化層深さは30
〜35μmであった。
品を40℃の5%HF−18%HNO3 の強混酸溶液に
60分間浸漬したのち、取出して調べたところ、各試験
品の窒化硬化層の最表面層(3〜6μm)が除去されて
いた。また、比較例についても、同様に処理したとこ
ろ、窒化硬化層の全体が消失除去されていた。
で得られた試験品およびそれを強混酸溶液で処理したも
のの表面硬度および窒化硬化層の最表面のN原子の含有
量を求め、下記の表1にまとめて示した。表1中、酸処
理有は、強混酸処理を施したものを示し、酸処理無は、
窒化を終えた段階のものを示す。また、N原子の含有量
は、上記各試料をEPMA線分析に供し、得られたチャ
ートから求めた。耐食性は、JIS2371に基づく塩
水噴霧試験(SST試験)に供し、発錆迄の時間を求め
た。また、結晶質クロムの存在の有無は、各試料をX線
回折試験に供し、得られたチャートから判断した。
施例2のSUS310酸処理無と、比較例のSUS31
6酸処理無との対比から明らかなように、窒化硬化層中
に結晶クロム窒化物がなく、かつN原子濃度が、12.
5%未満であれば耐食性は実用化できる程度に得られる
が、12.5%以上になると、結晶クロム窒化物の析出
がみられるようになり耐食性が大幅に低下する。逆に、
実施例3のSUS316酸処理有から明らかなように、
N原子濃度が、1.5%以上であれば、表面硬度が通
常、Hv600以上であるが、1.5%未満になると、
表面剛性が不充分となる。 実施例1〜3と比較例と
の対比から明らかなように、窒化温度が高くなる程、窒
化硬化層中のN原子の濃度(含有量)が多くなる。
強混酸処理すると、窒化硬化層中の最表面層部(N原子
の濃度最大)が溶解除去され、その下の層が現れるた
め、N原子濃度および表面硬度が下がる。 窒化硬化
層中のN原子濃度は、SUS316よりもSUS310
の方が高いことから、窒化に際しては、母材中のCr濃
度に比例して、N原子の濃度が高くなる。 比較例
は、窒化硬化層の全体にわたって結晶クロム窒化物が析
出していて耐食性に欠けることから、強混酸処理によっ
て、耐食性に欠ける窒化硬化層の全体が消失し、母材が
露呈している。
例1(SUS316酸処理無)と比較例(SUS316
酸処理無)とを代表させて第1図(実施例1)および第
2図(比較例)に示した。第1図と第2図のN原子の濃
度曲線から明らかなように、実施例1(SUS316)
では、窒化硬化層の最表面層のN原子の濃度(含有量)
は、7.6重量%であるのに対し、比較例(SUS31
6)では、12.8重量%と著しく高くなっている。な
お、上記EPMAのN原子濃度は、基準検量線を用いて
測定したものである。
1および比較例(いずれもSUS316酸処理無)とを
代表させて第3図(実施例1)および第4図(比較例)
に示した。これらの図において、曲線(イ)が実施例1
のX線回折曲線、曲線(ロ)が窒化処理をしていないS
US316(SUS316生材)のX線回折曲線、曲線
(ハ)が比較例のX線回折曲線である。第3図におい
て、γnは、窒化によって窒素原子が含有されたγ相
(母相)を示す。曲線(イ)と曲線(ロ)との対比か
ら、曲線(イ)のγn(母相)が、それに対応する曲線
(ロ)のγ−Fe相(母相)よりも左(低角度側)にず
れ、格子常数が大きくなっていて、格子歪の発生がみら
れ、これが実施例品の表面硬度の向上原因であることが
うかがえる。他方、比較例の曲線(ハ)では、CrNの
ような結晶クロム窒化物のピークが多数みられ、これ
が、窒化硬化層の耐食性を低減させていることがうかが
える。
および比較例(いずれもSUS316酸処理無)につい
て、電気化学的腐食性を調べるために、アノード分極試
験(JIS G 0579に準ずる)に供した。その結
果を図5に示す。図5から、不働態領域近傍(破線X)
での不働態保持電流密度レベルのオーダーを比較する
と、実施例1(曲線A)は窒化処理していないSUS3
16母材(曲線B)と比べてあまり劣化していないこと
がわかる。これに対して比較例(曲線C)は、SUS3
16母材(曲線B)と比べて3桁以上の差を有し、窒化
処理によって耐食性が著しく劣化していることがわか
る。
%),SUS316(クロム18%,ニッケル12%,
モリブデン2.5%),SUS310(クロム25%,
ニッケル20%)の各線材より冷鍛成形加工したソケッ
トスクリュー(M6)並びにSUS309(クロム22
%,ニッケル12%)の加工硬化材を対象とし、実施例
1と同様の手順、条件でフッ化処理,窒化処理した。得
られた窒化品は、表面硬度がいずれもHv=1100〜
1150であり、窒化硬化層の深さは全体にわたって1
8〜20μmであった。つぎに、これらをショットブラ
ストに供し、表面に付着していた酸化スケールを除去し
てSST試験に供した。発錆は、いずれも72時間以内
で生じた。
13%HNO3 の強混酸溶液に、液温45℃で60分浸
漬し、その後、硬度を測定したところ、いずれも、表面
硬度Hv=850〜900であり、窒化硬化層の厚み
は、強混酸によって浸され5〜8μm減少し12〜15
μmとなっていた。ついで、上記酸処理済の試験品をS
ST試験に供した結果、耐腐食性が向上しており、18
00時間を越えても全く発錆しなかった。
性ステンレス棒(クロム18%,ニッケル12%,Mn
1.5%)およびSUS316棒を対象とし、実施例1
と同様の手順,条件でフッ化処理,窒化処理した。つぎ
に、得られた窒化品を、10%HF−15%HNO3 の
強混酸液に、液温40℃で30分間浸漬して取り出し
た。
(μ)を測定したところ、下記の通りであり、いずれも
窒化によって磁性を帯びていないことがわかる。
る。
る。
圧曲線図である。
Claims (4)
- 【請求項1】 母材が、オーステナイト系ステンレス
からなり、表層部の少なくとも一部が、下記の(A),
(B)を備えた窒化硬化層で構成されていることを特徴
とするステンレス窒化品。 (A) 結晶質のクロム窒化物を実質的に含有していな
い。 (B) 母相であるオーステナイト相に1.5重量%以
上12.5重量%未満のN原子が含有されている。 - 【請求項2】 オーステナイト系ステンレスが、クロム
を22重量%以上含有している請求項1記載のステンレ
ス窒化品。 - 【請求項3】 オーステナイト系ステンレスが、モリブ
デンを1.5重量%以上含有している請求項1または2
記載のステンレス窒化品。 - 【請求項4】 構成要素(B)のみが、下記のように制
限されている請求項1記載のステンレス窒化品。 (B) 母相であるオーステナイト相に1.5重量%以
上7.5重量%未満のN原子が含有されている。
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