JP3389762B2 - 芳香族ポリアミドフィルム及び磁気記録媒体 - Google Patents

芳香族ポリアミドフィルム及び磁気記録媒体

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JP3389762B2
JP3389762B2 JP30126395A JP30126395A JP3389762B2 JP 3389762 B2 JP3389762 B2 JP 3389762B2 JP 30126395 A JP30126395 A JP 30126395A JP 30126395 A JP30126395 A JP 30126395A JP 3389762 B2 JP3389762 B2 JP 3389762B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、磁気記録媒体等の
湿度変化に対し安定性が求めれる用途に対し好適に用い
られる芳香族ポリアミドフィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】芳香族ポリアミドはその高い耐熱性、電
気絶縁性から工業材料として有用な高分子体である。特
に、ポリパラフェニレンテレフタルアミド(PPTA)
に代表されるようなパラ配向性芳香核からなる芳香族ポ
リアミドはその剛直性から上記特性に加え強度、弾性率
に優れた成形体を与えるのでその利用価値は高い。
【0003】一方、高密度、長時間記録を指向する磁気
記録媒体用途、高密度実装を指向する電子回路用途にお
いては基材の薄もの化、環境変化に対する安定性が求め
られている。
【0004】しかしながらPPTAのごときパラ配向性
芳香族ポリアミドは高い弾性率を有しているので薄もの
としても十分な剛性を有したフィルムとして得ることが
できるものの、湿度膨張係数が大きいために湿度変化に
対し寸法が変動し、トラックずれを発生する等、磁気記
録媒体特に高密度記録媒体用途に用いるには十分な信頼
性を有していない。かかる特性の改善には例えば、特開
昭61-205888 号公報、特開平1-207331号公報等に開示さ
れる手段があるが該手段は極めて高温度での熱処理を要
し、また、PPTAのごとき芳香族ポリアミドは溶媒に
対する溶解性が低く、硫酸等の極めて限定された溶媒に
しか溶解しないために使用可能な素材の限定、厳しい工
程管理、作業上の問題などプロセス上の制約が大きく経
済的に好ましくない。また、キャスト用支持体は表面特
性に大きく影響する要因であるが上述のように素材の限
定を受けるので磁気記録媒体に好適なフィルムは得難い
のが現状である。また、特開平4-209313号公報はパラ配
向型芳香族ポリアミドを用いた磁気記録媒体として、好
ましく湿度膨張係数を規定する。しかし、前記公報でも
そうであるが、該公報でも溶液が光学異方性を与える必
要があり、特殊な製膜法を採らなければ裂けやすく脆い
フィルムしか得られないので極めてプロセス上の制約が
強い。しかもその実施例にはPPTAを開示しているに
すぎず上述の問題点についての解決手段を示しているも
のではない。
【0005】一方、湿度膨張係数が低く、有機溶媒に可
溶な芳香族ポリアミドとして、特公昭56-45421号公報、
特公昭55-34494号公報等には芳香核に塩素原子やニトロ
基を導入した芳香族ポリアミドが提案されている。しか
しながら、かかる芳香族ポリアミドは使用されるモノマ
が高価な上に、熱がかかると分解してフィルム特性を損
ねたり、塩化水素を脱離して製品性能を侵す懸念やフィ
ルムの廃棄、焼却時に塩化水素や有害物を生成する懸念
があり、地球環境上好ましくない。
【0006】また、溶解性の改善には酸素やメチレンブ
リッジの導入は有効であり、例えば特開昭64-90223号公
報、特表平6-510311号公報等の例があるが、湿度膨張係
数を低減するという本発明の目的に対し、なんら解決手
段を開示していない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明はかかる問題点
を解決し、芳香族ポリアミド本来の優れた耐熱性、機械
特性等を損なうことなく、有機溶媒に可溶であり、かつ
高いヤング率を有し、湿度膨張係数が規制された磁気記
録媒体用ベースフィルムなどに好適に用いることができ
る芳香族ポリアミドフィルムを提供することを目的とす
る。
【0008】
【課題を解決するための手段】すなわち本発明は、有機
溶媒に可溶であって、芳香核上の水素を置換するハロゲ
ン基及びニトロ基の置換割合が15%未満であるパラ配
向性芳香族ポリアミドを主成分とし、該芳香族ポリアミ
ドが、一般式(I)で示される互いに異なった芳香核を
有する構造単位からなるA群、 一般式(I)
【化5】 一般式(II)で示される互いに異なった芳香核を有す
る構造単位からなるB群、 一般式(II)
【化6】 及び、一般式(III)で示される互いに異なった芳香
核を有する構造単位からなるC群、 一般式(III)
【化7】 (ここでAr 1 、Ar 2 、Ar 3 はパラ配向性の芳香核で
あり、各群の化合物はRa、Rb、Rcで示されるハロ
ゲン基、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜4のアルキル
基、炭素数1〜3のアルコキシ基、トリアルキルシリル
基、オキシアリール基、チオアリール基から選ばれる官
能基で置換されていても構わない。ここで、k、l、m
はそれぞれ0〜4の数である。また、A群、B群は実質
的に等モルである。)から少なくとも3種以上選択され
る構造単位(但し、基本芳香核を異にする少なくとも2
種の構造単位は同じ群から選択される。)で示される構
造単位を主たる構造単位とし、2種以上の基本芳香核の
異なる構造単位が選択される群における各基本芳香核の
存在割合(AR)が該群における基本芳香核の種類をN
種としたとき、1/N×0.7≦AR≦1/N×1.3
であり、式(1)で示される隣接位置換率S 0 (ここで
いう隣接位はアミド基が結合した芳香核炭素原子に隣接
する芳香核炭素原子を指す)が60%以上であり、
つ、少なくとも一方向のヤング率が7.8GPa以上1
4.21GPa以下、全ての方向における湿度膨張係数
が9×10-6以上22×10-6以下である芳香族ポリア
ミドフィルムを特徴とする。 0 =(隣接位に水素が置換していないアミド基の数)/(アミド基の総数) ×100(%) ・・・ (1)
【0009】
【発明の実施の形態】本発明の芳香族ポリアミドフィル
ムは硫酸、発煙硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸等
の強酸に溶解させた製膜原液から得ることもできるが、
有機溶媒に可溶であり、好ましく光学等方性溶液を与え
る。従って、本発明の芳香族ポリアミドは有機溶媒溶液
から好ましく製膜されるべきである。特に有機溶媒系溶
液から得られるフィルムは優れた表面性を有するので工
業的な利用価値が高く、また、複雑な製法によることも
なくプロセス上極めて好ましい。ここで用いられる有機
溶媒は、該芳香族ポリアミドが溶解し、かつ安定な溶液
を形成できれば特に制限はないが、N−メチルピロリド
ン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ヘ
キサメチルホスホルアミド等の非プロトン性有機極性溶
媒が好ましく用いられる。もちろんこれら有機溶媒は混
合溶媒であっても良く、後述する溶解助剤は3重量%以
下までなら含まれていても構わない。
【0010】また、本発明の芳香族ポリアミドは、芳香
核上の水素を置換するハロゲン基及びニトロ基の置換割
合が15%未満のパラ配向性芳香族ポリアミドを主成分
とする。ここで言う置換割合は、パラ配向性芳香族ポリ
アミドの主鎖を構成する芳香核に対するモル分率であっ
て、好ましくは5%未満、更に好ましくは0%つまり置
換されていないことが好ましい。後述するがここでは、
ハロゲン基またはニトロ基でない置換基の置換割合につ
いて規定するものではない。ハロゲン基及びニトロ基の
置換割合が15%以上であれば加熱時の分解挙動により
フィルムあるいは上部構造物、例えば磁気記録媒体では
磁性層、フレキシブルプリント配線板では金属配線、の
機能を大きく損ね製品としての価値を大きく損ねる。
【0011】また、パラ配向性芳香族ポリアミドとはパ
ラ配向性芳香核がアミド結合により直接連結される構造
単位からなり、ここでパラ配向性芳香核とは2価の結合
鎖が互いに同軸あるいは平行にある芳香核で定義され、
例えば、
【化5】 が挙げられるがこれに限定されるわけではない。
【0012】このパラ配向性は、力学的要求上必要な要
因である。従って、本発明の芳香族ポリアミドはこのよ
うな芳香核を全芳香核に対し60モル%以上、好ましく
は70モル%以上、更に好ましくは75モル%以上含ん
でいる。60モル%未満であれば、成形物としたときに
強度、伸度、剛性、耐熱性等のフィルムとしての十分な
機能を全うできない。
【0013】また、ポリマの固有粘度(ポリマ0.5g
を硫酸中で100mlの溶液として30℃で測定した
値)は、0.5以上であることが好ましい。
【0014】また、芳香族ポリアミドとして、次のよう
な構造単位からなるものは、本発明の要件を兼ね備え、
かつ後述する好ましい特性をも兼ね備えることのできる
フィルムを与えるため好ましく用いられる。
【0015】一般式(I)で示される互いに異なった芳
香核を有する構造単位からなるA群、 一般式(I)
【化6】 一般式(II)で示される互いに異なった芳香核を有する
構造単位からなるB群、 一般式(II)
【化7】 及び、一般式(III )で示される互いに異なった芳香核
を有する構造単位からなるC群、 一般式(III )
【化8】 (ここでAr1 、Ar2 、Ar3 はパラ配向性の芳香核
であり、各群の化合物はRa、Rb、Rcで示されるハ
ロゲン基、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜4のアルキ
ル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、トリアルキルシリ
ル基、オキシアリール基、チオアリール基から選ばれる
官能基で置換されていても構わない。ここで、k、l、
mはそれぞれ0〜4の数である。また、A群、B群は実
質的に等モルである。)から少なくとも3種以上選択さ
れる構造単位(但し、基本芳香核を異にする少なくとも
2種の構造単位は同じ群から選択される。)。
【0016】この芳香族ポリアミドは、上記の一般式
(I)、一般式(II)、一般式(III)の3群から少な
くとも3種選択され、かつその内の少なくとも2種は同
一群から選択された基本芳香核(官能基、置換基を除い
た残りの部分として定義する。)を異にする構造単位か
らなることでポリマの溶解性、ポリマ溶液の安定性が劇
的に改善され、有機溶媒に可溶であって、好ましく有機
溶媒溶液系からの製膜が可能である。この時、一般式
(I)、一般式(II)、一般式(III )の3群からは少
なくとも4種以上、更に好ましくは5種以上選択される
ことが好ましく、また、2種以上の基本芳香核の異なる
構造単位が選択される群は2群以上であることが好まし
い。また、2種以上の基本芳香核の異なる構造単位が選
択される群における各基本芳香核の存在割合(AR)は
該群における基本芳香核の種類をN種とした時、 1/N×0.7≦AR≦1/N×1.3 好ましくは、 1/N×0.8≦AR≦1/N×1.2 更に好ましくは、 1/N×0.9≦AR≦1/N×1.1 であれば優れた有機溶媒溶解性を有するばかりか、機械
特性にも優れたフィルムを得ることができる。
【0017】ここで、Ar1 、Ar2 及びAr3 は互い
に異なったパラ配向性芳香核であり、先述の化学式で定
義される。また、互いに異なったとは、基本芳香核また
は、置換基の種類あるいは数を異にすると言う意味であ
る。
【0018】また、好ましい態様である上述の芳香族ポ
リアミドは異なった基本芳香核を2種以上含有する。好
ましくは3種以上、好ましくは4種以上である。これら
の中でも基本芳香核の組み合わせとして、フェニレン
基、ビフェニレン基、ナフチレン基から選ばれる少なく
とも2種、特にビフェニレン基とフェニレン基の組み合
わせは力学的特性、有機溶媒への溶解性に優れるので好
ましい。
【0019】さらに上述の芳香族ポリアミドは一般式
(I)〜(III )の構造単位に加え、好ましく一般式
(IV)で示されるD群の構造単位を含有することができ
る。
【0020】一般式(IV)
【化9】 (ここでAr4 、Ar5 はパラ配向性の芳香核であり、
X、Yは互いに同じか異なっていても良い−CO−また
は−NH−基。Zはブリッジ原子団。また、Rd、Re
はシアノ基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜3
のアルコキシ基、トリアルキルシリル基、オキシアリー
ル基、チオアリール基から選ばれる官能基であり、n、
pはそれぞれ0〜4の数である。但し、この時は、X、
Yが共に−CO−の時はA群と(B群、D群)が、X、
Yが共に−NH−の時は(A群、D群)とB群が、X、
Yが互いに異なるときはA群とB群が、実質的に等モル
である。) Ar4 、Ar5 はパラ配向性の芳香核であり先述のAr
1 〜Ar3 と同様に定義される。
【0021】またZはブリッジ原子団であって、−O
−,−CH2 −,−CO−,−SO2 −,−S−,−C
(CH3 2 −,−C(CF3 2 −,−O−Ar−O
−(ここで、Arはアリール基)等から選ばれるが、こ
れに限定されるものではない。中でも−O−,−CH2
−,−C(CH3 2 −,−C(CF3 2 −が好まし
く、特に−O−,−CH2−が湿度膨張係数を制御する
上で好ましく用いられる。
【0022】このD群の構造単位を含有した芳香族ポリ
アミドは、例えば有機溶媒への溶解性及び溶液の安定性
に非常に優れ、製膜性が格段に改良されたものとなる。
また、適度な柔軟性を付与することが可能であり、伸度
特性を大きく改善できる。
【0023】しかしながら、かかる構造単位の導入は成
形体の機械特性をそこねることもあり、好ましくは、全
芳香族ポリアミド構造単位の2〜40%、より好ましく
は5〜30%、更に好ましくは10〜25%の範囲内で
用いるのが良い。
【0024】本発明の芳香族ポリアミドは、本発明の要
件を満たす上でハロゲン基、ニトロ基、シアノ基、炭素
数1〜4のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、
トリアルキルシリル基、オキシアリール基、チオアリー
ル基から選ばれる置換基で置換されていると芳香族ポリ
アミドの有機溶媒への溶解性、溶液の安定性に優れたも
のが得られ、かつ好ましく本発明の湿度膨張係数を満足
せしめるので好ましく用いられるが、湿度膨張係数の低
減には適度な大きさの官能基がより好ましく、シアノ
基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜3のアルコ
キシ基、トリメチルシリル基から選ばれる官能基が好ま
しい。
【0025】本発明の芳香族ポリアミドの隣接位置換率
は、60%以上、好ましくは70%以上、更に好ましく
は80%以上、特に好ましくは90%以上であれば有機
溶媒への溶解性、溶液の安定性が向上するため製膜性に
優れ、かつ、湿度膨張係数を低減することができる。こ
の隣接位置換率S0 は下式により定義され、使用する原
料から確率的計算で求めることができる。また、ここで
言う隣接位はアミド基が結合した芳香核炭素原子に隣接
する芳香核炭素原子を指す。
【0026】 S0 =(隣接位に水素が置換していないアミド基の数)/(アミド基の総数) ×100(%) ………(式1)
【0027】本発明の芳香族ポリアミドは、目的に合わ
せ例えばエステルあるいはイミドの構造を有する構造単
位が共重合、またはブレンドされていても差し支えな
い。もちろんこれら構造単位に含まれる芳香核にも、シ
アノ基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜3のア
ルコキシ基、トリアルキルシリル基、オキシアリール
基、チオアリール基などの置換基を有していても構わな
い。特に、一般式(V)および/または一般式(VI)で
示される芳香族ポリイミドは、機械特性の改善に効果が
あり好ましく用いられる。
【0028】一般式(V)
【化10】 一般式(VI)
【化11】 ここでAr6 、Ar8 は少なくとも1個の芳香環を含
み、イミド環を形成する2つのカルボニル基は芳香環上
の隣接する炭素原子に結合している。このAr6 は、芳
香族テトラカルボン酸あるいはこの無水物に由来する。
代表例としては次の様なものが挙げられる。
【0029】
【化12】 ここでZ’は−O−,−CH2 −,−CO−,−SO2
−,−S−,−C(CH3 2 −等から選ばれるが、こ
れに限定されるものではない。
【0030】また、Ar8 は無水カルボン酸あるいはこ
のハライドに由来する。Ar7 、Ar9 は例えば
【化13】 などが挙げられ、X’、Y’は−O−,−CH2 −,−
CO−,−SO2 −,−S−,−C(CH3 2 −等か
ら選ばれるが、これに限定されるものではない。更にこ
れらの芳香環上の水素原子の一部が、ハロゲン基(特に
塩素)、ニトロ基、炭素数1〜4のアルキル基(特にメ
チル基)、炭素数1〜3のアルコキシ基などの置換基で
置換されているものも含み、また、重合体を構成するア
ミド結合中の水素が他の置換基によって置換されている
ものも含む。
【0031】本発明に用いられる芳香族ポリアミドに
は、成形体の物性を損なわない程度に粒子、滑剤、酸化
防止剤その他の添加剤等がブレンドされていてもよい。
【0032】本発明の芳香族ポリアミドフィルムの20
℃、相対湿度60%における少なくとも一方向の引張り
ヤング率E20はE20≧7.8GPa、好ましくはE20≧
8.8GPa、更に好ましくはE20≧9.8GPaであ
ることが必要である。ヤング率が7.8GPa未満では
張力下に変形を生じ易くなることを意味し、例えば磁気
記録媒体としたときにはトラックズレを生じスキュー現
象、ひどいときにはバーストエラーを生じる。
【0033】また、本発明の芳香族ポリアミドフィルム
は伸度が好ましくは10%以上、更に好ましくは20%
以上、特に好ましくは30%以上であれば柔軟で取り扱
いの容易なフィルムとして得ることができる。
【0034】本発明の芳香族ポリアミドフィルムの全て
の方向における湿度膨張係数は22×10-6(1/%R
H)以下、好ましくは18×10-6以下、更に好ましく
は15×10-6以下、特に好ましくは12×10-6であ
る。2×10-6を越えると湿度変化による寸法変動が
無視できず、トラックズレによる読み出し不良や、スキ
ュー現象等が生じ、とりわけ、使用環境の変化に対しト
ラックピッチの小さい高密度デジタルデータ記録用媒体
ではデータの読み出しエラーを生じるので致命的であ
る。この湿度膨張係数は芳香核への置換基の導入、その
置換部位の制御や含有される不純物、製膜・延伸・熱処
理条件を好ましく制御することで本発明の範囲とするこ
とができる。
【0035】本発明の芳香族ポリアミドフィルムの吸湿
率は好ましくは2.5%以下、更に好ましくは2.0%
以下、特に好ましくは1.7%以下である。2.5%を
越えるフィルムは例えば金属蒸着薄膜磁性層の形成を困
難になさしめ、また電気特性などの諸特性が大きく変動
し磁気記録媒体、フレキシブルプリント基板用基材等に
おいて録再特性の劣化、耐久性の劣化、絶縁性能の劣化
など製品としたときの安定性にかけるものとなる。本発
明の芳香族ポリアミドはその末端をアニリン、フタル酸
無水物、ベンゾイルクロリド等で処理すると吸湿率の低
減がはかれるので好ましい。
【0036】本発明の芳香族ポリアミドフィルムの20
0℃における熱収縮率は好ましくは2%以下、更に好ま
しくは1%以下である。2%を越えるフィルムは磁性層
等の形成加工時に寸法変動を生じ、シワや傷の原因とな
る。熱収縮率は所定の長さのフィルムを無張力下熱処理
を行い、処理前後の寸法変動率で求められる。
【0037】本発明の芳香族ポリアミドフィルムのJI
S−B−0601で規定される中心線平均粗さRaは好
ましくは15nm以下、更に好ましくは0.2nm以
上、8nm以下、特に好ましくは0.5nm以上、4n
m以下である。また、粗大突起として一面は高さ546
nm以上のものが50個/100cm2 個以下、反対側
の面は高さ819nm以上のものが100個/100c
2 以下であることが好ましい。この粗大突起は、フィ
ルム表面100cm2 の範囲を実体顕微鏡により偏光
下、異物を観測してマーキングし、マーキングした異物
の高さを波長546nmで多重干渉計を用いて観測し、
干渉縞の数でチェックすることで求められる。中心線平
均粗さ及び粗大突起が上記範囲外であるときには磁気記
録媒体としたときS/N比が悪かったり、ドロップアウ
トが生じ易い。本発明の芳香族ポリアミドフィルムは有
機溶媒に可溶かつ製膜可能であるためかかる要件を比較
的容易に充たすことができる。硫酸等無機溶媒溶液から
得られるフィルムは片面の表面特性は充たせてもキャス
ト素材の制限からキャスト素材面の粗大突起を制御でき
ず、また、該突起は反対面に転写されるため、ドロップ
アウトを生じ易い。
【0038】次に本発明の芳香族ポリアミドフィルムを
製造する例を説明するが、本発明はこれに限定されるも
のではない。
【0039】芳香族ポリアミドを得る方法は例えば、低
温溶液重合法、界面重合法、溶融重合法、固相重合法な
どが挙げられるが、低温溶液重合法つまり酸クロリドと
ジアミンから得る場合には、N−メチルピロリドン(N
MP)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチル
ホルムアミド(DMF)などの非プロトン性有機極性溶
媒中で合成される。ポリマ溶液は、単量体として酸クロ
リドとジアミンを使用すると塩化水素が副生するが、こ
れを中和する場合には水酸化カルシウム、炭酸カルシウ
ム、炭酸リチウムなどの無機の中和剤、またエチレンオ
キサイド、プロピレンオキサイド、アンモニア、トリエ
チルアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミ
ンなどの有機の中和剤が使用される。また、イソシアネ
ートとカルボン酸との反応は、非プロトン性有機極性溶
媒中、触媒の存在下で行なわれる。
【0040】これらのポリマ溶液はそのまま成形体を得
るための原液として使用してもよく、あるいはポリマを
一度単離してから上記の有機溶媒や、硫酸等の無機溶媒
に再溶解して原液を調製してもよい。
【0041】この重合時において、後述するオリゴマ含
有量を本発明の好ましい範囲とすることができる。高純
度の原料を用い、水等の不純物を除去された溶媒を用い
ることはもちろんであるが、特に工業的なスケールでの
実施には、重合時に溶液に適当なせん断応力を与え効率
的に混ぜることが極めて重要である。芳香族ポリアミド
の生成反応は反応初期において非常な発熱を伴う。この
反応熱によって溶媒分子との反応や活性末端の失活がお
こり、オリゴマ分子が生成する。従って重合初期には高
速で混ぜ、局所的蓄熱が生じないよう除熱を図ることが
重要である。また、反応に伴い重合溶液の粘度は上昇す
るが、かかる状況下で高速に混合するとかえって不均一
な混合状態となり、反応不十分なオリゴマ成分が生成す
る。従って、重合初期から終了にかけて溶液の粘度上昇
に合わせ混合速度を低下させてゆくように制御すること
が好ましい。上記手段はまた、ポリマの分子量分布もシ
ャープに制御でき機械特性及び湿度膨張係数に好ましい
影響を与える。
【0042】成形体を得るための原液には溶解助剤とし
て無機塩例えば塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩
化リチウム、硝酸リチウムなどの添加を特に必要としな
いが、本発明の目的を損なわない限り添加されていても
良い。原液中のポリマ濃度は好ましくは2〜40重量
%、更に好ましくは5〜35重量%である。かかる範囲
を下回れば吐出を大きく取る必要があり経済的に不利で
あり、越えれば吐出量あるいは溶液粘度の関係で薄もの
のフィルムを得ようとするときの困難性が高い。
【0043】また、必要に応じ例えばSiO2 、TiO
2 、TiN、Al2 3 、ZrO2、ゼオライト、その
他の金属微粉末などの無機粒子や有機粒子等の粒子を含
有量としてポリマ重量あたり0.01〜5重量%、好ま
しくは0.05〜3重量%添加する。
【0044】粒子の添加方法は特に制限はないが、凝集
度を調整する場合は、例えば、粒子を予め10ポイズ好
ましくは1ポイズ以下の溶媒中に分散させる方法を挙げ
ることができる。溶媒としては、製膜時に用いるものと
同一であることが好ましいが、特に悪影響が見られない
ときには、他の溶媒を用いて差し支えない。また、これ
ら溶媒には分散助剤等の添加物が分散に悪影響を及ぼさ
ない範囲で用いられて構わない。粒子の分散には撹拌分
散器、ボールミル、超音波分散器等を用い、好ましく、
凝集度を調整する。
【0045】この分散された粒子は前記ポリマ溶液に混
合するが、混合にあたっては重合前の溶媒に添加あるい
は重合後に添加あるいはポリマ溶液調整時に添加しても
よく、さらには吐出直前でも構わないが、原液中に均一
に分散されていることが非常に重要である。
【0046】次にフィルム化について説明する。上記の
ように調製された製膜原液は、いわゆる溶液製膜法によ
りフィルム化が行なわれる。溶液製膜法には乾湿式法、
乾式法、湿式法などがありいづれの方法で製膜されても
差し支えないが、ここでは乾湿式法を例にとって説明す
る。
【0047】乾湿式法で製膜する場合は該原液を口金か
らドラム、エンドレスベルト等の支持体上に押し出して
薄膜とし、次いでかかる薄膜層から溶媒を飛散させ薄膜
が自己保持性をもつまで乾燥する。乾燥条件は例えば、
室温〜220℃、60分以内の範囲で行うことができ
る。またこの乾燥工程で用いられるドラム、エンドレス
ベルトの表面はなるだけ平滑であれば表面の平滑なフィ
ルムが得られる。乾燥後のフィルムは自己支持性を有す
るが過度の乾燥は高次構造の劣化を誘起し、湿度膨張係
数の悪化、フィルム表面構造を粗し磁気記録媒体として
好ましくないため、乾燥後のフィルム中の溶媒残留量は
30〜70%、好ましくは40〜60%とするべきであ
る。この乾式工程を終えたフィルムは支持体から剥離さ
れて湿式工程に導入され、脱塩、脱溶媒などが行なわ
れ、さらに延伸、乾燥、熱処理が行なわれてフィルムと
なる。この工程において湿式工程、延伸、熱処理工程は
重要な役割を持つ。湿式工程を制御することで、緻密で
湿度膨張係数の低い好適なフィルムとすることができ
る。
【0048】この工程には水を脱溶媒としても構わない
が、水と有機溶媒との混合媒を好ましく用いる。有機溶
媒は水溶性であり、好ましくは重合溶媒同様、N−メチ
ルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド(DM
Ac)、ジメチルホルムアミド(DMF)等の非プロト
ン性有機極性溶媒が好ましく、組成比を変化させた複数
の浴を用いることが実用的である。また、温度は任意に
選びうるが、40℃以上であればより容易に目的を達す
ることができる。
【0049】延伸は延伸倍率として面倍率で0.8〜
8.0(面倍率とは延伸後のフィルム面積を延伸前のフ
ィルムの面積で除した値で定義する。1以下はリラック
スを意味する。)の範囲が通常用いられるが、本発明の
湿度膨張係数とするには結晶性を高めることが効果的で
あるので好ましくは1.3〜8.0、更に好ましくは
1.4〜最大延伸倍率の80%程度で実施する。また、
熱処理としては150℃〜500℃、が通常用いられる
が、本発明の湿度膨張係数を達成するために、好ましく
ポリマのガラス転移点温度(Tg)〜Tg+50℃の温
度で数秒から数分間定長あるいは緊張下に熱処理を実施
する。さらに、延伸あるいは熱処理後のフィルムを徐冷
する事は極めて有効であり、50℃/秒以下の速度で冷
却する事が有効である。
【0050】本発明の発明の芳香族ポリアミドフィルム
は優れた機械特性を有しているので特に薄もののフィル
ムとしたときに他素材には見られない優れた効果を発揮
する。好ましい厚みは0.5〜50μm、より好ましく
は1〜20μm、更に好ましくは2〜10μmである。
【0051】本発明の芳香族ポリアミド組成物から得ら
れるフィルムはもちろん単層フィルムでも、積層フィル
ムであっても良い。積層フィルムとする時は、本発明
ィルムと基層部(積層された本発明のフィルム以外の
フィルム構成部分)は同じ種類でも異なるものでも良
い。例えば2層の場合には、重合した芳香族ポリアミド
溶液を二分し、それぞれ異なる粒子を添加した後、積層
する。さらに3層以上の場合も同様である。これら積層
の方法としては、周知の方法たとえば、口金内での積
層、複合管での積層や、一旦1層を形成しておいてその
上に他の層を形成する方法などがある。
【0052】本発明の芳香族ポリアミドフィルム中の分
子量1000以下のオリゴマの含有量は好ましくは1重
量%以下、更に好ましくは0.5重量%以下である。こ
こで言うオリゴマは本発明の芳香族ポリアミドの構造単
位を部分的にでも含有するものであり、例えば溶媒との
反応物等も含む。このオリゴマの含有量が1重量%を越
えるとフィルムの機械的、熱的特性を損ねたり、あるい
は使用時の滲み出し等でローラなどに巻き付いたり、磁
性層等が剥離したりすることがある。
【0053】また、本発明の芳香族ポリアミドフィルム
中の金属イオンは好ましくは3000ppm以下、更に
好ましくは100ppm以下、特に好ましくは30pp
m以下であれば接触部材の腐蝕等の影響を及ぼさない優
れたフィルムとできる。ここで言う金属イオンはイオン
化された金属成分であって、外部粒子等の、溶液から濾
別あるいは遠心分離可能な固形体を構成する金属成分は
除かれる。
【0054】これは例えば溶媒を含めた原料の純度を高
くすることはもちろんであるが、フィルム化の際製膜用
溶媒及び無機塩を抽出する工程において表面に急激に緻
密な層が形成されないようすることが好ましく、先述の
ように製膜用溶媒と同種の溶媒が凝固溶媒に対しある傾
斜比をもって配合されてなる抽出槽を用いたり、抽出温
度の調整例えば複数の抽出層で温度勾配を設けたりする
こと等を好適な方法として達成できる。
【0055】本発明はヤング率が高く、かつ湿度による
寸法変動などの影響が少ないために磁気記録媒体に好適
である。磁気記録媒体とするにはこのフィルムに磁性層
を形成する。磁性層を形成する方法は公知の方法で行う
ことができるが、湿式法の場合にはグラビアロールを使
用する方法が塗膜の均一性の点ではより好ましい。塗布
後の乾燥温度は90〜150℃が好ましい。また、カレ
ンダ工程は25℃〜150℃の範囲で行うのが好まし
い。また、乾式法としては強磁性金属、合金などを真空
蒸着、無電解メッキ、スパッタリング、イオンプレーテ
ィングなどの方法で磁性層を設けることができる。本発
明の芳香族ポリアミドフィルムは湿度膨張係数が小さい
ので、加工時の寸法変動から磁性層が損傷することはな
く、また優れた表面性を有することができるので、乾式
法にも好適である。
【0056】
【実施例】本発明の物性の測定方法、効果の評価方法は
次の方法による。
【0057】(1)湿度膨張係数 熱機械分析装置を用い、長さ150mmのフィルムを2
5℃、30%RH下に24時間置き、ついで湿度を80
%RHにまで変化させその間の寸法変動を求め下式によ
り求めた。
【0058】(寸法変動量(mm))/(150(m
m)×(80−30)))
【0059】(2)吸湿率 基材フィルム数グラムを真空乾燥器中で100Pa以
下、180℃の条件下、恒量になるまで乾燥し、その重
量をW1とする。次いで、該フィルムを25℃、75%
RHの環境下に48時間置き、その後測定した重量をW
2とする。吸湿率は、 (W2−W1)/W1×100(単位:%) として求めた。
【0060】(2)ヤング率、伸度 オリエンテック社製テンシロンを用い、試長50mm、
引張速度300mm/分で実施した。例中には長手方向
または幅方向の内、ヤング率が低い方向のデータを示し
た。
【0061】(3)隣接位置換率 十分大きな相対粘度を有する芳香族ポリアミドの場合、
投入原料の全てが反応したと見なし、投入原料の種類及
び量から前記(式1)を用いて確率的な単純計算で求め
た。また、フィルムが計算で求めた隣接位置換率となっ
ているかC13NMR及びH1NMRスペクトルによっ
て確認を行った。
【0062】(4)オリゴマの重量分率 フィルムを溶媒中に溶解し、ゲル浸透クロマトグラフ
(GPC)に低角度レーザー光散乱光度計(LALL
S)及び示差屈折率計(RI)を組み入れ、GPC装置
でサイズ分別された分子鎖溶液の光散乱強度及び屈折率
差を溶出時間を追って測定することにより、溶質の分子
量とその含有率を順次計算し最終的には高分子量物質の
絶対分子量分布を求め算出した。絶対分子量の校正には
ジフェニルメタンを用いた。
【0063】簡便な方法としては単にサイズ分別された
溶液の分子量1000以下のフラクションを集め、溶媒
を除去して求めることもできる。
【0064】(5)金属イオン含有量 芳香族ポリアミドフィルム2gを燃焼、灰化させ、硝
酸、フッ化水素酸に溶解し、ついで希硝酸で定溶化し
た。
【0065】次に、原子吸光分析装置を用い、予め作成
した検量線に基づいて定量した。ここで、単位ppmは
(μg/g)である。
【0066】但し、外部粒子等固形成分に由来する分は
除いている。
【0067】(6)電磁変換特性 次にフィルムを真空槽内に装填し、10-2トール以下に
まで減圧してArグロー処理し、次いで更に真空状態に
してこのフィルムの製膜時の金属ベルトに接触しない側
の表面に、酸素を導入しながら蒸着法により150nm
の膜厚になるようCo−CoO薄膜を形成し、更にフッ
素系潤滑剤を主剤とするオーバーコート層、また、カー
ボンブラックを含有するバックコート層を設けた。
【0068】この磁性層を形成したフィルムを1/2イ
ンチ幅にスリットし、VTRカセットに組み込みVTR
テ−プとした。このテ−プに家庭用VTRを用いて25
℃、10%RHの環境下テレビ試験波形発生器によりR
F信号を入力した。このテープを35℃、80%RHの
環境下1週間保持後再生したときの画面下部変形量を求
めた。変形量の大きなものほど特性が悪いことを意味
し、10以下であることが好ましい。
【0069】(7)耐久性 45℃、80%RHの環境下、100回繰り返し走行さ
せた後の磁性面のすり傷や欠落及びテープおれの有無を
観察し、次の3段階で評価した。
【0070】 ◎:まったくすり傷や欠落、テープおれが見られない。 ○:極めて弱いすり傷やテープおれの発生が認められ
る。 ×:きついすり傷や磁性層の欠落、テープおれが認めら
れる。
【0071】実施例1〜10、比較例1〜3 以下の実施例あるいは比較例で用いた各原料の略記号は
それぞれ次の通りである。
【0072】芳香族ジアミン成分: PPD:パラフェニレンジアミン DPX:2,5 −ジメチルパラフェニレンジアミン DMB:3,3'−ジメチルベンジジン DOB:3,3'−ジメトキシベンジジン DPE:4,4'−ジアミノジフェニルメタン BPB:1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン TDM:3,3',5,5'-テトラメチル-4,4'-ジアミノジフェ
ニルメタン 酸クロリド成分: TPC:テレフタル酸ジクロリド MPC:2-メチルテレフタル酸ジクロリド BPC:4,4'- ビフェニルジカルボン酸ジクロリド DPC:4,4'- ジフェニルエーテルジカルボン酸ジクロ
リド 酸無水物成分: PAH:ピロメリット酸無水物
【0073】実施例1 槽径1.8mの冷却ジャケット付き反応槽に脱水したN
−メチルピロリドン(以下NMPと略す)に50モル%
のDOB、50モル%のDPXを溶解させ溶液を冷却す
る。ついで、100モル%のTPCを添加し周速度を4
m/秒から2m/秒に変化させながら2時間撹拌後水酸
化リチウムで中和して重合物を得た。ポリマ濃度は7重
量%であり、重合物は透明な溶液として得られた。ま
た、2週間放置後も安定な溶液であった。
【0074】この溶液に平均一次粒径16nmのシリカ
粒子をポリマ当たり2重量%添加し、ついで5μmカッ
トのフィルターを通した後、ステンレスベルト上に流延
し、170℃で溶媒含量が55%になるまで蒸発後、自
己支持性を得たフィルムをベルトから剥離して40℃に
保ったNMP/水比がそれぞれ30/70、20/8
0、10/90、0/100の抽出浴中に順次導入して
残存溶媒等を抽出した。ついで、テンター中で290℃
で乾燥、熱処理し、この時長手方向に1.25倍、幅方
向に1.35倍延伸し、20℃/秒の速度で常温に冷却
して厚さ5μmのフィルムを得た。このフィルムの湿度
膨張係数は9×10-6、吸湿率は1.4%、伸度、ヤン
グ率はそれぞれ25%、13.23GPa、熱収縮率は
0.2%であった。また、オリゴマ含有量は0.5%以
下、金属イオン含有量は25ppmであった。このフィ
ルムはNMPに溶解する。
【0075】また、電磁変換特性、耐久性とも良好であ
った。
【0076】実施例2 実施例1と同様にNMPに40モル%のDMB、40モ
ル%のDPX、20モル%のDPE、100モル%のT
PCを用いて重合物を得た。ポリマ濃度は12重量%で
あり、重合物は透明な溶液として得られた。また、2週
間放置後も安定な溶液であった。
【0077】この溶液に平均一次粒径16nmのシリカ
粒子をポリマ当たり2重量%添加し、ついで5μmカッ
トのフィルターを通した後、ステンレスベルト上に流延
し、170℃で溶媒含量が55%になるまで蒸発後、自
己支持性を得たフィルムをベルトから剥離して40℃に
保ったNMP/水比がそれぞれ30/70、20/8
0、10/90、0/100の抽出浴中に順次導入して
残存溶媒等を抽出し、ついで、テンター中で285℃で
乾燥、295℃で熱処理を行った。この時長手方向に
1.25倍、幅方向に1.35倍延伸し、20℃/秒の
速度で常温に冷却して、厚み4.5μmのフィルムを得
た。このフィルムの湿度膨張係数は11×10-6、吸湿
率は1.6%、伸度、ヤング率はそれぞれ42%、1
2.25GPa、熱収縮率は0.2%であった。また、
オリゴマ含有量は0.5%以下、金属イオン含有量は2
4ppmであった。また、Raは6nm、片面の高さ5
46nm以上の粗大突起は10個/100cm2 、反対
面の819nm以上の粗大突起は15個/100cm2
であった。このフィルムはNMPに溶解する。
【0078】また、電磁変換特性、耐久性とも良好であ
った。
【0079】実施例3 実施例2の方法で重合したポリマ溶液に平均一次粒径1
6nmのシリカ粒子をポリマ当たり1.5重量%添加
し、ついで5μmカットのフィルターを通した後、ステ
ンレスベルト上に流延し、170℃で溶媒含量が55%
になるまで蒸発後、自己支持性を得たフィルムをベルト
から剥離して40℃に保ったNMP/水比がそれぞれ3
0/70、20/80、10/90、0/100の抽出
浴中に順次導入して残存溶媒等を抽出し、ついで、テン
ター中で285℃で乾燥、305℃で熱処理を行った。
この時長手方向に1.3倍、幅方向に1.4倍延伸し
て、厚み4μmのフィルムを得た。このフィルムの湿度
膨張係数は9×10-6、吸湿率は1.4%、伸度、ヤン
グ率はそれぞれ30%、13.23GPa、熱収縮率は
0.3%であった。また、オリゴマ含有量は0.5%以
下、金属イオン含有量は23ppmであった。また、R
aは4nm、片面の高さ546nm以上の粗大突起は8
個/100cm2 、反対面の819nm以上の粗大突起
は12個/100cm2 であった。このフィルムはNM
Pに溶解する。
【0080】また、電磁変換特性、耐久性とも実施例2
以上に良好であった。
【0081】実施例4 実施例2の方法で重合したポリマ溶液に平均一次粒径1
6nmのシリカ粒子をポリマ当たり2重量%添加し、つ
いで5μmカットのフィルターを通した後、ステンレス
ベルト上に流延し、170℃で溶媒含量が55%になる
まで蒸発後、自己支持性を得たフィルムをベルトから剥
離して常温の水浴中に導入して残存溶媒等を抽出し、つ
いで、テンター中で285℃で乾燥、295℃で熱処理
を行った。この時長手方向に1.25倍、幅方向に1.
35倍延伸して、厚み4.5μmのフィルムを得た。こ
のフィルムの湿度膨張係数は14×10-6、吸湿率は
1.8%、伸度、ヤング率はそれぞれ42%、12.2
5GPa、熱収縮率は0.2であった。また、オリゴマ
含有量は0.5%以下、金属イオン含有量は120pp
mであった。このフィルムはNMPに溶解する。
【0082】また、電磁変換特性、耐久性とも良好であ
った。しかし、60℃、90%RHの雰囲気下で1月保
存していた試料は出力が下がっていたので、磁性層の耐
食性が不足し、高温・高湿度で長期に使用するには信頼
性に劣ると思われた。
【0083】実施例5 槽径1.8mの冷却ジャケット付き反応槽に脱水したN
−メチルピロリドンに40モル%のDMB、40モル%
のDPX、20モル%のDPEを溶解させ溶液を冷却す
る。ついで、100モル%のTPCを添加し周速度を
1.5m/秒一定に保ち2時間撹拌後、水酸化リチウム
及びプロピレンオキシドで中和して重合物を得た。ポリ
マ濃度は12重量%であり、重合物は透明な溶液として
得られた。また、2週間放置後も安定な溶液であった。
【0084】このポリマ溶液を用い実施例2と同様にし
て厚み4.5μmのフィルムを得た。このフィルムの湿
度膨張係数は13×10-6、吸湿率は1.8%、伸度、
ヤング率はそれぞれ40%、12.25GPa、熱収縮
率は0.2%であった。また、オリゴマ含有量は1.1
%、金属イオン含有量は26ppmであった。このフィ
ルムはNMPに溶解する。
【0085】また、電磁変換特性は良好であるが、耐久
性はかろうじて使用できるレベルであった。
【0086】実施例6 実施例2の方法で重合したポリマ溶液に平均一次粒径1
6nmのシリカ粒子をポリマ当たり2重量%添加し、つ
いで5μmカットのフィルターを通した後、ステンレス
ベルト上に流延し、220℃で溶媒含量が25%になる
まで蒸発後、自己支持性を得たフィルムをベルトから剥
離して以下実施例2と同様にして厚み4.5μmのフィ
ルムを得た。このフィルムの湿度膨張係数は13×10
-6、吸湿率は1.6%、伸度、ヤング率はそれぞれ35
%、12.25GPa、熱収縮率は0.2%であった。
また、オリゴマ含有量は0.5%以下、金属イオン含有
量は35ppmであった。また、Raは15nm、片面
の高さ546nm以上の粗大突起は80個/100cm
2 、反対面の819nm以上の粗大突起は150個/1
00cm2 であった。このフィルムはNMPに溶解す
る。
【0087】また、電磁変換特性、耐久性とも良好であ
った。しかし、画面にノイズが散見されデジタルデータ
記録用のような信頼性の必要な用途には向かない様思わ
れた。
【0088】実施例7 実施例1と同様にNMPに50モル%のD0B、50モ
ル%のDPX、80モル%のTPC、20モル%のDP
Cを用いて重合物を得た。ポリマ濃度は12重量%であ
り、重合物は透明な溶液として得られた。また、2週間
放置後も安定な溶液であった。
【0089】以下実施例2と同様に厚み4.5μmのフ
ィルムを得た。このフィルムの湿度膨張係数は10×1
-6、吸湿率は1.5%、伸度、ヤング率はそれぞれ4
5%、12.74GPa、熱収縮率は0.2%であっ
た。また、オリゴマ含有量は0.5%以下、金属イオン
含有量は24ppmであった。このフィルムはNMPに
溶解する。
【0090】また、電磁変換特性、耐久性とも良好であ
った。
【0091】実施例8 実施例1と同様にNMPに60モル%のDOB、20モ
ル%のDPX、20モル%のDPE、100モル%のT
PCを用い重合物を得た。ポリマ濃度は8重量%であ
り、重合物は透明な溶液として得られた。また、2週間
放置後も安定な溶液であった。
【0092】以下実施例2と同様の方法で厚み5μmの
フィルムを得た。このフィルムの湿度膨張係数は12×
10-6、吸湿率は1.6%、伸度、ヤング率はそれぞれ
25%、9.31GPa、熱収縮率は0.2%であっ
た。また、オリゴマ含有量は0.5%以下、金属イオン
含有量は21ppmであった。このフィルムはNMPに
溶解する。
【0093】また、電磁変換特性、耐久性とも良好であ
った。
【0094】実施例9 NMPに45モル%のDMB、45モル%のDPX、1
0モル%のTDM、50モル%のMPC、50モル%の
BPCを用い実施例1と同様の方法で重合物を得た。ポ
リマ濃度は12重量%であり、重合物は透明な溶液とし
て得られた。また、2週間放置後も安定な溶液であっ
た。
【0095】この溶液に以下実施例2と同様の方法で厚
み4.5μmのフィルムを得た。このフィルムの湿度膨
張係数は10×10-6、吸湿率は1.4%、伸度、ヤン
グ率はそれぞれ42%、13.23GPa、熱収縮率は
0.3%であった。また、オリゴマ含有量は0.5%以
下、金属イオン含有量は22ppmであった。このフィ
ルムはNMPに溶解する。
【0096】また、電磁変換特性、耐久性とも良好であ
った。
【0097】実施例10 槽径1.8mの冷却ジャケット付き反応槽に脱水したN
MPに45モル%のDOB、45モル%のDPX、10
モル%のDPEを溶解させ、ついで、6モル%のPAH
を加え30分間撹拌後溶液を冷却する。ついで、94モ
ル%のTPCを添加し周速度を4m/秒から2m/秒に
変化させながら2時間撹拌後水酸化リチウムで中和して
重合物を得た。ポリマ濃度は10重量%であり、重合物
は透明な溶液として得られた。また、2週間放置後も安
定な溶液であった。
【0098】この溶液を延伸、熱処理温度を285℃、
300℃とした以外は実施例2と同様にして厚み4.5
μmのフィルムを得た。このフィルムの湿度膨張係数は
10×10-6、吸湿率は1.5%、伸度、ヤング率はそ
れぞれ35%、14.21GPa、熱収縮率は0.2%
であった。また、オリゴマ含有量は0.5%以下、金属
イオン含有量は23ppmであった。このフィルムはN
MPに溶解する。
【0099】また、電磁変換特性、耐久性とも良好であ
った。
【0100】比較例1 NMPにポリマあたり50重量%の臭化リチウムを溶解
させ、次にDMB80モル%、DPE20モル%を溶解
し、溶液を冷却する。ついでTPC100モル%を添加
し反応を行った。生成物は重合開始後まもなく透明性を
失いゲルを生じた。本例から得られるフィルムが有機溶
媒に溶解しないことは明らかである。
【0101】比較例2 実施例1と同様の方法でDMB50モル%、DPE50
モル%、100モル%のTPCから重合物を得た。ポリ
マ濃度は14重量%であり、重合物は透明な溶液として
得られた。また、2週間放置後も安定な溶液であった。
【0102】以下、延伸、熱処理温度を285℃、30
0℃とした以外は実施例2と同様の方法で厚み5μmの
フィルムを得た。このフィルムの湿度膨張係数は18×
10-6、吸湿率は2.2%、伸度、ヤング率はそれぞれ
45%、7.35GPa、熱収縮率は0.5%であっ
た。また、オリゴマ含有量は0.5%以下、金属イオン
含有量は29ppmであった。
【0103】しかしながら電磁変換特性、耐久性とも使
用できないレベルであった。
【0104】比較例3 実施例1と同様の方法でDMB35モル%、PPD40
モル%、BPB25モル%、100モル%のTPCから
重合物を得た。ポリマ濃度は12%であり、重合物は透
明な溶液として得られた。また、2週間放置後も安定な
溶液であった。
【0105】以下実施例2と同様な方法で厚み6μmの
フィルムを得た。このフィルムの湿度膨張係数は24×
10-6、吸湿率は2.2%、伸度、ヤング率はそれぞれ
42%、10.78GPa、熱収縮率は0.3%であっ
た。また、オリゴマ含有量は0.5%以下、金属イオン
含有量は30ppmであった。
【0106】しかしながら耐久性は良好なものの電磁変
換特性に劣るものであった。
【0107】
【表1】
【0108】
【発明の効果】本発明の芳香族ポリアミドフィルムはそ
の本来の優れた機械特性、耐熱性等の種々の性能を維持
しつつ、特に芳香族ポリアミド本来の問題であった有機
溶媒への溶解性を確保し、かつ湿度膨張係数の低減を両
立し、高密度磁気記録媒体やフレキシブルプリント配線
板、感熱転写記録材、絶縁材をはじめとした種々の用途
における工業的利用価値は極めて高いものである。ま
た、本発明の芳香族ポリアミドは好ましく有機溶媒系か
ら得ることができ、その溶液の安定性にも優れるので生
産性にも優れるものである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平4−337324(JP,A) 特開 平4−209313(JP,A) 特開 昭62−70421(JP,A) 特開 昭62−534(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08J 5/00 - 5/24

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 有機溶媒に可溶で、芳香核上の水素を置
    換するハロゲン基及びニトロ基の置換割合が15%未満
    であるパラ配向性芳香族ポリアミドを主成分とし、該芳
    香族ポリアミドが、一般式(I)で示される互いに異な
    った芳香核を有する構造単位からなるA群、 一般式(I) 【化1】 一般式(II)で示される互いに異なった芳香核を有す
    る構造単位からなるB群、 一般式(II) 【化2】 及び、一般式(III)で示される互いに異なった芳香
    核を有する構造単位からなるC群、 一般式(III) 【化3】 (ここでAr 1 、Ar 2 、Ar 3 はパラ配向性の芳香核で
    あり、各群の化合物はRa、Rb、Rcで示されるハロ
    ゲン基、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜4のアルキル
    基、炭素数1〜3のアルコキシ基、トリアルキルシリル
    基、オキシアリール基、チオアリール基から選ばれる官
    能基で置換されていても構わない。ここで、k、l、m
    はそれぞれ0〜4の数である。また、A群、B群は実質
    的に等モルである。)から少なくとも3種以上選択され
    る構造単位(但し、基本芳香核を異にする少なくとも2
    種の構造単位は同じ群から選択される。)で示される構
    造単位を主たる構造単位とし、2種以上の基本芳香核の
    異なる構造単位が選択される群における各基本芳香核の
    存在割合(AR)が該群における基本芳香核の種類をN
    種としたとき、1/N×0.7≦AR≦1/N×1.3
    であり、式(1)で示される隣接位置換率S 0 (ここで
    いう隣接位はアミド基が結合した芳香核炭素原子に隣接
    する芳香核炭素原子を指す)が60%以上であり、
    つ、少なくとも一方向のヤング率が7.8GPa以上1
    4.21GPa以下、全ての方向における湿度膨張係数
    が9×10-6以上22×10-6以下であることを特徴と
    する芳香族ポリアミドフィルム。 0 =(隣接位に水素が置換していないアミド基の数)/(アミド基の総数) ×100(%) ・・・ (1)
  2. 【請求項2】 フィルム中の芳香族ポリアミドに由来す
    る分子量1000以下のオリゴマ成分の含有量が1重量
    %以下であることを特徴とする請求項1に記載の芳香族
    ポリアミドフィルム。
  3. 【請求項3】 フィルム中に含有される金属イオンが3
    000ppm以下であることを特徴とする請求項1ある
    いは2に記載の芳香族ポリアミドフィルム。
  4. 【請求項4】 一般式(IV)で示される構造単位から
    なるD群、 一般式(IV) 【化4】 (ここでAr4、Ar5はパラ配向性の芳香核であり、
    X、Yは互いに同じか異なっていても良い−CO−また
    は−NH−基。Zはブリッジ原子団。また、Rd、Re
    はニトロ基、シアノ基、炭素数1〜4のアルキル基、炭
    素数1〜3のアルコキシ基、トリアルキルシリル基、オ
    キシアリール基、チオアリール基から選ばれる官能基で
    あり、n、pはそれぞれ0〜4の数である。但し、X、
    Yが共に−CO−の時はA群と(B群及びD群)が、
    X、Yが共に−NH−の時は(A群及びD群)とB群
    が、X、Yが互いに異なるときはA群とB群が、実質的
    に等モルである。)からなる構造単位を含有することを
    特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の芳香族ポリ
    アミドフィルム。
  5. 【請求項5】 2種以上の構造単位が選択される群にお
    いて、パラ配向性の基本方向核としてフェニレン基、ビ
    フェニレン基、ナフチレン基のうち少なくとも2種が用
    いられる請求項4に記載の芳香族ポリアミドフィルム。
  6. 【請求項6】 2種以上の構造単位が選択される群にお
    いて、パラ配向性の互いに異なった芳香核として、3,
    3’−ジ置換−4,4’−ビフェニレン基及び/または
    2,2’−ジ置換−4,4’−ビフェニレン基と、2,
    5−ジ置換パラフェニレン基及び/または2,3−ジ置
    換パラフェニレン基とを用いる請求項4または5に記載
    の芳香族ポリアミドフィルム。
  7. 【請求項7】 光学等方性を与える有機溶媒溶液から製
    膜されることを特徴とする請求項1からのいずれかに
    記載の芳香族ポリアミドフィルム。
  8. 【請求項8】 請求項1からのいずれかに記載の芳香
    族ポリアミドフィルムの少なくとも1面に磁性層が形成
    された磁気記録媒体。
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