JP3388127B2 - コンクリートの削孔装置 - Google Patents

コンクリートの削孔装置

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JP3388127B2 JP03092797A JP3092797A JP3388127B2 JP 3388127 B2 JP3388127 B2 JP 3388127B2 JP 03092797 A JP03092797 A JP 03092797A JP 3092797 A JP3092797 A JP 3092797A JP 3388127 B2 JP3388127 B2 JP 3388127B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はコンクリートの削孔
技術に係わり、特に高圧水いわゆるウォータージェット
によりコンクリートに孔を形成するための装置に関す
る。
【0002】
【従来の技術】周知のように、先の大震災を契機として
既存の鉄筋コンクリート(RC)構造物の耐震性を向上
させることが必要とされ、種々の補強策が提案、実施さ
れている。たとえば、道路橋や鉄道橋には図5(a)に
示すような比較的偏平な断面形状をなすRC造の橋脚
(壁式RC橋脚に代表される)1が従来より多用されて
いるが、そのような橋脚1に対する補強構造としては、
(b)に示すように全周にわたって鋼板2を巻立ててそ
の鋼板2と既存外周面との間にグラウト材3を隙間無く
充填することにより、鋼板2によって既存橋脚1の変形
を拘束して靱性の向上を図るという補強策が有効とされ
ている。この場合、橋脚1が偏平であることから鋼板2
を単に巻き立てるのみでは必ずしも十分な変形拘束効果
が得られないことがあり、したがって(b)に示してい
るように中間帯鉄筋として機能するPC鋼棒等の連結材
4を橋脚1の中間部を貫通させて設け、それら連結材4
により橋脚1の両面側の鋼板2どうしを連結して変形拘
束作用を確保する必要があるとされている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記の補強
構造による場合、連結材4を貫通させるための貫通孔5
を既存の橋脚1に対して予め削孔する必要があるが、従
来においてはそのような貫通孔5の削孔をコアボーリン
グにより形成することが通常である。しかし、コアボー
リングにより削孔を行うことでは作業効率が良くないば
かりでなく、削孔に際して既存鉄筋6を切断あるいは傷
つけてしまうことがあるし、またコアボーリングにより
削孔された貫通孔5の周囲には少なからずマイクロクラ
ックが生じることが避けられないものである。
【0004】以上のことは、上記のような壁式RC橋脚
1に対して補強のための貫通孔5を設ける場合のみなら
ず、コンクリートに対してコアボーリングにより削孔を
行う場合全般に共通する課題であり、このためコアボー
リングに代わるより有効な削孔の手段が望まれていた。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記事情に鑑み、本発明
は、コンクリートに孔を形成するための削孔装置であっ
て、高圧水を発生する高圧ポンプと、基端部が片持ち状
態で支持されて前方に延び、該基端部に前記高圧ポンプ
より高圧水が供給される管体と、前記管体の先端部に装
着され、前記高圧ポンプより前記管体を通して供給され
る高圧水を削孔対象のコンクリートに吹き付けて孔を形
成するノズルと、前記管体をその軸方向に前進せしめて
前記孔内に進入させていくことで前記ノズルを該孔内に
おいて前進せしめる送り機構と、前記ノズルを前記管体
の軸線を中心に回転させるための回転機構とを具備して
なり、前記ノズルはその前面に高圧水をいずれも該ノズ
ルの回転軸線に対して傾斜するように斜め前方に吐出す
る主吐出口および副吐出口を有し、前記主吐出口を前記
副吐出口よりも回転軸線に近い位置に設け、かつ、前記
副吐出口による高圧水の吐出方向が当該ノズルの回転軸
線に対してなす傾斜角度を、前記主吐出口による高圧水
の吐出方向が回転軸線に対してなす傾斜角度よりも大き
く設定して、それら主吐出口および副吐出口からそれぞ
れ吐出する高圧水は当該ノズルの回転により二重円錐状
の軌跡を描くものとしたことを基本とする。
【0006】そして、請求項1の発明は、上記のコンク
リートの削孔装置において、前記ノズルを前面視偏平形
状として前記主吐出口を当該ノズルの回転軸線位置に設
けるとともに前記副吐出口を回転軸線位置より外側に偏
位する位置に設け、かつ、前記主吐出口による高圧水の
吐出方向を前記回転軸線に対して前記副吐出口とは逆側
に傾斜させることにより、それら主吐出口および副吐出
口よりそれぞれ吐出する高圧水は一方が他方を追跡しつ
つ二重円錐状の軌跡を描くものとしたことを特徴とす
る。
【0007】また、請求項2の発明は、上記のコンクリ
ートの削孔装置において、前記ノズルを前面視円形状と
するとともに、前記主吐出口および前記副吐出口による
高圧水の吐出方向を互いに立体交差させるように設定す
ることにより、それら主吐出口および副吐出口よりそれ
ぞれ吐出する高圧水は立体交差しつつ二重円錐状の軌跡
を描くものとしたことを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態を図1
〜図3を参照して説明する。図1は本実施形態の削孔装
置10を用いて削孔対象のRC造の壁体11に対して削
孔を行っている状況を示す図、図2は削孔装置10の要
部を示す図、図3は削孔装置10におけるノズル12を
示す図である。
【0009】本削孔装置10は、たとえば1,000k
gf/cm2程度の高圧水いわゆるウォータージェット
により壁体11に対する削孔を行うもので、図1、図2
に示すように、高圧水を吐出する上記ノズル12を管体
(ランスと称される)13の先端部に装着したことを基
本構成とするものである。
【0010】上記の管体13は、図2に示すようにその
基端部が片持ち状態に支持されるとともに中間部が支持
台31により支持されて前方に延び、かつ、モータ14
およびギア15により構成される回転機構16によって
自身の軸線を中心に回転させられることによりその先端
部に装着されている上記ノズル12を回転させるものと
されている。管体13の基端部には、図1に示すように
高圧ポンプ17aを内蔵する高圧ポンプユニット17か
ら高圧水が回転自在継手18を介して供給されるように
なっており、供給された高圧水は管体13の内部を通し
てノズル12に送られてそこから吐出され、削孔対象の
壁体11に吹き付けられてそこに削孔するものとされて
いる。なお、図1において符号19は給水車、20は給
水車19から上記の高圧ポンプユニット17に対して水
を供給するための車載型の給水ポンプである。
【0011】上記の管体13は、同一形状、同一寸法の
単位管体13aを軸方向に連結することで所望の長さと
できるように構成されており(図2は3本の単位管体1
3aを連結した状態を示している)、各単位管体13a
には相互に連結するための継手たとえばネジ込み継手が
設けられている。また、上記の管体13およびその回転
機構16はスライドベース21上に設けられており、そ
のスライドベース21は左右一対のガイドベース22に
沿って前後方向にスライド可能とされ、スライドベース
21をスライドさせるための油圧あるいは電動式のモー
タ23および伝達機構24が備えられている。それらス
ライドベース21、ガイドベース22、モータ23、伝
達機構24は、管体13を前後方向に移動せしめる送り
機構25を構成しており、削孔に際してはその送り機構
25により管体13を前進させることで管体13の先端
部を孔内に挿入していき、ノズル12を孔内において前
進させていくようにされている。
【0012】また、図2に示すように上記の送り機構2
5はその全体が架台26上に搭載されており、かつ送り
機構25の全体が手動ハンドル27を操作することでネ
ジ送り機構28により架台26上において左右方向に移
動可能とされている。さらに、その架台26はラック装
置29により昇降する昇降架台30に搭載されており、
したがって、架台26上において送り機構25とともに
管体13を左右方向に移動させ、かつ昇降架台30を昇
降させることで、管体13を左右方向および上下方向の
双方に自由に移動せしめて所望の削孔位置に導くことが
できるようにされている。
【0013】一方、管体の先端に装着される上記のノズ
ル12は、図3(b)に示すように全体として偏平な形
状をなすとともに、図3(a)に示すようにその前面に
はこのノズル12の回転軸線Cの位置に設けられた主吐
出口12aと、回転軸線Cの位置より外側に偏位する位
置に設けられた副吐出口12bとを有するものとされて
いる。
【0014】上記の主吐出口12aによる高圧水の吐出
方向は回転軸線Cに対して前記副吐出口12bとは逆側
に所定角度θ1(たとえば10゜〜15゜程度)傾斜し
ているとともに、副吐出口12bによる高圧水の吐出方
向は回転軸線Cに対して主吐出口12aとは逆側に所定
角度θ2(たとえば25゜〜30゜程度)傾斜するもの
とされている。そして、上記で例示したように副吐出口
12bの傾斜角度θ2は主吐出口12aの傾斜角度θ1よ
りも大きく設定されており、それにより、それら主吐出
口12aおよび副吐出口12bからそれぞれ吐出される
高圧水は、このノズル12が回転軸線Cを中心に回転す
ることにより一方が他方を追跡しつつ二重円錐状の軌跡
を描くものとされ、そのような二重円錐状の高圧水流す
なわちウォータージェットにより孔の先端部分および内
周部分がそれぞれ効率的に削られて、コンクリートを速
やかに削孔し得るものである。
【0015】なお、上記のノズル12の寸法は、形成す
るべき孔の大きさ等に応じて設定すれば良いが、たとえ
ば図5に示したような壁式RC橋脚1に対して耐震補強
を目的とする貫通孔5を形成する場合に適用するものと
しての好適な一例を挙げれば、その場合の貫通孔5の径
は26mm径のPC鋼棒4を通すために60〜70mm
程度とされることから、ノズル12の全幅寸法W1は5
5mm程度、中心から副吐出口12b側の側部までの幅
寸法W2は40mm程度、厚みtは26mm程度とする
ことが良い。また、上記の場合は、後述するように水圧
が800〜1,000kgf/cm2程度、水量が70
Lit/分程度とされることから、そのような条件で用
いられるノズル12としては、高圧水の接続口12cの
ネジ径をPF1/2インチ、主吐出口12aおよび副吐
出口12bの接続ネジ径をPF1/4インチ、それらの
オリフィス径を1.5mmとすることが適当である。
【0016】以上で削孔装置10について説明したが、
次にその削孔装置10を用いてRC造の壁体11に対し
て貫通孔を形成する場合の作業手順を説明する。なお、
本例は削孔対象の壁体11として図5(a)に示したよ
うな壁式RC橋脚1を想定し、それに同図(b)に示し
たような26mm径のPC鋼棒4を通すための貫通孔5
を設ける場合の例であって、削孔するべき貫通孔5の径
は60mmとする。壁式RC橋脚1における鉄筋6のピ
ッチは主筋、帯筋ともに100mm程度が通常であるか
ら、60mm径の貫通孔5はそれら鉄筋6により形成さ
れている100mm×100mmの桝目内に支障なく形
成することが可能である。また、コンクリート中の骨材
の最大径は25mm程度であるので、貫通孔5の径を6
0mmとしておけば骨材が削孔の支障となることはな
い。さらに、削孔対象の壁式RC橋脚1の厚さは3m程
度であるので、本例では必要な本数の単位管体13aを
連結することにより管体13を壁厚以上の長さとして用
いることとする。なお、所要本数の単位管体13aを予
め連結しておいても良いが、作業スペースが十分に確保
できないような場合には単位管体13aを順次継ぎ足し
ながら削孔を行えば良い。
【0017】上記の削孔装置10を用いて壁体11に貫
通孔を削孔するには、まず、削孔位置を決定するための
予備斫りを行う。つまり、削孔位置付近の壁体11の表
層部をかぶり厚さ分だけ斫って内部に埋設されている鉄
筋6を露出させ、その位置を確認する。本例の場合は複
数の貫通孔5を上下に並べて形成することから図1に示
すように壁体11の表層部を上下方向に溝状に斫ること
としているが、予備斫りの範囲は削孔位置付近における
鉄筋6の位置を確認できれば適宜で良い。その予備斫り
作業はたとえば通常のように斫りハンマーやコンクリー
トブレーカ等を用いることでも良いが、ウォータージェ
ットによる斫り装置を採用することがより好ましい。可
能であれば上記の削孔装置10を用いて予備斫りを行う
ことも考えられるが、その場合は上記のノズル12を斫
りに適する形態のノズルに交換し、また水圧や水量を斫
りに適するように調節することが良い。
【0018】上記の予備斫り作業の後、あるいはその作
業と相前後して削孔装置10を削孔位置の近傍に配置
し、昇降架台30を昇降させかつ送り機構25を左右に
移動させることで管体13の先端部すなわちノズル12
を削孔位置に導き、かつ管体13の軸線方向を貫通方向
に正しく合致させる。そして、回転機構15を作動させ
て管体13とともにノズル12を回転軸線Cを中心とし
て回転させつつ、高圧ポンプユニット17より高圧水を
供給してノズル12から吐出せしめ、送り機構25によ
り管体13を前進せしめてノズル12から壁体11に対
して高圧水を吹き付け、削孔を行って行く。
【0019】その際、高圧水の水圧や水量、ノズル12
の回転速度や前進速度は適宜設定すれば良いが、効率的
な削孔を行うための好適な一例を挙げれば、水圧を80
0〜1,000kgf/cm2程度、水量を70Lit
/分程度、ノズル12の回転速度を50rpm程度、ノ
ズル12の前進速度を80mm/分程度とすることが良
い。なお、上記の設定水圧は、ウォータージェットによ
りコンクリートを切断する場合における通常の水圧
(1,000〜2,400kgf/cm2程度である)
の下限ないしそれ以下であり、また、上記の設定水量は
同じくコンクリートを切断する場合における通常の水量
(10〜30Lit/分程度である)に比較して2倍以
上である。つまり、ウォータージェットによりコンクリ
ートを切断する場合は超高水圧で小水量とすることが好
適であるのに対し、本例のようにウォータージェットに
より削孔を行う場合には切断の場合に比較して相対的に
低水圧で大水量とすることが好適である。
【0020】上記のようにして削孔を行うと、壁体11
中のコンクリート分は高圧水により削られるが、上記の
ように800〜1,000kgf/cm2程度の水圧で
は鉄筋には何等損傷を与えることがない。また、コンク
リート中の骨材も削られることはないが、周囲のコンク
リートが削り取られることで骨材は自ずとコンクリート
から剥離、脱落してしまう。そして、ノズル12から吐
出されて削孔に使用された水は孔の入口側に向かって流
下してくるが、削孔に伴って発生する削りガラはその水
により押し流されて孔の入口側に向かい、水とともに自
ずと排出されてしまう。この際、ノズル12からの吐出
水量が小量であると削りガラの排出効果はさほど期待で
きず、したがって孔内に削りガラが残ってしまうことが
懸念されるが、上記のように吐出水量を70Lit/分
程度と大きく設定していることにより削りガラを速やか
にかつ確実に排出させることが可能であるし、削りガラ
に含まれる25mm程度の径の骨材も支障なく押し流し
て排出することができる。なお、削りガラとともに排出
される水を回収し、削りガラを分離除去した水を高圧ポ
ンプユニット17へ送って循環再使用することが好まし
い。
【0021】上記のようにしてノズル12を回転、前進
させつつ削孔していき、ノズル12が壁体11の裏面側
に到達すれば貫通孔5が形成される。そこで、高圧水の
供給を停止し、ノズル12の回転と前進を停止させ、管
体13を後退させて孔内から引抜けば作業が完了する。
引続き、管体13を他の削孔位置に移動させ、同様の手
順により他の貫通孔を形成していく。なお、ノズル12
が壁体11の裏面側に達して孔が貫通した時点で高圧水
が孔の出口から周囲に激しく飛散するので、その防護の
ために孔の出口部を鋼板等により覆う必要がある。
【0022】上記の削孔装置10を用いて上記の手順に
よりRC造の壁体11に対して削孔を行うことにより、
従来のコアボーリングによる場合のように鉄筋6を切断
したり傷を付けてしまうことはないし、健全なコンクリ
ートにマイクロクラックが生じることもない。そして、
上記のようなウォータージェットによる削孔では壁厚1
m当たり10〜15分程度の削孔速度が確保でき、した
がって3m程度の壁厚を有する壁式RC橋脚1に対して
もわずか30〜45分程度で貫通孔5を形成することが
可能である。しかも、削孔に伴う削りガラは水とともに
自ずと孔内から排出されてしまうから、削りガラを何等
かの手段により孔内から掻き出すような手間が全く不要
であり、この点でも優れた作業効率が得られることはも
とより、壁厚が大きくて深い孔を削孔する場合であって
も支障なく適用可能であり、それ故、壁厚が大きい場合
であっても壁体11の片側からのみの施工いわゆる片押
し施工を実現できる。勿論、必要であれば壁体11の両
側からの両押し施工を行うことを妨げるものではない
が、それは壁体11の両側からそれぞれ形成した孔を壁
体11の中央部で確実に連続させることが可能な場合に
限られる。
【0023】また、上記方法では、削孔開始に先立って
予め壁体11の表層部を斫る予備斫りを行って鉄筋6を
露出させ、鉄筋位置を確認してその位置を避けて削孔位
置を決定することにより、削孔開始後にノズル12が鉄
筋に当たってしまって削孔不能になることはない。な
お、同様の予備斫りを壁体11の裏面側に対しても行
い、貫通孔5の出口が形成される予定位置を予め斫って
おくことが良い。そのようにしておけば、仮に削孔途中
で孔の位置がずれてしまって出口部においてノズル12
が鉄筋に当たってしまうようなことがあったとしても、
そのことを容易に確認できるし削孔位置の修正も容易と
なる。そして、予備斫りをコンクリートブレーカ等によ
らずにウォータージェットによる斫り装置を用いて行え
ば、予備斫りも効率的に行うことができることはもとよ
り鉄筋6や健全なコンクリートを痛めることもない。勿
論、削孔対象のコンクリートが無筋であったり、削孔位
置が鉄筋位置に当たる懸念が全くない場合には、予備斫
りは不要である。
【0024】なお、上記のような予備斫りを行うことな
く、壁体11の表面上から内部に埋設されている鉄筋6
の位置を非破壊的に検知することも考えられるが、現時
点ではそのような検知技術は手間がかかるし十分な精度
が得られないので好ましくなく、上記のような予備斫り
を行って鉄筋6の位置を実際に確認することが最も現実
的かつ有効である。ただし、有効な検知技術が確立され
ればそれを採用することを妨げるものではなく、その場
合は予備斫りを省略して良い。
【0025】また、上記の削孔装置10は、管体13を
送り機構25により前進させかつ回転機構16により回
転させることでその管体13の先端部に装着したノズル
12を前進かつ回転させる構成であるので、全体の機構
が簡便で安価に製作できるものであり、また、同一形
状、同一寸法の単位管体13aを連結する構成の管体1
3を採用したことにより管体13の延長を容易に行い得
て壁厚が大きい場合にも、また作業スペースが十分に確
保できない場合にも、容易に対処し得る。しかも、管体
13を左右方向および上下方向に移動可能なように架台
26、昇降架台30に搭載した構成であるので、多数の
孔を連続的に形成する場合に特に作業性に優れる。
【0026】ただし、削孔装置10の構成は上記実施形
態のものに限定されることはなく、適宜の変更が可能で
ある。たとえばノズル12を回転させるための機構とし
ては、上記のように管体13を回転させることでノズル
12を回転させるものに代えて、管体13は固定してノ
ズル12のみを管体13に対して回転させることでも良
く、その場合は散水用スプリンクラーのように高圧水の
水圧によりノズル12が自ずと回転する形式のものを採
用可能である。また、管体13を前後進させるための送
り機構や、左右方向や上下方向に移動させるための機構
も適宜であり、たとえば高所作業車の如き車両に搭載す
ることも考えられる。
【0027】さらに、上記のノズル12は主吐出口12
aと副吐出口12bとから二重円錐状の軌跡を描くよう
にして高圧水を吐出する構成のものであるので、そのよ
うな高圧水流により孔の先端部分および内周部分がそれ
ぞれ削られて効率的な削孔を行い得ることはもとより、
そのノズル12を偏平な形態のものとしたことにより、
ノズル12が削孔に際して鉄筋6や大径の骨材に当たっ
てしまって前進の障害となったような場合にもノズル1
2の姿勢、向きを調節することで障害物をかわすことが
可能である。ただし、本発明の削孔装置は上記のノズル
12を採用することに限定されるものでは勿論なく、諸
条件を考慮して最適な形態のノズルを任意に採用可能で
あり、たとえば図4に示すような形態のノズル40も好
適に採用可能である。
【0028】
【0029】図4に示すノズル40は上記のノズル12
と同様に主吐出口40aおよび副吐出口40bを有し、
主吐出口40aが副吐出口40bよりも内側に位置する
とともに、回転軸線Cに対する副吐出口40bの傾斜角
度θ2が主吐出口40aの傾斜角度θ1よりも大きく設定
されているが、上記のノズル12が偏平形状とされてい
たのに対してこのノズル40はその全体が円筒形とされ
て前面視円形状をなするものとされ、かつ、主吐出口4
0aおよび副吐出口40bによる高圧水の吐出方向が立
体交差するように互いに捩られたものとなっている。し
たがってこのノズル40では主吐出口40aおよび副吐
出口40bよりそれぞれ吐出される高圧水は立体交差し
つつ二重円錐状の軌跡を描くものとされ、そのような高
圧水流は孔内において激しく渦巻くものとなり、上記の
ノズル12にも増して効率的な削孔を行い得るものであ
る。
【0030】なお、このノズル40の各部の寸法も最適
となるように適宜決定すれば良いが、形成すべき貫通孔
の径を80mmとする場合に適用するものとして好適な
ものとしては、ノズル40の外径φを42mm程度とす
ることが良い。また主吐出口40aの傾斜角度θ1は1
5゜程度、副吐出口40bの傾斜角度θ2は30゜程度
とすることが好適である。さらに、主吐出口40a、副
吐出口40bのオリフィス径は、上記ノズル12の場合
のように同等とすることでも良いが、主吐出口40aの
オリフィス径を副吐出口40bのオリフィス径よりも大
きく設定し、たとえばそれらをそれぞれ1.7mm、
1.4mmとして孔の中心部分に対する削孔を若干強化
するとより効果的である。
【0031】さらになお、本発明は、壁式RC橋脚1に
対して耐震補強を目的とする貫通孔5を設ける場合のみ
ならず、無筋コンクリートを含む種々の用途のコンクリ
ート構造物に対して、種々の目的の孔(貫通孔に限らな
い)を形成する場合全般に広く適用できることは言うま
でもない。
【0032】
【発明の効果】以上のように、本発明の削孔装置は、管
体の先端部にノズルを装着し、ノズルを回転機構により
回転させかつ送り機構により前進させつつ、高圧ポンプ
から高圧水を供給して削孔を行う構成であるから、従来
一般のコアボーリングによる場合のように鉄筋を切断し
たり傷を付けたりすることなく、また健全なコンクリー
トにクラックを生じさせることなく、コンクリートに対
する削孔を効率的に行い得るものであり、しかも削孔に
伴って発生する削りガラを水により押し流して自ずと排
出することができて削りガラを孔内から掻き出すような
手間が一切不要であり、十分に深い孔も支障なく形成す
ることができるものであり、特に、主吐出口と副吐出口
から高圧水を二重円錐状の軌跡を描くように吐出するノ
ズルを用いるので、そのような二重円錐状の高圧水流に
より効率的な削孔を行い得る。
【0033】特に、請求項1の発明の削孔装置は、主吐
出口および副吐出口からの高圧水が一方が他方を追跡し
つつ二重円錐状の軌跡を描くような偏平形状のノズルを
用いるので、効率的な削孔を行い得るのみならず削孔中
における障害物をかわしやすいという利点がある。
【0034】さらに、請求項2の発明の削孔装置は、主
吐出口および副吐出口からの高圧水が互いに立体交差す
円形状のノズルを用いるので、孔内において激しい渦
巻が生じてより削孔効率を高めることができるという利
点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の削孔装置により壁体を削孔する状況
を示す図である。
【図2】 同削孔装置の要部拡大図である。
【図3】 同削孔装置において用いるノズルの一例を示
す図である。
【図4】 ノズルの他の例を示す図である。
【図5】 削孔対象のコンクリート構造物である壁式R
C橋脚とその補強構造の例を示す図である。
【符号の説明】
10 削孔装置 11 壁体(コンクリート) 12 ノズル 12a 主吐出口 12b 副吐出口 13 管体 13a 単位管体 16 回転機構 17 高圧ポンプユニット 17a 高圧ポンプ 18 回転自在継手 25 送り機構 26 架台 30 昇降架台 40 ノズル 40a 主吐出口 40b 副吐出口
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 野田 洋介 神奈川県横浜市港北区高田町1356 テロ テックジャパン株式会社内 (72)発明者 野田 昌直 東京都新宿区天神町64 東成建設株式会 社内 (72)発明者 内田 八洲夫 東京都港区浜松町1丁目10ー8 株式会 社ネイヴル内 (56)参考文献 特開 平2−303800(JP,A) 特開 昭60−203793(JP,A) 特開 平6−226215(JP,A) 特開 平3−169976(JP,A) 実開 平1−143392(JP,U) 実開 昭64−53292(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B28D 1/00

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 コンクリートに孔を形成するための削孔
    装置であって、 高圧水を発生する高圧ポンプと、基端部が片持ち状態で
    支持されて前方に延び、該基端部に前記高圧ポンプより
    高圧水が供給される管体と、前記管体の先端部に装着さ
    れ、前記高圧ポンプより前記管体を通して供給される高
    圧水を削孔対象のコンクリートに吹き付けて孔を形成す
    るノズルと、前記管体をその軸方向に前進せしめて前記
    孔内に進入させていくことで前記ノズルを該孔内におい
    て前進せしめる送り機構と、前記ノズルを前記管体の軸
    線を中心に回転させるための回転機構とを具備してな
    り、 前記ノズルはその前面に高圧水をいずれも該ノズルの回
    転軸線に対して傾斜するように斜め前方に吐出する主吐
    出口および副吐出口を有し、 前記主吐出口を前記副吐出口よりも回転軸線に近い位置
    に設け、かつ、前記副吐出口による高圧水の吐出方向が
    当該ノズルの回転軸線に対してなす傾斜角度を、前記主
    吐出口による高圧水の吐出方向が回転軸線に対してなす
    傾斜角度よりも大きく設定して、それら主吐出口および
    副吐出口からそれぞれ吐出する高圧水は当該ノズルの回
    転により二重円錐状の軌跡を描くものとし、 前記ノズルを前面視偏平形状として前記主吐出口を当該
    ノズルの回転軸線位置に設けるとともに前記副吐出口を
    回転軸線位置より外側に偏位する位置に設け、 かつ、前記主吐出口による高圧水の吐出方向を前記回転
    軸線に対して前記副吐出口とは逆側に傾斜させることに
    より、それら主吐出口および副吐出口よりそれぞれ吐出
    する高圧水は一方が他方を追跡しつつ二重円錐状の軌跡
    を描くものとしたことを特徴とするコンクリートの削孔
    装置。
  2. 【請求項2】 コンクリートに孔を形成するための削孔
    装置であって、 高圧水を発生する高圧ポンプと、基端部が片持ち状態で
    支持されて前方に延び、該基端部に前記高圧ポンプより
    高圧水が供給される管体と、前記管体の先端部に装着さ
    れ、前記高圧ポンプより前記管体を通して供給される高
    圧水を削孔対象のコンクリートに吹き付けて孔を形成す
    るノズルと、前記管体をその軸方向に前進せしめて前記
    孔内に進入させていくことで前記ノズルを該孔内におい
    て前進せしめる送り機構と、前記ノズルを前記管体の軸
    線を中心に回転させるための回転機構とを具備してな
    り、 前記ノズルはその前面に高圧水をいずれも該ノズルの回
    転軸線に対して傾斜するように斜め前方に吐出する主吐
    出口および副吐出口を有し、 前記主吐出口を前記副吐出口よりも回転軸線に近い位置
    に設け、かつ、前記副吐出口による高圧水の吐出方向が
    当該ノズルの回転軸線に対してなす傾斜角度を、前記主
    吐出口による高圧水の吐出方向が回転軸線に対してなす
    傾斜角度よりも大きく設定して、それら主吐出口および
    副吐出口からそれぞれ吐出する高圧水は当該ノズルの回
    転により二重円錐状の軌跡を描くものとし、 前記ノズルを前面視円形状とするとともに、前記主吐出
    口および前記副吐出口による高圧水の吐出方向を互いに
    立体交差させるように設定することにより、それら主吐
    出口および副吐出口よりそれぞれ吐出する高圧水は立体
    交差しつつ二重円錐状の軌跡を描くものとしたことを特
    徴とするコンクリートの削孔装置。
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