JP3379375B2 - フランジ加工性の優れた溶接缶用極薄鋼板、溶接缶、および溶接缶用極薄鋼板の製造方法 - Google Patents
フランジ加工性の優れた溶接缶用極薄鋼板、溶接缶、および溶接缶用極薄鋼板の製造方法Info
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Description
優れた溶接缶用極薄鋼板、溶接缶、および溶接缶用極薄
鋼板の製造方法に関し、特に、食缶、飲料缶に好適な溶
接部近傍のフランジ加工性の優れた、板厚0.20mm
以下の溶接用極薄鋼板、溶接缶、および溶接用極薄鋼板
の製造方法に関する。
板あるいは電解クロム酸処理を施したティンフリースチ
ール(TFS)のような缶用鋼板は食缶や飲料缶に多用
されている。これらの食缶や飲料缶は、その製缶方法の
違いから3ピース缶と2ピース缶に分類される。
いにより、溶接缶、接着缶、はんだ缶等に分類される
が、接合部のラップ代が小さく、かつ接合強度が強い、
高速製缶に適する等の理由から溶接缶が主流となりつつ
ある。そして、このような溶接缶用鋼板に対しても、近
年、缶体の軽量化、コストダウンを目的として、素材と
なる鋼板自体のゲージダウンニーズが一段と強まってい
る。
等の缶体強度の低下を招くため、硬質な素材が要求され
るが、鋼板を薄肉硬質化するとフランジ割れが起こりや
すくなるため、従来以上にフランジ加工性の優れた極薄
鋼板が望まれている。特に、溶接缶では、缶胴接合部の
板厚が接合部以外の部位に比べ厚くなっているため、溶
接部近傍に応力集中が起こりやすいこと、また溶接時の
熱影響により溶接部の組織変化が起こり、溶接部以外の
母材部と溶接部の加工性の不均一性が生じることなどの
理由により、溶接部およびその近傍でフランジ割れが発
生することが多い。
工性の優れた溶接缶用極薄鋼板の製造方法がいくつか提
案されている。例えば、特開平2−118028号公報
には、C≦0.004%、Nb≦0.01%のNb添加
極低炭素鋼を焼鈍温度750〜800℃で連続焼鈍し、
調質圧延で加工硬化を加え、調質度T4以上の溶接缶用
極薄鋼板を製造する方法が開示されている。また、特開
平3−294432号および特開平7−109527号
公報には、C≦0.0060%、N>0.0060%の
極低炭素鋼に二次冷間圧延を施し、板厚が0.15mm
以下、HR30Tが62以上の溶接缶胴用極薄鋼板を製
造する方法が開示されている。
開示された技術では、Nb添加を必須としているため再
結晶温度が高く、750℃以上の高温焼鈍を行う必要が
あり、製造コストが高くなるという問題点がある。板厚
0.20mm以下の極薄缶用鋼板の製造にあたっては、
冷延後の板厚も通常より薄くなるため、このような高温
焼鈍を行うと蛇行、絞り等を生じやすく、CAL(連続
焼鈍ライン)通板性が著しく劣化し、生産性の低下、す
なわち製造コストの増加をもたらす。そのため、素材の
ゲージダウンにより、缶のコストダウンを図るという本
来の目的を達成し難くなる。
び特開平7−109527号公報に開示された技術で
は、0.0060%を超える多量のNが含有されている
ため、耐時効性が劣るという問題点を有している。すな
わち、錫めっき後のリフロー処理、塗装焼付、フィルム
ラミネート時等の熱履歴、あるいは製缶までの常温での
長時間の放置による時効劣化が大きく、溶接前のロール
フォーミングにより缶胴をまるめる際に、腰折れが発生
したり、巻き形状が安定せずにばらつくという問題点を
有している。
に関する技術としては、特開平5−263143号公
報、特開平5−271755号公報、特開平5−295
427号公報、特開平6−192744号公報等に開示
されたものが知られている。しかし、これらはいずれも
T3以下の軟質な鋼板であり、また、これらの技術は単
に軟質化あるいはN時効の防止を目的としてBを添加し
ているにすぎず、溶接部近傍のフランジ加工性に対する
Bの効果について何等考慮されていないし、溶接部近傍
のフランジ加工性そのものについても何等考慮されてい
ない。したがって、これらの技術を用いても、今日要求
されている溶接部近傍のフランジ加工性の優れた板厚
0.20mm以下、HR30Tが61以上の硬質な溶接
缶用極薄鋼板を製造することはできない。
鑑みてなされたものであって、上記要請に十分応え得る
フランジ加工性の優れた溶接缶用極薄鋼板、溶接製缶お
よび溶接缶用極薄鋼板の製造方法を提供することを目的
とする。
20mm以下、HR30T硬度61以上の特性を前提と
して、フランジ加工性の優れた溶接缶用極薄鋼板および
溶接缶を得るべく鋭意検討を重ねた結果、鋼板の組成を
厳密に調整した極低炭素鋼板に対し、C量と板厚に応じ
た適量のBを添加すること、およびそれに加えて溶接部
および溶接部近傍の組織を適正化することにより、フラ
ンジ加工性が大幅に改善された溶接缶用極薄鋼板および
溶接缶が得られることを見出した。
れたものであり、以下の(1)〜(6)を提供するもの
である。
0.01%未満、Si:0.05%未満、Mn:0.1
%以上、0.6%以下、P:0.04%未満、S:0.
01%以上、0.04%以下、sol.Al:0.02
0%以上、0.1%以下、N:0.0035%以下、
B:0.0005%以上、0.0050%以下を含有
し、−1.5(t×103)+450≦B・C×108≦
1750(ただし、tは板厚)を満足し、残部Feおよ
び不可避的不純物からなり、板厚が0.20mm以下、
HR30Tが61以上であることを特徴とする、フラン
ジ加工性の優れた溶接缶用極薄鋼板。 (2)(1)において、重量%で、O:0.005%以
下であることを特徴とするフランジ加工性の優れた溶接
缶用極薄鋼板。
0.01%未満、Si:0.05%未満、Mn:0.1
%以上、0.6%以下、P:0.04%未満、S:0.
01%以上、0.04%以下、sol.Al:0.02
0%以上、0.1%以下、N:0.0035%以下、
B:0.0005%以上、0.0050%以下を含有
し、−1.5(t×103)+450≦B・C×108≦
1750(ただし、tは板厚)を満足し、残部Feおよ
び不可避的不純物からなり、板厚が0.20mm以下、
HR30Tが61以上であり、溶接部近傍のフェライト
最大粒径と母材部のフェライト平均粒径との比が5以下
である溶接部を有することを特徴とする、フランジ加工
性の優れた溶接缶。 (4)(3)において、重量%で、O:0.005%以
下であることを特徴とするフランジ加工性の優れた溶接
缶。
0.01%未満、Si:0.05%未満、Mn:0.1
%以上、0.6%以下、P:0.04%未満、S:0.
01%以上、0.04%以下、sol.Al:0.02
0%以上、0.1%以下、N:0.0035%以下、
B:0.0005%以上、0.0050%以下を含有
し、−1.5(t×103)+450≦B・C×108≦
1750(ただし、tは板厚)を満足し、残部Feおよ
び不可避的不純物からなる鋼素材を、仕上温度がAr3
以上で熱間圧延し、酸洗し、冷間圧延した後、再結晶温
度以上で連続焼鈍し、さらに圧下率DRが10%超、5
0%未満で、かつDR(%)≧−0.5(C+B)×1
04+30を満足する二次圧延を行い、板厚を0.20
mm以下、HR30Tを61以上とすることを特徴とす
る、フランジ加工性の優れた溶接缶用極薄鋼板の製造方
法。 (6)重量%で、O:0.005%以下であることを特
徴とする、請求項5に記載のフランジ加工性の優れた溶
接缶用極薄鋼板の製造方法。
実験結果および本発明の限定理由について説明する。本
発明者らは、溶接部近傍においてフランジ割れが発生し
やすい原因を詳細に調査した結果、溶接部は前述のよう
に他の部位に比べて板厚が厚いため応力集中を生じやす
いが、母材部と溶接熱影響部の組織均一性を高めること
により、フランジ割れの発生を抑制することができるこ
とを知見した。すなわち、C量を極低C領域まで低減
し、溶接時の熱影響による硬質で脆い低温変態相の生成
を回避するとともに、適量のBを添加することにより、
極低C化に伴う溶接部及びその近傍の粗粒化を抑制する
ことがフランジ加工性改善に有効であるとの知見を得
た。
16mmに仕上げたB無添加鋼及び0.0017%のB
添加鋼のフランジ割れ発生率に対するC量の影響を示す
図である。ここでは、フランジ加工性の評価のパラメー
タとしてフランジ割れ発生率を用いた。フランジ加工は
材料間の加工性の差を明瞭に検出するため、通常より厳
しい加工を行った。すなわち、缶端部の周方向の伸びが
30%に相当するフランジ加工を行い、(フランジ割れ
缶数/フランジ加工缶数)をフランジ割れ発生率と定義
し、フランジ加工性を評価した。この評価方法でフラン
ジ割れ発生率が8%以下であれば、ユーザーでの製缶時
においても問題なくフランジ加工が行えることが確認さ
れている。
合、C量が100ppm程度までは、C量の低減により
フランジ割れ発生率は低下していくが、50ppm以下
になると、再び急激にフランジ割れ発生率が増大してい
る。しかも、最も良好な場合でもフランジ割れ発生率は
15%以上である。これは、C量が比較的多い場合には
溶接部に低温変態相が生成するためフランジ加工性が劣
化し、C量が少なくなると溶接部およびその近傍が粗粒
化し、局部くびれが生じ、フランジ割れが発生しやすく
なることを示している。特に、C量が少ない場合には、
DR圧延による歪みが蓄積されているために、溶接熱影
響部に歪み誘起粒成長が生じ、粗粒化が顕著となり、形
状因子による応力集中部と重なるためにフランジ加工性
の劣化が大きくなっている。これらのことから、C量の
制御のみでは十分なフランジ加工性を得ることができな
いことがわかる。
た鋼は、C量依存性はほぼ同様の傾向を示すが、C量が
15〜100ppm程度の範囲ではフランジ割れ発生率
が5%以下であり、良好なフランジ加工性を示してい
る。特に、C量が50ppm以下の極低C領域におい
て、B添加によるフランジ加工性改善効果が顕著となる
ことがわかる。これらは、後述するようにB添加により
母材部と溶接部の組織の均一性が向上したためである。
すなわち、Bがフェライト粒界に偏析しているため、
1)熱影響部の粒成長を抑制する、2)再結晶温度を上
昇させ、熱影響部の再結晶を抑制する、3)溶接部の変
態点以上の高温に達した部位におけるオーステナイト粒
を細粒化させる、等のB添加の複合効果によるものと考
えられる。
に対するB量の影響について検討した。図2は、C、B
量を種々変化させた鋼板を溶製し、フランジ割れ発生率
を測定した結果を示す図である。これら鋼板は、いずれ
も25%のDR圧延を行い、板厚0.15mmとした。
この図から、B量が多すぎても少なすぎてもフランジ加
工性が劣化する傾向があり、最適B量が存在することが
わかる。さらに、C量に応じて最適B量が異なることが
わかる。すなわち、C量が少ない場合には、溶接部近傍
の粗粒化を抑制しフランジ加工性を改善するために比較
的多めのB添加を必要とし、C量が比較的多い場合に
は、極少量のB添加でもその効果が発揮されることを示
している。B添加量が必要以上に多い場合にフランジ加
工性が劣化する理由については、現状では必ずしも明ら
かではないが、Bの酸化物が増加し、それがフランジ割
れの起点となること、また、100ppm以下の範囲で
もC量が比較的多い場合には過剰のB添加により焼入性
が増大し、硬質な低温変態相が生成しやすくなることに
よるものと推定される。
の組合せを変化させて板厚0.15mmの鋼板を製造
し、同様にフランジ加工性を評価した。その結果を図3
に示す。図中、フランジ割れ発生率が8%以下を良好
(○)、8%超えを不良(×)と表した。この図に示す
ように、0.0015%<C<0.01%、0.000
5≦B≦0.0050%、225≦B・C×10
8(%)≦1750とすることにより、良好なフランジ
加工性を有する鋼板が得られることが明らかとなった。
を0.10〜0.20mmの範囲内で種々変化させた鋼
板を製造し、同様にフランジ加工性を評価した。その結
果を図4に示す。図4は、横軸に板厚をとり、縦軸にC
量とB量との積(C・B×108(%))をとって、こ
れら条件によるフランジ加工性を整理したものである。
この図においても図3と同様、フランジ割れ発生率が8
%以下を良好(○)、8%超えを不良(×)と表した。
この図に示すように、良好なフランジ加工性を得るため
に必要となるC量とB量との積の下限値は板厚tに応じ
て変化し、その値は板厚が薄くなるほど大きくなってお
り、−1.5(t×103)+450≦B・C×108と
することによりフランジ割れを抑制できることがわか
る。これは、十分な溶接強度が得られるような溶接条件
下では、板厚が薄いほど板厚内での溶接熱影響部が占め
る比率が大きく、粗粒化しやすくなり、相対的にフラン
ジ加工性が低下するためと推定される。
フランジ加工性を得るための条件として、0.0015
%<C<0.01%、0.0005≦B≦0.0050
%、−1.5(t×103)+450≦B・C×10
8(%)≦1750と規定した。
る。 C: Cは、前述のように、溶接部近傍の組織を制御
し、溶接部近傍のフランジ加工性を向上させるために、
極めて重要な元素である。しかし、C含有量が0.00
15%以下の場合には、溶接部の組織が粗粒化しやすく
なり、Bを添加しても溶接部と母材部の組織の不均一性
を制御することが困難となり、図1および図3に示した
ように良好なフランジ加工性を得ることができない。ま
た、C含有量が0.0015%以下の場合には、0.2
0mm以下の溶接缶用極薄鋼板として要求されるHR3
0T≧61の硬度とするためには、過度のMn、Pなど
の強化元素の添加と高圧下率の二次圧延が必要となり、
フランジ加工性を劣化させずに溶接缶として必要なパネ
リング強度を得ることが困難となる。一方、C含有量が
0.01%以上になると、溶接時の熱影響部に低温変態
生成相が形成されやすくなり、溶接部が脆化するととも
に、母材部との組織均一性が低下するため、図1および
図3に示したようにフランジ加工性が劣化する。以上の
ことから、本発明においては、上述のように、0.00
15%<C<0.01%とする。
が得られるような溶接条件下では、フランジ加工性に対
して相対的に溶接部の影響が大きくなり、フランジ割れ
が発生しやすくなる。そのため、良好なフランジ加工性
を得るために必要なC量の下限値は板厚が薄いほど大き
くなる。前述の図3および図4に示したように、良好な
フランジ加工性を得るために必要なC量は、B量および
板厚により異なり、前述のように−1.5(t×1
03)+450≦B・C×108≦1750の場合にフラ
ンジ加工性が良好となる。
合にも、不純物成分として鋼中に残留し、鋼板を脆化さ
せ、耐食性を劣化させる元素であり、これらの悪影響を
回避するために、0.05%未満とする。
させることによってスラブの熱間割れを防止するととも
に、固溶強化元素として缶体強度を確保するために必要
な元素である。Sを析出固定し、鋼板強度、硬度を確保
するためには0.1%以上必要である。一方、Mnを多
量に添加すると鋼板強度を高めるためには有効である
が、0.6%を超えると焼入れ性が増加して溶接部が脆
化しやすくなり、フランジ加工性の劣化をもたらす。し
たがって、Mn含有量を0.1%以上0.6%以下とす
る。
あり、Mn以上に大きな強化能を有し、鋼板の高強度化
を図るためには有効な元素であるが、同時にフェライト
粒界に偏析して粒界を脆化させる元素であり、フランジ
加工性の低下をもたらす。また耐食性も低下させるた
め、その含有量は極力少ない方が好ましい。したがっ
て、Pの含有量を0.04%未満とする。
らは少ないほうが望ましいが、その含有量が0.01%
未満になると孔食が起こりやすくなり耐食性が低下す
る。一方、S含有量が0.04%以下になると熱間脆性
を引き起こしやすくなる。したがって、Sの含有量を
0.01%以上0.04%以下とする。
AlNとして析出させるために添加される。しかし、そ
の量が0.02%未満の場合には、添加したBの多くが
BNを形成し、B添加によるフランジ加工性改善効果が
弱められ、一方、sol.Al量が0.1%を超えると
Al2O3系介在物が増加し、介在物起因のフランジ割れ
が発生しやすくなる。したがって、Al含有量を0.0
20%以上0.1%以下とする。
ンジ加工性を向上させるというB添加効果を十分に発揮
させるためには、Nは少ないことが望ましい。Nが多い
場合には、Al、Bの添加量を適正化してもBNが形成
されやすくなってB添加効果が弱まり、フランジ加工性
の改善効果が十分に発揮されない場合がある。さらにN
が多い場合には、N時効によりロールフォーミング時に
腰折れが発生したり、巻き形状が安定せずにばらつくな
どの問題が顕在化してくる。したがって、N含有量をこ
れらの不都合が生じない0.0035%以下とする。
加元素である。前述のようにC量に応じた適正量のBを
添加することにより、フェライト粒界に偏析したBが溶
接部近傍の粗粒化を抑制し、溶接部と母財部の組織の均
一性および加工性の均一性を高め、溶接部近傍でのフラ
ンジ割れ発生が低減する。Bのこのうような効果を発揮
させるためには、0.0005%以上の添加を必要とす
るが、0.0050%を超えて過剰に添加すると、割れ
の起点となるB酸化物の形成や低温変態相の生成が促進
され、フランジ加工性が低下する。したがって、上述の
ように、0.0005≦B≦0.0050%とする。
4に示したように、C量および板厚により異なり、前述
のように、−1.5(t×103)+450≦B・C×
108≦1750とすることにより、フランジ加工性が
良好となる。
ためには、上記組成の限定に加えて鋼中のO量を0.0
05%以下に制限することが好ましい。鋼中にOが多量
に存在すると、添加したBの一部が酸化物を形成しやす
くなり、B添加によるフランジ加工改善効果が弱められ
る。また、鋼中の酸化物系介在物はフランジ割れの起点
となり、フランジ加工性を著しく阻害するため、total
O量は極力少なくすることが望ましく、したがって0.
005%以下を好ましい範囲とする。
る他、板厚を0.20mm以下、硬度HR30Tを61
以上と規定する。板厚が0.20mmを超えると、溶接
缶の軽量化、コストダウンが困難であるため、板厚を
0.20mm以下とする。また、0.20mm以下の極
薄材では、パネリング強度等の缶体強度を確保するため
に、HR30Tが61以上の硬度が要求されることか
ら、HR30T硬さは61以上とする。
て製缶された溶接缶における溶接部の組織を規定する。
溶接部の影響を把握するため、図3にフランジ加工性を
示した溶接缶の溶接部および母材部の組織を調べ、組織
とフランジ割れ発生率との関係を調査した。図5は、横
軸に溶接部近傍のフェライトの最大粒径と母材部のフェ
ライトの平均粒径との比(dw/dm)をとり、縦軸に
フランジ割れ発生率をとって、溶接部近傍の組織とフラ
ンジ割れ発生率との関係を示す図である。この図に示す
ように、dw/dmが5を超えると急激にフランジ割れ
発生率が大きくなっている。前述のように、板厚に応じ
てC量およびB量を適正範囲に調整することにより、溶
接熱影響部の粗粒化を抑制し、組織の均一性を高めるこ
とがフランジ加工性改善には有効である。そして、その
定量的評価として、図5に示されているように、溶接部
近傍のフェライト最大粒径と母材部のフェライト平均粒
径との比(dw/dm)を5以下にすることが極めて重
要である。したがって、安定して良好なフランジ加工性
を得ることが可能な溶接缶を得る観点から、鋼組成、板
厚および硬度を上述のように規定するとともに、dw/
dmを5以下と規定している。
て説明する。本発明では、上記組成の鋼を転炉溶製後、
連続鋳造によりスラブとし、このスラブを粗圧延を経
て、あるいは粗圧延を省略して直接熱間仕上げ圧延機に
挿入し、熱間圧延を行う。熱延仕上温度がAr3変態点
を下回ると、巻取温度に応じて熱延鋼板の板厚表層の結
晶粒が粗大化したり、板厚中央部に加工組織が残るなど
の混粒組織となりやすく、最終製品の組織も混粒となり
やすくなる。その結果、材質のばらつきが大きくなり、
フランジ加工性も劣化するため、仕上温度はAr3変態
点以上と規定する。
温度は、特に限定する必要はなく、それぞれ通常行われ
る範囲内である1100〜1250℃、500〜700
℃程度とすることができる。
後、連続焼鈍炉にて再結晶焼鈍を行う。一次冷圧率は特
に限定する必要はなく、熱延仕上げ板厚、製品板厚、D
R率に応じて常法に従って実施すればよい。生産性の観
点からは80〜95%程度にすることが望ましい。
ら連続焼鈍炉にて行う。連続焼鈍時の焼鈍温度は、再結
晶温度未満では部分的に未再結晶組織が残り、材質およ
び組織の均一性が低下し、フランジ加工性が劣化するた
め、再結晶温度以上とする。
%超、50%未満、かつDR(%)≧−0.5(C+
B)×104+30の二次圧延を行い、0.20mm以
下の所定の板厚に仕上げる。図6は、種々のDR率で二
次圧延を行い、板厚0.10〜0.20mmに仕上げた
鋼板のフランジ割れ発生率を調査した結果を示す。ここ
ではこれら鋼板のC量を0.0025%、B量を0.0
015%とした。この図から、DR率が50%以上にな
るとフランジ加工性が低下してくることがわかる。この
原因については、今のところ必ずしも明らかではない
が、圧延による歪みの蓄積量が増加し、母材部の延性が
低下すること、さらに溶接熱影響部と母材部の加工性の
均一性が低下することによるものと推定される。このよ
うに、二次圧延時の圧下率(DR率)が50%以上の場
合にはフランジ加工性が劣化するため、50%未満とす
る。
的としている板厚0.20mm以下の極薄鋼板では、パ
ネリング強度等の溶接缶として必要な缶体強度が得られ
ない場合がある。C量およびB量の異なる鋼板を種々の
DR率で板厚0.15mmに仕上げ、HR30T硬度を
測定し、(C+B)量、DR率とHR30Tの関係を調
査した。その結果を図7に示す。HR30Tが61未満
の場合には十分な缶体強度が得られない場合があること
が従来の調査より明らかになっていることから、HR3
0T≧61は良好(○)と、HR30T<61は不良
(×)と評価した。この図から明らかなように、DR>
10%、DR≧−0.5(C+B)×104+30の場
合にHR30T≧61の硬度となることから、二次圧延
時の圧下率DRは、DR>10%、DR≧−0.5(C
+B)×104+30とする。
薄錫めっき、錫−ニッケルめっきおよびその後の化成処
理等の各種表面処理が施される。本発明においては、こ
れらの表面処理の種類は特に限定されるものではなく、
どのような表面処理を施しても、本発明の効果は十分発
揮される。これらの表面処理鋼板は、さらに、塗装焼付
け後に、あるいはポリエステル等の樹脂フィルムをラミ
ネートしたフィルムラミネート鋼板にした後に溶接缶に
製缶される。
後、連続鋳造によりスラブとし、スラブ加熱温度115
0〜1250℃、仕上温度880〜900℃、巻取温度
560〜640℃で2.0〜1.4mmに熱間圧延し、
酸洗後、冷圧率85〜90%で冷間圧延した。その後、
均熱温度650〜700℃で連続焼鈍し、表3に示すD
R率で二次冷間圧延(DR圧延)を行い、0.10〜
0.20mmに仕上げた後、極薄錫めっきおよび化成処
理を施した。
うとともに、塗装焼付け、ブランキング後、缶胴部のシ
ーム溶接を行い、250ccの飲料缶サイズの缶胴に加
工した。さらに、缶端部のネックイン加工後にフランジ
加工を行った。フランジ加工は、材料間の加工性の差を
明瞭に検出するため、通常より厳しい加工を行った。す
なわち、缶端部の周方向の伸びが30%に相当するフラ
ンジ加工を行い、フランジ割れ発生率(フランジ割れ缶
数/フランジ加工缶数)によりフランジ加工性を評価し
た。また、缶胴溶接部の組織観察を行い、溶接部近傍の
フェライト最大粒径と母材部のフェライト平均粒径の比
を求めた。評価結果を板厚、DR率とともに表3および
表4に示す。
でフランジ割れ発生率が8%以下であれば、ユーザーで
の製缶時においても問題なくフランジ加工が行えること
から、8%以下を良好と評価し、表3では3%以下を
◎、8%以下を○、8%超えを×と表記した。また、溶
接部近傍の組織は溶接部近傍のフェライト最大粒径と母
材部のフェライト平均粒径の比が5以下を○、5超えを
×と表記した。硬度については、缶体強度を確保するた
めの条件として、HR30T≧61を○、HR30T<
61を×と評価した。
2の発明例は、HR30T≧61の硬度を有し、かつ溶
接部と母材部の組織均一性が高く、フランジ加工性に優
れていることが確認された。これに対し、表4に示すよ
うに、表2に示す鋼番23〜43の比較例は、HR30
T<61であるか、あるいは溶接部と母材部の組織均一
性が低く、フランジ加工性に劣っていることが確認され
た。
溶接缶の溶接部近傍でのフランジ割れを少なくすること
ができ、それに起因する歩留まり低下が小さくなり、溶
接缶の製造コストを低減することが可能となる。
るC量の影響を示す図。
す図。
スの影響を示す図。
の影響を示す図。
ライト最大粒径と母材部フェライト平均粒径との比の影
響を示す図。
す図。
の影響を示す図。
Claims (6)
- 【請求項1】 重量%で、C:0.0015%超、0.
01%未満、Si:0.05%未満、Mn:0.1%以
上、0.6%以下、P:0.04%未満、S:0.01
%以上、0.04%以下、sol.Al:0.020%
以上、0.1%以下、N:0.0035%以下、B:
0.0005%以上、0.0050%以下を含有し、−
1.5(t×103)+450≦B・C×108≦175
0(ただし、tは板厚)を満足し、残部Feおよび不可
避的不純物からなり、板厚が0.20mm以下、HR3
0Tが61以上であることを特徴とする、フランジ加工
性の優れた溶接缶用極薄鋼板。 - 【請求項2】 重量%で、O:0.005%以下である
ことを特徴とする、請求項1に記載のフランジ加工性の
優れた溶接缶用極薄鋼板。 - 【請求項3】 重量%で、C:0.0015%超、0.
01%未満、Si:0.05%未満、Mn:0.1%以
上、0.6%以下、P:0.04%未満、S:0.01
%以上、0.04%以下、sol.Al:0.020%
以上、0.1%以下、N:0.0035%以下、B:
0.0005%以上、0.0050%以下を含有し、−
1.5(t×103)+450≦B・C×108≦175
0(ただし、tは板厚)を満足し、残部Feおよび不可
避的不純物からなり、板厚が0.20mm以下、HR3
0Tが61以上であり、溶接部近傍のフェライト最大粒
径と母材部のフェライト平均粒径との比が5以下である
溶接部を有することを特徴とする、フランジ加工性の優
れた溶接缶。 - 【請求項4】 重量%で、O:0.005%以下である
ことを特徴とする、請求項3に記載のフランジ加工性の
優れた溶接缶。 - 【請求項5】 重量%で、C:0.0015%超、0.
01%未満、Si:0.05%未満、Mn:0.1%以
上、0.6%以下、P:0.04%未満、S:0.01
%以上、0.04%以下、sol.Al:0.020%
以上、0.1%以下、N:0.0035%以下、B:
0.0005%以上、0.0050%以下を含有し、−
1.5(t×103)+450≦B・C×108≦175
0(ただし、tは板厚)を満足し、残部Feおよび不可
避的不純物からなる鋼素材を、仕上温度がAr3以上で
熱間圧延し、酸洗し、冷間圧延した後、再結晶温度以上
で連続焼鈍し、さらに圧下率DRが10%超、50%未
満で、かつDR(%)≧−0.5(C+B)×104+
30を満足する二次圧延を行い、板厚を0.20mm以
下、HR30Tを61以上とすることを特徴とする、フ
ランジ加工性の優れた溶接缶用極薄鋼板の製造方法。 - 【請求項6】 重量%で、O:0.005%以下である
ことを特徴とする、請求項5に記載のフランジ加工性の
優れた溶接缶用極薄鋼板の製造方法。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP05425997A JP3379375B2 (ja) | 1997-02-24 | 1997-02-24 | フランジ加工性の優れた溶接缶用極薄鋼板、溶接缶、および溶接缶用極薄鋼板の製造方法 |
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Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH10237585A JPH10237585A (ja) | 1998-09-08 |
JP3379375B2 true JP3379375B2 (ja) | 2003-02-24 |
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ID=12965571
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Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3379375B2 (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2011021646A1 (ja) | 2009-08-19 | 2011-02-24 | Jfeスチール株式会社 | 高加工性3ピース溶接缶用鋼板およびその製造方法 |
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KR101353817B1 (ko) * | 2011-12-19 | 2014-02-13 | 주식회사 포스코 | 내시효성이 우수한 연질 석도 원판 및 그 제조방법 |
KR101406454B1 (ko) * | 2012-05-21 | 2014-06-13 | 주식회사 포스코 | 내시효성이 우수한 연질 석도원판 및 그 제조방법 |
TWI504760B (zh) | 2012-11-07 | 2015-10-21 | Jfe Steel Corp | 三件式罐用鋼板及其製造方法 |
-
1997
- 1997-02-24 JP JP05425997A patent/JP3379375B2/ja not_active Expired - Fee Related
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WO2011021646A1 (ja) | 2009-08-19 | 2011-02-24 | Jfeスチール株式会社 | 高加工性3ピース溶接缶用鋼板およびその製造方法 |
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