JP3351284B2 - ネック成形性に優れた溶接缶用極薄鋼板の製造方法 - Google Patents

ネック成形性に優れた溶接缶用極薄鋼板の製造方法

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JP3351284B2
JP3351284B2 JP06220797A JP6220797A JP3351284B2 JP 3351284 B2 JP3351284 B2 JP 3351284B2 JP 06220797 A JP06220797 A JP 06220797A JP 6220797 A JP6220797 A JP 6220797A JP 3351284 B2 JP3351284 B2 JP 3351284B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、飲料缶等の溶接缶
用の極薄鋼板に関し、抵抗シーム溶接によって缶の接合
を行った後、ネックイン加工後のフランジ加工を行う工
程でのネック成形性に優れた極薄鋼板の製造方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】従来から、缶の接合は、はんだづけ、樹
脂接着による方法、抵抗シーム溶接による方法により行
われている。これらの中で、鋼板の歩留まり向上のため
に接合代を少なくすることができる溶接による方法が主
流となっており、果汁あるいはコーヒー等の各種飲料缶
をはじめとして、食料缶、エアゾール缶等に広く用いら
れている。
【0003】この溶接缶は、缶胴のサイドシーム部を抵
抗シーム溶接によって接合した缶で、はんだ缶、接着缶
に比べてラップ部分が薄いので、巻締め性が向上する、
サイドシーム部分が強い、印刷よけを狭くすることがで
きるので印刷効果に優れる、はんだ飛び込みがないなど
の多くの利点を有する。
【0004】ところで、この溶接缶は、溶接接合した缶
胴に蓋をつけるために、缶胴の両端を直径方向外側に向
かって延出させてフランジ部を形成する工程(以下、フ
ランジ加工と呼ぶ)があり、このフランジ加工を行う
際、フランジ割れという欠陥を生じて、缶の内容物が漏
れることがある。このフランジ加工において、フランジ
割れが発生しにくい性質をフランジ加工性と称する。
【0005】さらに最近では、蓋材の使用量を節減する
目的から、小さい径の蓋を使用することが多くなってい
る。この場合、缶胴の両端を直径方向内側に絞り込む工
程(以下、ネックイン加工と呼ぶ)があるが、缶胴径よ
り小さい径の蓋を使用する場合、ネックイン加工を複数
回繰り返して階段状のネック部を形成するか、または加
工度の高いネックイン加工を一回施して、その後にフラ
ンジ加工を行う。このようなネックイン加工において部
分座屈が発生しにくく、その後のフランジ加工において
フランジ割れが発生しにくい性質を総称してネック成形
性と称し、先のフランジ加工性と区別する。ネックイン
後のフランジ加工は、ネックイン工程での局部的な歪み
が加わり、特に溶接部やその近傍では、通常のフランジ
加工より厳しい加工となっている。
【0006】これらのフランジ割れの原因として、缶胴
接合不良、鋼板の加工性不良、鋼板の介在物、あるいは
溶接部近傍の組織変化に伴う加工性の劣化などがある。
【0007】一方、省資源の観点と缶のコストダウンの
要求から、缶用素材の板厚は薄くなる傾向にある。素材
の薄肉化は実質的に缶の強度を低下させるため、従来よ
りも鋼板の硬さを大きくしたり、缶胴に種々の加工を施
して対処している。鋼板の硬さを大きくした場合には、
高強度化による加工性の劣化を考慮する必要がある。ま
た、板厚が薄くなること自体による加工性の劣化も避け
られない問題と考えられるため、従来より優れたネック
成形性を持つ素材が必要となる。
【0008】近年、薄肉化に対応する鋼板として、熱延
鋼板を冷延後、焼鈍し、再度冷延を行ういわゆる2回冷
延方式による鋼板製造が行われている。しかしながら、
2回冷延材(ダブルレデュース材、以下DR材と略称す
る)は、溶接後のネックインのない単なるフランジ加工
においてすら、フランジ割れが生じることが多い。
【0009】これらの問題を解決する方法として、鋼板
の加工性を改善する従来の通念的な方法の一つは、鋼板
中の炭素量や介在物量を極力低減させることであって、
事実、フランジ割れ多発に対する方策の一つとして、低
炭素化および介在物含有量の注意深い制御等の手段が講
じられている。
【0010】しかしながら、このような方法では、低炭
素化や清浄化のための処理(例えば真空脱ガス処理等)
による製鋼コスト増大等の不都合が生じ、しかも過度の
低炭素化は後述する溶接部近傍の組織均一性の観点から
は不利な方法であり、このような方法のみで優れたネッ
ク成形性を有する鋼板を安定して提供するのは困難であ
る。
【0011】従来、セメンタイトを微細化することによ
り溶接熱影響部の軟化を抑制してフランジ加工性を改善
する方法(特公平5−8264号公報)や、鋼板組織の
粒径を粗大化することにより溶接熱影響部の軟化を抑制
してフランジ加工性を改善する方法(特公昭62−15
610号公報、特開昭60−24327号公報、特開昭
63−310922号公報)、さらには炭素当量(Ce
q)と二次冷間圧延率を制御することにより溶接後の結
晶粒粗大化を抑制し、フランジ加工性を改善する方法
(特開昭59−25934号公報)が提案されている。
しかしながら、これらの技術はフランジ加工に先立つネ
ックイン加工に対して何ら考慮がなされていない。ま
た、これらのうち特公昭62−15610号公報および
特開昭59−25934号公報の技術は、熱影響部の軟
化抑制に対しては効果があるものの、Cを多量に含有す
るため、溶接時の入熱により最も高温となりオーステナ
イト変態を生じる部分(いわゆるナゲット部)が硬化し
てフランジ加工性を損ない、フランジ加工性が不十分で
あるという問題がある。
【0012】また、極低炭素鋼を用いたDR材の技術
が、特開昭63−89625号公報や特開平7−624
48号公報に提案されている。しかし、特開昭63−8
9625号公報の技術では、連続焼鈍後の調質圧延率が
10%未満と小さく、最近の素材薄肉化の要請に十分対
応するのは困難である。また、特開平7−62448号
公報では、素材を極低炭素化することにより溶接部の焼
入れ性を制御し、硬化を抑制することによってフランジ
加工性が確保できるとしているが、極低炭素化による溶
接部の軟化については、何等考慮がなされていない。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】本発明はかかる事情に
鑑みてなされたものであって、溶接製缶にあたって、ネ
ックイン加工の後のフランジ加工の工程でフランジ割れ
を起こさず、特に薄い板厚の極薄溶接缶用鋼板の製造方
法を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、本発明者らは、ネックイン加工後のフランジ加工時
の割れ発生原因を詳細に調査した。その結果、フランジ
割れを抑制するためには、素材成分、特にC量が特定の
範囲の素材にBを適量添加することと、二次冷間圧延率
を特定範囲にすることの組み合わせによって、製缶溶接
後の接合部およびその近傍の組織を比較的均一に制御す
ることができ、溶接による形状不連続部の応力集中によ
るフランジ割れの発生を抑制し、ネック成形性を改善す
ることができるという知見を得た。
【0015】溶接缶の溶接部は他の部分よりも板厚が厚
く、その境界部分は形状的に応力集中が生じやすい部分
である。溶接時の入熱、加圧により、組織および機械特
性が変化した部分(接合部およびその近傍;以下、熱影
響部という)と、溶接の影響を実質的に受けていない部
分(以下、母材という)との境界部が、形状的に応力が
集中する部位とほぼ同じ位置になる場合が多いため、こ
の部分は本質的にネックインおよびフランジ加工に対し
て不利であり、溶接缶製造工程で問題となるフランジ割
れは溶接部近傍で生じる場合が多い。
【0016】熱影響部は、その組織変化挙動から、変態
を伴う組織変化を生じるいわゆるナゲット部と、変態を
伴わない再結晶等の変化を生じる周辺部とに大別され
る。
【0017】適正な電流範囲でシーム溶接がなされた場
合、溶接部中央のナゲット部では最も高温となるため、
素材の組織はオーステナイト変態してオーステナイト単
相またはフェライトとオーステナイトの二相となり、そ
の後冷却され、室温で安定なる相に変態する。ナゲット
部の溶接後の組織は、主に素材成分、特にC量に依存す
る。素材の他条件(粒径、加工歪の大小、析出物サイズ
等)や溶接条件(昇温速度、最高到達温度、冷却速度
等)も組織変化に寄与するが、一般的な溶接缶工程の条
件範囲では、C量の寄与度と比較して、その影響は小さ
い。C量が多すぎると、この部分では低温変態相が多く
析出し、過度に硬化してしまう。そのため、接合部中央
の組織を抑制するには、Cの添加量を適正な範囲とする
ことが必要である。このような観点から検討した結果、
C量が0.040%を超えると急激に低温変態相の析出
量が多くなり、組織の均一性を損なうことを見出した。
【0018】一方、ナゲット周辺の熱影響部では再結晶
および粒成長が生じるため、素材がDR材であれば、加
工歪の効果が失われ、さらに結晶粒が粗大化して一般的
にこの部位は軟化する。C量を抑制して母材組織とナゲ
ット部組織とをほぼ均一にすることができても、母材と
ナゲットの間に存在するこの部位が軟化すれば、応力の
集中が生じ、ネック成形性に対して悪影響を及ぼす。こ
の軟化部位を十分に狭くし、実質的にネック成形性に有
利な素材とするためには、再結晶および粒成長を抑制す
る必要がある。
【0019】本発明者らは、ナゲット部が過度に硬化し
ないC量が0.040%以下の範囲で、熱影響部の結晶
粒粗大化を抑制すべく種々検討を重ねた結果、Bを適量
添加することが極めて有効であることを見出した。
【0020】図1に、C量が0.040%以下の範囲で
Bを添加したときにおける、フランジ割れ発生率に及ぼ
すB添加量の関係を示す。この図に示す関係を得た実験
において、フランジ加工は、材料間の性能差を明瞭に検
出するため、通常のフランジ加工よりも加工度を大きく
して評価した。すなわち、二段のネックイン加工を施し
た後、フランジ加工後のフランジ外径とネック加工後の
缶内径の比(フランジ外径/ネック内径)が1.25と
なるように加工した。
【0021】この際に、加工した全試験缶数に対するフ
ランジ割れが発生した缶数の比率、(割れ発生缶数/全
試験缶数)×100(%)をフランジ割れ発生率とし
た。この方法で評価した場合、フランジ割れ発生率が5
%以下であれば、通常のフランジ加工において問題を生
じないことを予め把握している。
【0022】図1に示すように、Bが無添加の場合、C
添加量が小さいほど熱影響部の軟化が著しく、フランジ
割れの発生率は大きくなった。これらにBを添加してい
くと、B添加量が0.0010%以上の範囲では、再結
晶を生じる部位が小さくなるとともに、結晶粒の粗大化
が抑制され、組織の均一性が向上してフランジ割れ発生
率が小さくなった。この現象の詳細な機構は必ずしも明
確ではないが、Bの添加により再結晶温度が高くなり、
溶接入熱による再結晶粒発生範囲が狭められたこと、入
熱前の結晶粒界にBが存在することで粒成長が抑制され
たことが要因であると考えられる。このような効果はB
の添加量が約0.0005%以上の範囲で一応は得られ
るものの、0.0005%から0.0010%の範囲で
は溶接条件の若干の差異が熱影響部組織変化に及ぼす影
響度合が大きく安定性に欠けることから、安定して上記
効果を得るためにはBを0.0010%以上添加するこ
とが必要であることが見出された。
【0023】一方、Bの添加量が0.0040%を超え
ると、ナゲット部に低温変態相が多く析出するようにな
り、ネック成形性は劣化した。この傾向は、Bの添加に
より焼入れ性が増大するためと考えられ、C量が多いほ
どその傾向が顕著となることが見出された。
【0024】さらに、上述した成分範囲の鋼について、
二次冷間圧延率の影響を調査した。図2は、フランジ割
れ発生率に及ぼす二次冷間圧延率の影響を示す図であ
る。この図に示すように、二次冷間圧延率が40%以上
になると、フランジ割れ発生率は増大し始め、十分なネ
ック成形性が得られないことが見出された。その詳細な
機構は必ずしも明確ではないが、二次冷間圧延率が過度
に大きくなると、二次冷間圧延時に導入された加工歪が
溶接部近傍における組織変化に及ぼす影響が大きくなる
ためと考えられる。すなわち、溶接時の入熱と圧下によ
り、溶接入熱部の一部分では再結晶が起こるが、溶接前
に導入された加工歪が大きくなると溶接入熱部のより広
い範囲で再結晶を誘起するため、溶接部近傍での組織均
一性が得られなくなり、加工性を損なうものと考えられ
る。この傾向は、CおよびBの添加量が上述の範囲であ
れば、ほぼ同様に得られた。したがって、ネック成形性
を確保するためには二次冷間圧延率を40%未満とする
必要があることが見出された。
【0025】本発明は、以上のような知見に基づいて、
素材鋼板の溶接熱影響部の組織均一性を改善することが
できる適正な成分組成と適正な範囲の二次冷間圧延率を
組み合わせることによって、溶接缶胴におけるネックイ
ン加工やその後のフランジ加工等における溶接部および
溶接部近傍の局所変形能を著しく改善することに成功し
たものである。
【0026】すなわち、本発明は、重量%で、C:0.
010%超、0.040%以下、Mn:0.1%以上、
0.6%以下、Si:0.05%未満、P:0.04%
未満、S:0.01%以上、0.04%以下、N:0.
0040%以下、sol.Al:0.020%以上、
0.100%以下、B:0.0010%以上、0.00
40%以下を含有する鋼素材を、熱間圧延し、酸洗し、
冷間圧延し、焼鈍した後、圧延率が10%以上、40%
未満の二次冷間圧延を施すことを特徴とする、ネック成
形性に優れた溶接缶用極薄鋼板の製造方法を提供するも
のである。また、上記方法において、重量%で、O:
0.005%以下であることを特徴とする、ネック成形
性に優れた溶接缶用極薄鋼板の製造方法を提供するもの
である。
【0027】本発明によれば、ネック成形性に優れた極
薄鋼板が提供されるのみならず、缶のコストダウンや省
資源の観点から、缶胴用素材の板厚減少の要求に応える
種々の強度レベルの極薄鋼板を提供することが可能であ
り、C、Bの含有率と二次冷間圧延率のバランスを変更
することによって、ネック加工性を損なうことなく、強
度レベルの異なった各種缶用鋼板を提供することができ
る。
【0028】
【発明の実施の形態】以下本発明について詳細に説明す
る。本発明においては、重量%で、C:0.010%超
0.040%以下、Mn:0.1%以上0.6%以下、
Si:0.05%未満、P:0.04%未満、S:0.
01%以上0.04%以下、N:0.0040%以下、
sol.Al:0.020%以上0.100%以下、
B:0.0010%以上0.0040%以下の組成を有
する鋼素材を用いる。
【0029】Cは、本発明において最も重要な元素の一
つであり、素材の強度と溶接部特性を確保するために添
加される。しかし、その含有量が0.010%以下で
は、強度を確保することが困難であるばかりでなく、わ
ずかなC含有量のばらつきによる時効性の変化が大きく
なる。溶接缶用素材は、通常、塗料焼付けやラミネート
などの熱処理を伴う工程を経て缶胴成形されるため、時
効性のばらつきが大きいと缶胴成形時の機械特性が安定
せず、その結果巻形状の均一性が劣るため好ましくな
い。一方、その含有量が多くなり0.040%を超える
と、前述のとおり溶接時の入熱により硬質な相を多く析
出し、ネック成形性に悪影響を及ぼす。したがって、C
含有量を0.010%超0.040%以下とする。
【0030】Mnは、Cと同様に素材の強度を確保する
ために重要な元素である。しかし、その含有量が0.1
%未満では所望の効果が得られず、一方、その含有量が
多くなって0.6%を超えると加工性に対して不利に作
用する。したがって、Mn含有量を0.1%以上0.6
%以下とする。
【0031】Siは、その含有量が0.05%以上にな
ると、めっき密着性が劣化し、耐食性が劣化するので、
0.05%未満とする。Pは、その含有量が多くなる
と、加工性が劣化するとともに耐食性が劣化するので、
これらの不都合が生じない0.04%未満とする。
【0032】Sは、その含有量が0.01%未満と少な
くなると孔食を起こしやすくなり、0.04%を超える
と熱間脆性を引き起こしやすくなるため、0.01%以
上0.04%以下とする。
【0033】Nは、その含有量が多くなるとBNを形成
しやすくなり、B添加による成形性改善効果が弱められ
るので好ましくない。また、N含有量が多いと常温時効
性が大きくなり、缶胴の巻き形状均一性を劣化させる。
したがってN含有量をこれらの不都合が生じない0.0
040%以下とする。
【0034】sol.Alは、脱酸のためと、鋼中のN
をAlNとして固定するために添加される。しかし、そ
の量が0.020%未満であると、AlNの形成により
消費されないN量が多くなり、BNを形成しやすくな
る。一方、0.100%を超えて含有すると、アルミナ
系介在物が増加し、ネック成形性に悪影響を及ぼす。し
たがって、Al含有量を0.020%以上0.100%
以下とする。
【0035】Bは、本発明において最も重要な元素の一
つであり、ネック成形性を確保するために添加される。
Bを添加することにより、シーム溶接部およびその近傍
の熱影響部における結晶粒粗大化が抑制され、溶接部−
母材間の組織の均一性を高めることができるので、ネッ
クしわの発生やフランジ割れ発生の頻度を極小さくする
ことが可能となる。上述した図1から明らかなように、
Bが0.0010%未満ではその効果を安定して得るこ
とができない。一方、その含有量が多くなると、素材の
焼き入れ性が高くなり、溶接時の入熱により硬質な相が
析出しやすくなって加工性を劣化させる。C含有量が上
述した範囲内の場合には、B含有量が0.0040%を
超えると良好な加工性が得られない。したがって、良好
な加工性を得る観点から、Bの含有量0.0010%以
上0.0040%以下とする。
【0036】さらに優れたネック成形性が要求される場
合には、上記組成の限定に加えて鋼中のO量を0.00
5%以下に制限することが好ましい。このように鋼中の
O量を制御することで成形性をより改善することができ
る。鋼中にOが多量に存在すると、添加したBの一部が
酸化物を形成しやすくなり、B添加による成形性改善効
果が弱められる。また、鋼中の酸化物系介在物はフラン
ジ割れの起点となり、フランジ加工性を著しく阻害する
ため、O量は極力少なくすることが望ましく、したがっ
て0.005%以下を好ましい範囲とする。なお、その
他、本発明が意図する特性に影響を与えない微量の添加
元素、および不可避的に含有される不純物については許
容される。
【0037】本発明では、上記組成の鋼素材を、熱間圧
延し、酸洗し、冷間圧延し、焼鈍した後、圧延率が10
%以上、40%未満の二次冷間圧延を施す。
【0038】この場合に、まず、上記組成に溶製した鋼
を連続鋳造により鋼片とし、熱間圧延に供する。その
際、鋼片をAr3変態点未満に冷却することなく、高温
のまま熱間圧延する、いわゆる直送圧延を行ってもよい
し、一旦鋼片をAr3変態点未満に冷却した後、再加熱
して熱間圧延を行ってもよい。熱間圧延は、通常行われ
ている一般的な方法を用いればよく、特に限定されるも
のではないが、仕上げ温度がAr3変態点未満である
と、混粒組織となり材質の均一性が損なわれるため、仕
上げ温度をAr3変態点以上とすることが好ましい。
【0039】熱間圧延後、鋼帯は、酸洗、冷間圧延、再
結晶焼鈍を施されるが、これらの工程は常法に従って行
えばよく、特に限定されるものではない。
【0040】その後、二次冷間圧延が行われるが、この
際の圧延率が10%未満の場合、本発明の組成を有する
鋼においては、時効性のばらつきが特に大きく、缶胴の
巻き形状均一性が劣るため好ましくない。また、この際
の圧延率が40%以上になると、前述したように、溶接
部近傍での組織均一性が得られなくなり、ネック成形性
を損なってしまう。したがって、二次冷間圧延圧延率は
10%以上、かつ40%未満とする必要がある。
【0041】二次冷間圧延された鋼板の最終板厚は、薄
肉化による缶体の軽量化、すなわち資源節約の観点か
ら、0.18mm以下であることが好ましい。特に望ま
しくは、素材コスト低減をも合わせて考慮して、0.1
6mm以下である。
【0042】このような方法で得られた鋼帯は、通常種
々の表面処理が施されて実用に供されるが、本発明にお
いては、表面処理の方法を特に限定するものではない。
すなわち、電気錫めっき、電解クロメート処理、あるい
は何等かの処理を施した後に薄目付けの錫めっきを施す
方法、またはめっき後に特殊な化成処理を施す方法な
ど、いずれの表面処理であっても本発明の作用効果は損
なわれることなく発揮される。
【0043】
【実施例】以下、本発明の実施例について説明する。表
1および表2に示すNo.1〜45の成分組成を有する
鋼を連続鋳造して得られた鋼片を、1.8〜2.0mm
まで熱間圧延後、酸洗し、タンデム式冷間圧延機にて
0.15〜0.31mmまで圧延した。この鋼板を焼鈍
後、0.13〜0.20mmまで再度冷間圧延し、錫め
っきを施した。
【0044】このようにして得た鋼板に対して、溶接の
ためのニスよけ部分を除いて塗装焼き付けし、缶胴寸法
に切断し、缶胴成形し、スードロニック溶接機FBB−
5600を使用して溶接した。その後、缶胴ダイネッカ
ーを用いて、二段ネックイン加工を施した後、フランジ
加工し、その加工性を評価した。
【0045】フランジ加工は、材料間の性能差を明瞭に
検出するため、通常のフランジ加工よりも加工度を大き
くして評価した。すなわち、フランジ加工後のフランジ
外径とネック加工後の缶内径の比(フランジ外径/ネッ
ク内径)が1.25となるように加工した。
【0046】加工性の評価は、ネックイン後フランジ加
工を施したときのフランジ割れの発生率により評価し
た。この際に、加工した全試験缶数に対するフランジ割
れが発生した缶数の比率、(割れ発生缶数/全試験缶
数)×100(%)をフランジ割れ発生率とした。この
方法で評価した場合、フランジ割れ発生率が5%以下で
あれば、通常のフランジ加工において問題を生じないこ
とが予め把握されているため、以下の評価基準で評価し
た。 ◎ フランジ割れ0〜1%以下 ○ フランジ割れ1%〜5%以下 × フランジ割れ5%超え
【0047】表1および表2に示すように、本発明を満
足する本発明例の鋼板は、溶接後のフランジ割れ発生率
が極低く、ネック成形性が優れていた。これに対して本
発明の範囲を外れる比較例の鋼板は、十分なネック成形
性が得られなかった。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
溶接缶を製造する際のネック成形性およびフランジ加工
性に優れた極薄溶接缶用鋼板を製造することができる。
このように鋼板の板厚を薄くできる点など、省資源、省
エネルギーの面からも、その経済的価値は極めて高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】フランジ割れ発生率に及ぼすB添加量の影響を
示す図。
【図2】フランジ割れ発生率に及ぼす二次冷間圧延率の
影響を示す図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 稲葉 聖二 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (72)発明者 粟屋 敬 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (56)参考文献 特開 平7−109526(JP,A) 特開 昭63−310922(JP,A) 特開 昭60−24327(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C21D 9/46 - 9/48 C21D 8/00 - 8/04 C22C 38/00 - 38/60

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、C:0.010%超、0.0
    40%以下、Mn:0.1%以上、0.6%以下、S
    i:0.05%未満、P:0.04%未満、S:0.0
    1%以上、0.04%以下、N:0.0040%以下、
    sol.Al:0.020%以上、0.100%以下、
    B:0.0010%以上、0.0040%以下を含有す
    る鋼素材を、熱間圧延し、酸洗し、冷間圧延し、焼鈍し
    た後、圧延率が10%以上、40%未満の二次冷間圧延
    を施すことを特徴とする、ネック成形性に優れた溶接缶
    用極薄鋼板の製造方法。
  2. 【請求項2】 重量%で、O:0.005%以下である
    ことを特徴とする、請求項1に記載のネック成形性に優
    れた溶接缶用極薄鋼板の製造方法。
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