JP3371670B2 - 加工性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法 - Google Patents

加工性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法

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JP3371670B2 JP05774796A JP5774796A JP3371670B2 JP 3371670 B2 JP3371670 B2 JP 3371670B2 JP 05774796 A JP05774796 A JP 05774796A JP 5774796 A JP5774796 A JP 5774796A JP 3371670 B2 JP3371670 B2 JP 3371670B2
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【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、熱延鋼板を素材とする
加工性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法に関す
る。 【0002】 【従来の技術】溶融亜鉛めっき鋼板は耐食性および加工
性に優れるため、近年、自動車、建材、家具、容器、家
電等に需要が増加している。溶融亜鉛めっき鋼板は通常
冷延鋼板を素材として製造されることが多いが、冷延鋼
板に代わって熱延鋼板を素材として用いることにより冷
延工程を省略できるため、さらに低コストの製造が可能
である。この場合、通常熱延ままでは冷延鋼板に比べて
形状が悪く、連続めっきラインでの通板性に劣るため、
スキンパス等により形状矯正を行う必要がある。しかし
ながら、このような歪み負荷による形状矯正を行った熱
延鋼板を素材として連続溶融亜鉛めっきラインにてめっ
き処理を施すと、強度が上昇すると同時に延性が低下し
て加工に支障をきたすという問題があった。 【0003】このような加工性の劣化を回避するための
手段として、特開平6−285505号公報には形状矯
正のためのスキンパス伸び率を0.5%以下にする方法
が記載されている。しかしながら、実際には、0.5%
以下のスキンパス伸び率では十分に形状矯正ができない
場合が多く、めっきラインにおける通板速度を下げざる
を得ないために生産効率が低下したり、あるいは通板不
能となるなどの問題点があった。このため、スキンパス
等で十分な形状矯正を施した熱延鋼板を素材に用いて
も、めっき後の加工性が劣化することのない溶融亜鉛め
っき方法が望まれていた。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、かかる状況
に鑑みてなされたもので、その目的とするところはスキ
ンパス等で十分な形状矯正を施した熱延鋼板を素材とし
て用いても加工性の劣化がない、溶融亜鉛めっき鋼板の
製造方法を提供することにある。 【0005】 【課題を解決するための手段】本発明者らは、この課題
を解決すべく、スキンパス等で十分な形状矯正を施した
熱延鋼板について溶融亜鉛めっきによる加工性の劣化を
防止する方策を種々検討した。 【0006】すなわち,鋼板は、熱延後にスキンパス等
を行い形状矯正され、次いで、還元炉で還元された後め
っき浴で溶融亜鉛めっきされる。合金化亜鉛めっきの場
合には、鋼板は、さらに合金化炉において400〜90
0℃に加熱される。しかし、熱延後にスキンパス等を行
い形状矯正された鋼板を用いると、これらの加熱工程に
よって強度の上昇と延性の低下が生じて加工性が劣化す
ることが問題となる。 【0007】発明者らは、このような加工性の劣化を防
止するとともに最も高い加工性が得られる方法を検討し
た結果、加工性の劣化は、還元炉での焼鈍時に生じてお
り、加熱中に張力を加えることが有効であるとの知見を
得た。しかし、加熱中に同じ張力を加えても加工性が劣
化する場合があるため、さらに熱延板の材質およびめっ
き通板前の製造条件を含めて検討した結果、熱延板の熱
延後の時効指数:AI(kgf/mm2 )および形状矯
正時の塑性伸び:ε(%)が影響していることが判明し
た。そこでさらに詳細に検討したところ、熱延板のAI
に対し形状矯正時の塑性伸びおよび焼鈍時のライン張
力:T(kgf/mm2 )を最適にコントロールするこ
とにより、最も高い加工性が得られることを見出し、本
発明に至った。 【0008】すなわち、本発明は、熱延鋼板を形状矯正
した後、連続溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法において、
熱延後の時効指数:AI(kgf/mm2 )および形状
矯正時の塑性伸び:ε(%)と、連続溶融亜鉛めっきラ
インのライン張力:T(kgf/mm2 )が(1)式の
関係を満足することを特徴とする加工性に優れた溶融亜
鉛めっき鋼板の製造方法である。 【0009】 0.13ε+0.104 AI+0.57≧T≧0.12ε+0.093 AI+0.47 …(1) 但し、AIは8%の引張予歪を加えた後に100℃×6
0分の熱処理を施すことによる降伏点の増加量である。 【0010】ここで、形状矯正時の塑性伸び(ε
(%))は、スキンパスでは調質圧延(調圧)後の伸び
率(%)、レベラーではローラレベラーおよびテンショ
ンレベラーのレベラー負荷後の伸び率(%)である。 但し、ε(%):0.6〜3.0 T(kgf/mm 2 ):0.6〜1.5 AI(kgf/mm 2 ):0.1〜5.7 とする。 【0011】 【発明の実施の形態】次に本発明方法において、0.13ε
+0.104 AI+0.57≧T≧0.12ε+0.093 AI+0.47の
関係を満たすように熱延後の時効指数:AI(kgf/
mm2 )、形状矯正時の塑性伸び:ε(%)及び連続溶
融亜鉛めっきラインのライン張力:T(kgf/mm
2 )を規定する理由を以下に説明する。 【0012】図1に実験室溶解材(C:0.04重量%
(以下%と略称する)、Si:0.01%、Mn:0.
3%、P:0.01%、S:0.009%、SolA
l:0.05%、N:0.0040%)において、AI
=0.5kgf/mm2 の熱延板に対して、種々のスキ
ンパス調圧率(塑性伸び量に相当)までスキンパスを施
し、無張力および張力:0.8kgf/mm2 で溶融亜
鉛めっき相当の熱処理(680℃×60秒→500℃×
10秒)を行った後の機械的性質(伸び)を示す。無張
力ではスキンパス調圧率の増加にともない伸びが低下
し、0.2〜0.5%のスキンパス調圧率でも3〜6%
の伸びの低下が生じる。これに対して、張力を加えると
スキンパス調圧率1.5%まではほとんど伸びの低下が
生じないことがわかる。しかしながら、スキンパス調圧
率が2.0%以上では伸びの低下が生じた。 【0013】図2に、実験室溶解材(C:0.04%、
Si:0.01%、Mn:0.3%、P:0.01%、
S:0.009%、SolAl:0.05%、N:0.
0040%)において、AIを種々の水準に調整した熱
延板に対し、スキンパス調圧率:1.0%でスキンパス
を施した後、張力:0.7kgf/mm2 で溶融亜鉛め
っき相当の熱処理(680℃×60秒→500℃×10
秒)を行った後の機械的性質(伸び)を示す。スキンパ
ス調圧率および熱処理時張力が同一条件の場合でも、A
Iの増大により伸びは低下することがわかる。 【0014】図3に、実験室溶解材(C:0.04%、
Si:0.01%、Mn:0.3%、P:0.01%、
S:0.009%、SolAl:0.05%、N:0.
0040%)において、AI=0.5kgf/mm2
熱延板に対し、スキンパス調圧率:1.0%でスキンパ
スを施した後、種々の張力で溶融亜鉛めっき相当の熱処
理(680℃×60秒→500℃×10秒)を行った後
の機械的性質(伸び)を示す。図3において延性に対す
る張力の効果が最大限に得られる領域をA、効果が低下
して飽和する領域をB、効果が小さくかつ張力依存性が
大で制御が困難な領域をCとする。AIおよびスキンパ
ス調圧率が同一条件の場合でも、張力が低いと伸びは低
下することがわかる。一方、張力を上げ過ぎても伸びは
低下するので、最も優れた延性を得るためには、張力は
最適範囲に制御する必要がある。 【0015】そこで本発明者らは、実操業における熱延
後の時効指数:AIおよび形状矯正時の塑性伸びと連続
溶融亜鉛めっき後の加工性劣化(延性低下)を防止する
のに要するライン張力の関係を調査した。その結果を図
4、図5、図6に示す。各図における延性の評価は、図
3と同様に領域をA、B、Cとした。各図に示すように
熱延後の時効指数(AI(kgf/mm2 ))およびス
キンパス調圧率(ε(%))とライン張力(T(kgf
/mm2 ))が(1)式の関係を満足すれば、延性の低
下による材質劣化を防ぐことができ,(1)式の関係を
満たさないと材質劣化を防ぐことができない。 【0016】 0.13ε+0.104 AI+0.57≧T≧0.12ε+0.093 AI+0.47 …(1) 但し、AI:8%の引張予歪を加えた後に100℃×6
0minの熱処理を施すことによる降伏点の増加量。 【0017】なお、スキンパスにおける調圧後の伸び率
(%)とレベラー負荷後の伸び率(%)は、実操業上の
実績からほぼ等価であり、いずれも(1)式を満足す
る。また、ライン張力が0.3(kgf/mm2 )未満
になると通板中にバタツキを生じるため、0.3(kg
f/mm2 )以上で行うことが好ましい。熱延板の製造
条件については特に規定されず、連続鋳造後の鋼片は、
常温まで冷却後再加熱、または常温まで冷却することな
しに再加熱、あるいはそのまま直送して熱間圧延のいず
れを行っても上記の効果が得られる。また、通常は熱延
−形状矯正後に酸洗ラインにおいて脱スケールを施して
から溶融めっき処理を施すことが多いが、この酸洗脱ス
ケール工程を省略しても、本発明の効果には何ら影響は
ない。 【0018】 【実施例】次に本発明の実施例について説明する。 [実施例1]表1に示す組成において、巻取温度により
AIを変化させた板厚2.3mmの熱延板に対し、種々
のスキンパス調圧率までスキンパスを施した後、酸洗ラ
インにてスケールを除去し、還元炉内ライン張力を種々
の水準に変化させて連続溶融亜鉛めっきラインを通板し
た。めっきラインの還元炉温度は630〜890℃の範
囲で変化させ、亜鉛めっき浴温度は500℃とした。表
2に表1のA成分の鋼、表3に表1のB鋼、表4に表1
のC鋼、表5に表1のD鋼、表6に表1のE鋼につい
て、それぞれ溶融亜鉛めっきライン通板後の機械的性質
(伸び)を示す。 【0019】表2(但し、No.2、4,5,7,1
0,12,13,15,16,21,23,24,2
7,28,29,31,33,34,36を削除),表
3(但し、No.3,4,6,9,11,14,17,
18,27,28,30,31,35,36を削除),
表4(但し、No.2,3,6,8,9,10,15,
16,18,21,23,27,29,32,35,3
6),表5(但し、No.3,4,5,7,9,12,
14,15,16,18,20,21,22,26,2
8,30,31を削除),表6(但し、No.2,3,
6,8,9,11,12,14,17,18,20,2
2,26,27,28,30,33,35を削除)の結
果から、AI(巻取温度)および還元炉内温度が同一で
あっても本発明に適合したライン張力にすることによ
り、ライン張力が本発明の範囲から外れる場合に比べ、
少なくとも5%高い伸びを得ることが可能であることが
わかる。 【0020】 【表1】【0021】 【表2】 【0022】 【表3】【0023】 【表4】【0024】 【表5】【0025】 【表6】【0026】 【発明の効果】以上の実施例から明らかなように、本発
明によれば、熱延鋼板を原板として用いる場合に生じる
めっき後の延性等の材質劣化を防止することにより、低
コストで加工性に優れた連続溶融めっき鋼板の製造方法
を提供することができる。従って、本発明製造方法によ
れば、生産効率を向上させコスト低減効果が大きく、産
業上極めて有用な効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】 【図1】熱延板に対して種々のスキンパスを行った後、
溶融亜鉛めっき相当の熱処理を行った際の、スキンパス
調圧率と伸びとの関係を示す図。 【図2】AIを種々の水準に調整した熱延板に対し、ス
キンパスを行った後、溶融亜鉛めっき相当の熱処理を行
った際の、AIと伸びとの関係を示す図。 【図3】熱延板に対してスキンパスを行った後、種々の
張力で溶融亜鉛めっき相当の熱処理を行った際の、張力
と伸びとの関係を示す図。 【図4】実操業における熱延後の時効指数:AI=0.
5kgf/mm2 および形状矯正時の塑性伸びと連続溶
融亜鉛めっき後の加工性劣化(延性低下)を防止するの
に要するライン張力の関係を示す図。 【図5】実操業における熱延後の時効指数:AI=2.
7kgf/mm2 および形状矯正時の塑性伸びと連続溶
融亜鉛めっき後の加工性劣化(延性低下)を防止するの
に要するライン張力の関係を示す図。 【図6】実操業における熱延後の時効指数:AI=5.
0kgf/mm2 および形状矯正時の塑性伸びと連続溶
融亜鉛めっき後の加工性劣化(延性低下)を防止するの
に要するライン張力の関係を示す図。
フロントページの続き (72)発明者 船川 義正 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (56)参考文献 特開 昭63−161149(JP,A) 特開 昭56−84451(JP,A) 特開 平6−285505(JP,A) 特開 平5−295511(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23C 2/00 - 2/40

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 熱延鋼板を形状矯正した後、連続溶融亜
    鉛めっきする方法において、熱延後の時効指数:AI
    (kgf/mm2)および形状矯正時の塑性伸び:ε
    (%)と、連続溶融亜鉛めっきラインのライン張力:T
    (kgf/mm2)が(1)式の関係を満足することを
    特徴とする加工性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板の製造方
    法。 0.13ε+0.104AI+0.57≧T≧0.12
    ε+0.093AI+0.47 (1) 但し、AI:8%の引張予歪を加えた後に100℃×6
    0分の熱処理を施すことによる降伏点の増加量。ε(%):0.6〜3.0 T(kgf/mm 2 ):0.6〜1.5 AI(kgf/mm 2 ):0.1〜5.7
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